○平成25年度における健康保険組合に対する実地指導監査について
(平成25年3月29日)
(保保発0329第1号)
(地方厚生(支)局保険主管課長あて厚生労働省保険局保険課長通知)
(公印省略)
標記については、平成13年3月22日保発第76号によるほか、下記のとおり取り扱うこととしたので通知する。
記
第1 実施方針
平成25年度の実地指導監査(以下「監査」という。)においては、健康保険組合(以下「組合」という。)の事業が法令・通知・組合規約・組合規程に基づき適正に運営されているかどうかを確認するほか、組合財政の健全化の観点や不適切な経理処理の防止の観点から、資産や経常収支の状況、経理の管理体制等を確認し、適切な指導を行うこと。
特に、会計帳簿については、監事や管理責任者等による点検・突合が徹底されているかを確認するなど、適切な指導を行うこと。
また、保険料の未収については、長期化し、その額が大きくなると、回収不能となるおそれがあることから、未収の状況に応じた機動的・段階的な対応がなされているかを確認するなど、適切な指導を行うこと。
なお、監査時の指摘事項は、監査終了後速やかに組合に通知するとともに、組合から改善措置状況を文書で報告させ、原則、平成25年度中の改善を徹底すること。
第2 基本的事項
1 監査の形態
(1) 総合監査(事業全般にわたる監査)
毎年度の監査では、組合会等の運営、事務処理体制、規程の整備、財政収支、財務・経理事務、被保険者資格等の適用・管理、保険給付、保健事業・福祉事業、医療費適正化事業など、組合の事業全般の実施状況の確認・指導(以下「総合監査」という。)を行うこと。
(2) 経理監査(財務・経理事務に特化した監査)
組合の役職員の不正・不適正な経理処理が、組合財政や事業運営に多大な損害を与えることを踏まえ、貴職の判断により、総合監査に替えて、財務・経理事務に特化した監査(以下「経理監査」という。)を実施すること。
2 適時の効果的な監査の実施
(1) 監査の頻度
1組合に対する監査の頻度(間隔)については、極力短縮し、少なくとも5年に1回程度の頻度で実施すること。また、組合の財政状況や事務職員の体制、これまでの指導に対する改善状況等を踏まえ、監査の頻度を増やすなど、定期的な監査に加えて、組合の実情に応じた監査を実施すること。
(2) 適時の確認・指導
総合監査における確認・指導事項のうち、組合の財政状況や各事業の実施状況等については、定期的な実地の監査のほか、保険料負担割合等の規約改正、予算・決算書の届出又は予算説明会等のあらゆる機会を捉え、予防的に確認・指導を行うことが必要である。
なお、これらの機会に、実地監査以外の場で組合の役職員に対して適切に確認・指導を行った場合は、総合監査の項目の一部を省略することも可能とし、的確な時期を逃すことなく効果的な確認・指導を行うこと。
(注) 実地監査以外の場で、組合の役職員に対して確認・指導を行った場合は、必ず備忘録等に記載し、その後の指導等に活用すること。
第3 組合に対する指導において留意すべき事項
1 総合監査では、次に掲げる事項に留意して、適切な指導を行うこと。
(1) 組合の財務については、健康保険組合事業運営基準・事業運営指針に基づき、適正・適切であるかを確認し、必要に応じ的確な指導を行うこと。
特に、準備金・別途積立金は、一般的に安全・確実な方法で保有することが原則であるので、この財産管理の実態を把握し、的確な指導を行うこと。
また、経理関係について留意すべき事項は、2(「経理監査」)によること。
(2) 次に掲げる事項については、必要に応じ適切な指導を行うこと。
なお、確認にあたっては、関係書類の提示を求めるほか、必要に応じて理事若しくは監事からの聴取又は実地検分を行うこと。
① 組合会及び理事会関係
ア 組合会の招集から議決に至るまでの手続き及び議事について
イ 組合会議員及び役員(理事、常務理事及び監事)の選定・互選の手続き及び構成について
ウ 理事長専決によって処分した事項について
② 事務処理体制関係
ア 事務職員数について(組合の規模等を勘案した適正な数を確保しているか。)
イ 事務処理について(複数の職員による点検及び決裁が行われているか。)
③ 事業関係
ア 個人情報の適切な取扱い(個人情報保護法関係)について
イ レセプト審査、療養費審査等の外部委託について
ウ 被扶養者認定基準及び生計維持関係の確認(検認)状況について
※ 財政状況の悪化に伴い、過度な対応が懸念されるため、「収入がある者についての被扶養者の認定について」(昭和52年4月6日保発第9号)に基づき、適切な指導を行うこと。
エ 事業所編入基準について
(3) 保健事業、医療費適正化事業のうち、次に掲げる事項について実施状況を把握するとともに、必要に応じ適切な指導を行うこと。
① 特定健康診査・特定保健指導関係
実施計画を踏まえた実施状況を把握すること。
② 後発医薬品(ジェネリック医薬品)関係
後発医薬品の使用促進の取組状況を把握すること。
③ 柔道整復師に係る療養費関係
柔道整復師に係る療養費の適正化の状況(審査体制、患者調査、医療費通知及び周知・広報並びに外部委託)を把握すること。
また、患者調査等の実施にあたっては、「「柔道整復師の施術の療養費の適正化への取組について」の適切な実施について」(平成25年3月19日事務連絡厚生労働省保険局保険課、国民健康保険課、高齢者医療課、医療課(連名通知))により、「被保険者及び施術所等の負担の軽減」、「支給決定までの迅速化」及び「手続きの公平さ」といった点を勘案した取り組みがなされているかを確認し、適切な指導を行うこと。
④ 減額査定があった場合の情報提供
減額査定があった場合の被保険者等への情報提供の状況を把握すること。
(4) 適用、給付、保健事業等については、組合独自の監査機能の強化が図られるよう、「自己点検シート(適用、給付、保健事業等)」(「健康保険組合における自己点検の実施について」(平成24年4月13日保保発0413第4号))を用いて、1年に1回程度の定期的な自己点検を実施するよう促すこと。また、監査に当たっては、自己点検の内容(点検結果による改善状況を含む。)を確認し、その内容に応じた適切な指導を行うこと。
2 経理監査では、次に掲げる事項に留意して、適切な指導を行うこと。
(1) 経理事故を防止するための対策の有無及びその実施状況について
財務・経理事務の処理体制、現金・金庫・鍵・通帳・印鑑等の管理状況、管理責任者等による重層的な点検状況を確認すること。
また、経理事故防止のための「自己点検シート」(「健康保険組合における経理事故防止の事務取扱について」(平成23年12月26日保保発1226第1号))の実施状況(点検結果による改善状況を含む。)を確認し、その自己点検及び改善結果の内容に応じた適切な指導を行うとともに、1年に1回程度の定期的な実施を促すこと。
(2) 会計帳簿等の適切な管理等について
「会計事務取扱規程」に基づいた会計帳簿(歳入・歳出簿、現金出納簿等)・証拠書類等の管理状況、現金出納事務の状況を確認すること。
また、管理責任者や監事による会計帳簿の突合・点検が十分なされているかを確認すること。
(3) 各種契約の状況について
契約に至るまでの手続き、契約の内容(金額、相手方、委託内容等)の妥当性、費用対効果等を確認すること。
(4) 財産の管理状況について
「財産管理規程」に基づいた準備金・別途積立金等の現金・有価証券等、固定資産、備品等の財産の管理状況を確認すること。
(5) 予算・決算について
予算の編成・執行、決算報告等について、組合会における手順、作成資料等が適切かどうかを確認すること。
3 次に掲げる組合に対しては、それぞれ適切な指導を行うこと。
(1) 財政窮迫組合等
財政窮迫組合や指定組合に対しては、被保険者1人当たり医療費、平均標準報酬月額、被保険者数等の状況を踏まえた一般保険料率の設定、一部負担還元金や付加給付等の見直しなど、財政運営全般にわたる指導を行うこと。
なお、財政の健全化が低調な指定組合に対しては、健全化計画の変更や合併又は解散も選択肢とした上で、今後の方向性に重点を置いた指導を行うこと。
※1 財政窮迫組合
予算編成通知(平成25年2月4日保保発0204第8号)第4により「準備金限度内部分にかかる積立計画」(以下「積立計画」という。)を策定している組合若しくは健康保険組合給付費等臨時補助金(合併促進経費を除く)の交付を3年度継続して受けている組合
※2 指定組合
健康保険法第28条に基づき、厚生労働大臣の指定を受けた組合
(2) 収入支出未済のある組合
① 保険料の未収のある組合
未収の着実な解消と未収の長期化を防止するため、徴収計画の策定・実施状況を確認するとともに、未収の状況に応じた機動的・段階的な対応がなされているかを確認するなど、適切な指導を行うこと。
② 診療報酬の未払のある組合
未払の着実な解消と新たな未払の発生を防止するため、「積立計画」を適切に遂行し、必要な準備金の早期確保を求めるとともに、計画的な一般保険料率の引上げ等の対応を求めるなど、適切な指導を行うこと。
(3) 医療費の高い組合
被保険者1人当たり医療費が全組合の被保険者1人当たり医療費の平均を大幅に超えている組合に対しては、医療費の状況や疾病予防事業の実施状況等を確認し、組合の実情に応じた効果的な疾病予防事業とレセプト点検等の医療費適正化事業の積極的な実施に重点を置いた指導を行うこと。
(4) 新設組合、小規模組合、継続監査が必要な組合等
① 新設組合
新設組合は、設立後1事業年度の運営が行われた後に監査を行うものとし、事業運営全般が厳正かつ円滑に行われていることの確認に重点を置いた的確な指導を行うこと。
② 小規模組合
被保険者数が組合設立認可基準(単一組合700人、総合組合3,000人)未満の組合のうち、財源率が上昇し、財政状況が著しく悪化している組合に対しては、将来推計の策定や合併等も視野に入れ、必要に応じ的確な指導を行うこと。
③ 前年度から継続して監査する必要がある組合
前年度の監査で指摘した事項の改善状況等の確認に重点を置いた指導を行うこと。
④ 事故等があった組合
経理事故が発生した場合の対応については、「健康保険組合における経理事故防止の事務取扱について」(平成23年12月26日保保発1226第1号))の第3により、対応状況及びその後の改善状況を確認し、適切な指導を行うこと。
経理事故以外の場合であっても、経理事故の対応を参考として適切な指導を行うこと。
⑤ 被保険者等から苦情が寄せられた組合
苦情の内容について、実情を確認し、適切な指導を行うこと。
第4 実施方法
1 監査対象組合の選定
別途送付するデータ及び貴管下の実情を勘案して選定すること。
なお、経理監査の対象組合については、次に掲げる事項に該当する組合など、経理の管理体制等を踏まえて選定すること。
・ 過去の監査で財務・経理事務の指摘があった組合
・ 経理事務を担当する役職員の交代があった組合
・ 経理事務を担当する役職員の在職期間が長期に亘っている組合
・ 第3の3の(4)に掲げる事項に該当する組合
2 指導監査計画の作成
地方厚生(支)局においては、「平成25年度健康保険組合指導監査計画」(別紙)を作成し、本年4月末日までに当課あて報告すること。
3 指導監査結果報告
監査終了後は、監査結果通知書(写)に組合指導監査復命書の「監査結果の総括」を資料として添付し、平成25年4月から8月までに実施した監査結果は同年11月末までに、同年9月以降に実施した監査結果は平成26年3月末目途(3月に監査を実施しなければならない場合には、4月末目途)で、当課に報告すること(指示事項等については、電子媒体でも報告されたい。)。
なお、当課に報告された監査結果については、整理の上、別途送付するので、今後の監査の参考とされたい。
4 監事面談の実施
組合の内部統制を強化する観点から、監査時に監事(最低1名)の出席を求め、監事業務の実施状況等を聴取(以下「監事面談」という。)すること。
なお、監事面談は、総合監査及び経理監査の両方で実施することが望ましいが、少なくとも総合監査において、必ず監事の出席を求めること。
監事面談では、次の点を確認するとともに、必要に応じて適切な助言を行うこと。
(1) 監事業務の状況について
監査計画、監査項目、財務諸表等の決算資料の監査状況等を確認すること。
特に、会計帳簿の突合・点検が十分なされているか確認し、十分ではないようであれば、外部の経理事務に精通したものを活用するなど適切な対応を求めること。
(外部の経理事務に精通したものの例)
・ 外部の公認会計士等の活用
・ 母体企業や適用事業所の財務・監査部などの活用
・ 組合で共同して、経理事務に精通したものを出し合ったり、雇ったりする、又は相互に確認しあうなどの対応。
※ 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第21条の規定により、個人データの漏えい、滅失又はき損の防止などの安全管理のために必要かつ適切な監督を行わなければならないとされていること、また、健康保険法(大正11年法律第70号)第22条の2により準用される第7条の37第1項の規定により、健康保険事業に関して職務上知り得た秘密を正当な理由がなく漏らしてはならないこととされていることに注意すること。
(2) 監事監査における指摘事項等について
監事の指摘事項の内容及び当該指摘に係る改善状況等を確認すること。
(3) その他
監事業務の問題点や苦慮する点等を確認すること。
5 監査に当たっての組合側の負担軽減
(1) 監査の実施に当たり、組合に「組合監査参考表」等の提出を求める場合には、貴職が保有している既存資料を活用することで、組合が作成する資料を省略できるものは、組合の負担軽減の観点からできる限り省略し、簡素化すること。
(2) 第2の2の(2)のとおり、定期的な実地の監査以外の場でも、規約の改正や予算等の届出などの機会を捉え、適時・的確に指導を行うことが適切なものは、実地以外の場での面談による指導を行うことも可能であり、こうした工夫により、組合の負担軽減にも配慮すること。
(別紙)