添付一覧
○治癒切除不能な膵癌を適応とする併用化学療法(FOLFIRINOX法)の使用に当たっての留意事項について
(平成25年12月20日)
(薬食審査発1220第7号)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)
(公印省略)
オキサリプラチン製剤(販売名:エルプラット点滴静注液50mg、同100mg及び同200mg)、イリノテカン塩酸塩水和物製剤(販売名:カンプト点滴静注40mg及び同100mg並びにトポテシン点滴静注40mg及び同100mg)、フルオロウラシル製剤(販売名:5―FU注250mg及び同1000mg)及びレボホリナートカルシウム製剤(販売名:アイソボリン点滴静注用25mg及び同100mg並びにレボホリナート点滴静注用25mg「ヤクルト」及び同100mg「ヤクルト」)については、本日、これらを併用投与する化学療法(以下「FOLFIRINOX法」という。)による「治癒切除不能な膵癌」の効能又は効果を追加する承認事項一部変更承認を行ったところですが、その使用に当たっては、特に下記の点について留意されるよう、貴管下の医療機関に対して周知をお願いします。
記
FOLFIRINOX法については、イリノテカン塩酸塩水和物の1回投与量が既承認の用量に比べ増量されること等に伴い、骨髄抑制等の重篤な副作用の発現リスクが高まることについて留意をお願いすること。また、FOLFIRINOX法において使用する各薬剤について、今般の承認事項一部変更承認により追加された使用上の注意の警告、効能又は効果及び用法及び用量は以下のとおりであること。なお、その他の使用上の注意等については、各薬剤の添付文書を参照されたいこと。
【警告】
〈イリノテカン塩酸塩水和物〉
1.本剤使用に当たっては、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与を開始すること。
2.本剤の臨床試験において、骨髄機能抑制あるいは下痢に起因したと考えられる死亡例が認められている。本剤の投与は、緊急時に十分に措置できる医療施設及びがん化学療法に十分な経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与し、下記の患者には投与しないなど適応患者の選択を慎重に行うこと。
(1) 骨髄機能抑制のある患者
(2) 感染症を合併している患者
(3) 下痢(水様便)のある患者
(4) 腸管麻痺、腸閉塞のある患者
(5) 間質性肺炎又は肺線維症の患者
(6) 多量の腹水、胸水のある患者
(7) 黄疸のある患者
(8) アタザナビル硫酸塩を投与中の患者(「相互作用」の項参照)
(9) 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
3.本剤を含む小児悪性固形腫瘍に対するがん化学療法は、小児のがん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで実施すること。
4.投与に際しては、骨髄機能抑制、高度な下痢等の重篤な副作用が起こることがあり、ときに致命的な経過をたどることがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能検査、腎機能検査等)を行う等、患者の状態を十分に観察すること。
5.骨髄機能抑制による致命的な副作用の発現を回避するために、特に以下の事項に十分注意すること。
(1) 投与予定日(投与前24時間以内)に末梢血液検査を必ず実施し、結果を確認してから、本剤投与の適否を慎重に判断すること。
(2) 投与予定日の白血球数が3,000/mm3未満又は血小板数が10万/mm3未満(膵癌FOLFIRINOX法においては、2サイクル目以降7.5万/mm3未満)の場合には、本剤の投与を中止又は延期すること。
(3) 投与予定日の白血球数が3,000/mm3以上かつ血小板数が10万/mm3以上(膵癌FOLFIRINOX法においては、2サイクル目以降7.5万/mm3以上)であっても、白血球数又は血小板数が急激な減少傾向にある等、骨髄機能抑制が疑われる場合には、本剤の投与を中止又は延期すること。
なお、本剤使用に当たっては、添付文書を熟読のこと。
(警告の記載が追加されたイリノテカン塩酸塩水和物のみ掲載。下線部追記。)
【効能又は効果】
〈オキサリプラチン、イリノテカン塩酸塩水和物及びフルオロウラシル〉
治癒切除不能な膵癌
〈レボホリナートカルシウム〉
レボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法
治癒切除不能な膵癌に対するフルオロウラシルの抗腫瘍効果の増強
(効能又は効果に関連する使用上の注意)
〈オキサリプラチン、イリノテカン塩酸塩水和物及びフルオロウラシル〉
・患者の病期、全身状態、UGT1A1*遺伝子多型等について、「臨床成績」の項の内容を熟知し、本薬の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
*:イリノテカン塩酸塩水和物の活性代謝物(SN―38)の主な代謝酵素の一分子種である。
・本薬の術後補助化学療法における有効性及び安全性は確立していない。
(関連部分のみ抜粋。)
【用法及び用量】
〈オキサリプラチン〉
他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはオキサリプラチンとして85mg/m2(体表面積)を1日1回静脈内に2時間で点滴投与し、少なくとも13日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
〈イリノテカン塩酸塩水和物〉
イリノテカン塩酸塩水和物として、通常、成人に1日1回、180mg/m2を点滴静注し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとして、投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
〈フルオロウラシル〉
通常、成人にはレボホリナートとして1回200mg/m2(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして400mg/m2(体表面積)を静脈内注射、さらにフルオロウラシルとして2,400mg/m2(体表面積)を46時間持続静注する。これを2週間ごとに繰り返す。なお、年齢、患者の状態等により適宜減量する。
〈レボホリナートカルシウム〉
通常、成人にはレボホリナートとして1回200mg/m2(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして400mg/m2(体表面積)を静脈内注射するとともに、フルオロウラシルとして2,400mg/m2(体表面積)を46時間かけて持続静脈内注射する。これを2週間ごとに繰り返す。
(関連部分のみ抜粋。)
(用法及び用量に関連する使用上の注意)
〈オキサリプラチン、イリノテカン塩酸塩水和物及びフルオロウラシル〉
2サイクル目以降の投与可能条件(投与予定日に確認し、当該条件を満たす状態へ回復するまで投与を延期するとともに、「減量基準」及び「減量時の投与量」を参考に、投与再開時に減量すること。):
種類 |
程度 |
好中球数 |
1,500/mm3以上 |
血小板数 |
75,000/mm3以上 |
減量基準:
前回の投与後にいずれかの程度に該当する副作用が発現した場合は、該当する毎に、以下の減量方法に従って、投与レベルを1レベル減量する(「減量時の投与量」を参考にすること)。また、いずれかの程度に該当する好中球減少又は血小板減少が発現した場合は、以降のフルオロウラシル急速静脈内投与を中止する。
副作用*1 |
程度 |
減量方法 |
好中球減少 |
以下のいずれかの条件を満たす場合: 1) 2サイクル目以降の投与可能条件を満たさず投与を延期 2) 500/mm3未満が7日以上持続 3) 感染症又は下痢を併発し、かつ1,000/mm3未満 4) 発熱性好中球減少症 |
イリノテカン塩酸塩水和物を優先的に減量する。 ただし、イリノテカン塩酸塩水和物の投与レベルがオキサリプラチンより低い場合は、イリノテカン塩酸塩水和物と同じレベルになるまでオキサリプラチンを減量する。 |
下痢 |
発熱(38℃以上)を伴う |
|
Grade 3*2以上 |
フルオロウラシル持続静注を減量する。 |
|
血小板減少 |
以下のいずれかの条件を満たす場合: 1) 2サイクル目以降の投与可能条件を満たさず投与を延期 2) 50,000/mm3未満 |
オキサリプラチンを優先的に減量する。 ただし、オキサリプラチンの投与レベルがイリノテカン塩酸塩水和物より低い場合は、オキサリプラチンと同じレベルになるまでイリノテカン塩酸塩水和物を減量する。 |
総ビリルビン上昇 |
2.0mg/dL超3.0mg/dL以下 |
イリノテカン塩酸塩水和物を120mg/m2に減量する。 |
3.0mg/dL超 |
イリノテカン塩酸塩水和物を90mg/m2に減量する。 |
|
粘膜炎 |
Grade 3*2以上 |
フルオロウラシル持続静注を減量する。 |
手足症候群 |
*1:複数の副作用が発現した場合は、薬剤毎に減量が最大となる基準を適用すること。
*2:CTCAE version 4.0。
減量時の投与量(オキサリプラチン85mg/m2、イリノテカン塩酸塩水和物180mg/m2、フルオロウラシル持続静注2,400mg/m2で投与を開始した場合):
投与レベル |
オキサリプラチン |
イリノテカン塩酸塩水和物 |
フルオロウラシル持続静注 |
-1 |
65mg/m2 |
150mg/m2 |
1,800mg/m2 |
-2 |
50mg/m2 |
120mg/m2 |
1,200mg/m2 |
-3 |
中止 |
中止 |
中止 |
(関連部分のみ抜粋。)