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○地域保健対策の推進に関する基本的な指針の一部改正について

(平成24年7月31日)

(健発0731第8号)

(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省健康局長通知)

地域保健法(昭和22年法律第101号)第4条第3項の規定に基づき、地域保健対策の推進に関する基本的な指針の一部を改正する件(平成24年厚生労働省告示第464号)が本日告示されたところであるが、この告示による改正の趣旨及び内容は下記のとおりであるので、これらを踏まえつつ、所要の取組を進めるとともに、貴管下市町村、関係団体及び関係機関等に対する周知徹底方をお願いする。

第1 改正の趣旨

地域保健対策については、これまで、地域保健法第4条第1項に基づく地域保健対策の推進に関する基本的な指針(平成6年厚生省告示第374号。以下「基本指針」という。)に基づき推進されてきたところである。

しかし、少子高齢化の更なる進展、共働き世帯や単身世帯の増加などの国民の生活スタイルの変化、国民の健康課題としての非感染性疾患(NCD)対策の重要性の増大や食中毒事案の広域化など近年の地域保健を取り巻く状況は、大きく変化しており、地域保健行政は、地方公共団体間での役割の見直しが行われる中でその役割が多様化しているため、行政を主体とした取組だけでは、今後更に高度化、多様化していく国民のニーズに応えることが困難な状況となっている。また、保健事業の効果的な実施、高齢化社会に対応した地域包括ケアシステムの構築や社会保障を維持・充実するために支え合う社会の回復が求められている状況に加えて、平成23年3月11日に発生した東日本大震災における被災者の健康管理において様々な課題が表出したこと等を踏まえ、今般、基本指針について所要の改正を行ったものである。

第2 改正の内容

1.ソーシャルキャピタルを活用した自助及び共助の支援の推進について

地域保健対策は、個人のニーズにきめ細かく対応するため、市町村による保健サービスと福祉サービスの一体的な提供を中心に推進してきたが、近年の地域保健を取り巻く状況の変化を踏まえ、更に多様化、高度化する住民ニーズに対応するためには、これまでの行政による取組だけでは困難な状況となっている。

こうしたことを踏まえ、平成24年3月27日にとりまとめられた地域保健対策検討会報告書では、今後の地域保健対策のあり方として、個々の住民に対する行政サービスを充実させるとともに、地域に根ざした信頼や社会規範、ネットワークといった社会関係資本等(以下「ソーシャルキャピタル」という。)の核となる人材の育成や、その存在する場である学校や企業、NPO等の民間団体、ボランティア団体や自助グループなどへの支援や活用を通じて地域住民の共助活動の活性化を図ることが重要である旨の指摘がなされている。

以上のことから、以下の事項について規定したものである。

なお、これまでも保健活動推進員や食生活改善推進員等のソーシャルキャピタルの核となる人材により、地域における健康づくりに関する共助の取組が進められているが、近年の都市化の進展や住民の生活スタイルの変化に対応した共助の体制の再構築を目指して、その核となる人材の育成等に関し、国、都道府県、市町村が取り組むことが必要である。

(1) 地域保健対策の推進の基本的な方向の事項における自助及び共助の支援の推進の事項として次の内容を追加すること。

少子高齢化の更なる進展等社会状況の変化を踏まえ、住民の自助努力に対する支援を充実するとともに、共助の精神で活動する住民に対し、ソーシャルキャピタルを活用した支援を行うことを通じて、多様化、高度化する住民のニーズに応えたサービスを提供する必要があること。

都道府県及び市町村は、地域保健対策を講ずる上で重要な社会資源について十分に調査し、ソーシャルキャピタルの核となる人材の育成に努めるとともに、学校、企業等に係るソーシャルキャピタルの積極的な活用を図る必要があること。

(2) 保健所の運営に関する事項における企画及び調整の機能の強化に関する事項として次の内容を追加すること。

ソーシャルキャピタルを活用した健康づくりの支援を推進すること。

(3) 市町村保健センターの運営に関する事項として次の内容を追加すること。

市町村は、市町村保健センター等の運営に当たっては、地域のNPO、民間団体等に係るソーシャルキャピタルを活用した事業の展開に努めること。

また、市町村健康づくり推進協議会及び検討協議会の運営に当たっては、学校及び企業等との連携及び協力を図るとともに、地域のNPO、民間団体等に係るソーシャルキャピタルの核である人材の参画も得て、地域の健康課題を共有しながら地域保健対策を一体的に推進することが望ましいこと。

(4) 地域保健対策に係る人材の確保に関する事項として次の内容を追加すること。

① 市町村は、行政職員の育成のみならず、地域においてソーシャルキャピタルの核となる人材の発掘及び育成を行うとともに、学校、企業等との仲立ちとなる人材の確保についても計画的に取り組むこと。

② 国は、健康なまちづくりの全国的な推進のため、地方公共団体等が行うソーシャルキャピタルの核となる人材の育成に係る支援に努めること。

(5) 地域住民との連携及び協力に関する事項として次の内容を追加すること。

① ソーシャルキャピタルを活用し、住民参画型の地域のボランティア等の活動や地域の企業による活動が積極的に展開されることが重要であること。

② ソーシャルキャピタルは、健康危機が生じた場合に地域住民の心の支え合い等に有効に機能することから、市町村、都道府県及び国は、健康づくり活動や行事等の機会を通じて、ソーシャルキャピタルを醸成していく取組を推進することが必要であること。

2.地域の特性をいかした保健と福祉の健康なまちづくりの推進について

健康増進法(平成14年法律第103号)第7条第1項の規定に基づく国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針の改正において、個人の健康は、家庭、学校、地域、職場等の社会環境の影響を受けることから、社会全体として、個人の健康を支え、守る環境づくりの取組を総合的に支援する環境を整備することや、地域や世代間の相互扶助など、地域や社会の絆、職場の支援等が機能することにより、時間的又は精神的にゆとりのある生活の確保が困難な者や、健康づくりに関心のない者等も含めて、社会全体が相互に支え合いながら、国民の健康を守る環境を整備することが示されている。また、報告書においては、ソーシャルキャピタルを活用した健康づくり活動を展開することにより、住民が積極的に他の住民と交流し、地域の絆がさらに深まったという事例や自治体全体の政策課題として「健康」をキーワードに掲げ、保健医療分野だけでなく組織全体で推進している事例も報告されている。

一方、平成22年国民健康・栄養調査結果では、所得や地域による肥満及び生活習慣の状況の違いが報告されている。このほか近年の社会経済的状況の変化を踏まえ、地域、職業、経済力、世帯構成等による健康状態やその要因となる生活習慣の差が報告されており、こうした健康格差が、今後深刻化することが危惧される。

以上のことから、ソーシャルキャピタルを活用し地域の特性をいかした保健と福祉の健康なまちづくりを推進し、個人の努力だけでなく地域社会全体で健康を支え、守ることができる環境づくりを目指し、以下の事項について規定したものである。

(1) 地域の特性をいかした保健と福祉の健康なまちづくりに関する事項として次の内容を追加すること。

市町村は、住民のニーズを踏まえた上で、保健サービス及び福祉サービスを一体的に実施できる体制を整備することが必要であること。また、これに加え、市町村は、地域保健を取り巻く状況の変化を踏まえ、行政サービスの充実だけでなく、学校、企業等の地域の幅広い主体との連携を進め、住民との協働による健康なまちづくりを推進し、全ての住民が健康づくりに取り組むことができる環境を整備することが求められること。

(2) 保健所の運営に関する事項における都道府県の設置する保健所に係る健康なまちづくりの推進の事項として次の内容を追加すること。

① 市町村による保健サービス及び福祉サービスを一体的に提供するとともに、ソーシャルキャピタルを広域的に醸成し、その活用を図ること。また、学校、企業等の関係機関との幅広い連携を図ることにより、健康なまちづくりを推進すること。

② 保健所は、地域の健康課題を把握し、医療機関間の連携に係る調整、都道府県による医療サービスと市町村による保健サービス及び福祉サービスとの連携に係る調整を行うことにより、地域において保健、医療、福祉に関するサービスが包括的に提供されるよう市町村や関係機関等と重層的な連携体制を構築すること。

3.医療、介護、福祉等の関連施策との連携強化について

効率的かつ効果的な地域保健活動の展開を推進するため、地域保健対策の推進の基本的な方向に関する事項における医療、介護、福祉等の関連施策との連携強化の事項として、以下の内容について規定したものである。

(1) 住民のニーズの変化に的確に対応するためには、地域における保健、医療、介護、福祉等とそれぞれの施策間での連携及びその体制の構築が重要であること。このため、市町村は、住民に身近な保健サービスを介護サービス又は福祉サービスと一体的に提供できる体制の整備に努めること。

(2) 都道府県及び保健所(都道府県が設置する保健所に限る。)は、広域的な観点から都道府県管内の現状を踏まえた急性期、回復期及び維持期における医療機関間の連携、医療サービスと介護サービス及び福祉サービス間の連携による地域包括ケアシステムの強化に努めることが必要であること。

(3) 医療機関間の連携体制の構築においては、多くの医療機関等が関係するため、保健所が積極的に関与し、地域の医師会等との連携や協力の下、公平・公正な立場からの調整機能を発揮することが望まれること。

なお、保健所は、所管区域内の健康課題等の把握、評価、分析及び公表を行い、都道府県が設置する保健所にあっては所管区域内の市町村と情報の共有化を図るとともに、当該市町村と重層的な連携の下、地域保健対策を推進するほか、介護及び福祉等の施策との調整についても積極的な役割を果たす必要があること。

4.地域における健康危機管理体制の確保について

東日本大震災において、健康危機事案発生時における住民の健康管理の拠点である保健所や市町村保健センターそのものが被災した。報告書においては、避難住民の健康状態や避難所の衛生状態などの情報の把握及び共有や保健師の配置等の保健調整機能の確保等が課題として指摘されたことから所要の見直しを行うこととした。

また、新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)が制定されたことも踏まえ、以下の事項について規定したものである。

(1) 地域保健対策の推進の基本的な方向に関する事項における地域における健康危機管理体制の確保に関する事項として次の内容を追加すること。

① 都道府県及び市町村は、大規模災害時に十分に保健活動を実施することができない状況を想定し、他の地方公共団体や国とも連携して、大規模災害時の情報収集、医療機関との連携を含む保健活動の全体調整、保健活動への支援及び人材の受入れ等に関する体制を構築する必要があること。

② 国、都道府県及び市町村は、健康危機の発生時に地域住民が状況を的確に認識した上で行動ができるよう、地域住民や関係者との相互の情報及び意見の交換(以下「リスクコミュニケーション」という。)を実施するよう努める必要があること。

(2) 保健所の運営に関する事項における地域における健康危機管理の拠点としての機能の強化に関する事項として次の内容を追加すること。

健康危機管理に対する住民の意識を高めるため、リスクコミュニケーションに努めること。

(3) その他の地域保健対策の推進に関する重要事項における地域における健康危機管理体制の確保に関する事項として次の内容を追加すること。

① 都道府県は、健康危機に関する事案の発生時に、市町村と有機的に連携した対応ができるよう、市町村と密接な連携体制を整えること。

② 都道府県及び市町村は、複数の都道府県に及ぶ大規模災害の発生に備えて、地方公共団体間で情報収集、情報提供、要支援者への支援等の保健活動の連携体制を強化するとともに、国は、広域的な災害に係る保健活動に資する人材の育成を支援し、保健活動に携わる保健師等について、迅速に派遣のあっせん・調整を行う仕組みを構築すること。

③ 新型インフルエンザ等対策については、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、新型インフルエンザ等の発生に備えた万全の体制を確立するため、都道府県は、政府行動計画に基づき都道府県行動計画を、市町村は、都道府県行動計画に基づき市町村行動計画を速やかに策定すること。保健所及び地方衛生研究所は、当該行動計画を踏まえ、地域の保健医療の管理機関としての機能及び役割を果たすとともに、都道府県は、市町村への技術的支援などを積極的に行うこと。

5.学校保健との連携について

ライフステージを通じた正しい生活習慣の確立のためには、生活習慣が形成される時期に展開される学校保健と地域保健とが密接に連携することの意義は極めて大きい。同時に、学校は、児童生徒のほか保護者や地域住民にとっても交流の場となっており、地域のソーシャルキャピタルが存在する場と位置付け活用することが重要である。このことから、例えば、保健所や市町村保健センターが学校医、学校歯科医、学校薬剤師等との連携の場である学校保健委員会やより広域的な協議の場へ参画するなど、これまでの地域保健と産業保健との連携に加えて、学校保健との連携についても推進することとし、地域保健、学校保健及び産業保健の連携に関する事項として、以下の内容について規定したものである。

(1) 保健所及び市町村は、学校、地域の学校医等との連携を図る場である学校保健委員会やより広域的な協議の場に可能な限り参画し、学校等との連携体制の強化に努めること。

(2) 地域保健対策に関する計画の策定に当たっては、学校保健及び産業保健との連携を図りつつ、整合性のとれた目標、行動計画を立て、それに基づき保健活動を推進すること。

6.科学的根拠に基づいた地域保健の推進について

これまでも、地域保健対策は科学的根拠に基づき推進されてきたが、報告書においては、地域保健対策に関する計画が地域において、調和のとれた計画として一体的に推進されることが効果的であること、また、住民との協働としての取組を推進するため、標準化された情報に基づく、住民への分かりやすい情報提供を含めたPDCAサイクルを確立すること等が重要であると指摘されたことを踏まえ、以下の事項について規定したものである。

(1) 科学的根拠に基づいた地域保健の推進に関する事項として次の内容を追加すること。

① 健康づくりに関する計画、がん対策に関する計画、母子保健に関する計画、健康危機管理に関する計画等の地域保健対策に関する計画について、地域において共通する課題や目標を共有し推進することが望ましいこと。

② 国、都道府県及び市町村は、地域保健に関して、それぞれが共通して活用可能な標準化された情報の収集、分析及び評価を行い、その結果を計画に反映させるとともに、関係者や地域住民に広く公表することを通じて、地域の健康課題とその解決に向けた目標の共有化を図り、地域保健対策を一体的に推進することが重要であること。また、保健所及び地方衛生研究所は技術的中核機関として、情報の収集、分析及び評価を行い、積極的にその機能を果たす必要があること。

(2) 市町村保健センターの運営に関する事項として次の内容を追加すること。

市町村は、保健所等の関係機関による施策評価を参考として業務の改善に努めること。

7.保健所の運営及び人材確保について

報告書においては、母子保健対策を始めとした保健業務に関する都道府県から市町村への移管が進み、都道府県の設置する保健所に求められる役割等に変化が生じているとの指摘がなされた。

また、医師である保健所長の確保が困難な状況が続いており、保健所長の兼務が増加傾向にあるとの現状も踏まえ、以下の事項について規定したものである。

なお、保健所は健康危機の発生時の重要な管理拠点であり、保健所長による的確かつ迅速な判断と指示が重要であることから地域保健法施行令(昭和23年政令第77号)第4条第1項の規定に基づく医師である保健所長の配置は重要であり、国においても、公衆衛生医師確保推進登録事業や医師、医学生への普及啓発の実施など公衆衛生医師確保対策を引き続き推進することとしている。

(1) 保健所の運営に関する事項における専門的かつ技術的業務の推進に関する事項の一部について次のように改正すること。

地域保健対策に関する専門的かつ技術的な業務について機能を強化するとともに、地域保健対策への地域住民のニーズの把握に努めた上で、専門的な立場から企画、調整、指導及びこれらに必要な事業を行うとともに市町村への積極的な支援に努めること。

(2) 地域保健対策に係る人材の確保に関する事項として次の内容を追加すること。

都道府県、政令市及び特別区は、医師である専任の保健所長の確保が著しく困難である場合には、保健所長の職責の重要性に鑑み、臨時的な措置として、地域保健法施行令第4条第2項各号のいずれにも該当する医師でない地域保健法第5条第1項に規定する地方公共団体の長の補助機関である職員を保健所長として配置するように努めること。

8.地方衛生研究所の機能強化について

広域化する食中毒の発生や強毒性の新型インフルエンザ等の感染症の発生が懸念されるなど、全国的なサーベイランス機能の強化や迅速な検査体制の確立が求められていることから、地域における科学的かつ技術的な中核機関である地方衛生研究所の機能強化として、以下の事項について規定したものである。

(1) 地域保健に関する調査及び研究に関する基本的事項における地方衛生研究所に関する事項について次のように改正すること。

地方衛生研究所は、保健所等と連携しながら、地域における科学的かつ技術的に中核となる機関として、その専門性を活用した地域保健に関する調査及び研究を推進すること。

(2) その他地域保健対策の推進に関する重要事項における地方衛生研究所の機能強化の事項として次の内容を追加すること。

地方衛生研究所を設置する地方公共団体は、強毒性の新型インフルエンザ等の感染症の発生や広域化する食中毒の発生等に備えたサーベイランス機能の強化や迅速な検査体制の確立と検査精度の向上が求められていることを踏まえ、地域における科学的かつ技術的に中核となる機関として地方衛生研究所の機能の一層の充実強化を図ること。

9.快適で安心できる生活環境の確保について

報告書において、地域住民が安心できる生活環境を確保するため、食中毒の広域化等に対応した情報共有体制の強化や監視員等の資質向上等とともに生活衛生同業組合等の自主的な取組の推進やリスクコミュニケーションによる住民理解の促進が重要であると指摘されたことを踏まえ、以下の事項について規定したものである。

(1) 快適で安心できる生活環境の確保に関する事項として次の内容を追加すること。

都道府県、国等は、食中毒等に係る情報共有体制の強化や食品衛生監視員等の資質向上等を通じた保健所の機能強化に努めること。また、消費者及び地域住民に対するサービス並びに食品の安全性等に係るリスクコミュニケーションを進めることが必要であること。

(2) その他地域保健対策の推進に関する重要事項における生活衛生対策に関する事項として次の内容を追加すること。

都道府県、政令市及び特別区は、生活衛生同業組合が理容業、美容業、クリーニング業、飲食店営業等の分野の衛生及び経営に関する課題を共有して、地域社会における公衆衛生の向上を図る役割を有していることを踏まえ、新規営業者等に対して生活衛生同業組合についての適切な情報提供を行う等、その機能や組織の活性化を図ること。また、生活衛生関係営業については、地方公共団体間で監視指導状況に大きな格差が生じている現状があり、監視指導の目標を設定する等、住民が安心できる体制の確保を図ること。

(3) その他地域保健対策の推進に関する重要事項における食品安全対策に関する事項として次の内容を追加すること。

都道府県、政令市及び特別区並びに保健所は、教育活動や広報活動を通じた食品安全に関する正しい知識の普及、インターネットを利用した電子会議の実施等を通じた食中毒に関する情報の収集、整理、分析、提供及び共有等を図ること。また、近年広域化している食中毒等飲食に起因する事故に対して、食中毒調査支援システム等を活用し、国、他の都道府県等及び関係部局と連携を図り、必要に応じて実地調査を行う疫学の専門家等の支援も得ながら、原因究明、被害拡大防止、再発防止対策等の一連の措置を迅速かつ的確に行うことができるよう体制を整備すること。

10.国民の健康づくり及びがん対策等の推進について

健康増進法第7条第1項の規定に基づく国民の健康増進の総合的な推進を図るための基本的な方針の改正が行われたこと、また、がん対策、肝炎対策及び歯科口腔保健対策の推進が重要な課題となっていることを踏まえ、以下の事項を規定したものである。

(1) 国民の健康づくりの推進に関する事項として次の内容を追加すること。

健康づくりの推進に当たっては、医療保険者、医療機関、薬局、地域包括支援センター、教育関係機関、マスメディア、企業、ボランティア団体等から構成される中核的な推進組織が、市町村保健センター、保健所を中心として、都道府県健康増進計画及び市町村健康増進計画に即して、これらの健康増進計画の目標を達成するための行動計画を設定し、各機関及び団体等の取組をそれぞれ補完し合う等職種間で連携を図ることにより、地域の健康課題の解決に向けた効果的な取組が図られることが望ましいこと。

(2) 国民の健康づくり及びがん対策等の推進に関する事項として次の内容を追加すること。

① 健康増進計画の策定及び推進に当たって、都道府県、保健所、市町村の保健衛生部局、医療機関、学校、教育委員会、医療保険者、地域産業保健センター等の産業保健関係機関や地域の健康づくりに関係するNPO等に係るソーシャルキャピタルの活用及び協力を強化すること。

② 地域のがん対策の推進に関し、都道府県及び市町村は、都道府県の策定する都道府県がん対策推進計画に基づき、がんの予防及び早期発見の推進、がん医療の均てん化の促進、研究の推進等のために必要な施策を講じること。

都道府県及び保健所は、健康増進法に基づき市町村が実施するがん検診が科学的根拠に基づいたものとなるよう市町村との連携を強化するとともに、地域がん登録の推進により地域のがん対策の現状を把握し、医療機関間の連携や在宅医療・介護サービスとの連携を進めるため、地域の関係機関との連携を推進すること。

③ 地域の肝炎対策の推進に関し、都道府県及び市町村は、肝炎の予防及び早期発見の推進、肝炎医療の均てん化の促進、研究の推進等のために必要な施策を講じること。

都道府県は、市町村等が実施する肝炎ウイルス検査について、関係機関と連携し、広報を強化するとともに、肝炎診療ネットワークの構築等の地域における肝炎医療を提供する体制を確保すること。

④ 地域の歯科口腔保健の推進に関し、都道府県は、関係機関等と連携し、地域の状況に応じた歯科口腔保健の基本的事項を策定するよう努めること。また、都道府県及び市町村は、保健所と連携して、歯科口腔保健に関する知識等の普及啓発、定期的に歯科検診を受けること等の勧奨、障害者等が定期的に歯科検診や保健指導を受けるための施策、歯科疾患の予防のための措置、口腔の健康に関する調査及び研究の推進等に関する施策を講じるとともに、都道府県、政令市及び特別区は、口腔保健支援センターを設け、歯科医療等業務に従事する者等に対する情報提供、研修の実施その他の支援を行うこと。