○就労可能な被保護者の就労・自立支援の基本方針について
(平成25年5月16日)
(社援発0516第18号)
(各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長あて厚生労働省社会・援護局長通知)
(公印省略)
生活保護受給世帯は一昨年に過去最高を更新して以降も増加傾向が続いている。特に稼働年齢層も多く含まれると考えられるその他の世帯の割合が大きく増加しており、就労支援を通じた保護脱却を目指す取組の重要性が高まってきている。
現在、就労可能な被保護者への就労支援は、自立支援プログラム等により、きめ細かに行うことにしているが、就職できないという状況が長く続くと、就労による自立が困難になってくる傾向があるため、保護開始直後から早期脱却を目指し、期間を設定して集中的かつ切れ目ない支援を行うことが必要である。
このことは、「社会保障審議会生活困窮者の支援の在り方に関する特別部会報告書」(平成25年1月25日)においても報告されており、また、「生活保護制度に関する国と地方の協議」中間とりまとめ(平成23年12月12日)においても、「国から地方自治体に対して、期間を設定した集中的な就労支援を行うこと等を含む生活保護受給者の経験や適性等に応じた就労・自立支援の方針を提示する必要がある。」とされているところである。
ついては、「就労可能な被保護者の就労・自立支援の基本方針」を定め、平成25年5月16日から適用することとしたので、了知の上、保護の実施に遺漏なきを期されたい。
本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の9第1項及び第3項の規定による処理基準としたので申し添える。
なお、本通知は厚生労働省職業安定局と協議済みであるので念のため申し添える。
記
1 趣旨
生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第4条においては、「利用し得る資産、能力その他あらゆるもの」を活用することが規定されており、就労可能な被保護者については、稼働能力の十分な活用が求められる。これまでも就労可能な被保護者に対しては、自立支援プログラムへの参加勧奨など必要な支援を行ってきたところであるが、就職できないという状況が長く続くと、就労による自立が困難となってくる傾向がある。
そのため、保護開始後から早期脱却を目指し、一定期間を活動期間と定め、本人の同意を得た上で、その活動期間内に行う就労自立に向けた具体的な活動内容とその活動を計画的に取組むことについて、保護の実施機関と双方とで確認をする。その確認内容に基づき、保護の実施機関は、その期間内に保護脱却できるよう、保護脱却に至るまで切れ目なく集中的な支援を行うことによって被保護者の就労による自立を促進するものである。
2 対象者
保護の実施機関が就労可能と判断する被保護者(高校在学、傷病、障害等のため、就労が困難な者を除き、現に就労している被保護者を含む。)であって、就労による自立に向け、本支援が効果的と思われる者(保護開始時点では就労困難と判断された者が、その後、就労可能と認められるようになった場合にはその者も含む。また、保護からの早期脱却が可能となる程度の就労が直ちに困難と見込まれる場合であっても、本支援を行うことが特に必要と判断した場合にはその者も含む。)(以下「対象者」という。)
3 自立に向けた被保護者主体の計画的な取組の確認
保護の実施機関は、保護開始決定後速やかに(保護開始時点では就労困難と判断された者が、その後、就労可能と認められるようになったときはその時点)、対象者に対して、就労による生活保護からの早期脱却に向けて保護の実施機関が求職活動内容を予め本人と共有し、的確な支援を行うことを目的として、被保護者が主体的かつ計画的に行う取組を確認するため、次の取組を行う。
(1) 保護の実施機関は、速やかに面談の機会を設け、稼働能力を十分活用することが求められていることを十分に説明した上で、本人の同意を得て、求職活動の具体的な目標、内容を決定し、本人と保護の実施機関との共通認識のもと、適切な就労活動及び的確な就労支援を行うため、別紙1を参考に自立活動確認書(以下「確認書」という。)の作成を求めること。
また、必要に応じて、本人の意向を尊重しつつ、確認書の作成を支援すること。
(2) 確認書の作成にあたっては、求職の職種、就労場所、勤務形態等就職に関する本人の意向、学歴、職歴、稼働能力、地域の求人状況等を総合的に勘案し、原則6か月以内の一定期間を活動期間と定め、その活動期間内に就職できることを目指し、具体的な目標や、求職活動の内容及びそれに対する具体的な就労支援、その他保護の実施機関が必要と認める事項を確認すること。
(3) 確認書は、本人の同意及び署名を得て、原本を保護の実施機関が保管し、写しを被保護者に手渡し、内容を共有すること。
(4) 保護の実施機関は、確認書に基づき、集中的な支援を行うこと。
4 申告の徹底
稼働能力の活用状況を確認するため、対象者から、以下の申告を求めること。
(1) 収入の申告
対象者のうち、現に就労している被保護者に対しては、毎月別紙2を参考にして収入申告書を提出させること。収入申告書は、勤務先、就労日数、収入額を記入させ、これらの事項を証明すべき資料がある場合には、これを添付させること。ただし、当該被保護者が常用雇用されている等各月毎の収入の増減が少ない場合の収入申告書の提出は、3か月ごとで差し支えないこと。
(2) 求職活動状況・収入の申告
対象者のうち、就労していない者及び現に就労しているが就労収入増加のための活動が必要な者に対しては、毎月、別紙3を参考にして求職活動状況・収入申告書を提出させること。ただし、現に就労している者で、別紙2による申告をしているものについては、別紙3の2「収入の状況」欄への記載は必要ないこと。
求職活動状況については、活動の日数、内容及びその結果を記入させ、活動が確認できる書類を添付させること。
なお、生活保護受給者等就労自立促進事業(平成25年3月29日付け雇児発0329第30号、社援発0329第77号「生活保護受給者等就労自立促進事業の実施について」別添「生活保護受給者等就労自立促進事業実施要領」)の支援対象者である場合や自立支援プログラムその他の保護の実施機関による就労支援策が実施されるなど、保護の実施機関において、別途、当該被保護者の就労・求職状況を把握している場合はその活動については申告を求めない扱いとして差し支えない。
5 確認書に基づく求職活動の確認及び確認書の見直し
(1) 求職活動の報告時
保護の実施機関は、求職活動状況・収入申告書の記載内容を確認し、不明な点がある場合には、被保護者との面談などにより活動内容を確認すること。
(2) 活動開始から一定期間経過後
ア 保護の実施機関は、活動期間の中間時点を目途に、これまでの求職活動の状況等を評価すること。
イ 評価の結果、現在の活動内容では、就労の目途が立たないと判断した場合には、本人と面談の上、それまでの取組に加えて職種・就労場所の範囲等を広げて求職活動を行うなど、本人の同意を得て、より柔軟な取組を行うよう活動内容を見直すとともに、合わせて確認書についても見直しを行うこと。
ウ また、それまでの求職活動を通じて直ちに保護脱却が可能となる程度の就労が困難と見込まれる場合には、本人と面談の上、生活のリズムの安定や就労実績を積み重ねることで、その後の就労に繋がりやすくする観点から、パートタイム勤務等短時間・低額であっても一旦就労することに向けた求職活動を行うよう、本人の同意を得て、活動内容を見直すとともに、合わせて確認書についても見直しを行うこと。
エ 集中的な就労支援を継続することが適当でないと判断される者は、就労意欲の喚起のための機会の提供等、本人の状況に即した適切な事業への移行を検討するなど支援内容の見直しを行うこと。
(3) 活動期間終了時
ア 活動期間終了時点において、確認書に基づく求職活動の状況等を評価すること。
イ 評価の結果、今後も集中的な支援を継続することが効果的であると判断される場合には、最長3か月を延長期間とし、本人の同意を得て再度確認書を作成し、引き続き就労支援を行うこと。
ウ さらに、その延長期間経過時点で、なお集中的な支援を継続することで就労に結びつく蓋然性が高いと判断される場合には、更に最長3か月延長すること。(最長1年)
エ 集中的な就労支援を継続することが適当でないと判断される者は、(2)のエと同様に支援内容を見直すこと。
6 就労・求職状況管理台帳による管理
保護の実施機関は、対象者の稼働能力の活用状況を把握するため、4により申告が必要な被保護者ごとに、別紙4を参考として「就労・求職状況管理台帳」により管理すること。
対象者が求職活動状況の申告を行ったときは、就労・求職状況管理台帳にその旨記載し、収入額、就労日数、求職活動日数等その概要についても記載すること。
なお、被保護者から提出された申告書等については、個別のケース台帳において保管し、また、就労・求職状況について、被保護者から聞き取った内容は、ケース記録に記載すること。
7 稼働能力の活用状況に問題がある者等に対する対応
3の自立に向けた計画的取組の確認に応じない、又は4の申告を行わない者であって、求職活動が十分に行われていないと保護の実施機関が判断する者については、保護の実施機関は、必要な指導・指示を行うこと。
なお、指導・指示を行うにあたっては、就労先が見つかっていないことのみを理由として指導・指示を行うなど、機械的な取扱いにならないよう留意すること。上記指導を3か月程度継続してもなお、正当な理由もなくこれに従わない場合には、保護の実施機関は、それぞれ個別の事情に配慮しつつ、法第27条に基づく文書による指導・指示を行うこと。文書による指導・指示は、申告の期限(目安は1か月程度)を付す等具体的かつ適切な内容となるよう留意すること。
さらにこれに従わない場合には、保護の実施機関は、所定の手続を経た上で、法第62条第3項に規定する保護の変更、停止又は廃止について検討すること。
なお、稼働能力の活用が十分でなく、保護の要件を満たさないと考えられる者への対応として、保護を停止して就労指導を継続することが保護を廃止するよりも受給者の自立助長につながる場合もあることから、保護の停止を活用し、保護の停止期間中において就労指導を継続して就労を促すことも検討されたい。
8 留意事項
(1) 平成25年5月16日からこの取組を実施する。
(2) 新たに保護を開始した者のうち、本通知の対象となる者から順次確認を行い、平成25年7月末を目途にして、全ての対象者に対して確認を行うこととする。
(3) 本通知の対象者については1~7を適用することとし、「就労可能な被保護者の就労及び求職状況の把握について(平成14年3月29日社援発第0329024号)」の対象者であって本通知の対象にならない者については、従前のとおりとする。
(別紙1)
(別紙2)
(別紙3)
(別紙4)