添付一覧
○ブロック共重合体ミセル医薬品の開発に関する厚生労働省/欧州医薬品庁の共同リフレクションペーパー質疑応答集について
(平成26年1月10日)
(事務連絡)
(各都道府県薬務主管課あて厚生労働省医薬食品局審査管理課通知)
標記について、別添のとおり取りまとめましたので、貴管下関係業者に対して周知方お願いします。
ブロック共重合体ミセル医薬品の開発に関する厚生労働省/欧州医薬品庁の共同リフレクションペーパー 質疑応答集
≪全般≫
Q1.わが国と欧米間で「ナノ医薬品」の定義に不一致はないかを明確にして頂きたい。
A1.「ナノ医薬品」、あるいは「ナノメディシン」はこれまで慣用的に用いられてきたこと、また、様々な特性を有する製品が開発されつつある状況下での定義は難しいと考えます。ブロック共重合体ミセル医薬品の評価に関する、本文書内での明文化は不要と考えます。
Q2.ナノ医薬品に関する国際会議の現状と今後の展開について、明確にして頂きたい。
A2.本文書は、ナノ医薬品に関する国際的な規制当局者会議の参加国からの意見も考慮した形で作成されました。引き続き、規制当局者会議において、規制活動や科学的知見についての情報共有が行われております。
なお、本共同文書以外にも、欧州医薬品庁(EMA)は、先発医薬品を参照して開発されたリポソーム製剤のリフレクションペーパーを作成し、鉄ナノ粒子製剤のリフレクションペーパーを作成中です。我が国においては、リポソーム製剤などナノ医薬品の指針作成に資する研究が、厚生労働科学研究や革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用化促進事業において進行中です。
≪適用範囲≫
Q3.「複数の成分を含む」場合の留意点は、本文書に具体的な記載がないため、新たな項を設けるか、今後、関連投稿論文やQ&A集を作成する際に明記するなどの対応をして頂きたい。
A3.本文書において「複数の成分を含む」とは、配合剤(つまり有効成分が複数内包されている事例)を想定した記載ではなく、有効成分や重合体等の複数成分が含まれることを意図しております。
ご指摘の内容については、現時点では開発されておらず本文書の適用範囲外であり、今後の科学的知見の集積を踏まえ検討すべきものと考えます。
Q4.「市販後に関わる事項」には既存薬の用量追加や製造工程変更も含まれると思うが、その際には本文書の原則は参考とすべきではないでしょうか。
A4.本文書は、おおよそ臨床試験の実施を視野に入れた非臨床試験段階から承認申請段階までを想定した文書であるため、「市販後に関わる事項」は本文書の適用範囲外であると考えます。
≪新規試験法について≫
Q5.「新規試験法」の想定事例および検証方法や受け入れの要件などを明示して頂きたい。
今後、関連投稿論文やQ&A集を作成する際に明記するなどの対応をすることも考慮して頂きたい。
A5.本文書はブロック共重合体ミセル医薬品の開発にあたり基本的な考え方を取りまとめたものであり、個別品目毎の事情による対応が必要である試験法については具体的に本文書において示すことは困難と考えます。関連投稿論文で例示するなどの対応をしたいと考えます。
≪品質の特性解析≫
Q6.本文書で「高分子不純物」とはどのような事例を指すのでしょうか。また、不純物プロファイル(例えば、高分子不純物)」とありますが、「不純物」には高分子以外にも、変異原性不純物や重金属なども想定されるものと考えます。
A6.不純物としては、高分子以外の不純物も想定されます。本文書では、ブロック共重合体ミセル製剤に特有の考慮点を中心とした記載となっているため、「(例えば、高分子不純物)」との記載になっております。高分子不純物には、例えばABタイプのブロック共重合体におけるAのみ、またはBのみからなるホモポリマーや、重合度(分子量)が規格値を外れるブロック共重合体、その他合成の過程で生じた、表示の化学構造と異なる不純物など、ミセル製剤の性能に著しく影響を及ぼす高分子を示します。
Q7.ブロック共重合体ミセルにおける「化学構造」とはどのような事例を指すのでしょうか。
A7.ブロック共重合体と有効成分との化学結合や、ミセル形成時に形成される化学結合等を想定しております。これらの化学構造を解析することは、ミセルの分解過程を明らかにする等、品質確保の観点から重要な特性となり得ると考えます。
Q8.表面に結合した有効成分の部分とは何を指すのでしょうか。
A8.ブロック共重合体における表面の定義は困難でありますが、有効成分が外表面に存在している場合や、標的性を付与するための抗体等がミセル表面に結合した場合、その特性解析を検討することを想定しております。
≪生物活性≫
Q9.「ブロック共重合体成分自体(有効成分ではない)が臨床上の有効性や安全性に影響するような生物活性を有している場合・・・」とあるが、「生物活性」の範疇に含まれる内容を例示して頂きたい。
A9.本文書で、「生物活性」とは、タンパク質等の有効成分が有する生物活性、つまり特定の生物学的効果を発揮するための製品の特異的な機能やその程度、との意味合いの他、ブロック共重合体自身が有する「生物活性」との意味合いでも用いられております。
ただし、すべてのブロック共重合体成分に関して「懸念される生物活性を有しない」ことの検証を要件としているわけではございません。このことを示すために「臨床上の有効性や安全性に関わる生物活性」であることが本文中に明記されております。具体的には、臨界会合濃度(cac)が比較的高い特定のブロック共重合体から成るミセルで、解離後のブロック共重合体が、P糖タンパク質などのトランスポーターが有する薬物輸送機能へ影響を与える事例などが報告されております(Valle, JW et al. Invest New Drugs 2011, 29, 1029-1037)。本文書においては、複数個所でブロック共重合体自身が有する「生物活性」に関する記載がされておりますが、意図する内容はいずれも上記に示した通りです。
≪非臨床試験で用いる製剤の規格設定≫
Q10.「予定される臨床使用法」を想定した規格以外にも、非臨床試験で用いる製剤の規格設定は、困難なケースが想定されます。よって、これらに関する留意点などを示して頂きたい。
A10.非臨床試験に用いる製剤の品質についての一般原則は、「ヒト初回投与試験において考慮すべき事項」において、記されているとおりです。
本文書はブロック共重合体ミセル医薬品の開発にあたり基本的な考え方を取りまとめたものであり、個別品目毎の事情による対応が必要である事項については具体的に本文書において示すことは困難と考えます。
≪細胞内取り込み≫
Q11.「エンドサイトーシスによる経路に限定される場合もある」とあるが、「有効成分の細胞への取り込みルートが変化する場合も多い」に変更した方が趣旨が伝わるのではないでしょうか。
A11.ご指摘の通り、細胞内移行のルートにはいくつかございますが、本文では代表例としてエンドサイトーシスによる取り込みについて例示させて頂きました。
≪タンパク質や細胞との相互作用≫
Q12.ブロック共重合体ミセルとタンパク質や細胞(血漿、血清タンパク質又は血液細胞を含む)との相互作用に関する具体的な試験や評価法を例示して頂きたい。
A12.一般に、ナノ医薬品表面におけるタンパク質や細胞との相互作用は、細網内皮系細胞による取り込みと血中滞留性、血中安定性、また補体活性化による免疫学的生体反応など、体内分布、安定性及び安全性に影響する可能性があることが知られております。
具体的な評価法は個々の事例ごとに科学的根拠に基づいて決定すべきであり、関連投稿論文で対応したいと思います。
≪薬物動態≫
Q13.分析法に関して、臓器・組織の総量測定法のバリデーションは血液・血漿あるいは血清のようなフルバリデーションは必要ないと思われます。
A13.有効成分をブロック共重合体ミセル製剤として投与することにより、組織分布が変化することがあるため、安全性や有効性に関わる臓器・組織における総量測定は安全性・有効性確保の観点から参考値以上の重要性を有するものと考えられます。生体試料中薬物濃度分析法のバリデーション等に関する一般的な指針については「医薬品開発における生体試料中薬物濃度分析法のバリデーションに関するガイドライン」(平成25年7月11日付け薬食審査発0711第1号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)、及び同質疑応答集(平成25年7月11日付け厚生労働省医薬食品局審査管理課事務連絡)をご参考にしてください。
Q14.薬物動態評価において「製剤と単独投与させた有効成分を比較する」必要性に関して、既に有効成分(開発中、市販後)単独の非臨床データが充分にあれば、あえて製剤と同一試験において再度評価する価値はないと考えます。省略できるケースを追記して頂きたい。
A14.「製剤と単独投与させた有効成分を比較する」ことが推奨されますが、必須条件とはしておりません。本文書では現時点で適切と考えられる基本的な考え方を示すこととしており、個々のケースに応じて検討すべきと考えます。