添付一覧
○「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項及び第14条第2項に基づく届出の基準等について」の一部改正について
(平成25年9月30日)
(健感発0930第1号)
(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局結核感染症課長通知)
(公印省略)
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成25年9月30日厚生労働省令第114号)が本日公布されたところである。
この改正を踏まえ、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項及び第14条第2項に基づく届出の基準等について」(平成18年3月8日健感発第0308001号)の別紙「医師及び指定届出機関の管理者が都道府県知事に届け出る基準」について、別添の新旧対照表のとおり改正することとした。
今回の改正により、基幹定点(患者を300人以上収容する施設を有する病院であって、その診療科名中に内科及び外科を含むもので都道府県知事が指定するもの)の管理者は、当該機関の医師が、ロタウイルスによる感染性胃腸炎患者を診断した場合に、都道府県知事に届け出なければならないこととなるが、当該機関が基幹定点かつ小児科定点として都道府県知事に指定されている場合、基幹定点としてのロタウイルスによる感染性胃腸炎の届出と小児科定点としての感染性胃腸炎の届出をそれぞれ行うこととなるので、御留意願いたい。
なお、今回の改正は、感染性胃腸炎について、現行の小児科定点における届出に加え、基幹定点における、迅速診断キットを用いたロタウイルスによる感染性胃腸炎と診断された症例を届出の対象とすることにより、重症例を中心にロタウイルス胃腸炎の発生動向をより正確に把握するとともに、ロタウイルスワクチン導入の影響を評価することを目的とするものである。これは、これまで外来で行われている感染性胃腸炎に対する総合的な診察に、新たに迅速診断キットの追加的な使用を求めるものではないことを申し添える。
また、急性灰白髄炎及び結核の届出基準の技術的修正を併せて行うこととした。
以上、御了知のうえ、関係機関に周知願いたい。
本改正については、平成25年10月14日から施行する。
別添
感染症発生動向調査事業実施要綱
第1 趣旨及び目的
感染症発生動向調査事業については、昭和56年7月から18疾病を対象に開始され、昭和62年1月からはコンピュータを用いたオンラインシステムにおいて27疾病を対象にする等、充実・拡大されて運用されてきたところである。平成10年9月に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「法」という。)が成立し、平成11年4月から施行されたことに伴い、感染症の発生情報の正確な把握と分析、その結果の国民や医療関係者への的確な提供・公開について、同法第三章(第12条~第16条)による施策として感染症発生動向調査を位置づけ、医師等の医療関係者の協力のもと、的確な体制を構築していくこととする。
第2 対象感染症
本事業の対象とする感染症は次のとおりとする。
1 全数把握の対象
一類感染症
(1)エボラ出血熱、(2)クリミア・コンゴ出血熱、(3)痘そう、(4)南米出血熱、(5)ペスト、(6)マールブルグ病及び(7)ラッサ熱
二類感染症
(8)急性灰白髄炎、(9)結核、(10)ジフテリア及び(11)重症急性呼吸器症候群(病原体がコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る)及び(12)鳥インフルエンザ(H5N1)
三類感染症
(13)コレラ、(14)細菌性赤痢、(15)腸管出血性大腸菌感染症、(16)腸チフス及び(17)パラチフス
四類感染症
(18)E型肝炎、(19)ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎を含む)、(20)A型肝炎、(21)エキノコックス症、(22)黄熱、(23)オウム病、(24)オムスク出血熱、(25)回帰熱、(26)キャサヌル森林病、(27)Q熱、(28)狂犬病、(29)コクシジオイデス症、(30)サル痘、(31)重症熱性血小板減少症候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る。)、(32)腎症候性出血熱、(33)西部ウマ脳炎、(34)ダニ媒介脳炎、(35)炭疽、(36)チクングニア熱、(37)つつが虫病、(38)デング熱、(39)東部ウマ脳炎、(40)鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9を除く)、(41)ニパウイルス感染症、(42)日本紅斑熱、(43)日本脳炎、(44)ハンタウイルス肺症候群、(45)Bウイルス病、(46)鼻疽、(47)ブルセラ症、(48)ベネズエラウマ脳炎、(49)ヘンドラウイルス感染症、(50)発しんチフス、(51)ボツリヌス症、(52)マラリア、(53)野兎病、(54)ライム病、(55)リッサウイルス感染症、(56)リフトバレー熱、(57)類鼻疽、(58)レジオネラ症、(59)レプトスピラ症、(60)ロッキー山紅斑熱
五類感染症(全数)
(61)アメーバ赤痢、(62)ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く)、(63)急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く)、(64)クリプトスポリジウム症、(65)クロイツフェルト・ヤコブ病、(66)劇症型溶血性レンサ球菌感染症、(67)後天性免疫不全症候群、(68)ジアルジア症、(69)侵襲性インフルエンザ菌感染症、(70)侵襲性髄膜炎菌感染症、(71)侵襲性肺炎球菌感染症、(72)先天性風しん症候群、(73)梅毒、(74)破傷風、(75)バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、(76)バンコマイシン耐性腸球菌感染症、(77)風しん、(78)麻しん
新型インフルエンザ等感染症
(105)新型インフルエンザ、(106)再興型インフルエンザ
指定感染症
(107)鳥インフルエンザ(H7N9)
2 定点把握の対象
五類感染症(定点)
(79)RSウイルス感染症、(80)咽頭結膜熱、(81)A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、(82)感染性胃腸炎、(83)水痘、(84)手足口病、(85)伝染性紅斑、(86)突発性発しん、(87)百日咳、(88)ヘルパンギーナ、(89)流行性耳下腺炎、(90)インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く)、(91)急性出血性結膜炎、(92)流行性角結膜炎、(93)性器クラミジア感染症、(94)性器ヘルペスウイルス感染症、(95)尖圭コンジローマ、(96)淋菌感染症、(97)クラミジア肺炎(オウム病を除く)、(98)細菌性髄膜炎(インフルエンザ菌、髄膜炎菌、肺炎球菌を原因として同定された場合を除く)、(99)ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、(100)マイコプラズマ肺炎、(101)無菌性髄膜炎、(102)メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、(103)薬剤耐性アシネトバクター感染症、(104)薬剤耐性緑膿菌感染症
法第14条第1項に規定する厚生労働省令で定める疑似症
(108)摂氏38度以上の発熱及び呼吸器症状(明らかな外傷又は器質的疾患に起因するものを除く。)若しくは(109)発熱及び発しん又は水疱(ただし、当該疑似症が二類感染症、三類感染症、四類感染症又は五類感染症の患者の症状であることが明らかな場合を除く。)
3 オンラインシステムによる積極的疫学調査結果の報告の対象
二類感染症
(12)鳥インフルエンザ(H5N1)
第3 実施主体
実施主体は、国、都道府県及び保健所を設置する市(特別区を含む)とする。
第4 実施体制の整備
1 中央感染症情報センター
中央感染症情報センターは、都道府県、保健所を設置する市及び特別区(以下「都道府県等」という。)の本庁から報告された患者情報、疑似症情報及び病原体情報を収集、分析し、その結果を全国情報として速やかに都道府県等に提供・公開するための中心的役割を果たすものとして、国立感染症研究所感染症疫学センター内に設置する。
2 地方感染症情報センター及び基幹地方感染症情報センター
地方感染症情報センターは各都道府県等域における患者情報、疑似症情報及び病原体情報を収集・分析し、都道府県等の本庁に報告するとともに、全国情報と併せて、これらを速やかに医師会等の関係機関に提供・公開することとして、各都道府県等域内に1カ所、地方衛生研究所等の中に設置する。また、都道府県、保健所を設置する市、特別区間等の協議の上、当該都道府県内の地方感染症情報センターの中で1カ所を基幹地方感染症情報センターとして、都道府県全域の患者情報、疑似症情報及び病原体情報を収集、分析し、その結果を各地方感染症情報センターに送付するものとする。
なお、以下の実施方法において、地方感染症情報センターが都道府県等の本庁の役割を代替する機能を担うことができるものとする。
3 指定届出機関(定点)
都道府県は、定点把握対象の五類感染症について、患者情報、疑似症情報及び病原体情報を収集するため、患者定点、疑似症定点及び病原体定点をあらかじめ選定する。
4 感染症発生動向調査企画委員会
(1) 中央感染症発生動向調査企画委員会
本事業の適切な運用を図るために、厚生労働省に国立感染症研究所の代表、全国の保健所及び地方衛生研究所の代表、その他感染症対策に関する学識経験者からなる中央感染症発生動向調査企画委員会を置く。同委員会の事務局は中央感染症情報センターとする。
(2) 地方感染症発生動向調査企画委員会
各都道府県域内における情報の収集、分析の効果的・効率的な運用を図るため、都道府県に小児科、内科、眼科、皮膚科、泌尿器科、微生物学、疫学、獣医学等の専門家、保健所及び地方衛生研究所の代表、地域の医師会の代表等(10名程度)からなる地方感染症発生動向調査企画委員会を置く。同委員会の事務局は地方感染症情報センターとする。
第5 事業の実施
1 一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、新型インフルエンザ等感染症及び指定感染症
(1) 調査単位及び実施方法
ア 診断した医師
一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、新型インフルエンザ等感染症及び指定感染症を届出基準等通知に基づき診断した場合は、別に定める基準に基づき直ちに最寄りの保健所に届出を行う。また保健所から当該患者の病原体検査のための検体又は病原体情報の提供の依頼を受けた場合にあっては、協力可能な範囲において、検体又は病原体情報について、保健所の協力を得て別記様式の検査票を添付して地方衛生研究所(地方衛生研究所を設置しない都道府県等にあっては、検査事務を適法に委託した他の都道府県等の設置する地方衛生研究所。以下同じ。)に送付する。
イ 保健所
① 当該届出を受けた保健所は、直ちに感染症発生動向調査システムに届出内容を入力するものとする。また保健所は、当該患者(第2の(52)を除く)を診断した医師に対して、必要に応じて病原体検査のための検体又は病原体情報の地方衛生研究所への提供について、別記様式の検査票を添付して依頼するものとする。
② 保健所は、届出を受けた感染症に係る発生状況等を把握し、市町村、指定医療機関その他の関係医療機関、医師会、教育委員会等の関係機関に発生状況等を提供し連携を図る。
ウ 地方衛生研究所
① 地方衛生研究所は、別記様式の検査票及び検体又は病原体情報が送付された場合にあっては、当該検体を検査し、その結果を保健所を経由して診断した医師に通知するとともに、別記様式により保健所、都道府県等の本庁及び地方感染症情報センターに送付する。
② 検査のうち、地方衛生研究所において実施することが困難なものについては、必要に応じて国立感染症研究所に検査を依頼する。
③ 地方衛生研究所は、患者が一類感染症と診断されている場合、都道府県域を超えた集団発生があった場合等の緊急の場合にあっては、検体を国立感染症研究所に送付する。
エ 国立感染症研究所
国立感染症研究所は、地方衛生研究所から検査依頼を受けた検体について検査を実施し、その結果を当該地方衛生研究所及び中央感染症情報センターへ通知する。
オ 都道府県等の本庁
① 都道府県等の本庁にあっては、それぞれの管内の患者情報について、保健所からの情報の入力があり次第、登録情報の確認を行う。
② 都道府県等の本庁にあっては、別記様式をもって地方衛生研究所から送付された検査情報について、直ちに中央感染症情報センターに報告する。
カ 地方感染症情報センター及び基幹地方感染症情報センター
① 地方感染症情報センターは、当該都道府県等域内の全ての患者情報及び病原体情報(検査情報を含む。以下カ及びキにおいても同じ)を収集、分析するとともに、その結果を週報(月単位の場合は月報)等として公表される都道府県情報、全国情報と併せて、保健所等の関係機関に提供・公開する。
② 基幹地方感染症情報センターは、当該都道府県域内の全ての患者情報及び病原体情報を収集、分析するとともに、その結果を週報(月単位の場合は月報)等として公表される全国情報と併せて、地方感染症情報センター等の関係機関に提供・公開する。
キ 中央感染症情報センター
① 中央感染症情報センターは、都道府県等で確認された患者情報を速やかに集計し、分析評価を加えた全国情報を、全数把握の五類感染症、定点把握の五類感染症及び疑似症の収集、分析結果とともに、週報(月単位の場合は月報)等として作成して、都道府県等の本庁に提供する。
② 中央感染症情報センターは、都道府県等の本庁から報告された病原体情報及びエに基づいて国立感染症研究所が実施した検査の情報の分析評価を行い、その結果を速やかに都道府県等の本庁に送付するとともに、必要に応じて週報(月単位の場合は月報)等に掲載する。
2 全数把握対象の五類感染症
(1) 調査単位及び実施方法
ア 診断した医師
五類感染症(全数)の患者を診断した医師は、別に定める基準に基づき診断後7日以内に最寄りの保健所に届出を行う。また保健所から当該患者の病原体検査のための検体又は病原体情報の提供の依頼を受けた場合にあっては、協力可能な範囲において、検体又は病原体情報について、保健所の協力を得て別記様式の検査票を添付して地方衛生研究所に送付する。
イ 保健所
① 当該届出を受けた保健所は、直ちに感染症発生動向調査システムに届出内容を入力するものとする。また保健所は、第2の(61)、(63)、(65)、(66)、(67)、(70)、(72)、(74)、(75)、(76)、(77)又は(78)の患者を診断した医師に対して、必要に応じて病原体検査のための検体又は病原体情報の地方衛生研究所への提供について、別記様式の検査票を添付して依頼するものとする。
② 保健所は、届出を受けた感染症に係る発生状況等を把握し、市町村、指定医療機関その他の関係医療機関、医師会、教育委員会等の関係機関に発生状況等を提供し連携を図る。
ウ 地方衛生研究所
① 地方衛生研究所は、別記様式の検査票と検体又は病原体情報等が送付された場合にあっては、当該検体を検査し、その結果を保健所を経由して診断した医師に通知するとともに、別記様式により保健所、都道府県等の本庁及び地方感染症情報センターに送付する。
② 検査のうち、当該地方衛生研究所において実施することが困難なものについては、必要に応じて国立感染症研究所に検査を依頼する。
③ 地方衛生研究所は、都道府県域を超えた集団発生があった場合等の緊急の場合にあっては、検体を国立感染症研究所に送付する。
エ 国立感染症研究所
国立感染症研究所は、地方衛生研究所から検査依頼を受けた検体について検査を実施し、その結果を当該地方衛生研究所及び中央感染症情報センターへ通知する。
オ 都道府県等の本庁
① 都道府県等の本庁にあっては、それぞれの管内の患者情報について、保健所が診断した医師から届出を受けてから7日以内に、登録情報の確認を行う。
② 都道府県等の本庁にあっては、別記様式をもって地方衛生研究所から送付された検査情報について、直ちに中央感染症情報センターに報告する。
カ 地方感染症情報センター及び基幹地方感染症情報センター
① 地方感染症情報センターは、当該都道府県等域内の全ての患者情報及び病原体情報(検査情報を含む。以下カ及びキにおいて同じ)を収集、分析するとともに、その結果を週報(月単位の場合は月報)等として公表される都道府県情報、全国情報と併せて、保健所等の関係機関に提供・公開する。
② 基幹地方感染症情報センターは、当該都道府県域内の全ての患者情報及び病原体情報を収集、分析するとともに、その結果を週報(月単位の場合は月報)等として公表される全国情報と併せて、地方感染症情報センター等の関係機関に提供・公開する。
キ 中央感染症情報センター
① 中央感染症情報センターは、都道府県等の本庁で確認された患者情報を速やかに集計し、分析評価を加えた全国情報について、一類感染症から四類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、定点把握の五類感染症及び疑似症の収集、分析結果とともに、週報(月単位の場合は月報)等として作成して、都道府県等の本庁に提供する。
② 中央感染症情報センターは、都道府県等の本庁から報告された病原体情報及びエに基づいて国立感染症研究所が実施した検査の情報の分析評価を行い、その結果を速やかに都道府県等の本庁に送付するとともに、必要に応じて週報(月単位の場合は月報)等として掲載する。
3 定点把握対象の五類感染症
(1) 対象とする感染症の状態
各々の定点把握対象の五類感染症について、別に定める報告基準を参考とし、当該疾病の患者と診断される場合とする。
(2) 定点の選定
ア 患者定点
定点把握対象の五類感染症の発生状況を地域的に把握するため、都道府県は次の点に留意し、関係医師会等の協力を得て、医療機関の中から可能な限り無作為に患者定点を選定する。また、定点の選定に当たっては、人口及び医療機関の分布等を勘案して、できるだけ当該都道府県全体の感染症の発生状況を把握できるよう考慮すること。
① 対象感染症のうち、第2の(79)から(89)までに掲げるものについては、小児科を標榜する医療機関(主として小児科医療を提供しているもの)を小児科定点として指定すること。小児科定点の数は下記の計算式を参考として算定すること。この場合において、小児科定点として指定された医療機関は、②のインフルエンザ定点として協力するよう努めること。
保健所管内人口 |
定点数 |
~3万人 |
1 |
3万人~7.5万人 |
2 |
7.5万人~ |
3+(人口-7.5万人)/5万人 |
② 対象感染症のうち、第2の(90)に掲げるインフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。以下同じ。)については、前記①で選定した小児科定点のうちインフルエンザ定点として協力する小児科定点に加え、内科を標榜する医療機関(主として内科医療を提供しているもの)を内科定点として指定し、両者を合わせたインフルエンザ定点及び別途後記⑤に定める基幹定点とすること。内科定点の数は下記の計算式を参考として算定すること。
保健所管内人口 |
定点数 |
~7.5万人 |
1 |
7.5万人~12.5万人 |
2 |
12.5万人~ |
3+(人口-12.5万人)/10万人 |
なお、基幹定点における届出基準は、インフルエンザ定点と異なり、入院患者に限定されることに留意すること。
③ 対象感染症のうち、第2の(91)及び(92)に掲げるものについては、眼科を標榜する医療機関(主として眼科医療を提供しているもの)を眼科定点として指定すること。眼科定点の数は下記の計算式を参考として算定すること。
保健所管内人口 |
定点数 |
~12.5万人 |
0 |
12.5万人~ |
1+(人口-12.5万人)/15万人 |
④ 対象感染症のうち、第2の(93)から(96)に掲げるものについては、産婦人科若しくは産科若しくは婦人科(産婦人科系)、医療法施行令(昭和二十三年政令第三百二十六号)第三条の二第一項第一号ハ及びニ(2)の規定により性感染症と組み合わせた名称を診療科名とする診療科又は泌尿器科若しくは皮膚科を標榜する医療機関(主として各々の標榜科の医療を提供しているもの)を性感染症定点として指定すること。性感染症定点の数は下記の計算式を参考として算定すること。
保健所管内人口 |
定点数 |
~7.5万人 |
0 |
7.5万人~ |
1+(人口-7.5万人)/13万人 |
⑤ 対象感染症のうち、第2の(82)のうち病原体がロタウイルスであるもの及び(97)から(104)までに掲げるものについては、対象患者がほとんど入院患者であるため、患者を300人以上収容する施設を有する病院であって内科及び外科を標榜する病院(小児科医療と内科医療を提供しているもの)を2次医療圏域毎に1カ所以上、基幹定点として指定すること。
イ 病原体定点
病原体の分離等の検査情報を収集するため、都道府県は、病原体定点を選定する。この場合においては、次の点に留意する。
① 原則として、患者定点として選定された医療機関の中から選定すること。
② アの①により選定された患者定点の概ね10%を小児科病原体定点として、第2の(80)、(81)、(82)、(84)、(87)、(88)及び(89)を対象感染症とすること。
③ アの②により選定された患者定点の概ね10%をインフルエンザ病原体定点として、第2の(90)を対象感染症とすること。
④ アの③により選定された患者定点の概ね10%を眼科病原体定点として、第2の(91)及び(92)を対象感染症とすること。
⑤ アの⑤により選定された患者定点は、全て基幹病原体定点として、第2の(82)のうち病原体がロタウイルスであるもの、(98)及び(101)を対象感染症とすること。
(3) 調査単位等
ア 患者情報のうち、(2)のアの①、②、③及び⑤(第2の(99)、(102)、(103)及び(104)に関する患者情報を除く)により選定された患者定点に関するものについては、1週間(月曜日から日曜日)を調査単位として、(2)のアの④及び⑤(第2の(99)、(102)、(103)及び(104)に関する患者情報のみ)により選定された患者定点に関するものについては、各月を調査単位とする。
イ 病原体情報については、原則として結果がまとまり次第、報告することとする。
(4) 実施方法
ア 患者定点
① 患者定点として選定された医療機関は、速やかな情報提供を図る趣旨から、調査単位の期間の診療時における別に定める報告基準により、患者発生状況の把握を行うものとする。
② (2)のアにより選定された定点把握の対象の指定届出機関においては、別に定める基準に従い、それぞれ調査単位の患者発生状況等を記載する。
③ ②の届出に当たっては法施行規則第7条に従い行うものとする。
イ 病原体定点
① 病原体定点として選定された医療機関は、別に定める病原体検査指針により、微生物学的検査のために検体を採取する。
② 病原体定点で採取された検体は、別記様式の検査票を添えて、速やかに地方衛生研究所へ送付する。
ウ 保健所
① 保健所は、患者定点から得られた患者情報が週単位の場合は調査対象の週の翌週の火曜日までに、月単位の場合は調査対象月の翌月の3日までに、感染症発生動向調査システムに入力するものとする。また、対象感染症についての集団発生その他特記すべき情報についても都道府県等の本庁及び地方感染症情報センターへ報告する。
② 保健所は、定点把握の対象の五類感染症の発生状況等を把握し、市町村、指定医療機関その他の関係医療機関、医師会、教育委員会等の関係機関に発生状況等を提供し連携を図る。
エ 地方衛生研究所
① 地方衛生研究所は、別記様式の検査票及び検体が送付された場合にあっては、当該検体を検査し、その結果を病原体情報として病原体定点に通知するとともに、都道府県等の本庁及び地方感染症情報センターに送付するものとする。
② 検査のうち、当該地方衛生研究所において実施することが困難なものについては、必要に応じて国立感染症研究所に検査を依頼する。
③ 地方衛生研究所は、都道府県域を超えた集団発生があった場合等の緊急の場合にあっては、検体を国立感染症研究所に送付する。
オ 国立感染症研究所
国立感染症研究所は、地方衛生研究所から検査依頼を受けた検体について検査を実施し、その結果を当該地方衛生研究所及び中央感染症情報センターへ通知する。
カ 都道府県等の本庁
① 都道府県等の本庁にあっては、それぞれの管内の患者情報について、保健所からの情報の入力があり次第、登録情報の確認を行う。
② 都道府県等の本庁にあっては、別記様式をもって地方衛生研究所から送付された病原体情報について、直ちに中央感染症情報センターに報告する。
キ 地方感染症情報センター及び基幹地方感染症情報センター
① 地方感染症情報センターは、当該都道府県等域内の全ての患者情報及び病原体情報を収集、分析するとともに、その結果を週報(月単位の場合は月報)等として公表される都道府県情報、全国情報と併せて、保健所等の関係機関に提供・公開する。
② 基幹地方感染症情報センターは、当該都道府県域内の全ての患者情報及び病原体情報を収集、分析するとともに、その結果を週報(月単位の場合は月報)等として公表される全国情報と併せて、地方感染症情報センター等の関係機関に提供・公開する。
ク 中央感染症情報センター
① 中央感染症情報センターは、都道府県等の本庁から伝送された患者情報を速やかに集計し、分析評価を加えた全国情報を、一類から四類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、全数把握の五類感染症及び疑似症の収集、分析結果とともに、週報(月単位の場合は月報)等として作成し、都道府県等の本庁に送付する。
② 中央感染症情報センターは、都道府県等の本庁から報告された病原体情報及び前記オに基づいて国立感染症研究所が実施した検査の情報の分析評価を行い、その結果を速やかに都道府県等の本庁に送付するとともに、必要に応じて週報(月単位の場合は月報)等に掲載する。
4 法第14条第1項に規定する厚生労働省令で定める疑似症
(1) 対象とする疑似症の状態
各々の疑似症について、別に定める報告基準を参考とし、当該疑似症の患者と診断される場合とする。
(2) 定点の選定
ア 疑似症定点
疑似症の発生状況を地域的に把握するため、都道府県は次の点に留意し、関係医師会等の協力を得て、医療機関の中から可能な限り無作為に疑似症定点を選定する。また、定点の選定に当たっては、人口及び医療機関の分布等を勘案して、できるだけ当該都道府県全体の疑似症の発生状況を把握できるよう考慮すること。
対象疑似症のうち、第2の(108)に掲げるものについては、小児科を標榜する医療機関(主として小児科医療を提供しているもの)又は内科を標榜する医療機関(主として内科医療を提供しているもの)を第一号疑似症定点として指定すること。
また、第2の(109)に掲げるものについては、小児科を標榜する医療機関(主として小児科医療を提供しているもの)、内科を標榜する医療機関(主として内科医療を提供しているもの)又は皮膚科を標榜する医療機関(主として皮膚科医療を提供しているもの)を第二号疑似症定点として指定すること。
なお、各疑似症定点の数は下記の計算式を参考として算定するとともに、内科を標榜する医療機関については、第5の3(2)ア⑤に掲げる基幹定点の要件を満たす病院を2次医療圏域毎に1カ所以上含むよう考慮すること。
保健所管内人口 |
定点数 |
~3万人 |
3 |
3万人~7.5万人 |
4 |
7.5万人~12.5万人 |
7 |
12.5万人~ |
7+6×(人口-12.5万人)/10万人 |
(3) 実施方法
ア 疑似症定点
① 疑似症定点として選定された医療機関は、速やかな情報提供を図る趣旨から、診療時における別に定める報告基準により、直ちに疑似症発生状況の把握を行うものとする。
② (2)のアにより選定された定点把握の対象の指定届出機関においては、別に定める基準に従い、直ちに疑似症発生状況等を記載する。なお、当該疑似症の届出については、原則として症候群サーベイランスシステムへの入力により実施することとする。
③ ②の届出に当たっては法施行規則第7条に従い行うものとする。
イ 保健所
① 保健所は、疑似症定点における症候群サーベイランスシステムへの入力を実施することができない場合、当該疑似症定点から得られた疑似症情報を、直ちに、症候群サーベイランスシステムに入力するものとする。また、対象疑似症についての集団発生その他特記すべき情報についても都道府県等の本庁及び地方感染症情報センターへ報告する。
② 保健所は、疑似症の発生状況等を把握し、市町村、指定医療機関その他の関係医療機関、医師会、教育委員会等の関係機関に発生状況等を提供し連携を図る。
ウ 都道府県等の本庁
都道府県等の本庁にあっては、それぞれの管内の疑似症情報について、保健所からの情報の入力があり次第、登録情報の確認を行う。
エ 地方感染症情報センター及び基幹地方感染症情報センター
① 地方感染症情報センターは、当該都道府県等域内の全ての疑似症情報を収集、分析するとともに、その結果を週報等として公表される都道府県情報、全国情報と併せて、保健所等の関係機関に提供・公開する。
② 基幹地方感染症情報センターは、当該都道府県域内の全ての疑似症情報を収集、分析するとともに、その結果を週報等として公表される全国情報と併せて、地方感染症情報センター等の関係機関に提供・公開する。
オ 中央感染症情報センター
中央感染症情報センターは、都道府県等の本庁から伝送された疑似症情報を速やかに集計し、分析評価を加えた全国情報を、一類から四類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、全数把握の五類感染症及び定点把握の五類感染症の収集、分析結果とともに、週報等として作成し、都道府県等の本庁に送付する。
5 オンラインシステムによる積極的疫学調査結果の報告の実施方法
(1) 保健所
鳥インフルエンザ(H5N1)に係る積極的疫学調査を実施した保健所は、別に定める基準に従い、直ちに疑い症例調査支援システムに調査内容を入力するものとする。
なお、医療機関より提出される検体には、疑い症例調査支援システムが発行する検査依頼票を添付すること。
(2) 地方衛生研究所
ア 地方衛生研究所は、検体が送付された場合にあっては、当該検体を検査し、その内容を直ちに疑い症例調査支援システムに入力する。
イ 鳥インフルエンザ(H5N1)に係る積極的疫学調査の結果を厚生労働省に報告する場合にあっては、法施行規則第9条第2項に従い、検体を国立感染症研究所に送付する。
(3) 国立感染症研究所
国立感染症研究所は、地方衛生研究所から送付された検体について検査を実施し、その結果を直ちに疑い症例調査支援システムに入力する。
6 その他
(1) 感染症発生動向調査は、全国一律の基準で実施されるべきものであるが、上記の実施方法以外の部分について、必要に応じて、各都道府県等の実状に応じた追加を行い、地域における効果的・効率的な感染症発生動向調査体制を構築していくことが求められる。
(2) 政令市又は特別区において、当該検査事務を他の地方公共団体に委託する場合には、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の14の規定の定めるところによること。
(3) 本実施要綱に定める事項以外の内容については、必要に応じて健康局長が定めることとする。
第6 費用
国は、本事業に要する費用のうち、都道府県が支弁する法第14条から第16条の規定に基づく本事業の事務に要する費用に対して、法第61条の規定に基づき負担する。
第7 実施時期
この実施要綱は、平成11年4月1日から施行する。ただし、病原体情報及び病原体定点に関する項目については、各都道府県等において実施可能となり次第、実施することとして差し支えない。
この実施要綱の改正は、平成14年11月1日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成15年11月5日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成18年4月1日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成18年6月12日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成18年11月22日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成19年4月1日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成20年1月1日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成20年4月1日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成20年5月12日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成23年2月1日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成23年9月5日から施行する。ただし、第5の3の(2)の②の指定については、平成23年7月29日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成25年3月4日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成25年4月1日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成25年5月6日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成25年10月14日から施行する。
別紙
医師及び指定届出機関の管理者が都道府県知事に届け出る基準
第1 全般的事項
1 検査方法に関する留意事項
分離・同定による病原体の検出の「同定」には、生化学的性状、抗血清、PCR法(LAMP法等の核酸増幅法全般をいう。以下同じ。)による同定など、種々の同定方法を含む。
抗体検査による感染症の診断には、
(1) 急性期と回復期のペア血清による抗体の陽転(陰性から陽性へ転じること)
(2) 急性期と回復期のペア血清による抗体価の有意上昇
(3) 急性期のIgM抗体の検出
(4) 単一血清でのIgG抗体の検出による診断もあり得るが、その場合、臨床症状等総合的な判断が必要である。
のいずれかが用いられる。
なお、「抗体価の有意上昇」とは、血清の段階希釈を実施する方法を使用した場合においてのみ利用可能であり、4倍以上の上昇を示した場合をいう。ただし、ELISA法、EIA法等、吸光度(インデックス)で判定する検査法においては、この値(4倍)を用いることはできない。
2 発熱と高熱
本基準において、「発熱」とは体温が37.5℃以上を呈した状態をいい、「高熱」とは体温が38.0℃以上を呈した状態をいう。
3 留意点
(1) 本通知に定める各疾患の検査方法については、現在行われるものを示しており、今後開発される同等の感度又は特異度を有する検査も対象となり得るため、医師が、本通知に定めのない検査により診断を行おうとする場合は、地方衛生研究所、国立感染症研究所等の専門の検査機関に確認すること。
(2) 医師が、病原体診断又は病原体に対する抗体の検出による診断を行う場合において、疑義がある場合は、地方衛生研究所、国立感染症研究所等の専門の検査機関に確認すること。
第2 一類感染症
1 エボラ出血熱
(1) 定義
エボラウイルス(フィロウイルス科)による熱性疾患である。
(2) 臨床的特徴
潜伏期間は2~21日(平均約1週間)で、発症は突発的である。
症状は発熱(ほぼ必発)、疼痛(頭痛、筋肉痛、胸痛、腹痛など)、無力症が多い。
2~3日で急速に悪化し、死亡例では約1週間程度で死に至ることが多い。出血は報告にもよるが、主症状ではないことも多い(2000年ウガンダの例では約20%)。
ザイール型では致死率は約90%、スーダン型では致死率は約50%である。
ヒトからヒトへの感染は血液、体液、排泄物等との直接接触により、空気感染は否定的である。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からエボラ出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、エボラ出血熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
鑑別を必要とする疾患は、他のウイルス性出血熱、腸チフス、発しんチフス、赤痢、マラリア、デング熱、黄熱である。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、エボラ出血熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 疑似症患者
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から、エボラ出血熱の疑似症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
エ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、エボラ出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、エボラ出血熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
オ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、エボラ出血熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、咽頭拭い液、尿 |
ELISA法による病原体の抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
蛍光抗体法又はELISA法によるIgM抗体若しくはIgG抗体の検出 |
血清 |
2 クリミア・コンゴ出血熱
(1) 定義
クリミア・コンゴウイルス(ブニヤウイルス科)による熱性疾患である。
(2) 臨床的特徴
潜伏期間は2~9日。初期症状は特異的ではない。時に突発的に発生する。発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、関節痛、腹痛、嘔吐がみられ、続いて咽頭痛、結膜炎、黄疸、羞明及び種々の知覚異常が現れる。点状出血が一般的にみられ、進行すると紫斑も生ずる。特に針を刺した部位から拡がる。重症化するとさらに全身出血、血管虚脱を来し、死亡例では消化管出血が著明である。肝・腎不全も出現することがある。血液と体液は感染力がきわめて強い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からクリミア・コンゴ出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、クリミア・コンゴ出血熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
鑑別を必要とする疾患は、他のウイルス性出血熱、腸チフス、発しんチフス、赤痢、マラリア、デング熱、黄熱である。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、クリミア・コンゴ出血熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 疑似症患者
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から、クリミア・コンゴ出血熱の疑似症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
エ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、クリミア・コンゴ出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、クリミア・コンゴ出血熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
オ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、クリミア・コンゴ出血熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、咽頭拭い液、尿 |
ELISA法による病原体の抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
蛍光抗体法によるIgM抗体若しくはIgG抗体の検出、又は補体結合反応による抗体の検出 |
血清 |
3 痘そう
(1) 定義
痘そうウイルスによる急性の発疹性疾患である。現在、地球上では根絶された状態にある。
(2) 臨床的特徴
主として、飛沫感染によりヒトからヒトへ感染する。患者や汚染された物品との直接接触により感染することもある。エアロゾルによる感染の報告もあるが、まれである。潜伏期間は約12日(7~17日)で、感染力は病初期(ことに4~6病日)に最も強く、発病前は感染力はないと考えられている。すべての発疹が痂皮となり、これが完全に脱落するまでは感染の可能性がある。
主な症状は、
ア 前駆期:急激な発熱(39℃前後)、頭痛、四肢痛、腰痛などで始まり、発熱は2~3日で40℃以上に達する。第3~4病日頃には、一時解熱傾向となり、発疹が出る。
イ 発疹期:発疹は、紅斑→丘疹→水疱→膿疱→結痂→落屑と規則正しく移行する。その時期に見られる発疹はすべて同一のステージであることが特徴である。第9病日頃に膿疱となるが、この頃には再び高熱となり、結痂するまで続く。疼痛、灼熱感が強い。
ウ 回復期:2~3週間の経過で、脱色した瘢痕を残し治癒する。痂皮(かさぶた)の中には、感染性ウイルスが長期間存在するので、必ず、滅菌消毒処理をする。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から痘そうが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、痘そう患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
鑑別を必要とする疾患は、水痘(特に発疹出現前に40℃前後の高熱が認められた者)である。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、痘そうの無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 疑似症患者
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から、痘そうの疑似症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
エ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、痘そうが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、痘そうにより死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
オ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、痘そうにより死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
電子顕微鏡によるウイルス粒子の直接観察又は分離・同定による病原体の検出 |
水疱、膿疱、痂皮、咽頭拭い液、血液 |
蛍光抗体法による病原体の抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
4 南米出血熱
(1) 定義
南米大陸におけるアレナウイルス科アレナウイルス属のウイルスによる出血熱の総称である。南米出血熱であるアルゼンチン出血熱、ブラジル出血熱、ベネズエラ出血熱、ボリビア出血熱は、それぞれ、アレナウイルス科のフニンウイルス、サビアウイルス、ガナリトウイルス、マチュポウイルスによる感染症である。ボリビアにおける出血熱患者からチャパレウイルスという新種のウイルスが分離され、このウイルスによる出血熱も南米出血熱に含まれる。
(2) 臨床的特徴
主な感染経路は、ウイルス保有ネズミの排泄物、唾液、血液等との接触である。潜伏期間は7~14日で、初期症状として突然の発熱、筋肉痛、悪寒、背部痛、消化器症状がみられる。3~4日後には衰弱、嘔吐、目まいなどが出現し、重症例では高熱、出血傾向、ショックが認められる。歯肉縁の出血が特徴的とされるが、その後皮下や粘膜からの出血に進展する。神経症状を呈することもあり、舌や手の振戦から、せん妄、こん睡、痙攣に至る。致死率は30%に上るとされる。回復例では発症後10~13日頃から寛解傾向がみられるが、最終的には数ヶ月かかることが多い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から南米出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、南米出血熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、南米出血熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 疑似症の診断
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から、南米出血熱の疑似症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
エ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、南米出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、南米出血熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
オ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、南米出血熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。