添付一覧
○生活保護法による就労自立給付金の支給について
(平成26年4月25日)
(社援発0425第3号)
(各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長あて厚生労働省社会・援護局長通知)
(公印省略)
生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)は、生活に困窮する国民に対し、最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としている。
この度、生活保護法の一部を改正する法律(平成25年法律第104号。以下「改正法」という。)が、平成26年7月1日から施行されることに伴い、生活保護受給者の就労による自立の促進を図ることを目的として、安定した職業に就いたこと等により、保護を必要としなくなった者に対して、就労自立給付金を支給する制度が創設されることとなったので、本制度の適正かつ有効な実施を図られたく通知する。
なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の9第1項及び第3項の規定による処理基準としたので申し添える。
記
1 趣旨
生活保護から脱却すると、税・社会保険料等の負担が生じるため、こうした点を踏まえ、生活保護を脱却するためのインセンティブを強化するとともに、脱却直後の不安定な生活を支え、再度保護に至ることを防止することが重要である。そのため、被保護者の就労による自立の促進を目的に、安定した職業に就いたこと等により保護を必要としなくなった者に対して就労自立給付金(以下「給付金」という。)を支給する制度を創設するものであること。
2 給付金の周知について
保護の実施機関は、就労支援を実施する被保護者を中心に給付金の周知に努め、就労による保護脱却を働きかけること。
特に、「就労可能な被保護者の就労・自立支援の基本方針について」(平成25年5月16日付け社援発0516第18号当職通知)に基づき、同方針に基づく支援が効果的と思われる者に対しては、保護脱却に至るまで切れ目なく集中的な支援を行い、被保護者の就労による自立を促すことにしており、自立活動確認書を作成する場合など被保護者との面談の機会をとらえて、求職活動を促す就労活動促進費の活用等、就労に向けた切れ目のない支援や給付金の支給を受けられる仕組みについても十分に説明を行い、早期の保護脱却が図られるよう働きかけること。
なお、支援に当たっては、本人の意思を尊重した就労支援を行い、給付金の支給が可能であることをもって保護からの脱却を強制することがないよう留意すること。
3 支給機関
給付金の支給機関は、都道府県知事、市長及び福祉事務所を設置する町村長とすること。
4 支給要件及び支給方法
被保護者であって、(1)から(4)までのいずれかの事由に該当することにより、保護を必要としなくなったと支給機関が認めた場合に、当該被保護者の申請に基づき、7に定める算定方法に基づき算定した給付金を、世帯を単位として一括して支給すること。なお、以上の(1)から(4)までの場合における就業の形態は問わないものであること。(法第55条の4関係)
(1) 世帯員が、安定した職業(おおむね6月以上雇用されることが見込まれ、かつ、最低限度の生活を維持するために必要な収入を得ることができると認められるものをいう。以下において同じ。)に就いたこと。
(2) 世帯員が事業を開始し、おおむね6月以上当該世帯が最低限度の生活を維持するために必要な収入を得ることができると認められること。
(3) 就労による収入を得ている被保護世帯において、就労収入が増加することにより、おおむね6月以上当該世帯が最低限度の生活を維持することができると認められること。
(4) 就労による収入を得ておらず、それ以外の収入を得ている被保護世帯において、当該世帯に属する世帯員が職業(安定した職業を除く。)に就き、就労収入を得ることにより、おおむね6月以上当該世帯が最低限度の生活を維持することができると認められること。
5 給付金の性格等
(1) 給付金は、被保護者が就労により生活保護の受給を受けずに、自らの力で社会生活に適応した生活を営むことができるよう、自立を促進するという目的のために支給するものであり、法における保護金品とは異なるものであること。
(2) 給付金は、安定した職業に就いたこと等により、保護を必要としなくなったと認められる被保護者に対して支給するものであること。そのため、申請は、被保護者が保護の廃止の直前に行うものとし、その支給は、保護の廃止決定時又は廃止後速やかに行うものとすること。ただし、事後において明らかとなった収入を認定したために遡って保護の廃止を決定する場合等、やむを得ない事由があると認めたときはこの限りでないこと。
なお、給付金は保護廃止後の生活に充てることを目的とするものであるから、保護廃止の際の要否判定の対象となる収入ではないことに留意すること。
(3) 給付金は、就労自立に役立てられるべきものであることから、支給を受ける権利は譲り渡すことができないものであること。(法第59条関係)
(4) 給付金の支給を受ける権利は、2年を経過したときは、時効によって消滅するものであること。(法第76条の3関係)
(5) 給付金の支給を受けた日から起算して3年を経過しない被保護者については、保護を必要としなくなったと認められた場合であっても、支給しないこと。
ただし、被保護者が給付金支給の際に就労していた会社等の倒産や事業の廃止などやむを得ない事由(疾病等自己都合による場合を除く。)があると認めたときはこの限りでないこと。
(6) 給付金は、所得税法(昭和40年法律第33号)第34条第1項に規定する一時所得に該当するものであることから、支給の決定の通知に当たってはその旨を教示すること。
6 申請による支給の決定
(1) 支給機関は、氏名及び住所又は居所、保護を必要としなくなった事由等を記載した申請書により支給の申請があったときは、支給要件に該当するかどうかを判断した上で、支給の金額及び方法を決定し、書面をもって通知すること。各種書面の様式の標準は、「生活保護法施行細則準則について」(平成12年3月31日付け社援第871号厚生省社会・援護局長通知)を参照されたい。
なお、当該申請書を作成することができない特別の事情があるときは、この限りでなく、申請者の口頭による陳述を聴取し、必要な措置を採ることで申請書の受理に代えることとすること。
(2) 支給機関は、安定した職業に就いたこと等により保護を必要としなくなる場合は、給付金の申請等について助言するなど、被保護者の申請が確実に行われるよう支援すること。
(3) 支給の決定の通知は、速やかに行うものとし、標準処理期間は、申請のあった日から起算して14日以内とすること。ただし、就労収入の状況の調査に時間を要する等特別な事由がある場合には、これを30日以内に行うこととすること。
なお、この場合には、決定を通知する書面にその理由を明示すること。
7 給付金の算定方法
給付金の支給額は、算定対象期間((1))における各月の就労収入額((2))に対し、10%を乗じて算定した額(1円未満の端数を切り捨て。以下同じ。)に単身世帯は2万円、複数世帯は3万円を加えた額と、上限額((3))とのいずれか低い額とすること。
なお、支給対象世帯において、2人以上の世帯員が就労に伴う収入を得ている場合には、それぞれの者について算定した額を合算し、合算した額と、上限額とのいずれか低い額を支給額とすること。
(1) 算定対象期間
保護を必要としなくなったと認めた日が属する月(保護を必要としなくなったと認められた日が月の初日である場合、その前月)から起算して前6月(当該期間中に法第26条の規定に基づき月の初日から末日までの期間にわたって保護を停止した場合は、当該期間を含まない6月)を算定対象期間とすること。ただし、法第27条第1項の指導又は指示に従わず、又は法第28条第1項の報告をしないなどにより保護を停止した期間については、算定対象期間に含むものであること。
(2) 就労収入額
給付金の支給対象世帯の世帯員について、保護の実施機関が、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日付け厚生省発社第123号厚生事務次官通知)第8によって収入として認定した就労による収入額(以下「収入充当額」という。)とすること。
(3) 支給額の上限額
単身世帯は10万円、複数世帯は15万円とすること。
8 報告
支給機関は、給付金の支給決定を適切に行う等(11において不正受給の徴収金を徴収する場合を含む。)のために必要があるときは、被保護者若しくは被保護者であった者又はこれらの者の雇主その他の関係人に、安定した職業に就いた事実や就労収入の額等必要な事項の報告を求めることができること。(法第55条の6関係)
9 不服申立て
(1) 市町村長がした給付金の支給に関する処分(市町村長が給付金の支給に関する事務の全部又は一部を福祉事務所長等その管理に属する行政庁に委任した場合の当該事務に関する処分を含む。)についての審査請求は、都道府県知事に対して行われるものであること。
また、都道府県知事が給付金の支給に関する事務の全部又は一部を福祉事務所等その管理に属する行政庁に委任した場合の当該事務に関する処分についての審査請求は都道府県知事に、都道府県知事の給付金の支給に関する処分についての審査請求は厚生労働大臣に対して行われるものであること(法第64条関係)
(2) 都道府県知事は、審査請求があったときは、50日以内に当該審査請求に対する裁決をしなければならないこと。
また、都道府県知事の裁決に不服のある者は、厚生労働大臣に対して再審査請求をすることができること。この場合においては、70日以内に当該再審査請求に対する裁決をすること。
なお、支給機関が実施した処分の取消しの訴えは、当該処分に関する裁決を経た後でなければ提起できないものであること。(法第65条第1項、第66条及び第69条関係)
10 費用負担
(1) 都道府県及び市町村は給付金の支給(支給の委託を受けて行うものを含む。)に要する費用(以下「就労自立給付費」という。)を支弁するものであること。
(2) 都道府県は、次の場合において市町村が支弁した就労自立給付費の4分の1を負担するものであること。
① 居住地がないか、又は明らかでない被保護者に支弁したとき。
② 宿所提供施設又は児童福祉法(昭和22年法律第164号)第38条に規定する母子生活支援施設にある被保護者につきこれらの施設の所在する市町村が支弁したとき。
(3) 国は、市町村及び都道府県が支弁した就労自立給付費の4分の3を負担するものであること。(法第70条第5号、第71条第5号、第73条第3号及び第4号並びに第75条第2号関係)
11 不正受給への対応について
不正受給への対応については、「生活保護行政を適正に運営するための手引きについて」(平成18年3月30日付け社援保発第0330001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)のⅣの3費用徴収方法を参照されたい。(法第78条第3項並びに第78条の2第2項及び第3項関係)
12 罰則
(1) 偽りその他不正な手段により給付金の支給を受け、又は他人をして受けさせた者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処するものであること。ただし、刑法(明治40年法律第45号)に正条があるときには、刑法によるものであること。(法第85条第2項関係)
(2) 8の報告を怠り、又は虚偽の報告をした者は30万円以下の罰金に処するものであること。(法第86条関係)
13 附則
(1) 平成26年7月1日(改正法施行期日)から給付金の支給を開始すること。支給機関は、施行日前においても支給要件に該当する者に対して遅延なく支給できるよう、被保護者に対する周知など支給に必要な準備を行うこと。(改正法附則第1条及び第10条関係)
(2) 平成30年10月より前に保護を必要としなくなった世帯が、平成30年10月以降に給付金を申請する場合は、従前の例により、算定対象期間(7(1))における各月の就労収入額(7(2))に対し、その各月に応じた算定率を乗じて算定した額と、上限額(7(3))とのいずれか低い額を支給すること。
(3) (2)の場合における各月に応じた算定率は、保護の廃止に至った就労の収入認定開始月を起算点とし、1月目から3月目までは30%、4月目から6月目までは27%、7月目から9月目までは18%、10月目以後は12%とする。
(4) なお、平成25年12月以前から就労収入の認定を開始している場合は、平成26年1月に就労収入の認定を開始したものとして(2)及び(3)の算定を行うものとすること。