添付一覧
○要約筆記者の養成カリキュラム等について
(平成23年3月30日)
(障企自発0330第1号)
(各都道府県・各指定都市障害保健福祉主管部(局)長あて厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室長通知)
要約筆記者については、平成18年8月1日障発第0801002号「地域生活支援事業の実施について」(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)に基づき要約筆記者(奉仕員)を派遣する事業及び要約筆記奉仕員の養成を行っているところです。
平成21年の裁判員制度の発足などにより要約筆記者についても高い専門性をもった人材の確保が求められております。
このため、これまでの要約筆記奉仕員に加えて専門性の高い要約筆記者の養成を新たに行うこととし、要約筆記者の養成講習で使用する「要約筆記者養成カリキュラム」及び養成講習等における留意事項を定めたので、御了知の上、管内市町村及び関係団体への周知について特段の配慮をお願いします。
記
(実施主体)
1 要約筆記者の養成は、専門性が高いこと等から手話通訳者の養成と同様、都道府県が行うこととしている。
なお、これまで要約筆記奉仕員の養成を行っている市町村において養成を行うことは差し支えない。
(登録試験)
2 要約筆記者の養成講習を修了した者に対して、登録試験を行い、合格者については、要約筆記者としての登録を行うことなるが、やむを得ない事由により登録試験の実施が困難である場合は、当面、登録試験を行わず、養成講習の成績等を参考に要約筆記者としての一定の水準にある者について登録を行うことができることとする。
(登録者名簿の配布)
3 要約筆記者として登録した者については、名簿を作成することとし、要約筆記者が住所地以外の市町村での活動や市町村による広域派遣の際の便宜を図るため、管内の市町村に配布されたい。
(要約筆記奉仕員の養成)
4 今回の要約筆記者の制度化により、今後、要約筆記者が要約筆記者派遣事業の主な担い手となることから、要約筆記奉仕員の養成講習は行わないこととなる。
なお、要約筆記者に係る養成講習の準備が整うまでの間において、要約筆記奉仕員の養成講習が行われることを妨げるものではない。
(補習講習)
5 要約筆記者派遣事業の担い手の主体を要約筆記奉仕員から要約筆記者とするため、現在の要約筆記奉仕員については、補習講習等を行うことにより、要約筆記者へのステップアップを図るようお願いする。
なお、補習講習等を修了した者に対しては、2に準じて取り扱うこととなる。
要約筆記者養成カリキュラム
養成目標 |
聴覚障害、聴覚障害者、とりわけ中途失聴・難聴者の生活及び関連する福祉制度や権利擁護、対人援助等についての理解と認識を深めるとともに、難聴者等の多様なニーズに対応できる要約筆記を行うに必要な知識及び技術を習得する。 |
●必修科目
【講義関係】
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時間数 |
教科名 |
目的 |
内容 |
1 |
4 |
聴覚障害の基礎知識 |
聞こえのしくみと聴覚障害の原因、聴覚補償、聴覚障害者のコミュニケーションを知り、聴覚障害者の現状を理解する |
聞こえの仕組みと聴覚障害 聴覚補償 聴覚障害者のコミュニケーション 中途失聴・難聴者の現状と課題 |
2 |
4 |
要約筆記の基礎知識Ⅰ |
要約筆記の歴史や事業の位置づけを学び、要約筆記者の役割を理解する |
難聴者運動と要約筆記の歴史 要約筆記事業の位置づけ 通訳としての要約筆記 |
3 |
4 |
要約筆記の基礎知識Ⅱ |
要約筆記の目的達成のための三原則の考え方を学び、表記の重要性を理解する |
要約筆記の目的 要約筆記の三原則 要約筆記の表記 |
4 |
4 |
日本語の基礎知識 |
要約筆記に必要な日本語の基礎知識を学ぶ |
日本語の特徴 日本語の表記 日本語の語彙と用法 |
5 |
4 |
話しことばの基礎知識 |
話し言葉の特徴について理解し、削除・省略・短縮化など要約筆記に活用する方法を理解する |
話しことばと書きことば 話しことばの特徴と活用 |
6 |
2 |
伝達の学習Ⅰ |
コミュニケーションにおける伝達の意味を確認し、要約筆記への応用について理解する |
コミュニケーションの基礎理論 情報保障の基礎理論 |
7 |
2 |
要約の学習Ⅰ |
要約の学習を通じ効果的・効率的な伝達の実現について理解する |
要約の定義と意味 情報伝達における要約 |
8 |
6 |
社会福祉の基礎知識Ⅰ |
日本の社会福祉の歴史と現状を知り、障害者福祉について理解し、権利擁護としての要約筆記の役割を理解する |
日本国憲法と基本的人権の尊重 社会福祉の理念と歴史 障害者福祉の概要と施策の現状 聴覚障害者の福祉施策の現状 障害者権利条約 |
9 |
4 |
チームワークⅠ※ |
チームでの要約筆記の技術と考え方を学び、集団に対する情報保障技術について理解する |
使用機器及びネットワーク 各担当の役割 交代の意味と方法 チームでの動き方 |
10 |
4 |
ノートテイクⅠ※ |
ノートテイクでの要約筆記技術として個人に対する情報保障技術について理解する |
ノートテイクの方法 目的に応じた書き方 場面対応 利用者のニーズへの対応 |
11 |
4 |
対人援助Ⅰ |
中途失聴・難聴者の心理を踏まえ、要約筆記者が対人援助者として必要な基礎的な理論を学ぶ |
中途失聴・難聴者の臨床心理 カウンセリングの基礎理論 対人援助の基礎理論 |
12 |
2 |
要約筆記者のあり方Ⅰ |
要約筆記者としての倫理を学び、その専門性を理解する |
心構えと倫理 要約筆記者としての専門性 |
|
44 |
計 |
|
|
【実技関係】
|
時間数 |
教科名 |
目的 |
内容 |
1 |
12 |
要約筆記の実習 ※ |
要約筆記の基礎的な技術を身につける |
基本的な表記 基本的な要約技術 |
2 |
2 |
要約の学習Ⅱ |
文章構造を理解し要約の技術を身につける |
要約技術実習 |
3 |
2 |
伝達の学習Ⅱ |
伝達の基本的な技術を身につける |
伝達技術実習 |
4 |
6 |
チームワークⅡ ※ |
チームでの要約筆記の技術と考え方を学び、集団に対する情報保障技術を身につける |
チームワークの技術 |
5 |
8 |
ノートテイクⅡ ※ |
ノートテイクでの要約筆記技術として場面に応じた情報保障技術を身につける |
ノートテイクの技術 |
|
30 |
計 |
|
|
74 必修科目計
●選択必修科目(おおむね10時間以上を選択)
【講義関係】
|
時間数 |
教科名 |
目的 |
内容 |
1 |
1 |
社会福祉の基礎知識Ⅱ |
当該自治体の障害者福祉制度を理解する |
当該自治体の障害者福祉制度 |
2 |
1 |
対人援助Ⅱ |
対人援助についてより深く理解する |
観察技術 |
3 |
2 |
要約筆記者のあり方Ⅱ |
要約筆記者のあり方をより深く理解する |
社会福祉従事者としての専門性 |
4 |
4 |
聴覚障害運動と手話 |
聴覚障害者運動や手話通訳活動の歴史を理解する |
ろう運動史・ろう教育史 手話通訳の理論と実践 聴覚障害者の社会参加の実情 コミュニケーション支援の位置づけ |
5 |
2 |
二人書きおよび連係入力Ⅰ ※ |
要約筆記の方法である二人書き、連係入力の特性を理解する |
二人書きおよび連係入力の特徴 二人書きおよび連係入力の利点と注意点 |
|
10 |
計 |
|
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【実技関係】
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時間数 |
教科名 |
目的 |
内容 |
1 |
6 |
二人書きおよび連係入力Ⅱ ※ |
二人書きや連係入力の基本技術を身につける |
二人書き(手書き) 連係による入力(パソコン) |
2 |
6 |
演習(模擬要約筆記)※ |
講義、実技講習の各内容を、模擬的に実践することで、要約筆記の能力を高める |
講演会、会議等での全体投影 ノートテイク |
3 |
6 |
現場実習 ※ |
講義、実技講習の各内容を集団で実践することで、要約筆記の能力を高める |
集団(講演会、会議等)での全体投影 |
|
18 |
計 |
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(注) 科目名欄に※印のある科目は、手書きとパソコンでクラスを分けて行う。
(参考)
標準的な要約筆記者養成カリキュラム(学ぶ順番に整理したもの)
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教科名 |
内容 |
時間数 |
|
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聴覚障害の基礎知識 |
聞こえの仕組みと聴覚障害 聴覚補償 聴覚障害者のコミュニケーション 中途失聴・難聴者の現状と課題 |
4 |
講義 |
|
要約筆記の基礎知識Ⅰ |
難聴者運動と要約筆記の歴史 要約筆記事業の位置づけ 通訳としての要約筆記 |
4 |
講義 |
|
日本語の基礎知識 |
日本語の特徴 日本語の表記 日本語の語彙と用法 |
4 |
講義 |
|
要約筆記の基礎知識Ⅱ |
要約筆記の目的 要約筆記の三原則 要約筆記の表記 |
4 |
講義 |
|
要約筆記の実習 |
基本的な表記 |
6 |
実技 |
|
話しことばの基礎知識 |
話しことばと書きことば 話しことばの特徴と活用 |
4 |
講義 |
|
要約筆記の実習 |
基本的な要約技術 |
6 |
実技 |
|
社会福祉の基礎知識Ⅰ |
日本国憲法と基本的人権の尊重 社会福祉の理念と歴史 |
3 |
講義 |
選択必修 |
聴覚障害運動と手話 |
ろう運動史・ろう教育史 手話通訳の理論と実践 聴覚障害者の社会参加の実情 コミュニケーション支援の位置づけ |
4 |
講義 |
|
社会福祉の基礎知識Ⅰ |
障害者福祉の概要と施策の現状 聴覚障害者の福祉施策の現状 障害者権利条約 |
3 |
講義 |
選択必修 |
社会福祉の基礎知識Ⅱ |
当該自治体の障害者福祉制度 |
1 |
講義 |
|
伝達の学習Ⅰ |
コミュニケーションの基礎理論 情報保障の基礎理論 |
2 |
講義 |
|
伝達の学習Ⅱ |
伝達技術実習 |
2 |
実技 |
|
要約の学習Ⅰ |
要約の定義と意味 情報伝達における要約 |
2 |
講義 |
|
要約の学習Ⅱ |
要約技術実習 |
2 |
実技 |
|
チームワークⅠ |
使用機器及びネットワーク 各担当の役割 交代の意味と方法 チームでの動き方 |
4 |
講義 |
|
チームワークⅡ |
チームワークの技術 |
6 |
実技 |
|
ノートテイクⅠ |
ノートテイクの方法 目的に応じた書き方 場面対応 利用者のニーズへの対応 |
4 |
講義 |
|
ノートテイクⅡ |
ノートテイクの技術 |
8 |
実技 |
選択必修 |
演習(模擬要約筆記) |
講演会、会議等での全体投影 ノートテイク |
6 |
実技 |
選択必修 |
現場実習 |
集団(講演会、会議等)での全体投影 |
6 |
実技 |
選択必修 |
二人書きおよび連係入力Ⅰ |
二人書きおよび連係入力の特徴 二人書きおよび連係入力の利点と注意点 |
2 |
講義 |
選択必修 |
二人書きおよび連係入力Ⅱ |
二人書き(手書き) 連係による入力(パソコン) |
6 |
実技 |
|
対人援助Ⅰ |
中途失聴・難聴者の臨床心理 カウンセリングの基礎理論 対人援助の基礎理論 |
4 |
講義 |
選択必修 |
対人援助Ⅱ |
観察技術 |
1 |
講義 |
|
要約筆記者のあり方Ⅰ |
心構えと倫理 要約筆記者としての専門性 |
2 |
講義 |
選択必修 |
要約筆記者のあり方Ⅱ |
社会福祉従事者としての専門性 |
2 |
講義 |
(注) 選択必修は上記の「選択必修」から10時間以上を選択。(必修講義44時間、必修実技30時間、選択必修10時間以上、合計84時間以上)