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○「除染に関する緊急実施基本方針」及び「市町村による除染実施ガイドライン」に基づく除染作業における労働者の放射線障害防止措置について

(平成23年9月9日)

(基安発0909第1号)

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部長通知)

(公印省略)

東日本大震災により発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により生じた放射性物質による汚染に関し、別添1のとおり、平成23年8月26日に、原子力災害対策本部から、「除染に関する緊急実施基本方針」及び「市町村による除染実施ガイドライン」(以下、「ガイドライン」という。)が示されたところである。

ガイドラインは、追加被ばく線量がおおむね年間1から20ミリシーベルトまでの間の地域における除染について、市町村が実施すべき事項をとりまとめたものであり、作業の危険性が高い、建設機械等が必要となる、線量率が高い場合等においては、専門事業者に依頼して除染を実施すべきとされている。

ついては、当該除染作業に労働者を就かせる場合の措置について、当面の間、下記のとおりとするので、関係事業場に対する指導等に遺漏なきを期されたい。

なお、別添2により、岩手県知事、宮城県知事、福島県知事、茨城県知事、栃木県知事、群馬県知事、埼玉県知事、千葉県知事及び神奈川県知事に対して通知していることを申し添える。

1 事業者は、除染作業を行う場合、ガイドラインの4の(2)「事業として除染を行う方の線量管理方法」に定める事項を適切に実施すること。

2 事業者は、除染作業を行う場合、上記1の措置に加え、次に掲げる措置を実施すること。

(1) 個人線量計により測定した外部被ばく線量を1日ごとに記録し、これを30年間保存すること。また、日々の被ばく線量は1日ごとに、累計の被ばく線量は1月ごとに労働者に文書で通知すること。

(2) (1)の測定結果により、男性労働者及び妊娠の可能性のない女性労働者については年間20ミリシーベルト、妊娠の可能性のある女性労働者については、3月で5ミリシーベルトを超えないよう管理すること。

(3) 作業に従事する労働者に、性能の区分がRL3又はRS3の防塵マスク(取り替え式防じんマスクで粒子捕集効率が99.9%のもの。空気中の蒸気が多い場合などにはRL3を用いること。)など、作業に応じて有効な呼吸用保護具(注1)を着用させること。また、呼吸用保護具の顔面への密着性の良否を確認すること。

(4) 作業に従事する労働者に、作業場所で喫煙・飲食させないこと。

(5) 除染作業による汚染の程度に応じて、汚染防止のために有効な保護衣類、手袋、履物を備え、作業に従事する労働者に使用させること。

(6) 作業に従事する労働者に対し、あらかじめ、①放射性物質又はこれらによって汚染された物に関する知識、②除染の作業方法に関する知識、③除染で使用する機器、器具等の構造及び取扱方法に関する知識、④電離放射線の生体に与える影響、⑤関係法令の知識、⑥除染の作業の方法及び使用する機器、器具の取扱についての教育を実施すること。

(7) 除染作業に常時従事する者に対しては、電離放射線特殊健康診断(注2)と同等以上の健康診断を6月以内ごとに1回、定期に実施すること。

(注1) 「防じんマスクの選択、使用等について」(平成17年2月7日付け、基発第0207006号)

(注2) 電離放射線障害防止規則(昭和47年9月30日労働省令第41号)第56条に定める健康診断

別添1

除染に関する緊急実施基本方針

平成23年8月26日

原子力災害対策本部

[1.本方針の目的]

① 東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故により生じた放射性物質による汚染に対する不安を一日でも早く解消するため、国は、県、市町村、地域住民と連携し、放射性物質による汚染の除去に責任を持って取り組んでまいります。

② 現在、国会にて「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法案」が審議されています。今後、同法案が成立した場合には、政府は、同法案の枠組みに基づき計画的かつ抜本的に除染を推進することとなります。

しかし、同法案の施行にあたっては、区域の設定や技術基準の策定などを慎重に行う必要があるため、実際に同法に基づく抜本的な除染措置が実施できるのは、一定期間経過後にならざるを得ません。

③ しかしながら、除染は直ちに取り組む必要のある喫緊の課題であり、同法案に基づく除染の枠組みが動き出すまでの間、まずは原子力災害対策本部が除染の緊急実施に関する基本方針を示し、県、市町村、地域住民と連携して除染の取組を推進します。

④ なお、この緊急実施基本方針は同法案の趣旨と整合的なものであり、緊急実施基本方針に定める内容は、同法案が成立しその枠組みが立ち上がり次第、順次移行することとなります。

[2.除染実施における暫定目標]

① 国際放射線防護委員会(ICRP)の2007年基本勧告及び原子力安全委員会の「基本的考え方」1を踏まえ、緊急時被ばく状況2(現在の運用では、追加被ばく線量3が年間20ミリシーベルト以上)にある地域を段階的かつ迅速に縮小することを目指します。

1 「今後の避難解除、復興に向けた放射線防護に関する基本的考え方について」(平成23年7月19日原子力安全委員会)

2 「緊急時被ばく状況」とは、原子力事故または放射線緊急事態の状況下において、望ましくない影響を回避もしくは低減するために緊急活動を必要とする状況。

3 「追加被ばく線量」とは、自然被ばく線量及び医療被ばくを除いた被ばく線量を指すものとする。

② 長期的な目標として、現存被ばく状況4(現在の運用では年間20ミリシーベルト以下の地域)にある地域においては追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下となることを目標とします。

4 「現存被ばく状況」とは、緊急事態後の長期被ばくを含む、管理に関する決定を下さなければならない時に、既に存在している被ばく状況。

③ 除染実施の具体的な目標として、放射性物質に汚染された地域において、2年後までに、一般公衆の推定年間被ばく線量を約50%減少した状態を実現することを目指します。

原子力災害対策本部が実施した試算によれば、放射性物質の物理的減衰及び風雨などの自然要因による減衰(ウェザリング効果)によって、2年を経過した時点における推定年間被ばく線量は、現時点での推定年間被ばく線量と比較して約40%減少します。

除染によって少なくとも約10%を削減することで上記50%減少を実現するとともに、更なる削減の促進を目指します。

④ また、放射線の影響が成人より大きい子どもが安心して生活できる環境を取り戻すことが重要であり、今後2年間で学校、公園など子どもの生活環境を徹底的に除染することによって、2年後までに、子どもの推定年間被ばく線量がおおむね60%減少した状態を実現することを目指します5

原子力災害対策本部が実施した試算によれば、放射性物質の物理的減衰及び風雨などの自然要因による減衰(ウェザリング効果)によって、2年を経過した時点における子どもの推定年間被ばく線量は、現時点での推定年間被ばく線量と比較して約40%減少します。

除染によって少なくとも約20%を削減することで上記60%減少を実現するとともに、更なる削減の促進を目指します。

5 現時点の空間線量率が毎時3.8マイクロシーベルト(年間累積被ばく線量20ミリシーベルト)の地点を前提に計算。また、現時点より以前に既に除染が行われている場合には、除染を行う前の線量水準からの比較で目標の達成を検証する。

⑤ 上記目標は、除染を緊急的に実施するために、限られた情報に基づき決定した暫定的な目標です。今後、詳細なモニタリングとデータの蓄積、子どもの実際の被ばく線量の実測調査、除染モデル事業などを通じ精査を重ね、定期的に目標を見直します。

[3.除染の進め方]

(1) 基本的考え方

(ア) 国は責任をもって除染を推進します。

(イ) 国は、安全かつ円滑に除染が行われるよう環境を整備するため、財政措置、除染・測定機器の効率的な整備・運用、人材育成、専門家派遣などの支援を実施します。

また、国は、特に高い線量の地域も含め、各地域でのモデル事業を通じて、効果的な除染方法、費用、考慮事項など除染に必要となる技術情報(「除染技術カタログ」)などを継続的に提供します。

(ウ) 国は、除染に伴って生じる放射性物質に汚染された土壌等の処理について責任を持って対応します。

(エ) 上記の取組を進めるに当たり、国は、国際社会と連携・協力しつつ、国内外の叡智を結集して対応します。

(2) 線量の水準に応じた地域別の対応

(ア) 避難指示を受けている地域

① 事故発生から1年の期間内に積算線量が20ミリシーベルトを超えるおそれがあるため避難指示を受けている地域(計画的避難区域)では、除染の実施に当たって高いレベルの技術が必要であるとともに、作業員の安全の確保に十分な配慮が必要であるため、避難指示が解除され住民が帰還するまで、県及び市町村と連携の上、国が主体的に除染を実施します。

② 現在の警戒区域についても、自治体機能自体が移転していること、立入りが制約されていることから、避難指示が解除され住民が帰還するまで、県及び市町村と連携の上、国が除染を実施します。

ただし、これらの区域の市町村が希望する場合には、安全性が確保されている前提で、市町村自らが除染計画を作成し実施することも可能であり、国は財政支援、専門家派遣などを通じて全面的に協力します。

③ これらの区域の中でも、特に追加被ばく線量が年間20ミリシーベルトを大幅に超える区域においては、まずは、国が除染のモデル事業を実施することで、高線量地域における効率的・効果的な除染技術や作業員の安全を確保するための方策を確立します。

(イ) その他追加被ばく線量がおおむね年間1から20ミリシーベルトの間の地域

① 追加被ばく線量が年間20ミリシーベルト以下の地域は、放射性物質による汚染が及んでいるものの、行政機能は域内にあり住民も居住しており、個別事情や住民のニーズを把握しているコミュニティ単位での計画的な除染が最も効果的であると考えられます。

② 市町村において、「市町村による除染実施ガイドライン」に基づき、汚染の状況や住民のニーズに応じた除染計画を策定していただき、国はその円滑な実施を支援してまいります。

なお、市町村が除染計画を策定するにあたり、他の主体が管理する公的施設の除染が含まれる場合には、その管理主体と連携して取り組むことが望まれます。

[除染計画で検討すべき事項]

1.目標設定

2.除染対象毎の方針及び方法の決定

3.実施主体

4.仮置場の確保

③ 年間1~20ミリシーベルトの間の地域の中でも比較的線量の高い地域においては、汚染状況を改善するためには面的な除染が必要と考えられます。

他方、比較的線量が低い区域においては、放射性物質の物理的減衰及び風雨などの自然要因による減衰(ウェザリング効果)などを勘案すると、基本的に面的な除染は必要ではありませんが、側溝や雨樋など局所的に高線量を示す箇所の除染が重要です。

国は、市町村の除染計画の作成・実施に全面的に協力します。具体的には、専門家の派遣、財政支援、モニタリング結果や作業上の留意点などの住民への情報提供、測定機器の提供などを、市町村それぞれの状況に応じて実施します。

④ なお、県、国などが管理する公的施設については、その管理責任主体が、市町村の策定した除染計画に基づき、市町村と密に連携し、除染を実施します。

(ウ) 追加被ばく線量がおおむね1ミリシーベルト以下の地域

① おおむね年間1ミリシーベルト以下の地域は、放射性物質の物理的減衰及び風雨などの自然要因による減衰(ウェザリング効果)などを勘案すると、基本的に市町村単位での面的な除染が必要な線量の水準ではありません。

② 他方、側溝や雨樋など局所的に高線量を示す箇所があることから、国は、県及び市町村と連携し、住民を含めた関係者が安全かつ効率的・効果的に除染を行えるよう必要な支援を行います。

[4.除染に伴って生じる土壌等の処理]

① 除染に伴って生じる土壌、また地域に存在する稲わらやたい肥、がれきなどの処理は、円滑かつ迅速な除染の実施に不可欠です。

② こうした土壌等の処理に関し、長期的な管理が必要な処分場の確保やその安全性の確保については、国が責任を持って行うこととし、早急にその建設に向けたロードマップを作成し、公表いたします。

③ しかしながら、こうした抜本的な対応には一定規模の処分場の確保及び整備のための時間が必要であり、これを待っていたのでは迅速な除染が進まない恐れがあります。

④ 従って、除染に伴って生じる土壌等は、当面の間、市町村又はコミュニティ毎に仮置場を持つことが現実的であり、国としては、財政面・技術面で市町村の取組に対する支援に万全を期して参ります。

[5.県の協力]

① 県は各市町村が除染を計画し実施する際、必要に応じて横断的な調整機能を担います。

② また、国と連携し、地域住民が安全かつ効率的・効果的に除染を行えるよう、モニタリング結果や生活上の留意点などの情報提供や、測定機器の提供などの環境整備を実施します。

以上

市町村による除染実施ガイドライン

平成23年8月26日

原子力災害対策本部

[1.本ガイドラインの位置づけ]

今次原発事故による放射性物質による汚染を取り除く作業について、国は責任を持って必要な措置を講じてまいります。

「除染の緊急実施に関する基本方針」でも述べられているとおり、住民が居住することが可能だが放射性物質による汚染が及んでいる地域では、地域固有の事情や住民ニーズを把握している市町村単位での計画的な除染が最も効果的であり、市町村が除染計画を策定し、専門事業者などを活用しつつ計画を実施していただきたいと考えています。

本ガイドラインでは、各市町村が効率的・効果的に除染を実施するために必要な事項について定めるものです。

なお、本ガイドラインは、これまで原子力安全委員会から示された「今後の避難解除、復興に向けた放射線防護に関する基本的な考え方について」(平成23年7月19日)(別添1)や、「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の影響を受けた廃棄物の処理処分等に関する安全確保の当面の考え方について」(平成23年6月3日)(別添2)を踏まえて作成しています。

[2.除染計画の作成]

(1) 目標の設定

除染作業による住民の被ばく低減に向け、「除染に関する緊急実施基本方針」を参考に、市町村全体及び除染対象毎に目標を設定してください。

(2) 区域及び対象毎の優先順位付け

すべての地区・対象の除染を同時に行うことは不可能であるため、住民の被ばく線量の低減という目的に照らして効果的に作業を進める必要があります。このため、線量率の高さや年齢構成(成人よりも放射線の影響の大きい子どもの人口割合)、人口数、人口密度、地区内の施設の性質、地形などの要素を考慮して、区域・対象毎に優先順位をつけてください。

具体的には、家屋・庭、道路などの生活圏、特に子どもが利用する学校、公園などの施設における除染は優先順位が高く、森林については生活圏に近い部分の除染が効果的と想定されます。また、農地については外部被ばくの放射線源になることに加え、生産される農作物の安全性などの観点から除染の方法を検討しています。

なお、こうした優先順位に加え、除染による地区外への影響を可能な限り小さくする観点から、市町村において、広範な地区が同じタイミングで除染に取り組むことを極力避けられるよう、全体スケジュールを調整してください。

(3) 汚染状況の詳細な確認(汚染状況の可視化)

除染対象の地区の中でも、雨水などの影響により放射能は偏在しており局所的に線量率の高い部分もあれば、除染作業を要しない線量の低い部分も存在します。

除染を行う地区と時期が決定したら、除染作業を効率よく行うため、まずは汚染状況を確認し、汚染状況を詳細に可視化することが必要であり、詳細なモニタリングを行ってください。

なお、具体的な方法については、「除染作業にあたってのモニタリングマニュアル」(別添3)をご参照ください。

(4) 除染対象毎の方針及び方法の決定

効率的・効果的な除染を行うためには、除染対象毎に除染の必要性、いつ頃、どのような方法で行うかについて検討する必要があります。

「3.対象毎の除染の方針及び方法に関する暫定的考え方」を踏まえ、除染を計画するにあたっては、公的施設の管理主体や上下水道などインフラ設備の管理主体などの関係者と調整するようお願いします。

[除染対象として検討すべき主な箇所]

1) 生活圏(家屋・庭、道路、学校・保育所・公園など)

2) 森林

3) 農地

4) 河川

(5) 実施主体の検討

除染作業は、作業の難易度や規模などにより、地域住民の方々が自ら実施することができる作業と安全性や効率性などから専門事業者に依頼して実施すべき作業とに分かれます。

[専門事業者に依頼すべき事例]

● 脚立では届かない高所での作業など作業の危険性が高い場合

● 重機など特別の機器が必要となる場合

● 文化的価値のあるものなど慎重に扱うべきものを除染する場合

● 線量率が高く、安全に作業を行う要請が特に強い場合 など

(6) 仮置場の確保

除染範囲を適切に設定するためには、除染に伴って生じる土壌等を仮置きする場所についても、あらかじめ確保しておくことが必要です。

市町村においては、各コミュニティと連携の下、予想される除去土壌等の総量を想定し、仮置場の設置方針を策定し除染計画に記述してください。

仮置場の設置及び管理については、5.をご覧下さい。

[3.対象毎の除染の方針及び方法に関する暫定的考え方]

対象毎の除染の方針及び方法については、参考とすべき有意な情報が非常に限られていることや日本の気候や土壌といった特殊事情にも大きく左右されることから、政府として、「除染モデル事業(仮称)」を実施し効果を検証すると同時に、内外の有識者の知見を集め、今後、中長期的な方向性を示してまいりたいと考えます。

他方で、汚染の固定化・拡散を防ぐためには、機を逸せずに除染作業を迅速に行うことが必要であることから、以下のとおり、対象毎に除染の方針及び方法に関する暫定的考え方を示します。

(1) 生活圏

① 家屋・庭

家屋や庭は、日常生活において最も長く滞在することが想定される場所であり、除染作業は被ばく線量の低減に効果的であると期待できます。局所的に線量率の高い地点を中心に、必要な除染活動を実施してください。

具体的な方法としては、庭木のせん定、軒下などの除草、雨樋の清掃が効果的です。また、比較的線量率の高い地域においてはこれに加え、屋根の高圧洗浄や庭土の表土除去などを検討してください。

また、側溝においても、雨水が集中することにより、泥の線量率が高くなる傾向にあることから、側溝内の泥を除去した後、高圧洗浄水で洗い流す1ことが重要です。

なお、詳細については、「福島県内(警戒区域及び計画的避難区域を除く)における生活圏の清掃活動(除染)に関する基本的な考え方」(平成23年7月15日原子力災害対策本部)をご参照ください。(別添4)

1 側溝の清掃に当たっては、始めから高圧洗浄を行うのではなく、まず除去できる泥をすくい取った後、高圧洗浄を行うようお願いします。

② 道路

アスファルトで舗装された道路は、アスファルトの継ぎ目、ひび割れ部分のブラッシングや側溝の清掃(側溝内の泥の除去後、高圧洗浄)などにより、線量の低減が可能です。

これに加え、道路の表面の削り取りや再舗装などにより、より一層の除染・線量低減を行うことが可能です。

ただし、表面の削り取りは大量の廃棄物を発生させることから、まずは清掃などを実施した上で、モニタリングを行い、それでもなお線量が下がらない場合に、その実施を検討してください。

なお、道路は周辺の森林や農地の影響による再汚染の可能性があり、除染の効果が持続しないことも想定されるため、必要に応じてモニタリングを行ってください。

③ 学校・保育所・公園など

学校の校庭・園庭においては、土壌改良対策が進んだことなどにより、「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方」(平成23年4月19日原子力災害対策本部)で示した屋外活動利用制限である毎時3.8マイクロシーベルトを上回っているところは一校もなく、当該「暫定的考え方」はその役割を終えました。

今後は、8月26日に文部科学省及び厚生労働省よりそれぞれ福島県などに通知される「福島県内の学校の校舎・校庭等の線量低減について」及び「福島県内の保育所等の園舎・園庭等の線量低減について」に示されたところに基づく校庭表土の土壌改良対策や、側溝などの清掃により校内の除染を推進することが望ましいと考えられます。その際、「学校等における放射線測定の手引き」(文部科学省・独立行政法人日本原子力研究開発機構)、福島県の実証事業(別添5)などの知見を活用して行うことが可能です。また、学校などの校庭・園庭だけでなく、公園の除染でも、同様の方法によることが可能です。また、校庭・園庭や公園の遊具については高圧洗浄、洗剤を使った洗浄やブラッシングなどの方法により除染を行うことが有用です。

ただし、レンガなど多孔性の素材を使用している施設については、孔の中に吸着した放射性物質の除去は難しく、洗浄による除染の効果が十分みられない場合もあります。学校・公園などは子どもが長時間滞在する場であることに留意し、除染を十分に実施しても、線量の低減が確認できない施設については、一時的な使用の中止又は施設の撤去も検討してください。また公園の利用上特段支障のない園内の樹林地などの区域において線量が高かった場合には、当面の間立ち入り禁止にするなど、慎重な対策を実施するようお願いします。

④ 街路樹など生活圏の樹木

道路・公園の除染とあわせ、街路樹・園内の樹木などの除染を行うことで、歩行者・利用者の被ばく低減、再汚染の抑制を行うことができます。

効果的な除染方法は、樹種によって異なります。

例えば、事故発生時に葉がついていた常緑樹は、枝葉にセシウムが吸着していると考えられるため、枝葉のせん定などにより除染効果及び拡散の防止効果が期待できます。この場合、どの程度の枝葉をせん定するかは、線量の度合いやその樹木の果たす役割、周辺の利用状況を考慮して、適切に検討する必要があります。

一方、落葉樹は一般的には事故発生時に葉が付いていなかったものと考えられるため、周辺に残っている落ち葉・腐葉土があればその回収を行ってください。

(2) 森林

森林については、暫定的な措置として、住居からごく近隣の部分において、下草・腐葉土の除去や枝葉のせん定を可能な範囲で行ってください。適切な除染の方法などについては、国において実証実験などを通じ、9月中に、一定の結論を得て公表しますので、当面は上記の暫定措置を行ってください。

一方、森林全体への対応については、面積が大きく膨大な除去土壌等が発生することになり、また、腐葉土を剥ぐなどの除染方法を実施した場合には森林の多面的な機能が損なわれる可能性があります。こうした点を考慮し、その扱いについて検討を継続し、結論を得ることとします。

(3) 農地

農地土壌の除染方法としては、表土の削り取りや埋め込みなどによる対策などが考えられます。

一方で、農地は、既に耕作を行っている土地もあることや除染によりこれまで醸成してきた肥沃な土壌を喪失する可能性があること、生態系の維持など多様な側面も持っていることなどの特色を有しています。

このため、農地の扱いについては、除染効果や肥沃な土壌の維持可能性、営農活動による空間線量の低減などを総合的に検討し、9月中に国として除染の適当な方法や必要な範囲などについて一定の結論を得て公表いたします。

(4) 河川

本年5月に実施した調査では、河川の水から放射性物質は検出されておらず(「福島県内の公共用水域の水質測定モニタリング調査における放射性物質濃度の測定結果(速報)について」)、仮に河床に放射性物質が沈着していたとしても、河川水による遮へい効果も考慮すれば、住民の被ばく線量への影響も限定的だと考えられます。

また、河川については、洪水などの自然現象により、河床の状況が変化するなどの特性があり、また、河川での除染作業を実施する際には下流域などへの影響も考慮する必要があります。

河川の扱いについては、こうしたことを考慮し、検討を継続し早期に結論を得ることとします。

[4.除染作業の実施にあたって]

除染作業の実施に当たっては、作業を担う方々の安全が確保されることが大前提です。これまでに行った実証実験2において、生活圏の清掃に関する被ばくについては、生活環境中の特定線源を除去するための清掃活動を実施しても、追加的被ばく量は比較的小さいと評価3されています。今回の除染作業にあたっても、念のために以下のような作業上の留意事項を守っていただければ、住民の方々であっても安全に作業していただけます。

事業者が継続的に除染を実施する場合には、長時間除染作業に携わる可能性があるため、念のため線量管理を行ってください。

また、作業で生じる土壌や排水については、周辺環境への影響を考慮して以下のように取り扱ってください。

なお、作業にあたっては、日程を事前に周知するなど、適切な配慮をお願いします。

2 「福島県内(警戒区域及び計画的避難区域を除く)における生活圏の清掃活動(除染)に関する基本的な考え方」(平成23年7月15日原子力災害対策本部)(別添4)

3 除染に関する実証実験に基づき、①雨樋の清掃、②雑草の除去、③側溝の清掃、④軒下の土の除去について外部被ばく線量を評価した結果、①~④の作業をそれぞれ1時間ずつ計4時間の作業として、毎月1回1年間続けたとしても、追加的な被ばく線量は約49μSv/年であり、1mSv/年を大きく下回るとの結果を得ています。

(1) 住民が除染作業を行う際の留意事項

① なるべく作業を効率化し、長時間の作業にならないように努めてください。

② 防じんマスク、ゴム手袋、ゴム長靴、長袖などを着用してください。

③ 作業場での飲食や喫煙は控えてください。

④ 作業後に手足、顔などの露出部分をよく洗い、うがいをしてください。

⑤ 作業の後、屋内に入る際には、靴の泥をなるべく落とすとともに、服を着替えるなど、泥、ちり、ほこりなどを持ち込まないようにしてください。

(2) 事業として除染を行う方の線量管理方法

① 事業者の方は、従業員全員に個人線量計を携帯させ、従業員の方が受けた放射線の量を記録してください。

② 事業者の方は、従業者の方が受ける放射線の量が1年間につき20ミリシーベルトを超えないようにしてください。

③ 作業者の方は、防じんマスク、ゴム手袋、ゴム長靴、長袖などを着用してください。

④ 作業場での飲食や喫煙は控えてください。

⑤ 作業後に手足、顔などの露出部分をよく洗い、うがいをしてください。

⑥ 作業の後、屋内に入る際には、靴の泥をなるべく落とすとともに、服を着替えるなど、泥、ちり、ほこりなどを持ち込まないようにしてください。

⑦ 事業者の方は、従業員の方が留意事項を守れるよう配慮するとともに、従業員の方に定期的に健康診断を受けてもらってください。

⑧ 事業者の方は、従業員の方に対し放射線に関する知識を得る機会を充分に提供してください。

(3) 除去した土壌等の取扱い

除染により生じた土壌等は、仮置場まで輸送する際に飛散しないよう、フレコンバッグや土のうなどに入れてください。このとき、できるだけ耐水性や耐久性のあるものに入れてください。

(4) 除染に伴い生じる排水の取扱い

水を用いた除染を行った場合、放射性物質を含む水が発生します。

この際、大量の水を使用することにより、環境への影響を考慮する必要のないレベルまで放射性物質の量を低くすることができます。周囲への拡散を極力抑えつつ、大量の水を用いて除染を行ってください。

念のため、排水が流れる下流域においてどのような水の利用がなされているか確認した上で、必要に応じて取水制限を行うなど、除染の計画段階できめ細かな対応を検討し、実施してください。

また、実際に除染を行う際には、排水による周辺環境への影響を極力避けるための工夫として、水を用いる前に、水による洗浄以外の方法で除去できるものを可能な限り除去してしまうことにより、水を用いた除染により流出する放射性物質の量を減らすようにしてください。また、除染水が排水路などに留まる堆積することを避けるため、排水経路(雨樋、排水口、側溝)をあらかじめ清掃しておくなどにより、排水がスムーズに行われるよう事前の準備を行ってください。さらに、除染水が排水経路にスムーズに流れ込むように、排水経路までの水の経路を準備しておくと、一層効果的です。

[5.仮置場の設置及び管理]

「除染に関する緊急実施基本方針」にもあるとおり、除去土壌等に関し、長期的な管理が必要な処分場の確保やその安全性の確保については、県及び市町村と連携の上、国が責任を持って行うものです。

しかしながら、こうした抜本的な対応には一定規模の処分場の確保及び整備のための時間が必要であり、これを待っていたのでは迅速な除染が進まない恐れがあります。

従って、除去土壌等は、当面の間、市町村毎・コミュニティ毎の仮置きをお願いせざるを得ません。

市町村においては、以下の事項を踏まえ、仮置場を適切に設置し安全に管理していただくようお願いします。

なお、下水汚泥、廃棄物の焼却灰の処理、仮置場が設置されるまでの間の稲わらなどの一時的な保管についてはそれぞれについて定められた方法4に基づいて処理を行ってください。

4 下水汚泥については「放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取扱いに関する考え方」(平成23年6月16日原子力災害対策本部)、

災害廃棄物については、「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」(平成23年6月23日環境省)

生活ごみの焼却灰については「一般廃棄物焼却施設における焼却灰の測定及び当面の取扱いについて」(平成23年6月28日環境省)、

稲わらについては「高濃度の放射性セシウムを含む稲わらの取扱いについて」(平成23年7月28日農林水産省)、「暫定許容値を上回る放射性セシウムを含む稲わらの管理について」(平成23年8月19日農林水産省)、「高濃度の放射性セシウムを含む稲わら等の隔離一時保管について」(平成23年8月25日農林水産省)

(1) 仮置場の設置

市町村は、地域の実情を踏まえ、除染全体計画において推計した予想される除去土壌等の総量に基づき、以下のいずれかの方法にてコミュニティ毎に仮置場を設置してください。なお、まとめて地下に置く方法で仮置きを行った方が、放射線の遮へいは比較的容易だと考えられます。

① 山積みにする方法

A) 土壌の上に山積みしようとする場合には、その場所にあらかじめ遮水シートなどを敷き、水が地下に浸透しないように努めてください。

B) 除去土壌等は耐水性材料などで梱包し、遮水シートなどの上に置いてください。

C) 雨水浸入防止のため遮水シートなどで覆うか、テントや屋根などで覆ってください。

D) 除去土壌等が有機物を多量に含む場合には、ガスの発生に注意してください。

② まとめて地下に置く方法

A) 帯水層に達しないよう注意し、除去土壌等を仮置きするための穴を設けてください。

B) 穴の底面及び側面にはあらかじめ遮水シートなどを敷き、水が地下に浸透しないように努めてください。

C) 除去土壌等は耐水性材料などで梱包し、穴に入れてください。

D) 雨水浸入防止のため遮水シートなどで覆うか、テントや屋根などで覆ってください。

E) 除去土壌等が有機物を多量に含む場合には、ガスの発生に注意してください。

(2) 除去土壌等の分別

除染に伴って発生する土壌等を中長期的に処理するにあたっては、焼却などにより、減容化を進める必要が生じると考えられます。このため、除去土壌等を梱包する段階で、可燃物と不燃物とに分別を行ってください。

(3) 適切な遮へいの実施

除去土壌等が一定量たまった段階で、十分な覆土やコンクリート構造物(ブロック塀など)で囲むなどの方法にて、仮置場の敷地境界での空間線量率が周辺環境と同水準になる程度まで遮へいを行ってください。

<参考:覆土やコンクリート構造物による遮へい効果>5

表1 覆土厚さと放射線遮へい効果

5cm

51%減

10cm

74%減

15cm

86%減

30cm

98%減

表2 コンクリート厚さと放射線遮へい効果

5cm

57%減

10cm

79%減

15cm

89%減

30cm

99%減

5 出典「埋設処分における濃度上限値評価のための外部被ばく線量換算係数」(2008年、日本原子力研究開発機構)半径500mの線源サイズを想定した計算結果であり、小規模の保管であった場合放射線の低減効果は目安よりも小さくなると考えられる。

(4) 継続的なモニタリングの実施

仮置きの実施後においても、週に一度程度の頻度で、仮置場の敷地境界での空間線量率を測定してください。

仮に周辺の空間線量率よりも著しく高い水準が示された場合には、覆土の増量など追加的な遮へい努力を行ってください。

(5) 仮置き終了後の管理

覆土を行う場合には、覆土を掘り返さないよう注意喚起を行うとともに、必要に応じ適切な表示やロープでの囲いの設置などの措置を行ってください。また、除去土壌等が飛散しないよう管理してください。

(6) 除染した土地における処理

処分場や市町村毎・コミュニティ毎の仮置場が設置されるまでの間、除染を実施した土地(学校、公園、田畑、庭など)において除去土壌等の仮置きを行うことが有効な場合があります。

この場合の仮置きについては、設置や遮へいは仮置場と同様の方法に準じて行ってください。ただし、除去土壌等が外部から継続的に搬入されるものではないため、上述(4)の継続的なモニタリングは必ずしも必要ありません。

また、埋め立てた場所が不明にならないよう、市町村において、埋め立てた土地の位置や保管の方法を記録するとともに、覆土が掘り返されることがないよう、土地の所有者等に対する注意喚起をお願いします。

なお、処分場や市町村毎・コミュニティ毎の仮置場が設置された場合には、速やかに除去土壌等を移動するようにしてください。

[6.除染実施後の対応]

(1) 除染作業による効果の検証

実施した作業が十分効果的なものであったかどうかについて、作業の節目や作業終了時に計測を行うことが必要です。この際、住民の日常生活における被ばく量の低減という今回の除染作業の目的に合致するよう、住居や公共スペースなど、多くの方が長時間滞在する箇所で効果を検証してください。

(2) 十分線量が低減しなかった箇所における注意喚起など

除染作業を行っても十分に線量が低減してなかった箇所については、一定期間、長期間の滞在を避けるよう注意を喚起する表示を行うことや住民の立入りを制限するなどの防護措置を取ってください。

(3) 継続的なモニタリング

地形により汚染が進行していた箇所などは、除染後に再度汚染される可能性があります。また、除染作業により地形などが変化した結果、新たな汚染箇所が発生する可能性も否定できません。

除染終了時に計画を立て、一定期間は継続的なモニタリングを行うことが住民の安心にも効果的です。各地区において住民が協力して実施し、定期的に情報共有を行うと良いと考えられます。

以上

[別添2]

○「除染に関する緊急実施基本方針」及び「市町村による除染実施ガイドライン」に基づく除染作業における労働者の放射線障害防止措置について

(平成23年9月9日)

(基安発0909第2号)

(岩手県知事・宮城県知事・福島県知事・茨城県知事・栃木県知事・群馬県知事・埼玉県知事・千葉県知事・神奈川県知事あて厚生労働省労働基準局安全衛生部長通知)

東日本大震災により発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により生じた放射性物質による汚染に関し、別添1のとおり、平成23年8月26日に、原子力災害対策本部から、「除染に関する緊急実施基本方針」及び「市町村による除染実施ガイドライン」(以下、「ガイドライン」という。)が示されたところです。

ガイドラインは、追加被ばく線量がおおむね年間1から20ミリシーベルトまでの間の地域における除染について、市町村が実施すべき事項をとりまとめたものであり、作業の危険性が高い、建設機械等が必要となる、線量率が高い場合等においては、専門事業者に依頼して除染を実施すべきとされています。

ついては、当該除染作業に労働者を就かせる場合の措置について、当面の間、下記のとおりとすることとしましたので、了知いただくとともに、貴管内市町村にも周知いただきますようお願いします。

なお、別添2により、都道府県労働局長に対して通知していることを申し添えます。

1 事業者は、除染作業を行う場合、ガイドラインの4の(2)「事業として除染を行う方の線量管理方法」に定める事項を適切に実施すること。

2 事業者は、除染作業を行う場合、上記1の措置に加え、次に掲げる措置を実施すること。

(1) 個人線量計により測定した外部被ばく線量を1日ごとに記録し、これを30年間保存すること。また、日々の被ばく線量は1日ごとに、累計の被ばく線量は1月ごとに労働者に文書で通知すること。

(2) (1)の測定結果により、男性労働者及び妊娠の可能性のない女性労働者については年間20ミリシーベルト、妊娠の可能性のある女性労働者については、3月で5ミリシーベルトを超えないよう管理すること。

(3) 作業に従事する労働者に、性能の区分がRL3又はRS3の防塵マスク(取り替え式防じんマスクで粒子捕集効率が99.9%のもの。空気中の蒸気が多い場合などにはRL3を用いること。)など、作業に応じて有効な呼吸用保護具(注1)を着用させること。また、呼吸用保護具の顔面への密着性の良否を確認すること。

(4) 作業に従事する労働者に、作業場所で喫煙・飲食させないこと。

(5) 除染作業による汚染の程度に応じて、汚染防止のために有効な保護衣類、手袋、履物を備え、作業に従事する労働者に使用させること。

(6) 作業に従事する労働者に対し、あらかじめ、①放射性物質又はこれらによって汚染された物に関する知識、②除染の作業方法に関する知識、③除染で使用する機器、器具等の構造及び取扱方法に関する知識、④電離放射線の生体に与える影響、⑤関係法令の知識、⑥除染の作業の方法及び使用する機器、器具の取扱についての教育を実施すること。

(7) 除染作業に常時従事する者に対しては、電離放射線特殊健康診断(注2)と同等以上の健康診断を6月以内ごとに1回、定期に実施すること。

(注1) 「防じんマスクの選択、使用等について」(平成17年2月7日付け、基発第0207006号)

(注2) 電離放射線障害防止規則(昭和47年9月30日労働省令第41号)第56条に定める健康診断