添付一覧
○一酸化炭素による労働災害の防止について
(平成23年7月22日)
(基安化発0722第2号)
(都道府県労働局労働基準部長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知)
現在、我が国の化学物質による中毒の労働災害の発生状況をみると、一酸化炭素(以下「CO」という。)によるものが1~2割を占め、休業4日以上の被災労働者数は毎年30名以上で推移するなど、減少の傾向がみられないところである。(別紙1参照)
CO中毒の防止については、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第578条に基づく内燃機関の禁止、「建設業における一酸化炭素中毒防止のためのガイドライン」(平成10年6月1日基発第329号の1)等により措置することとされているところである。
また、本省においては、平成22年1月より同年6月まで、「職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会」が開催され、同年7月にとりまとめられたところであるが、その中においても「内燃機関、ガス機器等におけるCO中毒の防止については、換気の必要性についての教育を徹底するとともに、鉄鋼業におけるCO警報センサーの着用による災害の防止事例等を参考にして、更に一層推進すること。また、一部の特に有害な屋外作業における化学物質による中毒災害についても、換気・送気、呼吸用保護具の着用等の有効な対策の推進が必要である。」とされたところである。
さらに、経済産業省原子力安全・保安院保安課長、ガス安全課長及び液化石油ガス保安課長の要請を受けて、都道府県労働局宛て、平成23年6月21日付け「食品工場及び業務用厨房施設における液化石油ガス及び都市ガスの消費施設による一酸化炭素中毒事故の防止に関する関係団体等に対する注意喚起の実施について」を発出するなど、関係省庁が連携してCO中毒防止対策に取り組んでいるところである。
これを踏まえ、別添1により別添2の事業者団体に対し、CO中毒による労働災害防止対策の徹底を要請したところである。ついては、御了知いただくとともに、貴職におかれても関係事業者に対し以下の点を徹底する等により、COによる労働災害の防止対策の一層の徹底を図られたい。
[別添1]
○一酸化炭素による労働災害の防止について(要請)
(平成23年7月22日)
(基安化発0722第1号)
((別添2の関係団体の長)あて厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知)
現在、我が国の化学物質による中毒の労働災害の発生状況をみると、一酸化炭素(以下「CO」という。)によるものが1~2割を占め、休業4日以上の被災労働者数は毎年30名以上で推移するなど、減少の傾向がみられないところです。(別紙1参照)
CO中毒の防止については、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第578条に基づく内燃機関の使用禁止、「建設業における一酸化炭素中毒防止のためのガイドライン」(平成10年6月1日基発第329号の1)等により措置することとされているところです。(参考参照)
また、厚生労働省におきましては、平成22年1月より同年6月まで、「職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会」が開催され、同年7月に報告書がとりまとめられましたが、その中においても「内燃機関、ガス機器等におけるCO中毒の防止については、換気の必要性についての教育を徹底するとともに、鉄鋼業におけるCO警報センサーの着用による災害の防止事例等を参考にして、更に一層推進すること。また、一部の特に有害な屋外作業における化学物質による中毒災害についても、換気・送気、呼吸用保護具の着用等の有効な対策の推進が必要である。」とされたところです。
さらに、経済産業省原子力安全・保安院保安課長、ガス安全課長及び液化石油ガス保安課長の要請を受けて、都道府県労働局宛て、平成23年6月21日付け「食品工場及び業務用厨房施設における液化石油ガス及び都市ガスの消費施設による一酸化炭素中毒事故の防止に関する関係団体等に対する注意喚起の実施について」を発出するなど、関係省庁が連携してCO中毒防止対策に取り組んでいるところです。
つきましては、CO中毒防止の観点から、貴団体におかれましても、別紙を参考に貴会会員に対して、下記の事項について周知徹底していただくようお願いします。
記
1 基本的事項
CO中毒を防止するための基本的な共通事項は以下のとおり。
(1) 労働衛生管理体制
作業責任者の選任、作業手順書の作成と遵守
(2) 作業管理
作業開始前の燃焼装置等の点検、作業中の換気、CO警報センサーの携帯、呼吸用保護具の使用、異常時の措置
(3) 作業環境管理
濃度測定の実施、換気装置の性能確保
(4) 健康管理
健康診断又は健康測定の実施
(5) 労働衛生教育
雇入れ時及び作業内容変更時等あらゆる機会を活用した計画的かつ継続的な教育の実施
2 CO中毒の事例が見られる主な業種・作業における具体的な措置事項
(1) 建設工事業、設備工事業等
ア COが発生するおそれのある内燃機関を使用する作業及び練炭の使用に係る作業等を行う場合、CO中毒予防に関する知識を有する者の中から作業責任者を選任し(下請け事業者を含む。)、CO中毒予防のため必要な対応を行わせること。
イ 作業責任者は、作業手順書を作成し、これに基づき業務に従事する労働者を指揮すること。
ウ 自然換気の不十分なところでは内燃機関、練炭等を使用しないようにし、やむを得ず使用する場合には、以下の事項を徹底すること。
(ア) 作業を始める(再開するときを含む。)場合には、CO濃度等を測定し、必要な場合は換気を行うこと。
(イ) 作業者の数に応じ、有効な呼吸用保護具を備え付けること。
(ウ) 作業中は十分な換気能力を有する換気装置を設置し、有効に稼働させること。
(エ) 労働者が作業を行っている間、継続的に、CO濃度を測定すること。
(オ) 換気が十分に行われていることが確認されている場合を除き、有効な呼吸用保護具を適正に着用させること。
エ 労働者に対して、以下の事項を実施すること。
(ア) 雇入れ時の健康診断及び定期健康診断を実施すること。
(イ) 健康診断結果に基づき、適切な健康診断実施後の措置を講ずること。
オ 労働者に対し、教育等により以下の点について周知すること。
(ア) CO中毒の発生の状況、CO中毒の症状及びCO中毒防止の重要性
(イ) 換気設備の使用方法、警報装置の使用方法及び呼吸用保護具等の使用方法
(ウ) 緊急時の対応(避難訓練を含む)
カ 「建設業における一酸化炭素中毒予防のためのガイドライン」(平成10年6月1日付基発第329号の2)を適宜参照すること。
(2) 食料品製造業、ホテル旅館業、一般飲食店等
ア CO中毒防止に係る作業責任者を指名し、ガス燃焼機器使用中の換気設備の稼働、ガスの燃焼状況及び換気設備についての定期点検の確認等の職務を行わせること。
イ ガス燃焼機器使用に当たっての換気設備の作動手順、ガスの燃焼状況及び換気設備についての定期点検、業務用厨房不完全燃焼警報センサー作動時の対応等を記載したマニュアルを作成・整備し、関係労働者への周知と遵守の徹底を図ること。
ウ 厨房等で燃焼機器等の火を使用している場所における作業を行う場合に、以下の事項を徹底すること。
(ア) 十分な換気能力を有する換気装置を設置し、有効に稼働させること。
(イ) 業務用厨房不完全燃焼警報センサーを設置し、有効に稼働させ、作動した場合には適切な対応をとること。
(ウ) 作業を行うに当たり、換気装置が有効に稼働していること、排気口につまりがないこと。
等の確認を徹底すること。
エ ガスの燃焼状況、換気設備の稼働状況及び給排気口の異物等の有無等についての定期点検及び必要な補修を実施すること。
オ 労働者に対して、以下の事項を実施すること。
(ア) 雇入れ時の健康診断及び定期健康診断を実施すること。
(イ) 健康診断結果に基づき、適切な健康診断実施後の措置を講ずること。
カ CO中毒予防のための労働者に対する教育等により以下の点について関係労働者に周知すること。
(ア) CO中毒の発生の状況、CO中毒の症状及びCO中毒防止の重要性
(イ) CO中毒防止の予防措置(換気設備の作動手順、ガスの燃焼状況及び換気設備の定期点検、業務用厨房不完全燃焼警報センサー作動時の対応等)に関する具体的な事項
(ウ) 燃焼機器等、火を使用する場合における換気等の必要な対策
キ 「業務用厨房における一酸化炭素中毒による労働災害防止について」(平21年12月4日付け基安化発1204第2号ほか)を適宜参照すること。
(3) 鉄鋼業
ア 作業を行う場合の責任者を明確にすること。COを取り扱う作業において作業主任者及び作業責任者を選任すること。また、特定化学設備の改造、修理及び清掃等に当たっては、重ねて作業指揮者を選任すること。
イ COを含むガスが存在するおそれのある場所での作業については、作業基準書、施工要領書等で安全な作業手順を定め、徹底すること。
ウ COにばく露するおそれのある作業を行うに当たっては、以下によること。
(ア) CO関連設備内で設備の改善等の作業を行う場合は、特定化学物質障害予防規則第22条に基づきガスを完全に遮断した上で内部のガスを完全に置換した上で行うこと。
なお、上記作業を行うに当たって、設備の構造上やむを得ずガスを完全に遮断できない場合は、原則として送気マスクを用いるか、有効な呼吸用保護具(防毒マスクの破過時間を十分考慮したもの。)を用い、かつ、短時間作業に限定すること。
(イ) CO中毒のおそれがある場所に立ち入るときは有効な呼吸用保護具を着用させること。
(ウ) 施設内の巡視や故障時のメンテナンスにより、特に管理区域(CO濃度の高い場所として事業場で独自に指定しているような場所)に立ち入る時は従事する労働者の全員に対して、CO警報センサー(50ppm以下に設定する)を携帯させること。
(エ) COの漏洩のおそれのある場所には固定式のCO警報センサーを設置すること。
(オ) CO警報センサーに衝撃を与えた場合はその直後に、また、湿気の多い場所で使用している場合は定期的に、その有効性の確認を行うこと。
エ 水封式安全器、シールポット等の有効性検査など、設備を適切な状態に保つために定期的に検査を行うとともに、設備の改修等の際には必要に応じその有効性について改めて確認を行うこと。
オ 労働者に対して、以下の事項を実施すること。
(ア) 雇入れ時の健康診断及び定期健康診断を実施すること。
(イ) 健康診断結果に基づき、適切な健康診断実施後の措置を講ずること。
カ 作業基準書の作成、労働者に対する教育等により労働者に以下の点について周知すること。
(ア) CO中毒の発生の状況、CO中毒の症状及びCO中毒防止の重要性
(イ) CO警報センサーの使用、換気の実施及び濃度測定等の必要な対策
(ウ) COを含むガスが存在するおそれのある場所に必要なく近づかないこと。
(エ) CO中毒のおそれがある場所での作業は呼吸用保護具(送気マスク、防毒マスク等)を着用すること。
(オ) CO中毒の疑われる症状がみられたらただちに医師の診察を受けること。
キ 「鉄鋼業における化学物質管理マニュアルの送付について」(平成17年6月1日付け基安化発第0601001号)、「鉄鋼業における一酸化炭素中毒の防止にかかる点検の実施結果について」(平成18年4月18日付け基安化発第0418001号)を適宜参照すること。
(4) 溶接作業
ア 作業責任者を選任し、下請け事業者を含めCO中毒予防のため必要な対応を行わせること。
イ COを含むガスが存在するおそれのある場所及びCOが発生するおそれのあるアーク溶接(マグ溶接、被覆アーク溶接)での作業について作業標準書の整備を行うこと。
ウ 通風が不十分な場所において、溶接(特にCOが発生するおそれのあるアーク溶接)を行う場合は、以下によること。
(ア) 十分な換気能力を有する換気装置を設置し、有効に稼働させること。
(イ) 呼吸用保護具の選定にあたっては、CO中毒防止を考慮し、送気マスク(エアラインマスク,ホースマスク等)の導入について検討すること。
なお,作業の特性などにより別の危険が想定され、送気マスクの使用が困難な場合、溶接作業者の背後に吸気口が付いている電動ファン付き呼吸用保護具は,吸入するCO濃度の低減が期待できることから,その導入について検討すること。この場合、他の溶接作業者による溶接の影響を受けるおそれを少なくするため、警報器は溶接作業者の背後に装着することが望ましい。
(ウ) 必要に応じ労働者に対してCO警報センサー(50ppm以下に設定する)を携帯させること。
エ 溶接器具又は溶接機器の稼働状況等についての定期点検及び必要な補修を実施すること。
オ 労働者に対して、以下の事項を実施すること。
(ア) 雇入れ時の健康診断及び定期健康診断を実施すること。
(イ) 健康診断結果に基づき、適切な健康診断実施後の措置を講ずること。
カ 労働者に対する特別教育の実施に当たり、以下の点について周知すること。
(ア) 溶接作業におけるCO中毒の発生状況及びCO中毒防止の重要性
(イ) 風通しの悪い場所で溶接を行う場合等における換気等の必要な対策
(ウ) 呼吸用保護具の適切な選定及び着用方法
(エ) CO警報センサー稼働時の対応
キ 「アーク溶接作業における一酸化炭素中毒の防止について」(平成16年9月21日付け基安化発第0921001号)を適宜参照すること。
(参考1)
(注) 一酸化炭素(CO)中毒
COは不完全燃焼状態で炭素化合物が燃焼する際に発生し、無色・無臭で、その存在が感知しにくい気体ですが、空気とほぼ同じ重さ(比重(空気を1としたときの重さ):0.97)で、強い毒性を有しています。COは、赤血球中のヘモグロビンと結合しやすく、このためCOを吸入すると、血液の酸素運搬能力が下がることによりCO中毒が起きます。CO中毒は、軽度の頭痛、吐き気等から始まり、その後、昏倒、致命傷に至るため、無意識のうちに被災するという特徴があります。
平成20年に6人、平成21年に3人、平成22年に4人の労働者がCO中毒による労働災害により死亡しています。(別紙1参照)
(参考2)
CO中毒対策に係る規定等
・労働安全衛生規則第578条(内燃機関の使用禁止)
事業者は、坑、井筒、潜函かん、タンク又は船倉の内部その他の場所で、自然換気が不十分なところにおいては、内燃機関を有する機械を使用してはならない。ただし、当該内燃機関の排気ガスによる健康障害を防止するため当該場所を換気するときは、この限りでない。
・「建設業における一酸化炭素中毒防止のためのガイドラインの策定について(平成10年6月1日基発第329号の2)」
建設業において自然換気が不十分な作業場所における、内燃機関を有する機械の使用又は練炭の燃焼によるコンクリート養生作業等について、COにばく露されるおそれがある場合の換気、警報装置の要件を定めたもの。
・「アーク溶接作業における一酸化炭素中毒の防止について」(平成16年9月21日付け基安化発第0921001号)
タンク、ボイラー又は反応塔の内部その他通風が不十分な場所、通風が不十分な屋内作業場において行うアーク溶接作業について、換気等の実施を要請したもの。
・『「鉄鋼業における化学物質管理マニュアル」の送付について』(平成17年6月1日付け基安化発第0601001号)
鉄鋼業におけるCO関連設備からのCOの漏洩防止、COを含むガスが発生していた場所にやむを得ず立ち入る必要がある場合の確実な換気、的確な方法によるCO濃度測定等を定めたもの。
・「鉄鋼業における一酸化炭素中毒の防止にかかる点検の実施結果について」(平成18年4月18日付け基安化発第0418001号)
上記マニュアル等を踏まえて鉄鋼業においてCO中毒の防止に係る自主点検の結果をまとめたもの。
・「業務用厨房施設における一酸化炭素中毒による労働災害防止について」(平成21年12月4日付け基安化発第1204第1号)
外食チェーン等の業務用厨房施設においてガス燃焼機器を使用する作業について、ガス燃焼機器使用中の換気の徹底、COセンサーの設置等を要請したもの。
[別添2]
関係団体
(1) 労働災害防止団体
中央労働災害防止協会
建設業労働災害防止協会
(2) 経営者団体
日本経済団体連合会
日本商工会議所
全国商工会連合会
全国中小企業団体中央会
(3) 建設業関連団体
社団法人日本土木工業協会
社団法人全国建設業協会
社団法人日本建設業団体連合会
全国建設業協同組合連合会
社団法人全国中小建設業協会
社団法人建設産業専門団体連合会
全国仮設安全事業協同組合
社団法人全国解体工事業団体連合会
一般社団法人住宅リフォーム推進協議会
社団法人日本建築板金協会
社団法人日本ビルヂング協会連合会
社団法人日本エレベータ協会
全日本電気工事業工業組合連合会
社団法人日本電設工業協会
社団法人日本空調衛生工事業協会
社団法人日本左官業組合連合会
社団法人日本鳶工業連合会
日本建築仕上学会
日本建築仕上材工業会
社団法人日本ボイラ整備据付協会
(4) その他関連業界団体
社団法人日本溶接協会
社団法人日本鉄鋼連盟
社団法人日本舶用工業会
日本高圧ガス容器バルブ工業会
社団法人日本工業炉協会
日本鉱業協会
社団法人全国ビルメンテナンス協会
社団法人ボイラ・クレーン安全協会
社団法人全国建設機械器具リース業協会
社団法人住宅生産団体連合会
社団法人日本フードサービス協会
社団法人全国生活衛生同業組合中央会
社団法人全国生活衛生営業指導センター
社団法人日本保安用品協会
日本チェーンストア協会
日本呼吸用保護具工業会
別紙1
最近の一酸化炭素(CO)による休業4日以上の労働災害の発生状況
1 最近のCOによる労働災害の発生状況
表:一酸化炭素による休業4日以上の中毒災害件数の推移(推定を含む)
年 |
H13 |
H14 |
H15 |
H16 |
H17 |
H18 |
H19 |
H20 |
H21 |
H22 |
中毒災害 |
40 |
35 |
58 |
35 |
47 |
69 |
37 |
36 |
31 |
36 |
内死亡災害 |
5 |
1 |
5 |
3 |
7 |
3 |
2 |
6 |
3 |
4 |
注: 労働者死傷病報告による。
2 近年のCOによる中毒の特徴
(1) 狭隘な場所における内燃機関の使用により発生したCOにより被災する例が多いこと。
(2) 複数の労働者が同時に被災する災害が多発しているが、その多くが厨房の調理用の器具から発生したCOにより、調理作業員や設備工事業者が被災したものであること。(別紙1―1参照)
(3) 鉄鋼業、製鉄業等における休業4日以上のCO中毒による労働災害が平成12年以降16件発生しており、その多くがメンテナンス中の災害であること。(別紙1―2参照)
(4) 溶接作業により発生したCOによる中毒の事例が散見され、平成12年以降休業4日以上の災害が7件発生していること。(別紙1―3参照)
別紙1―1
複数の労働者が一酸化炭素(CO)により休業4日以上の労働災害に被災した例
(※ 休業人数は4日以上のみ)
1 調理室内のガスコンロによるCO中毒
平成22年9月(社会福祉施設:休業4名)
調理室で4人の作業者がガスコンロを使用して園児の給食の調理を行っていたところ、2人が息苦しさやめまいを訴え倒れ病院に搬送されCO中毒と診断された。残る2人についても病院で診察を受けたところCO中毒と診断された。
使用していたガスコンロの不完全燃焼が原因と推定される。
2 調理室内の炭火によるCO中毒
平成22年7月(一般飲食店:休業2名)
一般飲食店の店内において、開店準備のためホルモンを焼くための炭に火を起こす作業を行い、炭を燃焼させ続けていたところ発生したCOにより中毒を起こしたもの。
3 食器洗浄室内のLPガスの使用によるCO中毒
平成22年7月(その他の小売業:休業2名)
厨房の食器洗浄室内において、被災者3名が食器洗浄機(LPガスを用いた給湯器付き)の周囲で食器の洗浄作業を行っていたところ、動悸、目まい等を訴えて救急搬送された。災害発生の原因として、給湯器の不完全燃焼によりCOが発生し、周囲に充満したこと。が推定される。災害発生時に、給湯器の排気筒(ステンレス鋼板を曲げ、溶接加工したもの)の一部が脱落して煙道を塞ぎ、排気不良になっていた。
4 食料品製造場所のLPガスバーナーの不完全燃焼による一酸化炭素中毒
平成22年7月(その他の食料品製造業:休業3名)
LPガスを熱源とする内径64センチ、深さ32センチの練り攪拌機を使用し、玉こんにゃくのたれ製造作業中、練り攪拌機のバーナーの不完全燃焼により、3名の労働者が次々と気分が悪くなり、救急車で病院に搬送され、CO中毒と診断されたもの。
5 ブルーシート養生内の内燃機関の使用による一酸化炭素中毒
平成22年3月(建築設備工事業:休業2名)
中学校の給食用厨房排水設備改修工事現場において、コンクリート床面に排水溝を敷設するため、切削粉が飛散しないよう木材で矢倉を組んでブルーシートで覆って養生し、その内部で内燃機関を動力とする手押し式コンクリートカッターを使用して、敷設予定箇所のコンクリート床面を切削していたところ、当該カッターを操作していた労働者と手元作業員の2名がCO中毒となったもの。
6 換気扇を停止した厨房内のCO中毒
平成21年7月(その他の接客娯楽業及び派遣業:休業2名)
クッキー等の菓子製造を行う厨房(約4m×約13m×高さ約2.7m)において、換気扇を全て停止した状態でガスオーブンを使用していたところ、労働者2名が体調の不調を訴えたため、病院へ搬送された。その際、血液検査の結果一酸化炭素中毒と診断された。なお、念のため、他の労働者4名も病院で検査を受け、同様の診断を受けた(休業1日3名、不休1名)。
7 ホテルの地下に設けられた気流が還流したCO中毒
平成21年6月(旅館業、病院業及び印刷業:死亡1名、休業2名)
修学旅行の小学生、教師等80名が宿泊先のホテルに滞在していたところ、同ホテルの地下1階に設けられている給湯用に使用しているボイラの不完全燃焼により発生したと思われるCOが排気管から2、3階に漏れ、3階にいた関係者及び救助の消防隊員らが中毒をおこした。
卒業アルバム用写真撮影のため同行していたカメラマンが死亡。病院に搬送された被災者は計22名。
8 吹付け石綿の除去工事での内燃機関の使用によるCO中毒
平成20年3月(その他の建築工事業:休業6名)
吹き付け石綿の除去工事において、1階の養生した部屋の内部で除去作業を行っていたところ、1階の別の部屋に設置してあった発電機(ガソリンエンジン)の排ガスが、クリーンルームを通って、養生した部屋の内部に流れ込み、その部屋で作業を行っていた3人と発電機が設置してある部屋の上方の階にいた3人がCO中毒を発症したもの。
別紙1―2
製鉄業等における一酸化炭素(CO)により休業4日以上の労働災害に被災した例
(※ 休業人数は4日以上のみ)
1 フランジ部の隙間から漏れているコークスガスによるCO中毒
平成20年12月(製鉄・製鋼・圧延業:休業1名)
製鉄所構内において、労働者4名にて給水予熱器点検作業のため給水予熱器とコークス冷却設備の間にあるフランジ部(高さ1.3m、幅4.3m)に閉止板を挿入する作業を行っていたところ、フランジ上部から既設の通路を使用して下部へ移動する際に、送気マスクのホースの長さが足りなかったため、これを一旦はずして下部に行ったところ、フランジ部の隙間(9mm)から漏れているコークスガスを吸入しCO中毒となった。なお、他に2名が被災した。
2 排気ダクト内の点検中のCO中毒
平成20年8月(製鉄・製鋼・圧延業:休業1名)
製鋼工場において、溶湯内に含まれるガスを吸引する真空装置の真空度に不備があったため、排気ダクト内の点検を行っていた労働者が、CO中毒により被災した。また、救出を行った構内下請業者の労働者も、CO中毒により被災している。
病院に搬送されたところ、被災者の血中のCO濃度が29%であり、救出した労働者は6.6%であった。
3 施設点検作業中のCO中毒
平成20年5月(製鉄・製鋼・圧延業:休業1名)
高炉の炉頂挿入装置上部シール弁が「閉」にならない故障が発生したため、被災者は原料等の挿入コンベヤ側の点検口を開いて、内部のシール弁を確認しようとしたが確認出来なかった。そのため、点検口より当該コンベヤのヘッド側シュート内に入り、点検後に外に出ようとしたときに気分が悪くなり自力で脱出できない状態になった。
4 キュポラ内部の不完全燃焼によるCO中毒
平成18年3月(鋳物業:死亡1名)
被災者は昼から鋳鉄製品の製造作業をするための準備作業をし、鋳鉄製造のためキュポラにコークスを入れ火をつけて予熱を起こしていた。加熱する際にキュポラ内に風を送るための送風機の吸気口の前でマンガンを鉄鎚で小分けにしていたところキュポラ内のコークスが不完全燃焼を起こしCOが発生、送風機の配管を逆流し吸気口から噴出したため被災者がばく露した。
5 スクリューコンベア内のCO中毒
平成17年12月(派遣業:死亡1名)
キュポラ用集じん機において、集じんした粉じんを排出口まで搬送するスクリューコンベアが故障したため、派遣労働者である被災者が点検口から集じん機内に入り、機内の堆積粉じんの掻き出し作業を行っていたところ、機内に滞留していたCOを吸入し、同中毒に罹患したもの。なお、被災者は、意識不明の状態が続いたが、平成18年2月15日死亡した。
6 ガスブロワー室内のCO中毒
平成17年12月(製鉄・製鋼・圧延業:死亡1名)
COを含有する高炉ガスのガス圧を昇圧するガスブロワー室のガス漏れが深夜に確認されたとの作業前ミーティングにより、同日午後に点検準備作業を予定していた同事業場エネルギー課の主任代行が、ミーティング終了約1時間後の午前9時50分頃、ガスブロワー室において倒れているのが発見され、救出後病院に収容されたが午前11時過ぎに死亡したもの。
7 キュポラを覗き込んでCO中毒
平成17年7月(鋳物業:休業1名)
鋳造工場において、操業中のキュポラの状態を確認しようと上から覗き込んだところ、キュポラから出ていたCOガスを吸い込み意識を失って倒れたもの。
別紙1―3
溶接作業による一酸化炭素(CO)により休業4日以上の労働災害に被災した例
(※ 休業人数は4日以上のみ)
1 工場建屋内のアーク溶接作業によるCO中毒
平成22年6月(派遣業:休業1名)
電気機械器具製造業の工場建屋内において、下請会社の派遣労働者が、発電機の部品(タービン発電機ステーター)のアーク溶接(半自動式炭酸ガス溶接)作業において、頭部を狭い箇所に入れ作業中気分が悪くなり、ぐったりしているところを同僚に発見された。
病院で検査をしたところ、CO中毒と診断された。
2 地下室のアーク溶接・溶断作業によるCO中毒
平成18年12月(機械器具設置工事業:休業3名)
ホテル地下1階の熱源機械室内において冷温水発生機等熱源機械の交換工事で鋼管の溶断、アーク溶接作業を行っていたところ、作業開始から2時間30分を経過したところで労働者3人がCO中毒となったもの。
作業場では内燃機関を有する発電機、アーク溶接機を使用しており、天井に開口部を設け換気の措置を講じていたが換気量が不十分であったと判断される。
3 ビニールハウス内のアーク溶接作業によるCO中毒
平成18年1月(電気通信工事業:休業1名)
ビニールハウスの建築工事において、ビニールハウス内で元請事業者が溶接機(発電機兼用)を使用した。ビニールハウス内で配線工事に従事していた被災者らは溶接機の排ガスに含まれるCOにばく露された。午後5時30分に体調異常を自覚したが、終業時間の午後6時まで就労した。被災者は帰宅後、病院で診察を受け入院した。なお、もう1名の労働者が、翌日病院で診察を受け経過観察と診断された。
4 船穀内部のCO2溶接によるCO中毒(推定)
平成16年3月(造船業:休業1名)
造船所構内の気積約8.7m3の船穀(ブロック)内部で、被災者はCO2溶接作業を行っていた。勤務終了後、自覚症状を感じたが、そのまま帰宅した。
夜間になり気分が悪いと申し出て、病院に搬送され、CO中毒の疑いがあると診断されたもの。
5 タンク内のMAG溶接作業によるCO中毒
平成15年12月(その他の金属製品製造業:休業1名)
被災者は、ターニングローラーに横置きした触媒調整タンク(SUS316L)に、フランジシーラー(SS400)の取り付けを、作業架台上より下向き姿勢のMAG溶接により午前8時40分頃から午後5時45分頃まで行っていたところ、シールドガスの炭酸ガス(CO2)から変化したCOを長時間吸引し続け、被災したもの。
6 ダクト内の溶接作業によるCO中毒
平成15年5月(その他の建設業:休業1名)
高炉の休風を利用して、ガス管の切替工事を施工するためA(溶接作業)、Bと被災者(ダクト内足場仮設作業)の3名で、エアーラインマスクを着用してダクト接続部の内面溶接を行う作業に従事していたところ、溶接のヒュームがこもり作業箇所が見えにくくなったため、吸引ファンを設置し、管内の排気を開始したところ、気分が悪くなった。
7 通風機ダクト内のアーク溶接作業によるCO中毒(疑い)
平成14年6月(機械器具設置工事業:休業1名)
自家火力発電所の定修工事において、通風機ダクト内に入り、アーク溶接によりダンパー(開閉装置)部品の取付作業を行っていたところ、気分が悪くなりダクトから自力で脱出し、病院に搬送された。医師によりCO中毒の疑いがあると診断されたもの。
災害発生時、作業場所のダクトは、被災者の出入り口以外の換気口は確保されていなかった。