添付一覧
39 リフトバレー熱
(1) 定義
ブニヤウイルス科フレボウイルス属に属するリフトバレー熱ウイルスによる感染症である。
(2) 臨床的特徴
自然界では、主にヤブカ属の蚊と牛や羊の間で感染環が維持されている。ヒトへの感染は、主に蚊あるいは他の吸血性昆虫の刺咬によるが、動物の血液や他の体液による接触感染もありうる。潜伏期間は2~6日で、発熱、頭痛、筋肉痛、背部痛等のインフルエンザ様症状を呈し、項部硬直、肝機能障害、羞明、嘔吐を呈することもあるが、通常は4~7日で回復する。重症例では網膜炎(0.5~2%)、出血熱(<1%)、脳炎(<1%)を発症することがある。致死率は全体としては1%程度であるが、出血熱を呈した場合には50%にも達する。後遺症としては、網膜炎後の失明が重要である。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からリフトバレー熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、リフトバレー熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、リフトバレー熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、リフトバレー熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、リフトバレー熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、リフトバレー熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
中和試験による抗体の検出 |
血清 |
ELISA法又は蛍光抗体法によるIgM抗体若しくはIgG抗体の検出 |
40 類鼻疽
(1) 定義
類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)による感染症である。
(2) 臨床的特徴
主な感染経路は土壌や地上水との接触感染であるが、粉塵の吸入や飲水などによることもある。潜伏期間は通常3~21日であるが、年余にわたることもある。皮膚病変としてはリンパ節炎をともなう小結節を形成し、発熱を伴うこともある。呼吸器系病変としては気管支炎、肺炎を発症するが、通常は高熱を伴い、胸痛を生じ、乾性咳嗽、あるいは正常喀痰の湿性咳嗽がみられる。HIV感染症、腎不全、糖尿病などの基礎疾患を有する場合には、敗血症性ショックを生じることがある。慢性感染では関節、肺、腹部臓器、リンパ節、骨などに膿瘍を形成する。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から類鼻疽が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、類鼻疽患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、類鼻疽の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、類鼻疽が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、類鼻疽により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、類鼻疽により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
喀痰・咽頭拭い液・膿・皮膚病変組織・血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
41 レジオネラ症
(1) 定義
Legionella属菌(Legionella pneumophilaなど)が原因で起こる感染症である。
(2) 臨床的特徴
在郷軍人病(レジオネラ肺炎)とポンティアック熱が主要な病型である。腹痛、下痢、意識障害、歩行障害などを伴うことがある。臨床症状で他の細菌性肺炎と区別することは困難である。
免疫不全者の場合には、肺炎の劇症化と多臓器不全が起こることがある。
なお、届出上の病型については、肺炎若しくは多臓器不全の認められるものを肺炎型とし、それ以外をポンティアック熱型とする。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からレジオネラ症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、レジオネラ症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、レジオネラ症の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、レジオネラ症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、レジオネラ症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、レジオネラ症により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
肺組織、喀痰、胸水、血液、その他の無菌的部位、気道分泌物 |
蛍光抗体法による病原体の抗原の検出 |
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酵素抗体法又はイムノクロマト法による病原体の抗原の検出 |
尿 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
肺組織、喀痰、胸水、血液、その他の無菌的部位、気道分泌物、尿 |
間接蛍光抗体法又はマイクロプレート凝集反応による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇で、少なくとも1回は128倍以上、又は単一血清で256倍以上) |
血清 |
42 レプトスピラ症
(1) 定義
病原性レプトスピラ(Leptospira interrogansなど)による、多様な症状を示す急性の熱性疾患である。
(2) 臨床的特徴
病原性レプトスピラを保有しているネズミ、イヌ、ウシ、ウマ、ブタなどの尿で汚染された下水や河川、泥などにより経皮的に、時には汚染された飲食物の摂取により経口的にヒトに感染する。
黄疸、出血、腎障害などの症状が見られる。重症型の黄疸出血性レプトスピラ病(ワイル病)と、軽症型の秋季レプトスピラ病やイヌ型レプトスピラ病などがある。
ワイル病は黄疸、出血、蛋白尿を主徴とし、最も重篤である。
潜伏期間は3~14日で、突然の悪寒、戦慄、高熱、筋肉痛、眼球結膜の充血が生じ、4~5病日後、黄疸や出血傾向が増強する場合もある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からレプトスピラ症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、レプトスピラ症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、レプトスピラ症の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、レプトスピラ症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、レプトスピラ症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、レプトスピラ症により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、髄液、尿 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
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顕微鏡下凝集試験法(MAT)による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
血清 |
43 ロッキー山紅斑熱
(1) 定義
紅斑熱群リケッチアに属するロッキー山紅斑熱リケッチア(Rickettsia rickettsii)による感染症である。
(2) 臨床的特徴
自然界ではダニ、げっ歯類、大動物(イヌなど)の間で感染環が維持されている。ヒトへの感染はダニの刺咬による。潜伏期間は3~12日であり、頭痛、全身倦怠感、高熱などで発症する。通常、つつが虫病などでみられるような刺し口は生じない。高熱とほぼ同時に、紅色の斑丘疹が手足などの末梢部から求心性に多発し、部位によっては点状出血を伴う。ときにリンパ節腫脹がみられる。その後、中枢神経系症状、不整脈、乏尿、ショックなどの合併症を呈する。診断・治療の遅れ、高齢者、発疹がみられない、ダニの刺咬歴がある、冬季の発症などでは、致死率が高い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からロッキー山紅斑熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ロッキー山紅斑熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ロッキー山紅斑熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ロッキー山紅斑熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ロッキー山紅斑熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ロッキー山紅斑熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、病理組織 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
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間接蛍光抗体法又はELISA法による抗体の検出(IgM抗体の検出又はペア血清による抗体陽転若しくは抗体価の有意の上昇) |
血清 |
第6 五類感染症
1 アメーバ赤痢
(1) 定義
赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)の感染に起因する疾患で、消化器症状を主症状とするが、それ以外の臓器にも病変を形成する。
(2) 臨床的特徴
病型は腸管アメーバ症と腸管外アメーバ症に大別される。
ア 腸管アメーバ症
下痢、粘血便、しぶり腹、鼓腸、排便時の下腹部痛、不快感などの症状を伴う慢性腸管感染症であり、典型的にはイチゴゼリー状の粘血便を排泄するが、数日から数週間の間隔で増悪と寛解を繰り返すことが多い。潰瘍の好発部位は盲腸から上行結腸にかけてと、S字結腸から直腸にかけての大腸である。まれに肉芽腫性病変が形成されたり、潰瘍部が壊死性に穿孔したりすることもある。
イ 腸管外アメーバ症
多くは腸管部よりアメーバが血行性に転移することによるが、肝膿瘍が最も高頻度にみられる。成人男性に多い。高熱(38~40℃)、季肋部痛、吐き気、嘔吐、体重減少、寝汗、全身倦怠感などを伴う。膿瘍が破裂すると腹膜、胸膜や心外膜にも病変が形成される。その他、皮膚、脳や肺に膿瘍が形成されることがある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からアメーバ赤痢が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、アメーバ赤痢患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、アメーバ赤痢が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、アメーバ赤痢により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
顕微鏡下での病原体の検出 |
便、病変部(大腸粘膜組織、膿瘍液) |
ELISA法による病原体の抗原の検出 |
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PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
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抗体の検出 |
血清 |
2 ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く)
(1) 定義
ウイルス感染を原因とする急性肝炎(B型肝炎、C型肝炎、その他のウイルス性肝炎)である。慢性肝疾患、無症候性キャリア及びこれらの急性増悪例は含まない。
(2) 臨床的特徴
一般に全身倦怠感、感冒様症状、食欲不振、悪感、嘔吐などの症状で急性に発症して、数日後に褐色尿や黄疸を伴うことが多い。発熱、肝機能異常、その他の全身症状を呈する発病後間もない時期には、かぜあるいは急性胃腸炎などと類似した症状を示す。
潜伏期間は、B型肝炎では約3か月間、C型肝炎では2週間から6か月間である。
臨床病型は、黄疸を伴う定型的急性肝炎のほかに、顕性黄疸を示さない無黄疸性肝炎、高度の黄疸を呈する胆汁うっ滞性肝炎、急性肝不全症状を呈する劇症肝炎などに分類される。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からウイルス性肝炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ウイルス性肝炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ウイルス性肝炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ウイルス性肝炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
(ア) B型肝炎
検査方法 |
検査材料 |
IgM HBc抗体の検出(明らかなキャリアからの急性増悪例は含まない) |
血清 |
(イ) C型肝炎
検査方法 |
検査材料 |
抗体陰性で、HCV RNA又はHCVコア抗原の検出 |
血清 |
ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇 |
(ウ) その他のウイルス性肝炎
その他のウイルス性肝炎の届出を行う際には、病原体の名称と、検査方法、検査材料についても届け出る。
ウ その他
ウイルス性肝炎の届出基準を満たすもので、かつ、劇症肝炎となったものについては、届出票の「症状」欄にその旨を記載する。
劇症肝炎については、以下の基準を用いる。
ア 肝炎のうち、症状発現後8週以内に高度の肝機能障害に基づいて肝性昏睡Ⅱ度以上の脳症をきたし、プロトロンビン時間40%以下を示すもの。 イ 発病後10日以内の脳症の発現は急性型、それ以降の発現は亜急性型とする。 |
3 急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く。)
(1) 定義
ウイルスなど種々の病原体の感染による脳実質の感染症である。
炎症所見が明らかではないが、同様の症状を呈する脳症もここには含まれる。
(2) 臨床的特徴
多くは何らかの先行感染を伴い、高熱に続き、意識障害や痙攣が突然出現し、持続する。髄液細胞数が増加しているものを急性脳炎、正常であるものを急性脳症と診断することが多いが、その臨床症状に差はない。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から急性脳炎が疑われ、かつ、(4)の届出のために必要な臨床症状を呈しているため、急性脳炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、急性脳炎が疑われ、かつ、(4)の届出のために必要な臨床症状を呈しているため、急性脳炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状
意識障害を伴って死亡した者、又は意識障害を伴って24時間以上入院した者のうち、以下のうち、少なくとも1つの症状を呈した場合である。
熱性痙攣、代謝疾患、脳血管障害、脳腫瘍、外傷など、明らかに感染性とは異なるものは除外する。
ア 38℃以上の高熱 |
イ 何らかの中枢神経症状 |
ウ 先行感染症状 |
4 クリプトスポリジウム症
(1) 定義
クリプトスポリジウム属原虫(Cryptosporidium spp.)のオーシストを経口摂取することによる感染症である。
(2) 臨床的特徴
潜伏期は4~5日ないし10日程度と考えられ、無症状のものから、食欲不振、嘔吐、腹痛、下痢などを呈するものまで様々である。
患者の免疫力が正常であれば、通常は数日間で自然治癒するが、エイズなどの各種の免疫不全状態にある場合は、重篤な感染を起こすことがあり、1日に3~5リットル、時に10リットルをこえる下痢によって死亡することもある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からクリプトスポリジウム症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、クリプトスポリジウム症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、クリプトスポリジウム症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、クリプトスポリジウム症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
鏡検による原虫(オーシスト)の証明による病原体の検出 |
便 |
酵素抗体法又はイムノクロマト法による病原体抗原の検出 |
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PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
5 クロイツフェルト・ヤコブ病
(1) 定義
クロイツフェルト・ヤコブ病(以下「CJD」という。)に代表されるプリオン病とは、その感染因子が細菌やウイルスと異なり、核酸を持たない異常プリオン蛋白と考えられている伝播可能な致死性疾患である。すべてのプリオン病は中枢神経に異常プリオン蛋白が蓄積することによって発症し、致死性である。長い潜伏期を有する等の共通した特徴があるが、その臨床像は多彩である。
(2) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、症状や所見からクロイツフェルト・ヤコブ病が疑われる者を診察し、かつ、(3)届出に必要な要件を満たすと診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、症状や所見からクロイツフェルト・ヤコブ病が疑われる死体を検案し、かつ、(3)届出に必要な要件を満たし、クロイツフェルト・ヤコブ病により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
(3) 届出に必要な要件
ア 孤発性プリオン病
(ア) 進行性認知症を示し、表1に掲げる疾患等他の疾病を除外できる症例
(イ) ①ミオクローヌス、②錐体路又は錐体外路症状、③小脳症状又は視覚異常、④無動性無言の4項目のうち2項目以上の症状を示す症例
(ウ) 脳波に周期性同期性放電(PSD)を認める症例
(エ) プリオン病に特徴的な病理所見を呈する症例、又はWestern Blot法や免疫染色法で脳に異常なプリオン蛋白を検出し得た症例
・疑い(possible) 上記(ア)、(イ)の両方を満たす症例
・ほぼ確実(probable) 上記(ア)~(ウ)をすべて満たす症例
・確実(definite) 上記(エ)を満たす症例
イ 遺伝性プリオン病
遺伝性プリオン病には、ゲルストマン・ストロイラー・シャインカー病(GSS)及び家族性致死性不眠症(FFI)がある。
(ア) 表2、3に掲げる疾患等の他の疾病を除外できる症例
(イ) 遺伝性プリオン病を示唆する家族歴がある症例
(ウ) 遺伝性プリオン病として臨床所見が矛盾しない症例
(エ) プリオン蛋白遺伝子変異が証明された症例
(オ) プリオン病に特徴的な病理所見を呈する症例、又はWestern Blot法や免疫染色法で脳に異常なプリオン蛋白を検出し得た症例
・疑い(possible) 上記(ア)~(ウ)をすべて満たす症例
・ほぼ確実(probable) 上記(ア)、(ウ)、(エ)をすべて満たす症例
・確実(definite) 上記(エ)、(オ)の両方を満たす症例
ウ 感染性プリオン病
(ア) 医原性CJD
弧発性プリオン病と同様の症状、所見を有する症例のうち、ヒト由来乾燥硬膜移植、ヒト由来角膜移植、ヒト下垂体由来の成長ホルモンやゴナドトロピンの使用等の既往がある症例。診断の確実度は(3) ア弧発性プリオン病と同じ。
(イ) 変異型CJD
Ⅰ
A.進行性精神・神経障害
B.経過が6か月以上
C.一般検査上、他の疾患が除外できる
D.医原性の可能性が低い
E.家族性プリオン病を否定できる
Ⅱ
A.発病初期の精神症状a
B.遷延性の痛みを伴う感覚障害b
C.失調
D.ミオクローヌスか、舞踏運動か、ジストニア
E.認知症
Ⅲ
A.脳波でPSD陰性c(又は脳波が未施行)
B.MRIで両側対称性の視床枕の高信号d
Ⅳ
A.口蓋扁桃生検で異常プリオン陰性e
・確実例:ⅠAと神経病理で確認したものf
・ほぼ確実例:Ⅰ+Ⅱの4/5項目+ⅢA+ⅢB又はⅠ+ⅣA
・疑い例:Ⅰ+Ⅱの4/5項目+ⅢA
Ⅴ 表4に掲げる疾患等の他の疾病を除外できる症例
a抑鬱、不安、無関心、自閉、錯乱
bはっきりとした痛みや異常感覚
c約半数で全般性三相性周期性複合波
d大脳灰白質や深部灰白質と比較して
e口蓋扁桃生検をルーチンに施行したり、孤発性CJDに典型的な脳波所見を認める例に施行することは推奨されないが、臨床症状は矛盾しないが視床枕に高信号を認めない変異型CJD疑い例には有用である。
f大脳と小脳の全体にわたって海綿状変化と広範なプリオン蛋白陽性の花弁状クールー斑
表1.孤発性プリオン病と鑑別を要する疾患 ・アルツハイマー病 ・非定型アルツハイマー病 ・前頭葉・側頭葉型認知症 ・脳血管障害 ・パーキンソン痴呆症候群 ・脊髄小脳変性症 ・認知症を伴う運動ニューロン疾患 ・悪性リンパ腫 ・神経梅毒 ・てんかん ・脳炎、髄膜炎 ・エイズ脳症 ・自己免疫性脳症 ・傍腫瘍性症候群 ・代謝性脳症(ウェルニッケ脳症、甲状腺疾患に伴う脳症、肝不全、腎不全、薬物中毒等) ・低酸素脳症 ・ミトコンドリア脳筋症 ・その他の原因による老年期認知症性疾患(大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、レビー小体病等) ・内因性精神病 ・孤発性プリオン病以外のプリオン病 |
表2.ゲルストマン・ストロイラー・シャインカー病(GSS)と鑑別を要する疾患 ・家族性痙性対麻痺 ・脊髄小脳変性症 ・アルツハイマー病 ・脳血管障害 ・脳炎、髄膜炎 ・自己免疫性脳症 ・傍腫瘍性症候群 ・パーキンソン痴呆症候群 ・認知症を伴う運動ニューロン疾患 ・代謝性脳症(リピドーシス、薬物中毒等) ・ミトコンドリア脳筋症 ・その他の病因による老年期認知症性疾患(進行性核上性麻痺等) ・GSS以外のプリオン病 |
表3.家族性致死性不眠症(FFI)と鑑別を要する疾患 ・視床変性症 ・非定型アルツハイマー病 ・脊髄小脳変性症 ・純粋自律神経不全症(pure autonomic failure) ・シャイ・ドレーガー症候群 ・脳血管障害 ・自己免疫性脳症 ・代謝性脳症(ウェルニッケ脳症等) ・悪性リンパ腫 ・ミトコンドリア脳筋症 ・脳炎、髄膜炎 ・その他の病因による視床症候群 ・その他の病因による老年期認知症性疾患(進行性核上性麻痺、レビー小体病等) ・FFI以外のプリオン病 |
表4.変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)と鑑別を要する疾患 ・内因性精神病 ・視床変性症 ・アルツハイマー病 ・非定型アルツハイマー病 ・脳血管障害 ・自己免疫性脳症 ・代謝性脳症(Wilson病、ウェルニッケ脳症、甲状腺疾患に伴う脳症、薬物中毒、リピドーシス等) ・脳炎、髄膜炎 ・悪性リンパ腫 ・神経梅毒 ・その他の病因による視床症候群 ・変異型CJD以外のプリオン病 |
6 劇症型溶血性レンサ球菌感染症
(1) 定義
β溶血を示すレンサ球菌を原因とし、突発的に発症して急激に進行する敗血症性ショック病態である。
(2) 臨床的特徴
初発症状は咽頭痛、発熱、消化管症状(食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢)、全身倦怠感、低血圧などの敗血症症状、筋痛などであるが、明らかな前駆症状がない場合もある。後発症状としては軟部組織病変、循環不全、呼吸不全、血液凝固異常(DIC)、肝腎症状など多臓器不全を来し、日常生活を営む状態から24時間以内に多臓器不全が完結する程度の進行を示す。A群レンサ球菌等による軟部組織炎、壊死性筋膜炎、上気道炎・肺炎、産褥熱は現在でも致命的となりうる疾患である。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から劇症型溶血性レンサ球菌感染症が疑われ、かつ、(4)の届出に必要な要件を満たすと診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、劇症型溶血性レンサ球菌感染症が疑われ、かつ、(4)の届出に必要な要件を満たし、劇症型溶血性レンサ球菌感染症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
(4) 届出に必要な要件(以下のアの(ア)及び(イ)かつイを満たすもの)
ア 届出のために必要な臨床症状
(ア) ショック症状 (イ) (以下の症状のうち2つ以上) 肝不全、腎不全、急性呼吸窮迫症候群、DIC、軟部組織炎(壊死性筋膜炎を含む)、全身性紅斑性発疹、痙攣・意識消失などの中枢神経症状 |
イ 病原体診断の方法
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
通常無菌的な部位(血液、髄液、胸水、腹水)、生検組織、手術創、壊死軟部組織 |
7 後天性免疫不全症候群
(1) 定義
レトロウイルスの一種であるヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus;HIV)の感染によって免疫不全が生じ、日和見感染症や悪性腫瘍が合併した状態。
(2) 臨床的特徴
HIVに感染した後、CD4陽性リンパ球数が減少し、無症候性の時期(無治療で約10年)を経て、生体が高度の免疫不全症に陥り、日和見感染症や悪性腫瘍が生じてくる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から後天性免疫不全症候群が疑われ、かつ、(4)イの届出に必要な要件を満たすと診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、(4)アの届出に必要な要件を満たすと診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、後天性免疫不全症候群が疑われ、かつ、(4)イの届出に必要な要件により、後天性免疫不全症候群により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
(4) 届出に必要な要件(サーベイランスのためのHIV感染症/AIDS診断基準(厚生労働省エイズ動向委員会、2007)抜粋)
ア HIV感染症の診断(無症候期)
(ア) HIVの抗体スクリーニング検査法(酵素抗体法(ELISA)、粒子凝集法(PA)、免疫クロマトグラフィー法(IC)等)の結果が陽性であって、以下のいずれかが陽性の場合にHIV感染症と診断する。
① 抗体確認検査(Western Blot法、蛍光抗体法(IFA)等)
② HIV抗原検査、ウイルス分離及び核酸診断法(PCR等)等の病原体に関する検査(以下「HIV病原検査」という。)
(イ) ただし、周産期に母親がHIVに感染していたと考えられる生後18か月未満の児の場合は少なくともHIVの抗体スクリーニング法が陽性であり、以下のいずれかを満たす場合にHIV感染症と診断する。
① HIV病原検査が陽性
② 血清免疫グロブリンの高値に加え、リンパ球数の減少、CD4陽性Tリンパ球数の減少、CD4陽性Tリンパ球数/CD8陽性Tリンパ球数比の減少という免疫学的検査所見のいずれかを有する。
イ AIDSの診断
アの基準を満たし、下記の指標疾患(Indicator Disease)の1つ以上が明らかに認められる場合にAIDSと診断する。ただし、(ア)の基準を満たし、下記の指標疾患以外の何らかの症状を認める場合には、その他とする。
指標疾患(Indicator Disease) A.真菌症 1.カンジダ症(食道、気管、気管支、肺) 2.クリプトコッカス症(肺以外) 3.コクシジオイデス症 ①全身に播種したもの ②肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの 4.ヒストプラズマ症 ①全身に播種したもの ②肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの 5.ニューモシスティス肺炎 (注)P. cariniiの分類名がP.jiroveciに変更になった B.原虫症 6.トキソプラズマ脳症(生後1か月以後) 7.クリプトスポリジウム症(1か月以上続く下痢を伴ったもの) 8.イソスポラ症(1か月以上続く下痢を伴ったもの) C.細菌感染症 9.化膿性細菌感染症(13歳未満で、ヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌により以下のいずれかが2年以内に、2つ以上多発あるいは繰り返して起こったもの) ①敗血症、②肺炎、③髄膜炎、④骨関節炎 ⑤中耳・皮膚粘膜以外の部位や深在臓器の膿瘍 10.サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもので、チフス菌によるものを除く) 11.活動性結核(肺結核又は肺外結核)(※) 12.非結核性抗酸菌症 ①全身に播種したもの ②肺、皮膚、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの D.ウイルス感染症 13.サイトメガロウイルス感染症(生後1か月以後で、肝、脾、リンパ節以外) 14.単純ヘルペスウイルス感染症 ①1か月以上持続する粘膜、皮膚の潰瘍を呈するもの ②生後1か月以後で気管支炎、肺炎、食道炎を併発するもの 15.進行性多巣性白質脳症 E.腫瘍 16.カポジ肉腫 17.原発性脳リンパ腫 18.非ホジキンリンパ腫(LSG分類により、①大細胞型(免疫芽球型)、②Burkitt型) 19.浸潤性子宮頚癌(※) F.その他 20.反復性肺炎 21.リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳未満) 22.HIV脳症(認知症又は亜急性脳炎) 23.HIV消耗性症候群(全身衰弱又はスリム病) (※)C11活動性結核のうち肺結核及びE19浸潤性子宮頚癌については、HIVによる免疫不全を示唆する所見がみられる者に限る。 |
8 ジアルジア症
(1) 定義
消化管寄生虫鞭毛虫の一種であるジアルジア(別名ランブル鞭毛虫)(Giardia lamblia.)による原虫感染症である。
(2) 臨床的特徴
糞便中に排出された原虫嚢子により食物や水が汚染されることによって、経口感染を起こす。健康な者の場合には無症状のことも多いが、食欲不振、腹部不快感、下痢(しばしば脂肪性下痢)等の症状を示すこともあり、免疫不全状態では重篤となることもある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からジアルジア症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ジアルジア症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ジアルジア症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ジアルジア症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
顕微鏡下でのジアルジア原虫の証明 |
便、十二指腸液、胆汁 |
酵素抗体法又はイムノクロマト法による病原体抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |