アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○第12次労働災害防止計画の策定について

(平成25年2月25日)

(厚生労働省発基安0225第1号)

(都道府県労働局長あて厚生労働事務次官通知)

(公印省略)

今般、平成25年度を初年度とし、平成29年度を目標年度とする第12次労働災害防止計画を別添のとおり策定したところである。

厚生労働省は、昭和33年以来、これまで11次にわたって労働災害防止計画を策定し、これに基づき種々の対策を強力に推進してきたところである。その間、労働災害は長期的には減少してきているが、今なお1,000人を超える人が亡くなり、年間11万人が休業4日以上の労働災害に被災している。また、平成22年以降、労働災害は3年連続で増加している状況にある。

本計画は、誰もが安心して健康に働くことができる社会の実現に向け、こうした労働災害の動向や、社会情勢の変化を見据え、今後5年間に労働安全衛生行政が重点的に取り組む事項や方向性を示したものである。

以上の趣旨を踏まえ、本計画の効果的な推進に万全を期されたい。

第12次労働災害防止計画

[誰もが安心して健康に働くことができる社会を実現するために]

平成25年2月25日

厚生労働省

〈目次〉

はじめに

1 計画のねらい

(1) 計画が目指す社会

(2) 計画の目標

(3) 計画の評価と見直し

2 社会の変化と安全衛生施策の方向性

(1) 第三次産業の拡大と労働災害の変化

(2) リーマンショックと東日本大震災の影響

(3) 非正規労働者等の増加と外部委託の広がり

(4) 少子高齢化の影響

(5) 技術革新に対応した規制のあり方

(6) 行政を取り巻く環境の変化

(7) 社会に開かれた安全衛生対策

3 重点施策

(1) 労働災害、業務上疾病発生状況の変化に合わせた対策の重点化

(2) 行政、労働災害防止団体、業界団体等の連携・協働による労働災害防止の取組み

(3) 社会、企業、労働者の安全・健康に対する意識改革の促進

(4) 科学的根拠、国際動向を踏まえた施策推進

(5) 発注者、製造者、施設等の管理者による取組強化

(6) 東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた対応

4 重点施策ごとの具体的取組

(1) 労働災害、業務上疾病発生状況の変化に合わせた対策の重点化

ア 重点とする業種対策

(ア) 労働災害件数を減少させるための重点業種対策

① 第三次産業(特に小売業・社会福祉施設・飲食店)対策

② 陸上貨物運送事業対策

(イ) 重篤度の高い労働災害を減少させるための重点業種対策

① 建設業対策

② 製造業対策

イ 重点とする健康確保・職業性疾病対策

① メンタルヘルス対策

② 過重労働対策

③ 化学物質による健康障害防止対策

④ 腰痛・熱中症対策

⑤ 受動喫煙防止対策

ウ 業種横断的な取組

① リスクアセスメントの普及促進

② 高年齢労働者対策

③ 非正規労働者対策

(2) 行政、労働災害防止団体、業界団体等の連携・協働による労働災害防止の取組み

① 専門家と労働災害防止団体の活用

② 業界団体との連携による実効性の確保

③ 安全衛生管理に関する外部専門機関の育成と活用

(3) 社会、企業、労働者の安全・健康に対する意識改革の促進

① 経営トップの労働者の安全や健康に関する意識の高揚

② 労働環境水準の高い業界・企業の積極的公表

③ 重大な労働災害を発生させ改善が見られない企業への対応

④ 労働災害防止に向けた国民全体の安全・健康意識の高揚、危険感受性の向上

(4) 科学的根拠、国際動向を踏まえた施策推進

① 労働安全衛生総合研究所等との連携による科学的根拠に基づく対策の推進

② 国際動向を踏まえた施策推進

(5) 発注者、製造者、施設等の管理者による取組強化

① 発注者等による安全衛生への取組強化

② 製造段階での機械の安全対策の強化

③ 労働者以外の人的・社会的影響も視野に入れた対策の検討

(6) 東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた対応

① 東日本大震災の復旧・復興工事対策

② 原子力発電所事故対策

はじめに

人は働くことで生計を立て、人生の多くの時間を職場で過ごす。国の経済や社会は、このような人々の労働によって支えられている。しかし、職場では、日常生活では使うことがないような危険な物を扱ったり、危険な場所での作業が必要なこともある。また、心身に影響が及ぶような過重労働も問題となっている。かつて日本が高度経済成長期にあった昭和30年代後半から40年代前半には、年間6,000人を超える人が、業務上の災害によって尊い命を落とした。人の生命と健康はかけがえのないものであり、どのような社会であっても、働くことで生命が脅かされたり、健康が損なわれたりするようなことは、本来あってはならない。

こうした悲劇を少しでも減らすため、国は昭和33年からこれまで11次にわたって「労働災害防止計画」を策定するとともに、昭和47年には労働災害の防止を目的とする「労働安全衛生法」を制定し、関係業界、専門家などと協力しながら、対策に取り組んできた。その結果、労働災害は大幅に減少してきたが、現在に至ってもなお、仕事中の事故や急性中毒などで亡くなる人は年間1,000人を超えている。また、過重労働などを原因として脳・心臓疾患を発症し死亡したり(いわゆる「過労死」等)、仕事による強いストレスを原因として精神障害を発症し、自殺したとして労災認定される人は、合わせて200人近くに上っている。さらに、怪我を負ったり病気になり、4日以上仕事を休んだ人は、年間11万人に達している。

こうした状況の中、平成23年に発生した東日本大震災を受け、被災地の復興の加速、東京電力福島第一原子力発電所の事故等からの迅速な再生、事前防災・減災のための災害に強い国土づくりが政府の当面の最重要課題となっており、その円滑な実施を図るため、これらの取組に関連する労働災害防止に特に留意が必要である。

このような現状を踏まえ、労働災害を少しでも減らし、誰もが安心して健康に働くことができる社会を実現するため、平成25年度を初年度として、5年間にわたり国が重点的に取り組む事項を定めた新たな「労働災害防止計画」をここに定める。

1 計画のねらい

(1) 計画が目指す社会

誰もが安心して健康に働くことができる社会を実現するためには、国や労働災害防止団体などだけでなく、労働者を雇用する事業者、作業を行う労働者、仕事を発注する発注者、仕事によって生み出される製品やサービスを利用する消費者など、全ての関係者が、働くことで生命が脅かされたり、健康が損なわれたりするようなことは、本来あってはならないという意識を共有し、安全や健康のためのコストは必要不可欠であることを正しく理解し、それぞれが責任ある行動を取るような社会にしていかなければならない。

(2) 計画の目標

誰もが安心して健康に働くことができる社会の究極的な目標である「労働災害をゼロにすること」の実現に向け、以下の目標を計画期間中に達成することを目指す。

① 死亡災害の撲滅を目指して、平成24年と比較して、平成29年までに労働災害による死亡者の数を15%以上減少させること

② 平成24年と比較して、平成29年までに労働災害による休業4日以上の死傷者の数を15%以上減少させること

(3) 計画の評価と見直し

計画に基づく取組が着実に実施されるよう、毎年、計画の実施状況の確認、評価を行い、労働政策審議会安全衛生分科会に報告・公表する。また、必要に応じ計画の見直しを検討する。

計画の評価に当たっては、単に死傷者の数や目標に掲げた指標の増減のみで評価するのではなく、その背景となったり、影響を及ぼしたと考えられる社会的指標や社会経済の変化も含めて分析を行う。

※計画の目標は、新成長戦略(平成22年6月18日閣議決定)において名目3%、実質2%を上回る成長を前提として2020年までに実現すべき成果目標の1つとして掲げている「労働災害発生件数を3割減」を踏まえたものである。

2 社会の変化と安全衛生施策の方向性

(1) 第三次産業の労働者数の増大と労働災害の変化

日本が高度経済成長期にあった時期は、製造業と建設業の雇用者数が全体に占める割合が4割を超え、労働災害の多くがそれらの業種で発生していた。このため、労働災害を防ぐための取組も、こうした産業に重点が置かれていた。昭和47年の労働安全衛生法の制定により、事業者等の責任が明確化され、安全衛生に関する取組の充実が図られた結果、職場における安全衛生水準は大幅に向上し、製造業や建設業の労働災害年千人率(労働者千人当たりの労働災害件数の割合)は大幅に減少してきた。これに加え、サービス産業の拡大などで産業構造が変化し、昭和45年には全雇用者数の43.8%を占めていた製造業と建設業の雇用者数の割合は、平成22年には25.6%にまで減少している(表1)。このような労働災害防止への不断の努力や産業構造の変化により、労働災害全体に占める製造業と建設業の占める割合は、昭和51年の66.7%から、平成23年には41.3%にまで減少している。

《表1》製造業及び建設業の雇用者数の推移

 

昭和35年

(1960年)

昭和45年

(1970年)

昭和55年

(1980年)

平成2年

(1990年)

平成12年

(2000年)

平成22年

(2010年)

雇用者数

2,370万人

3,306万人

3,971万人

4,875万人

5,356万人

5,463万人

製造業

799万人

1,144万人

1,135万人

1,306万人

1,205万人

996万人

(構成比)

(33.7%)

(34.6%)

(28.6%)

(26.8%)

(22.5%)

(18.2%)

建設業

198万人

305万人

427万人

462万人

539万人

405万人

(構成比)

(8.4%)

(9.2%)

(10.8%)

(9.5%)

(10.1%)

(7.4%)

第三次産業

1,211万人

1,789万人

2,350万人

3,008万人

3,545万人

3,998万人

(構成比)

(51.1%)

(54.1%)

(59.2%)

(61.7%)

(66.2%)

(73.2%)

(出典:労働力調査)

一方、労働者が第三次産業へとシフトしたことにより、年を追うごとに卸売・小売業、飲食店、保健衛生業などの第三次産業が労働災害に占める割合が増加を続けている(表2)。中でも労働災害が急増している医療や介護などの分野は、高齢化の進展による需要の拡大により、従事する労働者が今後も増えることが予想される。これらの業種では、主に機械や製造設備の改善、特定の作業や場所に着目した対策によってリスクを低減させ、災害の防止に効果を上げてきた製造業や建設業とは異なり、労働者が滑ったり、つまづいたりすることによる転倒災害、重い物を運ぶことなどによる腰痛災害が多くを占めており、こうした災害を防ぐためには、労働者個人の行動に着目することが必要となっている。

健康対策の面でも変化が生じている。これまでは、作業に伴う粉じんによる「じん肺」、製造・建設現場で使われる様々な化学物質による急性中毒やがんなどの健康障害を防止することに主眼が置かれてきたが、近年では、これらに加えて職場の様々なストレスによるメンタルヘルス不調や、過重労働による健康障害、屋内の事務所における受動喫煙、介護作業における腰痛といった問題が、重要性を増している。

ただし、重篤な災害に着目すると、製造業や建設業は依然として重要な業種といえる。労働災害全体に占める割合が低下したとはいっても、死亡災害に限れば、依然として製造業と建設業で過半数を占めている。建設業は、昭和51年の43.4%から、平成23年には33.4%に減少してはいるが、依然として単独で3分の1を占め、製造業は、雇用者に占める割合は減っているにもかかわらず、死亡災害に占める割合は過去20年以上にわたって2割弱で推移し減少していない(表3)。障害の残るような災害も含む重篤な災害を防止するためには、今後も製造業や建設業に対して重点をしぼった取組が必要な状況にある。

《表2》労働災害全体に占める製造業、建設業、第三次産業の割合の変化

 

昭和51年

(1976年)

昭和56年

(1981年)

昭和61年

(1986年)

平成3年

(1991年)

平成8年

(1996年)

平成13年

(2001年)

平成18年

(2006年)

平成23年

(2011年)

製造業

35.6%

31.5%

30.3%

29.4%

26.6%

27.1%

24.5%

21.2%

(千人率)

(11.4)

(9.8)

(6.9)

(5.0)

(3.8)

(3.5)

(3.2)

建設業

31.1%

32.1%

29.0%

28.8%

27.6%

24.4%

22.1%

20.1%

(千人率)

(23.1)

(20.2)

(14.7)

(10.4)

(7.2)

(6.2)

(5.7)

製造+建設

66.7%

63.6%

59.3%

58.2%

54.2%

51.5%

46.6%

41.3%

第三次産業

28.2%

33.1%

33.1%

38.4%

42.4%

《表3》死亡災害全体に占める製造業、建設業の割合の変化

 

昭和51年

(1976年)

昭和56年

(1981年)

昭和61年

(1986年)

平成3年

(1991年)

平成8年

(1996年)

平成13年

(2001年)

平成18年

(2006年)

平成23年

(2011年)

製造業

20.0%

20.0%

18.5%

18.0%

17.1%

18.2%

18.2%

17.8%

建設業

43.4%

40.3%

40.0%

42.1%

42.4%

36.0%

34.5%

33.4%

合計

63.4%

60.3%

58.5%

60.1%

59.5%

54.2%

52.7%

51.2%

(2) リーマンショックと東日本大震災の影響

平成20年9月のいわゆるリーマンショックと、平成23年3月に発生した東日本大震災は、その直後にGDPの急激な落ち込みが見られるなど、国内の経済活動に甚大な影響を及ぼした(図1)。

《図1》国民総生産の増減率の推移

《図2》労働災害の動向

平成21年の労働災害発生件数は、製造業を中心に大幅に減少した。これは労働災害防止に向けた労使の取組に加え、リーマンショックを受けた経済活動の低迷による影響が大きいと考えられる。しかしその後は、労働災害は3年連続で増加している状況にある(図2)。

※平成24年については12月末時点の速報値による

リーマンショック、東日本大震災の前後の労働災害の増減要因を業種別に見ると、リーマンショックの影響が最も顕著だった平成21年は、いずれの業種でも軒並み労働災害が減少しているが、平成22年以降は、第三次産業の労働災害の増加が最も大きな要因となっている(図3)。さらに、平成23年以降は、建設業の労働災害の増加も影響している(図3、図4)。

《図3》労働災害の増減への業種別寄与度

《図4》建設業の労働災害の動向

建設業における労働災害の増加の背景には、平成23年3月11日に発生した東日本大震災の復旧・復興に向けた各種工事の本格化があると考えられる。建設業では、長期的な需要の減少によって技能労働者等が減少傾向にあったが、東日本大震災後に建設復興需要が急増したため、全国的な人材不足等が生じ、その結果、人材の質の維持や現場管理に支障をきたすことなどによって、労働災害が増加する懸念が高まっている。また、東日本大震災の影響で事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所内の原子炉の廃炉に向けた作業や、広範囲に及ぶ除染作業という、これまで経験したことのないような作業が発生しており、厳しい環境下での作業による災害の発生も懸念される。

さらに、製造業においては、労使の取組に加え、景気の減速の影響もあって労働災害が大幅に減少してはいるが、安全衛生管理のノウハウを有する昭和20年代生まれを中心とする世代の退職や、厳しいコスト競争、人員合理化が、生産現場の安全衛生活動に影響を及ぼすことも懸念される。

(3) 非正規労働者等の増加と外部委託の広がり

総務省の労働力調査によれば、業種ごとの雇用者数の変化に加え、雇用形態にも大きな変化が見られる。労働者全体に占める非正規労働者の割合は、1990年代までは20%程度であったが、その後急速に増加し、平成22年時点では34.3%にまで増加している(表4)。非正規労働者の内訳は、パート・アルバイトが最も多く68.0%、次いで契約社員が18.8%、派遣社員が5.5%となっている。

《表4》正規労働者と非正規労働者の割合の推移

 

昭和60年

(1985年)

平成2年

(1990年)

平成7年

(1995年)

平成12年

(2000年)

平成17年

(2005年)

平成22年

(2010年)

正規労働者

83.6%

79.8%

79.1%

74.0%

67.4%

65.6%

非正規労働者

16.4%

20.2%

20.9%

26.0%

32.6%

34.3%

 

 

 

うち男性

28.1%

26.7%

25.6%

26.6%

31.0%

30.7%

うち女性

71.9%

73.3%

74.4%

73.4%

68.9%

69.4%

(出典:労働力調査)

《表5》非正規労働者の業種別構成比

全産業

製造業

建設業

第三次産業(農林水産業、鉱業・採石業、建設業、製造業以外の業種)

 

 

 

卸売・小売

宿泊・飲食

医療・福祉

100%

11.2%

3.2%

83.9%

21.9%

12.0%

30.7%

(出典:平成22年労働力調査)

非正規労働者は7割を女性が占めており、そのうちの8割以上が第三次産業に集中している(表4、表5)。本来、労働者の安全衛生については、労働者の属性に関わりなく等しく確保されるべきものであることから、労働安全衛生法では、異なる労働条件や就業状況に着目した規定とはなっていない。しかし、社会情勢の変化に伴い、労働者の3人に1人以上が非正規労働者となり、非正規労働者の多い第三次産業の労働災害に占める割合が増大している現状において、現行の労働安全衛生法令が労働現場の実態に合ったものとなっているかどうか、改めて点検する必要が生じている。

また、障害者の雇用も進んでおり、雇用されている障害者の数は、平成14年の24.6万人から、平成24年には38.2万人に増加しており、障害者雇用率の引き上げ等により、今後も障害者雇用の増加が見込まれることから、障害者の心身の条件に応じた適正な配置や、障害の種類及び程度に応じた適切な安全衛生対策が講じられるよう留意が必要である。

これらの変化に加えて、様々な分野で請負などによる外部委託が行われるという変化も生じている。労働安全衛生法では、労働者の安全や健康を守る義務を負うのは労働者を雇用する事業者を基本としているが、請負に伴い事業者間の責任分担が曖昧になったり、請負事業者の権限だけでは十分な労働災害防止のための対策を講じることが困難であったり、複数の事業者による作業が同一の場で行われることによる災害が生じるといった状況を防ぐため、重層的な請負構造が一般的である建設業や造船業では、最も先次にある事業者である元請事業者も一定の役割を担う制度が導入されている。しかし、外部委託が広がる中で、建設業や造船業以外の業種でも、安全衛生上の措置義務や、受注者の安全衛生対策に必要な経費の確保など、発注者が担うべき責任のあり方について、実態を調査し、改めて検討する必要がある。

また、機械設備による労働災害を防止するための対策としては、製造段階で危険性の確認や機械設備の安全化を行い、残ったリスクの情報をユーザーに提供する取組を進めてきており、化学物質による労働災害を防止するための対策としては、危険有害性情報の提供による取組を進めているが、依然として機械設備や化学物質による災害が多発しているため、さらなる取組の促進が必要である。

以上のように社会情勢、経済情勢に大きな変化が生じていることを踏まえ、これまでの仕組みを見直し、より合理的かつ効果的なものとしていく必要がある。

(4) 少子高齢化の影響

労働災害は、経済構造や就業環境の変化に加えて、急速に進む少子高齢化による影響も受けている。60歳以上の高齢者人口は過去20年間でほぼ倍増しており、高齢者雇用の促進と相まって、高年齢労働者の数が増え、その結果、労働災害に被災する高齢者も増加している(表6)。60歳以上の労働災害発生率は、他の年齢に比べても高く(表7)、同じ災害に遭遇しても、高齢者の場合は休業日数が長くなる傾向にある。また、高齢者は高血圧などの基礎疾患を有する割合が高く、勤務中の急な体調不良が労働災害につながることも懸念される(表8)。

今後も高齢化が進み、これまで以上に労働者に占める高齢者の割合は高くなることが見込まれるため、これからの労働災害防止の取組は、これら高齢化によるリスクの増大も念頭においたものとしていく必要がある。

《表6》年齢別雇用者数の推移

 

15~24歳

25~34歳

35~44歳

45~54歳

55~64歳

65歳以上

合計

平成2年

(1990年)

670万人

(14.3%)

1,032万人

(22.0%)

1,252万人

(26.7%)

1,062万人

(22.6%)

550万人

(11.7%)

123万人

(2.6%)

4,690万人

平成7年

(1995年)

749万人

(14.5%)

1,164万人

(22.5%)

1,147万人

(22.2%)

1,248万人

(24.1%)

676万人

(13.1%)

185万人

(3.6%)

5,169万人

平成12年

(2000年)

615万人

(11.7%)

1,306万人

(24.8%)

1,091万人

(20.7%)

1,283万人

(24.4%)

769万人

(14.6%)

203万人

(3.9%)

5,267万人

平成17年

(2005年)

523万人

(9.8%)

1,331万人

(25.0%)

1,182万人

(22.2%)

1,168万人

(21.9%)

997万人

(18.7%)

221万人

(4.2%)

5,324万人

平成22年

(2010年)

461万人

(8.4%)

1,197万人

(21.9%)

1,348万人

(24.6%)

1,153万人

(21.1%)

1,004万人

(18.3%)

312万人

(5.7%)

5,477万人

(出典:労働力調査(平成2年~12年までは2月調査値、平成17年と平成22年は1月~3月平均値))

《表7》年齢別の災害発生率

 

19歳以下

20~29歳

30~39歳

40~49歳

50~59歳

60歳以上

合計

雇用者数

80万人

982万人

1,309万人

1,236万人

1,102万人

754万人

5,463万人

死傷者数

(発生千人率)

2,357人

(2.95)

16,542人

(1.68)

23,017人

(1.76)

23,414人

(1.89)

28,178人

(2.56)

23,225人

(3.08)

116,733人

(2.14)

死亡者数

(発生万人率)

18人

(0.23)

127人

(0.13)

185人

(0.14)

191人

(0.15)

302人

(0.27)

357人

(0.47)

1,180人

(0.22)

(出典:平成22年労働力調査、労働者死傷病報告)

《表8》年齢別基礎疾患の状況

 

 

30~39歳

40~49歳

50~59歳

60~69歳

70歳以上

高血圧症有病者の割合

男性

19.4%

33.5%

57.8%

64.4%

80.6%

女性

4.0%

12.7%

36.3%

60.0%

73.2%

糖尿病が強く疑われる者の割合

男性

3.1%

8.0%

15.6%

22.1%

22.4%

女性

0.9%

3.6%

5.6%

13.5%

16.5%

脂質異常症が疑われる者の割合

男性

11.1%

13.7%

20.1%

25.5%

27.6%

女性

1.2%

1.9%

11.0%

23.4%

34.3%

(出典:平成22年国民健康・栄養調査)

(5) 技術革新に対応した規制のあり方

労働安全衛生法令では、過去に発生した労働災害の原因の調査等により、人体に有害な化学物質、回転部に覆いのない機械、さく等のない開口部など、職場の危険有害要因を特定し、これを規制することにより、類似の災害の発生を防止してきた。しかし、技術革新が進む中で危険有害要因が多様化しており、あらゆる危険有害要因に対して個別具体的な規制を設けることは困難になりつつあることに加え、そのような規制方法では、規制は膨大なものにならざるを得ない。

このため、労働災害を防止するために達成すべき労働現場の安全衛生の水準を明確にした上で、具体的な手法は一定程度事業者の自主的取組に委ねるという考え方を導入することも含め、今後の労働安全衛生規制のあり方を長期的な視点から検討していく必要がある。これと併せ、手法の選択を委ねられた事業者を技術面で支援できる高い専門性を備えた人材の育成やその活用を後押しする制度についても長期的に検討していく必要がある。

また、技術革新が進む中で、新たな技術や物質などによって生じたリスクによって、将来発生するおそれのある健康への影響を未然に防ぐ観点から、それらのリスクによる人体への影響が科学的に完全に解明されていない段階でも、不確実性のあるリスクやその影響をどう評価し、予防的な対策を講じていくべきか、長期的に検討を進めていく必要がある。

(6) 行政を取り巻く環境の変化

社会、経済が変化し、新たに取り組むべき課題が増加する一方で、国の財政状況は厳しさを増しており、行政にはさらなる減量、効率化が求められている。

このような状況の中で労働災害を効果的に防止していくためには、行政の取組について選択と集中を進め、合理的な重点化を図るとともに、これまで以上に、業界団体や労働災害防止団体などとの連携を強め、業界の自主的な取組による労働災害の防止活動を支援、促進していく必要がある。

(7) 社会に開かれた安全衛生対策

安全衛生対策として、メンタルヘルス不調、過重労働、腰痛等への対応が重要性を増し、第三次産業を含む広範な分野に課題が広がっている中では、労働災害は一部の危険な作業に従事している労働者だけの問題ではなく、誰もが遭遇しうる身近なリスクであるという認識を持つことが重要である。

そのために、企業による自主的活動を活性化するとともに、安全衛生を巡る問題を可視化し、より社会に開かれたものとしなければならない。この可視化とは、どういう労働災害がどれだけ起こっているのか、不十分な取組がどのような結果を招くのか、それを防ぐためには、企業や労働者自身が何をすればよいのかといった労働災害に関する様々な情報や、業界や企業の安全衛生水準に関する情報を社会全体で共有し、安全衛生に対する認識を高めることができるような状態にすることであり、これを実現するための様々な取組が必要である。

3 重点施策

先に述べた社会の変化と安全衛生施策の方向性を踏まえて、以下の6つを重点施策とする。

(1) 労働災害、業務上疾病発生状況の変化に合わせた対策の重点化

(2) 行政、労働災害防止団体、業界団体等の連携・協働による労働災害防止の取組み

(3) 社会、企業、労働者の安全・健康に対する意識改革の促進

(4) 科学的根拠、国際動向を踏まえた施策推進

(5) 発注者、製造者、施設等の管理者による取組強化

(6) 東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた対応

4 重点施策ごとの具体的取組

(1) 労働災害、業務上疾病発生状況の変化に合わせた対策の重点化

近年の労働災害の発生状況を見ると、従来大きな割合を占めていた建設業や製造業の労働災害、じん肺、騒音・振動障害などの古くからの職業性疾病に加え、第三次産業の労働災害防止対策やメンタルヘルス対策など、新たな課題がますます重要となってきており、重点とすべき対策の見直しが必要となっている。今後5年間の安全衛生施策では、以下に掲げる対策に重点的に取り組むこととする。

ア 重点とする業種対策

(ア) 労働災害件数を減少させるための重点業種対策

(現状と課題)

・労働災害の発生状況を見ると、これまで重点的に取り組んできた建設業、製造業は、それぞれ平成14年から平成23年までの過去10年で大幅な減少が見られる一方で、安全衛生行政として必ずしも重点的な取組が行われてこなかった第三次産業は16.7%増加している。このうち、小売業、社会福祉施設、飲食店(以下「小売業等」という。)の労働災害が多く、特に社会福祉施設は、雇用者数が過去10年で約2倍と急増しているが、災害増加率はそれを上回って過去10年で2.5倍近くになっている。また、全労働災害の約1割を占める陸上貨物運送事業は、交通労働災害は年々減少傾向にあるものの、荷役作業時における労働災害の死傷者数は平成12年以降約1万人程度で推移しており、減少傾向が見られない。このため、労働災害発生件数を減少させるためには、小売業等や、陸上貨物運送事業における荷役作業に対する重点的取組が必要となってきている。

《業種別の死傷者数の推移》

業種

平成14年

平成19年

平成20年

平成21年

平成22年

平成23年

災害増減率

建設業

26,299

20,764

19,280

16,268

16,143

16,773

-36.2%

製造業

38,323

36,196

34,464

27,995

28,643

28,457

-25.7%

第三次産業

43,053

50,076

51,099

48,172

49,320

50,243

+16.7%

 

 

 

小売業

12,187

12,453

12,657

11,914

12,329

12,680

+4.1%

社会福祉施設

2,411

4,338

4,829

5,065

5,533

5,900

+144.7%

飲食店

3,725

4,055

4,055

4,015

4,021

4,150

+11.4%

陸上貨物運送事業

15,319

15,579

15,443

13,233

13,815

13,820

-9.8%

(出典:労働者死傷病報告(平成23年の死傷者数は東日本大震災関連を除いた数))

※災害増減率は、平成14年と比較した平成23年の増減率

・小売業等は、建設業や製造業に比べ、重篤度の低い転倒災害が占める割合が高いという特徴が見られ、労働者個人の行動に着目した新たな手法が必要となっている。また、高齢者の増大による医療、介護関連産業の拡大をはじめとする国民の需要構造の変化により、雇用者の増加が見込まれることにも留意が必要である。

・陸上貨物運送事業は、交通労働災害が全体の1割未満であるのに対し、荷役作業中の労働災害は約7割を占めている。また、荷役作業中の労働災害の約7割が、荷の積み込み先である発荷主や荷の届け先である着荷主(以下「荷主先等」という。)の構内で発生している。荷役作業中の労働災害では、荷台や荷の上等からの墜落・転落が最も多く3割弱を占めているが、フォークリフト等の荷役運搬機械やロールボックスパレット(かご台車)等の荷役運搬のための器具、用具による災害も少なからず発生している。こうした状況を踏まえ、陸上貨物運送事業における労働災害防止対策は、陸上貨物運送事業者と荷役作業場所を管理する荷主先等が連携して進める必要がある。

(目標)

平成24年と比較して、平成29年までに、重点業種ごとに以下の目標の達成を目指す。

■小売業

労働災害による休業4日以上の死傷者の数を20%以上減少させる。

■社会福祉施設

労働災害による休業4日以上の死傷者の数を10%以上減少させる。

なお、この目標は介護職員数の大幅な増加を見込んだ数値であり、雇用者数に増減がないと仮定した場合には、25%以上減少させることに相当する水準である。

■飲食店

労働災害による休業4日以上の死傷者の数を20%以上減少させる。

■陸上貨物運送事業

労働災害による休業4日以上の死傷者の数を10%以上減少させる。

(講ずべき施策)

小売業等や陸上貨物運送事業は、労働災害が減少していない又は減少幅が小さく、特に小売業等は労働災害全体に占める割合が増加しているため、労働災害を減少させるための重点業種として取り組む。

① 第三次産業(特に小売業、社会福祉施設、飲食店)対策

第三次産業については特に労働災害発生件数の多い小売業、社会福祉施設(介護施設)、飲食店に重点的に取り組む。

①―1 安全衛生管理体制の強化

・労働災害防止対策を進める上で、責任者を明確にする観点から、現在の安全管理者制度を参考に、小売業等の実態に即した効果的な安全管理体制の構築を検討する。

・小売業等では、パートやアルバイトなどの非正規労働者の割合が高い傾向があることを踏まえ、現場における非正規労働者に関する安全衛生活動の実態把握を進め、これらの実態を踏まえて、正規・非正規の別を問わず充実した安全衛生活動が現場で着実に取り組まれるよう、指導する。

①―2 小売業に対する集中的取組

a 大規模店舗・多店舗展開企業を重点とした労働災害防止意識の向上

・小売業の労働災害のうち、事故の型別で全体の約3割と最も多く発生している転倒災害は、一般的に、労働の現場のみならず日常生活においても起こりうるものと考えられている。このため、転倒災害をはじめとする労働災害の防止に対する意識が事業者、労働者の双方とも希薄になりがちであり、結果として職場の安全意識が醸成されにくい傾向がある。このことを踏まえ、労働災害の防止は、経営や業務の合理化・効率化にも繋がるという観点に立ち、まずは大規模店舗・多店舗展開企業を重点として労働災害防止意識の浸透・向上を図る。

b バックヤードを中心とした作業場の安全化

・小売業では、労働災害の多くがバックヤードで発生しているため、バックヤードでの作業の実態に着目して、危険箇所の見える化(危険マップによる危険箇所の表示等)、リスクアセスメント、KY活動等による危険の低減を事業場に働きかける。

・小売業での安全管理について、国内外の好事例を収集し、意識啓発・指導に活用するとともに、それらの事例をもとに、経営や業務管理に安全管理を組み込んだモデルを作成し、その普及を図る。

・多発している転倒災害や切れ・こすれ災害等を防ぐため、作業性、安全性、経済性に優れる安全靴や安全手袋などの保護具や安全装置の開発を促進し、普及させる。

①―3 社会福祉施設(介護施設)に対する集中的取組

・社会福祉施設(介護施設)に対して、県や市町村が行う介護事業者に対する研修会や指導と連携し、労働者に対する安全衛生教育の徹底、4Sの徹底による転倒災害等の防止、介護機器の導入による腰痛予防、職場における腰痛予防対策指針で定める腰痛の健康診断の普及・徹底を指導する。また、労働安全・衛生コンサルタント等の専門家を活用し、事業場に対して、腰痛を起こさない移動・移乗介助法や介護機器の具体的な活用方法等について訪問指導等を行う。

・上記の研修会や指導を通じて収集した好事例や情報に基づき、マニュアル等を見直し、普及するとともに、事業場に対する指導等に活用する。

・事業場で事業者が腰痛予防教育を行うことができるようにするための講習会を実施し、当該講習会について、業界団体や介護労働者養成機関に対して周知を依頼する。

①―4 飲食店に対する集中的取組

・飲食店では、転倒災害と切れ・こすれ災害で全体の半数を占めているため、これらの事故の型による災害防止を重点として、労働災害防止活動の取組事例の収集、安全衛生対策マニュアル等を作成し、普及するとともに、事業場に対する指導等に活用する。

①―5 対策の類型化と普及

・労働安全衛生総合研究所の協力を得て、個別業種、労働災害の発生要因ごとに、事業場で取り組むべき対策を類型化して取りまとめ、意識啓発、指導等に取り入れる。

② 陸上貨物運送事業対策

a 荷役作業の労働災害防止対策の普及、徹底等

・陸上貨物運送事業の労働災害の約7割が荷役作業時に発生しているため、陸上貨物運送事業労働災害防止協会とも連携して荷役作業における安全ガイドラインを周知・普及する。

b トラック運転者に対する安全衛生教育の強化

・荷主との役割分担でトラック運転者が荷役作業を担うこととなる場合には、トラック運転者に対する安全衛生教育の中で、荷役作業の墜落・転落防止対策や荷の運搬中の労働災害防止対策を充実・強化するとともに、荷役作業の作業手順の作成支援等に取り組む。

c 荷主による取組の強化

・荷主等が管理する施設での労働災害の防止対策も含め、貨物の運送を担当する陸上貨物運送事業者側と運送を依頼する側の役割分担をモデル運送契約書の普及等により明確にし、役割分担に基づいてそれぞれが実施すべき措置の実施を促進する。なお、着荷主が発荷主にとっての顧客であり陸上貨物運送事業者とは運送契約を締結する関係にない場合には、荷卸し時の役割分担や実施事項を、発荷主が着荷主と事前に調整し、陸上貨物運送事業者との契約に盛り込むことが適当であるため、こうした点にも留意しながら対策を進めることとする。

(イ) 重篤度の高い労働災害を減少させるための重点業種対策

(現状と課題)

・死亡災害は大幅に減少してはいるものの、依然として年間1,000人を超える人が労働災害で亡くなっており、重篤な災害を防止するという観点からは、その3割近くを占める「墜落・転落災害」、15%を占める「はさまれ・巻き込まれ災害」の防止対策を徹底させなければならない。墜落・転落災害は、半数以上が建設業で、はさまれ・巻き込まれ災害は4割近くが製造業で発生しており、これらの災害は、死亡という最悪の結果に至らなくとも、障害が残る可能性が高い災害であるため、建設業や製造業に対しても、重篤な災害の防止に着目した取組が必要である。

・建設業は、平成23年以降労働災害が増加する傾向にある。この背景には、東日本大震災の復旧・復興に向けた各種工事が本格化していることの影響が考えられ、被災地の建設復興需要の急増により、建設業者、技術者、技能労働者等が被災地に集中し、その影響で被災地以外の地域でも人材が不足し、この結果、全国的に人材の質の維持や現場管理に支障をきたすことが懸念される。また、東日本大震災を教訓に、事前防災・減災という考え方に基づく災害に強い国土づくりが課題となっており、そのためのインフラ整備の強化が全国的に求められているが、こうした人材が不足する中での建設需要の増加により労働災害が増加することのないよう取り組む必要がある。さらに、今後インフラの老朽化等により増加が見込まれる解体、改修等の各種工事の労働災害防止対策やアスベストばく露防止対策も重要な課題である。

《建設業、製造業の死亡者数の推移》

業種

平成14年

平成19年

平成20年

平成21年

平成22年

平成23年

建設業

607

461

430

371

365

342

製造業

275

264

260

186

211

182

(出典:死亡災害報告(平成23年の死傷者数は東日本大震災関連を除いた数))

(目標)

平成24年と比較して、平成29年までに、重点業種ごとに以下の目標の達成を目指す。

■建設業

労働災害による死亡者の数を20%以上減少させる。

■製造業

労働災害による死亡者の数を5%以上減少させる。

(講ずべき施策)

建設業では「墜落・転落災害」、製造業では「はさまれ・巻き込まれ災害」に着目した対策を講じる。また、建設業は、平成23年以降労働災害が増加傾向にあり、東日本大震災の復旧・復興工事の本格化に伴う全国的な人材不足等によって人材の質の維持や現場管理に支障をきたすことにより、全国的に労働災害の増加が懸念されるため、こうした状況を踏まえた対策にも取り組む。

① 建設業対策

a 墜落・転落災害防止対策

(a) 様々な場所からの墜落・転落災害防止対策の推進

・墜落、転落災害のうち、足場からの墜落・転落は約15%を占め、はしご、屋根等からの墜落・転落が約4割を占めるため、足場からの墜落・転落災害防止対策の推進に加え、労働安全衛生総合研究所と協力して、はしご、屋根等からの墜落・転落災害を防止するための機材・手法を開発し、普及させる。

(b) ハーネス型の安全帯の普及

・一般に広く使用されている胴ベルト型の安全帯は、墜落時の身体への衝撃が大きいため、作業性を考慮しつつ、一定条件下でハーネス型の安全帯を義務付ける等、墜落時に衝撃が少ない安全帯を普及させる。

b 震災の影響による全国的な人材不足等の状況を踏まえた対策

(a) 建設工事発注者に対する要請

・建設業の発注者に対し、仕様書に安全衛生に関する事項を盛り込むなど、施工時の安全衛生を確保するための必要な経費を積算するよう、また、関係請負人へその経費が確実に渡るよう、国土交通省と連携して対応する。また官公庁発注の公共工事において同様の取組が取られるよう広く要請する。

・特に、アスベストを含む建築物の解体工事では、必要経費や工期の不足のためにアスベストのばく露や飛散の防止措置を講じることが困難になるような工事の発注が行われないよう、環境省、地方公共団体等とも連携して重点的に対応する。

(b) 建設現場の統括安全衛生管理の徹底

・新規に建設業に就労する者(新規参入者)等に対する安全衛生教育の確実な実施等、各建設現場の統括安全衛生管理の徹底を図る。

c 解体工事対策

今後、老朽化したインフラや建造物の解体・改修工事の増加が見込まれるため、以下の対策を講じる。

(a) アスベストばく露防止対策

・アスベスト含有建材を利用した建築物の解体も今後増加が見込まれるため、引き続きアスベストのばく露や飛散の防止を徹底するとともに、環境省、地方公共団体等と連携して、事前調査の実施と届出が適切になされるよう指導を行い、不適切な事案には厳正に対処する。また、建築物等の解体時等の事前調査の徹底、アスベスト除去工事を行う者等の能力向上、集じん・排気装置の整備に必要な情報の提供等を推進する。

(b) 解体工事の安全対策

・老朽化したインフラや建造物の解体・改修工事での安全対策を検討し、ガイドラインを示す。

d 自然災害の復旧・復興工事対策

・近年、台風、大雨、大雪、竜巻等の自然災害が頻発しており、今後も同様の自然災害の発生が予想されるため、自然災害によって被災した地域の復旧・復興工事での労働災害防止対策の徹底を図る。

② 製造業対策

a 機械災害防止対策の推進

・死亡災害や障害の残る災害につながりやすいはさまれ・巻き込まれ災害の防止を重点に、機械災害が発生した事業場における原因の究明と機械設備の本質安全化を図るとともに、機械設備の安全性に問題がある事案については、製造者等の機械設備の提供者による改善を促進する。

b 労働災害防止団体と連携した取組み

・団塊の世代の引退や経営環境の悪化などにより、安全衛生活動に長い歴史と実績のある製造業でも安全衛生体制の維持・確保が課題となっており、特に体制の弱い小規模事業場における安全衛生活動の底上げを図るため、中央労働災害防止協会による指導・援助活動を支援する。

イ 重点とする健康確保・職業性疾病対策

(現状と課題)

・健康面では、労災認定件数が増加している精神障害を防止するためのメンタルヘルス対策や、労災認定件数が減少していない脳・心臓疾患を防止するための過重労働対策に対して引き続き重点的取組が必要である。メンタルヘルス不調者を増やさないためには、労働者自身によるセルフケアをはじめ、管理監督者や産業保健スタッフによるケアなどにより、メンタルヘルス不調者の早期発見・早期治療を進めるとともに、メンタルヘルス不調になりにくい職場環境に改善していくことが必要である。また、厳しい社会経済情勢の中で、業務が複雑化、高度化し、さらに迅速化等が求められる中、過重労働による健康障害を防止し、労働者の心と体の健康を保持増進するとともに、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の観点からも長時間労働の抑制が求められている。

《脳・心臓疾患及び精神障害の労災認定件数の推移》

疾病

平成14年度

平成19年度

平成20年度

平成21年度

平成22年度

平成23年度

脳・心臓疾患

317(160)

392(142)

377(158)

293(106)

285(113)

310(121)

精神障害

100(43)

268(81)

269(66)

234(63)

308(65)

325(66)

(出典:厚生労働省調べ)※( )内は死亡者数の内数

・印刷業での胆管がんの集団発生を契機に、化学物質による職業がんの防止対策の強化が急務となっており、特定化学物質障害予防規則等による規制の対象となっていない化学物質による健康障害を効果的に防止するための対策が重要な課題となっている。

・業務上疾病の約6割を占める腰痛が、社会福祉施設、小売業、陸上貨物運送事業等の労働災害件数を押し上げており、中でも過去10年で発生件数が急増し、腰痛全体の2割を占める社会福祉施設に対して、特に重点的な取組が必要となっている。また、夏季を中心に依然として頻発している熱中症への対策の強化が喫緊の課題となっている。

《腰痛(労働災害)の発生件数の推移》

 

平成14年

平成19年

平成20年

平成21年

平成22年

平成23年

業務上疾病発生件数

7,502

8,684

8,874

7,491

8,111

7,779

腰痛件数

4,404

(58.7%)

5,287

(60.9%)

5,556

(62.6%)

4,870

(65.0%)

5,018

(61.9%)

4,822

(62.0%)

(出典:労働者死傷病報告(腰痛件数の( )内は業務上疾病に占める割合))

《職場における熱中症の発生件数(5年間の合計値)の推移》

 

平成14~18年

平成15~19年

平成16~20年

平成17~21年

平成18~22年

平成19~23年

熱中症件数

1,066

1,211

1,354

1,267

1,733

1,886

(出典:労働者死傷病報告)

① メンタルヘルス対策

(目標)

平成29年までにメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上とする。

(講ずべき施策)

a メンタルヘルス不調予防のための職場改善の取組

・メンタルヘルス不調の予防のためには、労働者自身によるセルフケアが重要であり、併せて日常的に労働者と接する管理監督者が適切に対応できるようにすることも重要である。このため、労働者自身によるセルフケアを促進するとともに、事業者による管理監督者と労働者への教育研修・情報提供の推進を図る。

・メンタルヘルス不調を予防する観点から、「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」を参考に、問題の現状や課題、取組例等について、ポータルサイト「あかるい職場応援団」等を通じて周知啓発を行い、パワーハラスメント対策の推進を図る。

・職場環境の改善・快適化を進めることにより、メンタルヘルス不調を予防するという観点から、職場における過度のストレスの要因となるリスクを特定、評価し、必要な措置を講じてリスクを低減するリスクアセスメントのような新たな手法を検討する。

b ストレスへの気づきと対応の促進

・労働者のストレスへの気づきを促すようストレスチェック等の取組を推進するとともに、事業場内での相談体制の整備を推進する。

c 取組方策の分からない事業場への支援

・職場でのメンタルヘルス対策は、ストレスへの気づきを促すための労働者への教育研修、職場復帰支援等を総合的に実施することが必要である。しかし、メンタルヘルス対策への取り組み方が分からないとしている事業場もある(20.1%(平成23年労働災害防止対策等重点調査))ため、事業者がこうした取組が行えるように支援措置を充実する。特に小規模事業場に対する支援の強化を図る。

d 職場復帰対策の促進

・事業場がメンタルヘルスに問題を抱える労働者の職場復帰支援に容易に取り組むことができるよう、メンタルヘルス対策支援事業等を通じて、職場復帰支援の事例を収集し、事例集としてまとめる。また、収集した職場復帰支援の事例について分析を行い、事業場の規模等に対応した職場復帰支援に係るモデルプログラムを作成する。これらを働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」等を通じて広く提供する。

・事業者がメンタルヘルス不調者の職場復帰支援に積極的に取り組むよう、事業者に対する支援措置を検討し、その充実を図る。

② 過重労働対策

(目標)

平成23年と比較して、平成29年までに週労働時間60時間以上の雇用者の割合を30%以上減少させる。

(講ずべき施策)

a 健康管理の徹底による労働者の健康障害リスクの低減

・事業者による労働者の健康診断の実施と労働時間の的確な把握・管理にも留意した事後措置等の健康管理を徹底し、恒常的な長時間労働を発生させない労務管理の推進と合わせ、労働者の過労に伴う健康障害のリスクを大幅に低減させる。

・事業者による健康管理の質の向上のため、健診結果、事後措置実施結果の効果的な活用手法を開発し、その実施を促進する。

b 働き方・休み方の見直しの推進

・不規則勤務や深夜労働の多い業種・職種に重点を置き、効果的な疲労の回復につながる休日・休暇の付与・取得を促進する。

・恒常的な長時間労働に従事する労働者の多い業種・職種に重点を置き、労使の取組を効果的に促すとともに、「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度に関する基準」の遵守を図ること等により、時間外労働の削減を推進する。

③ 化学物質による健康障害防止対策

(目標)

職場における化学物質管理の推進のため、平成29年までにGHS分類において危険有害性を有する全ての化学物質について、危険有害性の表示と安全データシート(SDS)の交付を行っている化学物質製造者の割合を80%以上とする。

(講ずべき施策)

a 発がん性に着目した化学物質規制の加速

有害性が明らかになっていない化学物質について、発がん性に重点を置いて、有害性評価とその結果等に基づく必要な規制を迅速に行う仕組みを構築する。

(a) 化学物質の有害性情報の集約化

・行政機関が自ら行う有害性調査の情報だけでなく、化学品メーカーなど、事業者が保有する有害性情報を広く収集し、蓄積・共有する仕組みを構築する。有害性情報の収集に当たっては、一定の基準を設け、事業者に対して情報の提供を義務づけることも検討する。

(b) 発がん性に重点を置いた有害性情報等に基づく化学物質の有害性評価と対応の加速

・特定化学物質障害予防規則等による規制のない化学物質について、有害性情報の活用、変異原性試験等の実施、がん原性試験の効率化等により、発がん性の可能性の評価を加速する。

・発がん性があると評価された化学物質は、速やかに職場での労働者のばく露の状況を把握してリスク評価を行い、労働者の健康障害防止のための規制の要否の判定を行う。

・新たに規制を行うこととなった化学物質は、局所排気装置等の発散抑制措置、作業環境測定基準等の策定などの作業環境管理対策とともに、防毒マスクの使用などの作業管理対策を速やかに策定し、徹底を図る。

(c) 発がん性が疑われる段階での対策の強化

・化学物質のうち、強い変異原性等が確認され、労働者の健康障害のリスクの考えられる物質は、健康障害防止のための技術指針を作成し、周知、措置の徹底を図る。

b リスクアセスメントの促進と危険有害性情報の適切な伝達・提供

・規制対象であるか否かにかかわらず、危険性又は有害性の高い化学物質が適切な管理のもとで使用されることを確保するため、化学物質に関するリスクアセスメントを促進する。中小規模事業場に対しては、専門的知識がなくても化学物質のリスクアセスメントが可能となるツールとして開発された「コントロール・バンディング」を周知・普及する。

・リスクアセスメント等による事業者の自主的な化学物質管理に資するため、危険有害性の表示と安全データシート(SDS)の交付の促進を図る。

・化学物質の製造、輸入から使用、廃棄に至る一連の流通経路を通じて、危険有害性情報を伝達・提供することができるよう、省庁横断的な取組により合理的な化学物質管理体制の構築を目指す。

c 作業環境管理の徹底と改善

・作業環境中の濃度測定方法が未確立の化学物質について、測定を行わなくても化学物質の性状や取扱量等の情報から作業環境中の濃度が推定できる手法等を活用した健康障害防止措置の普及を図る。

・リスクに基づく合理的な化学物質管理の一環として、発散抑制措置の性能要件化の普及を図るとともに、個人サンフラーによる作業環境中の化学物質濃度測定の導入を検討する。

④ 腰痛・熱中症予防対策

(目標)

■腰痛

平成24年と比較して、平成29年までに社会福祉施設の腰痛を含む労働災害による休業4日以上の死傷者の数を10%以上減少させる。

■熱中症

平成20年から平成24年までの5年間と比較して、平成25年から平成29年までの5年間の職場での熱中症による休業4日以上の死傷者の数(各期間中(5年間)の合計値)を20%以上減少させる。

(講ずべき施策)

④―1 腰痛予防対策

a 腰痛予防教育の強化

・特に腰痛が懸念される社会福祉施設(介護施設)、小売業、陸上貨物運送事業を重点として、雇入れ時教育に腰痛予防対策を盛り込むことを促進する。

b 介護労働者の腰痛予防手法・教育の普及(再掲)

・社会福祉施設(介護施設)に対して、県や市町村が行う介護事業者に対する研修会や指導と連携し、労働者に対する安全衛生教育の徹底、4Sの徹底による転倒災害等の防止、介護機器の導入による腰痛予防、職場における腰痛予防対策指針で定める腰痛の健康診断の普及・徹底を指導する。また、労働安全・衛生コンサルタント等の専門家を活用し、事業場に対して、腰痛を起こさない移動・移乗介助法や介護機器の具体的な活用方法等について訪問指導等を行う。

・上記の研修会や指導を通じて収集した好事例や情報に基づき、マニュアル等を見直し、普及するとともに、事業場に対する指導等に活用する。

・事業場で事業者が腰痛予防教育を行うことができるようにするための講習会を実施し、当該講習会について、業界団体や介護労働者養成機関に対して周知を依頼する。

c 重量物取扱い業務に対する規制の導入

・腰痛の発生要因となるリスクを除去する観点から、諸外国の状況等を踏まえて、重量物取扱い業務の腰痛予防に資する規制の導入を検討する。

④―2 熱中症対策

a 屋外作業に対する規制の導入

・熱中症の発生状況を勘案し、夏季の一定の時期の屋外作業について、作業環境の測定、評価と必要な措置を義務付けることを検討する。

b 熱中症対策製品の客観的評価基準の策定

・熱中症対策として労働現場で用いられている製品の中には、身体の一部の温度は下がっても、身体への負担軽減につながらないものもあるため、WBGT値(暑さ指数)の低減効果の観点から機能の評価基準の策定を行い、周知を行う。

⑤ 受動喫煙防止対策

(目標)

平成29年までに職場で受動喫煙を受けている労働者の割合を15%以下にする。

(講ずべき施策)

a 普及・啓発

・受動喫煙の健康への有害性に関する理解を図るための教育啓発と事業者に対する効果的な支援の実施により、受動喫煙防止対策を普及・促進する。

b 受動喫煙防止対策の強化

・職場での禁煙、空間分煙、その他飲食店、ホテル・旅館等のうち対応の困難な事業場では換気等による有害物質濃度の低減等の措置により、受動喫煙防止対策の実施を徹底する。

ウ 業種横断的な取組

(現状と課題)

・リスクアセスメントの導入は進んでいるが、中小規模事業場の取組が遅れている。また、リスクアセスメントは、概念としては安全衛生全体を含むものであるが、現状では安全分野が先行しており、労働衛生分野の取組が進んでいない。

《リスクアセスメントの導入状況》

事業場規模

1000人~

500~999人

300~499人

100~299人

50~99人

30~49人

10~29人

平成17年

69.5%

49.4%

34.1%

23.9%

26.6%

19.3%

19.3%

平成22年

86.6%

69.8%

64.7%

58.2%

45.6%

36.5%

29.7%

(出典:労働安全衛生基本調査)

・60歳以上の高年齢労働者の数は、平成13年から平成22年の10年間で476万人から754万人と、60%近く増加し、労働災害に占める60歳以上の割合も、平成14年から平成23年の10年間で、14.5%から20.5%に増加している。60歳以上の高年齢労働者は、労働災害発生率も高く、今後、高年齢労働者のさらなる増加が予想されるため、加齢による身体機能の低下や基礎疾患に関連する労働災害の発生防止を強化する必要がある。

《高年齢労働者数の推移》(単位:万人)

 

平成13年

平成15年

平成17年

平成19年

平成21年

平成22年

雇用者数

5,369

5,335

5,393

5,523

5,460

5,463

うち60歳以上

476

(8.9%)

510

(9.6%)

545

(10.1%)

624

(11.3%)

713

(13.1%)

754

(13.8%)

(出典:労働力調査、60歳以上の( )内は雇用者数に占める割合)

・労働者の3人に1人以上が非正規労働者となっているため、非正規労働者に関する安全衛生活動や労働災害の実態把握が必要となっている。

(講ずべき施策)

① リスクアセスメントの普及促進

a 中小規模事業場へのリスクアセスメントと労働安全衛生マネジメントシステムの導入促進

・中小規模事業場に対してリスクアセスメントの導入を促進するとともに、その導入状況を踏まえて、リスクアセスメントへの取組が進んでいる中小規模事業場に対して、労働安全衛生マネジメントシステムの導入を促進する。

・中小規模事業場が労働安全衛生マネジメントシステムを導入しやすくするため、分かりやすい解説を盛り込んだ「中小規模事業場向けマネジメントシステム導入マニュアル」を作成する。なお、中小規模事業場への労働安全衛生マネジメントシステムの導入促進に当たっては、労働災害防止団体や労働安全・衛生コンサルタント等を活用する。

b 建設業の元方事業者と関係請負人によるそれぞれの役割に応じたリスクアセスメントの実施促進

・建設業では、関係請負人の段階では対応が困難な事項について元方事業者がリスクアセスメントを行うなど、元方事業者と関係請負人がそれぞれの役割に応じたリスクアセスメントを行い、その結果に基づいて適切な措置を講じるよう、建設業労働災害防止協会と連携して指導する。

c 労働衛生分野のリスクアセスメントの促進

・規制対象であるか否かにかかわらず、有害性の高い化学物質が適切な管理のもとで使用されることを確保するため、化学物質に関するリスクアセスメントを促進する。

中小規模事業場に対しては、専門的知識がなくても化学物質のリスクアセスメントが可能となるツールとして開発された「コントロール・バンディング」を周知・普及する。(再掲)

・腰痛、熱中症等の労働衛生分野においてもマニュアル等の整備を進め、リスクアセスメントの実施を促進する。

② 高年齢労働者対策

a 身体機能の低下に伴う労働災害防止の取組

・高齢化や高齢者雇用の進展に伴う高年齢労働者数の増加により、高年齢労働者の労働災害が増加しているため、労働災害事例集等により、高齢者の割合の高い職場で、段差の解消、手すりの設置、必要な照明の確保などの職場の残留リスクの低減や、身体機能の低下を防ぐための運動が促進されるよう、労働災害防止団体と連携して指導する。

・高年齢労働者に対し、身体機能の低下や基礎疾患に伴う労働災害発生リスクの増大と労働者自身が取り組むべき事項について、教育を行うとともに広報により注意喚起を行う。

b 基礎疾患等に関連する労働災害防止

・基礎疾患等の健康障害リスクを持つ労働者に対して、労働者自身による健康管理を徹底するよう促すとともに、日常的な作業管理や労務管理の中で、本人の申告に基づいて健康状態を把握し、労働災害につながるような状態で作業に従事することのないよう、注意喚起する。

・体調不良が重篤な労働災害につながりやすい建設作業について、建設業労働災害防止協会等と連携し、作業開始前の健康状態のチェックやその結果に基づく適切な作業配置を促進する。

・定期健康診断結果に基づく保健指導や事後措置の中で、労働者自身の健康管理のみならず、基礎疾患が誘発しうる労働災害を防止する観点からも適切な指導・対応が必要である旨を、産業医や地域産業保健センター等を通じて周知徹底する。

③ 非正規労働者対策

a 非正規労働者に関する安全衛生活動や労働災害の実態把握と対策の検討

・パートやアルバイトなどの非正規労働者に関する雇い入れ時教育や健康診断の実施などの安全衛生活動の実態や労働災害の発生状況の把握を進め、その結果を踏まえて必要な対策を検討する。

b 就業形態の多様化を踏まえた責任の明確化

・建設業における一人親方や、製造業における業務請負など、就業形態が多様化・複雑化する中で、労働災害防止の責任の所在があいまいにならないよう、多様な就業形態が混在するような労働現場に対して指導を行う際には、労働災害防止の責任の明確化を図る。

(2) 行政、労働災害防止団体、業界団体等の連携・協働による労働災害防止の取組み

(現状と課題)

・労働災害は長期的には減少してきているものの、建設業や製造業では依然として重篤な労働災害が多発し、第三次産業の労働災害の増加等により、平成22年以降2年連続で労働災害が増加するという事態となっている。このような厳しい状況に対応するためには、行政だけでなく、労働災害防止団体、業界団体、民間の安全衛生専門家等が連携し合い、協働して取り組んでいくことが必要になっている。

・民間企業の経営状況は厳しく、社内で専門的に安全衛生を担う十分な人材を育成することが難しくなる中、こうした企業からの求めに応じて安全衛生業務を担う専門機関の育成と、企業が専門機関を活用しやすい仕組みの検討が必要となっている。

(講ずべき施策)

国は、上記(1)に掲げた対策に重点的に取り組むほか、民間団体、専門家、関係政府機関等と連携し合い、民間活動の活性化を図り、協働して取組を進めることにより、労働災害防止対策を推進する。

① 専門家と労働災害防止団体の活用

a 安全衛生分野の専門家の育成と活用

・安全衛生分野の専門家である労働安全・衛生コンサルタントを育成し、能力を向上させるとともに、専門的、技術的な業務については、労働安全・衛生コンサルタントをはじめとする高度な専門性を有する民間専門家が、事業場の安全衛生水準の向上に一層活用される仕組みを検討する。

・様々な業界で安全衛生活動に携わってきた人材を、業種を超えて有効に活用し、事業場の安全衛生水準を高めていく方策を検討する。

・専門家の知識やノウハウを活用しながら、各地域の安全衛生施策を推進していくために、安全衛生労使専門家会議の活用を促進する。

b 労働災害防止団体の活動の活性化

・労働災害をめぐる状況が厳しさを増す中、労働災害防止について最も専門的なノウハウを持つ専門家集団として、業界の労働災害防止活動の推進役としての役割、労働災害防止に関する情報収集、教育指導機関としての役割を担う労働災害防止団体の果たすべき役割はますます重要となっている。こうした役割を強化するため、行政機関が保有する労働災害関連情報の提供を進めるとともに、労働災害防止に資する活動に対しては、この計画の重点対策を考慮しながら引き続き必要な支援を行う。

・団塊の世代の引退や経営環境の悪化などにより、安全衛生活動に長い歴史と実績のある製造業でも安全衛生体制の維持・確保が課題となっており、特に体制の弱い小規模事業場における安全衛生活動の底上げを図るため、中央労働災害防止協会による指導・援助活動を支援する。(再掲)

・労働災害防止団体が、労働災害防止団体法の精神に則り、以下の活動を実施することを奨励する。

(a) 所管する業界に対する労働災害防止活動への技術的指導及び援助について、具体的計画を定め、自ら責任をもって実施すること。

(b) 事業者による自主的かつ体系的な安全衛生水準の向上を促進するため、所管する業種ごとに様々な技術上のガイドラインを策定し、安全管理士、衛生管理士などを活用して運用すること。

② 業界団体との連携による実効性の確保

・安全衛生施策の推進には、業界団体との協力関係が必要不可欠であり、特に第三次産業に重点を置いて、施策ごとに、主たる業界団体との関係づくり、具体的な施策の進め方についての協議等を行い、業界と協調的に取組を進める。

・全国又は地域の業界団体、労働組合等が自ら行う安全衛生分野の調査研究を支援する。

③ 安全衛生管理に関する外部専門機関の育成と活用

a 産業保健機関、産業保健専門職の質の向上とその活用

・メンタルヘルス対策を含めた産業保健活動について、産業医や産業保健専門職で構成された産業保健機関の質の向上を進め、こうした産業保健機関の活用を図る。

・労働者50人未満の小規模事業場における労働者の健康確保について、国による援助を充実することにより、小規模事業場の産業保健活動を促進する。

b 事業場の安全衛生業務での外部専門機関の活用

・企業で安全衛生を担ってきた人材や労働安全・衛生コンサルタントを含む、安全衛生に関する専門人材を集約化し、企業の安全衛生管理責任を側面支援する外部専門機関として育成するとともに、事業者が自らの事業者としての責任を果たす上で、外部専門機関を利用しやすい制度・環境の整備を図る。小規模事業場がこうした外部専門機関を活用する際には、必要な支援を行う。

(3) 社会、企業、労働者の安全・健康に対する意識変革の促進

(現状と課題)

・全国5,300万人の労働者の安全や健康にかかわる問題(家族も含めれば全国民的問題)であるにもかかわらず、安全衛生対策は、企業の中でも十分に共有されていない場合もあり、また一般社会でも認知度は必ずしも高いとはいい難い。

・企業が積極的に安全衛生対策を進めるためには、労働者の安全や健康を守らなければならないという経営トップの強い意識が重要である。

(講ずべき施策)

全ての事業者が、労働者の安全や健康に配慮した職場環境や労働条件を志向する社会を実現するため、業界や企業の安全衛生の水準を可視化し、社会的評価を受けられる仕組みを構築する。また、労働者や国民全体に直接働きかけを行い、安全衛生対策に関する社会全体の意識を高める。

① 経営トップの労働者の安全や健康に関する意識の高揚

・労働災害防止に向けた取組が低調な企業の経営トップに対して様々な手法、機会を活用して、労働者の安全や健康に関する意識付けを行う。

② 労働環境水準の高い業界・企業の積極的公表

a 労働環境水準の指標化

・労働災害の発生状況や労働災害防止のための取組だけでなく、労働者の健康に影響する項目を総合的・客観的に評価する指標を開発する。

・快適職場調査(ソフト面)チェックシートなど、既に構築された成果を含め、開発した指標を視覚化し、普及させる。

b 労働環境水準の高い業界や企業の積極的公表

・業界別や、個別企業の評価を労働災害防止団体や労働安全・衛生コンサルタントなどの専門家が行い、企業の同意を得て、良い評価を得た企業は積極的にホームページ等で公表することを推進し、求職者が労働環境の良い企業を容易に把握できるようにする。

③ 重大な労働災害を発生させ改善がみられない企業への対応

・法令違反により重大な労働災害を繰り返して発生させたような企業について、一定の基準を設け、着実に労働環境の改善を図らせるため、企業名と労働災害の発生状況をホームページ等で公表することを含めて検討する。

④ 労働災害防止に向けた国民全体の安全・健康意識の高揚、危険感受性の向上

a 不安全行動防止と危険感受性向上のためのキャンペーン活動

・労働者本人の無意識による不安全な行動が誘発するリスクや実際の労働災害事例について、職長も含めた現場の労働者に情報提供を推進することにより、労働者1人1人の安全に対する意識や危険感受性を高め、労働災害防止に結びつける。

b 国民全体の安全・健康意識の高揚

・国民全体の危険に対する感受性を高め、働く場での安全や健康を確保するためのルールを守ることについて、地域、職域、学校が連携して取り組む。

・大学教育における安全衛生教育のあり方について調査研究を行い、その結果を踏まえて、大学教育への安全衛生教育の取入れ方策を検討する。

(4) 科学的根拠、国際動向を踏まえた施策推進

(現状と課題)

・安全衛生施策は、科学的根拠に立脚した施策であり、科学研究の推進が必要不可欠であるが、そのための資源が十分に確保されているとはいい難い。

・安全衛生施策は、諸外国の知見や施策の動向を踏まえて、規制や基準の整合性等に配慮しながら進める必要がある。

(講ずべき施策)

① 労働安全衛生総合研究所等との連携による科学的根拠に基づく対策の推進

a 労働安全衛生総合研究所との一体的取組

・労働安全衛生総合研究所の調査研究と安全衛生施策との一体性、連携を強化し、科学的根拠に基づいた施策を推進する。

・安全衛生分野の研究について、労働安全衛生総合研究所が中核的役割を果たすよう機能強化を図る。

b 安全衛生関連研究の振興

・安全衛生分野の研究の裾野を広げるため、安全衛生研究振興のための予算や安全衛生研究に利活用できる有用な情報の確保に努める。

② 国際動向を踏まえた施策推進

・安全衛生に関する施策は、諸外国の知見や施策の動向を踏まえながら推進する必要があるため、労働安全衛生総合研究所が行う調査研究活動や、専門家、諸外国との交流を通じて諸外国の最新の知見、動向を把握し、施策や規制の国際的整合性を担保するよう努める。

(5) 発注者、製造者、施設等の管理者による取組強化

(現状と課題)

・労働安全衛生法令は、制定当時から元方事業者が一定の責任を負う制度が導入されており、特に建設業、造船業は特定元方事業者としての罰則を伴う義務が課されているものの、その他の業種における発注者等に対する責任は限定的であるため、外部委託によって安全衛生上の配慮義務や責任を逃れたり、過度に安価な発注を行って、受注者が必要な安全衛生対策のための経費を計上できないような状況が発生しないよう、発注者等による取組を強化する必要がある。

・機械の包括的安全基準により、産業現場で使用される機械等の本質安全化に向けた取組を推進してきたが、労働安全衛生法の中で、労働者に機械設備を使わせる事業者の責任にとどまらず、機械の製造者等の機械設備の提供者も一定の責任を負う仕組みについて検討していく必要がある。

・労働安全衛生法の体系下では、機械等の技術基準として多数の構造規格が定められているが、技術の進歩に応じた見直しが不断に行われるよう、日本工業規格(JIS)規格等をできるだけ引用し、より迅速な対応を図る必要がある。

・雇用形態が多様な労働者が混在していたり、雇用関係のない納入業者等が出入りするような場で労働災害を防止するためには、個々に事業者責任を規定する体系に加え、施設等の管理者の責任のあり方も検討していく必要がある。

(講ずべき施策)

事業者責任に加えて、発注者、製造者など、より上流の段階での安全衛生に対する取組を強化する。

① 発注者等による安全衛生への取組強化

a 発注者等による安全衛生への取組強化

・外部委託によって安全衛生上の配慮義務や責任を逃れたり、過度に安価な発注を行って、受注者が必要な安全衛生対策のための経費を計上できないような状況が発生しないよう、建設業以外についても、発注者による取組を強化する。

・施設等の管理者等が、自らが管理する施設等を第三者に使用させる場合の安全衛生管理責任のあり方を検討する。

b 荷主による取組の強化(再掲)

・荷主等が管理する施設での労働災害の防止対策も含め、貨物の運送を担当する陸上貨物運送事業者側と運送を依頼する側の役割分担をモデル運送契約書の普及等により明確にし、役割分担に基づいてそれぞれが実施すべき措置の実施を促進する。

c 建設工事発注者に対する要請(再掲)

・建設業の発注者に対し、仕様書に安全衛生に関する事項を盛り込むなど、施工時の安全衛生を確保するための必要な経費を積算するよう、また、関係請負人へその経費が確実に渡るよう、国土交通省と連携して対応する。また官公庁発注の公共工事において同様の取組が取られるよう広く要請する。

・特に、アスベストを含む建築物の解体工事では、必要経費や工期の不足のためにアスベストのばく露や飛散の防止措置を講じることが困難になるような工事の発注が行われないよう、環境省、地方公共団体等とも連携して重点的に対応する。

② 製造段階での機械の安全対策の強化

製造業では、依然として機械設備により障害を伴うような重篤な労働災害が多発していることに加え、小売業などでも食品加工機械等による労働災害が発生しているため、機械設備の本質安全化を推進する。

a 機械災害防止対策の推進(再掲)

・機械災害が発生した事業場における原因の究明と機械設備の本質安全化を図るとともに、機械設備の安全性に問題がある事案については、製造者等の機械設備の提供者による改善を促進する。

b 機械の本質安全化の促進

・機械の本質安全化を促進し、機械による労働災害をさらに減少させるためには、設計・製造段階及び改造時のリスクアセスメントとリスク低減措置の実施や危険性等の通知の徹底を図る必要があるため、労働現場で使用されるあらゆる機械設備について、製造者等の機械設備の提供者に対する当該措置を強化する。

・機械関連業界と連携して、機械の種類ごとの安全基準・規格を評価し、活用する仕組みの構築を検討するとともに、一定水準の安全基準・規格が確保された機械の使用を推奨する。

c 機械災害の公表制度の導入

・機械による労働災害の情報をもとに、機械の重大な欠陥により、重篤な労働災害が発生し、当該機械の販売先が特定できない等、同種災害を防止する必要がある場合は、発生した労働災害の内容、機械の製造者名等の公表や、製造者による機械の回収・改善を図る制度を検討する。

・ユーザーによる使用方法に明らかに問題があり、製造段階で対処できないような事案については、誤った使用方法により発生する労働災害の事例を具体的に公表し、広く周知することで同種災害を防止する。

d 機械等の技術基準の見直し

・機械等による労働災害を防止するため、技術の進歩等に合わせて機械等の技術基準に関する労働安全衛生関係法令を見直す。また、構造規格等の技術基準を設定する際は、技術基準の整合化等を促進するため、日本工業規格(JS規格)等を積極的に引用する。

③ 労働者以外の人的・社会的影響も視野に入れた対策の検討

・労働災害は、アスベストの周辺住民被害、クレーンの倒壊による一般家屋被害、足場倒壊による通行人被害、爆発火災災害による周辺被害等、時として周辺住民等にも影響を及ぼすため、労働者のみを守ればよいという考え方ではなく、産業現場で発生する事故によって生じる労働者以外の人的・社会的被害を防ぐという観点も考慮することとし、他省庁の施策との一層の連携を図る。

(6) 東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた対応

(現状と課題)

・平成23年3月に発生した東日本大震災により、東北地方の太平洋沿岸を中心に甚大な被害が発生し、その復旧・復興に向けた各種工事が本格化しているため、被災地の状況に応じた労働災害防止対策を徹底する必要がある。

・被災地の建設復興需要の急増により、建設業者、技術者、技能労働者等が被災地に集中し、その影響で被災地以外の地域でも人材が不足するなど全国的に人材の質の維持や現場管理に支障をきたすことが懸念される。

・東日本大震災の影響で事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた作業や、放射性物質が飛散した地域の除染作業での被ばく防止を徹底する必要がある。また、除染作業や生活基盤の復旧作業において、屋根などの高所からの墜落や重機災害などの労働災害防止対策を徹底する必要がある。

《東日本大震災の復旧・復興に関連する労働災害》

 

事故の型

墜落転落

転倒

激突

飛来落下

崩壊倒壊

激突され

はさまれ巻き込まれ

切れ

こすれ

その他

合計

業種

 

建設業

255

40

26

60

24

33

66

40

33

577

(死亡)

(15)

(0)

(0)

(2)

(2)

(2)

(5)

(1)

(3)

(30)

製造業

14

3

1

5

0

4

7

0

6

40

(死亡)

(1)

(0)

(0)

(1)

(0)

(1)

(0)

(0)

(0)

(3)

陸運業

4

0

0

0

0

2

1

0

3

10

(死亡)

(0)

(0)

(0)

(0)

(0)

(0)

(0)

(0)

(0)

(0)

商業

5

1

0

4

1

0

1

1

6

19

(死亡)

(0)

(0)

(0)

(0)

(1)

(0)

(0)

(0)

(0)

(1)

その他

12

7

1

7

2

4

3

1

8

45

(死亡)

(0)

(0)

(0)

(0)

(0)

(0)

(0)

(0)

(3)

(3)

合計

290

51

28

76

27

43

78

42

56

691

(死亡)

(16)

(0)

(0)

(3)

(3)

(3)

(5)

(1)

(6)

(37)

※東日本大震災が発生した平成23年3月11日~平成24年12月31日現在までの累積

(出典:死亡災害報告及び労働者死傷病報告)

(講ずべき施策)

① 東日本大震災の復旧・復興工事対策

a 復旧・復興工事の労働災害防止

・東日本大震災の被災地での復旧・復興工事の労働災害防止対策を着実に実施する。また、避難指示解除準備区域等で行われる除染作業や生活基盤の復旧作業での高所からの墜落防止、重機災害の防止等を着実に実施する。

b 建設現場の統括安全衛生管理の徹底(再掲)

・新規に建設業に就労する者(新規参入者)等に対する安全衛生教育の確実な実施等、各建設現場の統括安全衛生管理の徹底を図る。

② 原子力発電所事故対策

a 原発事故対応の体制整備

・東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、事故時に被ばく管理等を適切に実施するための被ばく線量管理体制の強化、線量計の確保等の準備状況を定期的に確認する。

b 原発事故対応作業と除染作業での放射線障害防止等

・東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた作業に従事する全ての労働者に対する被ばく防止対策、特別教育等の安全衛生管理の実施を徹底する。

・東京電力福島第一原子力発電所での緊急作業に従事した労働者に対して、メンタルヘルスケアを含めた健康相談等の長期的健康管理対策等を着実に実施する。

・除染特別地域等での除染作業、復旧・復興に携わる労働者の放射線障害防止対策を着実に実施する。