アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○塩酸メチルフェニデート製剤の小児期AD/HD患者の成人期への継続使用に関する添付文書の改訂について

(平成23年8月26日)

(薬食審査発0826第6号)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)

塩酸メチルフェニデート製剤(販売名:コンサータ錠18mg、同錠27mg)の小児期AD/HD患者の成人期への継続使用について、今般、下記のとおり添付文書を改訂することとしましたので、ご了知の上、貴管下の医療機関・薬局等に対してご周知頂くようお願いします。

なお本件については、平成23年8月26日に開催された薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会において(別添1)について、差し支えないとのご意見をいただいたところです。

塩酸メチルフェニデート製剤の小児期AD/HD患者の成人期への継続使用について

薬物治療経験のある小児期AD/HD患者が、18歳を超えて本剤を継続使用すること等について、安全性及び有効性に関して大きな問題は認められていないことを踏まえ、添付文書の現行の「効能・効果に関連する使用上の注意」の項を、以下のように変更することが適当である。

<効能・効果に関連する使用上の注意>

1.6歳未満の幼児、13歳以上の小児及び成人における有効性及び安全性は確立していない。

[「臨床成績」の項参照]

2.18歳未満で本剤により薬物治療を開始した患者において,18歳以降も継続して本剤を投与する場合には,治療上の有益性と危険性を考慮して慎重に投与するとともに,定期的に本剤の有効性及び安全性を評価し,有用性が認められない場合には,投与中止を考慮し,漫然と投与しないこと。

3.AD/HDの診断は、米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)等の標準的で確立した診断基準に基づき慎重に実施し、基準を満たす場合にのみ投与すること。

Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders

(下線部追加)

(別添1)平成23年8月26日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会資料 (抜粋)

コンサータ錠18mg他の小児期AD/HD患者の成人期への継続使用について

平成23年8月26日

医薬食品局審査管理課

1.背景

コンサータ錠18mg、同錠27mg(以下、「本剤」という。)は、小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の効能・効果を有する医薬品であり、有効成分は塩酸メチルフェニデートである。国内では平成19年10月に承認されている。

【コンサータ錠18mg、27mg錠の承認内容】

(効能・効果)小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)

(用法・用量)通常、小児には塩酸メチルフェニデートとして18mgを初回用量、18~45mgを維持用量として、1日1回朝経口投与する。増量が必要な場合は、1週間以上の間隔をあけて1日用量として9mg又は18mgの増量を行う。なお、症状により適宜増減する。ただし、1日用量は54mgを超えないこと。

平成21年2月に日本精神神経学会・日本児童青年精神医学会よりAD/HD治療薬の継続投与を含む成人期への適用、平成22年12月に患者団体より本剤の成人期以降の処方継続に関する要望書が提出されている。

国内では「小児期におけるAD/HD」の効能・効果を有する医薬品として、ストラテラカプセル5mg、同カプセル10mg、同カプセル25mg(有効成分はアトモキセチン塩酸塩、以下、「ストラテラ」という。)がある。ストラテラについても同様に成人期以降の継続投与の要望があり、平成22年6月3日に開催された薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において、18歳未満でアトモキセチン塩酸塩により薬物治療を開始した患者に対する18歳以降の継続投与に関して、下記のとおり添付文書に記載することについて差し支えないとされたところである。

【ストラテラの継続投与に関する添付文書の記載内容】

(効能・効果に関連する使用上の注意)

18歳未満で本剤により薬物治療を開始した患者において、18歳以降も継続して本剤を投与する場合には、治療上の有益性と危険性を考慮して慎重に投与するとともに、定期的に本剤の有効性及び安全性を評価し、有用性が認められない場合には、投与中止を考慮し、漫然と投与しないこと。

2.現状

(1) 本剤の流通管理について

本剤の承認にあたっては、適正使用の観点から、下記の承認条件が付与されており、製造販売業者においては、当該条件に基づき、適正使用がなされているか検討を行うための第三者委員会を設置するとともに、本剤のリスク等についても十分に理解している医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局のもとのみで本剤の投与が行われるよう、流通管理を実施している。

【承認条件】

本剤の投与が、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の診断、治療に精通し、薬物依存を含む本剤のリスク等についても十分に管理できる医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局のもとでのみ行われるとともに、それら薬局においては調剤前に当該医師・医療機関を確認した上で調剤がなされるよう、製造販売にあたって必要な措置を講じること。

(2) 成人AD/HD患者に対する欧米の適応について

米国において本剤は、2000年8月に小児期のAD/HDを適応症として承認され、2008年6月には成人期のAD/HDに対しても承認されている。

欧州では、英国、仏国、独国等において、小児期のAD/HDの効能・効果で承認されているものの、成人期のAD/HDに対しては承認されていない。しかしながら、2011年6月、添付文書の用法・用量欄に、「症状が成人以降に継続し、かつ治療が明らかな有益性を示している青年期患者においては成人以降での投与継続が適切な場合がある。しかし、成人からの本剤の投与開始は適切ではない。」旨を追記すること等について、規制当局と合意されたところである。

(3) 日本人の成人AD/HD患者に対する治験について

本剤については、治験実施時及び小児期の両方でAD/HDの基準を満たした18歳以上のAD/HD患者を対象に、プラセボ対照二重盲検比較試験及びその長期継続投与試験が現在実施されており、本剤の製造販売業者によれば、これらの試験成績に基づき、本剤の成人期AD/HD患者への追加適応に関する承認事項一部変更承認申請が行われる予定とされている。

(4) 国内における成人AD/HD患者に対する使用実態について

本剤の製造販売業者の平成22年8月の調査結果(25施設)によれば、124人の18歳以上のAD/HD患者が、本剤を小児期から継続的に使用されていると推計されている。

(5) 小児AD/HD患者における本剤の安全性及び有効性

平成20年2月より中央登録方式にて本剤の小児の長期使用に関する特定使用成績調査を実施中であり、平成23年3月時点の安全性解析対象1,246例における副作用発現率は、36.1%(450/1,246例)であり、発現した主な副作用は、食欲減退26.5%(330例)、頭痛2.6%(33例)、チック及び体重減少各2.6%(32例)、睡眠障害2.5%(31例)、初期不眠症2.2%(28例)、不眠症1.9%(24例)、腹痛1.8%(23例)であった。

有効性解析対象1,171例におけるCGI(Clinical Global Impression)による有効率1)は投与開始3ヶ月後で87.9%(1,029/1,171例)、6ヶ月後で92.3%(745/807例)、12ヶ月後で94.7%(505/533例)であった。ADHD RS―IV―J(ADHD Rating Scale―IV日本語版)[家庭版]2)のトータルスコアの平均値±標準偏差(例数)は、親評価では投与開始時31.44±10.34(1,022例)、投与開始3ヶ月後20.14±9.88(761例)、投与6ヶ月後18.66±9.72(490例)、投与12ヶ月後17.35±9.05(318例)であり、投与開始時と比較して低下が認められた。

3.18歳以上の治療継続症例における本剤の安全性及び有効性

(1) 特定使用成績調査(レトロスペクティブ調査)

本剤を18歳未満から18歳を超えて継続して投与された患者における、本剤の安全性及び有効性の検討を目的とした特定使用成績調査(レトロスペクティブ調査)が、平成22年8月より、特定の実施施設(10施設)における全例調査方式にて実施された。登録症例は77例であり、全例の調査票が回収及び固定され、77例全例が安全性及び有効性解析対象症例とされた。

安全性解析対象症例77例3)のうち、副作用は8例に11件発現し、副作用発現率は10.4%であった。認められた副作用は下表のとおりである。また、いずれの副作用も非重篤であり、転帰は「回復又は軽快」であった。依存性については、医師が患者に依存性や乱用に関する質問を行う評価において、依存や乱用に繋がる可能性がある症例は認められなかった。

表 レトロスペクティブ調査で認められた副作用

評価例数

77例

食欲減退

6.5%(5件)

不眠症

3.9%(3件)

腹部不快感

2.6%(2件)

初期不眠症

1.3%(1件)

有効性解析対象症例77例におけるCGIを用いた有効率1)は、17歳以下時点で96.1%(74/77例)、18歳以上時点で97.4%(75/77例)であり、17歳以下時点から18歳以上時点でCGIが「中等度改善」から「軽度改善」に推移した1例及び両時点のCGIが共に「不変」であった2例の計3例を除く74例については、18歳以降においても本剤の有効性が維持又は改善していた。

(2) 特定使用成績調査(プロスペクティブ調査)

本剤を18歳未満から18歳を超えて継続して投与された患者における、本剤の安全性及び有効性の検討を目的とした特定使用成績調査(プロスペクティブ調査)が、平成22年10月より中央登録方式にて実施された。44例(6施設)が収集され、いずれも登録時点で既に本剤の投与が開始されている症例であった。登録時以降来院しなかった2例を除く42例が安全性及び有効性解析対象症例とされた。安全性解析対象症例42例のうち、副作用は2例に4件発現し、副作用発現率は4.8%であった。認められた副作用は下表のとおりである。また、いずれの副作用も非重篤であり、転帰は「回復又は軽快」であった。依存性については、医師が患者に依存性や乱用に関する質問を行う評価において、依存や乱用に繋がる可能性がある症例は認められなかった。

表 プロスペクティブ調査で認められた副作用

評価例数

42例

不眠

2.4%(1件)

胃部不快感

2.4%(1件)

食欲不振

2.4%(1件)

入眠困難

2.4%(1件)

有効性解析対象症例42例におけるCGIを用いた有効率1)は登録時(42例)、3ヶ月後(37例)、6ヶ月後(36例)のいずれの時期においても100%であり、6ヶ月後においても有効性が維持していた。また、ADHD RS―IV―Jのトータルスコアの平均値±標準偏差(例数)は、親評価では登録時10.78±6.92(40例)、3ヶ月後9.77±7.05(35例)、6ヶ月後10.00±7.01(35例)であり、CGIと同様に6ヶ月間の観察期間中は安定していた。

(3) 国内自発報告

国内製造販売後の自発報告データ(平成19年12月19日~平成23年3月末)のうち、年齢が18歳以上の症例で認められた副作用は2例6件(味覚異常、判断力低下、予想外の治療反応、攻撃性、抑うつ気分及び下痢各1件)であり、年齢は不明であったが成人としての報告は2例3件(不安、傾眠及び胃腸障害各1件)であった。いずれも非重篤な事象であり、転帰は全て不明であった。

以上、本剤の製造販売後のデータに基づくと、本剤の投与を18歳未満に開始し、有効性が認められ、臨床的に投与の継続が必要と考えられる症例については、18歳を超えて本剤を継続投与した場合でも、本剤投与時のリスクが小児期と比較して増大する可能性は低く、定期的に有効性及び安全性を確認しながら投与することで、本剤投与時のベネフィットはリスクを上回るものと考えられる。

薬物依存、乱用のリスクについては、18歳以上の治療継続例を対象とした国内製造販売後調査において薬物依存及び乱用に繋がる可能性がある症例は認められなかったこと、最新のPSURにおける2000年8月1日~2010年10月10日までの乱用関連事象の発現率は、2.2件/10万人年(219件/9,841,735人年)と低いこと等から、小児期同様、AD/HDの診断、治療に精通し、本剤のリスク等についても十分に理解している医師のもとで本剤が適正に使用される限り、18歳以降も本剤を継続使用する症例において薬物依存、乱用のリスクが増加する可能性は低いと考える。

4.まとめ

現在、小児期にAD/HDを発症し、18歳以上になっても薬剤治療が必要と判断された患者に対して使用可能な薬物はストラテラのみであること、関連学会及び患者団体から本剤の成人期への継続投与に対する要望書が提出されていること、米国等諸外国においては、小児及び青年期にAD/HDを発症し成人した患者に対する本剤の継続投与が認められていること、本剤の製造販売者は本剤の成人AD/HD患者に対する効能・効果を取得する目的で、現在治験を実施し開発を進めていること、現在の知見からは、本剤による薬物治療経験のある小児期AD/HD患者が、18歳を超えて本剤を継続使用することについて、安全性及び有効性に関して大きな問題は認められていないことを踏まえ、添付文書を(別紙)のとおり改訂することは差し支えないものと考えられる。

なお、その際には製造販売業者に対して、

・ 現在の流通管理体制を継続使用例も含めた上で引き続き実施すること

・ 適切な患者のみに本剤が投与されるよう、製品情報概要、インタービューフォーム、適正使用ガイド、患者及びその保護者向けの医薬品ガイド等に本剤の対象患者を明記すること

・ 治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ本剤の投与が継続されるよう、本剤の投与中は定期的に有効性及び安全性を確認するよう医療従事者に対して注意喚起を行うこと

を求めることとする。

また、現在実施されている日本人の成人AD/HD患者を対象とした治験成績が得られた段階で、再度、18歳以上へ本剤の投与を継続することが適切であるか検討することとする。

――――――――――

1) 担当医師により、症状の改善が「著明改善、中等度改善、軽度改善、不変、軽度悪化、中等度悪化、著明悪化」の7段階で評価され、「軽度改善」以上を有効例として、その症例比率が有効率とされた。なお、18歳以上の治療継続症例を対象とした特定使用成績調査(レトロスペクティブ調査)においては、17歳以下で複数回CGI評価が行われた症例での17歳以下時点における有効率の算出には18歳直前(直近)のデータが用いられ、18歳以上で複数回CGI評価が行われた症例での18歳以上時点の有効率の算出には評価年月齢が最も大きいデータが用いられた。

2) 18項目について、「ない、もしくはほとんどない」を0点、「ときどきある」を1点、「しばしばある」を2点、「非常にしばしばある」を3点として評価。

3) 本剤投与開始時の年齢構成:15歳17例、16歳29例、17歳31例。

(別紙)

コンサータ錠18mg、同錠27mgの添付文書改訂(案)について

(現在)

<効能・効果に関連する使用上の注意>

1.6歳未満の幼児、13歳以上の小児及び成人における有効性及び安全性は確立していない。[「臨床成績」の項参照]

2.AD/HDの診断は、米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)等の標準的で確立した診断基準に基づき慎重に実施し、基準を満たす場合にのみ投与すること。

Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders

(変更案)

<効能・効果に関連する使用上の注意>

1.6歳未満の幼児、13歳以上の小児及び成人における有効性及び安全性は確立していない。[「臨床成績」の項参照]

2.18歳未満で本剤により薬物治療を開始した患者において,18歳以降も継続して本剤を投与する場合には,治療上の有益性と危険性を考慮して慎重に投与するとともに,定期的に本剤の有効性及び安全性を評価し,有用性が認められない場合には,投与中止を考慮し,漫然と投与しないこと。

3.AD/HDの診断は、米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)等の標準的で確立した診断基準に基づき慎重に実施し、基準を満たす場合にのみ投与すること。

Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders