添付一覧
○障害者の地域生活への移行を促進するための経済的支援施策について(通知)〔生活保護法〕
(平成22年3月31日)
(/社援保発0331第4号/社援地発0331第1号/障企発0331第5号/障精発0331第3号/)
(各都道府県・各指定都市障害保健福祉主管部(局)長あて厚生労働省社会・援護局保護課長、厚生労働省社会・援護局地域福祉課長、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長通知)
平素より、障害保健福祉行政の推進にご尽力いただき、厚く御礼申し上げます。
さて、精神保健医療福祉の改革については、平成16年9月に「精神保健医療福祉の改革ビジョン」(以下「改革ビジョン」という。)がとりまとめられ、これまで、「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本理念の実現に向けた施策を展開してきたところです。
また、平成20年4月から、改革ビジョンの後期5か年の重点施策群の策定に向けて、精神保健医療福祉の更なる改革の具体像を提示することを目的として、「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」を開催し、平成21年9月には報告書が取りまとめられました。
本報告書においては、地域を拠点とする共生社会の実現に向けて、入院医療中心から地域生活中心へという基本理念に基づく施策の立案・実施を更に加速すべきとし、その一環として、「地域生活への移行の際に必要となる経済的な支援をより円滑に利用できるよう、その一層の周知等を図るべき」、また、「病院からの地域移行だけでなく、家族と同居しての生活から、グループホーム・ケアホームや民間賃貸住宅等でのより自立した生活への移行が円滑に行われるようにするという視点も持つべき」という提言がされています。
また、入所施設についても、障害福祉計画において福祉施設の入所者の地域生活への移行に関する目標値を定め推進することとされているなど、障害者施策において、障害者の地域生活への移行支援は最重要の課題の一つとなっています。
そこで、今般、障害者の地域生活への移行支援に資するよう、関連する経済的支援施策について下記のとおり取りまとめましたので、各都道府県及び指定都市におかれましては、十分にご理解のうえ、制度の一層の活用を図っていただくとともに、都道府県におかれましては、管内市町村へも周知していただきますようお願いいたします。
なお、本通知に示すもののほか、住宅の確保に関する施策については、平成21年11月12日付け社援地発1112第3号、障企発1112第1号、障障発1112第1号、国住備第84号「障害者の住まいの場の確保のための福祉部局と住宅部局の連携について」もご参照下さい。
また、本通知は、障害者の地域移行に係る経済的支援施策について、全国共通の取扱いを示したものであり、従前より各地域において生活保護部局等と連携して行っている先進的な取組みについては、引き続き積極的な推進を図っていただきますようお願いいたします。
記
1 住宅の確保に関する経済的支援について
(1) 生活保護法による住宅入居費等の支給について
長期にわたり精神科病院等に入院中の精神障害者又は入所施設に入所中の障害者(以下「入院患者等」という。)が退院・退所し地域生活へ移行する場合や、家族と同居している障害者が家族から独立し新たに地域生活を始める場合において、生活保護を申請し、その後、生活保護が開始された場合には、民間賃貸住宅の賃貸借契約に際し必要な敷金、礼金及び賃借料等並びに生活保護の申請から開始までの間の必要経費について、生活保護の住宅扶助費等の基準額の範囲内で支給されることとなります。
(2) 生活福祉資金貸付制度による住宅入居費の貸付について
入院患者等が退院・退所し地域生活へ移行する場合や、家族と同居している障害者が家族から独立し新たに地域生活を始める場合において、民間賃貸住宅の賃貸借契約に際し、預貯金等の状況から敷金、礼金及び賃借料等の確保が困難な場合には、生活福祉資金貸付制度(別紙1)における福祉費の活用により、原則連帯保証人が必要となるが、連帯保証人がいない場合でも、当該費用を借入れることができるので、当該制度について周知していただくようお願いいたします。
また、入院・入所中又は家族と同居中に生活福祉資金貸付制度の利用申請を行った上で、退院・退所後又は独立後、速やかに生活保護を申請し、その後、生活福祉資金が交付されて敷金、礼金及び賃借料等を支払い、後日生活保護が開始された場合には、当該費用について住宅扶助費の基準額の範囲内で遡って支給されることとなるので、ご了知下さい。
その際、本人が負担を感じることなく地域生活への移行支援を行う観点からは、本来予定している住居への入居及び生活の開始が速やかに行われることが重要であるため、退院日と生活保護の申請と生活福祉資金の貸付は同日になされることが望ましいが、生活保護の申請後、生活福祉資金が支払われ入居するまで、できる限り期間が短くなるよう、3に示す地域移行推進員等は、入院・入所中又は家族と同居中から都道府県社会福祉協議会や生活保護部局及び不動産会社・家主等と敷金、礼金等の支払い時期も含めて、十分連携し計画的な支援を行うようお願いいたします。
2 地域移行に関する経済的支援について
(1) 地域移行支度経費支援事業について
入院患者等については、地域生活に移行する際に、地域生活で新たに必要となる物品を購入するための費用がかかることから、当該費用に対して助成することを目的として、障害者自立支援対策臨時特例交付金において地域移行支度経費支援事業(別紙2)を創設したところですので、当該事業の積極的な実施について検討していただくようお願いいたします。
(2) 公的な家賃債務保証制度について
民間賃貸住宅の賃貸借契約に際し、保証人の確保が困難な者については、障害者等の入居を受け入れることとしている賃貸住宅に対し、未払い家賃の債務保証を(財)高齢者住宅財団が実施する「家賃債務保証制度」(別紙3)があるので、当該制度を周知していただくとともに、本人の意向を十分に確認したうえで、制度の活用を図るようお願いいたします。なお、以下のとおり、平成21年度から対象となる障害者の範囲が拡充されるとともに、滞納家賃にかかる保証月数も延長されておりますので、ご留意下さい。
〈障害者の対象〉
身体障害者(改正前)1~4級→(改正後)1~6級
精神障害者(改正前)1~2級→(改正後)1~3級
〈保証月数〉
(改正前)家賃の6ヶ月→(改正後)家賃の12ヶ月
3 精神障害者地域移行支援特別対策事業について
精神障害者地域移行支援特別対策事業(平成20年5月30日付け障発第0530001号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知により実施する事業をいう。)では、受入条件が整えば退院可能な精神障害者の地域生活への移行を支援するため、地域移行推進員及び地域体制整備コーディネーターを配置しているところですが、本人が退院・退所後に民間賃貸住宅への入居を希望している場合には、本人の意向を十分に確認の上、退院・退所前から病院、家主・不動産会社、都道府県社会福祉協議会及び生活保護部局等と十分に連携を図り、上記の経済的支援施策に止まらず、円滑な支援が行われるようご配慮をお願いいたします。
別紙1
生活福祉資金貸付制度の概要
1 実施主体
都道府県社会福祉協議会
2 貸付対象
低所得者世帯:必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯(市町村民税非課税程度)
障害者世帯:身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者等の属する世帯
高齢者世帯:65歳以上の高齢者の属する世帯
3 貸付資金の種類
総合支援資金、福祉資金(福祉費)、教育支援資金、不動産担保型生活資金
4 連帯保証人
原則、連帯保証人を立てるものとする。ただし、連帯保証に立てない場合も貸付可能。
5 貸付金利子
連帯保証人を立てる場合は無利子
連帯保証人を立てない場合は年1.5%
※緊急小口資金、教育支援資金は無利子
不動産担保型生活資金は年3%又は長期プライムレートのいずれか低い利率
6 貸付決定等
市町村社協において貸付要件等の必要な確認をしたうえで、都道府県社協において、審査決定する。
別紙2
地域移行支度経費支援事業
1 事業の目的
入所施設の入所者や精神科病院の入院患者の地域生活への移行を促進するため、地域での生活において必要となる物品の購入について支援を行うことを目的とする。
2 事業の内容
(1) 実施主体 都道府県
(2) 事業の内容
入所施設の入所者又は精神科病院の入院患者が地域生活に移行するに当たって、地域生活で新たに必要となる物品を購入するための費用の助成を行う。
・対象施設:障害者支援施設、宿泊型自立訓練事業所、精神障害者退院支援施設、精神科病院(精神科病院以外の病院で精神病床を有するものを含む。)、身体障害者療護施設、身体障害者入所更生施設、身体障害者入所授産施設、知的障害者入所更生施設、知的障害者入所授産施設、知的障害者通勤寮、精神障害者生活訓練施設、精神障害者入所授産施設
・対象者:対象施設に2年以上入所等している障害者(宿泊型自立訓練事業所、精神障害者退院支援施設、知的障害者通勤寮及び精神障害者生活訓練施設を除く対象施設に2年以上入所・入院していた者に限る。)であって、居宅(賃貸住宅を含み、家族等との同居の場合を除く。)、ケアホーム、グループホーム又は福祉ホームに移行する者。
・対象物品:地域生活を開始するに当たり必要となる物品類(布団・枕・シーツ等の寝具、タオル、照明器具、食器類等であってグループホーム等の共用物品は除く。)
(3) 補助単価 1人あたり30,000円以内
3 補助割合 国1/2、都道府県1/4、市町村1/4
※(精神科病院、精神障害者生活訓練施設及び精神障害者入所授産施設からの退院・退所については、国1/2、都道府県(政令指定都市)1/2)
4 実施年度 平成21年度~23年度
5 留意事項
事業を行うに当たっては、都道府県が対象施設に助成を行い、原則対象施設が対象者に現物をもって支給若しくは購入の支援又は現金の支給を行うこと。
別紙3
家賃債務保証制度の概要
1 対象住宅
高齢者世帯または障害者世帯、子育て世帯、外国人世帯もしくは解雇等による住居退去者世帯の入居を敬遠しないものとして、高齢者住宅財団と家賃債務保証制度の利用に関する基本約定を締結した賃貸住宅
2 対象世帯
(1) 高齢者世帯
高齢者円滑入居賃貸住宅に入居する満60歳以上の高齢者の世帯(同居者は、配偶者を除き原則として満60歳以上の親族に限る。)
(2) 障害者世帯
障害の程度が次に該当する者が入居する世帯
①身体障害:1~6級 (改正前1~4級)
②精神障害:1~3級 (改正前1~2級)
③知的障害:精神障害に準ずる
(3) 子育て世帯
18歳以下の扶養義務のある者が同居する世帯(収入階層の50%未満の世帯に限る)
(4) 外国人世帯
外国人登録証明書の交付を受けた者が入居する世帯
(5) 解雇等による住居退去者世帯
平成20年4月1日以降、解雇等により住居から退去を余儀なくされた世帯(その後の就労等により賃料を支払える収入があるものに限る。)
3 保証の対象
(1) 滞納家賃(共益費及び管理費を含む)
(2) 原状回復費用および訴訟費用
※ (1)(2)ともに、家賃滞納により賃貸住宅を退去する場合に限る。
4 保証限度額
(1) 滞納家賃:月額家賃の12ヶ月分に相当する額(改正前6ヶ月分)
(2) 原状回復費用および訴訟費用:月額家賃の9ヶ月分に相当する額
5 保証期間
原則2年間(賃貸借契約期間に合わせて変更可能。更新も可能。)
6 保証料
2年間の保証で月額家賃の35%を一括払い(原則入居者負担)
今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会報告書(抜粋)
「精神保健医療福祉の更なる改革に向けて」(平成21年9月24日)
Ⅳ 精神保健医療福祉の改革について
3.地域生活支援体制の強化
(3)改革の具体像
②障害福祉サービス等の拡充
エ 入院中から退院までの支援等の充実について
○ 精神保健医療福祉に従事する者について、精神障害者の地域生活への移行及び地域生活の支援等において、相互に連携・協力を図り、精神障害者の地域生活への移行や地域生活の支援に取り組む責務を明確化すべきである。
○ 病院等から地域生活への移行を目指す精神障害者に対する個別支援の充実強化とともに、自立支援協議会等の機能の活性化等を通じて、地域資源の開発や地域における連携の構築など、地域生活に必要な体制整備を行う機能についても、引き続き充実を図るべきである。
○ 長期にわたり入院している精神障害者をはじめとして地域生活への移行が円滑に行われるよう、入院中の段階から地域生活への移行に先立って、グループホーム等での生活の体験など、地域移行に向けた体験利用の活用を進めるとともに、地域移行の際に必要となる経済的な支援をより円滑に利用できるよう、その一層の周知等を図るべきである。
○ また、上記のような支援においては、本人と家族との自立した関係を築く観点を踏まえ、病院からの地域移行だけでなく、家族と同居しての生活から、グループホーム・ケアホームや民間賃貸住宅等でのより自立した生活への移行が円滑に行われるようにするという視点も持つべきである。