添付一覧
○データモニタリング委員会のガイドラインについて
(平成25年4月4日)
(薬食審査発0404第1号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)
(公印省略)
近年、治験の活性化及びIT技術の発達に伴い迅速な臨床試験データ集積が可能になり、臨床試験開始の早い段階から医薬品及び医療機器のその後の開発可能性を判断するために、中間解析を積極的に利用することが検討されてきています。また、探索的臨床試験においても、中間解析結果に基づいて臨床試験計画の一部を変更して試験を継続するという試験デザインについて注目されてきているところです。
これらを踏まえ、中間解析を含む、臨床試験における有効性及び安全性データのモニタリングの必要性並びにデータモニタリング委員会の適切な設置及び運営の必要性等について検討が行われ、今般、「データモニタリング委員会に関するガイドライン」が別添のとおり取りまとめられましたので、貴管下関係業者、医療機関等に対して周知いただきますよう御配慮願います。
[別添]
データモニタリング委員会に関するガイドライン
1.緒言及び背景
本ガイドラインは、治験依頼者(自ら治験を実施する者も含む。)により実施される医薬品又は医療機器(以下「医薬品等」という。)の臨床試験(治験)における、データモニタリング委員会(DMC:Data Monitoring Committee)の必要性とその役割、設置と運営に関して、現時点での一般的な指針を与えることを目的としている。
DMCは臨床試験の評価に必要とされる専門性を有する委員から構成され、試験実施中の中間データについて中立的な評価を行う組織である。通常は治験依頼者及び治験責任医師等からは独立した組織であり、治験依頼者に対し、被験者の安全性の確保並びに治験実施の倫理的及び科学的妥当性の確保のために適切な助言・勧告を行う。
臨床試験の実施中、試験の中止や継続、試験デザインの変更に関する判断が必要となる場合がある。例えば臨床試験の実施中に安全性上の重大な問題が認められた場合、被験者の安全性確保の目的で試験の早期中止や試験デザインの変更を行う必要性が生じる。また、臨床試験の実施中に既に当該試験の目的を達成したという強力な証拠が得られた場合、又はそれ以降臨床試験を継続したとしても当該試験の目的を達成することが不可能であることが高い確度で予測された場合には、倫理的な観点から、臨床試験を早期中止する必要性が生じる場合がある。その他に、臨床試験の目的の達成又は適切な実施のために、試験実施中に試験デザインに修正を加える必要性が生じる場合もある。しかしながら、例えば臨床試験を早期に中止した場合には、長期の安全性に関するデータが不足する可能性や、同時期に実施されている類似の治療に関する臨床試験に影響を与える可能性がある。したがって、被験者の安全性を確保し、臨床試験の完全性を可能な限り保証して、上述のような試験中止や試験デザインの変更の判断を行う際には、その必要性とそれに伴う影響を踏まえ、DMCが中立的な立場からデータを評価することが必要不可欠である。
本邦においては欧米と比較して、死亡等のイベントを評価変数とした大規模かつ長期にわたる臨床試験がそれほど多く実施されてきておらず、抗悪性腫瘍薬等の一部の医薬品の開発において実施される試験を除き、試験実施中のある時点までに蓄積されたデータを解析しその群間比較結果に基づき判断を行う中間解析が実施されることも少なかった。しかしながら近年、効率的な開発のための早期の意思決定や、実施途中のデザインの変更を可能とする臨床試験デザインに関する活発な議論を背景に、臨床試験における中間解析の積極的な実施が注目されてきている。また、世界同時開発及び海外臨床試験データの利用の促進に伴い、日本を含む複数の国又は地域において国際共同治験として実施される、大規模かつ長期にわたる臨床試験に日本人患者が参加する機会も増えてきている。このような背景から、本邦においても中間解析等に基づく試験途中の判断において重要な役割を担うDMCに関するガイドラインが必要であると判断し、本ガイドラインの作成に至った。
なお、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第28号)、医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成17年厚生労働省令第36号)及び「臨床試験のための統計的原則」について(平成10年医薬審第1047号)では、効果安全性評価委員会(DSMB:Data and Safety Monitoring Board)又はデータモニタリング委員会(DMC:Data Monitoring Committee)が定義されている。DMCは治験責任医師等の実際に臨床試験を行う者とは別の立場から、実施中の臨床試験のデータについて評価をすることを目的としており、必ずしも治験依頼者から独立している必要はない組織として提案された。しかし、有効性の検証を目的とした臨床試験においては、中間解析を実施した場合でも試験結果にバイアスが生じていないことを説明する必要があり、治験依頼者からの独立性が求められることから、検証試験を中心に独立データモニタリング委員会(IDMC:Independent Data Monitoring Committee)という用語が用いられるようになった。本ガイドラインでは、有効性の検証を目的とした臨床試験のみならず、より広い範囲でのDMCの設置を想定しており、本来のDMCの目的をわかりやすく示すために、より一般性の高いDMCという用語で統一することとした。
また、一般にモニタリングとは、臨床試験全体の実施状況の確認及び試験実施中に集積された有効性及び安全性データの評価を指す。本ガイドラインでは、区別のために、後者をデータモニタリングとする。中間解析とは、群間比較試験におけるデータモニタリングに伴い試験途中で実施される、有効性又は安全性に関する群間比較を意図した、割り付けを明らかにして行う解析を指す。
DMCに関連する事項は以下の省令及び指針等にも記載されており、適宜参照すること。
・医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第28号)
・医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成17年厚生労働省令第36号)
・日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH:International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)によるガイドライン
・E3:Structure and Content of Clinical Study Reports
治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドラインについて(平成8年5月1日付薬審第335号厚生省薬務局審査課長通知)
・E8:General Considerations for Clinical Trials
臨床試験の一般指針について(平成10年4月21日付医薬審第380号厚生省医薬安全局審査管理課長通知)
・E6:Guideline for Good Clinical Practice
・E9:Statistical Principles for Clinical Trials
「臨床試験のための統計的原則」について(平成10年11月30日付医薬審第1047号厚生省医薬安全局審査管理課長通知)
・国際標準化機構(ISO)が定めた医療機器の臨床試験に関する国際規格(ISO14155:2011「Clinical investigation of medical devices for human subjects - Good clinical practice」)
運用に当たっては、合理的な根拠がある場合、必ずしも本ガイドラインの内容にこだわることなく柔軟な対応が可能である。例えば、開発早期の試験においては、被験者の安全性を確保するための客観的な専門家の意見を反映できる独立した組織として、DMCの設置が検討される場合がある。また、開発早期の多くの試験における中間データの機密性や統計学的な解釈については、検証試験と同等の厳格さを求める必要性が高くない場合もあり得る。しかし、このような場合においても、本邦における治験/臨床試験の科学性及び倫理性の保持、質的向上が図られることが望ましい。
2.DMCの必要性と役割
2.1 DMC設置の必要性の判断
臨床試験では、被験者に対する安全性のモニタリングが必須であるが、全ての臨床試験においてDMCによるデータモニタリングが必要とされるわけではない。一般的に、DMCの設置の要否は、臨床試験の目的、デザイン、評価変数、試験期間、対象患者集団等を考慮した上で検討される。例えば、死亡又は重篤な転帰を評価変数とした比較対照試験、大規模かつ長期にわたる臨床試験、安全性に関する事前情報の比較的少ない開発初期の臨床試験、医薬品等及び被験者の特徴からリスクが高いと想定される試験等において、試験期間中の有効性及び安全性データの中立的な立場からのデータモニタリングが必要とされる場合に、治験依頼者によりDMCが設置される。DMCの設置には一定の資源が必要であり、試験管理も複雑になることも考慮し、その必要性について十分に検討するべきである。
2.2 DMCの役割と責務
DMCは、被験者の安全性を確保し、臨床試験の完全性を可能な限り保証するため、実施中の臨床試験のデータを評価し、その結果に基づき治験依頼者に対して適切な助言・勧告を行う。臨床試験の中止や計画の変更は、新しい医薬品等に対する社会の期待といった社会的な影響、異なる役割を持つ開発関係者による組織的な影響、関係者の知的興味や市場の影響を受ける可能性がある。DMCはこれらの影響を理解し適切に考慮し、試験の中止や計画の変更により得られる又は失われるであろう知見も検討した上で、中立的な立場から助言・勧告を行う必要がある。治験実施計画書等に規定された試験の中止/継続等の意思決定の基準は重要であるが、DMCにおいては、それ以外にも様々な観点から十分に問題を考慮し議論するべきである。
2.3 DMC委員の役割と責務
DMC委員は、臨床試験の方法論及びDMCの役割に関する知識と、その責務を負うに十分な能力を有していなければならない。また、治験依頼者との間に重大な利益相反がなく、臨床試験の現場からの影響を受けない等、DMCに求められる中立的な意見を述べられる立場でなければならない。
DMC委員は、各自がDMCの役割と責務を十分に理解し、社会的な要請等も含めたDMCの判断に及ぼす可能性のある様々な影響について認識した上で、中立的な立場から議論をしなければならない。また、中間解析の結果を知りうる立場にあることも十分に認識し、得られた情報の漏洩、個人の利益のための利用をしてはならない。
DMCは異なる専門性を持つ複数のDMC委員から構成される。DMCにおいては、各DMC委員が根拠に基づく意見を述べ、互いの専門性及び意見を尊重し、その役割と責務を踏まえて議論を行う必要がある。
2.4 DMCの業務
DMCによる業務の内容は以下のように分類される。
・安全性モニタリング
多くの場合、被験者の安全性モニタリングがDMCの重要な役割となる。長期的に死亡又は重篤な転帰を評価変数とした比較対照試験において、被験治療が対照と比較して転帰に至るリスクが高いことが明らかになった場合には、DMCは安全性を理由に試験の早期中止を勧告することができる。被験治療及び対照における有害事象発現率の比較、重要な有害事象に関する詳細な検討も、安全性モニタリングにおける重要な側面である。ときに安全性の成績に加えて有効性の成績も踏まえて被験治療のベネフィットリスクバランスが検討され、以後の試験継続の可否が判断されることもある。また、有害事象のリスクを軽減するために、組み入れ基準の変更、追加のスクリーニング手法の導入等、治験実施計画書の変更を伴う継続を勧告することもある。
・中間解析に基づく評価
DMCは、安全性モニタリングに加えて、被験者における情報が一定数集積された時点での有効性の中間解析の結果、被験治療の有効性に基づく早期中止、被験治療の無益性による早期中止の勧告をすることができる。なお、中間解析の実施は、試験計画において事前に規定されるべきである。下の項で示すような試験実施状況の評価の結果、目的に沿った中間解析を実施することが困難と判断された場合は、治験依頼者は治験実施計画書の改訂を行う。
・試験実施状況のモニタリング
臨床試験の質を確保するため、被験者の登録状況、対象被験者の妥当性、脱落例の発現状況、治験実施計画書の遵守状況等の、試験の実施状況に関わるデータの定期的なモニタリングを行うことができる。本目的でのモニタリングにおいては通常、割り付けを明らかにしたデータは必要としない。
・外部情報の利用
安全性及び有効性等のデータモニタリングに加え、試験結果の信頼性を損なわない範囲で関連試験の結果等の外部データに基づいた、実施中の試験に対する影響に関する、中立的な立場からの検討が求められる場合がある。また、進行中の関連試験のDMCとの情報交換が有用である可能性もある。しかしながら、試験の中間データの情報を持つDMCが外部情報を考慮して試験計画の変更を勧告した場合に、第一種の過誤が増加する可能性や、当該試験と他の試験との独立性が確保されないこと等により、試験結果の信頼性が損なわれる可能性について、常に留意する必要がある。
DMCは以上のようなデータモニタリングの結果を踏まえ、以後の臨床試験の中止の要否やデザインの変更の要否に関する助言・勧告を治験依頼者に対して行う。
2.5 臨床試験に関連する他の組織との関係
臨床試験のデータモニタリングには、臨床試験の倫理性及び科学的妥当性を確保するために、DMCを含む複数の組織がそれぞれ異なる立場の責任を持ち関わっている。臨床試験に関連する他の組織とその役割、DMCとの関係は以下のとおりである。
・治験依頼者
治験依頼者は臨床試験を計画し、その全てに責任を持つ立場にある。治験依頼者はDMCの設置、運営、及びDMCの助言・勧告を受けて試験の中止、計画の変更を決定する責任がある。
治験依頼者は必要に応じて、治験運営委員会(Steering Committee又はClinical Trial Steering Committee)を設置することができる。この場合、治験依頼者は、治験運営委員会を通じてDMCの勧告を受け取ることになる。治験運営委員会には、治験依頼者の代表者、治験責任医師、実施する臨床試験には関与しない専門家等が参加することができる。
・治験審査委員会(IRB:Institutional Review Board)
IRBは主に、臨床試験の各実施施設において、当該施設の被験者の安全性の確保の適切性、及び臨床試験実施に関する科学的妥当性を審査する。試験の特徴、DMC設置の理由やその目的によっては、臨床試験の計画や実施体制の審査の一環として、DMCが設置されているか、設置されている場合はその役割等についてIRBが確認する場合がある。また、IRBは、DMCから治験依頼者への勧告を踏まえて、臨床試験の実施の適切性について検討することがある。
・イベント評価(判定)委員会
イベント評価委員会(又はイベント評価委員)は、治験責任医師から報告される重要なイベントが治験実施計画書の基準を満たしているかについて、通常、盲検下で評価し、イベント評価の一貫性と客観性を確保することにより、臨床試験の科学的妥当性を確保する上での重要な役割を担う。イベント評価委員会は、主観的な判定に基づくイベントが評価変数として採用された試験、イベントの定義が複雑である試験などにおいて、イベントの判定の妥当性を検討するために設置されることがあるが、臨床試験のデータのデータモニタリング業務をDMCと分担することはない。
3.DMCの設置と運営
3.1 DMCの構成
通常、DMC委員は治験依頼者により指名される。DMCは試験データのデータモニタリングに基づき適切な勧告を行う必要があり、適切な委員を選定し構成することが重要である。DMCは多くの場合、当該疾患領域及び被験治療に関して想定される安全性上の特徴を踏まえて適切な専門性を持つ臨床医並びに臨床試験のデザイン、データ及び統計解析に精通している少なくとも1名の統計家等、3名以上から構成される。委員の選定に際しては、実施予定の試験の目的やデザインに基づき必要とされる専門性を判断する必要がある。各委員が臨床試験に携わった経験、他の臨床試験においてDMC委員を務めた経験等を考慮することも重要である。指名されたDMC委員は、その役割と責務を十分に理解することが必要である。(「2.3DMC委員の役割と責務」参照)
DMCは客観的にデータを検討する必要があることから、委員の選定に際しては利益相反の有無も考慮すべきである。利益相反の程度については様々な観点があるが、最も重要な点は、DMCが中立的な立場から正当に意見を述べられるよう、またそれを保証するために利益相反を適切に管理すること、具体的には利益相反の開示を行うこと、DMCが結論に至った過程を事後的に第三者が確認できることである(3.3.4節を参照)。一般的には、重大な利益相反のある個人を委員とすることは避けるべきである。また、委員に潜在的な利益相反がある場合には、その内容を少なくともDMC等に対して開示するべきである。委員の選定の際に問題とすべき利益相反の程度と各委員候補の利益相反の評価を含む委員選定の手順、利益相反に関する情報開示の方法については、試験の目的及び実施される状況に応じて検討し、事前に決定しておくことが望ましい。
大規模な国際共同治験においてDMCを設置する場合は、可能な限り、参加する各地域又は一部地域から代表となる委員を選択することが、本来適切であると考えられる。このような国際共同治験に日本人被験者が参加する際には、本邦における医療環境及び既存の安全性情報を踏まえて、本邦の専門家がDMC委員として参加することが望ましいが、それが困難な場合にも日本人被験者の安全性に関する検討方法等をあらかじめ考慮しておくべきである。なお、他地域と比較して被験治療の経験及び安全性情報が乏しい場合等、日本人被験者に対する特別な安全性モニタリングが必要とされる場合には、日本人被験者の安全性を注意深く観察するために、本邦の専門家がDMCに参加する意義はさらに高くなる。
なお、DMC運営における実務上の観点から、運営をサポートするための事務局の設置、中間解析作業を実際に担う統計家(プログラマー等も含む)の指名も必要となる。事務局の設置や統計解析の実施等の業務については、第三者機関として開発業務受託機関(CRO:Contract Research Organization)等を利用することもある。この場合、治験依頼者は、DMC委員の選定と併せて適切なCRO等を選定する必要がある。
3.2 中間データの取扱い
臨床試験の実施中に、割り付けが明らかにされた結果を治験依頼者及び治験責任医師等が知ることにより、試験実施や結果の解析等が影響を受け、結果として試験成績にバイアスが生じる可能性がある。よって、盲検解除された中間データ及び中間解析に基づく比較結果は、DMC及び中間解析を実施しDMCに提出する中間解析の報告書を作成する統計解析を担当する者のみが閲覧可能とするべきである。治験依頼者は中間データ及び中間解析に基づく比較結果の漏洩を防ぐため、適切な方策を講じるべきである。
3.3 データモニタリング及び勧告の手順と留意すべき点
3.3.1 手順書の整備
DMCは、治験依頼者及びDMCにより合意されたDMCの手順書(DMC charter)に従って活動する。手順書ではDMCの設置目的、DMCの構成委員、利益相反の管理、DMCと他の試験関係者との関係、予定される会議のスケジュールや会議の形式、DMC会議の出席者、DMCの検討対象となるデータ、中間データの解析に関する手順、盲検解除に関する手順、盲検解除された中間データを閲覧できる者、治験依頼者に対して行う勧告の手順と治験依頼者の対応、記録の作成と保存等について明記する。また、例えば安全性上の問題が懸念された場合や試験外の重大な情報が得られた場合等、緊急的な会議の開催が必要とされた場合の開催要件や実施手順についても規定する必要がある。
3.3.2 会議の開催
DMCを非公開で開催することにより中間データの機密性を保持することは,以後の試験におけるバイアスを最小化するために重要であるが、その一方で、試験の実施体制の適切性の確認や、外部データの共有のためには、治験依頼者又はその他の治験関係者とDMCが情報交換することが有用な場合もある。そのため、多くのDMC会議は、以下に示すとおり、公開審議(Open session)と非公開審議(Closed session)の2部から構成される。一般的に、公開審議、非公開審議の順で会議が開催された上で、治験依頼者に対してDMCの勧告がなされる。
・公開審議
DMC委員の他、治験依頼者の代表者、治験運営委員会、その他の治験関係者等が公開審議に参加し、DMCに対して主に試験の実施状況に関する情報が提供され議論される。公開審議で検討対象となるデータとしては、被験者の登録状況、不適格例の事由と頻度、割り付けの情報を含まない安全性データ、その他の臨床試験の進捗状況やデータの質を評価するために必要なデータ等があげられ、これらの検討により試験の運営の改善が期待される。また、治験依頼者とDMCがモニタリング対象の臨床試験に関連した外部データを共有する機会にもなる。
・非公開審議
非公開審議にはDMC委員及び中間解析を担当する統計家、DMC事務局のみが参加する。主に、中間解析を担当する統計家により提出された非公開データである有効性及び安全性に関するモニタリングデータ(盲検解除されたデータや機密情報を含む場合がある)あるいは中間解析結果に関する報告書に基づいて討議がなされる。討議において、治験依頼者に提示する勧告内容が検討される。
DMCにより審議される内容によっては、会議ではなく、書面による審議とすることも可能である。この場合、書面による審議とすることができる審議内容、審議の方法等をあらかじめ手順書に定める必要がある。
3.3.3 勧告
DMCはモニタリング、中間解析の結果に基づき、治験依頼者に対して勧告を行う。勧告の内容としては、試験の継続(治験実施計画書、説明文書、同意文書、試験の実施体制等に変更なし)、試験計画に修正を伴う試験の継続、試験の一時中断、中止等が考えられ、原則として詳細な試験結果については伝達しない。DMCから治験依頼者への勧告は、書面をもって通知する必要があるが、その際にも試験の盲検性が維持されることが重要である。また、治験依頼者はDMCから受けた勧告に基づく判断結果を、必要に応じ、治験審査委員会、治験運営委員会、治験責任医師等に伝達し、対応にあたる。なお、DMC勧告を受けて試験の中止、計画の変更等を決定する責任は治験依頼者にあるが、その判断による影響について検討するにあたり、事前に規制当局に確認することは可能である。
3.3.4 必要な記録
DMCに関わる全ての会議の議事録を作成し、保管する必要がある。公開審議の議事録と非公開審議の議事録は別々に作成され、公開審議の議事録は必要に応じて治験依頼者や治験責任医師等にも回覧されるが、非公開審議の議事録は事務局及びDMC委員で作成、回覧し、臨床試験終了後までDMC委員以外には開示されない。非公開審議の議事録は、結論に至った過程を事後的に第三者が確認できるよう作成されるべきである。このような議事録は、DMCの独立性や結論の妥当性の確認に役立つ。
また、臨床試験に関する記録におけるDMCに関わる記載としては、一般的に治験実施計画書にはDMCの役割及び少なくともDMC委員長を記載し、DMC設置に関するより詳細についてはDMC手順書を参照可能とするべきである。総括報告書には、DMC委員長を含むDMC委員の構成やDMCによるデータモニタリングの実施内容、DMCによる勧告内容、DMCによる勧告を踏まえた治験依頼者の判断等を記載する。さらに、総括報告書の付録として、DMCの手順書、議事録、勧告書面等を添付することが望ましい。
4.DMCの独立性
4.1 DMCの独立性
DMCを治験依頼者から独立した組織として設置することにより、客観性の高いデータモニタリングが可能となり、試験成績に対するバイアスの混入が抑えられるため、試験の信頼性が向上すること、及び被験者の安全性が適切に確保されることが期待できる。DMCの独立性は、DMC委員がDMCとしての役割以外で当該臨床試験のデザインや実施に関与せず、治験依頼者との間で利益相反、つまりDMC委員を務めることの報酬以外での経済的又は他の重要な結びつきを持たないことにより高まると考えられる。しかし、DMCは、その独立性を高めるとともに、DMCにおいて試験に関する詳細な情報が提供された上での十分な議論を両立させる必要がある。治験依頼者や治験責任医師等とDMCの間で、一定の制限の下で必要な情報のやりとりが可能となるよう配慮する必要もある。
4.2 治験依頼者との関係
治験依頼者は、DMC委員の選定と任命を行うほか、DMCが円滑に機能するための環境を整える責任を負う。治験依頼者はDMCの意思決定の独立性を確保する必要がある。なお、DMCからの勧告を踏まえて、最終的には治験依頼者が実施中の臨床試験の取扱い(試験の継続、計画に修正を伴う継続、試験の一時中断や中止等)を慎重に判断することになる。
4.3 中間解析を実施する統計家の独立性
原則として、DMC委員を除き、中間解析を実施しDMCに提出する中間解析の報告書を作成する統計家のみが、盲検解除されたデータを閲覧可能とするべきである。中間解析の実施にあたっては、中間解析を担当する統計家以外の者が盲検解除されたデータを閲覧することがないよう、適切な管理がなされる必要がある。また、中間解析に基づく意思決定にバイアスが混入するのを最小限に抑え、また盲検解除された中間データに関する秘密保全を重要視するといった観点から、中間解析を担当する統計家は独立性に配慮する必要があり、試験デザインの設計及び変更についての意思決定や試験の運営管理に関与させないことが適切である。このような理由から、基本的には中間解析を担当する統計家とDMCの統計家は兼任するべきではない。
5.中間解析に伴う統計的留意事項
臨床試験の中間データに基づき、被験治療の有効性による試験の早期中止を判断するために実施される中間解析においては、複数回の統計学的検定を実施することに基づく第一種の過誤確率の上昇が問題となるため、これを制御するために適切な統計解析手法を採用する必要がある。また、中間データにおいては、治療効果が過大推定される可能性があり、その程度は中間解析で対象とする被験者数やイベント数等、試験全体の情報量に対する中間解析時点での情報量の大きさ(情報時間)に影響される。DMCの統計家は、これら中間解析特有の統計的問題点を踏まえて、臨床試験の計画時に統計解析計画(中間解析の実施時期、実施回数、統計解析手法等)の妥当性について吟味し、治験依頼者に必要な勧告をすべきであり、また、DMCがより適切な意思決定ができるように、DMCに報告される中間データの有効性及び安全性の解析結果やその提示方法を適切に規定しておく必要がある。また、DMCの統計家以外の委員も、上述のような中間解析特有の統計的諸問題があることを理解した上で、意思決定を行う必要がある。