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○養子縁組あっせん事業を行う者が養子の養育を希望する者等から受け取る金品に係る指導等について〔児童福祉法〕

(平成26年5月1日)

(雇児福発0501第5号)

(各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長あて厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課長通知)

養子縁組あっせん事業(18歳未満の自己の子を他の者の養子とすることを希望する者(以下「実親」という。)及び養子の養育を希望する者(以下「養親希望者」という。)の相談に応じ、その両者の間にあって、連絡、紹介その他養子縁組(特別養子縁組を含む。以下同じ。)の成立のために必要な媒介的活動(以下「養子縁組あっせん」という。)を反復継続して行う行為をいう。以下同じ。)を行う者(以下「事業者」という。)が養親希望者又はその親族(以下「養親希望者等」という。)から受け取る金品に関して、児童福祉法(昭和22年法律第164号)で禁止される営利を目的とした養子縁組あっせんに該当するか否か判断する際には、「養子縁組あっせん事業を行う者が養子の養育を希望する者等から受け取る金品に係る指導等について」(平成18年8月28日雇児福発第0828001号厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課長通知。以下「旧課長通知」という。)により留意事項をお示ししているところである。今般、事業者において更に事業運営の透明性の確保や支援の質の向上が図られるよう、「養子縁組あっせん事業の指導について」(平成26年5月1日雇児発0501第3号厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知。以下「局長通知」という。)を発出したことに伴い、事業者に指導する際に留意すべき事項を見直し、より適切な指導が行われるよう下記のとおり示すこととした。同事業を行う者に対して指導を行う場合には、下記の事項に留意し、同事業の適正かつ円滑な運営が図られるよう特段のご配慮を願いたい。

また、これに伴い、旧課長通知は廃止することとする。

なお、この通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言に当たるものである。

第1 養子縁組あっせん事業の金品の取扱いの指導等の基本的な考え方について

事業者の金品の取扱いの調査・指導を行うに当たっては、局長通知第1にあるとおり、児童の権利に関する条約(平成6年条約第2号)や児童福祉法(昭和22年法律第164号)、社会福祉法(昭和26年法律第45号)の規定の趣旨を十分に踏まえ、事業者において個別の養子縁組あっせんの適切な実施が確保されることはもちろんのこと、事業運営に係る透明性が確保されるよう調査・指導等を行っていくことが必要である。

具体的には、個々の養子縁組あっせんについて、児童福祉法第34条第1項第8号で禁止されている営利を目的として養子縁組あっせんが行われていないかどうか調査・指導等を行うとともに、社会福祉事業として社会福祉法の諸規定により求められている適切な事業運営が行われるよう、調査・指導等を行うことが必要である。

第2 養親希望者等からの金品の授受について

1 営利を目的とした養子縁組あっせん事業の禁止について

営利を目的として行う養子縁組あっせんは、児童福祉法第34条第1項第8号の規定により厳に禁止されるものであること。営利を目的としているかどうかについては、それぞれの事案ごとに事業者が養親希望者等から受け取った金品の額や支払われた状況、趣旨等を踏まえて個別的に判断する必要があるが、判断の際には次の事項を勘案すること。なお、事業者は、当該事業が専ら児童の福祉のために行われるものであり、当該事業の運営に当たっては社会福祉事業としての公益性や透明性を求められていることを十分に理解し、外形的に営利を目的としていると疑われるような事業運営を行ってはならないことに留意すること。

(1) 局長通知の第2(1)にあるように、個別の養子縁組あっせんに関連して、事業者が養親希望者等から受け取ることができるのは「交通、通信等に要する実費又はそれ以下の額」に限られ、それ以外の金品はいかなる名称であっても受け取ることができないものであること。

(2) 「交通、通信等に要する実費」(以下「実費」という。)の範囲はそれぞれの事案ごとに個別的に判断されるものであるが、個別の養子縁組あっせんの実施に当たり実際に要する次に掲げる費用を積算しても差し支えないものであること。

① 個別的に金額の計上が可能な次に掲げる費用については、実際にかかった費用

ア 実親への相談・支援に要した交通及び通信に要した費用(養子縁組が成立したケースについて、当該養子縁組に係る費用に限る。)

イ 養親希望者への研修、家庭調査及び相談・支援の実施、児童の安全確保や家庭調査の実施等の活動(以下「あっせんに係る活動」という。)に要した交通及び通信に要した費用

ウ 出産に要した費用(当該出産を扱う医療機関等が他の一般の分娩の際に請求する額を超えないこととし、実親が出産育児一時金等を利用して支払う場合には当該額を控除した額とすること。)

エ 養親希望者の児童の引き取りまでの間の養育等に要した費用(真に必要な費用に限ることとし、請求額を多くするために引き取りまでの期間を引き延ばすなど不適切な費用の請求はあってはならないこと。)

オ 家庭裁判所への提出書類作成費

カ 文書の翻訳料及びビザ申請書類作成費(国際養子縁組の場合に限る。)

キ 成長後の児童の相談・支援等に必要な養子縁組あっせんに係る文書の保存に要する費用(確実に必要となる費用に限る。)

② 個別的に金額の計上が困難な次に掲げる費用については、前年度の費用や養親希望者等の延べ数を参考に、当該年度の養親希望者等の数の推計により按分する等、適切な方法によってあらかじめ算定した額

ア 実親への相談・支援に要した交通及び通信に要した費用(養子縁組が成立しなかったケースに限る。)

イ 人件費又は物件費等の事業運営に必要な費用(ただし、あっせんに係る活動を実施するのに社会通念上適正な額に限る。)

(3) 養親希望者等に対し、実費以下の額を「養子縁組あっせんに必要な負担金」(以下「負担金」という。)として請求することは差し支えないが、請求にあたっては、次の事項の遵守を求めること。

① 請求する実費の呼称については、「養子縁組あっせんに必要な負担金」とし、請求されている金品がどの実費に充当されるものであるかが容易に理解できるものとするとともに、その内訳をあらかじめ養親希望者等に説明すること

② 実費として積算可能な事業運営に必要と認められる費用については、安定的な事業運営のため真に必要な費用に限定されるものであり、役員報酬や顧問料、過大な人件費等は認められないものであること。また、事業者にあっては、効率的な事業運営を行うことにより、事業運営費の抑制に努めることが望ましいこと

③ 養親希望者等に対して定額の負担金を請求する場合においては、個別の養子縁組あっせんに係る実費の総額を上回ることがないよう、当該負担金の額を設定すること

(4) 養子縁組あっせん終了後の親子に対し実施する相談・支援等に係る費用について、養親又は子に対し、実際にかかる費用を徴収することは差し支えないものであるが、請求にあたっては、(3)の①から③に掲げる事項の遵守を求めること。

2 寄付、会費等の取扱いについて

(1) 寄附金(支援金、謝礼等他の名目のものを含む。以下同じ。)とは、事業の趣旨や目的に賛同してその支援のために提供される金銭、物品その他経済的利益の贈与又は無償の供与を指すものであり、会費とは、目的を同じくする者同士が参集し行う会の開催や運営のために、出席者や会員が払う金銭等を指すものである。これらは任意のものに限られるものであり、個別の養子縁組あっせんに関連して請求され、又は支払われる「負担金」とは厳密に区別して取り扱うことが必要である。このため、寄附金若しくは会費の請求、又は受取りについては、次の事項について遵守するよう指導すること。

① 任意性が損なわれる可能性があることから、養親希望者等から「寄付金」や「会費」等の名目の金品を請求し、又は受け取ってはならず、寄附金又は会費の支払いや支払いの約束を養子縁組あっせんの条件としたり、優先的に養子縁組あっせんを行う条件としないこと。

② あっせんに係る費用と養親希望者等から受け取る金品の取扱いを明確にするため、負担金を「寄附金」や「会費」等の名目で請求しないこと。

(2) 家庭裁判所の審判等により養子縁組が成立し、当該養子縁組あっせんが終了した養親希望者等から寄附金又は会費を請求し、又は受け取る場合においても、請求し、又は受け取る金品が任意のものであることが確実に担保されるよう、次の事項について遵守するよう指導すること。

① 養子縁組成立後の親子への相談・支援や成長後の児童への相談・支援の実施の条件として金品を請求し、又は受け取ってはならないこと。

② 養子縁組成立後の養親が、二人目以降の養子縁組あっせんを希望する場合は、任意性が損なわれる可能性があることから、当該者から金品を請求し、又は受け取ってはならないこと。

3 実親、養子縁組に至らなかった養親希望者等からの金品の授受

事業者が子の実親や、養子縁組に至らなかった養親希望者等に対し、実費、寄附金、会費等の名目により、金品を請求する場合には、養親希望者等から受け取る金品の範囲や留意事項等と同様の取扱いであるので留意すること。

第3 養子縁組あっせん事業における金品の取扱いの透明性の確保について

(1) 社会福祉法第75条第1項及び第76条の規定により、社会福祉事業の経営者は、事業に関する情報提供や利用契約の申込み時における契約内容及びその履行に関する説明に努めることとされていることを踏まえ、事業者に対し、次の事項を指導すること。

① 養親希望者があらかじめ、事業者における負担金等の情報を入手できるよう、負担金の積算方法や金額の目安等を公表すること。

② 個別の養子縁組あっせんに関して養親希望者等から負担金を請求する場合には、当該養親希望者等に対し、かかった費用ごとに明細が記載された書面を示すこと。また、当該養子縁組あっせん終了後、養親希望者等に対して当該養子縁組あっせんにかかった実費及び負担金について書面にて報告すること。なお、事業者は、養親希望者等に対し、実費や負担金について説明することができる旨あらかじめ明示的に伝えるとともに、養親希望者等が実費や負担金についての説明希望を受け付ける窓口をあらかじめ設置の上周知し、説明を求められた場合には、真摯に説明を行うこと。

(2) 事業者に対し、社会福祉法第70条に基づく調査を実施する際に必要な書類として、個別の養子縁組あっせんに係る契約書や当該養親希望者等への請求書、明細が記載された文書、実費の積算の根拠となる領収書その他当該養子縁組あっせんが適正に行われたことが証明できる書類を当該養子縁組あっせん終了後少なくとも5年間は保管するよう指導すること。

第4 事業者の金品の取扱いに係る調査・指導等の留意点について

(1) 社会福祉法第70条に基づき事業者における金品の取扱いが適正になされているかどうかを調査する際には、第3の(2)により事業者に保管するよう求めた契約書や領収書等の書類を活用し、第2に基づき個別の養子縁組あっせんに係る実費の積算や負担金の徴収等の金銭の取扱いが適正になされているかどうか確認するとともに、第3に基づき事業運営に係る透明性が適切に担保されているかどうかを確認すること。

(2) (1)による調査の結果、第2の1(2)に示した実費の範囲を超えて金品を請求又は受領していた場合は、当該請求又は受領に係る金品がいかなる名目のものであっても児童福祉法第34条第1項第8号の「営利を目的として、児童の養育をあっせんする行為」にあたる可能性があること。

(3) また、当該請求が「営利を目的として、児童の養育をあっせんする行為」に当たる場合は、その事業に関し不当に営利を図ったものとして、社会福祉法第69条第1項の届出をした者については同法第72条第1項により、届出をしていない者については同条第3項により、社会福祉事業を経営することを制限し、又はその停止を命ずることができること。