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○「医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンスに関する質疑応答集(Q&A)」について

(平成24年4月2日)

(事務連絡各都道府県薬務主管課あて厚生労働省医薬食品局審査管理課通知)

医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンスについて、質疑応答集を別添のとおり取りまとめましたので、貴管下関係業者に対して周知方お願いします。

[別添]

医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンスに関する質疑応答集(Q&A)

Q1 本ガイダンスでは,各所においてICHガイドラインを参考にするようにと記載されている.ICHガイドラインの要件は,承認申請時に求められる要件であると理解しているが,本ガイダンスでは,ヒト初回投与試験を開始するまでにICHガイドラインの要件を求めているのか.

A 本ガイダンスでは,ヒト初回投与試験を開始するまでにICHガイドラインの要件を必ずしも求めているものではありません。しかし,ヒト初回投与試験を開始するに当たっては,該当するガイドラインを参考として,その時点で必要と考えられる適切な検討を終了していることが求められると考えます.

Q2 本ガイダンスでは,3.4.2.f 用量漸増の計画法の項に,「投与量,用量漸増手法を見直すこともありうる.このような場合のために,治験実施計画書に投与量変更の可能性とその手順を記載しておくべきである.」と記載されているが,変更がありうる場合の最高投与量の記載はどのようにすればよいか.

A この記載は,治験届出時に規定されている最高投与量の範囲内で投与量を見直す場合の手順の記載を求めているものであり,最高投与量を変更する場合を言及しているものではありません.初回治験届時に規定した最高投与量を変更する場合には,これまでと同様,治験変更届出が必要となります.

なお,最高投与量を上げることが初めから想定されるのであれば,被験者の安全性を考慮した上で,適切な科学的根拠のもとに,妥当な最高投与量を設定すべきと考えます.

Q3 本ガイダンスでは,3.4.2.b ヒト初回投与量の設定の項に,「例えば癌患者における従来の細胞毒性を有する被験薬のような場合では,その他の手法も考慮される.」と記載されているが,その他の手法とはどのような手法か.

A 細胞毒性を有する抗悪性腫瘍薬の場合,多くの低分子医薬品では,げっ歯類で供試動物の10%に重篤な毒性が発現する投与量(STD10)の1/10量を初回投与量として設定するのが一般的です.非げっ歯類が最も適切な動物種である場合には,重篤な毒性が発現しない最大投与量(死亡,致死性の毒性又は非可逆的な毒性を生じさせない最高投与量)の1/6量が,通常初回投与量として適切と考えられます.

Q4 3.4.2.b ヒト初回投与量の設定について,具体的に例示してほしい.

A 2種類の標的分子の活性中和を薬理作用とするモノクローナル抗体医薬品のモデル事例(両事例とも毒性試験から得られているNOAELは10mg/kgの場合)を使って,ヒト初回投与量の設定の具体例を示します。これらの事例はあくまでも一例に過ぎず,初回投与量は事例ごとに科学的根拠に基づいて決定すべきことを申し添えます.

事例1はNOAELを設定根拠した事例,事例2はMABELを設定根拠にした事例を示しますが,これらの事例のように体重あたりの投与量として得られたMABELまたはNOAEL(mg/kg)の他,体表面積(m2)あたりの投与量(mg/m2)が試験動物とヒトで一定になるよう換算したヒト等価用量(HED: Human Equivalent Dose)を使用する場合も考えられます.一般的に抗体または受容体融合タンパク質医薬品では,ヒトへの外挿性に関してこれまでの臨床経験や薬物動態(PK)や薬力学(PD)的知見の類似性などの理由から,体重(kg)換算が適切な場合が多いと思われますが,今後益々開発が促進される非天然型の改変抗体等に関しては,新たな知見や経験の蓄積に応じて,検討すべきです.

(事例1)

既に同じ分子を標的とした類似医薬品が市販され,類似医薬品での臨床用量や作用機序等が明確であったため,カニクイザルを動物モデルとした毒性試験からNOAELを基準とした初回投与量を算出した.

すなわち,NOAEL10mg/kgを安全係数10で除し,初回投与量を1mg/kgと算出した.この用量はカニクイザルを用いた類似医薬品との薬物動態(PK)及び薬力学(PD)的知見の比較などから予想される予想臨床薬効用量と比較して著しく高い値では無いと推定されたため,1mg/kgを初回投与量とした.

(事例2)

新規の標的分子のため,標的分子の組織分布,in vitroの知見等で動物モデルとして選択されたカニクイザルを用いた薬力学(PD)的試験からMABELを基準とした初回投与量を算出した.

in vivo及びin vitroにおける試験データから算出したMABELは,それぞれ0.5mg/kgと10μg/mL(in vivoの0.1mg/kgに相当と推測)であった.当該事例では適切な動物モデルを用いた試験において薬理活性を定量できるバイオマーカーがあったため,in vivo試験のMABELである0.5mg/kgに基づいて初回投与量を設定した.すなわち,0.5mg/kgに安全係数10を除し初回投与量を0.05mg/kgと算出した.

 

事例1

事例2

分子形

モノクローナル抗体

モノクローナル抗体

被験薬の作用機序

受容体の活性化を阻害

受容体の活性化を阻害

標的の特性

既に同じ分子を標的とした類似医薬品が市販されている

新規の標的分子

動物モデル

類似医薬品の知見等から,カニクイザルを動物モデルとして選択.

ヒトとカニクイザルでは標的分子の組織分布やin vitro薬効に大きな種差はないことからカニクイザルを動物モデルとして選択.

投与経路

静脈内投与

静脈内投与

適用

慢性疾患

慢性疾患

毒性試験

カニクイザルで実施.(げっ歯類では実施せず)

→NOAELは高用量群である10mg/kgとされた.

カニクイザルで実施.(げっ歯類では実施せず)

→NOAELは高用量群である10mg/kgとされた.

薬物動態(PK)/薬力学(PD)に関する情報

薬理作用を示すカニクイザルで実施し,類似医薬品との比較等から予想臨床薬効用量を10mg/kgと推定.

薬理作用を示すカニクイザルモデルで実施し,in vivoにおける推定最小薬理作用量は0.05mg/kgと推測.なおin vitro試験における推定最小薬理作用量濃度は1μg/mL(in vivoの0.01mg/kg相当と推測)