添付一覧
○「腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン」について
(平成23年9月30日)
(薬食審査発0930第1号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)
医薬品の承認申請の目的で実施される腎性貧血治療薬の臨床評価方法について、別添のとおりガイドラインを取りまとめましたので、貴管下関係業者に対して周知方お願いします。
なお、本ガイドラインは、現時点における科学的知見に基づく基本的考え方をまとめたものであり、学問上の進歩等を反映した合理的根拠に基づいたものであれば、必ずしもここに示した方法を固守するよう求めるものではないことを申し添えます。
[別添]
腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン
Ⅰ 緒言
腎性貧血は、慢性腎臓病の重要な合併症で、その主因は腎障害によるエリスロポエチンの産生低下である。すなわち、腎機能低下に伴い腎でのエリスロポエチン産生量が低下し、生理的なヘモグロビン値を維持できない状態で、貧血の原因疾患が腎機能障害以外に認められない場合に診断される(最新の腎性貧血治療ガイドライン1)参照)。なお、ヘモグロビンの基準値は年齢、性、人種等により異なる。
本邦における腎性貧血患者数は、日本人では血清クレアチニン2mg/dL未満、GFR30mL/min以上の患者でも腎性貧血があることを考慮すると、基礎疾患である慢性腎臓病患者数から30万人以上と推測される。
腎性貧血治療薬の臨床試験の目的は、その医薬品の有効性及び安全性を患者集団において客観的に評価し、その臨床的有用性を確認することにある。この目的のために最新の腎性貧血治療ガイドライン1)及びその他のガイドライン2~9)等を参考として、腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドラインを策定する。
なお、本ガイドラインでは、腎性貧血を透析(血液透析又は腹膜透析)施行中の患者と保存期慢性腎臓病の患者とに分けて考えることとし、腎性貧血治療薬として開発される医薬品の臨床的有効性及び安全性について適切な評価を行うための臨床試験の計画、実施方法、評価方法等を示す。
Ⅱ 臨床試験における評価方法に関する基本的考え方
透析(血液透析又は腹膜透析)施行中の患者及び保存期慢性腎臓病の患者における腎性貧血を対象として、腎性貧血改善効果(ヘモグロビン値等)を主要評価項目として有効性の評価を行う。腎性貧血治療における真の最終目標は生命予後やQOLの改善である。しかしながら、長期間の観察を必要とするため、腎性貧血治療薬の臨床評価にはヘモグロビン値等を用いることが多いので、これに準ずる。
[1.評価方法の選択]
開発された薬剤の期待される薬効及び投与目的を明確にし、それを客観的に評価し得る評価項目を選択する。
試験方法としては、臨床推奨用量の決定及び既承認の腎性貧血治療薬との比較を行う。なお、被験薬の有効性、安全性を示し、更に試験方法の妥当性を検討するため、後期第Ⅱ相試験(用量反応試験)又は第Ⅲ相試験(検証的試験)のいずれか又は両者において必要に応じてプラセボ又は既承認の腎性貧血治療薬等の実薬を対照とした無作為化二重盲検比較試験を行う。
1) 方法
被験薬の使用期間、用法及び用量は、被験薬の性質、腎機能、透析方法等に依存するものであり、試験デザインについてはそれぞれの被験薬の特徴を生かして、透析(血液透析又は腹膜透析)施行中の患者と保存期慢性腎臓病の患者で別々に設定する。
(1) 切替え維持試験
腎性貧血患者では、既承認の腎性貧血治療薬で治療されている患者が多いことから、被験薬に切り替えて治療する場合の用法、用量、有効性及び安全性を検討する必要がある。本試験では、既承認の腎性貧血治療薬によりヘモグロビン値が安定して維持されている患者を対象に、既承認薬から被験薬へ切り替えた後のヘモグロビン値が切り替える前と同様に目標の範囲内に安定して維持されるかを検討する。
(2) 貧血改善試験
被験薬の貧血改善効果を検討する場合には、投与開始初期の用法、用量、有効性及び安全性を確認する必要がある。本試験では、未治療又は既承認薬を一定期間ウォッシュアウトした患者を対象に被験薬の使用を開始し、ヘモグロビン値の上昇により貧血改善効果を検討する。また、最新の腎性貧血治療ガイドライン1)等を参考にヘモグロビン値の急激な上昇がないように、被験薬の薬物動態及び薬力学的反応の関係から投与量を注意深く設定する。
2) 対象
(1) 対象患者選択基準
腎性貧血の診断基準に適合し、ヘモグロビン値が最新の腎性貧血治療ガイドライン1)における投与開始基準を満たしている透析施行中の患者及び保存期慢性腎臓病の患者を対象とする。
a) 導入後3ヶ月以上経過した安定期の透析(血液透析又は腹膜透析)施行中の患者
b) 保存期慢性腎臓病の患者
上記、a)あるいはb)について治験対象として選択された場合はそれぞれの性別、年齢、体重、身長、原疾患、透析歴、合併症、既往歴等を記録する。
(2) 除外を要するものあるいは好ましくないもの
腎性貧血治療薬の薬効評価に影響を与えるおそれのあるもの、治験薬投与により危険性が生じるおそれがあるもの、治験遂行時の安全性に問題が生じるおそれのあるものを対象から除外する。
3) 観察項目
(1) 腎性貧血改善効果を示す指標
ヘモグロビン値等
(2) 身体所見及び臨床検査
脈拍数、血圧等の身体所見を記録する。胸部レントゲン検査、心電図検査、赤血球系パラメータを含む血液学検査、鉄代謝関連検査、腎機能検査等を治験薬に応じて実施する。異常が生じた場合には、必要な処置をして追跡検査及び観察を行う。
(3) 自覚症状及び他覚所見の改善
(4) 薬物動態
必要に応じて治験薬の血中濃度を経時的に測定し、薬物動態と腎性貧血に対する有効血中濃度を推定する。
(5) 安全性
有害事象発現の有無、程度や臨床検査所見により安全性を検討する。治験薬使用との関連が懸念される治療開始後の急激な血圧変化、アレルギー反応等に注意する。
[2.評価]
被験薬の有効性は、貧血改善効果を示す指標(ヘモグロビン値等)を主要評価項目として、臨床症状等も副次的評価項目に加える。ただし、妥当性があれば、他の検査法を評価方法として選ぶことができる。
[3.治療効果の判定]
主要評価項目、副次的評価項目の選択は治験デザインの設定において最も重要なものである。被験薬の薬効を考慮し、最も適切な項目を選択する。
[4.試験デザインの決定に関する留意点]
1) 全般的事項
試験デザインは、先行する試験で得られた情報及び治験薬の評価に影響を与え得る要因に関して十分に分析、検討し、試験の目的及び検証すべき仮説を踏まえて設定する。
2) 標準薬の設定
一般的に、医薬品の製造承認に関する取扱いが厳密化された昭和42年以降に承認又は再評価された既承認薬で、客観的かつ精密な評価がなされているものを、被験薬の作用機序に応じて標準薬として選択する。
3) 組入れ症例の選択基準、除外基準
対象患者は、臨床的に安定した患者から最新の腎性貧血治療ガイドライン1)に記載された貧血の診断基準に従って選択し、治験薬の特性を考慮して合理的に決定する。
Ⅲ 臨床試験
非臨床試験の成績に基づき、被験薬がヒトにおいて許容される安全性の範囲内で有効性を示すと期待される場合に限って、臨床試験に進むことができる。
被験薬の承認申請のための臨床試験は、ガイドライン2~9)を遵守し、臨床薬理試験、探索的試験、用量反応試験、検証的試験等を実施する。被験薬の評価として客観的指標を用いた有効性評価及び安全性評価が行われる。なお、いずれの相又は段階においても、安全性又は有効性に疑問が生じたならば、非臨床試験までを含めて、前段階へ立ち戻って再検討を行う。
[1.治験の実施]
1) 有効性・安全性評価の時期の設定
治験期間の設定は、試験の目的に応じて以下の項目を考慮して決定する。
(1) 予測される効果発現時期
(2) 予測される副作用発現時期
(3) プラセボ対照群に対する倫理的配慮
長期間にわたりプラセボを投与し続けることには倫理的な問題がある。特に比較的重篤な腎性貧血を対象とした治験においては更に慎重な姿勢と十分な配慮が望まれる。
2) 被験者に対する治験終了後の対応
(1) 治験終了から発売までの期間において治験参加者に対して必要に応じて別途長期継続投与試験を実施する等、実薬提供の救済措置を講じることも考慮する。
(2) この期間の成績は長期投与成績として有効に活用する。
[2.第Ⅰ相試験(臨床薬理試験)]
1) 目的
第Ⅰ相試験は、非臨床試験で得られた情報をもとに、被験薬を初めてヒトに適用する臨床試験である。比較的限定された数の健康成人等を対象とし、被験薬のヒトにおける安全な投与量の検討を主な目的とする。また、この段階で被験薬の吸収、分布、代謝、排泄等、薬物動態学的プロファイルの検討も行われる。その他、外国データの再現性や人種差の検討が目的に含まれる。
2) 治験責任医師等及び治験実施医療機関
患者を被験者とする場合には、臨床薬理学に精通した者及び腎性貧血について十分な知識と経験を有する医師とが協力して実施する。また、被験者に対する十分な観察と管理ができ、緊急時にも十分な対処のできる医療機関で行われなければならない。
3) 被験者
原則的に健康成人を対象とする。比較的少人数を対象とし、短期(単回投与及び反復投与)の治験薬の投与を行う。被験薬の薬理作用等により、健康成人への投与が問題となる場合には、被験薬の投与が安全性上問題となる疾患を有しない腎性貧血患者も対象となる。
4) 試験デザイン
安全性の確認に最も重点をおく。
原則として、入院又は入院に準じた状況で、単回投与試験及び反復投与試験により、薬理作用、薬物動態、有害事象及び忍容性を検討する。有効性についても予備的に検討することが望ましい。
腎性貧血治療薬は、健康成人にも薬理作用を示す可能性があるため、必要に応じてプラセボ又は標準薬を用いて無作為化二重盲検比較試験を実施すれば、より精度の高い情報を得ることができる。また、被験者の安全性確保のために試験実施計画書に試験中止基準を明示しておく。
(1) 用法・用量
非臨床試験成績から推定された安全な用量の単回投与から開始し、ヘモグロビン値が上がりすぎないように留意する等、安全性を確認しながら、用量と必要ならば投与回数を漸次増加させる。これにより将来予測される用法及び用量を検討する目的で、可能な限り血中薬物濃度がプラトーに達するまでの期間、反復投与する。
(2) 安全性の確認
自覚症状、他覚的所見及び検査所見について予想された異常及び予想されなかった異常を観察し、安全性を確認する。
(3) 一般観察項目
体重、血圧、脈拍、呼吸数、体温、皮膚所見、心電図検査、神経症状等、治験薬に応じて必要な項目を設定する。
(4) 一般臨床検査
血液学検査、血液生化学検査、免疫血清学検査、尿検査等。
(5) その他、安全性評価に必要な項目
治験中に発生した異常検査所見を発見するためには、すべての検査を治験の開始前後に行い、必要があれば治験中にも実施する。さらに、治験終了から一定期間、経過観察の時期を設定する。
(6) 薬物動態の検討
薬物の吸収、分布、代謝、排泄について検討する。単回投与時及び反復投与時に薬物の血中濃度を測定し、血中濃度一時間曲線下面積(AUC)、クリアランス、最高血中濃度、最高血中濃度到達時間、分布容積、半減期等を求め、後の試験の投与量及び投与方法の決定のための参考にする。また、線形性の有無や、定常状態に達するまでの投与回数とその血中濃度、蓄積性の有無等、薬物動態学的プロファイルを明らかにする。
(7) 治験薬の特性による特殊検査
予想される作用機序を考慮し、必要とされる特殊検査を実施する。
5) 臨床評価
以上の試験の結果、自覚症状、他覚的所見の項目及び一般臨床検査値の異常変動の項目と程度等、安全性について確認する。患者を対象とした場合には、腎性貧血に関連する自覚症状及び他覚所見、ヘモグロビン値、血清鉄濃度、フェリチン濃度等に関する検査を実施する。
第Ⅰ相試験から第Ⅱ相試験に進むにあたり、病態を考慮した上での被験薬反復投与時の妥当な投与方法と用量、発現する可能性のある副作用及び臨床検査値の異常変動とその程度、薬物動態学的及び薬力学的指標の概要等についての情報が必要である。非臨床試験成績と第Ⅰ相試験成績とが大きく相違する場合には、あらためて非臨床試験に立ち戻る。
[3.第Ⅱ相試験]
第Ⅱ相試験は、被験薬を腎性貧血患者に投与し、効果の有無、用量反応の初期的推測、安全性を検討する前期試験(探索的試験)と用量の検討を主とする後期試験(用量反応試験)に分けられる。
[3―1 前期第Ⅱ相試験(探索的試験)]
1) 目的
前期第Ⅱ相試験は、被験薬を探索的に腎性貧血患者に投与する段階であり、被験薬の有効性、用量反応の初期的推測、投与回数及び安全性について検討する。
2) 治験責任医師等及び治験実施医療機関
腎性貧血の診療経験豊富な臨床医が、臨床薬理学に精通した者と協力して行う。また、被験者に対する十分な観察と管理ができ、緊急時にも十分な対処のできる複数の医療機関で行われなければならない。
3) 被験者
最新の腎性貧血治療ガイドライン1)を参考に設定した対象患者選択基準を満たす腎性貧血患者を対象とする。なお、初期の試験であるため、十分な情報が得られるよう頻繁に観察できる患者であることが必要である。
4) 試験デザイン
最新の腎性貧血治療ガイドライン1)に従い、透析施行中の患者と保存期慢性腎臓病の患者に分けて、用量漸増デザイン等を用いた用量比較試験を行う。一定の観察期間(原則として1~2週間)をおいた後、治験薬を投与し、必要な項目を観察する。
(1) 用法・用量
第Ⅰ相試験の結果に基づいて推定最小有効量から開始し、おおよその用量反応関係が得られるまで増量する。必要な場合は第Ⅰ相試験に戻り試験を追加する。第Ⅰ相試験で検討した用量を超えて有効性の期待できる高用量に増量する時は、第Ⅰ相試験と同様の体制のもとで慎重に投与する。
(2) 投与期間
投与期間は治験薬の薬理学的及び薬物動態学的特性により定める。
(3) 症例数
試験の目的に応じて妥当な結果を導き出せる例数とする。
(4) 観察項目
Ⅱ―1―3)に示す観察項目を参考として検討する。
(5) 併用薬
治験薬の有効性及び安全性の評価に影響を及ぼす薬剤は併用しない。
5) 臨床評価(有効性及び安全性)
(1) 有効性に対する評価
年齢、性別、体重、既往歴、合併症、前治療、罹病期間、薬剤アレルギー等の患者背景を記録する。また、生理学的検査(血圧、脈拍数等)、一般身体的所見、さらに、副作用及び薬効を判定するのに必要と考えられる血液学検査、血液生化学検査、尿検査及び免疫血清学検査を適切に選択して実施する。なお、腎性貧血治療薬の薬効評価についてはヘモグロビン等による腎性貧血の病態の評価に加え、網赤血球数、鉄代謝関連検査、心胸郭比、心電図等による心機能評価、QOLの評価等を必要に応じて選択し、実施する。
(2) 安全性に対する評価
副作用等安全性に関連する検査を必要に応じて選択し、実施する。
a) 有害事象
治験薬を投与された被験者に生じたすべての疾病又はその兆候を「有害事象」として扱い、当該治験薬との因果関係は問わない。有害事象が認められた場合には、症例報告書にその内容、程度、発現時期及び消失時期、治験薬の服薬状況、処置の有無、経過等を記録するとともに、治験薬との因果関係を判定する。これらの有害事象のうち、治験薬との因果関係が否定できないものを「副作用」として取り扱う。
治験薬の種類によっては、治験薬投与終了後に一定期間の経過観察を必要とする場合もある。
b) 副作用
副作用と思われる症状の発現又は臨床検査値異常がみられた場合には治験責任医師の判断により、当該被験者についての治験薬投与の継続又は中止を決定し、その内容(症状、発現日、程度、処置、持続時間、経過及び転帰)の詳細を治験薬との因果関係とともに記録する。副作用は、原則として症状又は臨床検査値の異常変動が消失するまで経過観察を行う。
c) 重篤な有害事象発現時の処置
重篤な有害事象が発現した場合に、治験責任医師は直ちに適切な処置を行うとともに、所属医療機関の長及び治験依頼者に連絡する。
[3―2 後期第Ⅱ相試験(用量反応試験)]
1) 目的
後期第Ⅱ相試験では、用量反応関係を明確にし、第Ⅲ相試験で用いる用量を決定する。また、より多くの患者について被験薬の有効性及び安全性を明らかにする。
2) 治験責任医師等及び治験実施医療機関
腎性貧血に関して十分な臨床経験を有し、また、腎性貧血治療薬の薬効評価に精通している専門医が担当し、治験を遂行するのに必要な機器及び体制が完備された医療機関において行う。
3) 対象
最新の腎性貧血治療ガイドライン1)を参考に設定した対象患者選択基準を満たす腎性貧血患者を対象とする。
4) 試験デザイン
最新の腎性貧血治療ガイドライン1)に従い、透析施行中の患者と保存期慢性腎臓病の患者に分けて、原則として無作為化二重盲検法を用いた並行群間比較試験を行う。一定の観察期間(原則として1~2週間)をおいた後、治験薬を投与し、必要な項目を観察する。
(1) 投与量
前期第Ⅱ相試験の成績に基づいて、適当と推定された範囲の用法及び用量(3用量以上の比較試験が望ましい)を用いる。必要に応じてプラセボ等を対照として用いる。
(2) 投与期間
投与期間は治験薬の薬理学的及び薬物動態学的特性により定める。
(3) 症例数
統計学的に妥当な結果を導き出せる例数とする。
(4) 観察項目
Ⅱ―1―3)に示す観察項目を参考として検討する。透析患者では原則として透析条件を一定とする。
(5) 対照薬
プラセボ又は必要に応じて標準薬を用いる。標準薬の選択にあたっては、わが国で広く用いられ、臨床評価が確立しているものとする。また、化学的、薬理学的類似性及び臨床的適応の類似性についても考慮する(なお、平成13年2月27日付け医薬審発第136号厚生労働省医薬局審査管理課長通知「「臨床試験における対照群の選択とそれに関連する諸問題」について」を参照すること)。
(6) 併用薬
治験薬の有効性及び安全性の評価に影響を及ぼす薬剤は併用しない。
5) 臨床評価
Ⅲ―3―1の前期第Ⅱ相試験(探索的試験)の5)臨床評価を参考として実施する。
[4.第Ⅲ相試験(検証的試験)]
1) 目的
第Ⅲ相試験は、後期第Ⅱ相試験により明確にされた用法及び用量に基づいて、被験薬の有効性を検証し安全性を確認するが、原則として、標準薬に対する非劣性若しくは同等性、又は、プラセボに対する優越性を検証する。
2) 治験責任医師等及び治験実施医療機関
後期第Ⅱ相試験に準ずる。
3) 対象
後期第Ⅱ相試験に準ずる。
4) 試験デザイン
最新の腎性貧血治療ガイドライン1)に従い、透析施行中の患者と保存期慢性腎臓病の患者に分けて、標準薬又は必要に応じてプラセボを対照とし、原則として無作為化二重盲検法を用いた並行群間比較試験を行う。ヘモグロビン値等により必要に応じて増量・減量・休薬のルールを決める。
(1) 投与量
後期第Ⅱ相試験の成績に基づいて、適当と推定された範囲の用法及び用量を用いる。
(2) 投与期間
投与期間は治験薬の薬理学的及び薬物動態学的特性により定めるが、ヘモグロビン値上昇及び維持が確認可能な24週間以上が望ましい。
(3) 症例数
統計学的に妥当な結果を導き出せる例数とする。
(4) 観察項目
Ⅱ―1―3)に示す観察項目を参考として検討する。透析患者では原則として透析条件を一定とする。
(5) 対照薬
標準薬又は必要に応じてプラセボを用いる。標準薬の選択にあたっては、わが国で広く用いられ、臨床評価が確立しているものとする。また、化学的、薬理学的類似性及び臨床的適応の類似性についても考慮する(平成13年2月27日付け医薬審発第136号厚生労働省医薬局審査管理課長通知「「臨床試験における対照群の選択とそれに関連する諸問題」について」を参照すること)。
(6) 併用薬
治験薬の有効性及び安全性の評価に影響を及ぼす薬剤は併用しない。
5) 臨床評価
Ⅲ―3―1の前期第Ⅱ相試験(探索的試験)の5)臨床評価を参考として実施する。
[5.長期投与試験]
長期投与試験では、被験薬の長期投与の安全性及び有効性の確認が重要である。長期投与試験は、後期第Ⅱ相試験以降に実施される。
1) 目的
被験薬の安全性及び有効性をより多数例において、また長期にわたって検討する。
2) 治験責任医師等及び治験実施医療機関
後期第Ⅱ相試験に準ずる。
3) 対象
腎性貧血の診断基準を満たし、主治医が長期投与試験に適していると判断した患者を対象とする。
4) 試験デザイン
治験薬を投与し、一般的には非盲検法により必要な項目を観察する。
(1) 投与量
後期第Ⅱ相試験で有効と判定された用法及び用量を用いる。
(2) 投与期間
6ヶ月以上の投与期間が必要である。
(3) 症例数
6ヶ月以上の投与例が300例以上、1年以上の投与例100例以上が望ましい(平成7年5月24日付け薬審第592号厚生省薬務局審査課長通知「致命的でない疾患に対し長期間の投与が想定される新医薬品の治験段階において安全性を評価するために必要な症例数と投与期間について」を参照すること)。
(4) 観察項目
Ⅱ―1―3)に示す観察項目を参考として検討する。透析患者では原則として透析条件を一定とするが、試験期間が長期間となることを考慮し、臨床的、倫理的に必要な場合等には適切な範囲で変更することは可能である。自覚症状は、少なくとも4週間間隔で評価し、適当な間隔で臨床検査を行い異常の有無を調査する。
通常は非盲検非対照試験であり、対照薬は不要であるが、対照薬として標準薬を用いる場合、その選択にあたっては、わが国で広く用いられ、臨床評価が確立しているものとする。また、化学的、薬理学的類似性及び臨床的適応の類似性についても考慮する(平成13年2月27日付け医薬審発第136号厚生労働省医薬局審査管理課長通知「「臨床試験における対照群の選択とそれに関連する諸問題」について」を参照すること)。
(5) 併用薬
治験薬の有効性及び安全性の評価に影響を及ぼす薬剤は併用しない。
5) 臨床評価
Ⅲ―3―1の前期第Ⅱ相試験(探索的試験)の5)臨床評価を参考として実施する。途中中止例、脱落例についても十分な検討を行う。
[6.追加試験]
以下の臨床試験を必要に応じて後期第Ⅱ相試験以降に計画し実施する場合は下記の点に留意する。
1) 高齢者における試験
高齢者における薬剤の用法及び用量の設定は非高齢者と同一でないことも考えられるので、必要に応じて高齢者に対する推奨用法及び用量を検討することが望ましい(平成5年12月2日付け薬新薬第104号厚生省薬務局新医薬品課長通知「「高齢者に使用される医薬品の臨床評価法に関するガイドライン」について」を参照すること)。
2) 小児における試験
小児における薬剤の用法及び用量の設定は成人と同一でないことも考えられるので、必要に応じて小児に対して推奨される用法及び用量を検討することが望ましい(平成12年12月15日付け医薬審第1334号厚生省医薬安全局審査管理課長通知「小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイダンスについて」を参照すること)。
Ⅳ 文献
1) 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン(2008年版日本透析医学会).
2) 厚生省令 第28号 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令.平成9年3月27日.
3) 厚生省医薬安全局審査管理課長通知 医薬審第380号 臨床試験の一般指針について.平成10年4月21日.
4) 厚生省医薬安全局審査管理課長通知 医薬審第1019号 医薬品の臨床試験のための非臨床安全性試験の実施時期についてのガイドラインについて.平成10年11月13日.
5) 厚生省医薬安全局審査管理課長通知 医薬蕃第1047号 「臨床試験のための統計的原則」について.平成10年11月30日.
6) 厚生省薬務局審査課長通知 薬審第494号 「新医薬品の承認に必要な用量―反応関係の検討のための指針」について.平成6年7月25日.
7) 厚生省薬務局審査課長通知 薬審第592号 致命的でない疾患に対し長期間の投与が想定される新医薬品の治験段階において安全性を評価するために必要な症例数と投与期間について.平成7年5月24日.
8) 厚生省薬務局新医薬品課長通知 薬新薬第104号 「高齢者に使用される医薬品の臨床評価法に関するガイドライン」について.平成5年12月2日.
9) 厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知 薬食安発0328007号 承認後の安全性情報の取り扱い:緊急報告のための用語の定義と報告の基準について.平成17年3月28日.