添付一覧
4 腸チフス
(1) 定義
チフス菌(Salmonella serovar Typhi)の感染による全身性疾患である。
(2) 臨床的特徴
潜伏期間は7~14日で発熱を伴って発症する。
患者、保菌者の便と尿が感染源となる。
39℃を超える高熱が1週間以上も続き、比較的徐脈、バラ疹、脾腫、下痢などの症状を呈し、腸出血、腸穿孔を起こすこともある。
重症例では意識障害や難聴が起きることもある。無症状病原体保有者はほとんどが胆嚢内保菌者であり、胆石保有者や慢性胆嚢炎に合併することが多く、永続保菌者となることが多い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から腸チフスが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、腸チフス患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
鑑別を必要とする疾患は、パラチフス、マラリア、デング熱、A型肝炎、つつが虫病、チクングニア熱である。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、腸チフスの無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、腸チフスが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、腸チフスにより死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、腸チフスにより死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、骨髄液、便、尿、胆汁 |
5 パラチフス
(1) 定義
パラチフスA菌(Salmonella serovar Paratyphi A)の感染によって起こる全身性疾患である(Salmonella Paratyphi B、 Salmonella Paratyphi Cによる感染症はパラチフスから除外され、サルモネラ症として取り扱われる)。
(2) 臨床的特徴
臨床的症状は、腸チフスに類似する。7~14日の潜伏期間の後に38℃以上の高熱が続く。比較的徐脈、脾腫、便秘、時には下痢等の症状を呈する。症状は腸チフスと比較して、軽症の場合が多い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からパラチフスが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、パラチフス患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
鑑別を必要とする疾患は、腸チフス、マラリア、デング熱、A型肝炎、つつが虫病、チクングニア熱である。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、パラチフスの無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、パラチフスが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、パラチフスにより死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、パラチフスにより死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、骨髄液、便、尿、胆汁 |
第5 四類感染症
1 E型肝炎
(1) 定義
E型肝炎ウイルスによる急性ウイルス性肝炎である。
(2) 臨床的特徴
途上国では主に水系感染であるが、我が国では汚染された食品や動物の臓器や肉の生食による経口感染が指摘されている。潜伏期間はA型肝炎より長く、平均6週間といわれている。臨床症状はA型肝炎と類似しており、予後も通常はA型肝炎と同程度で、慢性化することはない。しかし、妊婦(第3三半期)に感染すると劇症化しやすく、致死率も高く20%に達することもある。特異的な治療法はなく、対症療法が中心となる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からE型肝炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、E型肝炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、E型肝炎の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、E型肝炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、E型肝炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、E型肝炎により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
血液・便 |
IgM抗体若しくはIgA抗体の検出 |
血清 |
2 ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎含む)
(1) 定義
フラビウイルス科に属するウエストナイルウイルスによる感染症で、蚊によって媒介される。
(2) 臨床的特徴
2~14日の潜伏期の後に高熱で発症する。発熱は通常3~6日間持続する。同時に頭痛、背部の痛み、筋肉痛、食欲不振などの症状を有する。発疹が胸部、背、上肢に認められる場合もある。通常リンパ節腫脹が認められる。症状は通常1週間以内で回復するが、その後全身倦怠感が残ることも多い。特に高齢者においては、上記症状とともに、さらに重篤な症状として、激しい頭痛、悪心、嘔吐、方向感覚の欠如、麻痺、意識障害、痙攣等の症状が出現し髄膜脳炎、脳炎を発症することがある。重篤な例で筋力低下が約半数に認められている。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からウエストナイル熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ウエストナイル熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ウエストナイル熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ウエストナイル熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ウエストナイル熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ウエストナイル熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、髄液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
IgM抗体の検出 |
血清、髄液 |
ペア血清による中和抗体陽転又は中和抗体価の有意の上昇 |
血清 |
3 A型肝炎
(1) 定義
A型肝炎ウイルスによる急性ウイルス性肝炎である。
(2) 臨床的特徴
主たる感染経路は、汚染された食品や水などを介した経口的な感染である。潜伏期間は平均4週間である。感染期間は、ウイルスが便に排泄される発病の3~4週間前から発症後数か月にわたる。主な臨床症状は発熱、全身倦怠感、食欲不振で、黄疸、肝腫大などの肝症状が認められる。一般に予後は良く、慢性化することはないが、まれに劇症化することがある。
小児では不顕性感染や軽症のことが多い。特異的な治療法はなく、対症療法が中心となる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からA型肝炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、A型肝炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、A型肝炎の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、A型肝炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、A型肝炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、A型肝炎により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
血液、便 |
IgM抗体の検出 |
血清 |
4 エキノコックス症
(1) 定義
エキノコックス(Echinococcus)による感染症で、単包条虫(Echinococcus granulosus)と多包条虫(Echinococcus multilocularis)の2種類がある。
(2) 臨床的特徴
ヒトへの感染は、キツネやイヌなどから排泄された虫卵に汚染された水、食物、埃などを経口的に摂取した時に起こる。体内に発生した嚢胞は緩慢に増大し、周囲の臓器を圧迫する。多包虫病巣の拡大は極めてゆっくりで、肝臓の腫大、腹痛、黄疸、貧血、発熱や腹水貯留などの初期症状が現れるまで、成人では通常10年以上を要する。放置すると約半年で腹水が貯留し、やがて死に至る。
発症前や早期の無症状期でも、スクリーニング検査の超音波、CT、MRIの所見から検知される場合がある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からエキノコックス症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、エキノコックス症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、エキノコックス症の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、エキノコックス症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、エキノコックス症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、エキノコックス症により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
包虫あるいは包虫の一部の検出 |
肝臓の摘出組織、生検組織 |
ELISA法又はWestern Blot法による抗体の検出 |
血清 |
5 黄熱
(1) 定義
フラビウイルス科に属する黄熱ウイルスの感染によるウイルス性出血熱である。ネッタイシマカなどにより媒介される。
(2) 臨床的特徴
潜伏期間は3~6日間で、発症は突然である。悪寒又は悪寒戦慄とともに高熱を出し、嘔吐、筋肉痛、出血(鼻出血、歯齦出血、黒色嘔吐、下血、子宮出血)、蛋白尿、比較的徐脈、黄疸等を来す。普通は7~8病日から治癒に向かうが、重症の場合には乏尿、心不全、肝性昏睡などで、5~10病日に約10%が死亡する。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から黄熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、黄熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、黄熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、黄熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、黄熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、黄熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
IgM抗体の検出 |
血清 |
ペア血清による中和抗体陽転又は中和抗体価の有意の上昇 |
6 オウム病
(1) 定義
オウム病クラミジアChlamydophila(Chlamydia)psittaciを病原体とする呼吸器疾患である。
(2) 臨床的特徴
主にオウムなどの愛玩用のトリからヒトに感染し、肺炎などの気道感染症を起こす。1~2週間の潜伏期の後に、突然の発熱で発病する。初期症状として悪寒を伴う高熱、頭痛、全身倦怠感、食欲不振、筋肉痛、関節痛などがみられる。呼吸器症状として咳、粘液性痰などがみられる。軽い場合はかぜ程度の症状であるが、高齢者などでは重症になりやすい。胸部レントゲンで広範な肺病変はあるが、理学的所見は比較的軽度である。重症になると呼吸困難、意識障害、DICなどがみられる。発症前にトリとの接触があったかどうかが診断のための参考になる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からオウム病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、オウム病患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、オウム病の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、オウム病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、オウム病により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、オウム病により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
咽頭拭い液、喀痰、血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
間接蛍光抗体法による抗体の検出(単一血清でIgM抗体の検出若しくはIgG抗体256倍以上、又はペア血清による抗体陽転若しくは抗体価の有意の上昇) |
血清 |
7 オムスク出血熱
(1) 定義
フラビウイルス科フラビウイルス属に属するオムスク出血熱ウイルスによる感染症である。
(2) 臨床的特徴
自然界ではマダニとげっ歯類のあいだで感染環が維持されている。ヒトは主にマダニの刺咬により感染するが、げっ歯類等の尿や血液による接触感染もありうる。また、稀にはヒト―ヒト感染、飛沫感染もあるとされる。潜伏期間は3~9日で、突然の発熱、頭痛、筋肉痛、咳、徐脈、脱水、低血圧、消化器症状を生じ、稀には出血熱となる。患者の30~50%は二相性の発熱を示し、第二期には髄膜炎、腎機能障害、肺炎などを生じる。致死率は0.5~3%であるが、難聴や脱毛、神経精神障害などの後遺症を残すことがある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からオムスク出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、オムスク出血熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、オムスク出血熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、オムスク出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、オムスク出血熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、オムスク出血熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、髄液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
IgM抗体の検出 |
|
中和試験による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
血清 |
8 回帰熱
(1) 定義
シラミあるいはヒメダニ(Ornithodoros属:ヒメダニ属)によって媒介されるスピロヘータ(回帰熱ボレリア)感染症である。
(2) 臨床的特徴
コロモジラミ媒介性Borreliarecurrentisやヒメダニ媒介性B.duttonii等がヒトに対する病原体である。
菌血症による発熱期、菌血症を起こしていない無熱期を3~5回程度繰り返す、いわゆる回帰熱を主訴とする。感染後5~10日を経て菌血症による頭痛、筋肉痛、関節痛、羞明、咳などをともなう発熱、悪寒がみられる(発熱期)。
また、このとき点状出血、紫斑、結膜炎、肝臓や脾臓の腫大、黄疸もみられる。
発熱期は3~7日続いた後、一旦解熱する(無熱期)。
無熱期では血中から菌は検出されない。発汗、全身倦怠感、時に低血圧や斑状丘疹をみることもある。この後5~7日後再び発熱期に入る。
上記症状以外で肝炎、心筋炎、脳出血、脾破裂、大葉性肺炎などがみられる場合もある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から回帰熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、回帰熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、回帰熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、回帰熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、回帰熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、回帰熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液(発熱期) |
暗視野顕微鏡下鏡検による病原体の検出 |
|
蛍光抗体法による末梢血スメアの観察による病原体の抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
9 キャサヌル森林病
(1) 定義
フラビウイルス科フラビウイルス属に属するキャサヌル森林病ウイルスによる感染症である。
(2) 臨床的特徴
自然界では、マダニとげっ歯類を主とする脊椎動物のあいだで感染環が維持されている。ヒトへの感染もマダニの刺咬によって生じる。潜伏期間は3~12日であり、突然の発熱、頭痛、筋肉痛、咳嗽、徐脈、脱水、低血圧、消化器症状、出血などを来たす。約40%に出血性肺水腫がみられ、ときに腎不全も生じる。患者の15~50%では1~3週間寛解が続いた後、再度発熱がみられ、髄膜炎や脳炎を生じて項部硬直、精神障害、振戦、めまいなどを来たす。致死率は3~5%であり、後遺症を残すことはない。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からキャサヌル森林病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、キャサヌル森林病患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、キャサヌル森林病の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、キャサヌル森林病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、キャサヌル森林病により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、キャサヌル森林病により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、髄液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
IgM抗体の検出 |
|
中和試験による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
血清 |
10 Q熱
(1) 定義
コクシエラ科コクシエラ属のCoxiella burnetiiの感染によって起こる感染症である。
(2) 臨床的特徴
通常は家畜やネコなどのペットの流産や出産に関連して、胎盤に感染しているC.burnetiiを吸入するなどによって、2~3週間の潜伏期を経て発症する。急性Q熱ではインフルエンザ様で突然の高熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、眼球後部痛の症状で始まる。自然治癒傾向が強く、多くは14日以内に解熱する。間質性肺炎が主体の肺炎型や肝機能異常が主体の肝炎型がある。予後は一般に良い。1割程度が慢性Q熱に移行するとされ、弁膜症などの基礎疾患を持つ例で心内膜炎を起こすと難治性となり、致死率が高くなる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からQ熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、Q熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、Q熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、Q熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、Q熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、Q熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
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間接蛍光抗体法による抗体の検出(単一血清でIgM抗体64倍以上若しくはIgG抗体256倍以上、又はペア血清による抗体陽転若しくは抗体価の有意の上昇) |
血清 |
11 狂犬病
(1) 定義
ラブドウイルス科に属す狂犬病ウイルスの感染による神経疾患である。
(2) 臨床的特徴
狂犬病は狂犬病ウイルスを保有するイヌ、ネコ、コウモリ、キツネ、スカンク、コヨーテなどの野生動物に咬まれたり、引っ掻かれたりして感染し、発症する。
潜伏期は1~3カ月で、まれに1年以上に及ぶ。臨床的には咬傷周辺の知覚異常、疼痛、不安感、不穏、頭痛、発熱、恐水発作、麻痺と進む。発症すると致命的となる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から狂犬病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、狂犬病患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、狂犬病の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、狂犬病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、狂犬病により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、狂犬病により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
唾液 |
蛍光抗体法による病原体の抗原の検出 |
角膜塗抹標本、頚部の皮膚、気管吸引材料、唾液腺の生検材料、脳組織及び脳乳剤 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
唾液、髄液、脳組織及び脳乳剤 |
Fluorecent Focus Inhibition Test又はELISA法による抗体の検出 |
髄液 |
12 コクシジオイデス症
(1) 定義
真菌のCoccidioides immitisの感染症である。
(2) 臨床的特徴
強風や土木工事などにより土壌中のC.immitisの分節型分生子が土埃と共に空中に舞い上がり、これを吸入することにより肺感染が起こり、そのうち約0.5%の患者が全身感染へと進む。この病原体を取り扱う実験者、検査従事者などの2次感染の危険性が高い。本邦では、慢性肺コクシジオイデス症がみられることが多く、CTなどの画像診断において、結節や空洞病変が確認される。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からコクシジオイデス症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、コクシジオイデス症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、コクシジオイデス症の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、コクシジオイデス症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、コクシジオイデス症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、コクシジオイデス症により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
喀痰、気管支洗浄液、肺又は皮膚の病理組織 |
鏡検による病原体の検出 |
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免疫拡散法による抗体の検出 |
血清、髄液 |