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○我が国に不法に持ち込まれる犬の対策等の徹底について

(平成14年9月27日)

(健感発第0927001号)

(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局結核感染症課長通知)

昨今、外国船による我が国への不法な犬の持ち込み事例が報告されており、我が国への狂犬病の侵入防止についての対策を強化する必要があることから、狂犬病予防法を所管する厚生労働省と動物検疫業務を所管する農林水産省において、その対策についての協議を行ってきたところであります。今般、その協議結果を踏まえ、別紙の「我が国に不法に持ち込まれる犬の対策等に係る取扱要領について」を取りまとめましたので、本取扱要領に基づき、狂犬病予防対策の徹底をお願いします。

また、狂犬病予防対策の実施にあたっては、「狂犬病予防法に基づく犬の登録等の徹底について」(平成14年6月11日付け厚生労働省健康局結核感染症課長通知)、「狂犬病対応ガイドライン2001」(平成13年10月25日付け厚生労働省結核感染症課事務連絡)等を参考に、より一層の徹底を図るようお願いします。

なお、本件については、別添写しのとおり関係機関に対し、協力を依頼していることを申し添えます。

(別紙1)

我が国に不法に持ち込まれる犬の対策等に係る取扱要領について

厚生労働省健康局結核感染症課

農林水産省生産局畜産部衛生課

1 趣旨

本要領については、我が国に不法に持ち込まれる犬(以下「不法上陸犬」という。)等の取扱いについて、国、地方自治体、港湾関係者等の一致した理解を得ることにより、十分な連携を保ち、狂犬病等の侵入防止に万全を図るために資するものとする。

2 狂犬病予防法の事務と役割について

狂犬病予防法(昭和25年8月26日法律第247号。以下「法」という。)に基づく諸事務は、以下のとおり、法第7条の輸出入検疫に関する事務を除き厚生労働省が所管し、輸出入検疫に関する事務は、農林水産省の所管となっている。

ア 厚生労働省及び地方自治体

狂犬病の発生予防及びまん延防止のため国内の犬の管理(登録、注射及び抑留)等の徹底を図る(通常時の国内の犬の管理については地方自治体の自治事務、狂犬病発生時の措置については法定受託事務)。

イ 農林水産省(動物検疫所)

我が国への狂犬病侵入防止のため、法第7条第2項の規定に基づき定められた犬等の輸出入検疫規則(平成11年10月1日付け農林水産省令第68号。以下「検疫規則」という。)により、犬等の輸出入検疫を実施する。

また、我が国への伝染性疾病侵入防止のため、家畜伝染病予防法(昭和26年5月31日法律第166号。以下「家伝法」という。)に基づき、犬の輸入検疫を実施する。

3 不法上陸犬に関する具体的対応について

(1) 不法上陸犬の発生防止のための啓発について

輸出入検疫(法第7条、家伝法第40条)、検疫規則に基づく検疫信号(検疫規則第6条、家伝法第39条)、搬出禁止(検疫規則第7条、家伝法第39条)等について改めて周知徹底を図る必要があることから、農林水産省動物検疫所(以下「動物検疫所」という。)が準備する外国語によるパンフレットを外国船員等が容易に入手できるところでの配布、又は外国語による立て看板を外国船員等が容易に目に触れるところへの設置に各関係機関は協力する。

(2) 不法上陸犬が疑われた場合等の対応

ア 不法上陸犬の抑留・検疫等の実施

これまでの事例から、不法上陸犬は、海外の漁船等が持ち込む例が確認されていることから、港湾地域において、法第6条の規定に基づく犬の抑留等を適切に実施することが重要である。不法上陸犬であると疑われる犬が徘徊していた場合、各都道府県、政令市、特別区(以下「都道府県等」という。)は緊急的措置として、当該犬の捕獲を実施する。当該犬の取扱については他の狂犬病感受性動物との接触がないよう注意する。

不法上陸犬が発見され当該犬の所有者等が確認された場合には、都道府県等は所有者等に対し、動物検疫所の指示なしに犬等を上陸させることは法違反であり、我が国に輸入する際には法第7条の規定に基づく輸入検疫を受ける必要がある旨を指導するとともに、輸入意思を確認する。

輸入意思がある場合、その旨を都道府県等の担当課を通じて該当区域を管轄する動物検疫所(別紙2参照)に通知し、輸入意思がない場合には、上記パンフレットを手交する等により、陸揚げしないよう指導する。なお、犬を輸入できる港(以下「指定港」という。)は家伝法第38条の規定により制限されていることから、当該犬の所有者等により輸入意志が確認された場合においても、不法上陸犬が確認された港が指定港ではない場合は、都道府県等は所有者等に対し上記パンフレットを手交する等により、輸入できないことを指導する。

なお、不法上陸犬は家伝法に抵触する可能性があるとともに、法第7条の規定に抵触することから、都道府県等の狂犬病予防担当課は、不法上陸犬を発見した場合は、犬等の所有者名、搭載船舶名等の関連情報を確認するとともに、その情報を動物検疫所、厚生労働省健康局結核感染症課(以下「結核感染症課」という。)に通知し、必要に応じ、警察等の関係機関へ通報する。通知を受けた動物検疫所は農林水産省生産局畜産部衛生課(以下「衛生課」という。)へ情報を提供する。

農林水産省は提供された情報に基づき、必要に応じ、該当外国政府機関に申し入れ等を行う。

イ 不法上陸犬等による咬傷事故への対応

不法上陸犬又は不法上陸犬であると疑われる犬による咬傷事故が発生した場合には、保健所等は直ちに当該犬の抑留を行うとともに、観察を実施し、所有者に対しては観察終了予定日以降引取に来るか所有権を放棄するよう指示する。咬傷被害者に対しては、速やかに適切な治療(別紙3参照)が受けられるよう対応する。なお、各地域における狂犬病ワクチン接種実施可能機関については、厚生労働省検疫所のホームページ「海外渡航者のための感染症情報」(http://www.forth.go.jp/)の「予防接種機関」のページを参考とすること。

加えて、都道府県等の担当課は、動物検疫所、結核感染症課に通知し、必要に応じ、地元警察等の関係機関へ通報する。通知を受けた動物検疫所は衛生課へ情報を提供する。結核感染症課は都道府県等の担当課に対し必要な技術的助言を行う。

ウ その他

不法上陸犬とは趣旨を異にするものの、仮に、輸入検疫中の犬等が国内で盗難に遭う、あるいは逃亡する等の事故が生じた場合には、農林水産省は、必要に応じ各関係機関へ協力要請することから、要請を受けた都道府県等の関係機関は当該犬等の発見と捕獲に努め、狂犬病侵入防止に万全を図る。

(3) 港湾地域における国内の犬の管理の徹底

万が一、不法上陸犬により狂犬病が侵入した場合のまん延防止の観点から、地方自治体(都道府県等、保健所、市町村等)は、特に港湾地域における国内犬の管理(登録、予防注射、未登録犬等の抑留)の徹底を図る。

地方自治体は、地域港湾関係者等との連携のもと、これらの措置を実施する。また、地元住民への犬の登録・注射の徹底、不法上陸犬発見時の通報の励行、飼犬の放し飼い防止を目的とした条例等の徹底を指導する。

(4) 港湾地域における地域連携体制の整備

上記(1)、(2)及び(3)の対策を円滑かつ効率的に推進するため、犬を搭載する外国船の入港の頻度が高い各海港を管轄する地域において、地方自治体、動物検疫所、地元警察、船舶・港湾関係者、地方獣医師会等からなる地域連絡協議会等を設置するなど、地域連携体制の整備に努める。

なお、動物検疫所は、地域連絡協議会等に参画するなど、地域関係者との連携を図り、また、厚生労働省は、地域連絡協議会等への技術的助言等を行い、もって、不法上陸犬の対応に万全を期する。

(別紙2)

犬等の到着予定港を管轄する動物検疫所の区域について

農林水産省生産局畜産部衛生課

担当する動物検疫所

電話番号

到着予定港の区域

動物検疫所

動物検疫所

(045)751―5921

栃木県、群馬県、埼玉県、神奈川県、山梨県

北海道出張所

(0123)24―6080

北海道

仙台空港出張所

(022)383―2302

青森県、秋田県、山形県、岩手県、宮城県、福島県

新潟空港出張所

(025)275―4565

新潟県

東京出張所

(03)3529―3021

東京都(東京国際空港を除く。)、

千葉県(千葉港に限る。)

清水出張所

(0543)53―5086

静岡県

成田支所

成田支所

(0476)34―2342

茨城県、千葉県(千葉港を除く。)

東京空港出張所

(03)5756―4860

東京都(東京国際空港に限る。)

名古屋支所

名古屋支所

(052)651―0334

長野県、岐阜県、

愛知県(名古屋空港を除く。)、三重県

小松出張所

(0761)24―1407

富山県、石川県、福井県

名古屋空港出張所

(0568)28―3054

愛知県(名古屋空港に限る。)

神戸支所

神戸支所

(078)222―8990

京都府、滋賀県、兵庫県

大阪出張所

(06)6575―3466

大阪府(関西国際空港を除く。)、

奈良県、和歌山県、

岡山空港出張所

(086)294―4737

岡山県、鳥取県、島根県

広島空港出張所

(0848)86―8118

広島県

関西空港支所

関西空港支所

(0724)55―1955

大阪府(関西国際空港に限る。)

小松島出張所

(08853)2―2422

徳島県、香川県、愛媛県、高知県

門司支所

門司支所

(093)321―1116

山口県、福岡県(北九州及び筑豊家畜保健衛生所の管轄区域のうち、福岡空港を除いた区域。)、大分県

博多出張所

(092)603―0267

佐賀県、福岡県(中央、両筑及び筑後家畜保健衛生所の管轄区域のうち、福岡空港を除いた区域。)

福岡空港出張所

(092)477―0080

福岡県(福岡空港に限る。)、熊本県

長崎空港出張所

(0957)54―4505

長崎県

鹿児島空港出張所

(0995)43―9061

宮崎県、鹿児島県

沖縄支所

沖縄支所

(098)861―4370

沖縄県(那覇空港を除く。)

那覇空港出張所

(098)857―4468

沖縄県(那覇空港に限る。)

(別紙3)

不法上陸犬による咬傷被害者への治療について

厚生労働省健康局結核感染症課

○不法上陸犬に咬まれた人への対応

狂犬病の特徴(参考参照)と近隣のアジア諸国をはじめとする諸外国が狂犬病発生国であることを踏まえ、不法上陸犬に咬まれた人への対応は、狂犬病ウイルスによる感染症を想定して狂犬病ワクチン接種による暴露後発病予防を中心に以下の方法に従って行うことが望ましい。

①ただちに傷口を流水と石鹸で十分に洗浄する。

②70%エタノールまたはポビドンヨード液で消毒する。

③組織培養不活化狂犬病ワクチンを初回接種日を0日として、0、3、7、14、30日の5回注射する。場合により90日に6回目の注射をする。

ただし、犬の観察経過等の結果から、狂犬病ウイルスの感染が否定された場合にあっては途中で接種を中止することも可能

なお、各地域における狂犬病ワクチン接種実施可能機関については、厚生労働省検疫所のホームページ「海外渡航者のための感染症情報」(http://www.forth.go.jp/)の「予防接種機関」を参照されたい。

④咬傷の処置と2次感染予防を行い、破傷風トキソイドを投与する。

(参考)狂犬病の特徴

狂犬病は狂犬病ウイルスの感染によって引き起こされる致死的な人獣共通感染症であり、下記のような特徴がある。

①有効な治療法がないため、発病すればほぼ100%死亡する

②狂犬病患者の大半では潜伏期が1~3カ月と長い

③ほとんどすべての哺乳動物が罹患する

④地域によって狂犬病感染源動物が異なる

⑤発病する前に狂犬病ウイルス感染の有無を知る手段がない

現在でも狂犬病ウイルスに有効な薬剤はなく、狂犬病発生国では狂犬病動物に咬まれた場合の対応として、ただちに狂犬病ワクチン接種等を始めて、潜伏期間中に免疫を獲得させる狂犬病暴露後発病予防が行われている。

出典:狂犬病対応ガイドライン2001

(平成13年10月25日厚生労働省健康局結核感染症課事務連絡)

URL:http://www.forth.go.jp/mhlw/animal/page b/b04.html

(上記ホームページ「関係法規集」よりダウンロード可能)

※同旨の通知は社団法人日本医師会 感染症危機管理対策室長、社団法人日本獣医師会会長、財務省関税局監視課長、財務省関税局業務課長、法務省入国管理局入国在留課長、海上保安庁警備救難部刑事課長、警察庁生活安全局生活環境課長、動物検疫所長、在京ロシア大使館経済担当参事官 S.V.ワシエリフにも発出された。