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○薬剤師の行政処分に関する考え方の一部改正について

(平成25年3月14日)

(薬食総発0314第1号)

(各都道府県薬務主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局総務課長通知)

薬剤師の行政処分については、薬剤師法(昭和35年法律第146号)第8条第5項の規定及び「薬剤師の行政処分に関する考え方について」(平成21年4月13日付け薬食総発0413003号厚生労働省医薬食品局総務課長通知)に基づき、医道審議会薬剤師分科会薬剤師倫理部会に意見を求め、その内容について審議をしています。

これまで、診療報酬・調剤報酬の不正請求により保険薬剤師の登録の取消処分を受けた薬剤師に対する薬剤師法に基づく行政処分については、原則として不正の額に応じて行政処分の程度を決定してきましたが、平成25年2月5日に開催された医道審議会薬剤師分科会薬剤師倫理部会において、不正の額の多寡にかかわらず一定の処分とすることとされたことを受け、「薬剤師の行政処分に関する考え方」の一部を別添のとおり改正しましたので、お知らせいたします。

[別添]

薬剤師の行政処分に関する考え方

1.基本的考え方

薬剤師の行政処分については、公正、公平に行われなければならないことから、処分対象となるに至った行為の事実、経緯、過ちの軽重等を正確に判断する必要がある。そのため、処分内容の決定にあたっては、司法における刑事処分の量刑や刑の執行が猶予されたか否かといった判決内容を参考にすることを基本とし、その上で、薬剤師に求められる倫理に反する行為と判断される場合は、これを考慮して厳しく判断することとする。

薬剤師に求められる職業倫理に反する行為については、基本的には、以下のように考えられる。

(1) 薬剤師が、業務を行うに当たって当然に負うべき義務を果たしていないことに起因する行為については、国民の薬剤師に対する信用を失墜させるものであり、厳正な対処が求められる。その義務には、処方せん応需義務、処方せんに基づく適正な調剤、必要な医師等への疑義照会、薬剤交付時の情報提供、薬剤服用歴への真実の記載などといった病院・薬局における実務のほか、製造販売業における医薬品の品質管理業務や市販後の安全管理業務、医薬品製造業における製造管理業務、医薬品販売業等における管理業務など、薬剤師の職業倫理として遵守することが当然に求められている義務を含むものである。

(2) 薬剤師が、その業務を行う機会を利用したり、薬剤師としての身分を利用して行った行為についても、同様の考え方から処分の対象となる。

(3) また、薬剤師は、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保する資格であり、国民の生命・健康を預かる立場にあることから、業務以外の場面においても、他人の生命・健康を軽んずる行為をした場合には、厳正な処分の対象となる。

(4) さらに、薬剤師は、実際の業務を通じて、自己の利潤を不正かつ不正に追及する行為をなした場合については、厳正な処分の対象となるものである。

また、薬剤師によって不当な経済的利潤を求めて不正行為が行われたときには、業務との直接の関係を有しない場合であっても、当然に処分の対象となるものである。

2.事案別考え方

(1) 薬剤師法違反

(無資格調剤、処方せん応需義務違反など)

薬剤師が行う、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどる行為については、医療をはじめとして公衆衛生の向上及び増進など、国民の健康な生活の確保に直結する極めて重要なものであることから、薬剤師法において、薬剤師の資格・業務を定め、原則、薬剤師以外の者が調剤や医薬品の供給などを行うことを禁止し、その罰則規定は、国民の健康な生活に及ぼす危険性の大きさを考慮して量刑が規定されているところである。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するものであるが、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師自らが薬剤師法に違反する行為は、その責務を怠った犯罪であることから、重い処分とする。

(2) 医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法等その他の身分法違反

(無資格医業、無資格者の関係業務の共犯等)

医師や歯科医師が行う医業は、国民の健康に直結する極めて重要なものであることから、医師法、歯科医師法において、医師、歯科医師の資格・業務を定め、医師、歯科医師以外の者が医業、歯科医業を行うことを禁止し、その罰則規定は、国民保健に及ぼす危険性の大きさを考慮して量刑が規定されているところである。

また、保健師助産師看護師などの医療関係職種の身分法は、医師、歯科医師の補助者として医療に従事する者の資格・業務について規定した法律である。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するものであるが、薬剤師が医師法又は歯科医師法をはじめ他の身分法に違反する行為は、医療の担い手の一員として自らの任務を怠るものであるとともに、他の身分法を遵守せずに行った犯罪として重い処分とする。

(3) 薬事法違反

(医薬品の無許可販売又はその共犯、医薬品の製造販売及び製造に関する管理不行届等)

薬事法は、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保に必要な措置等を講じることにより、保健衛生の向上を図ることを目的としている。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師が薬事法に違反することは、基本的倫理を遵守せず、国民の健康を危険にさらす行為であることから、重い処分とする。

(4) 麻薬及び向精神薬取締法違反、覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反

(麻薬、向精神薬、覚せい剤及び大麻の不法投棄、不法譲受、不法所持、自己施用等)

麻薬、覚せい剤等に関する犯罪に対する司法処分は、一般的には懲役刑となる場合が多く、その量刑は、不法譲渡した場合や不法所持した麻薬等の量、施用期間の長さ等を勘案して決定され、累犯者については、更に重い処分となっている。

行政処分の程度は、基本的には司法処分に量刑などを参考に決定するが、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師が、麻薬等の薬効の知識を有し、その害の大きさを十分認識しているにも関わらず、自ら違反したということに対しては、重い処分とする。

(5) 殺人及び傷害

(殺人、殺人未遂、傷害(致死)、暴行等)

本来、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師が、殺人や傷害の罪を犯した場合には厳正な処分をすべきと考えるが、ここの事案では、その様態や原因が様々であることから、それらを考慮する必要がある。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に暴行、傷害等は、薬剤師としての立場や知識を利用した事案かどうか、事犯に及んだ情状などを考慮して判断する。

(6) 業務上過失致死(致傷)

ア 交通事犯(業務上過失致死、業務上過失傷害、道路交通法違反)

自動車等による業務上過失致死(傷害)等については、薬剤師に限らず不慮に犯し得る行為であり、また、薬剤師としての業務と直接の関連性はなく、その品位を損する程度も低いことから、基本的には戒告等の取り扱いとする。

ただし、救護義務を怠ったひき逃げ等の悪質な事案については、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、国民の健康な生活を確保する責務を負うべき薬剤師としての倫理が欠けていると判断される場合には、重めの処分とする。

イ 医療過誤・調剤過誤(業務上過失致死、業務上過失傷害)

国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師は、その業務の性質に照し、危険防止の為に薬剤師として要求される最善の注意義務を尽くすべきものであり、その義務を怠った時は医療過誤又は調剤過誤となる。

司法処分においては、当然、薬剤師としての過失の度合い及び結果の大小を中心として処分が判断されることとなる。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、明らかな過失による医療過誤や調剤過誤、さらには繰り返し行われた過失など、薬剤師として通常求められる注意義務が欠けているという事実については、重めの処分とする。

なお、薬剤師が従事する施設、機関、組織等の管理・業務の体制、他の医療従事者における注意義務の程度、生涯学習に努めていたかなどの事項も考慮して、処分の程度を判断する。

(7) 猥せつ行為

(強制猥せつ、売春防止法違反、児童福祉法違反、青少年育成条例違反等)

国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師は、倫理上も相応なものが求められるものであり、猥せつ行為は、薬剤師としての社会的信用を失墜させる行為であり、また、人権を軽んじ他人の身体を軽視した行為である。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、特に、自らの業務の機会に薬剤師としての立場を利用した猥せつ行為などは、国民の信頼を裏切る悪質な行為であり、重い処分とする。

(8) 贈賄罪

(収賄罪、贈賄罪等)

贈収賄は、薬剤師としての業務に直接関わる事犯ではないが、薬剤師としての品位を損ない、信頼感を損失せしめることから、行政処分に付することとし、行政処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。

なお、特に薬剤師としての地位や立場を利用した事犯など悪質と認められる事案は、重めの処分とする。

(9) 詐欺・窃盗

(詐欺罪、詐欺幇助、同行使等)

詐欺・窃盗は、薬剤師としての業務に直接関わる事犯ではないが、薬剤師としての品位を損ない、信頼感を喪失せしめることから、行政処分に付することとし、行政処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。

なお、特に、薬剤師としての立場を利用して、虚偽の薬剤を販売・授与するなどの方法により詐欺罪に問われるような行為は、業務に関連した犯罪であり、薬剤師の社会的信用を失墜させる悪質な行為であるため、重い処分とする。

(10) 文書偽造

(処方せんの偽造(私文書偽造)、虚偽有印公文書偽造、製造販売に係る業務管理文書偽造等)

文書偽造は、薬剤師としての業務に直接関わる事犯ではないが、薬剤師としての品位を損ない、信頼感を損失せしめることから、行政処分に付することとし、行政処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。

なお、特に、処方せんの偽造により医薬品を横流しした場合など、薬剤師としての立場を利用した事犯等悪質と認められる事案は、重めの処分とする。

(11) 税法違反

(所得税法違反、法人税法違反、相続税法違反等)

脱税は、薬剤師としての業務に直接関わる事犯ではないが、薬剤師としての品位を損ない、信頼感を損失せしめることから、行政処分に付することとし、行政処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。

なお、脱税は、一般的な倫理はもとより、医療の担い手である薬剤師としての職業倫理を欠くものと認められる。このため、処方せん調剤に基づく調剤報酬等による収入に係る脱税などの事業については、重めの処分とする。

(12) 診療報酬・調剤報酬の不正請求

(調剤報酬不正請求、保険薬剤師の取消し等)

診療報酬制度は、医療の提供の対価として受ける報酬であり、我が国の医療保険制度において重要な位置を占めており、これを適正に請求し受領することは、薬剤師に求められる職業倫理においても遵守しなければならない基本的なものである。

調剤報酬の不正請求は、非営利原則に基づいて提供されるべき医療について、薬剤師が医療の担い手としての地位を利用し、社会保険制度を欺いて私腹を肥やす行為であることから、調剤報酬の不正請求により保険薬剤師の登録の取消処分を受けた薬剤師については、当該健康保険法等に基づく行政処分とは別に薬剤師法による行政処分を行うこととする。

当該不正行為は、薬剤師に求められる職業倫理の基本を軽視し、国民の信頼を裏切り、国民の財産を不当に取得しようというものであり、我が国の国民皆保険制度の根本に抵触する重大な不正行為である。したがって、その行政処分の程度は、調剤報酬の不正請求により保険薬剤師の取消を受けた事案については、当該不正請求を行ったという事実に着目し、不正の額の多寡に関わらず、一定の処分とする。ただし、特に悪質性の高い事案の場合には、それを考慮した処分の程度とする。

また、健康保険法等の検査を拒否して保険薬剤師の取消しを受けた事案については、検査拒否という行為が、社会保険制度の下に医療を行う薬剤師に求められる職業倫理から到底許されるべきでないことから、より重い処分を行うこととする。

[別添]

薬剤師の行政処分に関する考え方

1.基本的考え方

薬剤師の行政処分については、公正、公平に行われなければならないことから、処分対象となるに至った行為の事実、経緯、過ちの軽重等を正確に判断する必要がある。そのため、処分内容の決定にあたっては、司法における刑事処分の量刑や刑の執行が猶予されたか否かといった判決内容を参考にすることを基本とし、その上で、薬剤師に求められる倫理に反する行為と判断される場合は、これを考慮して厳しく判断することとする。

薬剤師に求められる職業倫理に反する行為については、基本的には、以下のように考えられる。

(1) 薬剤師が、業務を行うに当たって当然に負うべき義務を果たしていないことに起因する行為については、国民の薬剤師に対する信用を失墜させるものであり、厳正な対処が求められる。その義務には、処方せん応需義務、処方せんに基づく適正な調剤、必要な医師等への疑義照会、薬剤交付時の情報提供、薬剤服用歴への真実の記載などといった病院・薬局における実務のほか、製造販売業における医薬品の品質管理業務や市販後の安全管理業務、医薬品製造業における製造管理業務、医薬品販売業等における管理業務など、薬剤師の職業倫理として遵守することが当然に求められている義務を含むものである。

(2) 薬剤師が、その業務を行う機会を利用したり、薬剤師としての身分を利用して行った行為についても、同様の考え方から処分の対象となる。

(3) また、薬剤師は、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保する資格であり、国民の生命・健康を預かる立場にあることから、業務以外の場面においても、他人の生命・健康を軽んずる行為をした場合には、厳正な処分の対象となる。

(4) さらに、薬剤師は、実際の業務を通じて、自己の利潤を不正かつ不正に追及する行為をなした場合については、厳正な処分の対象となるものである。

また、薬剤師によって不当な経済的利潤を求めて不正行為が行われたときには、業務との直接の関係を有しない場合であっても、当然に処分の対象となるものである。

2.事案別考え方

(1) 薬剤師法違反

(無資格調剤、処方せん応需義務違反など)

薬剤師が行う、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどる行為については、医療をはじめとして公衆衛生の向上及び増進など、国民の健康な生活の確保に直結する極めて重要なものであることから、薬剤師法において、薬剤師の資格・業務を定め、原則、薬剤師以外の者が調剤や医薬品の供給などを行うことを禁止し、その罰則規定は、国民の健康な生活に及ぼす危険性の大きさを考慮して量刑が規定されているところである。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するものであるが、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師自らが薬剤師法に違反する行為は、その責務を怠った犯罪であることから、重い処分とする。

(2) 医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法等その他の身分法違反

(無資格医業、無資格者の関係業務の共犯等)

医師や歯科医師が行う医業は、国民の健康に直結する極めて重要なものであることから、医師法、歯科医師法において、医師、歯科医師の資格・業務を定め、医師、歯科医師以外の者が医業、歯科医業を行うことを禁止し、その罰則規定は、国民保健に及ぼす危険性の大きさを考慮して量刑が規定されているところである。

また、保健師助産師看護師などの医療関係職種の身分法は、医師、歯科医師の補助者として医療に従事する者の資格・業務について規定した法律である。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するものであるが、薬剤師が医師法又は歯科医師法をはじめ他の身分法に違反する行為は、医療の担い手の一員として自らの任務を怠るものであるとともに、他の身分法を遵守せずに行った犯罪として重い処分とする。

(3) 薬事法違反

(医薬品の無許可販売又はその共犯、医薬品の製造販売及び製造に関する管理不行届等)

薬事法は、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保に必要な措置等を講じることにより、保健衛生の向上を図ることを目的としている。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師が薬事法に違反することは、基本的倫理を遵守せず、国民の健康を危険にさらす行為であることから、重い処分とする。

(4) 麻薬及び向精神薬取締法違反、覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反

(麻薬、向精神薬、覚せい剤及び大麻の不法投棄、不法譲受、不法所持、自己施用等)

麻薬、覚せい剤等に関する犯罪に対する司法処分は、一般的には懲役刑となる場合が多く、その量刑は、不法譲渡した場合や不法所持した麻薬等の量、施用期間の長さ等を勘案して決定され、累犯者については、更に重い処分となっている。

行政処分の程度は、基本的には司法処分に量刑などを参考に決定するが、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師が、麻薬等の薬効の知識を有し、その害の大きさを十分認識しているにも関わらず、自ら違反したということに対しては、重い処分とする。

(5) 殺人及び傷害

(殺人、殺人未遂、傷害(致死)、暴行等)

本来、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師が、殺人や傷害の罪を犯した場合には厳正な処分をすべきと考えるが、ここの事案では、その様態や原因が様々であることから、それらを考慮する必要がある。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に暴行、傷害等は、薬剤師としての立場や知識を利用した事案かどうか、事犯に及んだ情状などを考慮して判断する。

(6) 業務上過失致死(致傷)

ア 交通事犯(業務上過失致死、業務上過失傷害、道路交通法違反)

自動車等による業務上過失致死(傷害)等については、薬剤師に限らず不慮に犯し得る行為であり、また、薬剤師としての業務と直接の関連性はなく、その品位を損する程度も低いことから、基本的には戒告等の取り扱いとする。

ただし、救護義務を怠ったひき逃げ等の悪質な事案については、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、国民の健康な生活を確保する責務を負うべき薬剤師としての倫理が欠けていると判断される場合には、重めの処分とする。

イ 医療過誤・調剤過誤(業務上過失致死、業務上過失傷害)

国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師は、その業務の性質に照し、危険防止の為に薬剤師として要求される最善の注意義務を尽くすべきものであり、その義務を怠った時は医療過誤又は調剤過誤となる。

司法処分においては、当然、薬剤師としての過失の度合い及び結果の大小を中心として処分が判断されることとなる。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、明らかな過失による医療過誤や調剤過誤、さらには繰り返し行われた過失など、薬剤師として通常求められる注意義務が欠けているという事実については、重めの処分とする。

なお、薬剤師が従事する施設、機関、組織等の管理・業務の体制、他の医療従事者における注意義務の程度、生涯学習に努めていたかなどの事項も考慮して、処分の程度を判断する。

(7) 猥せつ行為

(強制猥せつ、売春防止法違反、児童福祉法違反、青少年育成条例違反等)

国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師は、倫理上も相応なものが求められるものであり、猥せつ行為は、薬剤師としての社会的信用を失墜させる行為であり、また、人権を軽んじ他人の身体を軽視した行為である。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、特に、自らの業務の機会に薬剤師としての立場を利用した猥せつ行為などは、国民の信頼を裏切る悪質な行為であり、重い処分とする。

(8) 贈賄罪

(収賄罪、贈賄罪等)

贈収賄は、薬剤師としての業務に直接関わる事犯ではないが、薬剤師としての品位を損ない、信頼感を損失せしめることから、行政処分に付することとし、行政処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。

なお、特に薬剤師としての地位や立場を利用した事犯など悪質と認められる事案は、重めの処分とする。

(9) 詐欺・窃盗

(詐欺罪、詐欺幇助、同行使等)

詐欺・窃盗は、薬剤師としての業務に直接関わる事犯ではないが、薬剤師としての品位を損ない、信頼感を喪失せしめることから、行政処分に付することとし、行政処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。

なお、特に、薬剤師としての立場を利用して、虚偽の薬剤を販売・授与するなどの方法により詐欺罪に問われるような行為は、業務に関連した犯罪であり、薬剤師の社会的信用を失墜させる悪質な行為であるため、重い処分とする。

(10) 文書偽造

(処方せんの偽造(私文書偽造)、虚偽有印公文書偽造、製造販売に係る業務管理文書偽造等)

文書偽造は、薬剤師としての業務に直接関わる事犯ではないが、薬剤師としての品位を損ない、信頼感を損失せしめることから、行政処分に付することとし、行政処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。

なお、特に、処方せんの偽造により医薬品を横流しした場合など、薬剤師としての立場を利用した事犯等悪質と認められる事案は、重めの処分とする。

(11) 税法違反

(所得税法違反、法人税法違反、相続税法違反等)

脱税は、薬剤師としての業務に直接関わる事犯ではないが、薬剤師としての品位を損ない、信頼感を損失せしめることから、行政処分に付することとし、行政処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。

なお、脱税は、一般的な倫理はもとより、医療の担い手である薬剤師としての職業倫理を欠くものと認められる。このため、処方せん調剤に基づく調剤報酬等による収入に係る脱税などの事業については、重めの処分とする。

(12) 診療報酬・調剤報酬の不正請求

(調剤報酬不正請求、保険薬剤師の取消し等)

診療報酬制度は、医療の提供の対価として受ける報酬であり、我が国の医療保険制度において重要な位置を占めており、これを適正に請求し受領することは、薬剤師に求められる職業倫理においても遵守しなければならない基本的なものである。

調剤報酬の不正請求は、非営利原則に基づいて提供されるべき医療について、薬剤師が医療の担い手としての地位を利用し、社会保険制度を欺いて私腹を肥やす行為であることから、調剤報酬の不正請求により保険薬剤師の登録の取消処分を受けた薬剤師については、当該健康保険法等に基づく行政処分とは別に薬剤師法による行政処分を行うこととする。

当該不正行為は、薬剤師に求められる職業倫理の基本を軽視し、国民の信頼を裏切り、国民の財産を不当に取得しようというものであり、我が国の国民皆保険制度の根本に抵触する重大な不正行為である。したがって、その行政処分の程度は、調剤報酬の不正請求により保険薬剤師の取消を受けた事案については、当該不正請求を行ったという事実に着目し、不正の額の多寡に関わらず、一定の処分とする。ただし、特に悪質性の高い事案の場合には、それを考慮した処分の程度とする。

また、健康保険法等の検査を拒否して保険薬剤師の取消しを受けた事案については、検査拒否という行為が、社会保険制度の下に医療を行う薬剤師に求められる職業倫理から到底許されるべきでないことから、より重い処分を行うこととする。