○食品中の放射性物質の試験法について
(平成24年3月15日)
(食安発0315第4号)
(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)
食品中の放射性物質に係る取扱いについては、平成24年3月15日付け食安発0315第1号(以下「施行通知」という。)により通知したところである。
施行通知中、第4の4において示すこととしていた食品中の放射性物質試験法について、別添のとおり定めることとしたので、関係者への周知方よろしくお願いする。
(別添)
食品中の放射性セシウム検査法
1.検査対象物質 放射性セシウム(Cs―134及びCs―137)
2.分析方法
2.1 試料の前処理
食品中の放射能測定のための試料前処理方法は、「文科省編放射能測定法シリーズ24 緊急時におけるガンマ線スペクトロメトリーのための試料前処理法」注1に準じ、試料は可食部を用いる。
ただし、「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号)第1食品A食品一般の成分規格5(2)検体に規定される食品は、当該項目の第1欄の各食品について、各々第2欄の試料の調製に従うこととし、製造し、又は加工した食品は、原則としてそのままの状態を測定試料とする(飲用に供する茶等、飲用に供する状態で検査する食品は除く。)。
試料の洗浄は別紙の食品の放射性物質に関する検査における試料洗浄 (土壌除去)標準作業書に準じるものとする。
液体の試料はそのまま、固体の試料は、予めハサミ、カッター、包丁等で細切りした後、全体を均一に混和し、設定された容量を機器校正に用いたものと同じ測定容器に予め重量を測定してから充填する。
飲用に供する茶は、荒茶又は製茶10g以上を30倍量の重量の熱水(90℃)で60秒間浸出し、40メッシュ相当のふるい等でろ過した浸出液を測定試料とする。
なお、告示で示された、乾燥きのこ類及び乾燥野菜並びに乾燥させた海藻類及び乾燥させた魚介類等を測定する際には、できるだけ飲食に供される状態と同様の状態で行う観点から、粉砕後のサンプルに、日本食品標準成分表等の水戻しによる水分含量の公表データ(重量変化率)を参考として、必要な水分をあらかじめ添加し行うことを原則とするが、乾燥状態で検査を行い、2.3の取扱いに従って換算を行っても差し支えない。
注1)試料搬入時の注意点、試料の前処理法、試料の保存方法等が記載されている。
2.2 測定
2.2.1 機器・器具
ゲルマニウム半導体検出器を用いたガンマ線スペクトロメータ:検出器の相対効率は15%以上とし、検出器周辺を厚さ10~15cmの鉛遮蔽体等で囲む。
線源:市販の多核種混合放射能標準ガンマ体積線源を用いる。
測定容器
2.2.2 機器校正法
校正及びスペクトル解析方法は「文部科学省編放射能測定シリーズNo.7 ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー」に記載の方法、あるいは国際的に認められた方法に従う。
2.2.3に示す測定条件を設定できる機器であれば、ゲルマニウム半導体検出器を用いたガンマ線スペクトロメータ以外の装置を使用することも可能である。
2.2.3 測定条件の設定
標準線源等を測定し、測定結果X及び測定結果に伴う計数誤差による標準偏差σXの推定値を得る。基準値濃度におけるX/σXが10以上となるように、試料容器及び測定時間を設定する。また、測定容器のみのブランクを設定した条件で測定し、検出限界値が基準値の1/5の濃度以下であることを確認する。測定結果X、σX、及び検出限界値の算出方法は「文部科学省編放射能測定シリーズNo.7 ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー」に記載の方法、あるいは国際的に認められた方法に従う。
2.2.4 試料の測定注2
予め重量を測定した測定容器に試料を充填した後に重量を測定し、重量の差を試料重量として記録する。測定容器を検出装置に載せ、2.2.3で設定した測定時間で測定し、スペクトルを得る。スペクトルを「文部科学省編放射能測定シリーズNo.7 ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー」に記載の方法、あるいは国際的に認められた方法で解析し、試料中の放射性セシウム濃度Xと測定結果に伴う計数誤差による標準偏差σXを得る。
注2) 固体試料においては水分が分離しないように注意し、測定容器への充填は空隙ができないようにし、特に検出器に近い底面での空隙には注意する。
2.3 検査結果の取扱い
測定結果がNDであった場合には、Cs―134とCs―137の検出限界値の和が基準値の1/5の濃度以下であることを確認する。
Cs―134の測定結果をX134、Cs―137の測定結果をX137とするとき、放射性セシウム濃度X=X134+X137が基準値の75%から125%の範囲となった場合には、X134に伴う計数誤差による標準偏差をσ134、X137に伴う計数誤差による標準偏差をσ137としたときに画像1 (4KB)
であることを確認する。上記の条件が満足されない場合は、測定時間を延長して測定し上記が満足されるようにする。
検査結果は、有効数字2桁で記載する。NDとなった場合には検出限界を明記し<20Bq/kgのように記載する。
なお、告示で示された、乾燥きのこ類及び乾燥野菜並びに乾燥させた海藻類及び乾燥させた魚介類等の通常水戻しをして摂食する食品は、前述する方法にて測定を行うことを原則とするが、乾燥状態で検査を行った場合には、日本食品標準成分表等の水戻しによる水分含量のデータ(重量変化率)を用いて換算を行った結果を分析値とする。
3 検査結果の信頼性管理
1) 測定日毎にバックグラウンドを測定し、通常の範囲を超えて上昇していないことを確認する。
2) 測定日毎に空の測定容器を用いてブランクを測定し、分析系に放射性表面汚染がないことを確認する。
3) 定期的に標準線源を用いて校正を行う。
4) 測定日毎にエネルギーのスケールがずれていないことを確認する。
5) 試料を測定容器に詰める際には、特に検出器付近に空隙ができないように留意する。
6) 試料による分析系の放射性表面汚染、あるいは試料間の汚染が起こらないように留意する。特に検出部位の汚染を防ぐため、検出器をポリエチレン袋で覆う、測定容器の外側に試料を付着させない等の措置を講じる。
7) 測定容器をくりかえし使用する場合は、測定容器の内側にポリエチレン袋を入れて試料を充填するなど、測定容器の汚染を防ぐ措置を講じる。
8) 試料の取り違えを防止するための措置を講じる。
(別紙)
食品の放射性物質に関する検査における試料洗浄(土壌除去)標準作業書
1.対象試料:
野菜:非結球性葉菜類、結球性葉菜類、アブラナ科花蕾類、根菜類等
注:各分類の個別品目については、別添の表中「品目」を参照。
2.使用する器具等:
ディスポーザブル手袋、包丁、はさみ、ボウル又はバット、ざる、ペーパータオル
注:ディスポーザブル手袋、ペーパータオルは1試料毎に廃棄・交換する。
3.洗浄方法:
洗浄に供する部位は、別添の表中「洗浄対象部位」とする。また、洗浄方法は、別添の表中「洗浄方法」の手順とし手順内容は以下のとおりとする。洗浄により、土壌を取り除き、目視により食用若しくは調理に供する程度まで洗浄が十分に行われていることを確認する。洗浄後は、手順2の場合を除き、付着する水をペーパータオルにより軽く拭き取り、その後、別添表中において特段の注記がある場合は同記述に従った後に、対象試料を試験に供する。
注:土壌の付着が多い場合、予め土壌を落とした後に試験室に搬入し、洗浄を実施する。
<別添の洗浄方法の各手順内容>
手順1:水道水の流水下で、20秒程度洗浄する。
手順2:水道水をしみこませたペーパータオルで表面を軽く拭き取る。
4.留意点
試料の取り扱いについては、相互汚染が発生しないよう適切に区分管理を行うこと。また、使用する器具については、1試料毎に洗浄を行い相互汚染の発生を防止すること。
(別添)
1.分類 |
2.品目 |
3.洗浄対象部位 |
4.洗浄方法 |
非結球性葉菜類 |
こまつな |
根及び変質葉を除去したもの |
手順1 |
しゅんぎく |
|||
チンゲンサイ |
|||
水菜 |
|||
サニーレタス |
|||
その他の非結球性葉菜類* |
|||
ほうれんそう |
ひげ根及び変質葉を除去したもの |
||
結球性葉菜類 |
キャベツ |
外側変質葉及びしんを除去したもの |
手順1 |
白菜 |
|||
レタス |
|||
根菜類 |
かぶの根 |
ひげ根を除去したもの |
手順1 |
だいこんの根 |
|||
れんこん |
|||
あぶらな科花蕾類 |
ブロッコリー |
葉を除去したもの |
手順1 |
カリフラワー |
|||
せり科野菜 |
みつば |
根及び変質葉を除去したもの |
手順1 |
セロリ |
|||
パセリ |
|||
なす科野菜 |
ピーマン |
全体(注:洗浄操作後、へたを除去した上で試験に供する) |
手順1 |
トマト |
|||
ミニトマト |
へたを除去したもの |
||
なす |
|||
ゆり科野菜 |
ねぎ |
不可食外皮及びひげ根を除去したもの |
手順1 |
ワケギ |
|||
エシャロット |
外皮及びひげ根を除去したもの |
||
ニラ |
根を除去したもの |
||
アスパラガス |
茎 |
||
うり科野菜 |
キュウリ |
へたを除去したもの |
手順1 |
ズッキーニ |
|||
小玉スイカ |
|||
しそ科野菜 |
大葉 |
全体 |
手順1 |
きのこ類 |
しいたけ |
石突を除去したもの |
手順2 |
*その他の非結球性葉菜類:アブラナ、チヂレナ、コウサイタイ、クキタチナ、カブレナ、信夫冬菜、サントウナ、ベカナ、非結球ハクサイ、パクチョイ、タアサイ、タカナ、カツオナ、カラシナ、タイサイ、サラダナ、非結球レタス(ロメインレタス等)、フダンソウ、ナバナ(カキナ)、サイシン、オータムポエム、カイラン、ツボミナ、ミズカケナ、ケール、シロナ、仙台雪菜、千宝菜、ノザワナ、ベンリナ、山形ミドリナ、ワサビナ、サンチュ、プチベール、ウルイ、畑ワサビ、花ワサビ、クレソン、ルッコラ、ナズナ、アイスプラント、葉ダイコン、フキノトウ等
(別紙)
○食品中の放射性物質の試験法について
(平成24年3月15日)
(食安発0315第4号)
(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)
食品中の放射性物質に係る取扱いについては、平成24年3月15日付け食安発0315第1号(以下「施行通知」という。)により通知したところである。
施行通知中、第4の4において示すこととしていた食品中の放射性物質試験法について、別添のとおり定めることとしたので、関係者への周知方よろしくお願いする。
(別添)
食品中の放射性セシウム検査法
1.検査対象物質 放射性セシウム(Cs―134及びCs―137)
2.分析方法
2.1 試料の前処理
食品中の放射能測定のための試料前処理方法は、「文科省編放射能測定法シリーズ24 緊急時におけるガンマ線スペクトロメトリーのための試料前処理法」注1に準じ、試料は可食部を用いる。
ただし、「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号)第1食品A食品一般の成分規格5(2)検体に規定される食品は、当該項目の第1欄の各食品について、各々第2欄の試料の調製に従うこととし、製造し、又は加工した食品は、原則としてそのままの状態を測定試料とする(飲用に供する茶等、飲用に供する状態で検査する食品は除く。)。
試料の洗浄は別添の食品の放射性物質に関する検査における試料洗浄 (土壌除去)標準作業書に準じるものとする。
液体の試料はそのまま、固体の試料は、予めハサミ、カッター、包丁等で細切りした後、全体を均一に混和し、設定された容量を機器校正に用いたものと同じ測定容器に予め重量を測定してから充填する。
飲用に供する茶は、荒茶又は製茶10g以上を30倍量の重量の熱水(90℃)で60秒間浸出し、40メッシュ相当のふるい等でろ過した浸出液を測定試料とする。
なお、告示で示された、乾燥きのこ類及び乾燥野菜並びに乾燥させた海藻類及び乾燥させた魚介類等を測定する際には、できるだけ飲食に供される状態と同様の状態で行う観点から、粉砕後のサンプルに、日本食品標準成分表等の水戻しによる水分含量の公表データ(重量変化率)を参考として、必要な水分をあらかじめ添加し行うことを原則とするが、乾燥状態で検査を行い、2.3の取扱いに従って換算を行っても差し支えない。
注1) 試料搬入時の注意点、試料の前処理法、試料の保存方法等が記載されている。
2.2 測定
2.2.1 機器・器具
ゲルマニウム半導体検出器を用いたガンマ線スペクトロメータ:検出器の相対効率は15%以上とし、検出器周辺を厚さ10~15cmの鉛遮蔽体等で囲む。
線源:市販の多核種混合放射能標準ガンマ体積線源を用いる。
測定容器
2.2.2 機器校正法
校正及びスペクトル解析方法は「文部科学省編放射能測定シリーズNo.7 ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー」に記載の方法、あるいは国際的に認められた方法に従う。
2.2.3に示す測定条件を設定できる機器であれば、ゲルマニウム半導体検出器を用いたガンマ線スペクトロメータ以外の装置を使用することも可能である。
2.2.3 測定条件の設定
標準線源等を測定し、測定結果X及び測定結果に伴う計数誤差による標準偏差σXの推定値を得る。基準値濃度におけるX/σXが10以上となるように、試料容器及び測定時間を設定する。また、測定容器のみのブランクを設定した条件で測定し、検出限界値が基準値の1/5の濃度以下であることを確認する。測定結果X、σX、及び検出限界値の算出方法は「文部科学省編放射能測定シリーズNo.7 ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー」に記載の方法、あるいは国際的に認められた方法に従う。
2.2.4 試料の測定注2
予め重量を測定した測定容器に試料を充填した後に重量を測定し、重量の差を試料重量として記録する。測定容器を検出装置に載せ、2.2.3で設定した測定時間で測定し、スペクトルを得る。スペクトルを「文部科学省編放射能測定シリーズNo.7 ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー」に記載の方法、あるいは国際的に認められた方法で解析し、試料中の放射性セシウム濃度Xと測定結果に伴う計数誤差による標準偏差σXを得る。
注2) 固体試料においては水分が分離しないように注意し、測定容器への充填は空隙ができないようにし、特に検出器に近い底面での空隙には注意する。
2.3 検査結果の取扱い
測定結果がNDであった場合には、Cs―134とCs―137の検出限界値の和が基準値の1/5の濃度以下であることを確認する。
Cs―134の測定結果をX134、Cs―137の測定結果をX137とするとき、放射性セシウム濃度X=X134+X137が基準値の75%から125%の範囲となった場合には、X134に伴う計数誤差による標準偏差をσ134、X137に伴う計数誤差による標準偏差をσ137としたときに画像2 (4KB)
であることを確認する。上記の条件が満足されない場合は、測定時間を延長して測定し上記が満足されるようにする。
検査結果は、有効数字2桁で記載する。NDとなった場合には検出限界を明記し<20Bq/kgのように記載する。
なお、告示で示された、乾燥きのこ類及び乾燥野菜並びに乾燥させた海藻類及び乾燥させた魚介類等の通常水戻しをして摂食する食品は、前述する方法にて測定を行うことを原則とするが、乾燥状態で検査を行った場合には、日本食品標準成分表等の水戻しによる水分含量のデータ(重量変化率)を用いて換算を行った結果を分析値とする。
3 検査結果の信頼性管理
1) 測定日毎にバックグラウンドを測定し、通常の範囲を超えて上昇していないことを確認する。
2) 測定日毎に空の測定容器を用いてブランクを測定し、分析系に放射性表面汚染がないことを確認する。
3) 定期的に標準線源を用いて校正を行う。
4) 測定日毎にエネルギーのスケールがずれていないことを確認する。
5) 試料を測定容器に詰める際には、特に検出器付近に空隙ができないように留意する。
6) 試料による分析系の放射性表面汚染、あるいは試料間の汚染が起こらないように留意する。特に検出部位の汚染を防ぐため、検出器をポリエチレン袋で覆う、測定容器の外側に試料を付着させない等の措置を講じる。
7) 測定容器をくりかえし使用する場合は、測定容器の内側にポリエチレン袋を入れて試料を充填するなど、測定容器の汚染を防ぐ措置を講じる。
8) 試料の取り違えを防止するための措置を講じる。