添付一覧
○健康保険法の第1条(目的規定)等の改正に関するQ&Aについて
(平成25年8月14日)
(事務連絡)
(全国健康保険協会あて厚生労働省保険局保険課通知)
健康保険制度の運営につきましては、平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、健康保険法等の一部を改正する法律(平成25年法律第26号)等については、先般、「健康保険法等の一部を改正する法律等の施行について」(平成25年5月31日保発0531第1号厚生労働省保険局長通知)を発出したところですが、そのうち、平成25年10月1日から施行される健康保険法の第1条(目的規定)等の改正(健康保険と労災保険の適用関係の整理)に係る事務の実施に当たり、別添の通りQ&Aを作成いたしましたのでお送りします。運用に当たって、十分に留意の上、適切にご対応いただくようお願い申し上げます。
<健康保険法第1条(目的規定)等の改正にかかる基本的事項>
【質問1】 健康保険法等の一部を改正する法律(平成25年法律第26号)により、健康保険法の第1条(目的規定)の改正が行われたが、その改正趣旨はどのようなものか。 |
(回答)
○ 現行では、被保険者が副業として行う請負業務中に負傷した場合や、被扶養者が請負業務やインターンシップ中に負傷した場合など、健康保険と労災保険のどちらの給付も受けられないケースがある。
○ 今回の改正趣旨は、こうしたケースに適切に対応するため、広く医療を保障する観点から、労災保険の給付が受けられない場合には、原則として健康保険の給付が受けられることとするものである。
【質問2】 新設された健康保険法第53条の2において、被保険者又はその被扶養者が法人の役員である場合に、その法人の役員としての業務に起因する負傷等が保険給付の対象外とされているが、その趣旨及び「法人の役員として業務」とは何を指すのか。 |
(回答)
(趣旨について)
○ 今回の改正においては、原則として労災保険からの給付が受けられない場合は健康保険の給付を受けられることとした。ただし、法人の役員の業務上の負傷については、使用者側の責めに帰すべきものであるため、労使折半の健康保険から保険給付を行うことは適当でないと考えられる。
○ このため、被保険者等(※)が法人の役員である場合に、その法人の役員としての業務に起因する負傷等については、原則として保険給付の対象外とすることとした。
※ 被保険者のほか、被扶養者も含む。
(法人の役員としての業務について)
○ 「法人の役員としての業務」とは、法人の役員がその法人のために行う業務全般を指し、特段その業務範囲を限定的に解釈するものではない。
(労災保険の特別加入について)
○ なお、中小事業主等(※)については、労災保険に特別加入することによって、業務上に起因する負傷等に対し、労災保険の給付を受けられる場合がある。
※ 以下に定める数の労働者を常時使用する法人の代表者および役員など。
・金融業、保険業、不動産業、小売業:50人以下
・卸売業、サービス業:100人以下
・その他の業種:300人以下
【質問3】 健康保険法第53条の2において、「法人の役員としての業務」のうち、「被保険者の数が5人未満である適用事業所に使用される法人の役員としての業務で厚生労働省令で定めるもの」が除外されているが、その趣旨はどのようなものか。また「厚生労働省令で定めるもの」とは具体的に何か。 |
(回答)
(趣旨について)
○ 平成15年7月1日以降、厚生労働省保険局通知(平成15年7月1日保発0701001号・庁発0701001号等)において、「被保険者が5人未満である適用事業所に所属する法人の代表者等であって、一般の従業員と著しく異ならないような労務に従事している者」については、その者の業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病に関しても、健康保険の保険給付の対象(傷病手当金を除く)としてきたところである。
今回の改正においても、その趣旨を踏まえ、被保険者が5人未満である適用事業所に使用される法人の役員については、その事業の実態を踏まえ、傷病手当金を含めて健康保険の保険給付の対象としたものである。
(厚生労働省令で定めるものについて)
○ 厚生労働省令では、健康保険の給付対象となる業務を「当該法人における従業員(同条に規定する法人の役員以外の者をいう。)が従事する業務と同一であると認められるもの」(厚生労働省令第52条の2)としている。したがって、役員の業務内容が当該法人における従業員が従事する業務と同一であると認められない場合には健康保険の給付対象とならない。
【質問4】 「被保険者の数が5人未満である適用事業所に使用される法人の役員」についての取扱いの法制化に伴い、これまでの取扱いを示してきた「法人の代表者等に対する健康保険の保険給付について」(平成15年7月1日保発0701001号・庁発0701001号等 ※平成16年3月30日保発0330001号等により一部改正)はどうなるのか。 |
(回答)
○ 上記通知については廃止される。よって、被保険者が5人未満である適用事業所に使用される法人の役員が業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病について、傷病手当金は支給しないこととしていたが、この取扱いも廃止され、傷病手当金も保険給付の対象となる。
【質問5】 本改正はいつから適用されるのか。 |
(回答)
○ 平成25年10月1日以降に発生した事故に起因する業務上の事由による負傷等について適用される。
<その他事務取扱等について>
【質問6】 被保険者またはその被扶養者において、業務災害・通勤災害と疑われる事例で健康保険の被保険者証を使用し、または現金給付の申請等が行われた場合、健康保険の保険者は、まずは労災保険への請求を促し、健康保険の給付を留保することができるか。 |
(回答)
○ 労災保険法における業務災害については健康保険の給付の対象外であり、また、労災保険法における通勤災害については労災保険からの給付が優先されるため、まずは労災保険の請求を促し、健康保険の給付を留保することができる。
○ ただし、保険者において、健康保険の給付を留保するに当たっては、関係する医療機関等に連絡を行うなど、十分な配慮を行うこと。
【質問7】 労災保険における審査の結果、業務外であることを理由に不支給となった場合は、原則として健康保険の給付対象となるが、その労災保険の審査結果について、健康保険の保険者はどのような方法で確認することになるのか。 |
(回答)
○ 労災保険の不支給決定通知は請求人本人に対してのみ送付されることから、健康保険の保険者は被保険者又は被扶養者からその結果を確認することとなる。このため、保険者は一定期間経過後(※)に被保険者等に対して連絡を行うなど、十分な配慮を行うこと。
※ 労災保険における負傷の場合の標準的な審査期間:1ヶ月程度
労災保険における疾病の場合の標準的な審査期間:6~8ヶ月程度
(ただし、事案により調査に時間がかかる場合がある。)
○ なお、健康保険の保険者においては、保険給付の時効期間(2年間)を考慮し、労災保険給付の請求が行われている場合であっても、健康保険給付の申請が可能であることを被保険者等に対して周知するなどの十分な配慮を行うこと。
※ 労災保険の請求が行われている場合の健康保険給付申請の取扱いについては、「労災保険給付の請求が行われている場合の健康保険の給付申請の取扱いについて(平成24年6月20日厚生労働省保険局保険課事務連絡)」を参照されたい。
【質問8】 健康保険の保険者においては、どのような事案について「業務災害・通勤災害であることが疑われる」として、被保険者等に対して労災保険への請求を勧奨すべきか。 |
(回答)
○ 「業務災害・通勤災害であることが疑われる」事案とは、次のような事案である。
・ 健康保険の被保険者(法人の役員※1を除く)が、仕事中・通勤※2中に負傷した事案
・ 健康保険の被扶養者が、短時間正社員、パート・アルバイト等の労働者として就労しており、かつ、仕事中・通勤中に負傷した事案
・ 健康保険の被保険者(法人の役員※1を除く)が、疾病にかかり、その原因が仕事にあると思われる事案
・ 契約形態等に関わらず(請負、法人の役員、ボランティア、インターン等)、労働が他人の指揮監督下において行われ※3、報酬が一定時間労務を提供していることの対価と判断される場合に、その仕事中・通勤中に負傷した事案又は疾病にかかりその原因が仕事にあると思われる事案
※1 工場長、部長等を兼務している役員の場合は、労働者と認められることがある(業務災害・通勤災害になることがある)。
※2 「通勤」とは、原則として、労働者が、就業に関し、①住居と就業の場所との間の往復②就業の場所から他の就業の場所への移動③単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいう。
なお、その経路を逸脱し、又はその移動を中断した場合には、逸脱・中断及びそれ以後の移動は、一定の場合を除き「通勤」に該当しない。
※3 仕事の依頼等に対する諾否の自由がなく、業務の内容及び遂行方法について具体的な指揮命令を受け、勤務場所、勤務時間が指定・管理されているなど
【質問9】 業務災害・通勤災害と思われる事案について、労災保険を請求し、その審査が行われている間、患者の医療費の負担はどうなるのか。 |
(回答)
○ 労災保険指定医療機関で診療を受けるかどうかによって扱いが異なる。
<労災保険指定医療機関において診療を受けた場合>
労災保険指定医療機関で業務災害・通勤災害として療養の給付(現物給付)を受けた場合、患者に医療費の負担は生じない。
<労災保険指定医療機関以外において診療を受けた場合>
患者は医療費全額を一旦支払った上で、労災保険に請求することになる。