添付一覧
○平成23年度地域別最低賃金額改定の目安について
(平成23年7月27日)
(基発0727第5号)
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
(公印省略)
[5年保存]
標記については、本年7月1日に厚生労働大臣から中央最低賃金審議会に対し諮問が行われたところであるが、7月27日、同審議会から別添のとおり答申がなされたので、下記事項に留意の上、貴職から地方最低賃金審議会に対し本答申を伝達されたい。
記
1 本答申は、目安について労使の合意が得られず、目安を定めるに至らなかったが、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、目安に関する公益委員見解を地方最低賃金審議会に提示するものとされたものであること。
2 地方最低賃金審議会における今後の審議においては、上記の経緯を十分考慮した上で、公益委員見解を十分参酌し、また、賃金実態調査、参考人からの意見聴取、実地視察等の結果を活用し、適正な最低賃金額の改定が行われるよう配慮すること。
(別添)
○平成23年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)
(平成23年7月27日)
(厚生労働大臣あて中央最低賃金審議会答申)
平成23年7月1日に諮問のあった平成23年度地域別最低賃金額改定の目安について、下記のとおり答申する。
記
1 平成23年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった。
2 地方最低賃金審議会における審議に資するため、上記目安に関する公益委員見解(別紙1)及び中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(別紙2)を地方最低賃金審議会に提示するものとする。
3 地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることとし、同審議会において、別紙1の2に示されている公益委員の見解を十分参酌され、自主性を発揮されることを強く期待するものである。
4 政府において、雇用戦略対話における最低賃金の引上げに関する合意(平成22年6月3日 雇用戦略対話第4回会合)に掲げられた目標の円滑な達成を支援するため、「最低賃金引上げに向けた中小企業への支援事業」をはじめとする中小企業に対する支援等に引き続き取り組むことを要望する。また、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
別紙1
平成23年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解
平成23年7月25日
1 平成23年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、表1中の下線が付されていない38県(生活保護水準と最低賃金との乖離額(比較時点における最新のデータに基づく生活保護水準と最低賃金との乖離額から、前年度の地域別最低賃金引上げ額を控除してもなお残る乖離額をいう。以下同じ。)が生じていない県)については、表1の金額欄に掲げる金額とし、表1中の下線が付された9都道府県(乖離額が生じている都道府県)については、当該金額と、以下の(1)及び(2)に掲げる金額とを比較して大きい方の金額とする。
(1) 表2中の下線が付されていない5都道県(昨年度の地方最低賃金審議会において、今年度以降乖離額を解消することとされていた都道県)については、原則として、それぞれ同表のC欄に掲げる乖離額を、昨年度の時点においてそれぞれ同審議会が定めた予定解消期間の年数から1年を控除した年数(以下「予定解消残年数」という。)で除して得た金額とする。ただし、宮城については、県内の被害状況等に十分に配慮し、また、今後の復旧・復興状況も見据えつつ、地域の実情を踏まえて適切な審議が行われることを切に希望するものとし、外の4都道県については、原則どおりとした場合に、地域別最低賃金と実際の賃金分布との関係等を勘案して、地域の経済・企業・雇用動向等に著しい影響を及ぼすと考えられるケースについては、当該金額を原則としつつ、同表のC欄に掲げる乖離額を予定解消残年数に1年を加えた年数で除して得た額も踏まえて、審議を行うものとする。
(2) 表2中の下線が付された4府県(昨年度の乖離額を同年度の地域別最低賃金額の引上げにより一旦解消したが、最新のデータに基づいて最低賃金と生活保護水準の比較を行った結果、再び乖離額が生じた府県)については、原則として、それぞれ同表のC欄に掲げる乖離額を2年以内で、当該乖離額を解消するための期間として地方最低賃金審議会で定める年数で除して得た金額とする。
(表1)
ランク |
都道府県 |
金額 |
A |
千葉、東京、神奈川、愛知、大阪 |
4円 |
B |
茨城、栃木、埼玉、富山、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島 |
1円 |
C |
北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、山梨、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、香川、福岡 |
1円 |
D |
青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、徳島、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 |
1円 |
(表2)
都道府県 |
平成21年度データに基づく乖離額 (A) |
平成22年度地域別最低賃金引上げ額 (B) |
残された乖離額 (C) (=A-B) |
北海道 |
44円 |
13円 |
31円 |
宮城 |
20円 |
12円 |
8円 |
埼玉 |
24円 |
15円 |
9円 |
東京 |
46円 |
30円 |
16円 |
神奈川 |
52円 |
29円 |
23円 |
京都 |
21円 |
20円 |
1円 |
大阪 |
24円 |
17円 |
7円 |
兵庫 |
16円 |
13円 |
3円 |
広島 |
18円 |
12円 |
6円 |
2
(1) 目安小委員会は今年度の目安審議に当たって、平成23年2月10日に中央最低賃金審議会において了承された「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告」の4(2)で合意された今後の目安審議のあり方を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における合理的な自主性発揮が確保できるよう整備充実に努めてきた資料を基にするとともに、雇用戦略対話合意に掲げられた目標についても特段の配慮をした上で、東日本大震災による地域への影響にも配意する等、諸般の事情を総合的に勘案して審議してきたところである。
目安小委員会の公益委員としては、同審議会においては最低賃金の審議に際し、上記見解を十分に参酌され、かつ、上記の資料を活用され、その自主性を発揮することを強く希望する。
(2) また、東日本大震災により、経済・企業・雇用動向等に甚大な影響が生じた地域においては、上記1の目安を踏まえつつも、各県ごとの被害状況等に十分に配慮し、また、今後の復旧・復興状況も見据えつつ、地域の実情を踏まえて適切な審議が行われることを切に希望する。
(3) 昨年度の地方最低賃金審議会において、今年度以降乖離額を解消することとされていた5都道県について、今年度の乖離解消額は、平成20年度以降の公益委員見解で示した考え方を踏まえれば、本来、最新のデータに基づいて算出された乖離額を、予定解消残年数で解消することを前提に定められるものである。
しかし、最新のデータに基づいて最低賃金と生活保護水準との比較を行った結果、昨年度の地域別最低賃金引上げ額を控除してもなお平成20年度のデータに基づく生活保護水準と最低賃金との乖離額が生じていた9都道府県の全てにおいて、乖離額が昨年度と比較して拡木するといった状況が見られるところである。
このため、地域別最低賃金の具体的な水準は、労働者の生計費なかんずく生活保護のみによって定められるものではなく、労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力も含めて総合的に勘案して決定されるべきものであることにかんがみ、今年度においては、上記の公益委員見解で示した考え方に基づく乖離額の解消方法を見直すこともやむを得ないものと考える。
(4) 具体的には、今年度の乖離解消額の目安については、乖離額を予定解消残年数で除して得た金額を原則とすることが適当である。ただし、宮城については、上記1(1)ただし書のとおり、地域の実情を踏まえて適切な審議が行われることを切に希望するものとし、外の4都道県については、原則どおりとした場合に、地域別最低賃金と実際の賃金分布との関係等を勘案して、地域の経済・企業・雇用動向等に著しい影響を及ぼすと考えられるケースについては、当該金額を原則としつつ、予定解消残年数に1年を加えた年数で除して得た額も踏まえて、審議を行うことが適当である。
(5) 上記(3)・(4)の見直しに伴う乖離額の予定解消期間の見直しについては、昨年度の地方最低賃金審議会において、原則として今年度に乖離額を解消することとされていたケース(宮城、東京、神奈川及び広島)のうち、同(4)ただし書のケースに該当すると考えられる地域については、予定解消残年数に1年を加えた年数までと見直すことが適当と考える。
一方、昨年度の乖離額を同年度の地域別最低賃金の引上げにより一旦解消したケース(埼玉、京都、大阪及び兵庫)については、最新のデータに基づいて算出された乖離額について、平成20年度以降の公益委員見解で示した考え方を踏まえれば、原則として2年以内で解消することとなるが、最低賃金法第9条第3項の趣旨にかんがみれば、できるだけ速やかに解消を図ることが適当と考える。
なお、具体的な予定解消期間については、地域の経済・企業・雇用動向等も踏まえ、同審議会がその自主性を発揮することを期待する。
(6) また、今後の最低賃金と生活保護水準の比較については、引き続き比較時点における最新のデータに基づいて行うことが適当と考える。
(7) 目安小委員会の公益委員としては、中央最低賃金審議会が今年度の地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。
別紙2
中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告
平成23年7月25日
1 はじめに
平成23年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、平成23年3月11日に発生した東日本大震災による地域への影響にも配意しながら、目安額の根拠等についてそれぞれ真摯な議論が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。
2 労働者側見解
労働者側委員は、労働者の生計費について、各種統計調査、国際機関の調査等の結果を例に挙げつつ、現在の地域別最低賃金額の水準(月額換算約12万円)では、依然として、生計費水準に到底及ばないと主張した。
また、地域別最低賃金による所得のセーフティネット機能の影響を多く受けると考えられる非正規労働者が雇用労働者の約三分の一、年収200万円に満たない労働者が給与所得者の約四分の一に達している状況をかんがみれば、その機能はますます重要性を増しており、「相対的貧困率」が過去最大の16%に達している状況の中で、642円の最低賃金は貧困ラインを下回っており、ここに重大な問題意識を持つべきである。地域別最低賃金については、安心・安定が確保された生活を営むことが可能な水準を早急に確立することが必要不可欠であると強く主張した。
また、雇用戦略対話における最低賃金引き上げに関する合意の内容については、現在の地域別最低賃金の水準が上述したとおりの状況下では、「できる限り早期に全国最低800円」を確保するという基本姿勢に変わるところはなく、政労使が当該目標を目指すことで合意した事実は極めて重いとした上で、対応を考えていくべきであると主張した。
さらに、日本経済が長期間のデフレに見舞われていることについては、企業側の固定費削減を重視する姿勢や、商取引慣行にも一因があると指摘し、最低賃金の引上げを家計の消費拡大、更には「新成長戦略」が描く「2020年度までの平均で、名目3%実質2%を上回る成長」につなげるべきであると主張した。
東日本大震災についても、その甚大な被害を重く受け止めつつも、政府と現地は復旧・復興の歩みを始めており、各種インフラや仮設住宅の整備等が進んでいる。かかる状況下では、雇用の創出と同時に労働条件の維持で一定の生活レベルを維持することが不可欠である。被災地の生活再建のためにも、地域別最低賃金の引上げが重要と主張した。
こうした状況を踏まえれば、雇用戦略対話の合意に掲げられた目標の達成に向け、歩みを止めない目安を具体的に示すことが必要であると主張した。具体的には、800円との乖離が大きいC、Dランクへの配慮を含めて、全ランク有額の目安を示すべきであると最後まで強く主張した。
また、生活保護との乖離解消については、震災の影響に配慮しつつも、最低賃金法上も要請されており、生活保護との乖離がある地域においては、一気に解消することを求めつつ、少なくとも地方最低賃金審議会が定めた予定解消期間どおりに解消することが必要であると強く主張した。
3 使用者側見解
使用者側委員は、今年度の目安審議の前提として、今年2月に取りまとめられた「目安制度のあり方に関する全員協議会報告」で合意された今後の目安審議のあり方、即ち、「法の原則及び目安制度を基に、時々の事情を総合的に勘案して行う」べきであり、昨年度のように「全国最低800円」という数値目標のみが強く意識された結果、全国38地域で使用者側が全員反対となるような事態は避けるべきである。法が定める地域別最低賃金決定の原則に照らした審議を行うためには、目安制度上重要な資料とされている賃金改定状況調査結果(特に第4表)を十分に踏まえるべきと強く主張した。
また、雇用戦略対話における最低賃金引上げに関する合意の内容については、政労使が努力していくことは当然であるが、当該合意に掲げられた目標の前提条件たる経済成長率が捨象されることになれば、法の原則をなす通常の事業の支払能力を無視する結果となる。このため経済成長率については、昨年度のように見通し値を用いることなく、実績値を用いる必要があることに加えて、中小企業の生産性等その他の前提条件の達成状況についても検証した上で、当該目標への対応を考えていく必要があると主張した。
さらに、日本経済は元々、長期間のデフレ等々数多くの成長阻害要因が存在していた状況下で、東日本大震災が発生し、被災地だけでなく日本経済全体を揺るがした。加えて、電力の供給制約も新たに生じており、極めて厳しい状況におかれていると主張した。
特に、中小企業については、震災に伴い、全地域の業況判断がリーマン・ショック後以上の落ち込みを示し、助成金等により雇用を繋ぐ等々極めて厳しく生産性の向上も確認できない。かかる状況下で、その実態にそぐわない引上げを行うことは、事業の存続自体を脅かすことになると主張し、個々の業界の例を挙げつつ、詳細に論じた。
以上の点を踏まえれば、今年度の目安審議に当たっては、Aランク以外は全てマイナスとなっている賃金改定状況調査結果を十分に踏まえるとともに、「時々の事情」、とりわけ、上述のとおり東日本大震災が全国に及ぼした甚大な影響を踏まえれば、相当に節度ある目安を示すべきである。具体的には、マイナスの目安も考えられる状況にある中では、少なくともゼロ円目安が適当であると最後まで強く主張した。
また、生活保護との乖離解消については、地域の使用者の心情を代弁すれば、三度乖離額が拡大する等、「逃げ水」のようである。法の原則にかんがみ、乖離額が大きく拡大した地域の解消期間を延長するなど柔軟な対応が不可欠であると主張した。
4 意見の不一致
本小委員会(以下「目安小委員会」という。)としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかった。
5 公益委員見解及びこれに対する労使の意見
公益委員としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、今年度の目安審議については、平成23年2月10日に中央最低賃金審議会において了承された「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告」の4(2)で合意された今後の目安審議のあり方や、雇用戦略対話における最低賃金の引上げに関する合意(平成22年6月3日雇用戦略対話第4回会合。以下「雇用戦略対話合意」という。)及び中小企業への支援に関する合意(同年12月15日同第6回会合)を踏まえ、加えて、平成23年3月11日に発生した東日本大震災による地域への影響に配意した上で、上記の労使の小規模企業の経営実態等への配慮及びそこに働く労働者の労働条件の改善の必要性に関する意見等にも表れた諸般の事情を総合的に勘案し、公益委員による見解を下記1のとおり取りまとめ、目安小委員会としては、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。
なお、公益委員としては、雇用戦略対話合意については、できる限り早期に全国最低800円を確保すること、その前提となっている経済成長、また、中小企業の生産性向上、中小企業に対する支援等の実施状況に配慮すべきものと考える。
また、地方最低賃金審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点並びに平成20年度以降の公益委員見解で示した考え方に基づく生活保護水準と最低賃金との乖離額の解消方法の見直しに関し、下記2のとおり示し、併せて総会に報告することとした。
さらに、政府において、雇用戦略対話合意に掲げられた目標の円滑な達成を支援するため、「最低賃金引上げに向けた中小企業への支援事業」をはじめとする中小企業に対する支援等に引き続き取り組むことを要望する。また、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
なお、下記1及び2の公益委員見解については、労使双方ともそれぞれ主張と離れた内容となっているとし、不満の意を表明した。
記
(以下、別紙1と同じ)
[別添]
