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○養子縁組あっせん事業の指導について〔児童福祉法〕

(平成26年5月1日)

(雇児発0501第3号)

(各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長あて厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)

養子縁組あっせん事業(18歳未満の自己の子を他の者の養子とすることを希望する者(以下「実親」という。)及び養子の養育を希望する者(以下「養親希望者」という。)の相談に応じ、その両者の間にあって、連絡、紹介その他養子縁組(特別養子縁組を含む。以下同じ。)の成立のために必要な媒介的活動(以下「養子縁組あっせん」という。)を反復継続して行う行為をいう。以下同じ。)の指導については、従来より、「養子縁組あっせん事業の指導について」(昭和62年10月31日児発第902号厚生省児童家庭局長通知。以下「旧局長通知」という。)により留意事項をお示ししているところであるが、今般、養子縁組あっせん事業を行う者(以下「事業者」という。)において更に事業運営の透明性の確保や支援の質の向上が図られるよう、事業者に指導する際に留意すべき事項を見直し、より適切な指導が行われるよう下記のとおり示すこととした。同事業を行う者に対して指導を行う場合には、下記の事項に留意し、同事業の適正かつ円滑な運営が図られるよう特段のご配慮を願いたい。

また、これに伴い、旧局長通知は廃止することとする。

なお、この通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言に当たるものである。

第1 養子縁組あっせん事業の指導等の基本的な考え方

児童の権利に関する条約(平成6年条約第2号)においては、同条約第3条第1項において、「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、(中略)児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」と規定されており、また、同条約第21条において、養子縁組の制度について「児童の最善の利益について最大の考慮が払われることを確保するもの」と規定されているところである。これらを踏まえ、「養子制度等の運用について」(平成14年9月5日雇児発第0905004号雇用均等・児童家庭局長通知。以下「養子制度等運用通知」という。)においては、児童福祉における養子制度の意義について、「保護者のない児童又は家庭に恵まれない児童に温かい家庭を与え、かつその児童の養育に法的安定性を与えることにより、児童の健全な育成を図ることである。」と示したところであり、児童の養子縁組は、専ら児童の福祉の観点に立って行われなければならないものである。

児童の養子縁組のあっせんについては、まず、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第34条第1項第8号において、営利を目的として児童の養育をあっせんする行為の禁止について規定されており、また、養子縁組あっせんを業として行う際には、社会福祉法(昭和26年法律第45号)第2条第3項第2号において、「児童の福祉の増進について相談に応ずる事業」に該当し、第2種社会福祉事業としての規制に服することとされているところである。

養子縁組あっせん事業の調査・指導等の実施に当たっては、こうした制度趣旨や法規制を十分に踏まえ、個別の養子縁組あっせんの適切な実施を確保することはもちろんのこと、事業運営に係る透明性の確保や相談・支援の充実に向けた取組など、事業者における質の向上に向けた取組が積極的に図られるように指導することが必要である。

第2 養子縁組あっせんに係る指導の留意事項について

(1) 営利を目的として養子縁組あっせんを行うことは、児童福祉法第34条第1項第8号の規定により厳に禁止されるものであること。ただし、交通、通信等に要する実費又はそれ以下の額を徴収することは差し支えない。

(2) 児童の権利に関する条約第7条第1項では、児童は、「できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する」と規定されており、児童の養子縁組あっせんを行うに当たっては、これを十分に尊重することが必要である。このため、養子縁組あっせんを行う者に対し次の事項について指導を行うこと。

① 養子縁組は、実親が自ら養育することの可能性や養子縁組を行うことによる当該児童の利益等について十分熟慮した上で決定されることが必要であること。

このため、養子縁組あっせんを行う者は、実親が養子縁組に関し意思決定を行う前に、実親に対して、その経済的な問題や子育ての問題を解決するための児童相談所や福祉事務所等からの公的な支援を受けながら自ら養育することができる可能性や、自ら養育しない場合に子の里親委託などの選択肢をとりうる可能性について説明を行うこと。また、これと並行して、養子縁組あっせんを行う者は、必要に応じて、児童相談所等の公的な支援機関に連絡をとるなど、当該実親及び児童に対し、養子縁組の意思決定後も適切な支援が提供されるようにするための措置を講ずること。その上で、実親が自らの子を他の者の養子とすることを希望する場合には、その意思を書面により確認すること。

また、実親が自ら育てる意思を固めた場合においては、養子縁組あっせんを行う者は親族の状況や収入等の養育環境を確認し、児童の安全や健全な育成の観点から支援が必要と認められる場合には、児童相談所や福祉事務所等の関係機関へ連絡するなどの必要な対応をとること。

② 養子縁組に係る実親の同意については、これまでの判例によれば、実親は、原則として養子縁組成立の審判が確定するまで養子縁組の同意を撤回することができることとされており、養子縁組あっせんを行う者は、実親の熟慮や養子縁組の同意の撤回を妨げる行為として次に掲げる行為をしてはならないものであること。

ア 期限までに同意が無ければ養子縁組あっせんを行わないこととして実親に当該期限までに早急に同意するよう求めること

イ 実親に対し養子縁組の同意の撤回を禁止すること

ウ 実親による養子縁組の同意の撤回を困難にすることを目的として、同意の撤回にあたり追加の費用を求めたり、心理的な圧迫を加えたりすること

③ 児童が成長した後、当該児童であった者がその実親の情報や養子縁組あっせんに至った経緯などを問い合わせる場合が想定されるため、実親の情報や養子縁組あっせんに至った経緯などが分かる資料を永年保管すること。

(3) 養親希望者が児童と同居を開始するに当たって、養子縁組あっせんを行う者が実親又は養親希望者に対して住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)の規定に基づく児童の住民票の異動に係る届出の義務について説明するとともに、養親希望者に対して児童福祉法第30条第1項の規定に基づく同居児童の届出の義務についても説明し、これらの届出を行わせることを勧奨するよう指導すること。

(4) 養子縁組あっせんを行うに当たっては、児童の権利に関する条約第21条(b)の規定により、児童は、出身国内において里親若しくは養家に託され又は適切な方法で監護を受けることができない場合には、これに代わる児童の監護の手段として国際的な養子縁組を考慮することが認められるものであり、養子縁組あっせんを行う者はこれに従って養子縁組あっせんをするよう指導すること。

第3 社会福祉事業としての養子縁組あっせん事業の適正な運営に係る指導の留意事項について

(1) 第1にあるように、養子縁組あっせん事業は、社会福祉法第2条第3項第2号に規定する「児童の福祉の増進について相談に応ずる事業」に該当するものである。したがって、事業者は、都道府県知事(指定都市又は中核市にあっては市長。以下同じ。)に対し同法第69条第1項に定める第2種社会福祉事業に係る届出を行わなければならず、都道府県知事はこの旨指導を行うこと。

(2) 社会福祉法第3条において、福祉サービスは、「利用者が心身ともにすこやかに育成され」るように「支援するものとして、良質かつ適切なものでなければならない」とされているところであり、事業者においては、サービスの質の向上に向けた不断の努力が求められるものであること。また、社会福祉法第75条第1項及び第76条には、事業に関する情報提供や利用契約の申込み時における契約内容及びその履行に関する説明の努力義務が定められているところであり、当該事業の運営に関しては透明性の確保が求められていることから、事業者に対し、支援内容や支援を受けるのに必要な費用等について公表するとともに、養親希望者等に対し真摯に説明をするよう指導を行うこと。

(3) 養子縁組あっせん事業は、単に養親希望者へ児童をあっせんすることにとどまらず、実親への相談支援、児童や養親希望者に対する家庭調査、養子縁組あっせんにより新たに親子となった者に対する相談支援、成長した児童に対する養子縁組あっせん後の相談支援等親子に係る一連の支援を行わなければならないものである。こうした養子縁組あっせん事業を適切に実施するため、社会福祉士、児童福祉法第13条第2項に定める児童福祉司となる資格を有する者、医師、保健師、助産師又は看護師である相談員を2名以上配置するよう指導すること。なお、そのうち1名は社会福祉士であることが望ましいこと。

(4) 養子縁組あっせん事業の実施に当たっては、養子制度等運用通知を踏まえ、次に掲げる事項を記載した養子縁組あっせんの実施方法、体制等に関する業務方法書を作成し、これに基づき養子縁組あっせん事業を行うよう指導すること。なお、業務方法書に変更があった場合は、速やかに都道府県知事に当該変更点について報告するよう指導すること。

ア 養子縁組成立前の実親への相談支援

(ア) 実親への相談支援の実施方法

(イ) 実親の意思確認の実施方法

(ウ) 児童の健康状況、家庭環境等の調査方法

イ 養親希望者への対応

(ア) 養親希望者への相談支援の実施方法

(イ) 養親希望者への研修方法

(ウ) 養親希望者の経済状況、健康状況、家庭環境等の調査方法

(エ) 海外在住の養親希望者に係る(ア)から(ウ)までの事項(海外在住の養親希望者への養子縁組あっせんを行う場合に限る。)

ウ 児童と養親希望者のマッチングの実施

(ア) 児童と養親希望者とのマッチングに当たっての検討体制、検討項目

(イ) 国内における監護の可能性についての検討体制、検討項目(海外在住の養親希望者への養子縁組あっせんを行う場合に限る。)

エ マッチング後から養子縁組成立までの相談支援の実施方法

(ア) 養親希望者へ引き渡しまでの間の児童の一時的な養育の実施方法

(イ) 定期的な面接指導その他養子縁組成立までの間の養親希望者及び児童に対する支援の実施

(ウ) 地域の子育て情報の提供

オ 養子縁組成立後の対応

(ア) 定期的な面接指導その他養子縁組成立後の親子に対する支援の実施

(イ) 成長後の児童の出自に対する問い合わせに係る対応方法

(ウ) 児童の出自に係る記録の保管方法

カ 養親希望者等から徴収する金品の取扱い

(ア) 養親希望者等から徴収する金品の範囲、徴収方法、徴収金額の目安等

(イ) 海外の事業者から受け取る金品(海外の養親希望者へ養子縁組あっせんを行う場合に限る。)

キ 養子縁組成立後の実親への相談支援

(ア) 実親への相談支援の実施方法

ク 個人情報の保護その他適切な事業運営のために必要な事項

(5) 事業者に対して調査・指導を行う際には、次の事項について留意すること。

① 養子縁組あっせん事業について社会福祉法第69条第1項の届出が行われる際には、同項に規定する事項のほか、適正な養子縁組のあっせんを確保するため、同法第70条の規定に基づき、次の事項の報告を求めること。

ア 事業者(団体の場合はその役員)の住所、経歴及び資産状況

イ 建物その他の設備の状況

ウ 養子縁組あっせん事業の実務を行う者の氏名、経歴及び勤務形態

エ 業務方法書

オ 養子縁組あっせん事業の収支計画

② 養子縁組あっせん事業については、社会福祉法人、医療法人、特定非営利活動法人、公益社団法人、公益財団法人、一般社団法人又は一般財団法人(以下「社会福祉法人等」という。)により行われることが望ましく、当該事業を行う任意団体、個人等に対しては、社会福祉法人等として事業を行うよう指導すること。また、当該事業の経営に当たっては、児童福祉法第34条第1項第8号の規定に鑑み、営利目的が外形的に疑われるような事業運営(例えば、事業者の代表者等が当該事業に関連した営利法人を開設し、当該営利法人の役職員を兼務すること等)を事業者が行っている場合は、直ちに是正するよう指導すること。

③ 養子縁組あっせん事業の届出をした者は、社会福祉法第69条第2項の規定に基づき、届出事項に変更が生じたときはその旨を都道府県知事に届け出ることになっているが、そのほか、都道府県知事は養子縁組あっせん事業の届出をした者に対して、毎年、事業報告書、収支決算書及び業務方法書の提出を求め、事業内容の把握に努めること。

(6) 養子縁組あっせん事業を行う社会福祉法人の認可については、「社会福祉法人の認可について」(平成12年12月1日障発第890号・社援発第2618号・老発第794号・児発第908号厚生省大臣官房障害保健福祉部長、社会・援護局長、老人保健福祉局長、児童家庭局長連名通知)等に定める事項のほか、少なくとも次の事項に適合するものであることを確認すること。

ア 職員

社会福祉士又は児童福祉法第13条第2項に定める児童福祉司となる資格を有する専任ケースワーカーを2名以上置いていること。

イ 事業

第3(4)に定める養子縁組あっせんの方法に関する業務方法書を作成し、これに基づき養子縁組あっせん事業を行っていること。

ウ 定款の内容

(ア) 養子縁組あっせん事業を行うことが分かるよう明記されていること。

(イ) 業務方法書を作成又は変更する際に都道府県知事の承認を得ることが明記されていること。

(7) 養子縁組成立後の養親及び児童に対する相談支援を適切に実施するため、事業者に対し、第2(2)③に定める記録の保管を行うよう指導を行うほか、養子縁組あっせん事業を廃止する際には、養子縁組あっせんを行ったケースに係る文書を管轄の都道府県(指定都市及び中核市を含む。以下同じ。)に引き継ぐよう指導すること。

また、事業者が養子縁組あっせん事業を廃止する場合については、当該事業者を管轄する都道府県において、当該事業者が実施した養子縁組あっせんに係る文書を引き継ぎ、養親又は児童からの相談支援等が適切にできるよう必要な体制を整備すること。

第4 調査・指導の方法等について

(1) 第3の(5)①又は③による報告等により、適正な養子縁組あっせんが行われていない疑いがある場合には、立入検査を行うなどさらに必要な調査を行うこと。この調査により、適正な養子縁あっせんが行われていないと判断される場合においては、改善すべき点を具体的に指摘して指導すること。

(2) 事業者が社会福祉法第69条第2項の規定に違反して変更を届け出ず、同法第70条の規定による報告の求めに応ぜず、若しくは虚偽の報告をし、同条の規定による当該職員の検査若しくは調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又はその事業に関し不当に営利を図り、若しくは適正な養子縁組あっせんを行わず不当な行為をしたときは、都道府県知事は、同法第72条第1項の規定に基づき、当該事業を経営することを制限し、又はその停止を命ずることができるものであること。

(3) 事業者が社会福祉法第69条第1項の規定に違反して開始を届け出ず、その事業に関し不当に営利を図り、若しくは適正な養子縁組あっせんを行わず不当な行為をしたときは、都道府県知事は、同法第72条第3項の規定に基づき、当該事業を経営することを制限し、又はその停止を命ずることができるものであること。