添付一覧
○児童虐待の防止等のための医療機関との連携強化に関する留意事項について
(平成24年11月30日)
(/雇児総発1130第2号/雇児母発1130第2号/)
(各都道府県、各指定都市、各中核市、各保健所設置市、各特別区児童福祉・母子保健主管部(局)長あて厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長、母子保健課長通知)
児童虐待防止対策の推進については、平素より御尽力を頂き、感謝申し上げる。
さて、医療機関等との連携体制の整備については、「妊娠・出産・育児期に養育支援を特に必要とする家庭に係る保健・医療・福祉の連携体制の整備について」(平成23年7月27日付け雇児総発0727第4号、雇児母発0727第3号厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長、母子保健課長通知)等によりお願いしてきたが、先般、「『子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第8次報告)』を踏まえた対応について」(平成24年7月26日付け雇児総発0726第1号、雇児母発0726第1号厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長、母子保健課長通知。以下「平成24年7月通知」という。)において、児童相談所及び市区町村と医療機関との積極的な連携及び情報共有の必要性を示したところである。
これを踏まえ、児童相談所及び市区町村の児童福祉・母子保健等の関係部署、要保護児童対策地域協議会の調整機関における医療機関との連携について留意すべき事項を整理したので下記のとおり通知する。
貴職におかれてはこの内容を御了知いただくとともに、管下の児童相談所及び保健所並びに管内の市区町村及び医療機関等の関係機関に周知を図り、対応に遺漏のないよう努められたい。
なお、本通知については、医政局及び健康局並びに消費者庁、総務省自治行政局及び法務省刑事局と協議済みであることを申し添える。
また、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言である。
記
1 趣旨
医療機関は、妊産婦や児童、養育者の心身の問題に対応することにより、要保護児童や養育支援を特に必要とする家庭(要支援児童(*)又は特定妊婦(*)のいる家庭をいう。以下同じ。)を把握しやすい立場にある。児童虐待の発生予防、早期発見・早期対応のためには、児童相談所及び市区町村の児童福祉・母子保健等の関係部署等が、医療機関(小児科をはじめ、産科や精神科、歯科等の妊婦や児童、養育者が受診する医療機関)と積極的に連携することが重要である。
具体的には、児童相談所及び市区町村は、医療機関の情報から要保護児童(*)の家庭や養育支援を特に必要とする家庭を発見し、早期からの支援に繋げるとともに、関係機関と支援に必要な情報を共有し、児童の適切な養育環境の確保や養育者の育児負担の軽減のために必要な支援について協議し、適切な役割分担のもとで協働して家庭を支援することが必要である。そのため、児童相談所及び市区町村が医療機関との連携・情報共有体制を構築するに当たって留意すべき事項について示すものである。
(*) 要保護児童、要支援児童及び特定妊婦の定義
(児童福祉法(昭和22年法律第164号)第6条の3第5項及び第8項)
・要保護児童:保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童
・要支援児童:保護者の養育を支援することが特に必要と認められる児童(要保護児童を除く。)
・特定妊婦:出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦
2 児童相談所及び市区町村と医療機関との積極的な連携及び情報共有の推進
ア 児童相談所及び市区町村と医療機関との積極的な連携及び情報共有の必要性を踏まえ、平成24年7月通知では、以下の必要性を示したところである。
① 医療機関と連携するに当たっては、医療機関が、虐待事案に限らず養育支援が必要な家庭について幅広く相談できるよう、日頃からの連携体制や関係を構築する必要がある。
② 医療機関から一方的に情報提供を受けるだけでなく、必要な情報を共有し、適切な役割分担のもとで協働することが必要である。
③ 必ずしも全ての医療機関で虐待を疑う事例を数多く経験したり、院内の虐待対応の体制が整備されているわけではないため、都道府県及び市区町村が、地域の医療機関が虐待対応の体制を整え、児童相談所や市区町村と連携体制を構築できるように医療機関を支援することも必要である。
イ そのため、都道府県及び市区町村は、適切な役割分担の下、平成24年7月通知で示した以下の取組を推進されたい。
① 医療機関における虐待対応の向上が図られるよう、必要に応じ、保健所や関係部署等と連携の上、地域の医療機関に対し、児童虐待が疑われる場合の対応や要保護児童対策地域協議会の役割、医療機関の参画の意義、特定妊婦への支援の必要性、養育支援訪問事業等の子育て支援等について、情報提供や研修会の開催などにより周知し、理解が進むよう努めること。
② 要保護児童対策地域協議会等において、通告児童のみならず、医療機関において気にかかる児童についても相談を受けたり、対応が困難な事例に関する検討会を開催するなど、日頃からの情報交換や情報共有を行うこと。
なお、養育支援を特に必要とする家庭の把握については、小児科のみならず、産科や精神科、歯科等からの情報も有効であることから、これらの医療機関に対しても協力を求めること。
③ 「妊娠・出産・育児期に養育支援を特に必要とする家庭に係る保健・医療・福祉の連携体制の整備について」でお願いしている妊娠期からの養育支援を特に必要とする家庭の把握と継続的な支援のための連携体制の整備についても引き続き推進すること。
3 医療機関からの情報提供及び情報提供のあった事例への支援に係る留意点
ア これまでも、「妊娠・出産・育児期に養育支援を特に必要とする家庭に係る保健・医療・福祉の連携体制の整備について」などにおいて示しているとおり、児童相談所又は市区町村は、児童虐待の発生予防、早期発見・早期対応のため、医療機関から、養育支援を特に必要とする家庭の情報があった場合には、児童の状況の把握を行った上で、要保護児童対策地域協議会を活用するなどして医療機関を含む関係機関と必要な情報を交換・共有し、児童の適切な養育環境の確保や保護者の育児負担の軽減のために必要な支援の方針を協働して検討し、適切な役割分担の下で支援を行うこと。
イ 上記の支援につなぐため、児童相談所及び市区町村は、適切な役割分担の下、要保護児童対策地域協議会を活用するなどして、明らかな虐待事案のほか、虐待の可能性が懸念される家庭など虐待の発生予防のために養育支援が特に必要と考えられる家庭について医療機関に情報提供を求めること。また、円滑な対応が図られるよう、関係機関の間で医療機関から情報提供を受けた際の対応について、事前に医療機関等も含め協議し、共通認識を持つこと。
ウ 医療機関から情報提供があったときには、児童相談所や市区町村は一方的に情報提供を受けるだけでなく、要保護児童対策地域協議会の枠組みを活用するなどして医療機関での児童や保護者への対応に必要な情報を提供し、共有することに留意すること。具体的には、児童相談所又は市区町村の関与のある事例の場合は、過去の経緯や対応において留意すべき点など医療機関での児童や保護者への対応に必要な情報を医療機関に提供すること。他方、関与がない事例の場合であっても、児童相談所又は市区町村が今後の対応について検討するために必要な情報を医療機関から得るほか、医療機関の対応に必要な情報があれば、医療機関に提供すること。
4 医療機関から児童相談所又は市区町村への情報提供に係る守秘義務、個人情報保護等との関係
医療機関は、医師等の医療従事者の守秘義務や個人情報保護との関係から、児童相談所又は市区町村への情報提供について消極的になる場合がある。このような情報提供に当たっては、可能な限り患者の同意を得ることが基本であるが、同意がない場合でも、児童虐待の防止や対応のために必要かつ相当な範囲で行うことは基本的に法令違反とはならない。この場合の関係法令等の整理は次のとおりであるので、あわせて医療機関に周知されたい。
(1) 医療機関に係る守秘義務及び個人情報保護に係る規定
ア 守秘義務
医師等の医療従事者については、刑法(明治40年法律第45号)又は関係資格法により守秘義務規定が設けられており、職務上知り得た秘密を漏らした場合には刑事罰の対象とされる。ただし、法令による行為など正当な行為については違法性が阻却され、これらの規定違反は成立しない(同法第35条参照)。
イ 個人情報保護
① 一定規模以上の民間医療機関については、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「個人情報保護法」という。)により個人情報取扱事業者としての義務規定が設けられている。同法では、本人の同意がない場合の個人情報の目的外利用及び第三者提供が禁止されているが、除外規定として、法令に基づく場合、児童の健全な育成の推進のために特に必要である場合等が定められている。
具体的には、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」(平成16年12月24日厚生労働省。以下「ガイドライン」という。)において示されており、個人情報取扱事業者としての義務を負わない一定規模以下の民間医療機関についても、ガイドラインを遵守するよう努めることが求められている。
② 独立行政法人等が運営する医療機関については、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第59号。以下「独立行政法人等個人情報保護法」という。)に個人情報保護法と同様の定めがあり、本人の同意がない場合の個人情報の目的外利用及び第三者提供が禁止されているが、除外規定として、法令に基づく場合のほか、地方公共団体が法令の定める事務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、利用することについて相当な理由があると当該独立行政法人等が認めるときに当該地方公共団体に提供する場合等が定められている。
③ 地方公共団体が運営する医療機関については、当該地方公共団体の個人情報保護条例によることとなり、それぞれ規定が異なるが、一般的に除外規定として、法令に定めがあるとき等が定められている。
(2) 児童虐待防止に係る情報提供との関係
医療機関が児童虐待の防止や対応のために必要かつ相当な範囲で児童相談所や市区町村に情報提供することについては、次のとおり、正当な行為や除外規定に該当することから、基本的に守秘義務や個人情報保護に係る規定違反とはならない。
ただし、個人情報保護に関しては、独立行政法人等が運営する医療機関については独立行政法人等個人情報保護法に基づく当該独立行政法人等の判断による。また、地方公共団体が運営する医療機関については当該地方公共団体の個人情報保護条例の規定による。
ア 要保護児童対策地域協議会を活用できる場合
要保護児童対策地域協議会に参加する関係機関の間での情報交換は、児童福祉法第25条の2第2項の規定に基づく行為であり、必要かつ社会通念上相当と認められる範囲で行われる限り、正当な行為に当たる。よって、要保護児童対策地域協議会に参加する医療機関が児童相談所や市区町村に必要かつ相当な範囲で情報提供することは、守秘義務や個人情報保護に係る規定違反とはならない。
また、要保護児童対策地域協議会に参加していない医療機関であっても、要保護児童対策地域協議会は、同法第25条の3の規定に基づき、関係機関等に情報提供等の協力を求めることができる。よって、要保護児童対策地域協議会が医療機関に情報提供を依頼し、医療機関がこれに応じることは、法令に基づく正当な行為に当たり、守秘義務や個人情報保護に係る規定違反とはならない。
イ 要保護児童対策地域協議会を活用できない場合
① 要保護児童対策地域協議会に参加していない医療機関が、児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号。以下「児童虐待防止法」という。)第6条に基づく児童虐待に係る通告や児童福祉法第25条に基づく要保護児童に係る通告に該当する情報を提供することは、要保護児童対策地域協議会からの協力依頼がない場合であっても、法令に基づく正当な行為に当たり、守秘義務や個人情報保護に係る規定違反とはならない。
② また、児童虐待防止法第6条又は児童福祉法第25条に基づく通告には該当しないが、児童の安全確保や児童虐待の防止のため、児童相談所や市区町村の調査や養育支援が必要と考えられる要支援児童や特定妊婦について、医療機関が情報提供することは、医療機関には児童虐待防止法第5条第2項に基づき児童虐待の防止等に関する国及び地方公共団体の施策に協力する努力義務があり、児童福祉法第10条又は第11条に基づき児童相談所や市区町村が行う児童及び妊産婦の福祉に関する必要な実情把握等に協力するものであることから必要かつ社会通念上相当と認められる範囲で行われる限り、正当な行為に当たり、基本的に守秘義務に係る規定違反とはならない。
他方、個人情報保護に関しては、当該情報提供がなければ適切な措置を講じることができないなどの特別な事情がある場合、一定規模以上の民間医療機関にあっては、個人情報保護法第23条第1項第3号に規定する「児童の健全な育成の推進のために特に必要である場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」に該当し、同法違反とはならない。なお、ガイドラインにおいては、同号の例示として「児童虐待事例についての関係機関との情報交換」が挙げられており、明らかな虐待事案はもとより、要支援児童や特定妊婦の事案についても同様である。
5 児童相談所又は市区町村から医療機関への情報提供に係る守秘義務、個人情報保護等との関係
児童相談所又は市区町村が医療機関へ情報提供する場合の守秘義務や個人情報保護との関係については、「児童虐待対応の手引き」第1章6でも示しているように、児童虐待の防止や対応のために必要かつ相当な範囲で情報提供をすることは、次のとおり、基本的に法令違反とはならないことから、医療機関との間で積極的かつ適切に情報共有を図られたい。
(1) 児童相談所及び市区町村に係る守秘義務及び個人情報保護に係る規定
児童相談所及び市区町村の職員については、児童福祉法第61条及び地方公務員法第34条において守秘義務が規定されており、職務上知り得た秘密を漏らした場合には刑事罰の対象となるが、法令に基づく行為など正当な行為については違法性が阻却され、これらの規定違反は成立しない(刑法第35条参照)。
また、各地方公共団体において定められている個人情報保護条例においては、一般的に本人の同意がない場合の個人情報の目的外の利用及び第三者提供が禁止されているが、個人情報を取り扱う事務の目的の範囲内である場合には規定違反とはならない。
(2) 児童虐待防止に係る情報提供との関係
児童相談所や市区町村が児童虐待の防止や対応のために必要かつ相当な範囲で医療機関に情報提供することについては、次のとおり、正当な行為や目的内の提供等に該当することから、基本的に守秘義務や個人情報保護に係る規定違反とはならない。
ア 要保護児童対策地域協議会を活用できる場合
要保護児童対策地域協議会に参加する関係機関の間での情報交換は、児童福祉法第25条の2第2項の規定に基づく行為であり、必要かつ社会通念上相当と認められる範囲で行われる限り正当な行為に当たる。よって、児童相談所や市区町村が要保護児童対策地域協議会に参加する医療機関に必要かつ相当な範囲で情報提供することは、守秘義務に係る規定違反とはならない。
他方、個人情報保護条例については、各地方公共団体において規定が異なり、個人情報を取り扱う事務の目的の定めにもよることから一概には言えないが、目的内の提供に該当し得ると考えられ、該当する場合には個人情報保護に係る規定違反とはならない。また、この該当性に疑義がある場合であっても、児童福祉法第25条の2第2項に基づく行為であり、一般的な条例の除外規定である法令等に定めがあるときに該当することから、このような除外規定があれば規定違反とはならない。
イ 要保護児童対策地域協議会を活用できない場合
要保護児童対策地域協議会に参加していない医療機関であっても、児童相談所及び市区町村が児童福祉法第10条又は第11条等に基づき要保護児童等の事例に対応するためには、医療機関等の関係機関と情報を共有することが不可欠であり、必要かつ社会通念上相当と認められる範囲で行われる限り正当な行為に当たる。よって医療機関に必要かつ相当な範囲で情報提供する場合には基本的に守秘義務違反とはならない。
他方、個人情報保護条例においては、アと同じく目的内の提供に該当し得ると考えられ、該当する場合には個人情報保護に係る規定違反とはならない。また、この該当性に疑義がある場合には、個人情報取扱の利用目的に係る関係規定を整備すること、公益上特に必要があるとき等の除外規定に該当するかの検討を行い、必要に応じて各自治体の個人情報保護審査会等に係る手続を経ることなどにより、関係機関との情報提供・共有が可能となるよう対応されたい。
6 要保護児童対策地域協議会への参加要請
ア 上記のとおり、児童虐待の防止や対応のために必要な範囲での情報提供・共有は、基本的に守秘義務や個人情報保護に係る規定違反とはならないが、個人情報の取扱いの範囲をより明確にするとともに、関係機関との情報共有や連携を円滑にしてより適切な支援を行うため、市区町村は、可能な限り、管内の医療機関が要保護児童対策地域協議会に参加するよう努められたい。
イ また、医療機関が要保護児童対策地域協議会に参加できない場合には、市区町村は、要保護児童対策地域協議会として、要保護児童対策地域協議会に参加できない医療機関との間で個別事案に関する情報提供・共有の協力についての枠組みを取り決めておくことが望ましい。具体的には、要保護児童対策地域協議会から医療機関に対し包括的に情報提供を依頼し、医療機関は情報提供を行うこと、医療機関における情報共有の範囲を定めることなどについて、医療機関等と協議しておくことが想定される。
ウ さらに、広域から患者が受診する医療機関については、都道府県の児童福祉主管部局や児童相談所が主体となって、当該医療機関に都道府県の設置する要保護児童対策地域協議会への参加を求め、情報提供に関して協議することなどにより、協力を得られるよう取り組まれたい。
7 児童相談所又は市区町村から医療機関に提供された個人情報の取扱い
児童相談所又は市区町村においては、医療機関と個別事例の支援に係る情報の管理について協議、調整しておく必要があると考えられる。特に、医療機関が、患者本人等から、「診療情報」等の個人情報の提供等を求められた場合の取扱いについては、以下の点に留意されたい。
(1) 患者本人等から「診療情報」の提供を求められた場合の取扱い
「診療情報」とは、「診療情報の提供等に関する指針」(平成15年9月12日付け医政発第0912001号厚生労働省医政局長通知)において、「診療の過程で、患者の身体状況、病状、治療等について、医療従事者が知り得た情報」とされている。このような「診療情報」に該当する情報の提供を求められた場合、「診療情報の提供等に関する指針」により判断することとなるが、「診療情報」の提供が、①第三者の利益を害するおそれがあるとき、②患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれがあるときは、「診療情報」の全部又は一部を提供しないことができること。
なお、児童虐待対応に係る医療機関と児童相談所又は市区町村とのやり取りの経過(いつ、誰に情報提供をしたか等。)など診療の過程以外で医療従事者が知り得た情報は「診療情報」には該当せず、請求対象とはならないこと。
(2) 患者本人等から「診療情報」を含む個人情報の開示を求められた場合の取扱い
医療機関が患者本人等から「診療情報」を含む個人情報の開示を求められた場合は、個人情報保護法及び「診療情報の提供等に関する指針」等の規定により判断することになる。
この場合、医療機関と児童相談所又は市区町村とのやり取りの経過等の「診療情報」以外の情報は個人情報には該当するため、開示の請求対象となるが、「診療情報」を含む個人情報については、7(1)①、②又は個人情報保護法第25条第1項に規定されている①本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合、若しくは②当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合に該当するときには開示しないことができること。
なお、独立行政法人等が運営する医療機関については、独立行政法人等個人情報保護法に基づく当該独立行政法人等の判断による。また、地方公共団体が運営する医療機関については当該地方公共団体の個人情報保護条例の規定による。
8 臓器提供に係る児童に関する児童相談所の関与の確認
臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律(平成21年法律第83号)附則第5項では、政府は、虐待を受けた児童から臓器が提供されることのないよう、虐待が行われた疑いがあるかどうかを確認し、及びその疑いがある場合に適切に対応するための方策に関し検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる旨規定されており、法律の趣旨として、虐待を受けた児童の臓器が提供されるべきではない旨が明確にされている。
これを踏まえ、医療機関で児童からの臓器提供が検討される場合、医療機関は、当該児童について虐待が行われた疑いがあるかどうかを確認する必要があり、そのためには、関係する児童相談所における当該児童に係る虐待相談対応の有無等について照会することも想定される。
このため、都道府県等の児童福祉主管部局や児童相談所では、臓器提供者となる可能性がある児童に関し、過去及び現在の児童相談所による虐待相談対応の有無等について児童相談所に照会があった場合に円滑に対応できるよう、照会の方法や個人情報保護条例上の整理等について事前に関係部署と協議しておく必要がある。都道府県等の衛生主管部局や医療機関から協議への協力を求められた場合には協力するようお願いする。特に、個人情報保護条例については、あらかじめ個人情報の第三者提供に係る除外規定のいずれの条項に該当するか整理することや、必要に応じてあらかじめ個人情報保護審査会の諮問・答申手続により整理することなどが必要となる。
また、協議結果については、関係機関において認識が共有される必要があることから、児童福祉主管部局から管下の児童相談所に周知されたい。同時に、衛生主管部局から関係医療機関等へ周知が図られることから、児童福祉主管部局及び児童相談所においても、衛生主管部局が開催する会議への参加など、衛生主管部局が行う周知のための取組にも協力されたい。