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13 サル痘

(1) 定義

サル痘ウイルス(Monkeypox virus)による急性発疹性疾患である。

(2) 臨床的特徴

げっ歯類やサルなどの野生動物、あるいはそれらから感染したペットに咬まれる、あるいは血液、体液、発疹などに触れることで感染する。ヒトからヒトへの感染はまれではあるが、飛沫による感染、あるいは体液、患者の体液や飛沫で汚染された衣類・寝具などとの接触による感染がありうる。潜伏期間は7~21日(大部分は10~14日)である。発熱、不快感、頭痛、背部痛、発疹など、痘そうとよく似た症状がみられるが、局所リンパ節の腫脹がある。致死率は低い。

(3) 届出基準

ア 患者(確定例)

医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からサル痘が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、サル痘患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

イ 無症状病原体保有者

医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、サル痘の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

ウ 感染症死亡者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、サル痘が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、サル痘により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

エ 感染症死亡疑い者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、サル痘により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

検査方法

検査材料

分離・同定による病原体の検出

水疱、膿疱、血液、リンパ節

ウイルス粒子の直接観察(電子顕微鏡)による病原体の検出(確定例からの二次感染時又は感染動物からの感染が強く疑われる場合)

蛍光抗体法による病原体の抗原の検出

PCR法による病原体の遺伝子の検出

14 重症熱性血小板減少症候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る。)

(1) 定義

ブニヤウイルス科フレボウイルス属の重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS)ウイルスによる感染症である。

(2) 臨床的特徴

主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺咬されることで感染する。

潜伏期間は6~14日。発熱、消化器症状(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)を主徴とし、時に、頭痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、出血症状などを伴う。血液所見では、血小板減少(10万/mm3未満)、白血球減少(4000/mm3未満)、血清酵素(AST、ALT、LDH)の上昇が認められる。致死率は10~30%程度である。

(3) 届出基準

ア 患者(確定例)

医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から重症熱性血小板減少症候群が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、重症熱性血小板減少症候群患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

イ 無症状病原体保有者

医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、重症熱性血小板減少症候群の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

ウ 感染症死亡者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、重症熱性血小板減少症候群が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、重症熱性血小板減少症候群により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

エ 感染症死亡疑い者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、重症熱性血小板減少症候群により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

検査方法

検査材料

分離・同定による病原体の検出

血液、血清、咽頭拭い液、尿

PCR法による病原体の遺伝子の検出

ELISA法又は蛍光抗体法による抗体の検出(IgM抗体の検出又はペア血清による抗体陽転若しくは抗体価の有意の上昇)

血清

中和試験による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇)

15 腎症候性出血熱

(1) 定義

ハンタウイルス(ブニヤウイルス科ハンタウイルス属)による熱性・腎性疾患である。

(2) 臨床的特徴

主にネズミの排泄物に接触(エアロゾルの吸入を含む)することにより、ヒトにウイルスが伝播する。このウイルスはヒトに感染すると状況により重篤な全身感染、あるいは腎疾患を生じ、以下の型が知られている。

ア 重症アジア型

ドブネズミ、高麗セスジネズミが媒介する。潜伏期間は10~30日で、発熱で始まる有熱期、低血圧期(ショック)(4~10日)、乏尿期(8~13日)、利尿期(10~28日)、回復期に分けられる。全身皮膚に点状出血が出ることがある。発症から死亡までの時間は4~28日で、尿素窒素は50~300mg/dlに達する。常時高度の蛋白尿、血尿を伴う。

イ 軽症スカンジナビア型

ヤチネズミによる。ごく軽度の発熱、蛋白尿、血尿がみられるのみで、極めてまれに重症化する。

(3) 届出基準

ア 患者(確定例)

医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から腎症候性出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、腎症候性出血熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

イ 無症状病原体保有者

医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、腎症候性出血熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

ウ 感染症死亡者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、腎症候性出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、腎症候性出血熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

エ 感染症死亡疑い者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、腎症候性出血熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

検査方法

検査材料

分離・同定による病原体の検出

血液、尿(急性期)

PCR法による病原体の遺伝子の検出(白血球を用いる)

ELISA法又は間接蛍光抗体法によるIgM抗体若しくはIgG抗体の検出

血清

16 西部ウマ脳炎

(1) 定義

トガウイルス科アルファウイルス属に属する西部ウマ脳炎ウイルスによる感染症である。

(2) 臨床的特徴

自然界では、イエカと鳥の間で感染環が維持されている。ヒトへの感染もイエカの刺咬による。潜伏期間は5~10日であり、頭痛、発熱、情緒不安、振戦、易興奮性、項部硬直、羞明、ときに異常な精神状態などがみられる。脳炎を生じると意識障害、弛緩性/痙性麻痺がみられる。特に乳児では急速な経過を取り、固縮、痙攣、泉門膨隆などがみられ、生残者の60%以上で脳に障害を残し、進行性の知能発育不全をきたす。年長になるほど回復は早く、通常は5~10日で回復する。

(3) 届出基準

ア 患者(確定例)

医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から西部ウマ脳炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、西部ウマ脳炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

イ 無症状病原体保有者

医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、西部ウマ脳炎の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

ウ 感染症死亡者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、西部ウマ脳炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、西部ウマ脳炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

エ 感染症死亡疑い者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、西部ウマ脳炎により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

検査方法

検査材料

分離・同定による病原体の検出

血液、髄液

PCR法による病原体の遺伝子の検出

IgM抗体の検出

中和試験による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇)

血清

17 ダニ媒介脳炎

(1) 定義

フラビウイルス科フラビウイルス属に属するダニ媒介脳炎ウイルスによる感染症であり、中央ヨーロッパダニ媒介脳炎とロシア春夏脳炎の2型に分けられる。

(2) 臨床的特徴

自然界ではマダニとげっ歯類との間に感染環が維持されているが、マダニでは経卵伝播もありうる。ヒトへの感染は主にマダニの刺咬によるが、ヤギの乳の飲用によることもある。潜伏期間は通常7~14日である。中央ヨーロッパ型では、発熱、筋肉痛などのインフルエンザ様症状が出現し、2~4日間続く。症例の三分の一では、その後数日経って第Ⅱ期に入り、髄膜脳炎を生じて痙攣、眩暈、知覚異常などを呈する。致死率は1~2%であるが、神経学的後遺症が10~20%にみられる。ロシア春夏脳炎では、突然に高度の頭痛、発熱、悪心、羞明などで発症し、その後順調に回復する例もあるが、他では髄膜脳炎に進展し、項部硬直、痙攣、精神症状、頚部や上肢の弛緩性麻痺などがみられる。致死率は20%に上り、生残者の30~40%では神経学的後遺症を来たす。

(3) 届出基準

ア 患者(確定例)

医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からダニ媒介脳炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ダニ媒介脳炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

イ 無症状病原体保有者

医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ダニ媒介脳炎の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

ウ 感染症死亡者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ダニ媒介脳炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ダニ媒介脳炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

エ 感染症死亡疑い者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ダニ媒介脳炎により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

検査方法

検査材料

分離・同定による病原体の検出

血液、髄液

PCR法による病原体の遺伝子の検出

IgM抗体の検出

中和試験による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇)

血清

18 炭疽

(1) 定義

本症は炭疽菌(Bacillus anthracis)によるヒトと動物の感染症である。

(2) 臨床的特徴

ヒト炭疽には4つの主要な病型がある。

ア 皮膚炭疽

全体の95~98%を占める。潜伏期は1~7日である。初期病変はニキビや虫さされ様で、かゆみを伴うことがある。初期病変周囲には水疱が形成され、次第に典型的な黒色の痂皮となる。およそ80%の患者では痂皮の形成後7~10日で治癒するが、20%では感染はリンパ節及び血液へと進展し、敗血症を発症して致死的である。

イ 肺炭疽

上部気道の感染で始まる初期段階はインフルエンザ等のウイルス性呼吸器感染や軽度の気管支肺炎に酷似しており、軽度の発熱、全身倦怠感、筋肉痛等を訴える。数日して第2の段階へ移行すると突然呼吸困難、発汗及びチアノーゼを呈する。この段階に達すると通常、24時間以内に死亡する。

ウ 腸炭疽

本症で死亡した動物の肉を摂食した後2~5日で発症する。腸病変部は回腸下部及び盲腸に多い。初期症状として悪心、嘔吐、食欲不振、発熱があり、次いで腹痛、吐血を呈し、血液性の下痢を呈する場合もある。毒血症へと移行すると、ショック、チアノーゼを呈し死亡する。腸炭疽の致死率は25~50%とされる。

エ 髄膜炭疽

皮膚炭疽の約5%、肺炭疽の2/3に引き続いて起こるが、まれに初感染の髄膜炭疽もある。髄膜炭疽は治療を行っても、発症後2~4日で100%が死亡する。

(3) 届出基準

ア 患者(確定例)

医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から炭疽が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、炭疽患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

イ 無症状病原体保有者

医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、炭疽の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

ウ 感染症死亡者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、炭疽が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、炭疽により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

エ 感染症死亡疑い者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、炭疽により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

検査方法

検査材料

分離・同定による病原体の検出

病巣組織、血液、髄液、胸水、皮膚病変部

PCR法による病原体の遺伝子の検出

19 チクングニア熱

(1) 定義

トガウイルス科アルファウイルス属に属するチクングニアウイルスによる感染症である。

(2) 臨床的特徴

チクングニアウイルスを保有するヤブカ属のネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどに刺されることで感染する。潜伏期間は3~12日(通常3~7日)で、患者の大多数は急性熱性疾患の症状を呈する。発熱と関節痛は必発であり、発疹は8割程度に認められる。関節痛は四肢(遠位)に強く対称性で、その頻度は手首、足首、指趾、膝、肘、肩の順であり、関節の炎症や腫脹を伴う場合もある。関節痛は急性症状が軽快した後も、数週間から数ヶ月にわたって続く場合がある。その他の症状としては、全身倦怠感・頭痛・筋肉痛・リンパ節腫脹である。血液所見では、リンパ球減少、血小板減少が認められる。重症例では神経症状(脳症)や劇症肝炎が報告されている。アフリカ、インド洋島嶼国、インド、東南アジアの熱帯・亜熱帯地域を中心として流行がみられている。

(3) 届出基準

ア 患者(確定例)

医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からチクングニア熱が疑われ、かつ、エの次に掲げる表の左欄に掲げる検査方法により、チクングニア熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

イ 無症状病原体保有者

医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、チクングニア熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

ウ 感染症死亡者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、チクングニア熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、チクングニア熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

エ 感染症死亡疑い者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、チクングニア熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

検査方法

検査材料

分離・同定による病原体の検出

血液

PCR法による病原体の遺伝子の検出

IgM抗体の検出

血清

ELISA法(IgG抗体)、中和試験又は赤血球凝集阻止法による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇)

20 つつが虫病

(1) 定義

つつが虫病リケッチア(Orientia tsutsugamushi)による感染症である。

(2) 臨床的特徴

つつが虫病リケッチアを保有するツツガムシに刺されて5~14日の潜伏期の後に、全身倦怠感、食欲不振とともに頭痛、悪寒、発熱などを伴って発症する。体温は段階的に上昇し数日で40℃にも達する。刺し口は皮膚の柔らかい隠れた部分に多い。刺し口の所属リンパ節は発熱する前頃から次第に腫脹する。第3~4病日より不定型の発疹が出現するが、発疹は顔面、体幹に多く四肢には少ない。テトラサイクリン系の有効な抗菌薬による治療が適切に行われると劇的に症状の改善がみられる。重症になると肺炎や脳炎症状を来す。北海道、沖縄など一部の地域を除いて全国で発生がみられる。

発生時期は春~初夏及び晩秋から冬であるが、媒介ツツガムシの生息地域によって異なる。

(3) 届出基準

ア 患者(確定例)

医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からつつが虫病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、つつが虫病患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

イ 無症状病原体保有者

医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、つつが虫病の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

ウ 感染症死亡者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、つつが虫病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、つつが虫病により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

エ 感染症死亡疑い者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、つつが虫病により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

検査方法

検査材料

分離・同定による病原体の検出

血液、病理組織

PCR法による病原体の遺伝子の検出

間接蛍光抗体法又は間接免疫ペルオキシダーゼ法による抗体の検出(IgM抗体の検出又はペア血清による抗体陽転若しくは抗体価の有意の上昇)

血清

21 デング熱

(1) 定義

フラビウイルス科に属するデングウイルス感染症である。

(2) 臨床的特徴

2~15日(多くは3~7日)の潜伏期の後に突然の高熱で発症する。頭痛、眼窩痛、顔面紅潮、結膜充血を伴う。発熱は2~7日間持続する(二峰性であることが多い)。初期症状に続いて全身の筋肉痛、骨関節痛、全身倦怠感を呈する。発症後3~4日後胸部、体幹からはじまる発疹が出現し、四肢、顔面へ広がる。症状は1週間程度で回復する。血液所見では高度の白血球減少、血小板減少がみられる。出血やショック症状を伴う重症型としてデング出血熱(※)があり、全身管理が必要となることもある。ヒトからヒトへの直接感染はないが、熱帯・亜熱帯(特にアジア、オセアニア、中南米)に広く分布する。日本国内での感染はないが、海外で感染した人が国内で発症することがある。

(※) デング出血熱:デング熱とほぼ同様に発症経過するが、解熱の時期に血漿漏出や血小板減少による出血傾向に基づく症状が出現し、死に至ることもある。

(3) 届出基準

ア 患者(確定例)

医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からデング熱が疑われ、かつ、エの次に掲げる表の左欄に掲げる検査方法により、デング熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

下記の4つの基準を全て満たした場合にはデング出血熱として届け出ること。

項目

内容

臨床症状

2~7日持続する発熱(時に二峰性のパターンをとる)

血管透過性の亢進

以下の血漿漏出症状のうち1つ以上

・ ヘマトクリットの上昇(補液なしで同性、同年代の者に比べ20%以上の上昇)

・ ショック症状の存在

・ 血清蛋白の低下あるいは、胸水又は腹水の存在

血小板の減少

100,000/mm3以下

出血傾向

以下の出血傾向のうち1つ以上

・ Tourniquetテスト陽性

・ 点状出血、斑状出血あるいは紫斑

・ 粘膜あるいは消化管出血、あるいは注射部位や他の部位からの出血

・ 血便

イ 無症状病原体保有者

医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、デング熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

ウ 感染症死亡者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、デング熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、デング熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

エ 感染症死亡疑い者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、デング熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

検査方法

検査材料

分離・同定による病原体の検出

血液

PCR法による病原体の遺伝子の検出

非構造蛋白抗原(NS1)の検出

血清

IgM抗体の検出

中和試験又は赤血球凝集阻止法による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇)

22 東部ウマ脳炎

(1) 定義

トガウイルス科アルファウイルス属に属する東部ウマ脳炎ウイルスによる感染症である。

(2) 臨床的特徴

自然界では蚊と鳥の間で感染環が維持されており、鳥への媒介蚊は主にハボシカ属の蚊であるが、キンイロヤブカなども関係する。ヒトへの感染は主にヤブカの刺咬による。潜伏期間は3~10日であり、高熱、悪寒、倦怠感、筋肉痛などを生じるが、1~2週間で回復することが多い。しかし、ときには脳炎を発症して、昏睡、死亡に至ることがある。脳炎は50歳以上や15歳以下で起こりやすく、致死率は33%にも上り、生残者の半数は軽度~高度の永続的な神経学的後遺症を残す。

(3) 届出基準

ア 患者(確定例)

医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から東部ウマ脳炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、東部ウマ脳炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

イ 無症状病原体保有者

医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、東部ウマ脳炎の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

ウ 感染症死亡者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、東部ウマ脳炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、東部ウマ脳炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

エ 感染症死亡疑い者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、東部ウマ脳炎により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

検査方法

検査材料

分離・同定による病原体の検出

血液、髄液

PCR法による病原体の遺伝子の検出

IgM抗体の検出

中和試験による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇)

血清

23 鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く。)

(1) 定義

トリに対して感染性を示すA型インフルエンザウイルス(H5N1及びH7N9亜型を除く。)のヒトへの感染症である。

(2) 臨床的特徴

鳥インフルエンザウイルスに感染した家禽などからヒトへウイルスが感染することがごくまれに起こる。H5、H7、H9亜型ウイルスのヒトへの感染が報告されており、1997年の香港でのA/H5N1、2003年オランダでのA/H7N7による事例では、ヒトからヒトへの感染伝播も起こったと報告されている。

鳥インフルエンザウイルスのH5、H7亜型の感染例では、潜伏期間は通常のインフルエンザと同じく1~3日と考えられており、症状は突然の高熱、咳などの呼吸器症状の他、下痢、重篤な肺炎、多臓器不全などの全身症状を引き起こす重症例もある。

A/H7N7亜型ウイルスの感染では結膜炎を起こした例が多い。

香港などで数例報告されているA/H9N2亜型ウイルスによる感染では、発熱、咳等の通常のインフルエンザ様症状を呈したと報告されている。

(3) 届出基準

ア 患者(確定例)

医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く。)が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く。)患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

イ 無症状病原体保有者

医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く。)の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

ウ 感染症死亡者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く。)が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く。)により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

エ 感染症死亡疑い者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、鳥インフルエンザにより(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く。)死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

検査方法

検査材料

分離・同定による病原体の検出

咽頭拭い液、肺胞洗浄液、剖検材料、鼻腔吸引液、鼻腔拭い液

検体から直接のPCR法による病原体の遺伝子の検出

中和試験による抗体の検出

血清

24 ニパウイルス感染症

(1) 定義

ニパウイルスによる感染症である。

(2) 臨床的特徴

感染経路は感染動物(主にブタ)の体液や組織との接触によると考えられている。通常、発熱と筋肉痛などのインフルエンザ様症状を呈し、その一部が意識障害、痙攣などを伴い、脳炎を発症する。

(3) 届出基準

ア 患者(確定例)

医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からニパウイルス感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ニパウイルス感染症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

イ 無症状病原体保有者

医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ニパウイルス感染症の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

ウ 感染症死亡者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ニパウイルス感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ニパウイルス感染症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

エ 感染症死亡疑い者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ニパウイルス感染症により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

検査方法

検査材料

分離・同定による病原体の検出

髄液(急性期)、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、尿、病理組織

免疫染色による病原体の抗原の検出

PCR法による病原体の遺伝子の検出(剖検例は中枢神経系組織からも検出される)

ELISA法又は中和試験による抗体の検出(IgM抗体の検出(ELISA法のみ)又はペア血清による抗体陽転若しくは抗体価の有意の上昇)

血清

25 日本紅斑熱

(1) 定義

日本紅斑熱リケッチア(Rickettsia japonica)による感染症である。

(2) 臨床的特徴

日本紅斑熱リケッチアを保有するマダニ(キチマダニ、フタトゲチマダニなど)に刺されることで感染する。刺されてから2~8日頃から頭痛、全身倦怠感、高熱などを伴って発症する。刺し口を見つけることは診断の助けとなる。高熱とほぼ同時に紅色の斑丘疹が手足など末梢部から求心性に多発する。リンパ節腫脹はあまりみられない。CRP陽性、白血球減少、血小板減少、肝機能異常などはつつが虫病と同様であるが、つつが虫病に比べDICなど重症化しやすい。

(3) 届出基準

ア 患者(確定例)

医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から日本紅斑熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、日本紅斑熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

イ 無症状病原体保有者

医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、日本紅斑熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

ウ 感染症死亡者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、日本紅斑熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、日本紅斑熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

エ 感染症死亡疑い者の死体

医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、日本紅斑熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。