添付一覧
○血液透析器、血液透析濾過器及び血液濾過器承認基準の改正について(その2)
(平成25年3月1日)
(薬食発0301第5号)
(各都道府県知事あて厚生労働省医薬食品局長通知)
血液透析器、血液透析濾過器及び血液濾過器承認基準については、「血液透析器、血液透析濾過器及び血液濾過器承認基準の制定について」(平成17年4月1日付け薬食発第0401040号厚生労働省医薬食品局長通知)により示してきたところであるが、今般、日本工業規格であるT 3250が改正されたことに伴い、下記のとおり当該承認基準を改正したので、御了知の上、貴管内関係団体、関係業者等への周知方お願いしたい。
なお、本通知の写しを独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事長、日本医療機器産業連合会会長、米国医療機器・IVD工業会会長及び欧州ビジネス協会医療機器委員会委員長宛て送付することを申し添える。
記
1.改正の内容
血液透析器、血液透析濾過器及び血液濾過器承認基準について、日本工業規格T 3250が改正されたことに伴い、技術基準及び基本要件適合性チェックリストの記載整備等により、別添3のとおり承認基準を改正したこと。
なお、臨床試験の試験成績に関する資料の取扱いを示した別添1及び別添2は従前のとおりであること。
2.承認基準の不適合品の取扱いについて
承認基準の「適用範囲」に該当する血液透析器、血液透析濾過器及び血液濾過器であって、当該承認基準に適合しないものについては、個別に品質、有効性及び安全性が十分なものであることを示す資料が提出された場合には、当該資料に基づき審査を行うものであること。
3.既承認品の取扱いについて
既に承認基準に基づき承認を受けている血液透析器、血液透析濾過器及び血液濾過器のうち、改正後の承認基準に適合しないものについては、改正後の承認基準に適合させるための承認事項一部変更承認申請を別途行う必要はないこと。
なお、この場合において、当該品目について今後行われる承認事項一部変更承認申請は、「医療機器の製造販売承認申請について」(平成17年2月16日付け薬食発第0216002号厚生労働省医薬食品局長通知における「承認基準なし(承認基準不適合)」の取扱いとなることに留意すること。
4.適用期日
平成25年3月1日以降の承認申請から適用すること。ただし、平成26年2月28日までの間に承認申請された品目に係る承認基準については、なお従前の例によることができる。
別添1及び別添2 削除
別添3
血液透析器、血液透析濾過器及び血液濾過器承認基準
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「法」という。)第2条第5項から第7項までの規定により厚生労働大臣が指定する高度管理医療機器、管理医療機器及び一般医療機器(平成16年厚生労働省告示第298号。以下「クラス分類告示」という。)別表第1第711号に規定する中空糸型透析器、第712号に規定する積層型透析器、第741号に規定する血液濾過器及び第753号に規定する血液透析濾過器について、次のとおり承認基準を定め、平成30年5月10日から適用する。
血液透析器、血液透析濾過器及び血液濾過器承認基準
1.適用範囲
クラス分類告示に規定する、中空糸型透析器、積層型透析器、血液濾過器及び血液透析濾過器であること。
2.技術基準
別紙に適合すること。
3.使用目的又は効果
使用目的又は効果は、慢性又は急性腎不全など腎機能が著しく低下した症例を適用とし、尿毒症によって体内に貯留した水、尿毒物質を除去するものであること。
4.基本要件への適合性
基本要件基準への適合性を説明するものであること。
5.その他
構造、使用方法、性能等が既存の医療機器と明らかに異なる場合については、本基準に適合しないものとする。
別紙
血液透析器、血液透析濾過器及び血液濾過器承認基準における技術基準
1 適用範囲
この基準は、慢性又は急性腎不全など腎機能が著しく低下した症例を適用とし、尿毒症によって体内に貯留した水、尿毒物質を除去するために使用される血液透析器、血液透析濾過器及び血液濾過器(以下「血液透析器等」という。)のうち、既存品との同等性を有する血液透析器等に適用する。
2 引用規格
この基準は、次の規格又は基準(以下「規格等」という。)を引用する。
次に掲げる規格等以外であっても、これらの規格等と同等以上の場合には、承認基準への適合を示すために使用することができる。
・JIS T 3250:2013,血液透析器,血液透析ろ(濾)過器,血液ろ(濾)過器及び血液濃縮器
・JIS T 0993―1:2012,医療機器の生物学的評価―第1部:リスクマネジメントプロセスにおける評価及び試験
・ISO 10993―4:2017,Biological evaluation of medical devices -- Part 4:Selection of tests for interactions with blood
・JIS T 0993―7:2012,医療機器の生物学的評価―第7部:エチレンオキサイド滅菌残留物
・ISO 10993―18:2005,Biological evaluation of medical devices -- Part 18:Chemical characterization of materials
・薬生監麻発0215第13号:平成29年2月15日、滅菌バリデーション基準の改正について
3 定義
用語の定義は、JIS T 3250を参照する。但し、当該規格の血液濃縮器のみに関係する定義は除外する。
3.1 血液側(blood compartment)
該当機器の血液を流す部分。中空糸型機器においては、中空糸及びヘッダー部の容量を含む。
3.2 クリアランス(clearance)
単位時間当たりに溶質が完全に除去された溶液の量。
3.3 濾過(convection)
圧力勾配又は膜間圧力差による半透膜を介した溶質の移動。
3.4 透析液(dialysis fluid)
血液透析又は血液透析濾過したとき、血液中の溶質及び/又は水と交換するための溶液。
3.5 透析液側(dialysis fluid compartment)
血液透析器又は血液透析濾過器の透析液を流す部分。
3.6 拡散(diffusion)
濃度勾配による半透膜を介した溶質の移動。
3.7 濾液(filtrate)
半透膜間の圧力勾配によって血液から半透膜を介して該当機器の透析液側又は濾液側に移動する流体。
3.8 血液透析濾過器(haemodiafilter)
血液透析濾過を目的とする機器。
3.9 血液透析濾過(haemodiafiltration)
半透膜を介し拡散と濾過とを同時に行い、また、適切な生理的溶液との置換によって患者の血液中の溶質不均衡を是正するプロセス。
注記 通常、このプロセスは除水を伴う。
3.10 血液透析器(haemodialyser)
血液透析を目的とする機器。
3.11 血液透析(haemodialysis)
主に半透膜を介し拡散によって患者の血液中の溶質不均衡を是正するプロセス。
注記 通常、このプロセスは除水を伴う。
3.12 血液濾過器(haemofilter)
血液濾過を目的とする機器。
3.13 血液濾過(haemofiltration)
主に半透膜を介した濾過と適切な生理的溶液との置換によって患者の血液中の溶質不均衡を是正するプロセス。
注記 通常、このプロセスは除水を伴う。
3.14 表示(labeling)
記載、印刷、図表化又は電子化された次のものをいう。
―医療機器の容器及び包装に貼付又は印刷されたもの。
―医療機器に同封されているもので、製品識別に関係するもの。添付文書、技術的説明書及び取扱説明書。ただし、出荷案内書は含まない。
3.15 ふるい係数(sieving coefficient)
同時点での血漿と濾液との同一溶質の濃度比。
3.16 膜間圧力差(transmembrane pressure)(以下、TMPという。)
半透膜を介して生じる圧力差。
注記 実用的には、平均TMPは一般に次のいずれかである。
―血液透析器又は血液透析濾過器の、血液側の入口・出口における圧力の算術平均と透析液側圧力の算術平均との差。
―血液濾過器の、血液側の入口・出口における圧力の算術平均と濾液圧力との差。
3.17 限外濾過率(ultrafiltration coefficient)
膜の透水性。一般的には、時間当たりの圧力(水銀柱)あたりの流量(mL/mmHg/hr)で表現する。
4 材質及び形状・構造
本品は容器、中空糸膜又は平膜、血液ポート、血液ポート用キャップ、透析液ポート用キャップ、ポッティング材等からなる。
5 物理的又は化学的要求事項
5.1 全体的な構造
JIS T 3250の4.4.1「全体的な構造」に適合すること。
5.2 血液側の構造
JIS T 3250の4.4.2「血液側の構造」に適合すること。
5.3 血液透析器、血液透析濾過器及び血液濾過器の血液側接続部分
JIS T 3250の4.4.3「血液透析器,血液透析ろ過器及び血液ろ過器の血液側接続部分」に適合すること。
5.4 血液透析器及び血液透析濾過器の透析液側接続部分
JIS T 3250の4.4.4「血液透析器及び血液透析ろ過器の透析液側接続部分」に適合すること。
5.5 血液濾過器の濾液側接続部分
JIS T 3250の4.4.5「血液ろ過器のろ液側接続部分」に適合すること。
6 生物学的要求事項
JIS T 3250の4.1「生物学的安全性」に基づいて評価するとき、生物学的リスクが許容可能であること。ただし、性能評価のために行う血液適合性については、本項とは別に本承認基準の7.2「血液適合性」によること。
7 性能に関する要求事項
7.1 性能特性
JIS T 3250の4.5.1「血液透析器及び血液透析ろ過器のクリアランス」、4.5.2「血液透析ろ過器,血液ろ過器及び血液濃縮器のふるい係数」、4.5.3「限外ろ過率(UFR)」、4.5.4「血液側容量(充填量)」及び4.5.5「血液側の圧力損失」による。
7.2 血液適合性
7.2.1 基本的考え方
血液適合性については、ISO 10993―4により評価を行う。まずは、その原材料を用いることにより臨床上発生しうるリスクを推定し、リスクに応じた血液適合性の評価を行う。図1に血液適合性の評価の流れを、表1に推定されるリスク要因と評価すべき項目の基本的考え方を示す。
※既承認の血液透析器、血液濾過器又は血液透析濾過器で使用前例のある半透膜素材と同一の場合で、且つ一般的名称が異なる場合には(例:中空糸型透析器と血液透析濾過器)、使用方法の違いを考慮した評価を検討すること。
図1 血液適合性の評価の流れ
表1 推定されるリスク要因と評価すべき項目の基本的考え方
推定されるリスク要因 |
評価カテゴリ(試験又は試験以外)※ |
|||||
溶血性 |
血栓形成(in vitro) |
|||||
材料由来 |
機械的 |
血液凝固 |
血小板活性化 |
補体 |
血液学 |
|
1.溶出物特性が既存の医療機器と異なる |
● |
|||||
2.血液接触表面の性状が既存の医療機器と異なる |
● |
○ |
○ |
○ |
● |
※:●は「評価」、○は「必要に応じて評価」を意味しており、試験によらずとも毒性リスクが許容できるか否かは、ISO 10993―1、ISO 10993―18等のデシジョンツリーを用いて既存データ(自社基準を含む)により総合的に判断する。各評価項目について、他の試験結果等により評価できる場合には試験不要である。なお、推定されるリスク要因の2.については、機械的溶血性及び血液学では評価が不十分な場合には、血液凝固、血小板活性化及び補体のうち、必要なものを評価する。
7.2.2 血球損傷試験
7.2.1に示す機械的溶血性及び血液学の試験は、7.2.2.1から7.2.2.3に従って実施する。当該試験と同等以上の試験を行ってもよい。
7.2.2.1 試験系
表2に示す試験を行ったとき、赤血球数、白血球数、血小板数及び血漿遊離ヘモグロビン濃度の変化率は、製造販売業者の指定する範囲内又は既承認品と同等であること。
表2 試験液による単純循環試験
評価項目 |
赤血球数、白血球数、血小板数及び血漿遊離ヘモグロビン濃度 |
測定時間 |
試験前及び試験開始4時間後(必要に応じて中間サンプリングを実施) |
評価方法 |
製造販売業者が指定する血液流量で試験を行い、製造販売業者の指定する判断基準又は既承認品との同等性により評価を行う。 |
7.2.2.2 試験液
血液透析器等の試験品又は回路内で血液が通過する部分の試験液は、抗凝固処理したヒト、ウシ若しくはブタ等の全血又はこれを生理食塩液やリン酸緩衝液等で調製したものとする。
7.2.2.3 手順
試験品及び回路(製造販売業者が指定する試験品に適切な寸法のもの)を含めた試験回路を組み立て、製造販売業者が指定する血液流量で試験液を循環させる。既承認品との比較試験を行う場合には比較対照品を組み込んだ対照回路、必要に応じてブランク回路を組み立て、同様の試験を行う。
試験回路内の赤血球数、白血球数、血小板数及び血漿遊離ヘモグロビン濃度の経時的変化により、血球損傷の評価を行う。下表に試験条件の例を示す。
表3 試験条件の例
項目 |
試験条件 |
血液流量 |
製造販売業者が指定する最大血液流量 |
濾過流量※ |
製造販売業者が指定する濾過流量 |
試験液 |
ヘマトクリット値(32±3)%、蛋白濃度6.0±0.5g/dL |
※血液濾過器、血液透析濾過器の場合に行う。
8 安定性に関する要求事項
最終包装の滅菌済み血液透析器等の使用期限は、JIS T 3250の4.6「使用期限」による。
9 無菌性の保証
「滅菌バリデーション基準」又はこれと同等以上の基準に基づき、無菌性の担保を図ること。
一次包装で内容製品の無菌性を保証するものと、保護キャップで内部の無菌性を保証するものがある。
10 エチレンオキサイド滅菌における滅菌残留物試験
エチレンオキサイド滅菌を行った血液透析器等は、JIS T 0993―7に適合すること。
11 包装
11.1 一次包装
一次包装は、使用前に容易に破れるおそれがなく、通常の取扱い、輸送及び保管中に内容製品に損傷のおそれがないように包装する。
一次包装で無菌性を保証する製品の一次包装は、微生物の侵入を防止することができるものであること。また、一度開封したら、包装は簡単に再シールできず、開封されたことが明確に分かるものとする。
11.2 二次包装
二次包装は、取扱い、輸送、保管中に内容製品及び一次包装を適切に保護できるものであること。
12 表示
法で求められる表示事項に加え、本体、一次包装及び二次包装に対してそれぞれJIS T 3250の6.1「本体の表示」、6.2「一次包装(該当機器の個包装)」及び6.3「二次包装(外箱)」の事項を表示すること。但し、法上の記載事項と重複する場合にはこの限りではない。なお、JIST 3250の6.1に規定されている本体に表示するべき事項のうち、「製造販売業者の規定する該当機器の識別コード」及び「ロット番号」以外は、本体に表示することができない場合は、一次包装に表示することで差し支えないものとする。