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○健康増進事業に基づく肝炎ウイルス検診等の実施について

(平成20年3月31日)

(健発第0331009号)

(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省健康局長通知)

平成18年度の医療制度改革において、老人保健法(昭和57年法律第80号)が高齢者の医療の確保に関する法律に全面改正されたことに伴い、従来、老人保健法に基づく老人保健事業として実施されてきた肝炎ウイルス検診等については、健康増進法(平成14年法律第103号)第19条の2に基づく健康増進事業と位置づけられ、引き続き市町村において実施することとされたところである。

上記に伴い、今般、別添のとおり、肝炎ウイルス検診等実施要領を定め、平成20年4月1日から適用することとしたので、肝炎ウイルス検診の受診機会の確保等、本検診の重要性を十分に御理解の上、貴管内市町村及び関係団体等に対し、周知徹底及び適切な指導を行い、事業の円滑な実施に遺漏のないよう、特段の御配慮をお願いしたい。

(別添)

肝炎ウイルス検診等実施要領

1 目的

肝炎対策の一環として、肝炎ウイルスに関する正しい知識を普及させるとともに、肝炎ウイルス検診の受診促進を図り、もって住民が自身の肝炎ウイルス感染の状況を認識し、必要に応じて保健指導等を受け、医療機関で受診することにより、肝炎による健康障害の回避、症状の軽減、又は進行の遅延を図ることを目的とする。

2 肝炎ウイルス検診の対象者

(1) 当該市町村の区域内に居住地を有し、当該年度において満40歳となる者(ただし、医療保険各法その他の法令等に基づく保健事業等のサービスを受ける際に、合わせて当該肝炎ウイルス検診に相当する検診を受けた者又は受けることを予定している者は除くものとするが、結果的に受けられなかった者については、この限りではない。)。

(2) 当該市町村の区域内に居住地を有し、当該年度において満41歳以上となる者であって、過去に当該肝炎ウイルス検診に相当する検診を受けたことがなく、かつ本検診の受診を希望する者。

なお、当該年度の高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)に基づく特定健康診査及びその他の法令に基づき行われる特定健康診査に相当する健康診断(以下「特定健診等」という。)において肝機能検査の数値に異常がみられた者であり、かつ本検診の受診を希望する者については、過去に当該肝炎ウイルス検診に相当する検診を受けた者であっても受診することができるが、原則として速やかに医療機関での受診を勧奨するものとする。

3 実施に当たっての基本的事項

(1) 肝炎ウイルス検診の実施方法、実施時期、実施場所等の実施計画を作成する。実施計画の作成に当たっては、地域の医師会等の理解と協力を得るとともに、医療機関、検診団体、検査機関等と十分に調整を図る。

(2) 肝炎ウイルス検診の実施方法、実施時期、実施場所については、特定健診等を行う保険者との調整・協議を行うなど、地域の実情を十分に考慮し、受診しやすい方法、時期、場所を選定する。

(3) 肝炎ウイルス検診及び陽性者のフォローアップは、実施体制、精度管理の状況等から判断して適当と認められる実施機関に委託することができる。

(4) 肝炎ウイルス検診の実施に当たっては、広報等により、その意義や実施の日時、場所、方法等に加え、特定健診等の対象者であっても、本検診の対象者となりうることをあらかじめ十分に地域住民に対し周知徹底する。

(5) 当該年度において、原則として40歳以上で5歳刻みの年齢に達する者については、肝炎ウイルス検診の更なる受診促進を図るため、地域における受診状況等を踏まえ、個別に通知等(別紙1参照)を配布することにより、必要に応じて受診の勧奨を行うこととする。

なお、当該個別勧奨を受けた者が検査を受診した場合の検査費用については、検査受診者からは徴収しないことができるものとする。

(6) その他、肝炎ウイルスに関する正しい知識の普及や個人のプライバシーの保護、医療機関との連携など、肝炎ウイルス検診を円滑に行うことができるよう体制の整備に努める。

4 肝炎ウイルス検診の実施

肝炎ウイルス検診の項目は、問診、B型肝炎ウイルス検査及びC型肝炎ウイルス検査とする。

(1) 問診(別紙2参照)

問診においては、過去に肝機能異常を指摘されたことがあるか否か、現在B型及びC型肝炎の治療を受けているか否かなどについて、聴取すること。また、その際に、肝炎ウイルス検診についての説明を行い、肝炎ウイルス検診の実施についての受診者本人の同意を必ず得ること。

(2) B型肝炎ウイルス検査

・HBs抗原検査

凝集法等による定性的な判断のできる検査方法を用いること。なお、特定健診等と同時に採血する場合は、一般生化学検査と同じ採血管を使用しても差し支えないこと。

(3) C型肝炎ウイルス検査

ア HCV抗体検査

HCV抗体検査として体外診断用医薬品の承認を受けた測定範囲が広く、高力価群、中力価群、低力価群に適切に分類することが出来るHCV抗体測定系を用いること。なお、特定健診等と同時に採血する場合は、一般生化学検査と同じ採血管を使用しても差し支えないこと。

イ HCV核酸増幅検査

HCV抗体検査により、中力価及び低力価と分類された検体に対して行うこと。なお、この場合、他の採血管とは別に核酸増幅検査用の採血管を使用すること。

ウ HCV抗体の検出

HCV抗体の検出として体外診断用医薬品の承認を受けた定性的な判断のできる検査方法を用いること。なお、特定健診等と同時に採血する場合は、一般生化学検査と同じ採血管を使用しても差し支えないこと。本検査は省略することができる。

5 肝炎ウイルス検診の結果の判定(別紙3参照)

(1) B型肝炎ウイルス検査

・HBs抗原検査

凝集法等を用いて、HBs抗原の検出を行い、陽性又は陰性の別を判定。

ただし、HBs抗原検査は、B型肝炎ウイルスの感染の有無を直接判定することが難しい場合があることに留意すること。

(2) C型肝炎ウイルス検査

ア HCV抗体検査

(ア) HCV抗体高力価

検査結果が高力価を示す場合は、「現在、C型肝炎ウイルスに感染している可能性が高い」と判定。

(イ) HCV抗体中力価及び低力価

検査結果が中力価及び低力価を示す場合は、HCV核酸増幅検査を行うこと。

(ウ) 陰性

各検査法でスクリーニングレベル以下を示す場合は、「現在、C型肝炎ウイルスに感染している可能性が低い」と判定。

イ HCV核酸増幅検査

HCV抗体検査により、中力価及び低力価とされた検体に対して、核酸増幅検査を行い、HCV―RNAの検出を行い、検出された場合は「現在、C型肝炎ウイルスに感染している可能性が高い」と判定、検出されない場合は「現在、C型肝炎ウイルスに感染している可能性が低い」と判定。

ウ HCV抗体の検出

HCV抗体の検出として体外診断用医薬品の承認を受けた定性的な判断のできる検査方法を用いて、HCV抗体の検出を行い、陽性又は陰性の別を判定。陽性を示す場合は、HCV抗体検査を必ず行うこと。陰性を示す場合は、「現在、C型肝炎ウイルスに感染している可能性が低い」と判定。

なお、いずれの検査についても、その結果の判定に当たっては、検診に携わる医師が行うものであること。

6 指導区分

HBs抗原検査において「陽性」と判定された者及びC型肝炎ウイルス検査において「現在、C型肝炎ウイルスに感染している可能性が高い」と判定された者については、医療機関への受診を勧奨する。

なお、医師が必要と判断した者については、必要な指導あるいは医療機関への受診勧奨の他、必要により本人の同意を得た上で下記9に示すフォローアップを行う。

HBs抗原検査において「陰性」と判定された者及びC型肝炎ウイルス検査において「現在、C型肝炎ウイルスに感染している可能性が低い」と判定された者については、検査結果と検査日を記録しておくことを勧奨する。

7 結果の通知

検診の結果については、別紙3を参考として指導区分を付し、受診者に速やかに通知する。

8 記録の整備(別紙4参照)

検診の記録は、氏名、年齢、住所、検診の結果の判定等について行う。

また、必要に応じ、事後の指導その他の必要な事項についても記録する。

9 陽性者のフォローアップ

HBs抗原検査において「陽性」と判定された者及びC型肝炎ウイルス検査において「現在、C型肝炎ウイルスに感染している可能性が高い」と判定された者(以下「陽性者」という。)に対し、必要により別紙5の例による同意書等により本人の同意を得た上で、別紙6の例による調査票を年1回送付する等により医療機関の受診状況や診療状況を確認し、未受診の場合には、必要に応じて電話等により受診を勧奨する。

フォローアップの実施に当たっては、個人情報の取扱いに留意のうえ、適宜都道府県等と連携を図ることとし、都道府県等からの情報提供により把握した本事業以外の陽性者についても、フォローアップの対象とすることができる。

また、フォローアップの対象者を都道府県等へ情報提供することにより、都道府県等の事業におけるフォローアップの対象とすることができる。

10 その他の留意事項

(1) 検診、健康相談及び健康教育の実施に当たっては、分かりやすいパンフレットやQ&Aを活用するなど、住民に対して、十分な基礎知識の普及啓発を行うこと。

(2) 判定結果の通知及びフォローアップに際しては、個人のプライバシーの保護に十分な注意を払うこと。

(3) 事後の保健指導や医療機関への受診勧奨、フォローアップなどについては、地域の医療機関や都道府県などと十分な連携を図って行うこと。

なお、その他健康増進事業に係る共通的事項及び必要事項については、「健康増進法第17条第1項及び第19条の2に基づく市町村が行う健康増進事業について」(平成20年3月31日健発第0331026号)によるものとする。

(別紙1 通知例)

(別紙2)

(別紙3)

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(別紙4)

(別紙5)

(別紙6)