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○水道水質検査方法の妥当性評価ガイドラインについて

(平成24年9月6日)

(健水発0906第1号)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区水道行政担当部(局)長あて厚生労働省健康局水道課長通知)

水道行政の推進につきましては、日頃から御協力を賜り厚く御礼申し上げます。

さて、水道事業者等が実施する水質検査、残留塩素の検査等の検査結果の妥当性については、各検査機関(水道事業者等、地方公共団体の機関及び登録水質検査機関をいう。以下同じ。)による取組に委ねられているところですが、今般、各検査機関が実施する水質検査等の妥当性評価の標準的な方法として、別添のとおり「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を取りまとめましたので、下記事項について御了知の上、本ガイドラインについて貴管下の水道事業者等に対する周知指導につき特段の御配慮をお願いいたします。

なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)に規定する技術的助言であること並びに大臣認可の水道事業者等、国設置専用水道の設置者及び登録水質検査機関には別途通知していることを申し添えます。

第1.ガイドライン策定の趣旨

1 妥当性評価の目的は、各検査機関が日常的な検査を通じて得る結果が、当該水質検査の目的とする濃度レベルに適合していることを判断するための根拠として妥当であることを確認することにあること。

2 水質検査結果の妥当性は、検査方法を導入する各検査機関が、自らの標準作業手順によって得られる性能データを取得し、それに基づく証明をすることによって評価されるものであり、本ガイドラインはその方法を示すものであること。

3 本ガイドラインによる妥当性評価の対象は、広く使用されている検査方法自体の妥当性ではなく、検査方法を導入する各検査機関において定める標準作業書に示す検査方法に係る妥当性であること。

4 本ガイドラインが対象とする検査方法は、水道事業者等が水道水、原水等を対象として、水道水質基準の基準値、水道水質管理目標設定項目の目標値等(以下「基準値等」という。)への適合判定、水道水質の状況に変化がないことの確認、詳細調査の必要性の判断、水道施設の管理に必要な水質の把握等のために使用される検査方法であって、各検査機関における妥当性が未評価の場合が対象であること。なお、基準値等への適合判定を目的としない検査については、妥当性評価にあたり、当該検査が求める精度に応じた柔軟な対応を行うことが適当であること。

第2.妥当性評価の実施

妥当性評価を行う対象となる各検査における考え方は以下のとおりであること。

(1) 標準検査法による検査

標準検査法(「水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法」(平成15年厚生労働省告示第261号。以下「告示」という。)、「水道法施行規則第17条第2項の規定に基づき厚生労働大臣が定める遊離残留塩素及び結合残留塩素の検査方法」(平成15年厚生労働省告示第318号。以下「残留塩素告示」という。)及び「水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等並びに水道水質管理における留意事項について」(平成15年10月10日付健水発第1010001号。以下「通知」という。)により定められた検査法をいう。以下同じ。)は、既に各検査機関間での精度管理がなされ、また、広く使用されていることから、検査法としての妥当性は確認されているものであるが、標準検査法には最小限の事項のみ記載されているため、各検査機関で標準作業書を定める際には、使用する機器・設備、検査体制等が十分な精度を確保できることについて検証すること。また、標準検査法において各検査機関の裁量が認められている、同等以上の性能を有するもの等とされた器具及び装置等の採用にあたっては、標準作業書に定める方法が同等以上の性能を有していることを確認すること。

(2) 標準検査法以外の検査方法による検査

標準検査法が定められていない水質項目について、目標値等への適合判定等を行うにあたっては、本ガイドラインにより妥当性を評価された検査方法による結果を用いること。なお、本ガイドラインにより妥当性評価が行われた検査方法により得られた結果であっても、標準検査法が定められている項目について、水道法に基づく水質基準への適合判定及び消毒効果の確認に使用することはできないこと。このことは、告示及び残留塩素告示による標準検査法を、検査機関の裁量を超えて変更した検査方法により得られた結果についても同様であること。

(3) 妥当性評価がなされた検査方法による原水等の試料の検査

浄水処理された水道水についての検査に係る妥当性が評価された検査方法を原水等の検査に適用する場合には、原水等を用い、あらためて本ガイドラインに基づき妥当性を評価すること。

第3.留意事項

1 本ガイドラインにおける「判定値」とは、検査の実施主体である水道事業者等が基準値等への適合判定のみならず、検査の省略等の可否、詳細調査の必要性の判断等の対象とする値であり、検査の目的とする濃度レベルであること。例えば、検出されないことを確認することを目的とする水質検査の場合には、基準値の1/10以下等の値が判定値となること。登録水質検査機関は、委託先から要求される判定値以下の定量下限を達成することができる標準作業書を定めることが求められること。

2 導入済みの検査方法の妥当性評価においては、導入時の検証データ、内部精度管理の結果等の活用が可能であること。具体的には、選択性については空試験の結果から、真度、併行精度及び定量下限については定量下限以下に対応する濃度になるように検査対象物を添加した繰り返し試験の結果から評価できるものであること。

3 本ガイドラインに基づく妥当性評価の結果、目標を満足できない場合には、目標を満たせるよう検査方法の一部の改良、定量下限の見直し等を行うこと。

4 本ガイドラインにおける相対標準偏差による併行精度の目標は、通知の別添4別紙1及び別紙2並びに別添5において変動係数で示す測定精度の目標が定められている場合は、それを用いること。

第4.適用時期

本ガイドラインについては、平成25年10月1日から適用するものであること。各検査機関においては、速やかに、本ガイドラインに基づく妥当性評価を実施されることが望ましいこと。

(別添)

水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン

1.趣旨

本ガイドラインは、水道水中の農薬類、金属類、揮発性有機化合物等の濃度が、水質基準、水質管理目標設定項目、要検討項目等の基準値、目標値等(以下「基準値等」)に適合していることの判定等を目的として水質検査等を実施する場合に、各検査機関がその検査方法の妥当性を評価するための手順を示すものである。

なお、本ガイドラインは、機器分析による検査方法を対象とする。

* ここに示す手順は、検査方法の妥当性を評価する標準的方法の一例であり、国際的に認められた他の手順等を用いて妥当性評価することもできる。本ガイドラインの内容は、ISO5725―1994及びJISZ8402―1999に準拠し、水道水質検査方法の妥当性評価法として示したものである。

2.本ガイドラインの対象

基準値等への適合判定、水道水質の状況に変化がないことの確認、詳細調査の必要性の判断、水道施設の管理に必要な水質の把握等(以下「適合判定等」)のために使用される検査方法(水質基準に係る検査方法(以下「告示法」)注1、水質管理目標設定項目に係る検査方法(以下「通知法」)注2及び遊離残留塩素及び結合残留塩素の検査方法(以下「残留塩素告示法」)注3並びにこれら以外の方法)であって、各検査機関におけるそれらの検査方法の妥当性が未評価の場合を対象とする。

注1 水質基準に関する省令に基づき厚生労働大臣が定める方法(平成15年7月22日厚生労働省告示第261号)

注2 水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等並びに水道水質管理における留意事項について(平成15年10月10日健水発第1010001号)別添4水質管理目標設定項目の検査方法

注3 水道法施行規則第17条第2項の規定に基づき厚生労働大臣が定める遊離残留塩素及び結合残留塩素の検査方法(平成15年9月29日厚生労働省告示第318号)

3.用語の定義

水道水質検査方法の妥当性評価ガイドラインにおいて、用語の定義は次のとおりとする。

(1) 「検査対象物」とは、水道法関係法令等に基づいて、水道水中の基準値等が定められている物質並びにその物質の前駆物質及びその物質が化学的に変化して生成した物質並びにこれらの類似物質をいう。

(2) 「定量下限」とは、適切な精確さをもって定量できる検査対象物の最低量又は濃度をいう。

(3) 「判定値」とは、検査において適合判定等の対象とする値をいう。

(4) 「選択性」とは、試料中に存在すると考えられる物質の存在下で、検査対象物を正確に測定する能力をいう。

(5) 「真度」とは、十分多数の検査結果から得た平均値と承認された標準値(添加濃度等)との一致の程度をいう。

(6) 「精度」とは、指定された条件下で繰り返された独立した検査結果間の一致の程度をいう。

(7) 「併行精度」とは、併行条件(同一と見なされる試料において、同一の検査方法を用いて、同一の検査室で、同一の検査員が、同一の装置を用いて、短時間のうちに独立した検査結果を得る条件)下の精度をいう。

(8) 「室内精度」とは、室内条件(同一と見なされる試料において、同一の検査方法を用い、同一の検査室で、独立した検査結果を得る条件)下の精度をいう。

(9) 「枝分かれ実験計画」とは、ある因子の全ての水準が、他の全ての因子の一つの水準だけに現れる実験の計画をいう。

(10) 「添加試料」とは、検査を行う水道水等に一定濃度の検査対象物を添加したものをいう。

4.妥当性評価の方法

添加試料等を検査方法に従って試験し、その結果から以下の性能パラメータを求め、それぞれの目標に適合していることを確認する。

(1) 選択性

原則として検査対象物を含まない水道水等を検査方法に従って試験し、定量を妨害するピーク等がないことを確認する。

妨害ピークを認める場合は、妨害ピークの面積(又は高さ)が判定値又は定量下限に対応する濃度の標準液から得られるピーク面積(又は高さ)の1/3未満であることを確認する。

(2) 真度

5個以上の添加試料を検査方法に従って試験し、得られた試験結果の平均値の添加濃度に対する比を求める。

(3) 精度

添加試料を検査方法に従って繰り返して試験し、得られた試験結果の相対標準偏差(RSD)を求め、併行精度及び複数の検査員又は検査日による室内精度を評価する。試験の繰り返し回数は自由度が4以上となるようにする。

(4) 定量下限

検査対象物を含まない水に検査対象物を定量下限に対応する濃度になるように添加した試料を検査方法に従って試験したとき、真度並びに併行精度及び室内精度の目標を満たすことを確認する。

真度、併行精度及び室内精度の目標は表1のとおりとする。

表1 真度及び精度の目標

添加濃度の基準値等に対する割合

真度

(%)

併行精度

(RSD%)

室内精度

(RSD%)

1/100以下

70~120

<30

<35

1/100超1/10以下

70~120

<25

<30

1/10超1倍以下

70~120

<15

<20

1倍超

70~120

<10

<15

*真度及び精度の目標が別に定められている場合は、それに従う。

本ガイドラインに従って妥当性が評価された検査方法の検査室への導入及び検査方法の一部を変更する際には、上記性能パラメータの一部についての評価を改めて要しない場合がある。そのような場合にも原則として評価すべき項目を別紙1に示した。

枝分かれ実験により、真度、併行精度及び室内精度を同時に評価することが可能である(別紙2参照)。また、添加濃度等が適切であれば、既存のデータから求められる真度、併行精度及び室内精度に基づいて妥当性を評価する事も可能である(別紙3参照)。

各検査機関においては、実施した妥当性評価の結果を妥当性評価書とともに保管する必要がある。妥当性評価書の記載例を別紙4に示した。

5.添加を行う水の種類及び添加濃度

(1) 添加を行う水の種類

添加を行う水は、原則として検査を行う水道水等であって検査対象物を含まない水とする。

検査対象物が常在成分である場合等検査対象物を含まない水道水等を得ることが困難な場合にはこの限りではない。

(2) 添加濃度に関する留意事項

① 添加濃度は原則として判定値を含む1種類以上の濃度とする。

② 一斉分析法の場合のように、各検査対象物の基準値等が異なり、検査対象物毎に異なる濃度の混合標準液の調製が困難な場合にあっては、「検査対象物の判定値以下の一定の濃度」とする。

(3) 添加試料の調製等に当たっての留意事項

① 添加試料の調製に当たっては、添加する標準溶液の量はできるだけ少量にとどめ、検査対象物の添加後よく混合した後に試験操作を行う。

② 枝分かれ実験等、数日間にわたり試験を行う場合にあっては、試験を実施する日毎に添加試料を調製する。

別紙1 妥当性評価された検査方法の検査室への導入及び一部を変更する際に評価すべき項目

1.妥当性評価された検査方法を検査室へ導入する場合

妥当性評価された検査方法を検査室に導入する場合、本ガイドラインで定めた性能パラメータのうち原則として室内精度を除く性能パラメータについて検証する。なお、真度、併行精度及び室内精度については、定期的な精度管理データを用いて求めることができる(別紙3)。

本ガイドラインによる妥当性評価の対象は、広く使用されている検査方法の妥当性ではなく、検査方法を導入する検査機関において定める標準作業書に示す検査方法の妥当性である。標準検査法(告示法、残留塩素告示法又は通知法)は、標準検査法設定段階において、中立機関である複数の水道事業者等により複数の水道水を用い、一定数の試験回数によって真度と併行精度が評価されており、標準検査法設定以降、検査実績が蓄積されている。一方、実際の検査機関においては、試験環境、機器、検査員の熟練度はそれぞれ異なり、また検査対象とする水も異なっている。したがって、標準検査法に合致した検査方法を導入する各検査機関が、自らの標準作業手順によって得られる性能データを取得しそれに基づく証明をしない限り、当該検査機関でその標準作業書に示す検査方法の妥当性が評価あるいは検証されたことにはならない。

2.妥当性評価された検査方法等の一部を変更する場合

妥当性評価あるいは検証を行って導入した検査方法の一部を変更する場合には、本ガイドラインで定めた一部の性能パラメータについて評価を要しない場合がある。但し、選択性及び真度の確認は常に必要である。

試薬の調製量、最終試験溶液の液量あるいは測定条件(注入量、吸収セル長、分析カラムの種類及びサイズ、キャリアーガスの種類、昇温条件、移動相組成、移動相流速、通水速度、グラジエント条件、カラム温度等)を変更した場合は、選択性及び真度を評価し、必要であると判断される場合は併行精度及び定量下限を評価する。検水の量、抽出溶媒の種類あるいは量又は試薬等の混合比の変更は本項には含まれない。

3.妥当性評価された検査方法を大きく変更する場合

上記2以外の部分を変更する場合は、妥当性評価された検査方法と原理が同一の検査方法であっても、選択性及び真度を含めて検査方法の性能が大きく変わる可能性があるので、妥当性を評価された検査方法の変更ではなく、原則として新たな検査方法と考え、本ガイドラインに従って妥当性評価を実施する。

4.妥当性評価された検査方法以外の検査方法を検査室に導入する場合

本ガイドラインに従って妥当性評価を実施する。

告示法が設定されている水質基準項目については、告示法以外の検査方法を基準値の適合判定に用いることはできないが、新たな検査方法の開発等に必要な知見の収集に当たっては、本ガイドラインによる妥当性評価が必要である。

5.妥当性評価された検査方法を水道水以外の水(河川水、井戸水、原水等)に適用する場合

妥当性評価された検査方法あるいは検証を行って導入した検査方法を、水道水以外の水(河川水、井戸水、原水等)に適用する場合は、本ガイドラインに従って妥当性評価を行う。

別紙2 精度評価のための実験の例

(例1)検査員1名が、同一の添加試料を1日1回(2併行)、5日間実施する枝分かれ実験計画

同一日の1回(5併行)とした場合、真度及び併行精度が求まる。標準検査法をそのまま又は一部変更して導入する際の検証に限る。

(例2)検査員2名がそれぞれ、同一の添加試料を1日1回(2併行)、3日間実施する枝分かれ実験計画

別紙3 精度管理データを用いた妥当性評価例

水道水質検査を実施している機関において、(社)日本水道協会が認定を行う水道水質検査優良試験所規範又はISO9001あるいはISO/IEC17025等に基づく精度管理が実施されている場合、これらのデータを用いて当該検査方法の妥当性評価が可能である。

精度管理では、定期的に検査対象物を含まない試料(陰性対照)及び添加量が明らかな試料を試験し、さらに定期的に添加量が明らかな試料を5併行で試験する。

これらのデータを用いて、

①陰性対照の結果から選択性が評価される。

②添加量が明らかな試料について定期的に5回以上行われた検査結果の平均値から真度が、相対標準偏差(RSD)から室内精度が求められる。添加量の明らかな試料が2併行で試験されている場合は、別紙2に示した枝分かれ実験データとして、真度、併行精度及び室内精度が求められる。

③添加量が明らかな試料の5併行の試験が、定期的に5回以上行われていれば、真度、併行精度及び室内精度が求められる。

別紙4 妥当性評価書の作成方法

各検査機関が作成する妥当性評価書には、「検査対象物」毎に「類型(当該検査方法の由来)」、「実施日」、「装置(検査方法)」、「真度」、「精度(RSD)」、「定量下限」を示し、当該検査方法(標準作業書)の妥当性を評価した結果を示す根拠資料を添付する。

妥当性評価書は、当該標準作業書、根拠データとともに帳簿書類として保管することとし、標準作業書の改訂の際にはその都度妥当性評価書を作成する。表2に妥当性評価書の例を示す。

表2 妥当性評価書の記載例

標準作業書No.

1

検査方法

LC/MS/MS一斉分析(試験水直接導入法)

類型

A

その他資料

告示法X

検査対象物

モノクロロ酢酸(MCAA)、ジクロロ酢酸(DCAA)、トリクロロ酢酸(TCAA)

装置

LC/MS/MS XXX社製OOO分析装置、固相抽出装置無し。

妥当性評価根拠資料No.

1

実施日

2012/3/1~3/3

精度評価方法

検査員2人,2併行,各3回(3日間)実施

定量下限

MCAA、DCAA、TCAA:0.002mg/L(すべて基準値の1/10以下)

添加濃度

MCAA:0.002mg/L,DCAA:0.004mg/L,TCAA:0.02mg/L

真度(%)

MCAA:105%,DCAA:89%,TCAA:90%

併行精度(RSD%)

MCAA:15%,DCAA:20%,TCAA:10%

室内精度(RSD%)

MCAA:20%,DCAA:25%,TCAA:15%

備考

XX地域の水道水を用いて実施した。(原水は未実施。)

*) 「類型」とは、当該検査方法の由来をいい、以下のとおり分類している。

A:標準検査法

B:A以外の検査方法であって国内外の政府機関等が定める検査方法

C:A・B以外の検査方法であって有識者からなる検討会等によって作成された検査方法

D:A~C以外の検査方法であって文献等に掲載されている検査方法