アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○派遣先事業主に係る第三者行為災害の取扱いについて

(平成24年9月7日)

(基発0907第4号)

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

(公印省略)

第三者行為災害に係る事務処理については、平成17年2月1日付け基発第0201009号「第三者行為災害事務取扱手引の改正について」(以下「第三者行為手引」という。)等により取り扱っているところであるが、今般、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律(平成24年法律第27号)により、派遣先事業主に対する労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号。以下「労災保険法」という。)第12条の4の規定に基づく損害賠償請求を円滑に実施することを目的として、政府に派遣先の事業主に対する報告徴収や立入検査の権限を付与するための労災保険法の改正が行われ、本年10月1日から施行されるところである。

これに伴い、派遣先事業主に対する求償の実施を徹底するため、下記のとおり取り扱うこととしたので、事務処理に遺漏のないようにされたい。

なお、本取扱いは、本年10月1日以降に発生した災害について適用するものとする。

1 基本的な考え方

派遣労働者の被った労働災害の中には、①派遣労働者と荷役運搬機械との接触等、直接の加害行為が存在し、災害の態様から第三者行為災害であることが明確なもの、②派遣先事業場内の通路での派遣労働者の転倒等、直接の加害行為が存在せず、派遣労働者の被った災害が第三者の行為等によって生じたと直ちに判断することが困難なもの、③直接の加害行為は存在しないが、派遣先事業場の施設に係る安全衛生法令違反が災害発生の直接の原因であるもの等が存在する。

第三者行為災害となるためには、保険給付の原因となった災害が第三者の行為等によって生じたものであって、かつ、第三者が受給権者に対して損害賠償責任を負っていることが必要であるが、派遣労働者の被った労働災害が派遣先事業主を第三者とする第三者行為災害に該当する場合に、派遣先事業主に対して求償を行うことは、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)等による諸規制とあいまって、派遣先事業主の災害防止の取組をより一層推進する効果をもたらすものである。

2 派遣先事業主が関係する災害の分類と取扱い

(1) 直接の加害行為が存在する事案

派遣労働者の被った労働災害のうち、直接の加害行為が存在する事案は、第三者行為災害に該当することが明確であるため、これまでの第三者行為災害と同様に取り扱う。

その際、労災保険給付請求書、第三者行為災害届等に記載された災害発生状況によっては事実関係を十分に把握できない場合には、今般の労災保険法の改正により、派遣先事業場への立入検査等が規定されたことを踏まえ、必要に応じ実地調査等を行うこと。

(2) 直接の加害行為が存在しない事案

派遣労働者の被った労働災害のうち、直接の加害行為が存在しない事案については、派遣労働者の被った災害が第三者の行為等によって生じ、かつ、派遣先事業主が被災した派遣労働者に対して損害賠償責任を負うか否かを直ちに判断することが困難である。

このため、派遣労働者の被った労働災害であって直接の加害行為が存在しない災害が、第三者行為災害に該当するかどうかの判断は、次によることとする。

ア 派遣労働者に係る労働災害であるか否かは、①労災保険給付請求書に記載された災害発生状況、②労働者死傷病報告、③療養補償給付請求書裏面の派遣先事業主の証明等により確認する。

イ 派遣労働者の被った労働災害について、派遣先事業主の安全衛生法令違反が直接の原因と認められる場合には、派遣先事業主が被災した派遣労働者に対して損害賠償責任を負うものとして、次に該当する場合に第三者行為災害として取り扱う。

(ア) 派遣先事業主が安全衛生法令違反で送検され、当該法違反が災害の直接原因となったと認められる場合。

(イ) 災害調査や災害時監督等において、是正勧告書等により安全衛生法令違反が指摘され、当該法違反が災害の直接原因となったと認められる場合。

(ウ) 上記(ア)又は(イ)以外の場合であって、業務上外の調査の過程で、災害の直接原因となった安全衛生法令違反が認められる場合。

ウ 上記イに該当しない場合には、原則として第三者行為災害とは取り扱わない。

なお、建築基準法等他の法令に係る違反が災害の直接の原因となっていることや、法令違反は認められないが派遣先事業主の故意又は過失が災害の原因となっていることが明らかな場合については、本省に協議すること。

3 支給調整等の事務

直接の加害行為が存在しない、派遣先事業主に係る第三者行為災害の支給調整等の事務は、次により行うこと。

(1) 第三者行為災害届等の受付等

ア 直接の加害行為が存在しない事案については、一般に、まず労災保険給付請求書が提出される。請求書等の記載から派遣労働者が被った労働災害に関する安全衛生法令違反が考えられる場合には、業務上外の調査と並行して、当該災害に係る送検の有無、是正勧告書等の交付の有無又は災害調査の実施の有無を確認し、これらの結果を参考に、安全衛生法令違反が災害の直接原因となっているか否かを検討すること。

これにより、法違反が災害の直接原因となっていると考えられる場合はその時点で別添1により第三者行為災害届を提出するよう指導し、また、第三者行為災害報告書については、求償権の行使を差し控える事案に該当することが明確な場合を除き、派遣先事業主から別添2により提出を求めること。

なお、災害調査中である場合には、調査の終了を待って対応すること。

イ 上記アに該当しない事案であって、業務上外の調査の過程で災害の直接原因となった安全衛生法令違反があると明らかに判断される場合には、上記アと同様に取り扱うこと。

なお、安全衛生法令違反の有無等の判断に当たっては、必要に応じて関係部署との連携を図ること。

(2) 控除

派遣先事業主に係る第三者行為災害において、被災した派遣労働者が派遣先事業主から損害賠償を受領している場合には、第三者行為手引第5節により控除を行うこと。

(3) 求償

被災した派遣労働者に保険給付を行った場合には、国は、派遣労働者が派遣先事業主に対して有する損害賠償請求権を労災保険給付の価額の限度で取得するものであることから、第三者行為手引第6節により、派遣先に対する求償を行うこと。

(4) 過失相殺

派遣先事業主に対して求償を行う際の過失相殺については、民事交通訴訟における「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(東京地裁、別冊判例タイムズ第16号。以下「過失相殺率の認定基準」という。)のような参考となるべき基準等がなく、過失割合の一般的な基準を定めることは現時点では困難であることから、次のとおり取り扱う。

ア 過失相殺の運用

(ア) 過失相殺について、第三者行為災害報告書において派遣先事業主が派遣労働者にも過失があると主張している場合には、労働基準監督署長(以下「署長」という。)は、派遣先事業主から事情の聴取等をするとともに、派遣労働者から派遣先事業主の主張について聴取する等により調査を行うこと。

(イ) 調査の結果、両当事者間で過失割合の主張が一致しない場合には、労災法務専門員に対して過失割合について意見を求め、署長は労災法務専門員の意見を付して都道府県労働局長(以下「局長」という。)に対し過失割合の意見を提出すること。

両当事者の過失割合の主張に相違がない場合には、署長は労災法務専門員に意見を求めることなく、過失割合についての意見を局長に提出すること。

(ウ) 局長は、署長から提出された意見を斟酌して過失割合を認定し、当該割合に基づく過失相殺を行って損害賠償請求可能額を算出すること。

局長は、両当事者の主張が相違する場合には、必要に応じ、求償事務に支障を来さないよう両当事者の指導を行うこと。

また、局長は、両当事者の過失割合の主張に相違がない場合であっても、当該過失割合により過失認定を行うことに疑義がある場合は、労災法務専門員の意見を求めることができるものとする。

イ 過失相殺の留意点

(ア) 派遣先事業主は派遣労働者に対してその災害を防止する責任を負うものであり、また、派遣先事業主を第二当事者とする第三者行為災害に該当するのは原則として派遣先事業主に災害の直接原因となる安全衛生法令違反が認められる場合であることから、派遣労働者に安全衛生法令違反が認められない場合など、派遣労働者の過失を相殺する必要がない場合があることに留意すること。

(イ) 過失割合の上限は、過失相殺率の認定基準における車両と歩行者との間の過失相殺の場合に準じ、原則として7割を超えないものとする。

(5) 求償差し控え

第三者行為手引第6節の4に定める求償権の行使を差し控える事案に該当する場合には、求償を行わないこと。

(6) その他

上記(1)ないし(5)により定めていない事項については、第三者行為手引に基づき事務処理を行うこと。

事務処理に当たり疑義がある場合には、本省に相談すること。

(別添1)

画像2 (48KB)別ウィンドウが開きます

(別添2)