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○海外療養費の不正請求対策等について〔国民健康保険法〕

(平成25年12月6日)

(/保国発1206第1号/保高発1206第1号/)

(都道府県民生主管部(局)国民健康保険主管課(部)長・後期高齢者医療主管課(部)長あて厚生労働省保険局国民健康保険課長・厚生労働省保険局高齢者医療課長通知)

(公印省略)

海外において療養等を受けた場合の費用について、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)第54条及び高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)第77条に基づき支給される療養費(以下「海外療養費」という。)の支給にあたっては、市町村(特別区を含む。)、国民健康保険組合及び後期高齢者医療広域連合(以下「保険者等」という。)において適切な審査の実施に努めていただいているところであるが、先般より、国民健康保険において海外療養費の不正請求事案が複数明らかになっているところであり、こうした不正請求について、今後一層の対策を進めることが必要である。

このため、今般、下記のとおり保険者等における海外療養費の支給申請に対する審査の強化等の対策等を示すこととしたので、内容を了知の上、貴管下保険者等への周知及び指導等について特段の御配慮願いたい。

第1 海外療養費の支給申請に対する審査の強化について

1 海外療養費の支給申請時における確認について

海外療養費の支給申請があった場合には、パスポート等の提示を求めることにより、海外において療養等を受けたとされる被保険者の渡航の事実や、支給申請に係る療養等が当該渡航期間内に行われたものであることを確認すること。

2 海外療養費の支給申請書等の審査について

海外療養費の支給申請書並びにこれに添付することとされている診療内容明細書及び領収明細書(以下「支給申請書等」という。)の審査にあたって、保険者等が必要と認める場合には、(1)~(4)に掲げる取組を行い、当該各取組ごとに掲げる事実等が見受けられるか確認すること。

(1) 支給申請を行う者(以下「申請者」という。)ごと又は海外において療養等を受けたとされる被保険者ごとの、過去の支給申請書等の縦覧点検や、支給申請書等と診療(調剤)報酬明細書との突合の実施

○ 申請者又は療養等を受けたとされる被保険者が同一である申請が多い又は定期的になされていること

○ 海外において、同一の疾病について療養等を受けていることが多いこと

○ 国内において受けた療養等と比較して、海外において受けた療養等が不自然であること

(例:国内において慢性疾患に係る療養等を受けていないにもかかわらず、海外において慢性疾患に係る療養等を受けている場合等)

(2) (1)に掲げるような事実が見受けられる場合等、保険者等が必要と認める場合における、外国語で記載された診療内容明細書又は領収明細書について添付されている翻訳文とは別の翻訳の実施

○ 診療内容明細書又は領収明細書について添付されている翻訳文の内容が、保険者等が別に行った翻訳の内容と著しく乖離していること

○ 診療内容明細書又は領収明細書に記載された言語が明確でなく、翻訳できないこと

(3) 診療内容明細書又は領収明細書の記載の筆跡の確認(過去になされた支給申請に係る診療内容明細書又は領収明細書の記載の筆跡との比較も含む。)

○ 別々の医療機関等や医師等から療養等を受けているとされているにもかかわらず、当該医療機関等や医師等が記載した診療内容明細書又は領収明細書の筆跡が類似していること

(4) 支給申請に係る療養等を受けたとして申請書等に記載されている医療機関等の名称・所在地等の情報に係るインターネット等による確認

○ 療養等を受けたとされる医療機関等の存在が確認できないこと

○ 療養等を受けたとされる医療機関等の所在地等の情報が、申請書等に記載されている当該医療機関等の所在地等の情報と異なっていること

3 海外において療養等を受けた事実等の確認について

(1) 支給申請書等の審査にあたり、2の各取組ごとに掲げた事実等が見受けられた場合には、必要に応じ、療養等を受けたとされる海外の医療機関等に対して、文書等により、支給申請に係る療養等が行われた事実の有無や、行われた療養等の内容を照会すること。

また、医療機関等に対する照会を円滑に行えるよう、支給申請があった場合には、必要に応じ、支給申請書等を当該医療機関等に対して提供することや、当該医療機関等が支給申請に係る療養等の情報を保険者等に提供することについて、申請者等の同意を得るなどの対応を行うこと。

(2) (1)により医療機関等に照会を行った結果、支給申請に係る療養等が行われた事実がなく、又は行われた療養等の内容が支給申請に係る療養等の内容と著しく異なることが確認された場合等、偽りその他不正の行為によって海外療養費の支給を受けようとしたものと認められる場合には、不正請求として不支給決定を行うこと。

第2 海外療養費の不正請求事例への対応について

1 不正請求事例の厚生労働省への報告について

不正請求については、他の保険者等に対しても同様の方法で行われることが考えられることから、不正請求事例に係る情報を各保険者等で共有するため、厚生労働省において当該情報を収集した上、保険者等、都道府県及び地方厚生(支)局に対して情報提供することとしたので、保険者等及び都道府県においては、別紙の方法により、不正請求事例についての報告等をされたいこと。

2 不正請求事例等についての警察との相談・連携について

(1) 次のような場合には、警察本部又は警察署の相談を受理するための総合窓口に対して相談を行うとともに、その後も警察と連携を図り、適宜適切な対応をとること。

① 第1の3(2)により、不正請求として不支給決定を行った場合、又は過去に行った支給決定が不正請求によるものであったことが判明した場合

② 保険者等において、不正請求と認めるには至っていないものの、支給申請や審査の過程で不正請求の疑いがあると判断した場合

(例:第1の1によりパスポート等の提示を求めたにもかかわらず、正当な理由なく申請者がこれを拒んだ場合や、第1の2の各取組ごとに掲げた事実等が見受けられた場合)

(2) (1)による、警察との相談・連携を円滑に行えるよう、支給申請があった場合には、第1の1により提示を求めたパスポート等の写しを取ることや、支給申請時の申請者とのやり取りを記録する等の必要な対応を行うこと。

第3 周知・広報について

海外療養費の不正請求を未然に防止する観点から、保険者等において、支給申請に対して審査を強化する取組を実施していることや、不正請求に対して警察と連携して厳正な対応を行っていることなどを、ポスターやリーフレット、ホームページ等において周知・広報すること。

第4 海外療養費の支給申請に対する審査業務等の委託について

第1の2及び3において示した翻訳業務や、海外の医療機関等に対する照会業務については、必要に応じて、国民健康保険団体連合会や、当該業務について専門的な技術や知見を有する民間会社等へ委託することも検討すること。

(別紙)

不正請求事例の厚生労働省への報告及び情報提供の手順について

1.保険者等から都道府県への報告

保険者等において、不正請求事例が判明した場合は、速やかに、様式1―1(後期高齢者医療広域連合にあっては様式1―2)に必要事項を記載して都道府県に送付するとともに、送付した旨の連絡を行うこと。

なお、必要事項の記載に当たっては、個人名を伏せるなど、個人情報の取扱いに留意すること。

(注) 不正請求事例が判明した場合とは、第1の3(2)により、不正請求として不支給決定を行った場合や、過去に行った支給決定が不正請求によるものであったことが判明した場合とする。

2.都道府県から厚生労働省への報告

都道府県において、保険者等から不正請求事例の報告を受けた場合は、速やかに、様式2―1(後期高齢者医療担当部局にあっては様式2―2)に必要事項を記載して厚生労働省保険局国民健康保険課指導調査係又は高齢者医療課企画法令係に送付するとともに、送付した旨の連絡を行うこと。

3.不正請求事例の情報提供

厚生労働省保険局国民健康保険課又は高齢者医療課において、都道府県から不正請求事例の報告を受けた都度、様式3―1又は様式3―2により各都道府県及び地方厚生(支)局の担当部局に当該事例の情報提供を行うこと。

厚生労働省から当該事例の情報提供を受けた各都道府県は、管下の保険者等に当該事例の情報提供を行うこと。

様式1―1

様式1―2

様式2―1

様式2―2

様式3―1

様式3―2