添付一覧
○「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項及び第14条第2項に基づく届出の基準等について」の一部改正について
(平成25年9月30日)
(健感発0930第1号)
(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局結核感染症課長通知)
(公印省略)
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成25年9月30日厚生労働省令第114号)が本日公布されたところである。
この改正を踏まえ、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項及び第14条第2項に基づく届出の基準等について」(平成18年3月8日健感発第0308001号)の別紙「医師及び指定届出機関の管理者が都道府県知事に届け出る基準」について、別添の新旧対照表のとおり改正することとした。
今回の改正により、基幹定点(患者を300人以上収容する施設を有する病院であって、その診療科名中に内科及び外科を含むもので都道府県知事が指定するもの)の管理者は、当該機関の医師が、ロタウイルスによる感染性胃腸炎患者を診断した場合に、都道府県知事に届け出なければならないこととなるが、当該機関が基幹定点かつ小児科定点として都道府県知事に指定されている場合、基幹定点としてのロタウイルスによる感染性胃腸炎の届出と小児科定点としての感染性胃腸炎の届出をそれぞれ行うこととなるので、御留意願いたい。
なお、今回の改正は、感染性胃腸炎について、現行の小児科定点における届出に加え、基幹定点における、迅速診断キットを用いたロタウイルスによる感染性胃腸炎と診断された症例を届出の対象とすることにより、重症例を中心にロタウイルス胃腸炎の発生動向をより正確に把握するとともに、ロタウイルスワクチン導入の影響を評価することを目的とするものである。これは、これまで外来で行われている感染性胃腸炎に対する総合的な診察に、新たに迅速診断キットの追加的な使用を求めるものではないことを申し添える。
また、急性灰白髄炎及び結核の届出基準の技術的修正を併せて行うこととした。
以上、御了知のうえ、関係機関に周知願いたい。
本改正については、平成25年10月14日から施行する。
別添
感染症発生動向調査事業実施要綱
第1 趣旨及び目的
感染症発生動向調査事業については、昭和56年7月から18疾病を対象に開始され、昭和62年1月からはコンピュータを用いたオンラインシステムにおいて27疾病を対象にする等、充実・拡大されて運用されてきたところである。平成10年9月に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「法」という。)が成立し、平成11年4月から施行されたことに伴い、感染症の発生情報の正確な把握と分析、その結果の国民や医療関係者への的確な提供・公開について、同法第三章(第12条~第16条)による施策として感染症発生動向調査を位置づけ、医師等の医療関係者の協力のもと、的確な体制を構築していくこととする。
第2 対象感染症
本事業の対象とする感染症は次のとおりとする。
1 全数把握の対象
一類感染症
(1)エボラ出血熱、(2)クリミア・コンゴ出血熱、(3)痘そう、(4)南米出血熱、(5)ペスト、(6)マールブルグ病及び(7)ラッサ熱
二類感染症
(8)急性灰白髄炎、(9)結核、(10)ジフテリア及び(11)重症急性呼吸器症候群(病原体がコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る)及び(12)鳥インフルエンザ(H5N1)
三類感染症
(13)コレラ、(14)細菌性赤痢、(15)腸管出血性大腸菌感染症、(16)腸チフス及び(17)パラチフス
四類感染症
(18)E型肝炎、(19)ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎を含む)、(20)A型肝炎、(21)エキノコックス症、(22)黄熱、(23)オウム病、(24)オムスク出血熱、(25)回帰熱、(26)キャサヌル森林病、(27)Q熱、(28)狂犬病、(29)コクシジオイデス症、(30)サル痘、(31)重症熱性血小板減少症候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る。)、(32)腎症候性出血熱、(33)西部ウマ脳炎、(34)ダニ媒介脳炎、(35)炭疽、(36)チクングニア熱、(37)つつが虫病、(38)デング熱、(39)東部ウマ脳炎、(40)鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9を除く)、(41)ニパウイルス感染症、(42)日本紅斑熱、(43)日本脳炎、(44)ハンタウイルス肺症候群、(45)Bウイルス病、(46)鼻疽、(47)ブルセラ症、(48)ベネズエラウマ脳炎、(49)ヘンドラウイルス感染症、(50)発しんチフス、(51)ボツリヌス症、(52)マラリア、(53)野兎病、(54)ライム病、(55)リッサウイルス感染症、(56)リフトバレー熱、(57)類鼻疽、(58)レジオネラ症、(59)レプトスピラ症、(60)ロッキー山紅斑熱
五類感染症(全数)
(61)アメーバ赤痢、(62)ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く)、(63)急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く)、(64)クリプトスポリジウム症、(65)クロイツフェルト・ヤコブ病、(66)劇症型溶血性レンサ球菌感染症、(67)後天性免疫不全症候群、(68)ジアルジア症、(69)侵襲性インフルエンザ菌感染症、(70)侵襲性髄膜炎菌感染症、(71)侵襲性肺炎球菌感染症、(72)先天性風しん症候群、(73)梅毒、(74)破傷風、(75)バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、(76)バンコマイシン耐性腸球菌感染症、(77)風しん、(78)麻しん
新型インフルエンザ等感染症
(105)新型インフルエンザ、(106)再興型インフルエンザ
指定感染症
(107)鳥インフルエンザ(H7N9)
2 定点把握の対象
五類感染症(定点)
(79)RSウイルス感染症、(80)咽頭結膜熱、(81)A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、(82)感染性胃腸炎、(83)水痘、(84)手足口病、(85)伝染性紅斑、(86)突発性発しん、(87)百日咳、(88)ヘルパンギーナ、(89)流行性耳下腺炎、(90)インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く)、(91)急性出血性結膜炎、(92)流行性角結膜炎、(93)性器クラミジア感染症、(94)性器ヘルペスウイルス感染症、(95)尖圭コンジローマ、(96)淋菌感染症、(97)クラミジア肺炎(オウム病を除く)、(98)細菌性髄膜炎(インフルエンザ菌、髄膜炎菌、肺炎球菌を原因として同定された場合を除く)、(99)ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、(100)マイコプラズマ肺炎、(101)無菌性髄膜炎、(102)メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、(103)薬剤耐性アシネトバクター感染症、(104)薬剤耐性緑膿菌感染症
法第14条第1項に規定する厚生労働省令で定める疑似症
(108)摂氏38度以上の発熱及び呼吸器症状(明らかな外傷又は器質的疾患に起因するものを除く。)若しくは(109)発熱及び発しん又は水疱(ただし、当該疑似症が二類感染症、三類感染症、四類感染症又は五類感染症の患者の症状であることが明らかな場合を除く。)
3 オンラインシステムによる積極的疫学調査結果の報告の対象
二類感染症
(12)鳥インフルエンザ(H5N1)
第3 実施主体
実施主体は、国、都道府県及び保健所を設置する市(特別区を含む)とする。
第4 実施体制の整備
1 中央感染症情報センター
中央感染症情報センターは、都道府県、保健所を設置する市及び特別区(以下「都道府県等」という。)の本庁から報告された患者情報、疑似症情報及び病原体情報を収集、分析し、その結果を全国情報として速やかに都道府県等に提供・公開するための中心的役割を果たすものとして、国立感染症研究所感染症疫学センター内に設置する。
2 地方感染症情報センター及び基幹地方感染症情報センター
地方感染症情報センターは各都道府県等域における患者情報、疑似症情報及び病原体情報を収集・分析し、都道府県等の本庁に報告するとともに、全国情報と併せて、これらを速やかに医師会等の関係機関に提供・公開することとして、各都道府県等域内に1カ所、地方衛生研究所等の中に設置する。また、都道府県、保健所を設置する市、特別区間等の協議の上、当該都道府県内の地方感染症情報センターの中で1カ所を基幹地方感染症情報センターとして、都道府県全域の患者情報、疑似症情報及び病原体情報を収集、分析し、その結果を各地方感染症情報センターに送付するものとする。
なお、以下の実施方法において、地方感染症情報センターが都道府県等の本庁の役割を代替する機能を担うことができるものとする。
3 指定届出機関(定点)
都道府県は、定点把握対象の五類感染症について、患者情報、疑似症情報及び病原体情報を収集するため、患者定点、疑似症定点及び病原体定点をあらかじめ選定する。
4 感染症発生動向調査企画委員会
(1) 中央感染症発生動向調査企画委員会
本事業の適切な運用を図るために、厚生労働省に国立感染症研究所の代表、全国の保健所及び地方衛生研究所の代表、その他感染症対策に関する学識経験者からなる中央感染症発生動向調査企画委員会を置く。同委員会の事務局は中央感染症情報センターとする。
(2) 地方感染症発生動向調査企画委員会
各都道府県域内における情報の収集、分析の効果的・効率的な運用を図るため、都道府県に小児科、内科、眼科、皮膚科、泌尿器科、微生物学、疫学、獣医学等の専門家、保健所及び地方衛生研究所の代表、地域の医師会の代表等(10名程度)からなる地方感染症発生動向調査企画委員会を置く。同委員会の事務局は地方感染症情報センターとする。
第5 事業の実施
1 一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、新型インフルエンザ等感染症及び指定感染症
(1) 調査単位及び実施方法
ア 診断した医師
一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、新型インフルエンザ等感染症及び指定感染症を届出基準等通知に基づき診断した場合は、別に定める基準に基づき直ちに最寄りの保健所に届出を行う。また保健所から当該患者の病原体検査のための検体又は病原体情報の提供の依頼を受けた場合にあっては、協力可能な範囲において、検体又は病原体情報について、保健所の協力を得て別記様式の検査票を添付して地方衛生研究所(地方衛生研究所を設置しない都道府県等にあっては、検査事務を適法に委託した他の都道府県等の設置する地方衛生研究所。以下同じ。)に送付する。
イ 保健所
① 当該届出を受けた保健所は、直ちに感染症発生動向調査システムに届出内容を入力するものとする。また保健所は、当該患者(第2の(52)を除く)を診断した医師に対して、必要に応じて病原体検査のための検体又は病原体情報の地方衛生研究所への提供について、別記様式の検査票を添付して依頼するものとする。
② 保健所は、届出を受けた感染症に係る発生状況等を把握し、市町村、指定医療機関その他の関係医療機関、医師会、教育委員会等の関係機関に発生状況等を提供し連携を図る。
ウ 地方衛生研究所
① 地方衛生研究所は、別記様式の検査票及び検体又は病原体情報が送付された場合にあっては、当該検体を検査し、その結果を保健所を経由して診断した医師に通知するとともに、別記様式により保健所、都道府県等の本庁及び地方感染症情報センターに送付する。
② 検査のうち、地方衛生研究所において実施することが困難なものについては、必要に応じて国立感染症研究所に検査を依頼する。
③ 地方衛生研究所は、患者が一類感染症と診断されている場合、都道府県域を超えた集団発生があった場合等の緊急の場合にあっては、検体を国立感染症研究所に送付する。
エ 国立感染症研究所
国立感染症研究所は、地方衛生研究所から検査依頼を受けた検体について検査を実施し、その結果を当該地方衛生研究所及び中央感染症情報センターへ通知する。
オ 都道府県等の本庁
① 都道府県等の本庁にあっては、それぞれの管内の患者情報について、保健所からの情報の入力があり次第、登録情報の確認を行う。
② 都道府県等の本庁にあっては、別記様式をもって地方衛生研究所から送付された検査情報について、直ちに中央感染症情報センターに報告する。
カ 地方感染症情報センター及び基幹地方感染症情報センター
① 地方感染症情報センターは、当該都道府県等域内の全ての患者情報及び病原体情報(検査情報を含む。以下カ及びキにおいても同じ)を収集、分析するとともに、その結果を週報(月単位の場合は月報)等として公表される都道府県情報、全国情報と併せて、保健所等の関係機関に提供・公開する。
② 基幹地方感染症情報センターは、当該都道府県域内の全ての患者情報及び病原体情報を収集、分析するとともに、その結果を週報(月単位の場合は月報)等として公表される全国情報と併せて、地方感染症情報センター等の関係機関に提供・公開する。
キ 中央感染症情報センター
① 中央感染症情報センターは、都道府県等で確認された患者情報を速やかに集計し、分析評価を加えた全国情報を、全数把握の五類感染症、定点把握の五類感染症及び疑似症の収集、分析結果とともに、週報(月単位の場合は月報)等として作成して、都道府県等の本庁に提供する。
② 中央感染症情報センターは、都道府県等の本庁から報告された病原体情報及びエに基づいて国立感染症研究所が実施した検査の情報の分析評価を行い、その結果を速やかに都道府県等の本庁に送付するとともに、必要に応じて週報(月単位の場合は月報)等に掲載する。
2 全数把握対象の五類感染症
(1) 調査単位及び実施方法
ア 診断した医師
五類感染症(全数)の患者を診断した医師は、別に定める基準に基づき診断後7日以内に最寄りの保健所に届出を行う。また保健所から当該患者の病原体検査のための検体又は病原体情報の提供の依頼を受けた場合にあっては、協力可能な範囲において、検体又は病原体情報について、保健所の協力を得て別記様式の検査票を添付して地方衛生研究所に送付する。
イ 保健所
① 当該届出を受けた保健所は、直ちに感染症発生動向調査システムに届出内容を入力するものとする。また保健所は、第2の(61)、(63)、(65)、(66)、(67)、(70)、(72)、(74)、(75)、(76)、(77)又は(78)の患者を診断した医師に対して、必要に応じて病原体検査のための検体又は病原体情報の地方衛生研究所への提供について、別記様式の検査票を添付して依頼するものとする。
② 保健所は、届出を受けた感染症に係る発生状況等を把握し、市町村、指定医療機関その他の関係医療機関、医師会、教育委員会等の関係機関に発生状況等を提供し連携を図る。
ウ 地方衛生研究所
① 地方衛生研究所は、別記様式の検査票と検体又は病原体情報等が送付された場合にあっては、当該検体を検査し、その結果を保健所を経由して診断した医師に通知するとともに、別記様式により保健所、都道府県等の本庁及び地方感染症情報センターに送付する。
② 検査のうち、当該地方衛生研究所において実施することが困難なものについては、必要に応じて国立感染症研究所に検査を依頼する。
③ 地方衛生研究所は、都道府県域を超えた集団発生があった場合等の緊急の場合にあっては、検体を国立感染症研究所に送付する。
エ 国立感染症研究所
国立感染症研究所は、地方衛生研究所から検査依頼を受けた検体について検査を実施し、その結果を当該地方衛生研究所及び中央感染症情報センターへ通知する。
オ 都道府県等の本庁
① 都道府県等の本庁にあっては、それぞれの管内の患者情報について、保健所が診断した医師から届出を受けてから7日以内に、登録情報の確認を行う。
② 都道府県等の本庁にあっては、別記様式をもって地方衛生研究所から送付された検査情報について、直ちに中央感染症情報センターに報告する。
カ 地方感染症情報センター及び基幹地方感染症情報センター
① 地方感染症情報センターは、当該都道府県等域内の全ての患者情報及び病原体情報(検査情報を含む。以下カ及びキにおいて同じ)を収集、分析するとともに、その結果を週報(月単位の場合は月報)等として公表される都道府県情報、全国情報と併せて、保健所等の関係機関に提供・公開する。
② 基幹地方感染症情報センターは、当該都道府県域内の全ての患者情報及び病原体情報を収集、分析するとともに、その結果を週報(月単位の場合は月報)等として公表される全国情報と併せて、地方感染症情報センター等の関係機関に提供・公開する。
キ 中央感染症情報センター
① 中央感染症情報センターは、都道府県等の本庁で確認された患者情報を速やかに集計し、分析評価を加えた全国情報について、一類感染症から四類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、定点把握の五類感染症及び疑似症の収集、分析結果とともに、週報(月単位の場合は月報)等として作成して、都道府県等の本庁に提供する。
② 中央感染症情報センターは、都道府県等の本庁から報告された病原体情報及びエに基づいて国立感染症研究所が実施した検査の情報の分析評価を行い、その結果を速やかに都道府県等の本庁に送付するとともに、必要に応じて週報(月単位の場合は月報)等として掲載する。
3 定点把握対象の五類感染症
(1) 対象とする感染症の状態
各々の定点把握対象の五類感染症について、別に定める報告基準を参考とし、当該疾病の患者と診断される場合とする。
(2) 定点の選定
ア 患者定点
定点把握対象の五類感染症の発生状況を地域的に把握するため、都道府県は次の点に留意し、関係医師会等の協力を得て、医療機関の中から可能な限り無作為に患者定点を選定する。また、定点の選定に当たっては、人口及び医療機関の分布等を勘案して、できるだけ当該都道府県全体の感染症の発生状況を把握できるよう考慮すること。
① 対象感染症のうち、第2の(79)から(89)までに掲げるものについては、小児科を標榜する医療機関(主として小児科医療を提供しているもの)を小児科定点として指定すること。小児科定点の数は下記の計算式を参考として算定すること。この場合において、小児科定点として指定された医療機関は、②のインフルエンザ定点として協力するよう努めること。
保健所管内人口 |
定点数 |
~3万人 |
1 |
3万人~7.5万人 |
2 |
7.5万人~ |
3+(人口-7.5万人)/5万人 |
② 対象感染症のうち、第2の(90)に掲げるインフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。以下同じ。)については、前記①で選定した小児科定点のうちインフルエンザ定点として協力する小児科定点に加え、内科を標榜する医療機関(主として内科医療を提供しているもの)を内科定点として指定し、両者を合わせたインフルエンザ定点及び別途後記⑤に定める基幹定点とすること。内科定点の数は下記の計算式を参考として算定すること。
保健所管内人口 |
定点数 |
~7.5万人 |
1 |
7.5万人~12.5万人 |
2 |
12.5万人~ |
3+(人口-12.5万人)/10万人 |
なお、基幹定点における届出基準は、インフルエンザ定点と異なり、入院患者に限定されることに留意すること。
③ 対象感染症のうち、第2の(91)及び(92)に掲げるものについては、眼科を標榜する医療機関(主として眼科医療を提供しているもの)を眼科定点として指定すること。眼科定点の数は下記の計算式を参考として算定すること。
保健所管内人口 |
定点数 |
~12.5万人 |
0 |
12.5万人~ |
1+(人口-12.5万人)/15万人 |
④ 対象感染症のうち、第2の(93)から(96)に掲げるものについては、産婦人科若しくは産科若しくは婦人科(産婦人科系)、医療法施行令(昭和二十三年政令第三百二十六号)第三条の二第一項第一号ハ及びニ(2)の規定により性感染症と組み合わせた名称を診療科名とする診療科又は泌尿器科若しくは皮膚科を標榜する医療機関(主として各々の標榜科の医療を提供しているもの)を性感染症定点として指定すること。性感染症定点の数は下記の計算式を参考として算定すること。
保健所管内人口 |
定点数 |
~7.5万人 |
0 |
7.5万人~ |
1+(人口-7.5万人)/13万人 |
⑤ 対象感染症のうち、第2の(82)のうち病原体がロタウイルスであるもの及び(97)から(104)までに掲げるものについては、対象患者がほとんど入院患者であるため、患者を300人以上収容する施設を有する病院であって内科及び外科を標榜する病院(小児科医療と内科医療を提供しているもの)を2次医療圏域毎に1カ所以上、基幹定点として指定すること。
イ 病原体定点
病原体の分離等の検査情報を収集するため、都道府県は、病原体定点を選定する。この場合においては、次の点に留意する。
① 原則として、患者定点として選定された医療機関の中から選定すること。
② アの①により選定された患者定点の概ね10%を小児科病原体定点として、第2の(80)、(81)、(82)、(84)、(87)、(88)及び(89)を対象感染症とすること。
③ アの②により選定された患者定点の概ね10%をインフルエンザ病原体定点として、第2の(90)を対象感染症とすること。
④ アの③により選定された患者定点の概ね10%を眼科病原体定点として、第2の(91)及び(92)を対象感染症とすること。
⑤ アの⑤により選定された患者定点は、全て基幹病原体定点として、第2の(82)のうち病原体がロタウイルスであるもの、(98)及び(101)を対象感染症とすること。
(3) 調査単位等
ア 患者情報のうち、(2)のアの①、②、③及び⑤(第2の(99)、(102)、(103)及び(104)に関する患者情報を除く)により選定された患者定点に関するものについては、1週間(月曜日から日曜日)を調査単位として、(2)のアの④及び⑤(第2の(99)、(102)、(103)及び(104)に関する患者情報のみ)により選定された患者定点に関するものについては、各月を調査単位とする。
イ 病原体情報については、原則として結果がまとまり次第、報告することとする。
(4) 実施方法
ア 患者定点
① 患者定点として選定された医療機関は、速やかな情報提供を図る趣旨から、調査単位の期間の診療時における別に定める報告基準により、患者発生状況の把握を行うものとする。
② (2)のアにより選定された定点把握の対象の指定届出機関においては、別に定める基準に従い、それぞれ調査単位の患者発生状況等を記載する。
③ ②の届出に当たっては法施行規則第7条に従い行うものとする。
イ 病原体定点
① 病原体定点として選定された医療機関は、別に定める病原体検査指針により、微生物学的検査のために検体を採取する。
② 病原体定点で採取された検体は、別記様式の検査票を添えて、速やかに地方衛生研究所へ送付する。
ウ 保健所
① 保健所は、患者定点から得られた患者情報が週単位の場合は調査対象の週の翌週の火曜日までに、月単位の場合は調査対象月の翌月の3日までに、感染症発生動向調査システムに入力するものとする。また、対象感染症についての集団発生その他特記すべき情報についても都道府県等の本庁及び地方感染症情報センターへ報告する。
② 保健所は、定点把握の対象の五類感染症の発生状況等を把握し、市町村、指定医療機関その他の関係医療機関、医師会、教育委員会等の関係機関に発生状況等を提供し連携を図る。
エ 地方衛生研究所
① 地方衛生研究所は、別記様式の検査票及び検体が送付された場合にあっては、当該検体を検査し、その結果を病原体情報として病原体定点に通知するとともに、都道府県等の本庁及び地方感染症情報センターに送付するものとする。
② 検査のうち、当該地方衛生研究所において実施することが困難なものについては、必要に応じて国立感染症研究所に検査を依頼する。
③ 地方衛生研究所は、都道府県域を超えた集団発生があった場合等の緊急の場合にあっては、検体を国立感染症研究所に送付する。
オ 国立感染症研究所
国立感染症研究所は、地方衛生研究所から検査依頼を受けた検体について検査を実施し、その結果を当該地方衛生研究所及び中央感染症情報センターへ通知する。
カ 都道府県等の本庁
① 都道府県等の本庁にあっては、それぞれの管内の患者情報について、保健所からの情報の入力があり次第、登録情報の確認を行う。
② 都道府県等の本庁にあっては、別記様式をもって地方衛生研究所から送付された病原体情報について、直ちに中央感染症情報センターに報告する。
キ 地方感染症情報センター及び基幹地方感染症情報センター
① 地方感染症情報センターは、当該都道府県等域内の全ての患者情報及び病原体情報を収集、分析するとともに、その結果を週報(月単位の場合は月報)等として公表される都道府県情報、全国情報と併せて、保健所等の関係機関に提供・公開する。
② 基幹地方感染症情報センターは、当該都道府県域内の全ての患者情報及び病原体情報を収集、分析するとともに、その結果を週報(月単位の場合は月報)等として公表される全国情報と併せて、地方感染症情報センター等の関係機関に提供・公開する。
ク 中央感染症情報センター
① 中央感染症情報センターは、都道府県等の本庁から伝送された患者情報を速やかに集計し、分析評価を加えた全国情報を、一類から四類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、全数把握の五類感染症及び疑似症の収集、分析結果とともに、週報(月単位の場合は月報)等として作成し、都道府県等の本庁に送付する。
② 中央感染症情報センターは、都道府県等の本庁から報告された病原体情報及び前記オに基づいて国立感染症研究所が実施した検査の情報の分析評価を行い、その結果を速やかに都道府県等の本庁に送付するとともに、必要に応じて週報(月単位の場合は月報)等に掲載する。
4 法第14条第1項に規定する厚生労働省令で定める疑似症
(1) 対象とする疑似症の状態
各々の疑似症について、別に定める報告基準を参考とし、当該疑似症の患者と診断される場合とする。
(2) 定点の選定
ア 疑似症定点
疑似症の発生状況を地域的に把握するため、都道府県は次の点に留意し、関係医師会等の協力を得て、医療機関の中から可能な限り無作為に疑似症定点を選定する。また、定点の選定に当たっては、人口及び医療機関の分布等を勘案して、できるだけ当該都道府県全体の疑似症の発生状況を把握できるよう考慮すること。
対象疑似症のうち、第2の(108)に掲げるものについては、小児科を標榜する医療機関(主として小児科医療を提供しているもの)又は内科を標榜する医療機関(主として内科医療を提供しているもの)を第一号疑似症定点として指定すること。
また、第2の(109)に掲げるものについては、小児科を標榜する医療機関(主として小児科医療を提供しているもの)、内科を標榜する医療機関(主として内科医療を提供しているもの)又は皮膚科を標榜する医療機関(主として皮膚科医療を提供しているもの)を第二号疑似症定点として指定すること。
なお、各疑似症定点の数は下記の計算式を参考として算定するとともに、内科を標榜する医療機関については、第5の3(2)ア⑤に掲げる基幹定点の要件を満たす病院を2次医療圏域毎に1カ所以上含むよう考慮すること。
保健所管内人口 |
定点数 |
~3万人 |
3 |
3万人~7.5万人 |
4 |
7.5万人~12.5万人 |
7 |
12.5万人~ |
7+6×(人口-12.5万人)/10万人 |
(3) 実施方法
ア 疑似症定点
① 疑似症定点として選定された医療機関は、速やかな情報提供を図る趣旨から、診療時における別に定める報告基準により、直ちに疑似症発生状況の把握を行うものとする。
② (2)のアにより選定された定点把握の対象の指定届出機関においては、別に定める基準に従い、直ちに疑似症発生状況等を記載する。なお、当該疑似症の届出については、原則として症候群サーベイランスシステムへの入力により実施することとする。
③ ②の届出に当たっては法施行規則第7条に従い行うものとする。
イ 保健所
① 保健所は、疑似症定点における症候群サーベイランスシステムへの入力を実施することができない場合、当該疑似症定点から得られた疑似症情報を、直ちに、症候群サーベイランスシステムに入力するものとする。また、対象疑似症についての集団発生その他特記すべき情報についても都道府県等の本庁及び地方感染症情報センターへ報告する。
② 保健所は、疑似症の発生状況等を把握し、市町村、指定医療機関その他の関係医療機関、医師会、教育委員会等の関係機関に発生状況等を提供し連携を図る。
ウ 都道府県等の本庁
都道府県等の本庁にあっては、それぞれの管内の疑似症情報について、保健所からの情報の入力があり次第、登録情報の確認を行う。
エ 地方感染症情報センター及び基幹地方感染症情報センター
① 地方感染症情報センターは、当該都道府県等域内の全ての疑似症情報を収集、分析するとともに、その結果を週報等として公表される都道府県情報、全国情報と併せて、保健所等の関係機関に提供・公開する。
② 基幹地方感染症情報センターは、当該都道府県域内の全ての疑似症情報を収集、分析するとともに、その結果を週報等として公表される全国情報と併せて、地方感染症情報センター等の関係機関に提供・公開する。
オ 中央感染症情報センター
中央感染症情報センターは、都道府県等の本庁から伝送された疑似症情報を速やかに集計し、分析評価を加えた全国情報を、一類から四類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、全数把握の五類感染症及び定点把握の五類感染症の収集、分析結果とともに、週報等として作成し、都道府県等の本庁に送付する。
5 オンラインシステムによる積極的疫学調査結果の報告の実施方法
(1) 保健所
鳥インフルエンザ(H5N1)に係る積極的疫学調査を実施した保健所は、別に定める基準に従い、直ちに疑い症例調査支援システムに調査内容を入力するものとする。
なお、医療機関より提出される検体には、疑い症例調査支援システムが発行する検査依頼票を添付すること。
(2) 地方衛生研究所
ア 地方衛生研究所は、検体が送付された場合にあっては、当該検体を検査し、その内容を直ちに疑い症例調査支援システムに入力する。
イ 鳥インフルエンザ(H5N1)に係る積極的疫学調査の結果を厚生労働省に報告する場合にあっては、法施行規則第9条第2項に従い、検体を国立感染症研究所に送付する。
(3) 国立感染症研究所
国立感染症研究所は、地方衛生研究所から送付された検体について検査を実施し、その結果を直ちに疑い症例調査支援システムに入力する。
6 その他
(1) 感染症発生動向調査は、全国一律の基準で実施されるべきものであるが、上記の実施方法以外の部分について、必要に応じて、各都道府県等の実状に応じた追加を行い、地域における効果的・効率的な感染症発生動向調査体制を構築していくことが求められる。
(2) 政令市又は特別区において、当該検査事務を他の地方公共団体に委託する場合には、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の14の規定の定めるところによること。
(3) 本実施要綱に定める事項以外の内容については、必要に応じて健康局長が定めることとする。
第6 費用
国は、本事業に要する費用のうち、都道府県が支弁する法第14条から第16条の規定に基づく本事業の事務に要する費用に対して、法第61条の規定に基づき負担する。
第7 実施時期
この実施要綱は、平成11年4月1日から施行する。ただし、病原体情報及び病原体定点に関する項目については、各都道府県等において実施可能となり次第、実施することとして差し支えない。
この実施要綱の改正は、平成14年11月1日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成15年11月5日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成18年4月1日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成18年6月12日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成18年11月22日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成19年4月1日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成20年1月1日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成20年4月1日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成20年5月12日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成23年2月1日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成23年9月5日から施行する。ただし、第5の3の(2)の②の指定については、平成23年7月29日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成25年3月4日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成25年4月1日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成25年5月6日から施行する。
この実施要綱の一部改正は、平成25年10月14日から施行する。
別紙
医師及び指定届出機関の管理者が都道府県知事に届け出る基準
第1 全般的事項
1 検査方法に関する留意事項
分離・同定による病原体の検出の「同定」には、生化学的性状、抗血清、PCR法(LAMP法等の核酸増幅法全般をいう。以下同じ。)による同定など、種々の同定方法を含む。
抗体検査による感染症の診断には、
(1) 急性期と回復期のペア血清による抗体の陽転(陰性から陽性へ転じること)
(2) 急性期と回復期のペア血清による抗体価の有意上昇
(3) 急性期のIgM抗体の検出
(4) 単一血清でのIgG抗体の検出による診断もあり得るが、その場合、臨床症状等総合的な判断が必要である。
のいずれかが用いられる。
なお、「抗体価の有意上昇」とは、血清の段階希釈を実施する方法を使用した場合においてのみ利用可能であり、4倍以上の上昇を示した場合をいう。ただし、ELISA法、EIA法等、吸光度(インデックス)で判定する検査法においては、この値(4倍)を用いることはできない。
2 発熱と高熱
本基準において、「発熱」とは体温が37.5℃以上を呈した状態をいい、「高熱」とは体温が38.0℃以上を呈した状態をいう。
3 留意点
(1) 本通知に定める各疾患の検査方法については、現在行われるものを示しており、今後開発される同等の感度又は特異度を有する検査も対象となり得るため、医師が、本通知に定めのない検査により診断を行おうとする場合は、地方衛生研究所、国立感染症研究所等の専門の検査機関に確認すること。
(2) 医師が、病原体診断又は病原体に対する抗体の検出による診断を行う場合において、疑義がある場合は、地方衛生研究所、国立感染症研究所等の専門の検査機関に確認すること。
第2 一類感染症
1 エボラ出血熱
(1) 定義
エボラウイルス(フィロウイルス科)による熱性疾患である。
(2) 臨床的特徴
潜伏期間は2~21日(平均約1週間)で、発症は突発的である。
症状は発熱(ほぼ必発)、疼痛(頭痛、筋肉痛、胸痛、腹痛など)、無力症が多い。
2~3日で急速に悪化し、死亡例では約1週間程度で死に至ることが多い。出血は報告にもよるが、主症状ではないことも多い(2000年ウガンダの例では約20%)。
ザイール型では致死率は約90%、スーダン型では致死率は約50%である。
ヒトからヒトへの感染は血液、体液、排泄物等との直接接触により、空気感染は否定的である。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からエボラ出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、エボラ出血熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
鑑別を必要とする疾患は、他のウイルス性出血熱、腸チフス、発しんチフス、赤痢、マラリア、デング熱、黄熱である。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、エボラ出血熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 疑似症患者
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から、エボラ出血熱の疑似症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
エ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、エボラ出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、エボラ出血熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
オ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、エボラ出血熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、咽頭拭い液、尿 |
ELISA法による病原体の抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
蛍光抗体法又はELISA法によるIgM抗体若しくはIgG抗体の検出 |
血清 |
2 クリミア・コンゴ出血熱
(1) 定義
クリミア・コンゴウイルス(ブニヤウイルス科)による熱性疾患である。
(2) 臨床的特徴
潜伏期間は2~9日。初期症状は特異的ではない。時に突発的に発生する。発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、関節痛、腹痛、嘔吐がみられ、続いて咽頭痛、結膜炎、黄疸、羞明及び種々の知覚異常が現れる。点状出血が一般的にみられ、進行すると紫斑も生ずる。特に針を刺した部位から拡がる。重症化するとさらに全身出血、血管虚脱を来し、死亡例では消化管出血が著明である。肝・腎不全も出現することがある。血液と体液は感染力がきわめて強い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からクリミア・コンゴ出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、クリミア・コンゴ出血熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
鑑別を必要とする疾患は、他のウイルス性出血熱、腸チフス、発しんチフス、赤痢、マラリア、デング熱、黄熱である。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、クリミア・コンゴ出血熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 疑似症患者
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から、クリミア・コンゴ出血熱の疑似症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
エ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、クリミア・コンゴ出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、クリミア・コンゴ出血熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
オ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、クリミア・コンゴ出血熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、咽頭拭い液、尿 |
ELISA法による病原体の抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
蛍光抗体法によるIgM抗体若しくはIgG抗体の検出、又は補体結合反応による抗体の検出 |
血清 |
3 痘そう
(1) 定義
痘そうウイルスによる急性の発疹性疾患である。現在、地球上では根絶された状態にある。
(2) 臨床的特徴
主として、飛沫感染によりヒトからヒトへ感染する。患者や汚染された物品との直接接触により感染することもある。エアロゾルによる感染の報告もあるが、まれである。潜伏期間は約12日(7~17日)で、感染力は病初期(ことに4~6病日)に最も強く、発病前は感染力はないと考えられている。すべての発疹が痂皮となり、これが完全に脱落するまでは感染の可能性がある。
主な症状は、
ア 前駆期:急激な発熱(39℃前後)、頭痛、四肢痛、腰痛などで始まり、発熱は2~3日で40℃以上に達する。第3~4病日頃には、一時解熱傾向となり、発疹が出る。
イ 発疹期:発疹は、紅斑→丘疹→水疱→膿疱→結痂→落屑と規則正しく移行する。その時期に見られる発疹はすべて同一のステージであることが特徴である。第9病日頃に膿疱となるが、この頃には再び高熱となり、結痂するまで続く。疼痛、灼熱感が強い。
ウ 回復期:2~3週間の経過で、脱色した瘢痕を残し治癒する。痂皮(かさぶた)の中には、感染性ウイルスが長期間存在するので、必ず、滅菌消毒処理をする。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から痘そうが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、痘そう患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
鑑別を必要とする疾患は、水痘(特に発疹出現前に40℃前後の高熱が認められた者)である。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、痘そうの無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 疑似症患者
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から、痘そうの疑似症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
エ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、痘そうが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、痘そうにより死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
オ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、痘そうにより死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
電子顕微鏡によるウイルス粒子の直接観察又は分離・同定による病原体の検出 |
水疱、膿疱、痂皮、咽頭拭い液、血液 |
蛍光抗体法による病原体の抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
4 南米出血熱
(1) 定義
南米大陸におけるアレナウイルス科アレナウイルス属のウイルスによる出血熱の総称である。南米出血熱であるアルゼンチン出血熱、ブラジル出血熱、ベネズエラ出血熱、ボリビア出血熱は、それぞれ、アレナウイルス科のフニンウイルス、サビアウイルス、ガナリトウイルス、マチュポウイルスによる感染症である。ボリビアにおける出血熱患者からチャパレウイルスという新種のウイルスが分離され、このウイルスによる出血熱も南米出血熱に含まれる。
(2) 臨床的特徴
主な感染経路は、ウイルス保有ネズミの排泄物、唾液、血液等との接触である。潜伏期間は7~14日で、初期症状として突然の発熱、筋肉痛、悪寒、背部痛、消化器症状がみられる。3~4日後には衰弱、嘔吐、目まいなどが出現し、重症例では高熱、出血傾向、ショックが認められる。歯肉縁の出血が特徴的とされるが、その後皮下や粘膜からの出血に進展する。神経症状を呈することもあり、舌や手の振戦から、せん妄、こん睡、痙攣に至る。致死率は30%に上るとされる。回復例では発症後10~13日頃から寛解傾向がみられるが、最終的には数ヶ月かかることが多い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から南米出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、南米出血熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、南米出血熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 疑似症の診断
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から、南米出血熱の疑似症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
エ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、南米出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、南米出血熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
オ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、南米出血熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、脳脊髄液、尿 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
ELISA法又は蛍光抗体法によるIgM抗体若しくはIgG抗体の検出 |
血清 |
5 ペスト
(1) 定義
腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌であるYersinia pestisの感染によって起こる全身性疾患である。
(2) 臨床的特徴
リンパ節炎、敗血症等を起こし、重症例では高熱、意識障害などを伴う急性細菌性感染症であり、死に至ることも多い。臨床的所見により以下の3種に分けられる。
ア 腺ペスト(ヒトペストの80~90%を占める)
潜伏期は2~7日。感染部のリンパ節が痛みとともに腫れる。菌は血流を介して全身のリンパ節、肝や脾でも繁殖し、多くは1週間くらいで死亡する。
イ 敗血症ペスト(約10%を占める)
時に局所症状がないまま敗血症症状が先行し、皮膚のあちこちに出血斑が生じて全身が黒色となり死亡する。
ウ 肺ペスト
ペスト菌による気管支炎や肺炎を起こし、強烈な頭痛、嘔吐、39~41℃の弛張熱、急激な呼吸困難、鮮紅色の泡立った血痰を伴う重篤な肺炎像を示し、2~3日で死亡する。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からペストが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ペスト患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
鑑別を必要とする疾患は、類鼻疽(臨床症状が肺ペストと類似)、野兎病(臨床症状が腺ペストに類似し、かつ共通抗原決定基を持つ)である。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ペストの無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 疑似症患者
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から、ペストの疑似症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
疑似症患者の診断に当たっては、臨床所見、ペスト流行地への渡航歴、齧歯類に寄生しているノミによる咬傷の有無を参考にする。
エ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ペストが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ペストにより死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
オ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ペストにより死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出(塗抹標本の染色鏡検も参考となる) |
血液、リンパ節腫吸引物、喀痰、組織 |
蛍光抗体法によるエンベロープ抗原(Fraction 1抗原)の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
赤血球凝集反応によるエンベロープ抗原(Fraction 1抗原)に対する抗体の検出(16倍以上) |
血清 |
6 マールブルグ病
(1) 定義
マールブルグウイルス(フィロウイルス科)による熱性疾患である。
(2) 臨床的特徴
潜伏期間は3~10日間である。発症は突発的である。発熱、頭痛、筋肉痛、皮膚粘膜発疹、咽頭結膜炎に続き、重症化すると下痢、鼻口腔・消化管出血が見られる(エボラ出血熱に類似する)。
マールブルグウイルスの自然界からヒトへの感染経路は不明である。ヒトからヒトへは血液、体液、排泄物との濃厚接触及び性的接触によりウイルスが伝播する。
ドイツにおける集団発生(1967年)においてはアフリカミドリザルの血液、組織との接触によるものであった。アフリカ(ケニア等)での発生例にはサルは無関係であった。治療法はなく、対症療法のみである。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からマールブルグ病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、マールブルグ病患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
鑑別を必要とする疾患は、他のウイルス性出血熱、腸チフス、発しんチフス、赤痢、マラリア、デング熱、黄熱である。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、マールブルグ病の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 疑似症患者
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から、マールブルグ病の疑似症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
エ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、マールブルグ病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、マールブルグ病により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
オ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、マールブルグ病により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、咽頭拭い液、尿 |
ELISA法による病原体の特異抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
ELISA法又は蛍光抗体法によるIgM抗体若しくはIgG抗体の検出 |
血清 |
7 ラッサ熱
(1) 定義
ラッサウイルス(アレナウイルス科)による熱性疾患である。
(2) 臨床的特徴
発症は突発的で進行は緩やかである。マストミスに咬まれたり尿や血液に触れたり、あるいは感染発症者の血液、体液、排泄物等に直接接触する等の後、潜伏期間(7~18日)を経て、高熱(39~41℃)、全身倦怠感に続き、3~4日目に大関節痛、咽頭痛、咳、筋肉痛、次いで心窩部痛、後胸部痛、嘔吐、悪心、下痢、腹部痛等が認められる。
重症化すると顔面頚部の浮腫、眼球結膜出血、消化管出血、心のう炎、胸膜炎、ショック。
重症経過で治癒後、一側あるいは両側のろう(難聴)を示すことが20%以上ある。発症期の症状はインフルエンザ様である。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からラッサ熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ラッサ熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
鑑別を必要とする疾患は、他のウイルス性出血熱、腸チフス、発しんチフス、赤痢、マラリア、デング熱、黄熱である。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ラッサ熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 疑似症患者
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から、ラッサ熱の疑似症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
エ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ラッサ熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ラッサ熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
オ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ラッサ熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、咽頭拭い液、尿 |
ELISA法による病原体の抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
蛍光抗体法によるIgM抗体若しくはIgG抗体の検出 |
血清 |
第3 二類感染症
1 急性灰白髄炎
(1) 定義
ポリオウイルス1~3型(ワクチン株を含む)の感染による急性弛緩性麻痺を主症状とする急性運動中枢神経感染症である。また、ポリオウイルス1~3型には、地域集団において継続的に伝播している野生株ポリオウイルス、ワクチン由来ポリオウイルス(VDPV)(※)及びワクチン株ポリオウイルス(※※)がある。
(2) 臨床的特徴
潜伏期は3~12日で、発熱(3日間程度)、全身倦怠感、頭痛、吐き気、項部・背部硬直などの髄膜刺激症状を呈するが、軽症例(不全型)では軽い感冒様症状又は胃腸症状で終わることもある。髄膜炎症状だけで麻痺を来さないもの(非麻痺型)もあるが、重症例(麻痺型)では発熱に引き続きあるいは一旦解熱し再び発熱した後に、突然四肢の随意筋(多くは下肢)の弛緩性麻痺が現れる。罹患部位の腱反射は減弱ないし消失し、知覚感覚異常を伴わない。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から急性灰白髄炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、急性灰白髄炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、急性灰白髄炎の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。ただしワクチン株ポリオウイルス(※※)による無症状病原体保有者は届出の対象ではない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、急性灰白髄炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、急性灰白髄炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、急性灰白髄炎により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
便、直腸ぬぐい液、咽頭ぬぐい液、髄液 ①ポリオウイルス1~3型の検出は便検体が基本であり、発症後できるだけ速やかに、24時間以上の間隔をあけて、少なくとも2回以上採取し、いずれかひとつの便検体からポリオウイルス1~3型が検出された場合は、直ちに届出を行うこと。 ②直腸ぬぐい液、咽頭ぬぐい液、髄液からポリオウイルス1~3型が検出された場合も、検査陽性として、直ちに届出を行うこと。 |
(※) VDPVは、親株であるOPV株からのVP1全領域における変異率により定義され、1型及び3型は1%以上の変異率(VP1領域における親株からの変異数が10塩基以上)を有するポリオウイルス、2型についてはVP1領域における変異数が6塩基以上のポリオウイルスをVDPVとする。
(※※) 野生株ポリオウイルス・VDPV以外のポリオウイルスをワクチン株ポリオウイルスとする。
2 結核
(1) 定義
結核菌群(Mycobacterium tuberculosis complex、ただしMycobacterium bovis BCGを除く)による感染症である。
(2) 臨床的特徴
感染は主に気道を介した飛沫核感染による。感染源の大半は喀痰塗抹陽性の肺結核患者であるが、ときに培養のみ陽性の患者、まれに菌陰性の患者や肺外結核患者が感染源になることもある。感染後数週間から一生涯にわたり臨床的に発病の可能性があるが、発病するのは通常30%程度である。若い患者の場合、発病に先立つ数ヶ月~数年以内に結核患者と接触歴を有することがある。
感染後の発病のリスクは感染後間もない時期(とくに1年以内)に高く、年齢的には乳幼児期、思春期に高い。また、特定の疾患(糖尿病、慢性腎不全、エイズ、じん肺等)を合併している者、胃切除の既往歴を持つ者、免疫抑制剤(副腎皮質ホルモン剤、TNFα阻害薬等)治療中の者等においても高くなる。
多くの場合、最も一般的な侵入門戸である肺の病変として発症する(肺結核)が、肺外臓器にも起こりうる。肺外罹患臓器として多いのは胸膜、リンパ節、脊椎・その他の骨・関節、腎・尿路生殖器、中枢神経系、喉頭等であり、全身に播種した場合には粟粒結核となる。
肺結核の症状は咳、喀痰、微熱が典型的とされており、胸痛、呼吸困難、血痰、全身倦怠感、食欲不振等を伴うこともあるが、初期には無症状のことも多い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から結核が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、結核患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
ただし、病原体及び病原体遺伝子の検出検査方法以外による検査方法については、当該検査所見に加え、問診等により医師が結核患者であると診断するに足る判断がなされる場合に限り届出を行うものである。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
鑑別を必要とする疾患は、他の原因による肺炎、非結核性抗酸菌症、肺癌、気管支拡張症、良性腫瘍等である。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の画像検査方法以外の左欄に掲げる検査方法により、結核の無症状病原体保有者と診断し、かつ、結核医療を必要とすると認められる場合(潜在性結核感染症)に限り、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
5歳未満の者においては、この検査方法で病原体保有の確認ができない場合であっても、患者の飛沫のかかる範囲での反復、継続した接触等の疫学的状況から感染に高度の蓋然性が認められる者に限り、届出を行うこと。
ウ 疑似症患者
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から、結核の疑似症患者と診断するに足る高度の蓋然性が認められる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
疑似症患者の診断に当たっては、集団発生の状況、疫学的関連性なども考慮し判断する。
エ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、結核が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、結核により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
オ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、結核により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
塗抹検査による病原体の検出 |
喀痰、胃液、咽頭・喉頭ぬぐい液、気管支肺胞洗浄液、胸水、膿汁・分泌液、尿、便、脳脊髄液、組織材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
|
核酸増幅法による病原体遺伝子の検出 |
|
病理検査における特異的所見の確認 |
病理組織 |
ツベルクリン反応検査(発赤、硬結、水疱、壊死の有無) |
皮膚所見 |
リンパ球の菌特異蛋白刺激による放出インターフェロンγ試験 |
血液 |
画像検査における所見の確認 |
胸部エックス線画像、CT等検査画像 |
3 ジフテリア
(1) 定義
ジフテリア毒素を産生するコリネバクテリウム属のCorynebacterium diphtheriaeの感染による急性感染症である。
(2) 臨床的特徴
ジフテリア菌が咽頭などの粘膜に感染し、感染部位の粘膜や周辺の軟部組織の障害を引き起こし、扁桃から咽頭粘膜表面の偽膜性炎症、下顎部から前頚部の著しい浮腫とリンパ節腫脹(bullneck)などの症状が出現する。重症例では心筋の障害などにより死亡する。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からジフテリアが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ジフテリア患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ジフテリアの無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ジフテリアが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ジフテリアにより死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ジフテリアにより死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出、かつ、分離菌におけるジフテリア毒素の確認 |
病変(感染)部位からの採取材料 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
(※) 本感染症は、Corynebacterium diphtheriaeによるものであるが、Corynebacterium ulcerans及びCorynebacterium pseudotuberculosisにおいてもジフテリア毒素を産生する株が確認されているので、分離・同定による病原体の検出、病原体の毒素遺伝子の検出の際に留意が必要である。
4 重症急性呼吸器症候群(病原体がコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る)
(1) 定義
SARSコロナウイルスの感染による重症急性呼吸器症候群である。
(2) 臨床的特徴
多くは2~7日、最大10日間の潜伏期間の後に、急激な発熱、咳、全身倦怠感、筋肉痛などのインフルエンザ様の前駆症状が現れる。2~数日間で呼吸困難、乾性咳嗽、低酸素血症などの下気道症状が現れ、胸部CT、X線写真などで肺炎像が出現する。肺炎になった者の80~90%が1週間程度で回復傾向になるが、10~20%がARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome)を起こし、人工呼吸器などを必要とするほど重症となる。
致死率は10%前後で、高齢者及び基礎疾患のある者での致死率はより高い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から重症急性呼吸器症候群が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、重症急性呼吸器症候群の患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、重症急性呼吸器症候群の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 疑似症患者
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から、重症急性呼吸器症候群の疑似症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
エ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、重症急性呼吸器症候群が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、重症急性呼吸器症候群により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
オ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、重症急性呼吸器症候群により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
鼻咽頭拭い液、喀痰、尿、便 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
ELISA法又は蛍光抗体法によるIgM抗体若しくはIgG抗体の検出、又は中和試験による抗体の検出 |
血清 |
(4) 疑似症患者の判断に必要な事項
ア 病原体診断又は抗体検査で陰性になった場合でも、患者と臨床的特徴が合致する場合は、SARSを否定できないため、医師の総合判断により、疑似症患者として取り扱う。
イ 臨床所見、渡航歴などにより、以下の(ア)又は(イ)に該当し、かつ(ウ)の条件を満たす場合は、疑似症患者として取り扱う。
(ア) 平成14年11月1日以降に、38℃以上の急な発熱及び咳、呼吸困難などの呼吸器症状を示して受診した者のうち、次のいずれか1つ以上の条件を満たす者
① 発症前10日以内に、SARSが疑われる患者を看護若しくは介護していた者、同居していた者又は気道分泌物若しくは体液に直接触れた者
② 発症前10日以内に、SARSの発生が報告されている地域(WHOが公表したSARSの伝播確認地域)へ旅行した者
③ 発症前10日以内に、SARSの発生が報告されている地域(WHOが公表したSARSの伝播確認地域)に居住していた者
④ SARSコロナウイルス又はSARS患者の臨床検体を取り扱う研究を行っている研究者、あるいはSARSコロナウイルス、又は患者検体を保有する機関の研究者で、ウイルスへの曝露の可能性がある者
⑤ 5日以上継続する重症の呼吸器症状及び肺炎で、治療に反応せず、他にこれら症状を説明できる診断がつかない場合
(イ) 平成14年11月1日以降に死亡し、病理解剖が行われていない者のうち、次のいずれか1つ以上の条件を満たす者
① 発症前10日以内に、SARSが疑われる患者を看護若しくは介護していた者、同居していた者又は気道分泌物若しくは体液に直接触れた者
② 発症前10日以内に、SARSの発生が報告されている地域(WHOが公表したSARSの伝播確認地域)へ旅行した者
③ 発症前10日以内に、SARSの発生が報告されている地域(WHOが公表したSARSの伝播確認地域)に居住していた者
④ SARSコロナウイルス又はSARS患者の臨床検体を取り扱う研究を行っていた研究者、あるいはSARSコロナウイルス、又は患者検体を保有する機関の研究者で、ウイルスへの曝露の可能性があった者
⑤ 5日以上継続する重症の呼吸器症状及び肺炎で、治療に反応せず、死亡までに、他にこれら症状を説明できる診断がついていなかった場合
(ウ) 次のいずれかの条件を満たす者
① 胸部レントゲン写真で肺炎、又は急性呼吸窮迫症候群の所見を示す者
② 病理解剖所見が肺炎、呼吸窮迫症候群の病理所見として矛盾せず、はっきりとした原因がない者
注) 他の診断によって症状の説明ができる場合は除外すること。
5 鳥インフルエンザ(H5N1)
(1) 定義
A型インフルエンザウイルス(H5N1)のトリからヒトへの感染による急性気道感染症である。
(2) 臨床的特徴
潜伏期間は概ね2~8日である。症例の初期症状の多くが、高熱と急性呼吸器症状を主とするインフルエンザ様疾患の症状を呈する。下気道症状は早期に発現し、呼吸窮迫、頻呼吸、呼吸時の異常音がよく認められ、臨床的に明らかな肺炎が多く見られる。
呼吸不全が進行した例ではびまん性のスリガラス様陰影が両肺に認められ、急性窮迫性呼吸症候群(ARDS)の臨床症状を呈する。
死亡例は発症から平均9~10日(範囲6~30日)目に発生し、進行性の呼吸不全による死亡が多く見られる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者のうち、38℃以上の発熱及び急性呼吸器症状のある者を診察した結果、症状や所見から鳥インフルエンザ(H5N1)が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鳥インフルエンザ(H5N1)と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
検体から直接のPCR法による病原体の遺伝子の検出 |
咽頭拭い液、肺胞洗浄液、剖検材料、鼻腔吸引液、鼻腔拭い液 |
分離・同定による病原体の検出 |
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表に掲げる検査方法により、鳥インフルエンザ(H5N1)の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
検体から直接のPCR法による病原体の遺伝子の検出 |
咽頭拭い液、肺胞洗浄液、剖検材料、鼻腔吸引液、鼻腔拭い液 |
分離・同定による病原体の検出 |
ウ 疑似症患者
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者のうち、38℃以上の発熱及び急性呼吸器症状のある者を診察した結果、症状や所見から鳥インフルエンザ(H5N1)が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、H5亜型が検出された場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
検体から直接のPCR法による病原体の遺伝子の検出 |
咽頭拭い液、肺胞洗浄液、剖検材料、鼻腔吸引液、鼻腔拭い液 |
エ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、鳥インフルエンザ(H5N1)が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鳥インフルエンザ(H5N1)により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
検体から直接のPCR法による病原体の遺伝子の検出 |
咽頭拭い液、肺胞洗浄液、剖検材料、鼻腔吸引液、鼻腔拭い液 |
分離・同定による病原体の検出 |
オ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、鳥インフルエンザ(H5N1)により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
第4 三類感染症
1 コレラ
(1) 定義
コレラ毒素(CT)産生性コレラ菌(Vibrio cholerae O1)又はV.cholerae O139による急性感染性腸炎である。
(2) 臨床的特徴
潜伏期間は数時間から5日、通常1日前後である。近年のエルトールコレラは軽症の水様性下痢や軟便で経過することが多いが、まれに“米のとぎ汁”様の便臭のない水様便を1日数リットルから数十リットルも排泄し、激しい嘔吐を繰り返す。
その結果、著しい脱水と電解質の喪失、チアノーゼ、体重の減少、頻脈、血圧の低下、皮膚の乾燥や弾力性の消失、無尿、虚脱などの症状、及び低カリウム血症による腓腹筋(ときには大腿筋)の痙攣がおこる。胃切除を受けた人や高齢者では重症になることがあり、また死亡例もまれにみられる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からコレラが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、コレラ患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
鑑別を必要とする疾患は、食中毒、その他の感染性腸炎である。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、コレラの無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、コレラが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、コレラにより死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、コレラにより死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出、かつ、分離菌における①、②いずれかによるコレラ毒素の確認 ①毒素産生の確認 ②PCR法による毒素遺伝子の検出 |
便 |
2 細菌性赤痢
(1) 定義
赤痢菌(Shigella dysenteriae、 S.flexneri、S.boydii、S.sonnei)の経口感染で起こる急性感染性大腸炎である。
(2) 臨床的特徴
潜伏期は1~5日(大多数は3日以内)。主要病変は大腸、特にS状結腸の粘膜の出血性化膿性炎症、潰瘍を形成することもある。
このため、発熱、下痢、腹痛を伴うテネスムス(tenesmus;しぶり腹―便意は強いがなかなか排便できないこと)、膿・粘血便の排泄などの赤痢特有の症状を呈する。近年、軽症下痢あるいは無症状に経過する例が多い。症状は一般に成人よりも小児の方が重い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から細菌性赤痢が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、細菌性赤痢患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
鑑別を必要とする疾患は、カンピロバクター、赤痢アメーバ、腸管出血性大腸菌等による他の感染性腸炎である。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、細菌性赤痢の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、細菌性赤痢が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、細菌性赤痢により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、細菌性赤痢により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
便 |
3 腸管出血性大腸菌感染症
(1) 定義
ベロ毒素(Verotoxin,VT)を産生する腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic E.coli,EHEC、Shigatoxin-producing E.coli,STECなど)の感染によって起こる全身性疾病である。
(2) 臨床的特徴
臨床症状は、一般的な特徴は腹痛、水様性下痢及び血便である。嘔吐や38℃台の高熱を伴うこともある。
さらにベロ毒素の作用により溶血性貧血、急性腎不全を来し、溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome,HUS)を引き起こすことがある。小児や高齢者では痙攣、昏睡、脳症などによって致命症となることがある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から腸管出血性大腸菌感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、腸管出血性大腸菌感染症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、腸管出血性大腸菌感染症の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、腸管出血性大腸菌感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、腸管出血性大腸菌感染症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、腸管出血性大腸菌感染症により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出、かつ、分離菌における次の①、②いずれかによるベロ毒素の確認 ①毒素産生の確認 ②PCR法等による毒素遺伝子の検出 |
便 |
ベロ毒素の検出(HUS発症例に限る) |
|
O抗原凝集抗体又は抗ベロ毒素抗体の検出(HUS発症例に限る) |
血清 |
4 腸チフス
(1) 定義
チフス菌(Salmonella serovar Typhi)の感染による全身性疾患である。
(2) 臨床的特徴
潜伏期間は7~14日で発熱を伴って発症する。
患者、保菌者の便と尿が感染源となる。
39℃を超える高熱が1週間以上も続き、比較的徐脈、バラ疹、脾腫、下痢などの症状を呈し、腸出血、腸穿孔を起こすこともある。
重症例では意識障害や難聴が起きることもある。無症状病原体保有者はほとんどが胆嚢内保菌者であり、胆石保有者や慢性胆嚢炎に合併することが多く、永続保菌者となることが多い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から腸チフスが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、腸チフス患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
鑑別を必要とする疾患は、パラチフス、マラリア、デング熱、A型肝炎、つつが虫病、チクングニア熱である。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、腸チフスの無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、腸チフスが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、腸チフスにより死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、腸チフスにより死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、骨髄液、便、尿、胆汁 |
5 パラチフス
(1) 定義
パラチフスA菌(Salmonella serovar Paratyphi A)の感染によって起こる全身性疾患である(Salmonella Paratyphi B、 Salmonella Paratyphi Cによる感染症はパラチフスから除外され、サルモネラ症として取り扱われる)。
(2) 臨床的特徴
臨床的症状は、腸チフスに類似する。7~14日の潜伏期間の後に38℃以上の高熱が続く。比較的徐脈、脾腫、便秘、時には下痢等の症状を呈する。症状は腸チフスと比較して、軽症の場合が多い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からパラチフスが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、パラチフス患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
鑑別を必要とする疾患は、腸チフス、マラリア、デング熱、A型肝炎、つつが虫病、チクングニア熱である。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、パラチフスの無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、パラチフスが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、パラチフスにより死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、パラチフスにより死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、骨髄液、便、尿、胆汁 |
第5 四類感染症
1 E型肝炎
(1) 定義
E型肝炎ウイルスによる急性ウイルス性肝炎である。
(2) 臨床的特徴
途上国では主に水系感染であるが、我が国では汚染された食品や動物の臓器や肉の生食による経口感染が指摘されている。潜伏期間はA型肝炎より長く、平均6週間といわれている。臨床症状はA型肝炎と類似しており、予後も通常はA型肝炎と同程度で、慢性化することはない。しかし、妊婦(第3三半期)に感染すると劇症化しやすく、致死率も高く20%に達することもある。特異的な治療法はなく、対症療法が中心となる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からE型肝炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、E型肝炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、E型肝炎の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、E型肝炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、E型肝炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、E型肝炎により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
血液・便 |
IgM抗体若しくはIgA抗体の検出 |
血清 |
2 ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎含む)
(1) 定義
フラビウイルス科に属するウエストナイルウイルスによる感染症で、蚊によって媒介される。
(2) 臨床的特徴
2~14日の潜伏期の後に高熱で発症する。発熱は通常3~6日間持続する。同時に頭痛、背部の痛み、筋肉痛、食欲不振などの症状を有する。発疹が胸部、背、上肢に認められる場合もある。通常リンパ節腫脹が認められる。症状は通常1週間以内で回復するが、その後全身倦怠感が残ることも多い。特に高齢者においては、上記症状とともに、さらに重篤な症状として、激しい頭痛、悪心、嘔吐、方向感覚の欠如、麻痺、意識障害、痙攣等の症状が出現し髄膜脳炎、脳炎を発症することがある。重篤な例で筋力低下が約半数に認められている。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からウエストナイル熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ウエストナイル熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ウエストナイル熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ウエストナイル熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ウエストナイル熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ウエストナイル熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、髄液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
IgM抗体の検出 |
血清、髄液 |
ペア血清による中和抗体陽転又は中和抗体価の有意の上昇 |
血清 |
3 A型肝炎
(1) 定義
A型肝炎ウイルスによる急性ウイルス性肝炎である。
(2) 臨床的特徴
主たる感染経路は、汚染された食品や水などを介した経口的な感染である。潜伏期間は平均4週間である。感染期間は、ウイルスが便に排泄される発病の3~4週間前から発症後数か月にわたる。主な臨床症状は発熱、全身倦怠感、食欲不振で、黄疸、肝腫大などの肝症状が認められる。一般に予後は良く、慢性化することはないが、まれに劇症化することがある。
小児では不顕性感染や軽症のことが多い。特異的な治療法はなく、対症療法が中心となる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からA型肝炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、A型肝炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、A型肝炎の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、A型肝炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、A型肝炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、A型肝炎により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
血液、便 |
IgM抗体の検出 |
血清 |
4 エキノコックス症
(1) 定義
エキノコックス(Echinococcus)による感染症で、単包条虫(Echinococcus granulosus)と多包条虫(Echinococcus multilocularis)の2種類がある。
(2) 臨床的特徴
ヒトへの感染は、キツネやイヌなどから排泄された虫卵に汚染された水、食物、埃などを経口的に摂取した時に起こる。体内に発生した嚢胞は緩慢に増大し、周囲の臓器を圧迫する。多包虫病巣の拡大は極めてゆっくりで、肝臓の腫大、腹痛、黄疸、貧血、発熱や腹水貯留などの初期症状が現れるまで、成人では通常10年以上を要する。放置すると約半年で腹水が貯留し、やがて死に至る。
発症前や早期の無症状期でも、スクリーニング検査の超音波、CT、MRIの所見から検知される場合がある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からエキノコックス症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、エキノコックス症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、エキノコックス症の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、エキノコックス症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、エキノコックス症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、エキノコックス症により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
包虫あるいは包虫の一部の検出 |
肝臓の摘出組織、生検組織 |
ELISA法又はWestern Blot法による抗体の検出 |
血清 |
5 黄熱
(1) 定義
フラビウイルス科に属する黄熱ウイルスの感染によるウイルス性出血熱である。ネッタイシマカなどにより媒介される。
(2) 臨床的特徴
潜伏期間は3~6日間で、発症は突然である。悪寒又は悪寒戦慄とともに高熱を出し、嘔吐、筋肉痛、出血(鼻出血、歯齦出血、黒色嘔吐、下血、子宮出血)、蛋白尿、比較的徐脈、黄疸等を来す。普通は7~8病日から治癒に向かうが、重症の場合には乏尿、心不全、肝性昏睡などで、5~10病日に約10%が死亡する。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から黄熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、黄熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、黄熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、黄熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、黄熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、黄熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
IgM抗体の検出 |
血清 |
ペア血清による中和抗体陽転又は中和抗体価の有意の上昇 |
6 オウム病
(1) 定義
オウム病クラミジアChlamydophila(Chlamydia)psittaciを病原体とする呼吸器疾患である。
(2) 臨床的特徴
主にオウムなどの愛玩用のトリからヒトに感染し、肺炎などの気道感染症を起こす。1~2週間の潜伏期の後に、突然の発熱で発病する。初期症状として悪寒を伴う高熱、頭痛、全身倦怠感、食欲不振、筋肉痛、関節痛などがみられる。呼吸器症状として咳、粘液性痰などがみられる。軽い場合はかぜ程度の症状であるが、高齢者などでは重症になりやすい。胸部レントゲンで広範な肺病変はあるが、理学的所見は比較的軽度である。重症になると呼吸困難、意識障害、DICなどがみられる。発症前にトリとの接触があったかどうかが診断のための参考になる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からオウム病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、オウム病患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、オウム病の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、オウム病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、オウム病により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、オウム病により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
咽頭拭い液、喀痰、血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
間接蛍光抗体法による抗体の検出(単一血清でIgM抗体の検出若しくはIgG抗体256倍以上、又はペア血清による抗体陽転若しくは抗体価の有意の上昇) |
血清 |
7 オムスク出血熱
(1) 定義
フラビウイルス科フラビウイルス属に属するオムスク出血熱ウイルスによる感染症である。
(2) 臨床的特徴
自然界ではマダニとげっ歯類のあいだで感染環が維持されている。ヒトは主にマダニの刺咬により感染するが、げっ歯類等の尿や血液による接触感染もありうる。また、稀にはヒト―ヒト感染、飛沫感染もあるとされる。潜伏期間は3~9日で、突然の発熱、頭痛、筋肉痛、咳、徐脈、脱水、低血圧、消化器症状を生じ、稀には出血熱となる。患者の30~50%は二相性の発熱を示し、第二期には髄膜炎、腎機能障害、肺炎などを生じる。致死率は0.5~3%であるが、難聴や脱毛、神経精神障害などの後遺症を残すことがある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からオムスク出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、オムスク出血熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、オムスク出血熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、オムスク出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、オムスク出血熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、オムスク出血熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、髄液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
IgM抗体の検出 |
|
中和試験による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
血清 |
8 回帰熱
(1) 定義
シラミあるいはヒメダニ(Ornithodoros属:ヒメダニ属)によって媒介されるスピロヘータ(回帰熱ボレリア)感染症である。
(2) 臨床的特徴
コロモジラミ媒介性Borreliarecurrentisやヒメダニ媒介性B.duttonii等がヒトに対する病原体である。
菌血症による発熱期、菌血症を起こしていない無熱期を3~5回程度繰り返す、いわゆる回帰熱を主訴とする。感染後5~10日を経て菌血症による頭痛、筋肉痛、関節痛、羞明、咳などをともなう発熱、悪寒がみられる(発熱期)。
また、このとき点状出血、紫斑、結膜炎、肝臓や脾臓の腫大、黄疸もみられる。
発熱期は3~7日続いた後、一旦解熱する(無熱期)。
無熱期では血中から菌は検出されない。発汗、全身倦怠感、時に低血圧や斑状丘疹をみることもある。この後5~7日後再び発熱期に入る。
上記症状以外で肝炎、心筋炎、脳出血、脾破裂、大葉性肺炎などがみられる場合もある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から回帰熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、回帰熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、回帰熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、回帰熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、回帰熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、回帰熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液(発熱期) |
暗視野顕微鏡下鏡検による病原体の検出 |
|
蛍光抗体法による末梢血スメアの観察による病原体の抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
9 キャサヌル森林病
(1) 定義
フラビウイルス科フラビウイルス属に属するキャサヌル森林病ウイルスによる感染症である。
(2) 臨床的特徴
自然界では、マダニとげっ歯類を主とする脊椎動物のあいだで感染環が維持されている。ヒトへの感染もマダニの刺咬によって生じる。潜伏期間は3~12日であり、突然の発熱、頭痛、筋肉痛、咳嗽、徐脈、脱水、低血圧、消化器症状、出血などを来たす。約40%に出血性肺水腫がみられ、ときに腎不全も生じる。患者の15~50%では1~3週間寛解が続いた後、再度発熱がみられ、髄膜炎や脳炎を生じて項部硬直、精神障害、振戦、めまいなどを来たす。致死率は3~5%であり、後遺症を残すことはない。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からキャサヌル森林病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、キャサヌル森林病患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、キャサヌル森林病の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、キャサヌル森林病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、キャサヌル森林病により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、キャサヌル森林病により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、髄液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
IgM抗体の検出 |
|
中和試験による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
血清 |
10 Q熱
(1) 定義
コクシエラ科コクシエラ属のCoxiella burnetiiの感染によって起こる感染症である。
(2) 臨床的特徴
通常は家畜やネコなどのペットの流産や出産に関連して、胎盤に感染しているC.burnetiiを吸入するなどによって、2~3週間の潜伏期を経て発症する。急性Q熱ではインフルエンザ様で突然の高熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、眼球後部痛の症状で始まる。自然治癒傾向が強く、多くは14日以内に解熱する。間質性肺炎が主体の肺炎型や肝機能異常が主体の肝炎型がある。予後は一般に良い。1割程度が慢性Q熱に移行するとされ、弁膜症などの基礎疾患を持つ例で心内膜炎を起こすと難治性となり、致死率が高くなる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からQ熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、Q熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、Q熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、Q熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、Q熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、Q熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
間接蛍光抗体法による抗体の検出(単一血清でIgM抗体64倍以上若しくはIgG抗体256倍以上、又はペア血清による抗体陽転若しくは抗体価の有意の上昇) |
血清 |
11 狂犬病
(1) 定義
ラブドウイルス科に属す狂犬病ウイルスの感染による神経疾患である。
(2) 臨床的特徴
狂犬病は狂犬病ウイルスを保有するイヌ、ネコ、コウモリ、キツネ、スカンク、コヨーテなどの野生動物に咬まれたり、引っ掻かれたりして感染し、発症する。
潜伏期は1~3カ月で、まれに1年以上に及ぶ。臨床的には咬傷周辺の知覚異常、疼痛、不安感、不穏、頭痛、発熱、恐水発作、麻痺と進む。発症すると致命的となる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から狂犬病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、狂犬病患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、狂犬病の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、狂犬病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、狂犬病により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、狂犬病により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
唾液 |
蛍光抗体法による病原体の抗原の検出 |
角膜塗抹標本、頚部の皮膚、気管吸引材料、唾液腺の生検材料、脳組織及び脳乳剤 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
唾液、髄液、脳組織及び脳乳剤 |
Fluorecent Focus Inhibition Test又はELISA法による抗体の検出 |
髄液 |
12 コクシジオイデス症
(1) 定義
真菌のCoccidioides immitisの感染症である。
(2) 臨床的特徴
強風や土木工事などにより土壌中のC.immitisの分節型分生子が土埃と共に空中に舞い上がり、これを吸入することにより肺感染が起こり、そのうち約0.5%の患者が全身感染へと進む。この病原体を取り扱う実験者、検査従事者などの2次感染の危険性が高い。本邦では、慢性肺コクシジオイデス症がみられることが多く、CTなどの画像診断において、結節や空洞病変が確認される。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からコクシジオイデス症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、コクシジオイデス症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、コクシジオイデス症の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、コクシジオイデス症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、コクシジオイデス症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、コクシジオイデス症により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
喀痰、気管支洗浄液、肺又は皮膚の病理組織 |
鏡検による病原体の検出 |
|
免疫拡散法による抗体の検出 |
血清、髄液 |
13 サル痘
(1) 定義
サル痘ウイルス(Monkeypox virus)による急性発疹性疾患である。
(2) 臨床的特徴
げっ歯類やサルなどの野生動物、あるいはそれらから感染したペットに咬まれる、あるいは血液、体液、発疹などに触れることで感染する。ヒトからヒトへの感染はまれではあるが、飛沫による感染、あるいは体液、患者の体液や飛沫で汚染された衣類・寝具などとの接触による感染がありうる。潜伏期間は7~21日(大部分は10~14日)である。発熱、不快感、頭痛、背部痛、発疹など、痘そうとよく似た症状がみられるが、局所リンパ節の腫脹がある。致死率は低い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からサル痘が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、サル痘患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、サル痘の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、サル痘が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、サル痘により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、サル痘により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
水疱、膿疱、血液、リンパ節 |
ウイルス粒子の直接観察(電子顕微鏡)による病原体の検出(確定例からの二次感染時又は感染動物からの感染が強く疑われる場合) |
|
蛍光抗体法による病原体の抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
14 重症熱性血小板減少症候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る。)
(1) 定義
ブニヤウイルス科フレボウイルス属の重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS)ウイルスによる感染症である。
(2) 臨床的特徴
主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺咬されることで感染する。
潜伏期間は6~14日。発熱、消化器症状(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)を主徴とし、時に、頭痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、出血症状などを伴う。血液所見では、血小板減少(10万/mm3未満)、白血球減少(4000/mm3未満)、血清酵素(AST、ALT、LDH)の上昇が認められる。致死率は10~30%程度である。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から重症熱性血小板減少症候群が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、重症熱性血小板減少症候群患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、重症熱性血小板減少症候群の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、重症熱性血小板減少症候群が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、重症熱性血小板減少症候群により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、重症熱性血小板減少症候群により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、血清、咽頭拭い液、尿 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
ELISA法又は蛍光抗体法による抗体の検出(IgM抗体の検出又はペア血清による抗体陽転若しくは抗体価の有意の上昇) |
血清 |
中和試験による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
15 腎症候性出血熱
(1) 定義
ハンタウイルス(ブニヤウイルス科ハンタウイルス属)による熱性・腎性疾患である。
(2) 臨床的特徴
主にネズミの排泄物に接触(エアロゾルの吸入を含む)することにより、ヒトにウイルスが伝播する。このウイルスはヒトに感染すると状況により重篤な全身感染、あるいは腎疾患を生じ、以下の型が知られている。
ア 重症アジア型
ドブネズミ、高麗セスジネズミが媒介する。潜伏期間は10~30日で、発熱で始まる有熱期、低血圧期(ショック)(4~10日)、乏尿期(8~13日)、利尿期(10~28日)、回復期に分けられる。全身皮膚に点状出血が出ることがある。発症から死亡までの時間は4~28日で、尿素窒素は50~300mg/dlに達する。常時高度の蛋白尿、血尿を伴う。
イ 軽症スカンジナビア型
ヤチネズミによる。ごく軽度の発熱、蛋白尿、血尿がみられるのみで、極めてまれに重症化する。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から腎症候性出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、腎症候性出血熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、腎症候性出血熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、腎症候性出血熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、腎症候性出血熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、腎症候性出血熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、尿(急性期) |
PCR法による病原体の遺伝子の検出(白血球を用いる) |
|
ELISA法又は間接蛍光抗体法によるIgM抗体若しくはIgG抗体の検出 |
血清 |
16 西部ウマ脳炎
(1) 定義
トガウイルス科アルファウイルス属に属する西部ウマ脳炎ウイルスによる感染症である。
(2) 臨床的特徴
自然界では、イエカと鳥の間で感染環が維持されている。ヒトへの感染もイエカの刺咬による。潜伏期間は5~10日であり、頭痛、発熱、情緒不安、振戦、易興奮性、項部硬直、羞明、ときに異常な精神状態などがみられる。脳炎を生じると意識障害、弛緩性/痙性麻痺がみられる。特に乳児では急速な経過を取り、固縮、痙攣、泉門膨隆などがみられ、生残者の60%以上で脳に障害を残し、進行性の知能発育不全をきたす。年長になるほど回復は早く、通常は5~10日で回復する。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から西部ウマ脳炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、西部ウマ脳炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、西部ウマ脳炎の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、西部ウマ脳炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、西部ウマ脳炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、西部ウマ脳炎により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、髄液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
IgM抗体の検出 |
|
中和試験による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
血清 |
17 ダニ媒介脳炎
(1) 定義
フラビウイルス科フラビウイルス属に属するダニ媒介脳炎ウイルスによる感染症であり、中央ヨーロッパダニ媒介脳炎とロシア春夏脳炎の2型に分けられる。
(2) 臨床的特徴
自然界ではマダニとげっ歯類との間に感染環が維持されているが、マダニでは経卵伝播もありうる。ヒトへの感染は主にマダニの刺咬によるが、ヤギの乳の飲用によることもある。潜伏期間は通常7~14日である。中央ヨーロッパ型では、発熱、筋肉痛などのインフルエンザ様症状が出現し、2~4日間続く。症例の三分の一では、その後数日経って第Ⅱ期に入り、髄膜脳炎を生じて痙攣、眩暈、知覚異常などを呈する。致死率は1~2%であるが、神経学的後遺症が10~20%にみられる。ロシア春夏脳炎では、突然に高度の頭痛、発熱、悪心、羞明などで発症し、その後順調に回復する例もあるが、他では髄膜脳炎に進展し、項部硬直、痙攣、精神症状、頚部や上肢の弛緩性麻痺などがみられる。致死率は20%に上り、生残者の30~40%では神経学的後遺症を来たす。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からダニ媒介脳炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ダニ媒介脳炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ダニ媒介脳炎の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ダニ媒介脳炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ダニ媒介脳炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ダニ媒介脳炎により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、髄液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
IgM抗体の検出 |
|
中和試験による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
血清 |
18 炭疽
(1) 定義
本症は炭疽菌(Bacillus anthracis)によるヒトと動物の感染症である。
(2) 臨床的特徴
ヒト炭疽には4つの主要な病型がある。
ア 皮膚炭疽
全体の95~98%を占める。潜伏期は1~7日である。初期病変はニキビや虫さされ様で、かゆみを伴うことがある。初期病変周囲には水疱が形成され、次第に典型的な黒色の痂皮となる。およそ80%の患者では痂皮の形成後7~10日で治癒するが、20%では感染はリンパ節及び血液へと進展し、敗血症を発症して致死的である。
イ 肺炭疽
上部気道の感染で始まる初期段階はインフルエンザ等のウイルス性呼吸器感染や軽度の気管支肺炎に酷似しており、軽度の発熱、全身倦怠感、筋肉痛等を訴える。数日して第2の段階へ移行すると突然呼吸困難、発汗及びチアノーゼを呈する。この段階に達すると通常、24時間以内に死亡する。
ウ 腸炭疽
本症で死亡した動物の肉を摂食した後2~5日で発症する。腸病変部は回腸下部及び盲腸に多い。初期症状として悪心、嘔吐、食欲不振、発熱があり、次いで腹痛、吐血を呈し、血液性の下痢を呈する場合もある。毒血症へと移行すると、ショック、チアノーゼを呈し死亡する。腸炭疽の致死率は25~50%とされる。
エ 髄膜炭疽
皮膚炭疽の約5%、肺炭疽の2/3に引き続いて起こるが、まれに初感染の髄膜炭疽もある。髄膜炭疽は治療を行っても、発症後2~4日で100%が死亡する。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から炭疽が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、炭疽患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、炭疽の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、炭疽が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、炭疽により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、炭疽により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
病巣組織、血液、髄液、胸水、皮膚病変部 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
19 チクングニア熱
(1) 定義
トガウイルス科アルファウイルス属に属するチクングニアウイルスによる感染症である。
(2) 臨床的特徴
チクングニアウイルスを保有するヤブカ属のネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどに刺されることで感染する。潜伏期間は3~12日(通常3~7日)で、患者の大多数は急性熱性疾患の症状を呈する。発熱と関節痛は必発であり、発疹は8割程度に認められる。関節痛は四肢(遠位)に強く対称性で、その頻度は手首、足首、指趾、膝、肘、肩の順であり、関節の炎症や腫脹を伴う場合もある。関節痛は急性症状が軽快した後も、数週間から数ヶ月にわたって続く場合がある。その他の症状としては、全身倦怠感・頭痛・筋肉痛・リンパ節腫脹である。血液所見では、リンパ球減少、血小板減少が認められる。重症例では神経症状(脳症)や劇症肝炎が報告されている。アフリカ、インド洋島嶼国、インド、東南アジアの熱帯・亜熱帯地域を中心として流行がみられている。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からチクングニア熱が疑われ、かつ、エの次に掲げる表の左欄に掲げる検査方法により、チクングニア熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、チクングニア熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、チクングニア熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、チクングニア熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、チクングニア熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
IgM抗体の検出 |
血清 |
ELISA法(IgG抗体)、中和試験又は赤血球凝集阻止法による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
20 つつが虫病
(1) 定義
つつが虫病リケッチア(Orientia tsutsugamushi)による感染症である。
(2) 臨床的特徴
つつが虫病リケッチアを保有するツツガムシに刺されて5~14日の潜伏期の後に、全身倦怠感、食欲不振とともに頭痛、悪寒、発熱などを伴って発症する。体温は段階的に上昇し数日で40℃にも達する。刺し口は皮膚の柔らかい隠れた部分に多い。刺し口の所属リンパ節は発熱する前頃から次第に腫脹する。第3~4病日より不定型の発疹が出現するが、発疹は顔面、体幹に多く四肢には少ない。テトラサイクリン系の有効な抗菌薬による治療が適切に行われると劇的に症状の改善がみられる。重症になると肺炎や脳炎症状を来す。北海道、沖縄など一部の地域を除いて全国で発生がみられる。
発生時期は春~初夏及び晩秋から冬であるが、媒介ツツガムシの生息地域によって異なる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からつつが虫病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、つつが虫病患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、つつが虫病の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、つつが虫病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、つつが虫病により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、つつが虫病により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、病理組織 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
間接蛍光抗体法又は間接免疫ペルオキシダーゼ法による抗体の検出(IgM抗体の検出又はペア血清による抗体陽転若しくは抗体価の有意の上昇) |
血清 |
21 デング熱
(1) 定義
フラビウイルス科に属するデングウイルス感染症である。
(2) 臨床的特徴
2~15日(多くは3~7日)の潜伏期の後に突然の高熱で発症する。頭痛、眼窩痛、顔面紅潮、結膜充血を伴う。発熱は2~7日間持続する(二峰性であることが多い)。初期症状に続いて全身の筋肉痛、骨関節痛、全身倦怠感を呈する。発症後3~4日後胸部、体幹からはじまる発疹が出現し、四肢、顔面へ広がる。症状は1週間程度で回復する。血液所見では高度の白血球減少、血小板減少がみられる。出血やショック症状を伴う重症型としてデング出血熱(※)があり、全身管理が必要となることもある。ヒトからヒトへの直接感染はないが、熱帯・亜熱帯(特にアジア、オセアニア、中南米)に広く分布する。日本国内での感染はないが、海外で感染した人が国内で発症することがある。
(※) デング出血熱:デング熱とほぼ同様に発症経過するが、解熱の時期に血漿漏出や血小板減少による出血傾向に基づく症状が出現し、死に至ることもある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からデング熱が疑われ、かつ、エの次に掲げる表の左欄に掲げる検査方法により、デング熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
下記の4つの基準を全て満たした場合にはデング出血熱として届け出ること。
項目 |
内容 |
臨床症状 |
2~7日持続する発熱(時に二峰性のパターンをとる) |
血管透過性の亢進 |
以下の血漿漏出症状のうち1つ以上 ・ ヘマトクリットの上昇(補液なしで同性、同年代の者に比べ20%以上の上昇) ・ ショック症状の存在 ・ 血清蛋白の低下あるいは、胸水又は腹水の存在 |
血小板の減少 |
100,000/mm3以下 |
出血傾向 |
以下の出血傾向のうち1つ以上 ・ Tourniquetテスト陽性 ・ 点状出血、斑状出血あるいは紫斑 ・ 粘膜あるいは消化管出血、あるいは注射部位や他の部位からの出血 ・ 血便 |
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、デング熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、デング熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、デング熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、デング熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
非構造蛋白抗原(NS1)の検出 |
血清 |
IgM抗体の検出 |
|
中和試験又は赤血球凝集阻止法による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
22 東部ウマ脳炎
(1) 定義
トガウイルス科アルファウイルス属に属する東部ウマ脳炎ウイルスによる感染症である。
(2) 臨床的特徴
自然界では蚊と鳥の間で感染環が維持されており、鳥への媒介蚊は主にハボシカ属の蚊であるが、キンイロヤブカなども関係する。ヒトへの感染は主にヤブカの刺咬による。潜伏期間は3~10日であり、高熱、悪寒、倦怠感、筋肉痛などを生じるが、1~2週間で回復することが多い。しかし、ときには脳炎を発症して、昏睡、死亡に至ることがある。脳炎は50歳以上や15歳以下で起こりやすく、致死率は33%にも上り、生残者の半数は軽度~高度の永続的な神経学的後遺症を残す。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から東部ウマ脳炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、東部ウマ脳炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、東部ウマ脳炎の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、東部ウマ脳炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、東部ウマ脳炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、東部ウマ脳炎により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、髄液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
IgM抗体の検出 |
|
中和試験による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
血清 |
23 鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く。)
(1) 定義
トリに対して感染性を示すA型インフルエンザウイルス(H5N1及びH7N9亜型を除く。)のヒトへの感染症である。
(2) 臨床的特徴
鳥インフルエンザウイルスに感染した家禽などからヒトへウイルスが感染することがごくまれに起こる。H5、H7、H9亜型ウイルスのヒトへの感染が報告されており、1997年の香港でのA/H5N1、2003年オランダでのA/H7N7による事例では、ヒトからヒトへの感染伝播も起こったと報告されている。
鳥インフルエンザウイルスのH5、H7亜型の感染例では、潜伏期間は通常のインフルエンザと同じく1~3日と考えられており、症状は突然の高熱、咳などの呼吸器症状の他、下痢、重篤な肺炎、多臓器不全などの全身症状を引き起こす重症例もある。
A/H7N7亜型ウイルスの感染では結膜炎を起こした例が多い。
香港などで数例報告されているA/H9N2亜型ウイルスによる感染では、発熱、咳等の通常のインフルエンザ様症状を呈したと報告されている。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く。)が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く。)患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く。)の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く。)が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く。)により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、鳥インフルエンザにより(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く。)死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
咽頭拭い液、肺胞洗浄液、剖検材料、鼻腔吸引液、鼻腔拭い液 |
検体から直接のPCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
中和試験による抗体の検出 |
血清 |
24 ニパウイルス感染症
(1) 定義
ニパウイルスによる感染症である。
(2) 臨床的特徴
感染経路は感染動物(主にブタ)の体液や組織との接触によると考えられている。通常、発熱と筋肉痛などのインフルエンザ様症状を呈し、その一部が意識障害、痙攣などを伴い、脳炎を発症する。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からニパウイルス感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ニパウイルス感染症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ニパウイルス感染症の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ニパウイルス感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ニパウイルス感染症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ニパウイルス感染症により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
髄液(急性期)、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、尿、病理組織 |
免疫染色による病原体の抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出(剖検例は中枢神経系組織からも検出される) |
|
ELISA法又は中和試験による抗体の検出(IgM抗体の検出(ELISA法のみ)又はペア血清による抗体陽転若しくは抗体価の有意の上昇) |
血清 |
25 日本紅斑熱
(1) 定義
日本紅斑熱リケッチア(Rickettsia japonica)による感染症である。
(2) 臨床的特徴
日本紅斑熱リケッチアを保有するマダニ(キチマダニ、フタトゲチマダニなど)に刺されることで感染する。刺されてから2~8日頃から頭痛、全身倦怠感、高熱などを伴って発症する。刺し口を見つけることは診断の助けとなる。高熱とほぼ同時に紅色の斑丘疹が手足など末梢部から求心性に多発する。リンパ節腫脹はあまりみられない。CRP陽性、白血球減少、血小板減少、肝機能異常などはつつが虫病と同様であるが、つつが虫病に比べDICなど重症化しやすい。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から日本紅斑熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、日本紅斑熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、日本紅斑熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、日本紅斑熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、日本紅斑熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、日本紅斑熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、病理組織 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
間接蛍光抗体法又は間接免疫ペルオキシダーゼ法による抗体の検出(IgM抗体の検出又はペア血清による抗体陽転若しくは抗体価の有意の上昇) |
血清 |
26 日本脳炎
(1) 定義
フラビウイルス科に属する日本脳炎ウイルスの感染による急性脳炎である。ブタが増幅動物となり、コガタアカイエカなどの蚊が媒介する。
(2) 臨床的特徴
感染後1~2週間の潜伏期を経て、急激な発熱と頭痛を主訴として発症する。その他、初発症状として全身倦怠感、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛も存在する。その後、症状は悪化し、項部硬直、羞明、意識障害、興奮、仮面様顔貌、筋硬直、頭部神経麻痺、眼振、四肢振戦、不随意運動、運動失調、病的反射が出現する。知覚障害はまれである。発熱は発症4~5日に最も高くなり、熱はその後次第に低下する。致死率は約25%、患者の50%は後遺症を残し、その他は回復する。死亡する場合は発症後1週間程度で死亡する。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から日本脳炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、日本脳炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、日本脳炎の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、日本脳炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、日本脳炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、日本脳炎により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、髄液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
IgM抗体の検出 |
血清、髄液 |
中和試験又は赤血球凝集阻止法又は補体結合反応による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
血清 |
27 ハンタウイルス肺症候群
(1) 定義
ブニヤウイルス科、ハンタウイルス属の新世界ハンタウイルス(シンノンブレウイルス等)による急性呼吸器感染症である。
(2) 臨床的特徴
前駆症状として発熱と筋肉痛がみられる。次いで咳、急性に進行する呼吸困難が特徴的で、しばしば消化器症状及び頭痛を伴う。頻呼吸、頻拍の出現頻度が高い。半数に低血圧等を伴う。発熱・悪寒は1~4日続き、次いで進行性呼吸困難、酸素不飽和状態に陥る(肺水腫、肺浮腫による)。早い場合は発症後24時間以内の死亡も頻繁にみられる。肺水腫等の機序は心原性ではない。X線で肺中に広範な滲出液の貯留した特徴像が出る。致死率は40~50%である。
感染経路としては、①ウイルスを含む排泄物(尿、便)、唾液により汚染されたほこりを吸い込む(これが最も多い)、②手足の傷口からウイルスに汚染されたネズミの排泄物、唾液が接触して入る、③ネズミに咬まれる等である。
媒介動物は、米国ではシカシロアシネズミが、南米ではコットンラットがウイルス保有動物として最も一般的である。ウイルスを媒介するこの群のネズミは米国、カナダ、中南米(チリ、アルゼンチン等)にも存在する。このネズミとウイルスは日本では見つかっていない。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からハンタウイルス肺症候群が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ハンタウイルス肺症候群患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ハンタウイルス肺症候群の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ハンタウイルス肺症候群が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ハンタウイルス肺症候群により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ハンタウイルス肺症候群により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、肺組織材料(生検、剖検による新鮮・凍結組織) |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
間接蛍光抗体法又はELISA法によるIgM抗体若しくはIgG抗体の検出 |
血清 |
28 Bウイルス病
(1) 定義
マカク属のサルに常在するBウイルス(ヘルペスウイルス科・アルファヘルペスウイルス亜科)による熱性・神経性疾患である。
(2) 臨床的特徴
サルによる咬傷後、症状発現までの潜伏期間は早い場合2日、通常2~5週間である。早期症状としては、サルとの接触部位(外傷部)周囲の水疱性あるいは潰瘍性皮膚粘膜病変、接触部位の疼痛、掻痒感、所属リンパ節腫脹を来し、中期症状としては発熱、接触部位の感覚異常、接触部位側の筋力低下あるいは麻痺を、眼にサルの分泌物等がはねとんだ際には結膜炎を来す。晩期には副鼻腔炎、項部強直、持続する頭痛、悪心・嘔吐、脳幹部症状として複視、構語障害、目まい、失語症、交差性麻痺及び知覚障害、意識障害、脳炎症状を来し、無治療での致死率は70~80%。生存例でも重篤な神経障害が後遺症としてみられる。
感染経路は実験室、動物園あるいはペットのマカク属サルとの接触(咬傷、擦過傷)及びそれらのサルの唾液、粘液とヒト粘膜との接触(とびはね)による。また実験室ではサルに使用した注射針の針刺し、培養ガラス器具による外傷によっても感染する。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からBウイルス病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、Bウイルス病患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、Bウイルス病の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、Bウイルス病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、Bウイルス病により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、Bウイルス病により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
咽頭拭い液、脳脊髄液、咬傷部・擦過部位の生検組織 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
ELISA法(ドットブロット法を含む)による抗体の検出 (注)ヒトではHSV―1とBウイルスの抗原性は交差するので、従来の抗原抗体反応系(蛍光抗体法等)は使用できない。 |
血清 |
29 鼻疽
(1) 定義
鼻疽菌(Burkholderia mallei)による感染症である。
(2) 臨床的特徴
主な感染経路は、ウマの分泌物の吸入あるいはそれらとの接触感染である。潜伏期間は通常1~14日であるが、まれに年余にわたることもある。初発症状は発熱、頭痛などであるが、重篤な敗血症性ショックを生じやすい。特徴的な局所症状はほとんどないが、皮膚に潰瘍を形成することもある。また、肺炎(急性壊死性肺炎)や肺膿瘍を発症する例もある。慢性感染の場合は、皮下、筋肉、腹部臓器などに膿瘍を形成する。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から鼻疽が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鼻疽患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鼻疽の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、鼻疽が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鼻疽により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、鼻疽により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
皮膚病変組織・膿・喀痰・咽頭拭い液・血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
30 ブルセラ症
(1) 定義
本症はウシ、ブタ、ヤギ、イヌ及びヒツジの感染症であるが、原因菌(Brucella abortus、B.suis、B.melitensis、及びB.canis)がヒトに感染して発症する。波状熱、マルタ熱、地中海熱などの名前でも呼ばれる。
(2) 臨床的特徴
感染源は感染動物の組織、乳汁、血液、尿、胎盤、膣排泄物、流産胎児などである。B.canisに感染したイヌの尿も感染源になるとされる。潜伏期間は1~18週、通常2~8週との報告がある。臨床所見として比較的共通のものは脾腫、リンパ節(特に頚部、鼠径部リンパ節)の腫脹、関節の腫脹と痛みがあり、その他に20~50%の患者に、進行の時期によって泌尿器生殖器症状があらわれる。
B.melitensisの感染では、約70%の患者に肝腫大が認められる。本感染による致死率は一般的には低いが、心内膜炎を併発している場合には致死率は上昇し、ヒトのブルセラ症による死亡の多くはこれが原因である。ヒトブルセラ症の3~5%に神経症状や精神神経的な症状が出現するとされる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からブルセラ症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ブルセラ症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ブルセラ症の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ブルセラ症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ブルセラ症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ブルセラ症により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、骨髄、膿瘍 |
試験管凝集反応による抗体の検出(抗原がアポルタスの場合は40倍以上、カニスの場合は160倍以上の抗体価) |
血清 |
|
31 ベネズエラウマ脳炎
(1) 定義
トガウイルス科アルファウイルス属に属するベネズエラウマ脳炎ウイルスによる感染症である。
(2) 臨床的特徴
自然界ではイエカとげっ歯類の間で感染環が維持されている。ヒトへの感染もイエカの刺咬によって生じる。潜伏期間は2~5日であり、発熱、頭痛、筋肉痛、硬直などを生じる。中枢神経病変を生じると項部硬直、痙攣、昏睡、麻痺などがみられるが、これらは15歳未満の小児患者の4%にみられる。致死率は10~20%とされている。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からベネズエラウマ脳炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ベネズエラウマ脳炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ベネズエラウマ脳炎の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ベネズエラウマ脳炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ベネズエラウマ脳炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ベネズエラウマ脳炎により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、髄液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
IgM抗体の検出 |
|
中和試験による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
血清 |
32 ヘンドラウイルス感染症
(1) 定義
パラミクソウイルス科ニパウイルス属に属するヘンドラウイルスによる感染症である。
(2) 臨床的特徴
自然宿主はオオコウモリである。ヒトへの感染は、動物(主にウマ)の体液や組織との接触感染によると考えられている。ヒト症例は非常に少数であり、臨床像の詳細は明らかでないが、発熱や筋肉痛などのインフルエンザ様症状から、重篤な肺炎、さらには脳炎による意識障害、痙攣などがありうる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からヘンドラウイルス感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ヘンドラウイルス感染症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ヘンドラウイルス感染症の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ヘンドラウイルス感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ヘンドラウイルス感染症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ヘンドラウイルス感染症により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
髄液(急性期)、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、尿、病理組織 |
免疫染色による病原体の抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出(剖検例は中枢神経系組織からも検出される) |
|
ELISA法又は中和試験による抗体の検出(IgM抗体の検出(ELISA法のみ)又はペア血清による抗体陽転若しくは抗体価の有意の上昇) |
血清 |
33 発しんチフス
(1) 定義
Rickettsia prowazekiiによる急性感染症で、コロモジラミによって媒介される。
(2) 臨床的特徴
発熱、頭痛、悪寒、脱力感、手足の疼痛を伴って突然発症する。熱は39~40℃に急上昇する。発疹は発熱第5~6病日に、体幹から全身に拡がるが、顔面、手掌、足底に出現することは少ない。発疹は急速に点状出血斑となる。患者は明らかな急性症状を呈するが、発熱からおよそ2週間後に急速に解熱する。重症例の半数に精神神経症状が出現する。
初感染後、潜伏感染し数年後に再発することがある(Brill-Zinsser病)が、症状は軽度である。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から発しんチフスが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、発しんチフス患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、発しんチフスの無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、発しんチフスが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、発しんチフスにより死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、発しんチフスにより死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、病理組織 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
補体結合反応又は間接酵素抗体法による抗体の検出 |
血清 |
34 ボツリヌス症
(1) 定義
ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)が産生するボツリヌス毒素、又はC.butyricum、C.baratiiなどが産生するボツリヌス毒素により発症する神経、筋の麻痺性疾患である。
(2) 臨床的特徴
ボツリヌス毒素又はそれらの毒素を産生する菌の芽胞が混入した食品の摂取などによって発症する。潜伏期は、毒素を摂取した場合(食餌性ボツリヌス症)には、5時間~3日間(通常12~24時間)とされる。
神経・筋接合部、自律神経節、神経節後の副交感神経末端からのアセチルコリン放出の阻害により、弛緩性麻痺を生じ、種々の症状(全身の違和感、複視、眼瞼下垂、嚥下困難、口渇、便秘、脱力感、筋力低下、呼吸困難など)が出現し、適切な治療を施さない重症患者では死亡する場合がある。
感染経路の違いにより、以下の4つの病型に分類される。
ア 食餌性ボツリヌス症(ボツリヌス中毒)
食品中でボツリヌス菌が増殖して産生された毒素を経口的に摂取することによって発症
イ 乳児ボツリヌス症
1歳以下の乳児が菌の芽胞を摂取することにより、腸管内で芽胞が発芽し、産生された毒素の作用によって発症
ウ 創傷ボツリヌス症
創傷部位で菌の芽胞が発芽し、産生された毒素により発症
エ 成人腸管定着ボツリヌス症
ボツリヌス菌に汚染された食品を摂取した1歳以上のヒトの腸管に数ヶ月間菌が定着し毒素を産生し、乳児ボツリヌス症と類似の症状が長期にわたって持続
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からボツリヌス症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ボツリヌス症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ボツリヌス症の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ボツリヌス症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ボツリヌス症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ボツリヌス症により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
ボツリヌス毒素の検出 |
血液、便、吐物、腸内容物、創部の浸出液 |
分離・同定による病原体の検出、かつ、分離菌における次の①、②いずれかによるボツリヌス毒素の確認 ①毒素産生の確認 ②PCR法による毒素遺伝子の検出 |
|
原因食品からのボツリヌス毒素の検出 |
原因食品 |
ボツリヌス抗毒素抗体の検出(数か月後) |
血清 |
35 マラリア
(1) 定義
マラリアはPlasmodium属原虫のPlasmodium vivax(三日熱マラリア原虫)、Plasmodium falciparum(熱帯熱マラリア原虫)、Plasmodium malariae(四日熱マラリア原虫)、Plasmodium ovale(卵形マラリア原虫)などの単独又は混合感染に起因する疾患であり、特有の熱発作、貧血及び脾腫を主徴とする。ハマダラカによって媒介される。
(2) 臨床的特徴
最も多い症状は発熱と悪寒で、発熱の数日前から全身倦怠感や背部痛、食欲不振など不定の前駆症状を認めることがある。熱発は間隔をあけて発熱期と無熱期を繰り返す。発熱期は悪寒を伴って体温が上昇する悪寒期(1~2時間)と、悪寒がとれて熱感を覚える灼熱期(4~5時間)に分かれる。典型的には三日熱及び四日熱マラリアでは悪寒期に戦慄を伴うことが多い。
発熱期には頭痛、顔面紅潮や吐き気、関節痛などを伴う。その後に発汗・解熱し、無熱期へ移行する。発熱発作の間隔は虫種により異なり、三日熱と卵形マラリアで48時間、四日熱マラリアで72時間である。熱帯熱マラリアでは36~48時間、あるいは不規則となる。
他の症状としては脾腫、貧血、血小板減少などがあげられるが、原虫種、血中原虫数及び患者の免疫状態によって異なる。
未治療の熱帯熱マラリアは急性の経過を示し、錯乱など中枢神経症状(マラリア脳症)、急性腎不全、重度の貧血、低血糖、DICや肺水腫を併発して発病数日以内に重症化し、致死的となる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からマラリアが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、マラリア患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、マラリアの無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、マラリアが疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、マラリアにより死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、マラリアにより死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
顕微鏡下でのマラリア原虫の証明、かつ、原虫種の確認による病原体の検出 |
血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
36 野兎病
(1) 定義
野兎病菌(Francisella tularensis)による発熱性疾患である。
(2) 臨床的特徴
保菌動物の解体や調理の時の組織又は血液との接触や、マダニ、アブなど節足動物の刺咬により感染する。また、汚染した生水からも感染する。ヒトは感受性が高く、健康な皮膚からも感染する。ヒトからヒトへの感染の報告はない。潜伏期間は3日をピークとする1~7日である。初期症状は菌の侵入部位によって異なり、潰瘍リンパ節型、リンパ節型、眼リンパ節型、肺炎型などがある。一般的には悪寒、波状熱、頭痛、筋肉痛、所属リンパ節の腫脹と疼痛などの症状がみられる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から野兎病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、野兎病患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、野兎病の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、野兎病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、野兎病により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、野兎病により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
病巣部拭い液、摘出リンパ節、リンパ節穿刺液、咽頭拭い液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
菌凝集反応法による抗体の検出(単一血清で40倍以上、又はペア血清による抗体陽転若しくは抗体価の有意の上昇) |
血清 |
37 ライム病
(1) 定義
マダニ(Ixodes属)刺咬により媒介されるスピロヘータ(ライム病ボレリア;Borrelia burgdorferi sensu lato)感染症である。
(2) 臨床的特徴
感染初期(stageⅠ)には、マダニ刺咬部を中心として限局性に特徴的な遊走性紅斑を呈することが多い。随伴症状として、筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒、全身倦怠感などのインフルエンザ様症状を伴うこともある。紅斑の出現期間は数日から数週間といわれ、形状は環状紅斑又は均一性紅斑がほとんどである。
播種期(stageⅡ)には、体内循環を介して病原体が全身性に拡散する。これに伴い、皮膚症状、神経症状、心疾患、眼症状、関節炎、筋肉炎など多彩な症状が見られる。
感染から数か月ないし数年を経て、慢性期(stageⅢ)に移行する。患者は播種期の症状に加えて、重度の皮膚症状、関節炎などを示すといわれる。本邦では、慢性期に移行したとみられる症例は現在のところ報告されていない。症状としては、慢性萎縮性肢端皮膚炎、慢性関節炎、慢性脳脊髄炎などがあげられる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からライム病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ライム病患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ライム病の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ライム病が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ライム病により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ライム病により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
紅斑部の皮膚、髄液(髄膜炎、脳炎の場合) |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
Western Blot法による抗体の検出 |
血清 |
38 リッサウイルス感染症
(1) 定義
狂犬病ウイルスを除くリッサウイルス属のウイルスによる感染症である。
(2) 臨床的特徴
本ウイルスを保有する野生のコウモリとの接触により感染すると考えられている。潜伏期間は狂犬病ウイルスに準じた期間と考えられる(20~90日が基本的な潜伏期間。咬傷部位や数によって潜伏期間も異なってくると思われる)。
臨床症状としては、頭痛、発熱、全身倦怠感、創傷部位の知覚過敏や疼痛を伴う場合があり、興奮、恐水症状、精神錯乱などの中枢神経症状を伴う場合もある。一般的に、発症後2週間以内に死亡する。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からリッサウイルス感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、リッサウイルス感染症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、リッサウイルス感染症の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、リッサウイルス感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、リッサウイルス感染症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、リッサウイルス感染症により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
唾液 |
蛍光抗体法による病原体の抗原の検出 |
角膜塗抹標本、頚部の皮膚、気管吸引材料及び唾液腺の生検材料、脳組織及び脳乳剤 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
唾液、髄液、脳組織 |
39 リフトバレー熱
(1) 定義
ブニヤウイルス科フレボウイルス属に属するリフトバレー熱ウイルスによる感染症である。
(2) 臨床的特徴
自然界では、主にヤブカ属の蚊と牛や羊の間で感染環が維持されている。ヒトへの感染は、主に蚊あるいは他の吸血性昆虫の刺咬によるが、動物の血液や他の体液による接触感染もありうる。潜伏期間は2~6日で、発熱、頭痛、筋肉痛、背部痛等のインフルエンザ様症状を呈し、項部硬直、肝機能障害、羞明、嘔吐を呈することもあるが、通常は4~7日で回復する。重症例では網膜炎(0.5~2%)、出血熱(<1%)、脳炎(<1%)を発症することがある。致死率は全体としては1%程度であるが、出血熱を呈した場合には50%にも達する。後遺症としては、網膜炎後の失明が重要である。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からリフトバレー熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、リフトバレー熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、リフトバレー熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、リフトバレー熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、リフトバレー熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、リフトバレー熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
中和試験による抗体の検出 |
血清 |
ELISA法又は蛍光抗体法によるIgM抗体若しくはIgG抗体の検出 |
40 類鼻疽
(1) 定義
類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)による感染症である。
(2) 臨床的特徴
主な感染経路は土壌や地上水との接触感染であるが、粉塵の吸入や飲水などによることもある。潜伏期間は通常3~21日であるが、年余にわたることもある。皮膚病変としてはリンパ節炎をともなう小結節を形成し、発熱を伴うこともある。呼吸器系病変としては気管支炎、肺炎を発症するが、通常は高熱を伴い、胸痛を生じ、乾性咳嗽、あるいは正常喀痰の湿性咳嗽がみられる。HIV感染症、腎不全、糖尿病などの基礎疾患を有する場合には、敗血症性ショックを生じることがある。慢性感染では関節、肺、腹部臓器、リンパ節、骨などに膿瘍を形成する。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から類鼻疽が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、類鼻疽患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、類鼻疽の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、類鼻疽が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、類鼻疽により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、類鼻疽により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
喀痰・咽頭拭い液・膿・皮膚病変組織・血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
41 レジオネラ症
(1) 定義
Legionella属菌(Legionella pneumophilaなど)が原因で起こる感染症である。
(2) 臨床的特徴
在郷軍人病(レジオネラ肺炎)とポンティアック熱が主要な病型である。腹痛、下痢、意識障害、歩行障害などを伴うことがある。臨床症状で他の細菌性肺炎と区別することは困難である。
免疫不全者の場合には、肺炎の劇症化と多臓器不全が起こることがある。
なお、届出上の病型については、肺炎若しくは多臓器不全の認められるものを肺炎型とし、それ以外をポンティアック熱型とする。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からレジオネラ症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、レジオネラ症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、レジオネラ症の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、レジオネラ症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、レジオネラ症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、レジオネラ症により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
肺組織、喀痰、胸水、血液、その他の無菌的部位、気道分泌物 |
蛍光抗体法による病原体の抗原の検出 |
|
酵素抗体法又はイムノクロマト法による病原体の抗原の検出 |
尿 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
肺組織、喀痰、胸水、血液、その他の無菌的部位、気道分泌物、尿 |
間接蛍光抗体法又はマイクロプレート凝集反応による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇で、少なくとも1回は128倍以上、又は単一血清で256倍以上) |
血清 |
42 レプトスピラ症
(1) 定義
病原性レプトスピラ(Leptospira interrogansなど)による、多様な症状を示す急性の熱性疾患である。
(2) 臨床的特徴
病原性レプトスピラを保有しているネズミ、イヌ、ウシ、ウマ、ブタなどの尿で汚染された下水や河川、泥などにより経皮的に、時には汚染された飲食物の摂取により経口的にヒトに感染する。
黄疸、出血、腎障害などの症状が見られる。重症型の黄疸出血性レプトスピラ病(ワイル病)と、軽症型の秋季レプトスピラ病やイヌ型レプトスピラ病などがある。
ワイル病は黄疸、出血、蛋白尿を主徴とし、最も重篤である。
潜伏期間は3~14日で、突然の悪寒、戦慄、高熱、筋肉痛、眼球結膜の充血が生じ、4~5病日後、黄疸や出血傾向が増強する場合もある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からレプトスピラ症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、レプトスピラ症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、レプトスピラ症の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、レプトスピラ症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、レプトスピラ症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、レプトスピラ症により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、髄液、尿 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
顕微鏡下凝集試験法(MAT)による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
血清 |
43 ロッキー山紅斑熱
(1) 定義
紅斑熱群リケッチアに属するロッキー山紅斑熱リケッチア(Rickettsia rickettsii)による感染症である。
(2) 臨床的特徴
自然界ではダニ、げっ歯類、大動物(イヌなど)の間で感染環が維持されている。ヒトへの感染はダニの刺咬による。潜伏期間は3~12日であり、頭痛、全身倦怠感、高熱などで発症する。通常、つつが虫病などでみられるような刺し口は生じない。高熱とほぼ同時に、紅色の斑丘疹が手足などの末梢部から求心性に多発し、部位によっては点状出血を伴う。ときにリンパ節腫脹がみられる。その後、中枢神経系症状、不整脈、乏尿、ショックなどの合併症を呈する。診断・治療の遅れ、高齢者、発疹がみられない、ダニの刺咬歴がある、冬季の発症などでは、致死率が高い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からロッキー山紅斑熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ロッキー山紅斑熱患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ロッキー山紅斑熱の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ロッキー山紅斑熱が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ロッキー山紅斑熱により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
エ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ロッキー山紅斑熱により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
血液、病理組織 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
間接蛍光抗体法又はELISA法による抗体の検出(IgM抗体の検出又はペア血清による抗体陽転若しくは抗体価の有意の上昇) |
血清 |
第6 五類感染症
1 アメーバ赤痢
(1) 定義
赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)の感染に起因する疾患で、消化器症状を主症状とするが、それ以外の臓器にも病変を形成する。
(2) 臨床的特徴
病型は腸管アメーバ症と腸管外アメーバ症に大別される。
ア 腸管アメーバ症
下痢、粘血便、しぶり腹、鼓腸、排便時の下腹部痛、不快感などの症状を伴う慢性腸管感染症であり、典型的にはイチゴゼリー状の粘血便を排泄するが、数日から数週間の間隔で増悪と寛解を繰り返すことが多い。潰瘍の好発部位は盲腸から上行結腸にかけてと、S字結腸から直腸にかけての大腸である。まれに肉芽腫性病変が形成されたり、潰瘍部が壊死性に穿孔したりすることもある。
イ 腸管外アメーバ症
多くは腸管部よりアメーバが血行性に転移することによるが、肝膿瘍が最も高頻度にみられる。成人男性に多い。高熱(38~40℃)、季肋部痛、吐き気、嘔吐、体重減少、寝汗、全身倦怠感などを伴う。膿瘍が破裂すると腹膜、胸膜や心外膜にも病変が形成される。その他、皮膚、脳や肺に膿瘍が形成されることがある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からアメーバ赤痢が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、アメーバ赤痢患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、アメーバ赤痢が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、アメーバ赤痢により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
顕微鏡下での病原体の検出 |
便、病変部(大腸粘膜組織、膿瘍液) |
ELISA法による病原体の抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
抗体の検出 |
血清 |
2 ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く)
(1) 定義
ウイルス感染を原因とする急性肝炎(B型肝炎、C型肝炎、その他のウイルス性肝炎)である。慢性肝疾患、無症候性キャリア及びこれらの急性増悪例は含まない。
(2) 臨床的特徴
一般に全身倦怠感、感冒様症状、食欲不振、悪感、嘔吐などの症状で急性に発症して、数日後に褐色尿や黄疸を伴うことが多い。発熱、肝機能異常、その他の全身症状を呈する発病後間もない時期には、かぜあるいは急性胃腸炎などと類似した症状を示す。
潜伏期間は、B型肝炎では約3か月間、C型肝炎では2週間から6か月間である。
臨床病型は、黄疸を伴う定型的急性肝炎のほかに、顕性黄疸を示さない無黄疸性肝炎、高度の黄疸を呈する胆汁うっ滞性肝炎、急性肝不全症状を呈する劇症肝炎などに分類される。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からウイルス性肝炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ウイルス性肝炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ウイルス性肝炎が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ウイルス性肝炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
(ア) B型肝炎
検査方法 |
検査材料 |
IgM HBc抗体の検出(明らかなキャリアからの急性増悪例は含まない) |
血清 |
(イ) C型肝炎
検査方法 |
検査材料 |
抗体陰性で、HCV RNA又はHCVコア抗原の検出 |
血清 |
ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇 |
(ウ) その他のウイルス性肝炎
その他のウイルス性肝炎の届出を行う際には、病原体の名称と、検査方法、検査材料についても届け出る。
ウ その他
ウイルス性肝炎の届出基準を満たすもので、かつ、劇症肝炎となったものについては、届出票の「症状」欄にその旨を記載する。
劇症肝炎については、以下の基準を用いる。
ア 肝炎のうち、症状発現後8週以内に高度の肝機能障害に基づいて肝性昏睡Ⅱ度以上の脳症をきたし、プロトロンビン時間40%以下を示すもの。 イ 発病後10日以内の脳症の発現は急性型、それ以降の発現は亜急性型とする。 |
3 急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く。)
(1) 定義
ウイルスなど種々の病原体の感染による脳実質の感染症である。
炎症所見が明らかではないが、同様の症状を呈する脳症もここには含まれる。
(2) 臨床的特徴
多くは何らかの先行感染を伴い、高熱に続き、意識障害や痙攣が突然出現し、持続する。髄液細胞数が増加しているものを急性脳炎、正常であるものを急性脳症と診断することが多いが、その臨床症状に差はない。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から急性脳炎が疑われ、かつ、(4)の届出のために必要な臨床症状を呈しているため、急性脳炎患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、急性脳炎が疑われ、かつ、(4)の届出のために必要な臨床症状を呈しているため、急性脳炎により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状
意識障害を伴って死亡した者、又は意識障害を伴って24時間以上入院した者のうち、以下のうち、少なくとも1つの症状を呈した場合である。
熱性痙攣、代謝疾患、脳血管障害、脳腫瘍、外傷など、明らかに感染性とは異なるものは除外する。
ア 38℃以上の高熱 |
イ 何らかの中枢神経症状 |
ウ 先行感染症状 |
4 クリプトスポリジウム症
(1) 定義
クリプトスポリジウム属原虫(Cryptosporidium spp.)のオーシストを経口摂取することによる感染症である。
(2) 臨床的特徴
潜伏期は4~5日ないし10日程度と考えられ、無症状のものから、食欲不振、嘔吐、腹痛、下痢などを呈するものまで様々である。
患者の免疫力が正常であれば、通常は数日間で自然治癒するが、エイズなどの各種の免疫不全状態にある場合は、重篤な感染を起こすことがあり、1日に3~5リットル、時に10リットルをこえる下痢によって死亡することもある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からクリプトスポリジウム症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、クリプトスポリジウム症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、クリプトスポリジウム症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、クリプトスポリジウム症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
鏡検による原虫(オーシスト)の証明による病原体の検出 |
便 |
酵素抗体法又はイムノクロマト法による病原体抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
5 クロイツフェルト・ヤコブ病
(1) 定義
クロイツフェルト・ヤコブ病(以下「CJD」という。)に代表されるプリオン病とは、その感染因子が細菌やウイルスと異なり、核酸を持たない異常プリオン蛋白と考えられている伝播可能な致死性疾患である。すべてのプリオン病は中枢神経に異常プリオン蛋白が蓄積することによって発症し、致死性である。長い潜伏期を有する等の共通した特徴があるが、その臨床像は多彩である。
(2) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、症状や所見からクロイツフェルト・ヤコブ病が疑われる者を診察し、かつ、(3)届出に必要な要件を満たすと診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、症状や所見からクロイツフェルト・ヤコブ病が疑われる死体を検案し、かつ、(3)届出に必要な要件を満たし、クロイツフェルト・ヤコブ病により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
(3) 届出に必要な要件
ア 孤発性プリオン病
(ア) 進行性認知症を示し、表1に掲げる疾患等他の疾病を除外できる症例
(イ) ①ミオクローヌス、②錐体路又は錐体外路症状、③小脳症状又は視覚異常、④無動性無言の4項目のうち2項目以上の症状を示す症例
(ウ) 脳波に周期性同期性放電(PSD)を認める症例
(エ) プリオン病に特徴的な病理所見を呈する症例、又はWestern Blot法や免疫染色法で脳に異常なプリオン蛋白を検出し得た症例
・疑い(possible) 上記(ア)、(イ)の両方を満たす症例
・ほぼ確実(probable) 上記(ア)~(ウ)をすべて満たす症例
・確実(definite) 上記(エ)を満たす症例
イ 遺伝性プリオン病
遺伝性プリオン病には、ゲルストマン・ストロイラー・シャインカー病(GSS)及び家族性致死性不眠症(FFI)がある。
(ア) 表2、3に掲げる疾患等の他の疾病を除外できる症例
(イ) 遺伝性プリオン病を示唆する家族歴がある症例
(ウ) 遺伝性プリオン病として臨床所見が矛盾しない症例
(エ) プリオン蛋白遺伝子変異が証明された症例
(オ) プリオン病に特徴的な病理所見を呈する症例、又はWestern Blot法や免疫染色法で脳に異常なプリオン蛋白を検出し得た症例
・疑い(possible) 上記(ア)~(ウ)をすべて満たす症例
・ほぼ確実(probable) 上記(ア)、(ウ)、(エ)をすべて満たす症例
・確実(definite) 上記(エ)、(オ)の両方を満たす症例
ウ 感染性プリオン病
(ア) 医原性CJD
弧発性プリオン病と同様の症状、所見を有する症例のうち、ヒト由来乾燥硬膜移植、ヒト由来角膜移植、ヒト下垂体由来の成長ホルモンやゴナドトロピンの使用等の既往がある症例。診断の確実度は(3) ア弧発性プリオン病と同じ。
(イ) 変異型CJD
Ⅰ
A.進行性精神・神経障害
B.経過が6か月以上
C.一般検査上、他の疾患が除外できる
D.医原性の可能性が低い
E.家族性プリオン病を否定できる
Ⅱ
A.発病初期の精神症状a
B.遷延性の痛みを伴う感覚障害b
C.失調
D.ミオクローヌスか、舞踏運動か、ジストニア
E.認知症
Ⅲ
A.脳波でPSD陰性c(又は脳波が未施行)
B.MRIで両側対称性の視床枕の高信号d
Ⅳ
A.口蓋扁桃生検で異常プリオン陰性e
・確実例:ⅠAと神経病理で確認したものf
・ほぼ確実例:Ⅰ+Ⅱの4/5項目+ⅢA+ⅢB又はⅠ+ⅣA
・疑い例:Ⅰ+Ⅱの4/5項目+ⅢA
Ⅴ 表4に掲げる疾患等の他の疾病を除外できる症例
a抑鬱、不安、無関心、自閉、錯乱
bはっきりとした痛みや異常感覚
c約半数で全般性三相性周期性複合波
d大脳灰白質や深部灰白質と比較して
e口蓋扁桃生検をルーチンに施行したり、孤発性CJDに典型的な脳波所見を認める例に施行することは推奨されないが、臨床症状は矛盾しないが視床枕に高信号を認めない変異型CJD疑い例には有用である。
f大脳と小脳の全体にわたって海綿状変化と広範なプリオン蛋白陽性の花弁状クールー斑
表1.孤発性プリオン病と鑑別を要する疾患 ・アルツハイマー病 ・非定型アルツハイマー病 ・前頭葉・側頭葉型認知症 ・脳血管障害 ・パーキンソン痴呆症候群 ・脊髄小脳変性症 ・認知症を伴う運動ニューロン疾患 ・悪性リンパ腫 ・神経梅毒 ・てんかん ・脳炎、髄膜炎 ・エイズ脳症 ・自己免疫性脳症 ・傍腫瘍性症候群 ・代謝性脳症(ウェルニッケ脳症、甲状腺疾患に伴う脳症、肝不全、腎不全、薬物中毒等) ・低酸素脳症 ・ミトコンドリア脳筋症 ・その他の原因による老年期認知症性疾患(大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、レビー小体病等) ・内因性精神病 ・孤発性プリオン病以外のプリオン病 |
表2.ゲルストマン・ストロイラー・シャインカー病(GSS)と鑑別を要する疾患 ・家族性痙性対麻痺 ・脊髄小脳変性症 ・アルツハイマー病 ・脳血管障害 ・脳炎、髄膜炎 ・自己免疫性脳症 ・傍腫瘍性症候群 ・パーキンソン痴呆症候群 ・認知症を伴う運動ニューロン疾患 ・代謝性脳症(リピドーシス、薬物中毒等) ・ミトコンドリア脳筋症 ・その他の病因による老年期認知症性疾患(進行性核上性麻痺等) ・GSS以外のプリオン病 |
表3.家族性致死性不眠症(FFI)と鑑別を要する疾患 ・視床変性症 ・非定型アルツハイマー病 ・脊髄小脳変性症 ・純粋自律神経不全症(pure autonomic failure) ・シャイ・ドレーガー症候群 ・脳血管障害 ・自己免疫性脳症 ・代謝性脳症(ウェルニッケ脳症等) ・悪性リンパ腫 ・ミトコンドリア脳筋症 ・脳炎、髄膜炎 ・その他の病因による視床症候群 ・その他の病因による老年期認知症性疾患(進行性核上性麻痺、レビー小体病等) ・FFI以外のプリオン病 |
表4.変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)と鑑別を要する疾患 ・内因性精神病 ・視床変性症 ・アルツハイマー病 ・非定型アルツハイマー病 ・脳血管障害 ・自己免疫性脳症 ・代謝性脳症(Wilson病、ウェルニッケ脳症、甲状腺疾患に伴う脳症、薬物中毒、リピドーシス等) ・脳炎、髄膜炎 ・悪性リンパ腫 ・神経梅毒 ・その他の病因による視床症候群 ・変異型CJD以外のプリオン病 |
6 劇症型溶血性レンサ球菌感染症
(1) 定義
β溶血を示すレンサ球菌を原因とし、突発的に発症して急激に進行する敗血症性ショック病態である。
(2) 臨床的特徴
初発症状は咽頭痛、発熱、消化管症状(食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢)、全身倦怠感、低血圧などの敗血症症状、筋痛などであるが、明らかな前駆症状がない場合もある。後発症状としては軟部組織病変、循環不全、呼吸不全、血液凝固異常(DIC)、肝腎症状など多臓器不全を来し、日常生活を営む状態から24時間以内に多臓器不全が完結する程度の進行を示す。A群レンサ球菌等による軟部組織炎、壊死性筋膜炎、上気道炎・肺炎、産褥熱は現在でも致命的となりうる疾患である。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から劇症型溶血性レンサ球菌感染症が疑われ、かつ、(4)の届出に必要な要件を満たすと診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、劇症型溶血性レンサ球菌感染症が疑われ、かつ、(4)の届出に必要な要件を満たし、劇症型溶血性レンサ球菌感染症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
(4) 届出に必要な要件(以下のアの(ア)及び(イ)かつイを満たすもの)
ア 届出のために必要な臨床症状
(ア) ショック症状 (イ) (以下の症状のうち2つ以上) 肝不全、腎不全、急性呼吸窮迫症候群、DIC、軟部組織炎(壊死性筋膜炎を含む)、全身性紅斑性発疹、痙攣・意識消失などの中枢神経症状 |
イ 病原体診断の方法
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
通常無菌的な部位(血液、髄液、胸水、腹水)、生検組織、手術創、壊死軟部組織 |
7 後天性免疫不全症候群
(1) 定義
レトロウイルスの一種であるヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus;HIV)の感染によって免疫不全が生じ、日和見感染症や悪性腫瘍が合併した状態。
(2) 臨床的特徴
HIVに感染した後、CD4陽性リンパ球数が減少し、無症候性の時期(無治療で約10年)を経て、生体が高度の免疫不全症に陥り、日和見感染症や悪性腫瘍が生じてくる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から後天性免疫不全症候群が疑われ、かつ、(4)イの届出に必要な要件を満たすと診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、(4)アの届出に必要な要件を満たすと診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、後天性免疫不全症候群が疑われ、かつ、(4)イの届出に必要な要件により、後天性免疫不全症候群により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
(4) 届出に必要な要件(サーベイランスのためのHIV感染症/AIDS診断基準(厚生労働省エイズ動向委員会、2007)抜粋)
ア HIV感染症の診断(無症候期)
(ア) HIVの抗体スクリーニング検査法(酵素抗体法(ELISA)、粒子凝集法(PA)、免疫クロマトグラフィー法(IC)等)の結果が陽性であって、以下のいずれかが陽性の場合にHIV感染症と診断する。
① 抗体確認検査(Western Blot法、蛍光抗体法(IFA)等)
② HIV抗原検査、ウイルス分離及び核酸診断法(PCR等)等の病原体に関する検査(以下「HIV病原検査」という。)
(イ) ただし、周産期に母親がHIVに感染していたと考えられる生後18か月未満の児の場合は少なくともHIVの抗体スクリーニング法が陽性であり、以下のいずれかを満たす場合にHIV感染症と診断する。
① HIV病原検査が陽性
② 血清免疫グロブリンの高値に加え、リンパ球数の減少、CD4陽性Tリンパ球数の減少、CD4陽性Tリンパ球数/CD8陽性Tリンパ球数比の減少という免疫学的検査所見のいずれかを有する。
イ AIDSの診断
アの基準を満たし、下記の指標疾患(Indicator Disease)の1つ以上が明らかに認められる場合にAIDSと診断する。ただし、(ア)の基準を満たし、下記の指標疾患以外の何らかの症状を認める場合には、その他とする。
指標疾患(Indicator Disease) A.真菌症 1.カンジダ症(食道、気管、気管支、肺) 2.クリプトコッカス症(肺以外) 3.コクシジオイデス症 ①全身に播種したもの ②肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの 4.ヒストプラズマ症 ①全身に播種したもの ②肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの 5.ニューモシスティス肺炎 (注)P. cariniiの分類名がP.jiroveciに変更になった B.原虫症 6.トキソプラズマ脳症(生後1か月以後) 7.クリプトスポリジウム症(1か月以上続く下痢を伴ったもの) 8.イソスポラ症(1か月以上続く下痢を伴ったもの) C.細菌感染症 9.化膿性細菌感染症(13歳未満で、ヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌により以下のいずれかが2年以内に、2つ以上多発あるいは繰り返して起こったもの) ①敗血症、②肺炎、③髄膜炎、④骨関節炎 ⑤中耳・皮膚粘膜以外の部位や深在臓器の膿瘍 10.サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもので、チフス菌によるものを除く) 11.活動性結核(肺結核又は肺外結核)(※) 12.非結核性抗酸菌症 ①全身に播種したもの ②肺、皮膚、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの D.ウイルス感染症 13.サイトメガロウイルス感染症(生後1か月以後で、肝、脾、リンパ節以外) 14.単純ヘルペスウイルス感染症 ①1か月以上持続する粘膜、皮膚の潰瘍を呈するもの ②生後1か月以後で気管支炎、肺炎、食道炎を併発するもの 15.進行性多巣性白質脳症 E.腫瘍 16.カポジ肉腫 17.原発性脳リンパ腫 18.非ホジキンリンパ腫(LSG分類により、①大細胞型(免疫芽球型)、②Burkitt型) 19.浸潤性子宮頚癌(※) F.その他 20.反復性肺炎 21.リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳未満) 22.HIV脳症(認知症又は亜急性脳炎) 23.HIV消耗性症候群(全身衰弱又はスリム病) (※)C11活動性結核のうち肺結核及びE19浸潤性子宮頚癌については、HIVによる免疫不全を示唆する所見がみられる者に限る。 |
8 ジアルジア症
(1) 定義
消化管寄生虫鞭毛虫の一種であるジアルジア(別名ランブル鞭毛虫)(Giardia lamblia.)による原虫感染症である。
(2) 臨床的特徴
糞便中に排出された原虫嚢子により食物や水が汚染されることによって、経口感染を起こす。健康な者の場合には無症状のことも多いが、食欲不振、腹部不快感、下痢(しばしば脂肪性下痢)等の症状を示すこともあり、免疫不全状態では重篤となることもある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からジアルジア症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ジアルジア症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ジアルジア症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、ジアルジア症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
顕微鏡下でのジアルジア原虫の証明 |
便、十二指腸液、胆汁 |
酵素抗体法又はイムノクロマト法による病原体抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
9 侵襲性インフルエンザ菌感染症
(1) 定義
Haemophilus influenzaeによる侵襲性感染症のうち、本菌が髄液又は血液から検出された感染症とする。
(2) 臨床的特徴
潜伏期間は不明である。発症は一般に突発的であり、上気道炎や中耳炎を伴って発症することがある。髄膜炎例では、頭痛、発熱、髄膜刺激症状の他、痙攣、意識障害、乳児では大泉門膨隆等の症状を示す。敗血症例では発熱、悪寒、虚脱や発疹を呈すが、臨床症状が特異的ではないことも多く、急速に重症化して肺炎や喉頭蓋炎並びにショックを来すことがある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から侵襲性インフルエンザ菌感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、侵襲性インフルエンザ菌感染症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、侵襲性インフルエンザ菌感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、侵襲性インフルエンザ菌感染症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
髄液、血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
髄液、血液 |
9―1 侵襲性髄膜炎菌感染症
(1) 定義
Neisseria meningitidisによる侵襲性感染症のうち、本菌が髄液又は血液から検出された感染症とする。
(2) 臨床的特徴
潜伏期間は2~10日(平均4日)で、発症は突発的である。髄膜炎例では、頭痛、発熱、髄膜刺激症状の他、痙攣、意識障害、乳児では大泉門膨隆等を示す。敗血症例では発熱、悪寒、虚脱を呈し、重症化を来すと紫斑の出現、ショック並びにDIC(Waterhouse-Friedrichsen症候群)に進展することがある。本疾患の特徴として、点状出血が眼球結膜や口腔粘膜、皮膚に認められ、また出血斑が体幹や下肢に認められる。
世界各地に散発性又は流行性に発症し、温帯では寒い季節に、熱帯では乾期に多発する。学生寮などで共同生活を行う10代が最もリスクが高いとされているため、特に共同生活をしている例ではアウトブレイクに注意が必要である。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から侵襲性髄膜炎菌感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、侵襲性髄膜炎菌感染症と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。特に、患者が学生寮などで共同生活を行っている場合には、早期の対応が望まれる。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、侵襲性髄膜炎菌感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、侵襲性髄膜炎菌感染症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
髄液、血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
髄液、血液 |
9―2 侵襲性肺炎球菌感染症
(1) 定義
Streptococcus pneumoniaeによる侵襲性感染症のうち、本菌が髄液又は血液から検出された感染症とする。
(2) 臨床的特徴
潜伏期間は不明である。小児及び高齢者を中心とした発症が多く、小児と成人でその臨床的特徴が異なる。
ア 小児
成人と異なり、肺炎を伴わず、発熱のみを初期症状とした感染巣のはっきりしない菌血症例が多い。また、髄膜炎は、直接発症するものの他、肺炎球菌性の中耳炎に続いて発症することがある。
イ 成人
発熱、咳嗽、喀痰、息切れを初期症状とした菌血症を伴う肺炎が多い。髄膜炎例では、頭痛、発熱、痙攣、意識障害、髄膜刺激症状等の症状を示す。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から侵襲性肺炎球菌感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、侵襲性肺炎球菌感染症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、侵襲性肺炎球菌感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、侵襲性肺炎球菌感染症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
髄液、血液 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
髄液、血液 |
ラテックス法又はイムノクロマト法による病原体抗原の検出 |
髄液 |
10 先天性風しん症候群
(1) 定義
風しんウイルスの胎内感染によって先天異常を起こす感染症である。
(2) 臨床的特徴
先天異常の発生は妊娠週齢と明らかに相関し、妊娠12週までの妊娠初期の初感染に最も多くみられ、20週を過ぎるとほとんどなくなる。
三徴は、白内障、先天性心疾患、難聴であるが、その他先天性緑内障、色素性網膜症、紫斑、脾腫、小頭症、精神発達遅滞、髄膜脳炎、骨のX線透過性所見、生後24時間以内に出現する黄疸などを来しうる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から先天性風しん症候群が疑われ、かつ、(4)の届出に必要な要件を満たすと診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、先天性風しん症候群が疑われ、かつ、(4)の届出に必要な要件を満たすと診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
(4) 届出に必要な要件(以下のア及びイの両方を満たすもの)
ア 届出のために必要な臨床症状
(ア) CRS典型例;「①から2項目以上」又は「①から1項目と②から1項目以上」
(イ) その他;「①若しくは②から1項目以上」
① 白内障又は先天性緑内障、先天性心疾患、難聴、色素性網膜症 |
② 紫斑、脾腫、小頭症、精神発達遅滞、髄膜脳炎、X線透過性の骨病変、生後24時間以内に出現した黄疸 |
イ 病原体診断又は抗体検査の方法
(ア) 以下のいずれか1つを満たし、出生後の風しん感染を除外できるもの
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
咽頭拭い液、唾液、尿 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
IgM抗体の検出 |
血清 |
赤血球凝集阻止抗体価が移行抗体の推移から予想される値を高く越えて持続(出生児の赤血球凝集阻止抗体価が、月あたり1/2の低下率で低下していない。) |
11 梅毒
(1) 定義
スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)の感染によって生じる性感染症である。
(2) 臨床的特徴
Ⅰ期梅毒として感染後3~6週間の潜伏期の後に、感染局所に初期硬結や硬性下疳、無痛性の鼠径部リンパ節腫脹がみられる。
Ⅱ期梅毒では、感染後3か月を経過すると皮膚や粘膜に梅毒性バラ疹や丘疹性梅毒疹、扁平コンジローマなどの特有な発疹が見られる。
感染後3年以上を経過すると、晩期顕症梅毒としてゴム腫、梅毒によると考えられる心血管症状、神経症状、眼症状などが認められることがある。なお、感染していても臨床症状が認められないものもある。
先天梅毒は、梅毒に罹患している母体から出生した児で、①胎内感染を示す検査所見のある症例、②Ⅱ期梅毒疹、骨軟骨炎など早期先天梅毒の症状を呈する症例、③乳幼児期は症状を示さずに経過し、学童期以後にHutchinson3徴候(実質性角膜炎、内耳性難聴、Hutchinson歯)などの晩期先天梅毒の症状を呈する症例がある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から梅毒が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、梅毒患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左下欄に掲げる検査方法により、抗体(①カルジオリピンを抗原とする検査では16倍以上又はそれに相当する抗体価)を保有する者で無症状病原体保有者と見なされる者(陳旧性梅毒と見なされる者を除く。)を診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、梅毒が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、梅毒により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
パーカーインク法による病原体の検出 |
発疹(初期硬結、硬性下疳、扁平コンジローマ、粘膜疹) |
・以下の①と②の両方に該当する場合 ①カルジオリピンを抗原とする以下のいずれかの検査で陽性 ・RPRカードテスト、凝集法、ガラス板法 ②T. pallidumを抗原とする以下のいずれかの検査で陽性 ・TPHA法、FTA―ABS法 |
血清 |
先天梅毒は、下記の5つのうち、いずれかの要件をみたすものである。
ア 母体の血清抗体価に比して、児の血清抗体価が著しく高い場合 イ 血清抗体価が移行抗体の推移から予想される値を高く超えて持続する場合 ウ T. pallidumを抗原とするIgM抗体陽性 エ 早期先天梅毒の症状を呈する場合 オ 晩期先天梅毒の症状を呈する場合 |
12 破傷風
(1) 定義
破傷風毒素を産生する破傷風菌(Clostridium tetani)が、外傷部位などから組織内に侵入し、嫌気的な環境下で増殖した結果、産生される破傷風毒素により、神経刺激伝達障害を起こす。
(2) 臨床的特徴
外傷部位などで増殖した破傷風菌が産生する毒素により、運動神経終板、脊髄前角細胞、脳幹の抑制性の神経回路が遮断され、感染巣近傍の筋肉のこわばり、顎から頚部のこわばり、開口障害、四肢の強直性痙攣、呼吸困難(痙攣性)、刺激に対する興奮性の亢進、反弓緊張(opisthotonus)などの症状が出現する。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から、破傷風患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、破傷風により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
13 バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症
(1) 定義
獲得型バンコマイシン耐性遺伝子を保有し、バンコマイシン耐性を示す黄色ブドウ球菌による感染症である。
(2) 臨床的特徴
バンコマイシンの長期間投与を受けた患者の検体などから検出される可能性がある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による黄色ブドウ球菌の検出かつ分離菌に対するバンコマイシンのMIC値が16μg/ml以上 |
血液、腹水、胸水、髄液、その他の通常無菌的であるべき検体 |
分離・同定による黄色ブドウ球菌の検出、かつ分離菌に対するバンコマイシンのMIC値が16μg/ml以上、かつ分離菌が感染症の起因菌であるとの判定。 |
喀痰、膿、尿、その他の通常無菌的ではない検体 |
14 バンコマイシン耐性腸球菌感染症
(1) 定義
バンコマイシンに対して耐性を示す腸球菌(VRE)による感染症である。
(2) 臨床的特徴
主に悪性疾患などの基礎疾患を有する易感染状態の患者において、日和見感染症や術後感染症、カテーテル性敗血症(line sepsis)などを引き起こす。発熱やショックなどの症状を呈し、死亡することもある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からバンコマイシン耐性腸球菌感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、バンコマイシン耐性腸球菌感染症患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、バンコマイシン耐性腸球菌感染症が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、バンコマイシン耐性腸球菌感染症により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による腸球菌の検出かつ分離菌に対するバンコマイシンのMIC値が16μg/ml以上 |
血液、腹水、胸水、髄液、その他の通常無菌的であるべき検体 |
分離・同定による腸球菌の検出かつ、分離菌に対するバンコマイシンのMIC値が16μg/ml以上、かつ分離菌が感染症の起因菌と判定された場合 |
喀痰、膿、尿、その他の通常無菌的ではない検体 |
14―2 風しん
(1) 定義
風しんウイルスによる急性熱性発疹性疾患である。
(2) 臨床的特徴
飛沫感染により感染し、潜伏期は通常2~3週間である。冬から春に流行する。症状は、小紅斑や紅色丘疹、リンパ節腫脹(全身、特に頚部、後頭部、耳介後部)、発熱を三主徴とする。リンパ節腫脹は発疹出現数日前に出現し、3~6週間で消退する。発熱は38~39℃で、3日程度続き、皮疹も3日程度で消退する。脳炎、血小板減少性紫斑病を合併することがある。
妊婦の風しんウイルス感染が、先天性風しん症候群の原因となることがある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から風しんが疑われ、かつ、(4)の届出に必要な要件を満たすと診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から風しんが疑われ、かつ、(4)の届出に必要な要件を満たすと診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
(4) 届出のために必要な要件
ア 検査診断例
届出に必要な臨床症状の1つ以上を満たし、かつ、届出に必要な病原体診断のいずれかを満たすもの。
イ 臨床診断例
届出に必要な臨床症状の3つすべてを満たすもの。
届出に必要な臨床症状
ア 全身性の小紅斑や紅色丘疹 |
イ 発熱 |
ウ リンパ節腫脹 |
届出に必要な病原体診断
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
咽頭拭い液、血液、髄液、尿 |
検体から直接のPCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
抗体の検出(IgM抗体の検出、ペア血清での抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
血清 |
14―3 麻しん
(1) 定義
麻しんウイルスによる急性熱性発疹性疾患である。
(2) 臨床的特徴
潜伏期は通常10~12日間であり、症状はカタル期(2~4日)には38℃前後の発熱、咳、鼻汁、くしゃみ、結膜充血、眼脂、羞明などであり、熱が下降した頃に頬粘膜にコプリック斑が出現する。発疹期(3~4日)には一度下降した発熱が再び高熱となり(39~40℃)、特有の発疹(小鮮紅色斑が暗紅色丘疹、それらが融合し網目状になる)が出現する。発疹は耳後部、頚部、顔、体幹、上肢、下肢の順に広がる。回復期(7~9日)には解熱し、発疹は消退し、色素沈着を残す。肺炎、中耳炎、クループ、脳炎を合併する場合がある。麻しんウイルスに感染後、数年から十数年以上経過してSSPE(亜急性硬化性全脳炎)を発症する場合がある。
なお、上記症状を十分満たさず、一部症状のみの麻しん(修飾麻しん)もみられることがある。これはワクチンによる免疫が低下してきた者に見られることが多い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から麻しんが疑われ、かつ、(4)の届出に必要な要件を満たすと診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
イ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から麻しんが疑われ、かつ、(4)の届出に必要な要件を満たすと診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
(4) 届出のために必要な要件
ア 麻しん(検査診断例)
届出に必要な臨床症状の3つすべてを満たし、かつ、届出に必要な病原体診断のいずれかを満たすもの。
イ 麻しん(臨床診断例)
届出に必要な臨床症状の3つすべてを満たすもの。
ウ 修飾麻しん(検査診断例)
届出に必要な臨床症状の1つ以上を満たし、かつ、届出に必要な病原体診断のいずれかを満たすもの。
届出に必要な臨床症状
ア 麻しんに特徴的な発疹 |
イ 発熱 |
ウ 咳嗽、鼻汁、結膜充血などのカタル症状 |
届出に必要な病原体診断
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
咽頭拭い液、血液、髄液、尿 |
検体から直接のPCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
抗体の検出(IgM抗体の検出、ペア血清での抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
血清 |
15 RSウイルス感染症
(1) 定義
RSウイルス(respiratory syncytial virus)による急性呼吸器感染症である。乳児期の発症が多く、特徴的な病像は細気管支炎、肺炎である。
(2) 臨床的特徴
2日~1週間(通常4~5日)の潜伏期間の後に、初感染の乳幼児では上気道症状(鼻汁、咳など)から始まり、その後下気道症状が出現する。38~39℃の発熱が出現することがある。25~40%の乳幼児に気管支炎や肺炎の兆候がみられる。
1歳未満、特に6か月未満の乳児、心肺に基礎疾患を有する小児、早産児が感染すると、呼吸困難などの重篤な呼吸器疾患を引き起こし、入院、呼吸管理が必要となる。乳児では、細気管支炎による喘鳴(呼気性喘鳴)が特徴的である。
その後、多呼吸、陥没呼吸などの症状あるいは肺炎を認める。新生児期あるいは生後2~3か月未満の乳児では、無呼吸発作の症状を呈することがある。再感染の幼児の場合には、細気管支炎や肺炎などは減り、上気道炎が増える。中耳炎を合併することもある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からRSウイルス感染症が疑われ、かつ、(4)の表の左欄に掲げる検査方法により、RSウイルス感染症患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、RSウイルス感染症が疑われ、かつ、(4)の表の左欄に掲げる検査方法により、RSウイルス感染症により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
(4) 届出に必要な検査所見
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
鼻腔吸引液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液 |
迅速診断キットによる病原体の抗原の検出 |
|
中和反応又は補体結合反応による抗体の検出(補体結合反応にて、急性期と2~3週間以後の回復期に抗体陽転又は抗体価の有意の上昇を認めれば確定) |
血清 |
16 咽頭結膜熱
(1) 定義
発熱・咽頭炎及び結膜炎を主症状とする急性のウイルス感染症である。
(2) 臨床的特徴
潜伏期は5~7日、症状は発熱、咽頭炎(咽頭発赤、咽頭痛)、結膜炎が三主症状である。アデノウイルス3型が主であるが、他に4、7、11型なども本症を起こす。発生は年間を通じてみられるが、さまざまな規模の流行的発生をみる。特に夏季に流行をみることがある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から咽頭結膜熱が疑われ、かつ、(4)により、咽頭結膜熱患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、咽頭結膜熱が疑われ、かつ、(4)により、咽頭結膜熱により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状(3つすべてを満たすもの)
ア 発熱 |
イ 咽頭発赤 |
ウ 結膜充血 |
17 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
(1) 定義
A群レンサ球菌による上気道感染症である。
(2) 臨床的特徴
乳幼児では咽頭炎、年長児や成人では扁桃炎が現れ、発赤毒素に免疫のない人は猩紅熱といわれる全身症状を呈する。気管支炎を起こすことも多い。発疹を伴うこともあり、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの二次疾患を起こすこともある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からA群溶血性レンサ球菌咽頭炎が疑われ、かつ、(4)を満たすか、(4)の3つすべてを満たさなくても(5)を満たし、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎が疑われ、かつ、(4)を満たすか、(4)の3つすべてを満たさなくても(5)を満たし、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状(3つすべてを満たすもの)
ア 発熱 |
イ 咽頭発赤 |
ウ 苺舌 |
(5) 届出のために必要な検査所見
検査方法 |
検査材料 |
菌の培養・同定による病原体の検出 |
咽頭拭い液 |
迅速診断キットによる病原体の抗原の検出 |
|
ASO法又はASK法による抗体の検出(ペア血清での抗体陽転又は抗体価の有意の上昇) |
血清 |
18 感染性胃腸炎
(1) 定義
細菌又はウイルスなどの感染性病原体による嘔吐、下痢を主症状とする感染症である。原因はウイルス感染(ロタウイルス、ノロウイルスなど)が多く、毎年秋から冬にかけて流行する。また、エンテロウイルス、アデノウイルスによるものや細菌性のものもみられる。
(2) 臨床的特徴
乳幼児に好発し、1歳以下の乳児は症状の進行が早い。
主症状は嘔吐と下痢であり、種々の程度の脱水、電解質喪失症状、全身症状が加わる。嘔吐又は下痢のみの場合や、嘔吐の後に下痢がみられる場合と様々で、症状の程度にも個人差がある。37~38℃の発熱がみられることもある。年長児では吐き気や腹痛がしばしばみられる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から感染性胃腸炎が疑われ、かつ、(4)により、感染性胃腸炎患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、感染性胃腸炎が疑われ、かつ、(4)により、感染性胃腸炎により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状及び要件(2つすべてを満たすもの)
ア 急に発症する腹痛(新生児や乳児では不明)、嘔吐、下痢 |
イ 他の届出疾患によるものを除く |
19 水痘
(1) 定義
水痘・帯状疱疹ウイルスの初感染による感染症である。
(2) 臨床的特徴
冬から春の感染症であるが、年間を通じて患者の発生をみる。飛沫、飛沫核、接触感染で感染し、潜伏期は2~3週間である。乳幼児や学童いずれの年齢でも罹患する。母子免疫は麻しんほど強力ではなく、新生児も罹患することがある。症状は発熱と発疹である。それぞれの発疹は紅斑、紅色丘疹、水疱形成、痂皮化を順次約3日で経過するが、同一段階の皮疹が同時に全身に出現するのではなく、新旧種々の段階の発疹が同時に混在する。
発疹は体幹に多発し、四肢に少ない。発疹は頭皮及び口腔などの粘膜にも出現する。健康児の罹患は軽症で予後は良好であるが、免疫不全状態の小児の罹患は重症で、致死的経過をとることもある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から水痘が疑われ、かつ、(4)により、水痘患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、水痘が疑われ、かつ、(4)により、水痘により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状(2つすべてを満たすもの)
ア 全身性の漿液性丘疹や水疱の突然の出現 |
イ 新旧種々の段階の発疹(丘疹、水疱、痂皮)が同時に混在すること |
20 手足口病
(1) 定義
主として乳幼児にみられる手、足、下肢、口腔内、口唇に小水疱が生ずる伝染性のウイルス性感染症である。コクサッキーA16型、エンテロウイルス71型のほか、コクサッキーA10型その他によっても起こることが知られている。
(2) 臨床的特徴
典型的なものでは、軽い発熱、食欲不振、のどの痛み等で始まり、発熱から2日ぐらい過ぎた頃から、手掌、足底にやや紅暈を伴う小水疱が多発し、舌や口腔粘膜に浅いびらんアフタを生じる。水疱はやや楕円形を呈し、臀部、膝部などに紅色の小丘疹が散在することもある。皮疹は1週間から10日で自然消退する。ごくまれに髄膜炎や脳炎などが生じることがあるので、発熱や嘔吐、頭痛などがある場合は注意を要する。エンテロウイルス71型による手足口病の場合にその頻度が高い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から手足口病が疑われ、かつ、(4)により、手足口病患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、手足口病が疑われ、かつ、(4)により、手足口病により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状(2つすべてを満たすもの)
ア 手のひら、足底又は足背、口腔粘膜に出現する2~5mm程度の水疱 |
イ 水疱は痂皮を形成せずに治癒 |
21 伝染性紅斑
(1) 定義
B19ウイルスの感染による紅斑を主症状とする発疹性疾患である。
(2) 臨床的特徴
幼少児(2~12歳)に多いが、乳児、成人が罹患することもある。潜伏期は4~15日。顔面、特に頬部に境界明瞭な平手で頬を打ったような紅斑が突然出現する。つづいて四肢に対側性にレース様の紅斑が出現する。消退後さらに日光照射、外傷などによって再度出現することがある。発疹の他に発熱、関節痛、咽頭痛、鼻症状、胃腸症状、粘膜疹、リンパ節腫脹、関節炎を合併することがある。予後は通常、良好である。但し、溶血性貧血の患者では、汎血球減少を起こすことがある。妊婦の場合には、胎児水腫又は流産を起こすことがある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から伝染性紅斑が疑われ、かつ、(4)により、伝染性紅斑患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、伝染性紅斑が疑われ、かつ、(4)により、伝染性紅斑により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状(2つすべてを満たすもの)
ア 左右の頬部の紅斑の出現 |
イ 四肢のレース様の紅斑の出現 |
22 突発性発しん
(1) 定義
乳幼児がヒトヘルペスウイルス6、7型の感染による突然の高熱と解熱前後の発疹を来す疾患である。
(2) 臨床的特徴
乳幼児期、特に6~18か月の間に罹患することが多い。5歳以上はまれである。
突然、高熱で発症、不機嫌で大泉門の膨隆をみることがある。咽頭部の発赤、特に口蓋垂の両側に強い斑状発赤を認めることがある。軟便若しくは下痢を伴うものが多く、発熱は3~4日持続した後に解熱する。
解熱に前後して小さな紅斑や紅色丘疹が出現し、散在性、時に斑状融合性に分布する。発疹は体幹から始まり上肢、頚部の順に広がるが、顔面、下肢には少ない。発疹は1~2日で消失する。脳炎を合併することがある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から突発性発しんが疑われ、かつ、(4)により、突発性発しん患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
届出の対象は、上記の臨床的特徴に合致するものであるため、届出の対象は5歳未満のみとする。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、突発性発しんが疑われ、かつ、(4)により、突発性発しんにより死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状(2つすべてを満たすもの)
ア 突然に発熱し、2~4日間持続 |
イ 解熱に前後して体幹部、四肢、顔面の発疹が出現 |
23 百日咳
(1) 定義
Bordetella pertussisによって起こる急性の気道感染症である。
(2) 臨床的特徴
潜伏期は通常5~10日(最大3週間程度)であり、かぜ様症状で始まるが、次第に咳が著しくなり、百日咳特有の咳が出始める。典型的な臨床像は、顔を真っ赤にしてコンコンと激しく咳込み(スタッカート)、最後にヒューッと音を立てて大きく息を吸う発作(ウープ)となる。嘔吐も伴い、眼瞼の浮腫や顔面の点状出血がみられることがある。幼若乳児や、年長児、また成人では典型的な症状がみられず、診断が難しいことも少なくない。
乳児では重症になり、特に新生児がかかると無呼吸となり、致死的となることがある。肺炎、脳症を合併することがある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から百日咳が疑われ、かつ、(4)により、百日咳患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、百日咳が疑われ、かつ、(4)により、百日咳により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状(ア及びイを満たすもの)
ア 2週間以上持続する咳嗽 |
イ 以下のいずれかの要件のうち少なくとも1つを満たすもの (ア) スタッカート及びウープを伴う咳嗽発作 (イ) 新生児や乳児で、他に明らかな原因がない咳嗽後の嘔吐又は無呼吸発作 |
25 ヘルパンギーナ
(1) 定義
主にコクサッキーウイルスA群による口峡部に特有の小水疱と発熱を主症状とする夏かぜの一種である。多くは、コクサッキーウイルスA群2~8、10、12型、まれにその他のエンテロウイルスも病原として分離されることがある。
(2) 臨床的特徴
潜伏期は2~4日、初夏から秋にかけて、乳幼児に多い。突然の38~40℃の発熱が1~3日間続き、全身倦怠感、食欲不振、咽頭痛、嘔吐、四肢痛などがある場合もある。咽頭所見は、軽度に発赤し、口蓋から口蓋帆にかけて1~5mmの小水疱、これから生じた小潰瘍、その周辺に発赤を伴ったものが数個認められる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からヘルパンギーナが疑われ、かつ、(4)により、ヘルパンギーナ患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ヘルパンギーナが疑われ、かつ、(4)により、ヘルパンギーナにより死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状(2つすべてを満たすもの)
ア 突然の高熱での発症 |
イ 口蓋垂付近の水疱疹や潰瘍や発赤 |
27 流行性耳下腺炎
(1) 定義
ムンプスウイルス感染により耳下腺が腫脹する感染症である。
(2) 臨床的特徴
上気道を介して飛沫感染し潜伏期は2~3週間で、両側又は片側の耳下腺が腫脹し、ものを噛むときに顎に痛みを訴えることが多い。このとき数日の発熱を伴うものが多い。耳下腺腫脹は有痛性で、境界不鮮明な柔らかい腫脹が耳朶を中心として起こる。他の唾液腺の腫脹をみることもある。耳下腺開口部の発赤が認められるが、膿汁の排泄はない。合併症としては、髄膜炎、脳炎、膵炎、難聴などがあり、その他成人男性には睾丸炎、成人女子には卵巣炎がみられることがある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から流行性耳下腺炎が疑われ、かつ、(4)により、流行性耳下腺炎患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、流行性耳下腺炎が疑われ、かつ、(4)により、流行性耳下腺炎により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状(2つすべてを満たすもの)
ア 片側ないし両側の耳下腺の突然の腫脹と、2日以上の持続 |
イ 他に耳下腺腫脹の原因がないこと |
28 インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)
(1) 定義
インフルエンザウイルス(鳥インフルエンザの原因となるA型インフルエンザウイルス及び新型インフルエンザ等感染症の原因となるインフルエンザウイルスを除く。)の感染による急性気道感染症である。
(2) 臨床的特徴
上気道炎症状に加えて、突然の高熱、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛を伴うことを特徴とする。流行期(我が国では、例年11月~4月)にこれらの症状のあったものはインフルエンザと考えられるが、非流行期での臨床診断は困難である。合併症として、脳症、肺炎を起こすことがある。
(3) 届出基準(インフルエンザ定点における場合)
ア 患者(確定例)
指定届出機関(インフルエンザ定点)の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からインフルエンザが疑われ、かつ、①のすべてを満たすか、①のすべてを満たさなくても②を満たすことにより、インフルエンザ患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、インフルエンザが疑われ、かつ、①のすべてを満たすか、①のすべてを満たさなくても②を満たすことにより、インフルエンザにより死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
①届出のために必要な臨床症状(4つすべてを満たすもの)
ア 突然の発症 |
イ 高熱 |
ウ 上気道炎症状 |
エ 全身倦怠感等の全身症状 |
②届出のために必要な検査所見
検査方法 |
検査材料 |
迅速診断キットによる病原体の抗原の検出 |
鼻腔吸引液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液 |
(4) 届出基準(基幹定点における場合)
ア 入院患者
指定届出機関(基幹定点)の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からインフルエンザが疑われ、かつ、(3)①のすべてを満たすか、(3)①のすべてを満たさなくても(3)②を満たすことにより、インフルエンザ患者と診断した患者のうち、入院をしたものについて、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
29 急性出血性結膜炎
(1) 定義
エンテロウイルス70型及びコクサッキーウイルスA24変異型の感染によって起こる急性結膜炎である。
(2) 臨床的特徴
潜伏期は1日で強い眼の痛み、異物感で始まり、結膜の充血、特に結膜下出血を伴うことが多い。眼瞼の腫脹、眼脂、結膜浮腫、角膜表層のび慢性混濁などがみられ眼痛、異物感がある。約1週間続いて治癒することが多いが、この疾患に罹患したのち6~12か月後に四肢の運動麻痺を来すことがある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から急性出血性結膜炎が疑われ、かつ、(4)により、急性出血性結膜炎患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、急性出血性結膜炎が疑われ、かつ、(4)により、急性出血性結膜炎により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状(下記のうち2つ以上)
ア 急性濾胞性結膜炎 |
イ 眼脂、眼痛、異物感などを伴う眼瞼腫脹 |
ウ 結膜下出血 |
30 流行性角結膜炎
(1) 定義
アデノウイルス8、19、37、4型などによる眼感染症である。
(2) 臨床的特徴
約1~2週間の潜伏期の後、急性濾胞性結膜炎の臨床症状を示して発病する。結膜の浮腫や充血、眼瞼浮腫が強く、流涙や眼脂を伴う。耳前リンパ節の腫脹と圧痛を来す。角膜にはび慢性表層角膜症がみられ、異物感、眼痛を訴えることがある。偽膜を伴うことも多い。発病後2~3週間で治癒することが多い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から流行性角結膜炎が疑われ、かつ、(4)により、流行性角結膜炎患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、流行性角結膜炎が疑われ、かつ、(4)により、流行性角結膜炎により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状(下記のうち2つ以上)
ア 重症な急性濾胞性結膜炎 |
イ 角膜点状上皮下混濁 |
ウ 耳前リンパ節腫脹・圧痛 |
31 性器クラミジア感染症
(1) 定義
Chlamydia trachomatisによる性感染症である。
(2) 臨床的特徴
男性では、尿道から感染して急性尿道炎を起こすが、症状は淋菌感染症よりも軽い。さらに、前立腺炎、精巣上体炎を起こすこともある。女性では、まず子宮頚管炎を起こし、その後、感染が子宮内膜、卵管へと波及し、子宮内膜炎、卵管炎、骨盤内炎症性疾患、肝周囲炎を起こす(しかし男女とも、症状が軽く自覚のないことも多い)。
また、子宮外妊娠、不妊、流早産の誘因ともなる。妊婦が感染している場合には、主として産道感染により、新生児に封入体結膜炎を生じさせることがある。また、1~2か月の潜伏期を経て、新生児、乳児の肺炎を引き起こすことがある。淋菌との混合感染も多く、淋菌感染症の治癒後も尿道炎が続く場合には、クラミジア感染症が疑われる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から性器クラミジア感染症が疑われ、かつ、(4)の表の左欄に掲げる検査方法により、性器クラミジア感染症患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を月単位で、翌月の初日に届け出なければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
スクリーニングによる病原体・抗原・遺伝子に関する検査陽性例は報告対象に含まれるが、抗体陽性のみの場合は除外する。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、性器クラミジア感染症が疑われ、かつ、(4)の表の左欄に掲げる検査方法により、性器クラミジア感染症により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を月単位で、翌月の初日に届け出なければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
(4) 届出のために必要な検査所見
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
尿道、性器から採取した材料 |
蛍光抗体法又は酵素抗体法による病原体の抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇、又は単一血清で抗体価の高値) |
血清 |
32 性器ヘルペスウイルス感染症
(1) 定義
単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV,HSV1型又は2型)が感染し、性器又はその付近に発症したものを性器ヘルペスという。
(2) 臨床的特徴
性器ヘルペスは、外部から入ったウイルスによる初感染の場合と、仙髄神経節に潜伏しているウイルスの再活性化による場合の2つがある。
初感染では、感染後3~7日の潜伏期の後に外陰部に小水疱又は浅い潰瘍性病変が数個ないし集簇的に出現する。発熱などの全身症状を伴うことが多い。2~4週間で自然に治癒するが、治癒後も月経、性交その他の刺激が誘因となって、再発を繰り返す。発疹は外陰部のほか、臀部、大腿にも生じることがある。
病変部位は男性では包皮、冠状溝、亀頭、女性では外陰部や子宮頚部である。口を介する性的接触によって口唇周囲にも感染する。HSV2型による場合は、より再発しやすい。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から性器ヘルペスウイルス感染症が疑われ、かつ、(4)により、性器ヘルペスウイルス感染症患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を月単位で、翌月の初日に届け出なければならない。
明らかに再発であるもの及び血清抗体のみ陽性のものは除外する。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、性器ヘルペスウイルス感染症が疑われ、かつ、(4)により、性器ヘルペスウイルス感染症により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を月単位で、翌月の初日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状
男女ともに、性器や臀部にヘルペス特有な有痛性の1から多数の小さい水疱性又は浅い潰瘍性病変を認めるもの |
33 尖圭コンジローマ
(1) 定義
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(ヒト乳頭腫ウイルス、HPV)の感染により、性器周辺に生じる腫瘍である。ヒトパピローマウイルスは80種類以上が知られているが、尖圭コンジローマの原因となるのは主にHPV6型とHPV11型であり、時にHPV16型の感染でも生じる。
(2) 臨床的特徴
感染後、数週間から2~3か月を経て、陰茎亀頭、冠状溝、包皮、大小陰唇、肛門周囲等の性器周辺部に、イボ状の小腫瘍が多発する。腫瘍は、先の尖った乳頭状の腫瘤が集簇した独特の形をしており、乳頭状、鶏冠状、花キャベツ状等と形容される。尖圭コンジローマ自体は、良性の腫瘍であり、自然に治癒することも多いが、時に癌に移行することが知られている。特に、HPV16,52,58,18型などに感染した女性の場合、子宮頚部に感染し、子宮頚癌の発癌要因になることもあると考えられている。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から尖圭コンジローマが疑われ、かつ、(4)により、尖圭コンジローマ患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を月単位で、翌月の初日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、尖圭コンジローマが疑われ、かつ、(4)により、尖圭コンジローマにより死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を月単位で、翌月の初日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状
男女ともに、性器及びその周辺に淡紅色又は褐色調の乳頭状、又は鶏冠状の特徴的病変を認めるもの |
34 淋菌感染症
(1) 定義
淋菌(Neisseria gonorrheae)による性感染症である。
(2) 臨床的特徴
男性は急性尿道炎として発症するのが一般的であるが、放置すると前立腺炎、精巣上体炎となる。後遺症として尿道狭窄が起こる。
女子は子宮頚管炎や尿道炎を起こすが、自覚症状のない場合が多い。感染が上行すると子宮内膜炎、卵管炎等の骨盤内炎症性疾患を起こし、発熱、下腹痛を来す。後遺症として不妊症が起きる。
その他、咽頭や直腸などへの感染や産道感染による新生児結膜炎などもある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から淋菌感染症が疑われ、かつ、(4)の表の左欄に掲げる検査方法により、淋菌感染症患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を月単位で、翌月の初日に届け出なければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、淋菌感染症が疑われ、かつ、(4)の表の左欄に掲げる検査方法により、淋菌感染症により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を月単位で、翌月の初日に届け出なければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
(4) 届出のために必要な検査所見
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
尿道及び性器から採取した材料、眼分泌物、咽頭拭い液 |
鏡検による病原体の検出 |
|
蛍光抗体法による病原体の抗原の検出 |
|
酵素抗体法による病原体の抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
35 感染性胃腸炎(病原体がロタウイルスであるものに限る。)
(1) 定義
ロタウイルスの感染による下痢、嘔吐、発熱を主症状とする感染症である。
(2) 臨床的特徴
主に0~2歳児を中心に好発し、毎年概ね2月から5月にかけて流行がみられる。主症状は発熱、嘔吐、白色の水様便を特徴とする下痢であり、通常、3―7日で症状の回復がみられる。他のウイルス性胃腸炎と比べると重度の脱水症状を呈し、入院治療を必要とすることが多い。稀に死亡に至る例もある。時に、合併症として痙攣、脳炎・脳症、腸重積、肝炎、腎炎などが認められ、心筋炎などの致死的感染症の報告も散見される。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からロタウイルス胃腸炎が疑われ、かつ、(4)の届出に必要な要件を満たし、ロタウイルス胃腸炎患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ロタウイルス胃腸炎が疑われ、かつ、(4)の届出に必要な要件を満たし、ロタウイルス胃腸炎により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出に必要な要件(以下のアの(ア)及び(イ)かつイを満たすもの)
ア 届出のために必要な臨床症状
(ア) 24時間以内に、3回以上の下痢又は1回以上の嘔吐 |
(イ) 他の届出疾患によるものを除く |
イ 病原体診断の方法
検査方法 |
検査材料 |
迅速診断キットによる病原体の抗原の検出 |
便検体 |
36 クラミジア肺炎(オウム病を除く)
(1) 定義
Chlamydophila (Chlamydia) pneumoniae,Chlamydia trachomatisの感染による肺炎である。
(2) 臨床的特徴
C.trachomatisは子宮頚管炎を発症している母体からの産道感染で新生児、乳児に間質性肺炎を発症し無熱性である。C.pneumoniaeは、飛沫感染により3~4週間の潜伏期を経て軽症の異型肺炎を発症する。小児及び高齢者で多く見られる。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からクラミジア肺炎が疑われ、かつ、(4)により、クラミジア肺炎患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、クラミジア肺炎が疑われ、かつ、(4)により、クラミジア肺炎により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な検査所見
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
気道から採取した検体 |
蛍光抗体法又は酵素抗体法による病原体の抗原の検出 |
|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
抗体の検出(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意な上昇、又は単一血清で抗体価の高値) |
血清 |
37 細菌性髄膜炎(髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌を原因として同定された場合を除く。)
(1) 定義
髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌が原因として同定された場合を除く種々の細菌感染による髄膜の感染症である。
(2) 臨床的特徴
発熱、頭痛、嘔吐を主な特徴とする。項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候などの髄膜刺激症状が見られることがあるが、新生児や乳児などではこれらの臨床症状が明らかではないことが多い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から細菌性髄膜炎が疑われ、かつ、(4)及び(5)により、細菌性髄膜炎患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、細菌性髄膜炎が疑われ、かつ、(4)により、細菌性髄膜炎により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状(2つすべてを満たすもの)
ア 発熱、頭痛、嘔吐を主な特徴とする |
イ 項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候などの髄膜刺激症状 |
(※) いずれも新生児や乳児などでは臨床症状が明らかではないことが多い。
(5) 届出のために必要な検査所見(2つすべてを満たすもの)
ア 髄液細胞数の増加(多核球優位であることが多い) |
イ 髄液蛋白量の増加と糖の減少 |
38 ペニシリン耐性肺炎球菌感染症
(1) 定義
ペニシリンGに対して耐性を示す肺炎球菌による感染症である。
(2) 臨床的特徴
小児及び成人の化膿性髄膜炎や中耳炎で検出されるが、その他、副鼻腔炎、心内膜炎、心嚢炎、腹膜炎、関節炎、まれには尿路生殖器感染から菌血症を引き起こすこともある。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からペニシリン耐性肺炎球菌感染症が疑われ、かつ、(4)の表の左欄に掲げる検査方法により、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を月単位で、翌月の初日に届け出なければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症が疑われ、かつ、(4)の表の左欄に掲げる検査方法により、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を月単位で、翌月の初日に届け出なければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
(4) 届出のために必要な検査所見
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による肺炎球菌の検出、かつペニシリンのMIC値が0.125μg/ml以上又は、オキサシリンの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が19mm以下 |
血液、腹水、胸水、髄液、その他の通常無菌的であるべき検体 |
分離・同定による肺炎球菌の検出、かつペニシリンのMIC値が0.125μg/ml以上又は、オキサシリンの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が19mm以下、かつ分離菌が感染症の起因菌と判定された場合 |
喀痰、膿、尿、その他の通常無菌的ではない検体 |
39 マイコプラズマ肺炎
(1) 定義
Mycoplasma pneumoniaeの感染によって発症する肺炎である。
(2) 臨床的特徴
好発年齢は、6~12歳の小児であり、小児では発生頻度の高い感染症の一つである。潜伏期は2~3週間とされ、飛沫で感染する。異型肺炎像を呈することが多い。頑固な咳嗽と発熱を主症状に発病し、中耳炎、胸膜炎、心筋炎、髄膜炎などの合併症を併発する症例も報告されている。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からマイコプラズマ肺炎が疑われ、かつ、(4)により、マイコプラズマ肺炎患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、マイコプラズマ肺炎が疑われ、かつ、(4)により、マイコプラズマ肺炎により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な検査所見
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
気道から採取された検体 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
|
抗体の検出 (ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇、又は単一血清で間接血球凝集抗体価320倍以上、補体結合抗体価64倍以上、ゼラチン粒子凝集抗体価320倍以上、若しくはIgM抗体の検出(迅速診断キット)) |
血清 |
40 無菌性髄膜炎
(1) 定義
種々のウイルスを中心とした病原体の感染による髄膜の感染症である。
(2) 臨床的特徴
発熱、頭痛、嘔吐を主な特徴とするが、新生児や乳児などでは臨床症状が明らかではないことが多い。項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候などの髄膜刺激症状が見られるが同じく新生児や乳児などではこれらが明らかではないことも多い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から無菌性髄膜炎が疑われ、かつ、(4)及び(5)により、無菌性髄膜炎患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、無菌性髄膜炎が疑われ、かつ、(4)及び(5)により、無菌性髄膜炎により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を週単位で、翌週の月曜日に届け出なければならない。
(4) 届出のために必要な臨床症状(2つすべてを満たすもの)
ア 発熱、頭痛、嘔吐を主な特徴とする |
イ 項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候などの髄膜刺激症状 |
(※) いずれも新生児や乳児などでは臨床症状が明らかではないことが多い。
(5) 届出のために必要な検査所見(2つすべてを満たすもの)
ア 髄液細胞数の増加(単核球優位であることが多い) |
イ 髄液蛋白量、糖量が正常 |
41 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症
(1) 定義
メチシリンなどのペニシリン剤をはじめとして、β―ラクタム剤、アミノ配糖体剤、マクロライド剤などの多くの薬剤に対し多剤耐性を示す黄色ブドウ球菌による感染症である。
(2) 臨床的特徴
外科手術後の患者や免疫不全者、長期抗菌薬投与患者などに日和見感染し、腸炎、敗血症、肺炎などを来し、突然の高熱、血圧低下、腹部膨満、下痢、意識障害、白血球減少、血小板減少、腎機能障害、肝機能障害などの症状を示す。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症が疑われ、かつ、(4)の表の左欄に掲げる検査方法により、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を月単位で、翌月の初日に届け出なければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症が疑われ、かつ、(4)の表の左欄に掲げる検査方法により、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を月単位で、翌月の初日に届け出なければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
(4) 届出のために必要な検査所見
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による黄色ブドウ球菌の検出、かつオキサシリンのMIC値が4μg/ml以上、又はオキサシリンの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が10mm以下 |
血液、腹水、胸水、髄液、その他の通常無菌的であるべき検体 |
分離・同定による黄色ブドウ球菌の検出、かつオキサシリンのMIC値が4μg/ml以上、又はオキサシリンの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が10mm以下、かつ分離菌が感染症の起因菌と判定された場合 |
喀痰、膿、尿、その他の通常無菌的ではない検体 |
42 薬剤耐性アシネトバクター感染症
(1) 定義
広域β―ラクタム剤、アミノ配糖体、フルオロキノロンの3系統の薬剤に対して耐性を示すアシネトバクター属菌による感染症である。
(2) 臨床的特徴
感染防御機能の低下した患者や抗菌薬長期使用中の患者に日和見感染し、肺炎などの呼吸器感染症、尿路感染症、手術部位や外傷部位の感染症、カテーテル関連血流感染症、敗血症、髄膜炎、皮膚、粘膜面、軟部組織、眼などに多彩な感染症を起こす。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から薬剤耐性アシネトバクター感染症が疑われ、かつ、(4)の表の左欄に掲げる検査方法により、薬剤耐性アシネトバクター感染症患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を月単位で、翌月の初日に届け出なければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、薬剤耐性アシネトバクター感染症が疑われ、かつ、(4)の表の左欄に掲げる検査方法により、薬剤耐性アシネトバクター感染症により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を月単位で、翌月の初日に届け出なければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
(4) 届出のために必要な検査所見
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定によるアシネトバクター属菌の検出、かつ、以下の3つの条件を全て満たした場合 ア イミペネムのMIC値が16μg/ml以上又は、イミペネムの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が13mm以下 イ アミカシンのMIC値が32μg/ml以上又は、アミカシンの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が14mm以下 ウ シプロフロキサシンのMIC値が4μg/ml以上又は、シプロフロキサシンの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が15mm以下 |
血液、腹水、胸水、髄液、その他の通常無菌的であるべき検体 |
分離・同定によるアシネトバクター属菌の検出、かつ以下の3つの条件を全て満たし、かつ分離菌が感染症の起因菌と判定された場合 ア イミペネムのMIC値が16μg/ml以上又は、イミペネムの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が13mm以下 イ アミカシンのMIC値が32μg/ml以上又は、アミカシンの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が14mm以下 ウ シプロフロキサシンのMIC値が4μg/ml以上又は、シプロフロキサシンの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が15mm以下 |
喀痰、膿、尿、その他の通常無菌的ではない検体 |
(※) イミペネム以外のカルバペネム系薬剤により検査を実施した場合は、その検査により耐性の結果が得られた場合も判断基準のアを満たすものとする。イミペネムによる検査と、その他のカルバペネム系薬剤による検査を実施した場合には、いずれかの薬剤の検査により耐性の結果が得られた場合も判断基準のアを満たすものとし、その検査方法を届出のために必要な検査方法とする。
また、シプロフロキサシン以外のフルオロキノロン系薬剤により検査を実施した場合は、その検査により耐性が得られた場合も判断基準のウを満たすものとする。シプロフロキサシンによる検査と、その他のフルオロキノロン系薬剤による試験を実施した場合には、いずれかの薬剤の検査により耐性の結果が得られた場合も判断基準のウを満たすものとし、その検査方法を届出のために必要な検査方法とする。
43 薬剤耐性緑膿菌感染症
(1) 定義
広域β―ラクタム剤、アミノ配糖体、フルオロキノロンの3系統の薬剤に対して耐性を示す緑膿菌による感染症である。
(2) 臨床的特徴
感染防御機能の低下した患者や抗菌薬長期使用中の患者に日和見感染し、敗血症や骨髄、気道、尿路、皮膚、軟部組織、耳、眼などに多彩な感染症を起こす。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から薬剤耐性緑膿菌感染症が疑われ、かつ、(4)の表の左欄に掲げる検査方法により、薬剤耐性緑膿菌感染症患者と診断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を月単位で、翌月の初日に届け出なければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
イ 感染症死亡者の死体
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、薬剤耐性緑膿菌感染症が疑われ、かつ、(4)の表の左欄に掲げる検査方法により、薬剤耐性緑膿菌感染症により死亡したと判断した場合には、法第14条第2項の規定による届出を月単位で、翌月の初日に届け出なければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
(4) 届出のために必要な検査所見
検査方法 |
検査材料 |
分離・同定による緑膿菌の検出、かつ、以下の3つの条件を全て満たした場合 ア イミペネムのMIC値が16μg/ml以上又は、イミペネムの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が13mm以下 イ アミカシンのMIC値が32μg/ml以上又は、アミカシンの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が14mm以下 ウ シプロフロキサシンのMIC値が4μg/ml以上又は、シプロフロキサシンの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が15mm以下 |
血液、腹水、胸水、髄液、その他の通常無菌的であるべき検体 |
分離・同定による緑膿菌の検出、かつ、以下の3つの条件を全て満たし、かつ、分離菌が感染症の起因菌と判定された場合 ア イミペネムのMIC値が16μg/ml以上又は、イミペネムの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が13mm以下 イ アミカシンのMIC値が32μg/ml以上又は、アミカシンの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が14mm以下 ウ シプロフロキサシンのMIC値が4μg/ml以上、又は、シプロフロキサシンの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が15mm以下 |
喀痰、膿、尿、その他の通常無菌的ではない検体 |
(※) イミペネム以外のカルバペネム系薬剤により検査を実施した場合は、その検査により耐性の結果が得られた場合も判断基準のアを満たすものとする。イミペネムによる検査と、その他のカルバペネム系薬剤による検査を実施した場合には、いずれかの薬剤の検査により耐性の結果が得られた場合も判断基準のアを満たすものとし、その検査方法を届出のために必要な検査方法とする。
また、シプロフロキサシン以外のフルオロキノロン系薬剤により検査を実施した場合は、その検査により耐性が得られた場合も判断基準のウを満たすものとする。シプロフロキサシンによる検査と、その他のフルオロキノロン系薬剤による試験を実施した場合には、いずれかの薬剤の検査により耐性の結果が得られた場合も判断基準のウを満たすものとし、その検査方法を届出のために必要な検査方法とする。
第7 指定感染症
鳥インフルエンザ(H7N9)
(1) 定義
鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒトへの感染による急性疾患である。
(2) 臨床的特徴
臨床的特徴に係る情報は限定的であるが、高熱と急性呼吸器症状を特徴とする。下気道症状を併発し、重症の肺炎が見られることがある。呼吸不全が進行した例ではびまん性のスリガラス様陰影が両肺に認められ、急速に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の症状を呈する。二次感染、脳症、横紋筋融解症に進展した報告がある。
海外からの情報によると、発症から死亡までの中央値は11日(四分位範囲7~20日)であり、進行性の呼吸不全等による死亡が多い。
(3) 届出基準
ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者のうち、38℃以上の発熱及び急性呼吸器症状がある者を診察した結果、症状や所見、渡航歴、接触歴等から鳥インフルエンザ(H7N9)が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鳥インフルエンザ(H7N9)と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
検体から直接のPCR法による病原体の遺伝子の検出 |
鼻腔吸引液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、喀痰、気道吸引液、肺胞洗浄液、剖検材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表に掲げる検査方法により、鳥インフルエンザ(H7N9)の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
検体から直接のPCR法による病原体の遺伝子の検出 |
鼻腔吸引液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、喀痰、気道吸引液、肺胞洗浄液、剖検材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
ウ 疑似症患者
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者のうち、38℃以上の発熱及び急性呼吸器症状のある者を診察した結果、症状や所見、渡航歴、接触歴等から鳥インフルエンザ(H7N9)が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、H7亜型が検出された場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
検体から直接のPCR法による病原体の遺伝子の検出 |
鼻腔吸引液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、喀痰、気道吸引液、肺胞洗浄液、剖検材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
エ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見、渡航歴、接触歴等から、鳥インフルエンザ(H7N9)が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鳥インフルエンザ(H7N9)により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。
検査方法 |
検査材料 |
検体から直接のPCR法による病原体の遺伝子の検出 |
鼻腔吸引液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、喀痰、気道吸引液、肺胞洗浄液、剖検材料 |
分離・同定による病原体の検出 |
オ 感染症死亡疑い者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見、渡航歴、接触歴等から、鳥インフルエンザA(H7N9)により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。
第8 法第14条第1項に規定する厚生労働省令で定める疑似症
1 摂氏38度以上の発熱及び呼吸器症状(明らかな外傷又は器質的疾患に起因するものを除く。)
(1) 定義
①摂氏38度以上の発熱及び②呼吸器症状の両者を呈し、かつ、それらの症状が明らかな外傷又は器質的疾患に起因するものではない状態を指す。
(2) 届出基準
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(1)の定義を満たす者を診察したときは、当該症状が二類感染症、三類感染症、四類感染症又は五類感染症の患者の症状であることが明らかな場合及びいわゆる普通感冒など感染症法の対象外の感染性疾患であることが明らかな場合を除き、法第14条第2項の規定による届出を直ちにしなければならない。
(3) 注意事項
本届出は、例えば新型インフルエンザ等の感染症の発生を想定して、原因不明の重症の感染性呼吸器疾患の発生動向を把握することを目的としており、当該患者の初期症状、主症状その他の状態を総合的に勘案して、届出を行うものである。
このため、(1)の②の「呼吸器症状」とは、入院を要する程度に重症であり、呼吸困難の状態等を指すものとする。
2 発熱及び発しん又は水疱
(1) 定義
①発熱及び②発しん又は水疱の両者を呈する状態を指す。
(2) 届出基準
指定届出機関の管理者は、当該指定届出機関の医師が、(1)の定義を満たす者を診察したときは、当該症状が二類感染症、三類感染症、四類感染症又は五類感染症の患者の症状であることが明らかな場合及び発熱及び発しんを呈するが感染症法の対象外の感染性疾患であることが明らかな場合を除き、法第14条第2項の規定による届出を直ちにしなければならない。
(3) 注意事項
本届出は、原因不明の感染性皮膚疾患等の発生動向を把握するために行うものであることから、当該患者の初期症状、主症状その他の状態を総合的に勘案して、届出を行うものである。
3 全般的注意事項
1及び2において、当該症状が
ア 感染症法に規定する感染症によるものでないことが明らかである場合には、本届出の対象とはならない。
イ 感染症法に規定する感染症によるものであることが明らかであり、かつ、いずれの感染症であるかが特定可能な場合には、当該感染症の届出基準に基づき届出を行うこととなるため、本届出の対象とはならない。
別記様式1―1
別記様式1―2
別記様式1―3
別記様式1―4
別記様式1―5
別記様式1―6
別記様式1―7
別記様式2―1
別記様式2―2
別記様式2―3
別記様式2―4
別記様式2―5
別記様式3―1
別記様式3―2
別記様式3―3
別記様式3―4
別記様式3―5
別記様式4―1
別記様式4―2
別記様式4―3
別記様式4―4
別記様式4―5
別記様式4―6
別記様式4―7
別記様式4―8
別記様式4―9
別記様式4―10
別記様式4―11
別記様式4―12
別記様式4―13
別記様式4―14
別記様式4―15
別記様式4―16
別記様式4―17
別記様式4―18
別記様式4―19
別記様式4―20
別記様式4―21
別記様式4―22
別記様式4―23
別記様式4―24
別記様式4―25
別記様式4―26
別記様式4―27
別記様式4―28
別記様式4―29
別記様式4―30
別記様式4―31
別記様式4―32
別記様式4―33
別記様式4―34
別記様式4―35
別記様式4―36
別記様式4―37
別記様式4―38
別記様式4―39
別記様式4―40
別記様式4―41
別記様式4―42
別記様式4―43
別記様式5―1
別記様式5―2
別記様式5―3
別記様式5―4
別記様式5―5
別記様式5―6
別記様式5―7
別記様式5―8
別記様式5―9
別記様式5―9―1
別記様式5―9―2
別記様式5―10
別記様式5―11
別記様式5―12
別記様式5―13
別記様式5―14
別記様式5―14―2
別記様式5―14―3
別記様式6―1
別記様式7―1
別記様式7―2
別記様式7―2(2)
別記様式7―3
別記様式7―4
別記様式7―5
別記様式7―6
別記様式7―7