添付一覧
○労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について
(平成25年4月12日)
(基発0412第13号)
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成25年厚生労働省令第58号)が本日公布され、車両系建設機械関係は同年7月1日から、食品加工用機械関係は同年10月1日から施行することとされたところである。その改正の趣旨、内容等については、下記のとおりであるので、関係者への周知を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。
記
第1 改正の趣旨
1 食品加工用機械関係(第2編第1章関係)
(1) 食品加工用機械を原因とする休業4日以上の死傷労働災害が年間2,000件程度発生しており、その中には、指の切断など後遺障害が残る重篤なものも多く含まれている一方で、その特性に応じた労働災害防止措置が規定されていないことから、食品加工用機械による労働災害の防止を図るために必要な措置を規定したものである。
(2) 食品加工用機械を含めた機械一般について、目詰まり等の調整時の労働災害が多いことから、基準として必要な措置を規定したものである。
2 車両系建設機械関係
近年、解体工事現場への導入が進んでいる鉄骨切断機、コンクリート圧砕機又は解体用つかみ機(以下「鉄骨切断機等」という。)を原因とする休業4日以上の死傷労働災害が年間100件程度発生している一方で、その特性に応じた労働災害防止措置が設けられていないことから、鉄骨切断機等による労働災害防止を図るために必要な措置を規定したものである。
また、これらの機械以外の車両系建設機械についても、これらの機械と同様に実施する必要がある場合には、規定の対象としたこと。
第2 細部事項
1 食品加工用機械関係(第2編第1章関係)
(1) 食品加工用機械
ア 切断機及び切削機(第130条の2、第130条の3及び第130条の4関係)
① 第130条の2の「食品加工用切断機又は食品加工用切削機」とは、スライサー、チョップカッター、バンドソー等の刃部により、食品の原材料の切断又は切削を行う機械をいうこと。
② 第130条の2の「覆い、囲い」には、可動式ガードも含まれること。また、これらの「覆い、囲い」を取り外し、又は開放している間は、機械を起動できないようにインターロック機構を設けることが望ましいこと。
③ 第130条の2の「覆い、囲い等」の「等」には、光線式安全装置が含まれること。
④ 第130条の3第1項及び第130条の4第1項の「労働者に危険を及ぼすおそれのあるとき」とは、原材料を送給し、又は取り出す際に機械の可動部分が労働者の手の届く範囲にある場合をいうこと。
⑤ 第130条の3第1項及び第130条の4第1項の機械の運転の停止に関して、機械の運転を停止する操作を行った後、速やかに可動部分を停止させるためのブレーキを備えることが望ましいこと。
⑥ 第130条の3第1項及び第130条の4第1項の「用具」には、可動部分との接触を防止することができる大きさ及び形状の押し板及び取出し器具が含まれること。
⑦ 第130条の3第1項及び第130条の4第1項の「用具等」の「等」には、手動で送給する装置で可動部分との接触を確実に防止できるもの、両手操作式制御装置及び金属製又は特殊な化学繊維製の保護手袋が含まれること。ただし、保護手袋については、機械の危険性に応じて有効なものを選択する必要があること。
⑧ 第130条の3第1項及び第130条の4第1項の「用具等」について、機械に附属する専用のものがある場合には、これを他の用具等で代替することは適当でないこと。
イ 粉砕機及び混合機(第130条の5、第130条の6及び第130条の7関係)
① 改正前の第142条は、食品加工用のものを含めた粉砕機及び混合機について、転落等の危険を防止する措置を規定したものであるが、第3節の2の新設に伴い、第130条の5において、食品加工用粉砕機及び食品加工用混合機について必要な措置を規定したこと。なお、第130条の5と第142条において規定される措置の内容は同一であること。
② 改正前の第143条は、食品加工用のものを含めた粉砕機及び混合機について、内容物を取り出す場合の運転停止等の措置を規定したものであるが、第3節の2の新設に伴い、第130条の7において、食品加工用粉砕機及び食品加工用混合機について必要な措置を規定したこと。なお、食品加工用粉砕機及び食品加工用混合機については、連続的に加工を行いつつ、内容物の取り出すことが少なくなく、かつ、有効な用具等の使用によって十分に危険を防止できると考えられることから、作業の性質上、機械の運転停止が困難な場合に限らず、用具等の使用による内容物の取り出しを可能としたこと。
③ 食品加工用粉砕機及び食品加工用混合機については、連続的に加工を行いつつ、原材料を送給することが少なくなく、内容物を取り出す場合と同様の危険があることから、第130条の6において必要な措置を規定したこと。なお、原材料の送給が自動的に行われない構造の機械に原材料を送給する場合であっても、労働者に危険を及ぼすおそれのない場合があることから、機械の運転停止等の措置が必要となる場合を「労働者に危険を及ぼすおそれのあるとき」に限定したこと。
④ 第130条の5第1項の「食品加工用粉砕機又は食品加工用混合機」とは、ミキサー、ミル、らいかい機等の回転する可動部分によって食品の原材料の粉砕、破砕、混合、混練又は攪拌を行う機械をいうこと。
⑤ 第130条の5第2項の「開口部」には、転落のおそれのある開口部だけでなく、機械の可動部分を囲う容器の開放されている部分を含め、それを経由して労働者の身体の一部が機械の可動部分に届く場合の当該開口部が含まれること。なお、第142条第2項の「開口部」についても、同様であること。
⑥ 第130条の5第2項の「開口部から可動部分に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるとき」とは、機械の開口部及び可動部分の位置、大きさにより、労働者の身体の一部が機械の可動部分に届く場合をいうこと。ただし、機械の駆動力等が次のいずれにも該当するなど、労働者の身体を負傷させるに至らない程度である場合は、これに含まれないこと。なお、第142条第2項についても同様であること。
(ア) 機械の駆動力が、労働者が自らの力で回転を止めることができ、労働者の身体の一部が接触しても、労働者の身体を負傷させるに至らない程度であること
(イ) 機械の駆動速度が、労働者の身体の一部が接触しても、労働者の身体を負傷させるに至らない程度であること
(ウ) 機械の可動部分の形状が、鋭利でないこと
⑦ 第130条の5第2項の「蓋、囲い」には、可動式ガードも含まれること。また、これらの「蓋、囲い」を取り外し、又は開放している間は、機械を起動できないようにインターロック機構を設けることが望ましいこと。
⑧ 第130条の5第2項の「蓋、囲い等」の「等」には、光線式安全装置が含まれること。
⑨ 第130条の6第1項の「労働者に危険を及ぼすおそれのあるとき」とは、労働者が原材料を送給する位置や機械の開口部等の原材料を送給する部分の位置、大きさ、さらには機械の可動部分の位置、可動範囲から、原材料を送給する労働者の身体の一部が機械の可動部分に接触する可能性がある場合をいうこと。ただし、⑥の(ア)から(ウ)までのいずれにも該当する場合は、これに含まれないこと。
⑩ 第130条の6第1項及び第130条の7第1項の機械の運転の停止に関して、機械の運転を停止する操作を行った後、速やかに可動部分を停止させるためのブレーキを備えることが望ましいこと。
⑪ 第130条の6第1項及び第130条の7第1項の「用具」には、可動部分との接触を防止することができる大きさ及び形状のトレイ及び柄杓が含まれること。
⑫ 第130条の6第1項及び第130条の7第1項の「用具等」の「等」には、可動部分の形状が鋭利でない機械に備え付けられたホールド・ツゥ・ラン制御装置であって、労働者の身体の一部が接触しても負傷しない程度まで回転速度を下げて運転させることができるものが含まれること。
⑬ 第130条の6第1項及び第130条の7第1項の「用具等」について、機械に附属する専用のものがある場合には、これを他の用具等で代替することは適当でないこと。
⑭ 食品加工用粉砕機及び食品加工用混合機は、万が一、労働者の身体の一部が巻き込まれた場合に、離脱が容易な構造とすることが望ましいこと。
ウ ロール機(第130条の8関係)
① 第130条の8の「食品加工用ロール機」とは、製麺用ロール機、製菓用ロール機等の食品の原材料を圧延する機械をいうこと。
② 「労働者に危険を及ぼすおそれのある部分」には、労働者の身体の一部が届くロール部が含まれること。ただし、機械の駆動力が、労働者が自らの力で回転を止めることができ、労働者の身体の一部が接触しても、労働者の身体を負傷させるに至らない程度である場合は、これに含まれないこと。
③ 第130条の8の「覆い、囲い」には、可動式ガードも含まれること。また、これらの「覆い、囲い」を取り外し、又は開放している間は、機械を起動できないようにインターロック機構を設けることが望ましいこと。
④ 第130条の8の「覆い、囲い等」の「等」には、光線式安全装置及び作業を行う労働者が自ら操作できる急停止装置が含まれること。ただし、当該急停止装置を設ける場合には、原材料の送給に必要な箇所を除き、覆い又は囲いを設ける必要があること。
⑤ 食品加工用ロール機は、万が一、労働者の身体の一部が巻き込まれた場合に、離脱が容易な構造とすることが望ましいこと。
エ 成形機及び圧縮機(第130条の9関係)
① 改正前の第147条は、食品加工用のものを含めた射出成形機等について、労働者の身体の一部が挟まれることを防止する措置を規定したものであるが、第3節の2の新設に伴い、第130条の9において、食品加工用成形機及び食品加工用圧縮機について必要な措置を規定したこと。なお、食品加工用成形機及び食品加工用圧縮機については、駆動力の小さいものがあり、労働者が身体の一部を挟まれたとしても労働者に危険を及ぼすおそれのない場合があることから、労働災害防止措置が必要となる場合を「労働者に危険を及ぼすおそれのあるとき」に限定したこと。また、連続的に加工を行うことが少なくないことから、「戸、両手操作式による起動装置その他の安全装置」ではなく、「覆い、囲い等」の設置を義務付けたこと。
② 第130条の9の「食品加工用成形機又は食品加工用圧縮機」とは、おにぎりの成形機、マカロニの押し出し機、果実の圧搾機等の圧力を加えることによって食品の原材料の成形、型抜き、圧縮又は圧搾を行う機械をいうこと。
③ 「挟まれること等」の「等」には、機械に巻き込まれることが含まれること。なお、食品加工用成形機又は食品加工用圧縮機には、回転することによって食品を加工するものがあるため、挟まれることだけでなく、巻き込まれることによる危険を防止する措置についても規定したこと。
④ 「労働者に危険を及ぼすおそれのあるとき」には、労働者の身体の一部が機械の成形部又は圧縮部に届く場合が含まれること。ただし、機械の駆動力が、労働者の身体の一部が接触しても、労働者の身体を負傷させるに至らない程度である場合は、これに含まれないこと。
⑤ 第130条の9の「覆い、囲い」には、可動式ガードも含まれること。また、これらの「覆い、囲い」を取り外し、又は開放している間は、機械を起動できないようにインターロック機構を設けることが望ましいこと。
⑥ 第130条の9の「覆い、囲い等」の「等」には、光線式安全装置及び両手操作式制御装置が含まれること。
(2) 一般基準関係(第107条関係)
ア 機械の調整作業時においても、機械に巻き込まれる等の危険があることから、機械(刃部を除く。)の調整の作業について、掃除、給油、検査又は修理の作業と同様に、機械の運転停止等の措置を義務付けたこと。
イ 第1項の「調整」の作業には、原材料が目詰まりした場合の原材料の除去や異物の除去等、機械の運転中に発生する不具合を解消するための一時的な作業や機械の設定のための作業が含まれること。
ウ 第1項の機械の運転停止に関して、機械の運転を停止する操作を行った後、速やかに機械の可動部分を停止させるためのブレーキを備えることが望ましいこと。
エ 第1項ただし書の「覆いを設ける等」の「等」には、次の全ての機能を備えたモードを使用することが含まれること。なお、このモードは「機械の包括的な安全基準に関する指針」(平成19年7月31日付け基発第0731001号)の別表第2の14(3)イに示されたものであること。
① 選択したモード以外の運転モードが作動しないこと。
② 危険性のある運動部分は、イネーブル装置、ホールド・ツゥ・ラン制御装置又は両手操作式制御装置の操作を続けることによってのみ動作できること。
③ 動作を連続して行う必要がある場合、危険性のある運動部分の動作は、低速度動作、低駆動力動作、寸動動作又は段階的操作による動作とすること。
オ 第1項の「調整」の作業を行うときは、作業手順を定め、労働者に適切な安全教育を行うこと。
カ 第2項の「当該機械の起動装置に表示板を取り付ける」措置を講じる場合には、表示板の脱落や見落としのおそれがあることから、施錠装置を併用することが望ましいこと。
(3) その他の留意事項
ア 第2編第1章第3節の2に規定する機械(以下「食品加工用機械」という。)に設ける安全装置、覆い、囲い等については、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第28条及び第29条の規定に基づく点検、整備、機能の保持等を徹底する必要があること。
イ 食品加工用機械を取り扱う労働者に対し、労働安全衛生規則第35条の雇入れ時等の教育の実施を徹底する必要があること。なお、同条第1項第1号から第4号までの事項に関する教育の省略が認められている飲食店においても、当該事項に関する教育を行うことが望ましいこと。
また、食品加工用機械の安全な取扱い方法を定めた作業手順書を作成し、これにより作業を行うよう労働者に対する教育を行うとともに、作業手順書に基づいて作業が行われていることを定期的に確認することが望ましいこと。
ウ 食品加工用機械の原動機、回転軸、歯車、プーリー、ベルト等の労働者に危険を及ぼすおそれのある部分については、労働安全衛生規則第101条第1項及び第2項の規定に基づく覆い、囲い等の設置を徹底する必要があること。
2 車両系建設機械関係(第2編第2章第1節及び別表第三関係)
(1) 定義等(第151条の84関係)
ア 労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)別表第7第6号2の「厚生労働省令で定める機械」として、鉄骨切断機等を規定したこと。
イ 鉄骨切断機とは、鉄骨(非鉄金属の工作物を含む。)を切断するためのはさみ状のアタッチメントを装着した建設機械をいうこと。
ウ コンクリート圧砕機とは、コンクリートを砕くためのはさみ状のアタッチメントを装着した建設機械をいうこと。鉄筋を切断する機能を付加したものも、これに含まれること。
エ 解体用つかみ機とは、木造の工作物を解体し、又はその解体物をつかんで持ち上げるためのフォーク状のアタッチメントを装着した建設機械をいうこと。
オ 第2章第1節において、労働安全衛生法施行令別表第7第6号に掲げる機械(ブレーカ、鉄骨切断機、コンクリート圧砕機及び解体用つかみ機)で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるものを「解体用機械」と定義したこと。
(2) 構造(第153条関係)
ア 岩石の落下等により当該物が労働者に激突するおそれがある場所で、鉄骨切断機等を使用するときは、堅固なヘッドガードを備えなければならないこととしたこと。
イ 「岩石の落下等」の「等」には、鉄骨又はコンクリートの破片の落下や木造の工作物の倒壊が含まれること。また、本条のヘッドガードは、落下等のおそれのある物に対応したものとする必要があること。
(3) 使用に係る危険の防止(第2款関係)
ア 転倒又は転落による危険の防止(第157条の2関係)
① 第157条の転倒及び転落を防止する措置の実施にもかかわらず、車両系建設機械の転倒又は転落が生じており、その際に運転者が車両系建設機械から飛び降りて機体に押しつぶされる等の労働災害が発生していることから、こうした労働災害を防止するための一定の努力義務を規定したこと。
② 「路肩、傾斜地等」の「等」には、岩石、根株等があり、転倒等のおそれのある場所が含まれること。
③ 「運転者に危険が生ずるおそれのある場所」には、傾斜角が5度を超える傾斜地、及び②の場所が含まれること。なお、第157条第1項の規定に基づき、補強やガードレールの設置を行った路肩、必要な広さ及び強度を有する鉄板の敷設や締め固めを行った地盤は、これに含まれないこと。
④ 「転倒時保護構造」には、日本工業規格A8920の3.2又は日本工業規格A8921の3.1に定める規格に適合するものが含まれること。また、「シートベルト」には、日本工業規格A8911の3.1に定める規格に適合するものが含まれること。
イ アタッチメントの交換作業時の危険の防止(第165条及び第166条の2関係)
① 改正前の第165条は、複数の労働者がアタッチメントの交換作業等を行う場合において、労働者相互の連絡不十分による労働災害を防止するため、作業を指揮する者を定め、その者に作業手順の決定等を行わせることを義務付けたものであるが、労働者相互の連絡不十分により、②の架台が使用されないことのないよう、その使用状況の監視を作業指揮者に行わせることとしたこと。(第165条関係)
② アタッチメントの交換作業中にアタッチメントが倒壊し、又は不意に動くことにより、労働者がアタッチメントに激突され、又は挟まれる労働災害が発生していることから、車両系建設機械のアタッチメントの装着又は取り外しの作業を行う際の架台の使用を義務付けたこと。(第166条の2関係)
③ 第166条の2第1項の「アタッチメントが倒壊すること等」の「等」には、アタッチメントが不意に動くことが含まれること。また、「アタッチメントが倒壊すること等による労働者の危険」には、倒れたアタッチメントの下敷きになる危険や、アタッチメントが不意に動いて手を挟まれる危険が含まれること。
④ 第166条の2の規定は、鉄骨切断機等以外の車両系建設機械にも適用されるものであり、例えば、三角形のバケットを取り外す際には交換用の架台を使用しなければならないこと。
⑤ 第166条の2第1項の架台は、解体用機械の製造者が製造した専用の架台に限られず、敷角等のアタッチメントの倒壊等を防止できるものであればよいこと。
⑥ 安定的に地面に置くことができる形状のアタッチメントを交換する作業においては、「アタッチメントが倒壊すること等による労働者の危険」がないため、第166条の2の架台を使用する必要はないこと。
ウ 装着するアタッチメントに係る制限(第166条の3関係)
① アタッチメントを交換できる車両系建設機械について、その構造上定められた重量を超えるアタッチメントを取り付けた場合、当該車両系建設機械が転倒する危険があることから、その構造上定められた重量を超えるアタッチメントの装着を禁止したこと。
② 「その構造上定められた重量」とは、車両系建設機械構造規格(昭和47年労働省告示第150号)に規定される安定度が損なわれない範囲内のアタッチメントの重量をいうこと。
③ 本条は、鉄骨切断機等以外の車両系建設機械にも適用されるものであり、アタッチメントには、鉄骨切断具、コンクリート圧砕具及び解体用つかみ機のつかみ具のほか、バケット、ジッパーが含まれること。
エ アタッチメントの重量の表示等(第166条の4関係)
① アタッチメントを取り替えた場合、機械重量や機械総重量、すくい上げることのできる物の容量や持ち上げることのできる物の重量が変わるため、これらの情報を運転者が容易に確認できるように、一定の方法による表示又は書類の備付けを義務付けたこと。
② ウ③については、本条についても同様であること。
③ 「バケット、ジッパー等」の「等」には、解体用つかみ機の「つかみ具」が含まれること。
④ 「重量」とは、アタッチメント自体の重量をいい、「容量」とは、バケット、ジッパー等によりすくい上げることのできる物の容量をいい、「最大積載重量」とは、バケット、ジッパー等を装着した車両系建設機械が持ち上げることのできる物の最大の重量をいうこと。
⑤ 「運転者の見やすい位置」とは、原則として、運転者が運転席から容易に見得る位置をいい、具体的には運転室内の前部又は側部の見やすい位置をいうこと。ただし、当該位置に操縦装置その他計器類が設けられているため表示することが困難な車両系建設機械においては、「運転者が容易にあらかじめ見ることができる位置」として差し支えないこと。
⑥ 「容易に確認できる書面」とは、アタッチメントの重量等が分かりやすく記載された1枚程度の書面をいうこと。また、当該書面の備付けは、運転席周辺の容易に取り出せる場所に行わなければならないこと。
⑦ 平成25年6月30日までにアタッチメントを交換できる車両系建設機械(機械本体に装着されていないアタッチメントを含む。)を譲渡し、又は提供した者は、その相手方が、本条により表示又は書面の備付けが必要となる事項に関する情報を求めた場合には、それを通知する必要があること。
⑧ アタッチメント自体にも同様の表示を行うことが望ましいこと。
オ 定期自主検査(第168条関係)
① 第171条の4の特定解体用機械の「逆止め弁、警報装置等」については、労働災害の防止上、特に重要であるため、1月以内ごとに1回、定期に行う自主検査の項目として規定したこと。
② 「逆止め弁」とは、油圧の異常低下によるブーム及びアームの急激な降下、収縮を防止するための弁をいうこと。
③ 「警報装置」とは、作業範囲を超えてブーム又はアームが操作されたときに警音を発する装置をいうこと。
④ 「逆止め弁、警報装置等」の「等」には、ブームの角度計や作業範囲を超えてブーム又はアームが操作されたときに、起伏装置及び伸縮装置の作動を自動的に停止させる装置が含まれること。
⑤ 特定解体用機械に該当しない解体用機械であって、ブーム及びアームを水平にした状態において、解体用つかみ機に求められる前方安定度を確保できないものの逆止め弁、警報装置等についても、1月以内ごとに1回、定期に自主検査を行うこと。
(4) 解体用機械のみに関する措置(第5款)
ア 特定の場所における特定解体用機械の使用の禁止(第171条の4関係)
① 特定解体用機械(ブーム及びアームの長さの合計が12メートル以上である解体用機械)は安定性が低く、また、転倒し、又は転落した場合における危険性が高いことから、転倒又は転落により労働者に危険が生ずるおそれがある場所での使用を禁止したこと。
② 「路肩、傾斜地等」及び「労働者に危険が生ずるおそれのある場所」の意義については、第157条の2と同様であること。
③ 「地形、地質の状態等」の「等」には、亀裂、含水、湧水、凍結等の有無及び状態、埋設物等の有無及び状態等が含まれること。
④ 「地形、地質の状態等に応じた当該危険を防止するための措置」には、アウトリガーにより十分な安定性が確保できる場合のアウトリガーの張り出しが含まれること。
⑤ 特定解体用機械に該当しない解体用機械であって、ブーム及びアームを水平にした状態において、解体用つかみ機に求められる前方安定度を確保できないものについては、本条の場所での使用を控えること。
⑥ 第5款において複数の機械を規制することとし、これに伴い、作業の対象物の種類も増えたことから、規制の対象とする作業について、単に「解体用機械を用いて作業を行うとき」と規定したこと。なお、当該作業には、解体用機械を用いた工作物、コンクリート、岩石等の解体、破壊、破砕、切断の作業が含まれること。
イ 特定の場所における運転室を有しない解体用機械の使用の禁止(第171条の5関係)
① 解体用機械を用いて作業を行う場合、圧砕したコンクリートの破片が飛来し、労働者に激突するなどの危険があるため、このような場所においては、運転室を有しない解体用機械を用いた作業を原則として禁止したこと。
② 「物体の飛来等」の「等」には、解体用つかみ機によりつかんだ物の激突が含まれること。
③ 「物体の飛来等の状況に応じた当該危険を防止するための措置」によることができるか否かは、解体用機械のアタッチメントの動力や、作業の対象物の構造、性質、機械本体と作業の対象物との距離を勘案して判断する必要があること。当該措置の例としては、次のものがあること。
(ア) アタッチメント自体に物体の飛来を防止する覆いを取り付けること。
(イ) 予想される物体の飛来又は激突の強さに応じた強度を有する防護設備を設けること。
(ウ) 物体の飛来の強さが十分弱い場合に、顔面の保護面を有する保護帽及び身体を保護できる衣服を使用させること。
ウ 危険な箇所への立入禁止等(第171条の6関係)
① 鉄骨切断機等を用いた作業において、鉄骨又はコンクリートの破片が飛来し、又はつかんだ木材が激突するなどの労働災害が発生していることから、こうした危険のある箇所について、関係労働者を含め、解体用機械の運転者以外の労働者の立入りを禁止したこと。
② 鉄骨切断機等を用いた作業について、ブレーカと同様に、悪天候時の作業の中止を義務付けたこと。
③ 労働安全衛生法施行令第6条第15号の2、第15号の3及び第15号の5の作業に係る悪天候時の作業の中止については、それぞれ第517条の3第2号、第517条の7第2号及び第517条の15第2号において規定されているため、本条の対象から除外したこと。一方で、労働安全衛生法施行令第6条第15号の2、第15号の3及び第15号の5の作業に係る立入禁止については、本条第1号と対象となる場所が異なるため、本条の対象としたこと。
④ 第1号の「物体の飛来等」の「等」については、第171条の5と同様であること。
(5) 技能講習(別表第3及び附則第3条関係)
ア 鉄骨切断機等(別表第3及び附則第3条関係)
① 解体用機械のうち、鉄骨切断機等の運転の業務に就くことができる者として、平成25年7月1日以降に開始される車両系建設機械(解体用)運転技能講習(安全衛生特別教育規程等の一部を改正する告示(平成25年厚生労働省告示第141号)による車両系建設機械(解体用)運転技能講習規程の改正により、鉄骨切断機等の運転に係る内容が追加されたもの)を修了した者及び厚生労働大臣が定める者を規定したこと。(別表第3関係)
② 改正前の車両系建設機械(解体用)運転技能講習を修了した者については、平成27年6月30日までの間に行われる都道府県労働局長が定める講習を修了した場合には、解体用機械のうち、鉄骨切断機等の運転の業務に就くことができるとしたこと。(附則第3条関係)
③ 平成25年7月1日時点において、解体用機械等のうち、鉄骨切断機等の運転の業務に従事しており、かつ、当該業務に6月以上従事した経験を有する者については、平成27年6月30日までの間に行われる都道府県労働局長が定める講習を修了した場合には、当該業務に就くことができるとしたこと。(附則第3条関係)
④ ②・③の「都道府県労働局長が定める講習」については、別途通達すること。
イ ブレーカ(別表第3関係)
この省令による改正前に、解体用機械のうち、ブレーカの運転の業務に就くことができる者は、平成25年7月1日以降も当該業務に就くことができること。
3 附則関係
ア 施行期日(附則第1条関係)
この省令は、平成25年10月1日から施行すること。ただし、車両系建設機械関係は、平成25年7月1日から施行すること。
イ 譲渡制限等に関する経過措置(附則第2条関係)
① 平成25年7月1日において現に製造している鉄骨切断機等及び現に存在する鉄骨切断機等については、労働安全衛生法第42条の規定は適用されないこと。
② 「現に製造している」とは、現に設計の完了(設計の大部分を終了している場合を含む。)以降の過程にあることをいい、「現に存する」とは、現に使用されていること及び製造が完了しているが、まだ使用されていないことをいうこと。
③ 平成25年7月1日以降にアタッチメントを交換した鉄骨切断機等については、機体本体の製造又は輸入の年月日によって本条に該当するか否かが判断されること。
ウ 罰則に関する経過措置(附則第4条関係)
改正規定の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例によることとしたこと。
エ 家内労働法施行規則の一部改正(附則第5条関係)
委託者が、委託に係る業務に関し、家内労働者に機械の譲渡等を行う場合には、刃部を除く機械の調整の作業の際に一定の労働災害防止措置を講ずることを記載した書面を、家内労働者に交付しなければならないとしたこと。