添付一覧
○動物とのふれあいイベント等における衛生管理の徹底について
(平成21年9月8日)
(健感発0908第1号)
(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局結核感染症課長通知)
今般、札幌市内で開催されたイベントにおいて、5名の方が腸管出血性大腸菌(O―157)に感染し、その感染源として会場内の子牛が推定されました(別添1参照)。
これまでも、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第10条第1項に規定する感染症の予防のための施策の実施に関する計画に基づく必要な動物由来感染症対策の実施を要請してきたところですが、動物とのふれあいイベント等を実施する団体に対しては、衛生管理の徹底を図るよう改めて指導していただきますようよろしくお願いします。
なお、農林水産省から別添2のとおり通知が発出されていることを申し添えます。
(参考資料)
平成18年度厚生労働科学研究特別事業
ふれあい動物施設における動物由来感染症に関する研究
「動物展示施設における人と動物の共通感染症対策ガイドライン2003 追補版 ふれあい動物施設等における衛生管理に関するガイドライン」
(別添1)
札幌市保健所による記者発表資料
札幌市内における腸管出血性大腸菌O157感染患者の発生について
平成21年(2009年)9月8日(火)
保健所感染症総合対策課
平成21年8月31日(月)から9月4日(金)にかけて、市内の複数の医療機関から保健所に、市内在住の5名の腸管出血性大腸菌O157(以下「O157」という。)感染患者の届出がありました。届出状況は、以下のとおりです。
このため保健所で、患者の行動状況及び喫食状況等の調査を行ったところ、共通する感染経路が推定されたことから、O157の集団感染と断定いたしました。
1 患者等の届出状況
4家族5名(No1とNo5が兄妹)
No |
届出日 |
性別 |
年代 |
区分 |
発症日 |
主な症状 |
備考 |
1 |
8月31日 |
男児 |
8歳 |
患者 |
8月25日 |
腹痛、血便、嘔吐 |
退院済 |
2 |
9月2日 |
女児 |
3歳 |
患者 |
8月29日 |
腹痛、下痢、血便、嘔吐、発熱 |
退院済 |
3 |
9月3日 |
男児 |
2歳 |
患者 |
8月27日 |
腹痛、血便 |
治癒 |
4 |
9月3日 |
女児 |
8歳 |
患者 |
8月29日 |
腹痛、血便 |
入院中 |
5 |
9月4日 |
女児 |
4歳 |
患者 |
8月26日 |
腹痛、血便 |
退院済 |
2 調査結果
(1) 行動状況
患者5名の行動状況の調査を行ったところ、全員が、8月23日(日)に、中央区大通公園の催事会場において、催事用の仔牛に触れていたことが判明した。
(2) 喫食状況
患者5名の喫食状況の調査を行ったところ、全員が、8月23日(日)に、中央区大通公園の催事会場において、ソフトクリームを喫食していることが判明した。
(3) 検査
○ 患者の家族検便
患者5名の家族13名の検便を実施したが、O157は検出されなかった。
○ 従業員検便
ソフトクリームを提供していた飲食店の従業員2名の検便を実施したが、O157は検出されなかった。
なお、すでに催事が終了していることから、食品検査及びふきとり検査は実施できなかった。
3 感染原因
患者全員が、8月23日(日)に、中央区の大通公園の催事会場において、催事用の仔牛に触れていたことから、仔牛に触った手を介してO157に経口感染したものと推定している。
なお、患者が共通で喫食していたソフトクリームは、当日、相当数が提供されており、他に感染者がいないことや、従業員検便からO157が検出されていないこと等から、食中毒の可能性はないものと判断している。
4 保健所の対応
保健所から催事の主催者に対し、手洗いの周知、手洗い設備の充実等、来年度以降の開催時における感染予防対策の徹底を要請した。
また、催事会場の仔牛は、柵の外から自由に触れることができる状況であったことから、接触の制限等について、併せて要請した。
【参考】(札幌市における腸管出血性大腸菌感染者の届出状況
区分 |
16年 |
17年 |
18年 |
19年 |
20年 |
腸管出血性大腸菌感染者の届出数 |
18 |
60 |
17 |
36 |
23 |
上記のうち、O157感染者の届出数 |
14 |
20 |
8 |
8 |
16 |
問い合わせ先 感染症調査関係:保健所感染症総合対策課 細海(ホソミ)、横澤(ヨコザワ) 【電話番号:622―5199】 |
(別添2)
○家畜とのふれあいイベント等における衛生管理の徹底について
(平成21年9月8日)
(21生畜第1102号)
(北海道農政部長、北海道農政事務所長、各地方農政局消費・安全部長、各地方農政局生産経営流通部長、沖縄総合事務局農林水産部長あて(※1農林水産省)消費・安全局動物衛生課長、(※1農林水産省)生産局畜産部畜産企画課長、(※1農林水産省)生産局畜産部畜産振興課長、(※1農林水産省)生産局畜産部牛乳乳製品課長、(※1農林水産省)生産局畜産部食肉鶏卵課長通知)
今般、別添1の記者発表資料のとおり、札幌市内の5名の方が腸管出血性大腸菌O157に感染し、その原因が同市で開催されたイベントの会場内の子牛に触れた手を介してO157に経口感染したことによるものと推定されたところであります。
これまでも、ふれあい体験交流等を実施している牧場に対しては、都道府県や生産者団体等を通じて、訪問者に対する体験交流の後や食事休憩の直前の手洗い励行に関する啓発等の感染防止の取組が徹底されるよう、御指導をお願いしてきたところです。
こうした中で、今般の事案は、家畜とのふれあいイベントにおけるものであることから、※4 各(※2都府県)の畜産部局(※3及び各農政事務所)に対し、衛生部局その他関係機関とも連携をとりながら、ふれあい体験交流イベント等を実施する団体等に対し、別添2の「ふれあい動物施設等における衛生管理に関するガイドライン」に示されている衛生管理の徹底について、改めて周知を図るとともに、来場者の安全確保のためのイベント等の実施体制の強化について、改めて指導していただきますようよろしくお願いします。
施行注意:
1 ※1の( )内は、各地方農政局消費・安全部長、生産経営流通部長、北海道農政事務所長あてについては省く。
2 ※2の( )内は、関東農政局あてについては都県、近畿農政局あてについては府県、その他の農政局あてについては県とする。
3 ※3の( )内は、沖縄総合事務局農林水産部長あてについては省く。
4 ※4の下線は、北海道農政部長及び北海道農政事務所長あてについては省く。
○家畜とのふれあいイベント等における衛生管理の徹底について
(平成21年9月8日)
(21生畜第1102号)
(独立行政法人家畜改良センター理事長あて農林水産省消費・安全局動物衛生課長、農林水産省生産局畜産部畜産企画課長、農林水産省生産局畜産部畜産振興課長、農林水産省生産局畜産部牛乳乳製品課長、農林水産省生産局畜産部食肉鶏卵課長通知)
今般、別添1の記者発表資料のとおり、札幌市内の5名の方が腸管出血性大腸菌O157に感染し、その原因が同市で開催されたイベントの会場内の子牛に触れた手を介してO157に経口感染したことによるものと推定されたところであります。
これまても、貴センターにおかれましては、ふれあい体験交流等を実施する場合には、訪問者に対する体験交流の後や食事休憩の直前の手洗い励行に関する啓発等の感染防止の取組を推進されていることと存じます。
こうした中て、今般このような事案が発生しましたので、ふれあい体験交流イベント等を実施する際は、別添2の「ふれあい動物施設等における衛生管理に関するガイドライン」に示されている衛生管理を徹底するとともに、来場者の安全確保のためのイベント等の実施体制の強化を図っていただきますよう重ねてお願いします。
○家畜とのふれあいイベント等における衛生管理の徹底について
(平成21年9月8日)
(21生畜第1102号)
(全国農業協同組合連合会会長、社団法人中央畜産会会長、社団法人日本草地畜産種子協会会長、財団法人日本食肉流通センター理事長、財団法人日本食肉消費総合センター理事長、社団法人日本食肉市場卸売協会会長、社団法人日本酪農乳業協会会長、社団法人中央酪農会議会長、全国酪農業協同組合連合会会長、社団法人日本乳業協会会長、社団法人全国農協乳業協会会長、全国乳業協同組合連合会会長、全国開拓農業協同組合連合会会長、全国畜産農業協同組合連合会会長あて農林水産省消費・安全局動物衛生課長、農林水産省生産局畜産部畜産企画課長、農林水産省生産局畜産部畜産振興課長、農林水産省生産局畜産部牛乳乳製品課長、農林水産省生産局畜産部食肉鶏卵課長通知)
今般、別添1の記者発表資料のとおり、札幌市内の5名の方が腸管出血性大腸菌O157に感染し、その原因か同市で開催されたイベントの会場内の子牛に触れた手を介してO157に経口感染したことによるものと推定されたところであります。
これまでも、ふれあい体験交流等を実施している牧場に対しては、都道府県や貴団体等を通じて、訪問者に対し体験交流の後や食事休憩の直前の手洗い励行に関する啓発等の感染防止の取組が徹底されるよう、御指導をお願いしてきたところてす。
こうした中て、今般の事案は、家畜とのふれあいイベントにおけるものであることから、ふれあい体験交流イベント等を実施する会員団体等に対し、別添2の「ふれあい動物施設等における衛生管理に関するガイドライン」に示されている衛生管理の徹底について、改めて周知を図るとともに、来場者の安全確保のためのイベント等の実施体制の強化について、改めて指導していただきますようよろしくお願いします。
(参考)
動物展示施設における人と動物の共通感染症対策ガイドライン2003
追補版
ふれあい動物施設等における衛生管理に関するガイドライン
平成18年度厚生労働科学研究特別研究事業
「ふれあい動物施設における動物由来感染症対策に関する研究」
主任研究者:国立感染症研究所獣医科学部長山田章雄
Ⅰ.はじめに
動物は人にとってかけがえのない存在であることは疑いがない。中でも展示動物は情操教育上も重要な地位を占めているばかりではなく、レクリエーションの場にとっても重要である。更に種の保存、動物に関する調査・研究といった学術的な意味からも動物展示施設は社会的意義を有している。近頃動物の展示の仕方に工夫を凝らした動物園が全国的な人気を集めていることから見ても、これらの施設の重要性を伺うことができる。一方で、規模に大小はあるものの、動物との直接のふれあいができることを呼び物とする施設も存在する。このように人と動物の距離が縮まることは上記の利点がある一方で、動物に由来する感染症(動物由来感染症)に罹患する可能性がこれまでよりも高まっていることにも繋がると思われる。動物展示施設において人が動物由来感染症に罹患するリスクを低減させることを意図して、厚生労働省健康局結核感染症課は「動物展示施設における人と動物の共通感染症対策ガイドライン2003」を作成し、動物展示施設における衛生管理の徹底を呼びかけている。しかし、後述するようにふれあい動物施設における動物由来感染症の発生が認められ、死亡者の発生を見たことから、特にふれあいを目的とする動物展示施設及び移動動物園における衛生管理の更なる徹底を実現すべく、本ガイドラインの作成を企図した。
Ⅱ.背景
2003年に上記ガイドラインが公表された後も神戸市におけるオウム病の集団発生、秋田県並びに青森県における腸管出血性大腸菌症の集団発生が明らかになり、これらがふれあい動物施設で飼養されている動物からの感染であることが確認された。このうち秋田県では一名が死亡している。また、その後も横浜市での搾乳体験で腸管出血性大腸菌症に罹患した例が報告された。ふれあい動物施設などにおける動物由来感染症への罹患は欧米諸国でも問題となっており、英国、アメリカ合衆国、オーストラリアなどではリスクを軽減させるためガイドラインを公表するなどの対策がとられている。現時点ではふれあい動物施設を運営するためには平成18年6月1日施行された改正「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)第10条の規定により都道府県知事あるいは指定都市の長に登録することが必要となった(一年間の経過措置あり)。この法律の第7条第2項では動物の所有者等の責務規定として動物由来感染症の予防が明記されている。
Ⅲ.ふれあい動物施設などで罹患する可能性のある動物由来感染症
ふれあい動物施設で動物から罹患する可能性のある動物由来感染症を簡単に表にまとめた。この表から明らかなように多くの感染症の感染経路は動物との直接接触か糞口感染である。
|
疾患 |
動物宿主 |
伝播経路 |
臨床症状 |
予防法 |
腸管感染 |
カンピロバクター症 |
牛、羊、家禽、鳥類、野生動物、豚、齧歯類、犬、猫(特に仔犬、仔猫) |
糞口感染 |
下痢、軽度の発熱、胃痙攣、吐き気 |
手洗いの励行、個人の衛生管理、生乳を飲まない |
クリプトスポリジウム症 |
牛などの家畜(特に仔牛、仔羊) |
糞口感染 |
水様下痢、胃痙攣、時に発熱、吐き気、食欲不振 |
手洗いの励行、個人の衛生管理 |
|
サルモネラ症 |
爬虫類、牛、羊、馬、豚、家禽 |
糞口感染 |
下痢、発熱、胃痙攣、吐き気 |
手洗いの励行、個人の衛生管理、生乳を飲まない |
|
腸管出血性大腸菌症 |
牛、羊 |
糞口感染 |
下痢(時に血様)、腎障害、脳障害 |
手洗いの励行、個人の衛生管理 |
|
皮膚感染 |
伝染性膿疱性皮膚炎 |
羊、山羊 |
直接接触 |
手、頭、首の痛みを伴う結節、軽度の発熱、リンパ節腫脹 |
個人の衛生管理、接触部位の洗浄 |
白癬 |
牛、馬、猫、犬 |
直接接触、動物の毛との接触 |
輪の形の赤い斑痒み |
手洗いの励行、個人の衛生管理、感染動物に触れない |
|
呼吸器感染 |
オウム病 |
鳥類 |
気道感染 |
発熱、頭痛、発疹、筋肉痛、寒気、呼吸器症状 |
手洗い・うがいの励行、個人の衛生管理、鳥の排泄物などを吸いこまない |
Q熱 |
牛、羊、山羊 |
気道感染、生乳の消費 |
突然の発熱、寒気、大量の発汗、頭痛、疲労感、吐き気 |
手洗い・うがいの励行、感染性のダストを吸い込まない、生乳を飲まない |
|
結核 |
猿、牛 |
気道感染、経口感染 |
咳、喀痰、発熱、胸痛、リンパ節の腫脹 |
うがいの励行、ヒトへのワクチン接種 |
|
その他 |
エキノコックス症 |
犬、狐 |
糞口感染 |
肝・肺膿疱 |
手洗いの励行、個人の衛生管理、犬の糞に触れない、犬に動物の臓物を与えない、駆虫 |
レプトスピラ症 |
牛、ラット、犬 |
感染動物の尿との接触 |
突然の発熱、頭痛、寒気、筋肉痛、結膜炎、時に発疹 |
手洗いの励行、個人の衛生管理、動物へのワクチン接種 |
|
ブルセラ症 |
牛、羊、山羊、豚、犬 |
感染動物の乳汁、胎盤、流産胎児、尿などとの接触 |
波状熱、倦怠感、心内膜炎 |
手洗いの励行、生乳を飲まない |
|
破傷風 |
多数 |
咬傷、引っ掻き傷 |
痛みを伴う筋痙攣、開口障害 |
ヒトへのワクチン接種 |
|
トキソプラズマ症 |
ネコ科(終宿主) |
糞口感染 |
多くは無症状発熱、リンパ節腫脹、失明、胎児では先天性障害 |
手洗いの励行、個人の衛生管理 |
|
トキソカラ症 |
犬(特に仔犬)、猫 |
糞口感染 |
発疹、喘鳴を伴うインフルエンザ様症状、失明 |
手洗いの励行、個人の衛生管理、駆虫 |
従って、多くの感染症への感染リスクは動物との接触時の注意、接触後の衛生管理の徹底などで低減させることが可能である。
Ⅳ.特に注意を要する人
いわゆる以下に挙げる人は感染のリスクが高かったり、感染した場合重症化しやすいなどの理由により、より一層の注意が必要である。場合によってはふれあい動物施設での動物との触れあいを避けた方がよい。
●妊婦
●免疫機能低下者(糖尿病患者、慢性腎疾患患者、進行性肝疾患患者、HIV感染者、免疫抑制剤服用者など)
●5歳以下の乳幼児(監督者による十分な注意が必要)
●知的障害を有する人(監督者による十分な注意が必要)
●高齢者
Ⅴ.施設の構造
ふれあい動物施設における動物由来感染症の多くは糞口感染即ち動物の排泄物中に含まれる病原体を経口的に摂取することで感染する。従って、感染リスクを低減するための最も有効な手段は手洗いの励行である。
具体的には、
●手洗いを確実なものにするために手洗い場を適切に配置する。(後述)
●動物のエリアと動物以外の活動が行われるエリア(非動物エリア)をフェンスなどにより物理的に区画し、人の動線が一方向になるような構造にするか誘導のための標識を設置する。
●非動物エリアには補助犬以外の動物の持ち込みは禁止する。
●動物エリアの入り口には緩衝エリアを設け、動物由来感染症の予防に必要な情報の表示を行う(後述)。
●動物エリアからの出口には同様の緩衝エリアを設け、来場者数に見合った手洗い設備を設ける。また標識などにより来場者を間違いなく緩衝エリアヘ導き更に手洗いの励行を行いやすくするような工夫をする。
●緩衝エリアは入り口と出口で独立している方が望ましいが、敷地などの関係で無理な場合には兼用でも構わない。但し、この場合にははっきりと出入りの動線が分かれるよう配慮する。
ことが重要である。
【図の説明】
上:入退場口が別々に設置できる場合 下:入退場口が1ヶ所の場合
Ⅵ.手洗い設備
手洗い設備としては以下の条件を備えていることが必要である。
●来場者が動物エリアから退出するときに必ず手洗いが実行できるような場所に設置する。
●入場者数に十分対応できるだけの数を設置するとともに、十分な水量を確保する。
●手洗いは流水で行い、貯留水は使用しない。
●小児やハンディキャップを有する来場者でも使用しやすいよう設計されている。
●石鹸(できれば液状石鹸)を常備する。
●ペーパータオルを常備することが望ましい。
●特に冬期には温水を供給できることが望ましい。
●給水栓は自動あるいは足で操作できることが望ましい。手で給水栓の操作をする場合、できれば手を拭ったペーパータオルを用いて操作する。
●消毒薬の設置も有用だが、必ず手洗いし、除水の後に使用する。
Ⅶ.動物
●感染の機会をできるだけ減らすため、エキゾチック動物(アライグマ、サル類、プレーリードッグなど)や気性の荒い動物種は直接触れられないようにすべきである。また、幼弱な反芻獣や家禽、爬虫類並びに病気の動物は腸管系の疾患を伝播する可能性が高いので注意が必要である。
●動物は獣医学的管理のもとにおき、定期的な健康状態の確認を行い、異状を認めた場合には、治療、隔離など適切な処置を施すこと。また、ふれあいに供する動物はその度に健康状態を観察し、異状を認めた動物をふれあいに供してはならない。また、病原体検査により、明らかに腸管出血性大腸菌(O157等)などを有している場合には、ふれあいに供してはならない。
●動物が必要以上のストレスを感じないような配慮をする必要がある。
●外部から動物を導入する場合には一週間程度の検疫・馴化期間を設けた後にふれあいに供すること。また、エキノコックス(流行地域からの導入の場合)、オウム病、結核などについて検査し陰性を確認するとともに、必要に応じて内部寄生虫および外部寄生動物の駆除を実施する。
Ⅷ.来場者への啓発
●来場者に対し、動物から感染する病気があることを説明する必要がある。
●多くの場合、動物に由来する感染症は、キスなどの過剰なふれあいを避け、手洗いを励行することで予防できることを説明する。
●効果的な手洗い法を説明する。
●動物エリアへの飲食物、おしゃぶり、ぬいぐるみ、おもちゃ等の持ち込みは禁止する。
●エリア内では喫煙、化粧直しをしないこと。また、小児に指しゃぶりをさせないよう注意する。
●糞便に触れないよう注意する。
●幼児には必ず監督者が伴うようにする。
●動物に触れる際は爪を短く切るよう事前に周知する。
●これらの注意事項を分かりやすく示したものを入場口に掲示する。
●動物エリアからの退場時に手洗いをすること並びに手洗い場の場所へ誘導する標識を掲示する。
●来場者に注意事項を周知するため、教育を受けた担当者を動物エリアに配置することが望ましい。
●施設内に飲食物販売店がある場合には、手洗い後に飲食することを啓発する。
Ⅸ.清掃・消毒
●動物エリア内のふれあいに供している動物の糞便は、速やかに除去する。
●糞便の除去に使用する用具は、動物種ごとに分けることが望ましいが、人員的要因などによりできない場合は、反芻獣以外の動物から作業し、最後に反芻獣の糞便を除去する。特に反芻獣の糞便が他の動物に付着しないよう、作業用具、靴底などによる持ち込みに注意する。
●動物エリア内の手摺り、椅子等は定期的に清掃、消毒する。
Ⅹ.移動動物園
●事前に開催場所の立地、手洗い設備の状況を確認し、動物の配置、動線などを決定し、その結果、必要あれば動物エリアの区画に必要な設備、追加の簡易手洗い設備などを用意する。
●ふれあいに供する動物(特に反芻獣)は、個体識別が可能となるよう措置し、ふれあいイベントに供する度にどの個体を供したか記録しておく。
●ふれあいに供する動物の潜在的に保持している病原体が排出されるおそれがあるので、輸送には動物のストレスが少なくなるよう配慮する。
●ふれあい終了後には、床面、糞便により汚染された地面などを清掃後、有効な薬剤を用いて消毒する。
ⅩⅠ.手洗いの方法
●よく泡立てて、最低20秒間両手をこすりつけながら洗う。
●爪の先、指間もよく洗うように注意する。洗浄後は流水で洗い流す。
●可能ならば、使い捨てペーパータオルで水分を拭い取り、そのペーパータオルで蛇口を閉める。
●幼児の手洗いは監督者が手助けする必要がある。
ⅩⅡ.行政との連携
●動物愛護管理法に基づく動物取扱業の登録の際には、動物の展示方法、施設設備の状況、来場者への注意事項などについて行政の指導を求める。
●感染症発生時の管轄保健所(感染症担当)、動物愛護センター(動物愛護管理担当)、家畜保健衛生所(家畜衛生担当)への連絡体制を整備し、従業員に周知しておく。
●自治体が主催する動物由来感染症対策に関する講習会や研修会に積極的に参加する。