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○医療保護入院者の退院促進に関する措置について

(平成26年1月24日)

(障発0124第2号)

(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)

(公印省略)

今般、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律(平成25年法律第49号)により改正された精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号。以下「法」という。)及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成26年厚生労働省令第4号)により改正された精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行規則(昭和25年厚生省令第31号)が、平成26年4月1日から施行されることに伴い、精神科病院の管理者に医療保護入院者の退院促進に関する措置を講ずる義務が新たに課されることとなった。当該措置の具体的な運用の在り方については下記のとおりであるので、適切な実施に努められるとともに、貴管下市町村並びに関係機関及び関係団体に対して周知徹底方お取り計らい願いたい。

第1 医療保護入院者の退院促進に関する措置の趣旨

医療保護入院者の退院促進に関する措置は、医療保護入院が本人の同意を得ることなく行われる入院であることを踏まえ、本人の人権擁護の観点から可能な限り早期治療・早期退院ができるよう講じるものであること。

第2 退院後生活環境相談員の選任

1 退院後生活環境相談員の責務・役割

(1) 退院後生活環境相談員は、医療保護入院者が可能な限り早期に退院できるよう、個々の医療保護入院者の退院支援のための取組において中心的役割を果たすことが求められること。

(2) 退院に向けた取組に当たっては、医師の指導を受けつつ、多職種連携のための調整を図ることに努めるとともに、行政機関を含む院外の機関との調整に努めること。

(3) 医療保護入院者の支援に当たっては、当該医療保護入院者の意向に十分配慮するとともに、個人情報保護について遺漏なきよう十分留意すること。

(4) 以上の責務・役割を果たすため、退院後生活環境相談員は、その業務に必要な技術及び知識を得て、その資質の向上を図ること。

2 選任及び配置

(1) 退院に向けた相談を行うに当たっては、退院後生活環境相談員と医療保護入院者及びその家族等との間の信頼関係が構築されることが重要であることから、その選任に当たっては、医療保護入院者及び家族等の意向に配慮すること。

(2) 配置の目安としては、退院後生活環境相談員1人につき、概ね50人以下の医療保護入院者を担当すること(常勤換算としての目安)とし、医療保護入院者1人につき1人の退院後生活環境相談員を入院後7日以内に選任すること。兼務の場合等については、この目安を踏まえ、担当する医療保護入院者の人数を決めること。

3 資格

(1) 退院後生活環境相談員として有するべき資格は、

① 精神保健福祉士

② 保健師、看護師、准看護師、作業療法士又は社会福祉士として、精神障害者に関する業務に従事した経験を有する者

③ 3年以上精神障害者及びその家族等との退院後の生活環境についての相談及び指導に関する業務に従事した経験を有する者であって、かつ、厚生労働大臣が定める研修を修了した者(ただし、平成29年3月31日までの間については、研修を修了していなくても、前段の要件を満たしていれば、資格を有することとしてよいこととする。)

のいずれかに該当することであること。

(2) (1)③の厚生労働大臣が定める研修については、別途通知することとしているので、当該通知を参照されたいこと。

4 業務内容

(1) 入院時の業務

新たに医療保護入院者が入院し、退院後生活環境相談員が選任された場合は、当該医療保護入院者及びその家族等に対して以下についての説明を行うこと。

・退院後生活環境相談員として選任されたこと及びその役割

・本人及び家族等の退院促進の措置への関わり(地域援助事業者の紹介を受けることができること。また、本人においては、医療保護入院者退院支援委員会への出席及び退院後の生活環境に関わる者に委員会への出席の要請を行うことができること等)

(2) 退院に向けた相談支援業務

ア 退院後生活環境相談員は、医療保護入院者及びその家族等からの相談に応じるほか、退院に向けた意欲の喚起や具体的な取組の工程の相談等を積極的に行い、退院促進に努めること。

イ 医療保護入院者及びその家族等と相談を行った場合には、当該相談内容について相談記録又は看護記録等に記録をすること。

ウ 退院に向けた相談支援を行うに当たっては、主治医の指導を受けるとともに、その他当該医療保護入院者の治療に関わる者との連携を図ること。

(3) 地域援助事業者等の紹介に関する業務

ア 医療保護入院者及びその家族等から地域援助事業者の紹介の希望があった場合や、当該医療保護入院者との相談の内容から地域援助事業者を紹介すべき場合等に、必要に応じて地域援助事業者を紹介するよう努めること。

イ 地域援助事業者等の地域資源の情報を把握し、収集した情報を整理するよう努めること。

ウ 地域援助事業者に限らず、当該医療保護入院者の退院後の生活環境又は療養環境に関わる者の紹介や、これらの者との連絡調整を行い、退院後の環境調整に努めること。

(4) 医療保護入院者退院支援委員会に関する業務

ア 医療保護入院者退院支援委員会の開催に当たって、開催に向けた調整や運営の中心的役割を果たすこととし、充実した審議が行われるよう努めること。

イ 医療保護入院者退院支援委員会の記録の作成にも積極的に関わることが望ましいこと。

(5) 退院調整に関する業務

医療保護入院者の退院に向け、居住の場の確保等の退院後の環境に係る調整を行うとともに、適宜地域援助事業者等と連携する等、円滑な地域生活への移行を図ること。

(6) その他

定期病状報告の退院に向けた取組欄については、その相談状況等を踏まえて退院後生活環境相談員が記載することが望ましいこと。

5 その他業務

(1) 医療保護入院者が退院する場合において、引き続き任意入院により当該病院に入院するときには、当該医療保護入院者が地域生活へ移行するまでは、継続して退院促進のための取組を行うことが望ましいこと。

(2) 医療保護入院者の退院促進に当たっての退院後生活環境相談員の役割の重要性に鑑み、施行後の選任状況等を踏まえて、退院後生活環境相談員として有するべき資格等の見直しを図ることも考えられるため、留意されたいこと。

第3 地域援助事業者の紹介及び地域援助事業者による相談援助

1 地域援助事業者の紹介の趣旨・目的

地域援助事業者の紹介は、医療保護入院者が退院後に利用する障害福祉サービス及び介護サービスについて退院前から相談し、医療保護入院者が円滑に地域生活に移行することができるよう、精神科病院の管理者の努力義務とされているものであり、必要に応じて紹介を行うよう努めること。

2 紹介の方法

(1) 地域援助事業者の紹介の方法については、書面の交付による紹介に限らず、例えば、面会による紹介(紹介する地域援助事業者の協力が得られる場合に限る。)やインターネット情報を活用しながらの紹介等により、医療保護入院者が地域援助事業者と積極的に相談し、退院に向けて前向きに取り組むことができるよう工夫されたいこと。

(2) 紹介を行う事業者については、必要に応じて当該医療保護入院者の退院先又はその候補となる市町村への照会を行うほか、精神保健福祉センター及び保健所等の知見も活用すること。

3 紹介後の対応

地域援助事業者の紹介を行った場合においては、退院後生活環境相談員を中心として、医療保護入院者と当該地域援助事業者の相談状況を把握し、連絡調整に努めること。

4 地域援助事業者による相談援助

(1) 地域援助事業者は、医療保護入院者が障害福祉サービスや介護サービスを退院後円滑に利用できるよう、当該地域援助事業者の行う特定相談支援事業等の事業やこれらの事業の利用に向けた相談援助を行うこと。

(2) 医療保護入院者との相談に当たっては、退院後生活環境相談員との連携に努め、連絡調整を図ること。

(3) 相談援助を行っている医療保護入院者に係る医療保護入院者退院支援委員会への出席の要請があった場合には、できる限り出席し、退院に向けた情報共有に努めること。

第4 医療保護入院者退院支援委員会の開催

1 医療保護入院者退院支援委員会の趣旨・目的

医療保護入院者退院支援委員会(以下「委員会」という。)は、病院において医療保護入院者の入院の必要性について審議する体制を整備するとともに、入院が必要とされる場合の推定される入院期間を明確化し、退院に向けた取組について審議を行う体制を整備することで、病院関係者の医療保護入院者の退院促進に向けた取組を推進するために設置することとするものであること。

2 対象者

(1) 委員会の審議の対象者は、以下の者であること。

① 在院期間が1年未満の医療保護入院者であって、入院時に入院届に添付する入院診療計画書に記載した推定される入院期間を経過するもの

② 在院期間が1年未満の医療保護入院者であって、委員会の審議で設定された推定される入院期間を経過するもの

③ 在院期間が1年以上の医療保護入院者であって、病院の管理者が委員会での審議が必要と認めるもの

なお、当該推定される入院期間を経過する時期の前後概ね2週間以内に委員会での審議を行うこと。

また、入院時に入院届に添付する入院診療計画書に記載する推定される入院期間については、既に当該医療保護入院者の病状を把握しており、かつ、1年以上の入院期間が見込まれる場合(例えば措置入院の解除後すぐに医療保護入院する場合等)を除き、原則として1年未満の期間を設定すること。

(2) 入院から1年以上の医療保護入院者を委員会での審議の対象者としない場合は、具体的な理由(例えば精神症状が重症であって、かつ、慢性的な症状を呈することにより入院の継続が明らかに必要な病状であること等)を定期病状報告に記載すること。具体的な理由がない場合は、原則として委員会での審議を行うことが望ましいこと。

(3) 既に推定される入院期間経過時点から概ね1ヶ月以内の退院が決まっている場合(入院形態を変更し、継続して任意入院する場合を除く。)については、委員会での審議を行う必要はないこと。

3 出席者

医療保護入院者退院支援委員会の出席者は、以下のとおりとすること。

① 当該医療保護入院者の主治医(主治医が精神保健指定医でない場合は、当該主治医に加え、主治医以外の精神保健指定医が出席すること)

② 看護職員(当該医療保護入院者を担当する看護職員が出席することが望ましい)

③ 当該医療保護入院者について選任された退院後生活環境相談員

④ ①~③以外の病院の管理者が出席を求める当該病院職員

⑤ 当該医療保護入院者本人

⑥ 当該医療保護入院者の家族等

⑦ 地域援助事業者その他の当該精神障害者の退院後の生活環境に関わる者

なお、③が②にも該当する場合は、その双方を兼ねることも可能であるが、その場合には、④の者であって当該医療保護入院者の診療に関わるものを出席させることが望ましいこと。⑤が委員会に出席するのは、当該者が出席を希望する場合とし、⑥及び⑦が委員会に出席するのは、当該医療保護入院者が出席を求めた場合であって、当該出席を求められた者が出席要請に応じるときとすること。

また、⑦としては、入院前に当該医療保護入院者が通院していた診療所や退院後に当該医療保護入院者が診療を受けることを予定する医療機関等も想定されるところであり、当該医療保護入院者に対し退院後生活環境相談員がこれらの者に対し出席を要請しなくてよいか確認する等、当該医療保護入院者の退院後の生活環境を見据えた有意義な審議ができる出席者となるよう努めること。

4 開催方法

(1) 開催方法の例としては、月に1回委員会を開催することとし、当該開催日から前後2週間に推定される入院期間を経過する医療保護入院者を対象として、出席者を審議対象者ごとに入れ替えて開催することが考えられるが、当該病院における医療保護入院者数等の実情に応じて、推定される入院期間の経過する医療保護入院者がいる日に委員会での審議を行うこととする等その他の開催方法でも差し支えないこと。

(2) 開催に当たっては、十分な日時の余裕を持って審議対象となる医療保護入院者に別添様式1(医療保護入院者退院支援委員会開催のお知らせ)の例により通知し、通知を行った旨を診療録に記載すること。当該通知に基づき3中⑥及び⑦に掲げる者に対する出席要請の希望があった場合には、当該希望があった者に対し、以下の内容を通知すること。

・委員会の開催日時及び開催場所

・医療保護入院者本人から出席要請の希望があったこと

・出席が可能であれば委員会に出席されたいこと

・文書による意見提出も可能であること

5 審議内容

委員会においては、以下の3点その他必要な事項を審議すること。

① 医療保護入院者の入院継続の必要性の有無とその理由

② 入院継続が必要な場合の委員会開催時点からの推定される入院期間

③ ②の推定される入院期間における退院に向けた取組

6 審議結果

(1) 委員会における審議の結果については、別添様式2(医療保護入院者退院支援委員会審議記録)に記載して記録するとともに、診療録には委員会の開催日の日付を記録することとすること。

(2) 病院の管理者(大学病院等においては、精神科診療部門の責任者)は、医療保護入院者退院支援委員会の審議状況を確認し、医療保護入院者退院支援委員会審議記録に署名すること。また、審議状況に不十分な点がみられる場合には、適切な指導を行うこと。

(3) 審議終了後できる限り速やかに、審議の結果を本人並びに当該委員会への出席要請を行った3⑥及び⑦に掲げる者に対して別添様式3により通知すること。

(4) 委員会における審議の結果、入院の必要性が認められない場合には、速やかに退院に向けた手続をとること。

(5) 医療保護入院者退院支援委員会審議記録については、定期病状報告の際に、当該報告から直近の審議時のものを定期病状報告書に添付すること。

7 経過措置

平成26年3月31日以前に医療保護入院した者に対しては、病院の管理者が必要と認める場合に限り、委員会を開催することが可能であること。

第5 その他

(1) 本措置は、法令上は医療保護入院者のみを対象として講じる義務が課されているものであるが、その他の入院形態の入院患者の早期退院のためにも有効な措置であることから、任意入院者等の医療保護入院以外の入院形態による入院者にも同様の措置を講じることにより退院促進に努められたいこと。

(2) 本措置は法施行後3年を目途として、施行の状況や精神保健及び精神障害者の福祉を取り巻く環境の変化を勘案して、その在り方について検討し、見直すものであること。

別添様式1

別添様式2

別添様式3