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○職域におけるウイルス性肝炎対策に関する協力の要請について

(平成23年7月28日)

(/健発0728第1号/基発0728第1号/職発0728第1号/)

(別記事業主団体及び関係団体の長あて厚生労働省健康局長・厚生労働省労働基準局長・厚生労働省職業安定局長通知)

肝炎対策の推進につきましては、日頃から格別の御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

ウイルス性肝炎は、国内最大級の感染症と言われており、これに対する対策を総合的に推進するため、平成22年1月、肝炎対策基本法が施行され、同法に基づき、中長期的な肝炎対策の方向性等を定める、肝炎対策基本指針(別紙)を本年5月16日に告示、公表いたしました。

ウイルス性肝炎につきましては、肝炎ウイルスに感染しているものの、感染の自覚のない者が多数存在すると推定されること、感染経路等や治療に対する国民の理解が十分でないこと、一部において、肝炎の患者・感染者に対する不当な差別が存在すること等の問題が指摘されています。

日頃、仕事に従事している労働者の皆さんの中にも、多数の感染に対する自覚のない方や、感染に気づいていても、早期の治療をためらう方がいらっしゃると考えられ、肝炎の患者・感染者が早期に感染を自覚し、早期に治療を受けやすい環境を作るためには、事業者の方々の御理解、御協力が不可欠です。

つきましては、下記の事項について、改めて御理解いただき、周知方御協力をお願いいたします。

1 労働者に対して、肝炎ウイルス検査を受けることの意義を周知し、検査の受診を呼びかけること。

2 労働者が検査の受診を希望する場合には、受診機会拡大の観点からの特段の配慮をすること。

3 本人の同意なく本人以外の者が不用意に検査受診の有無や結果などを知ることのないよう、プライバシー保護に十分配慮すること。

4 肝炎治療のための入院・通院や副作用等で就労できない労働者に対して、休暇の付与等、特段の配慮をすること。

5 職場や採用選考時において、肝炎の患者・感染者が差別を受けることのないよう、正しい知識の普及を図ること。

別記

(事業主団体)

(社)日本経済団体連合会

東京商工会議所

日本商工会議所

全国中小企業団体中央会

全国銀行協会

(社)全国地方銀行協会

(社)信託協会

(社)生命保険協会

(社)日本証券業協会

(社)日本損害保険協会

政府関係法人連絡協議会

(社)日本在外企業協会

石油連盟

石油化学工業協会

石油業経営者懇談会

日本麻紡績協会

日本ゴム工業会

(社)日本化学工業協会

日本ソーダ工業会

日本化学繊維協会

(社)日本ガス協会

日本鉱業協会

(財)石炭エネルギーセンター

電気事業連合会

電線工業経営者連盟

(社)情報通信エンジニアリング協会

(社)日本機械工業連合会

(社)日本産業機械工業会

日本自動車工業会

(社)日本ベアリング工業会

日本伸銅協会

日本紡績協会

日本羊毛紡績会

(社)日本石綿協会

せんい強化セメント板協会

(社)日本船主協会

(社)日本造船工業会

電機・電子・情報通信産業経営者連盟

(社)日本民営鉄道協会

(社)日本民間放送連盟

日本肥料アンモニア協会

全国農業協同組合連合会

(社)大日本水産会

日本醤油協会

ビール酒造組合

日本火薬工業会

(社)日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会

(社)日本中小型造船工業会

(社)全国火薬類保安協会

(社)日本洗浄技能開発協会

日本鉄道車輌工業会

日本製紙連合会

全国段ボール工業組合連合会

全日本紙製品工業組合

全日本紙器段ボール箱工業組合連合会

(社)全国建築コンクリートブロック工業会

全国生コンクリート工業組合連合会

(社)日本金属プレス工業協会

(社)日本鍛造協会

(社)日本鉄鋼連盟

(社)セメント協会

(社)日本砕石協会

(社)日本砂利協会

(社)日本建設業団体連合会

(社)全国建設業協会

(社)全国中小建設業協会

(社)全国中小建築工事業団体連合会

全国基礎工業協同組合連合会

(社)日本土木工業協会

(社)建築業協会

(社)日本道路建設業協会

(財)建設業振興基金

(社)日本埋立浚渫協会

(社)日本電設工業協会

(社)日本空調衛生工事業協会

全国管工事業協同組合連合会

(社)日本塗装工業会

(社)日本左官業組合連合会

(社)日本鳶工業連合会

(社)全国建設専門工事業団体連合会

(社)プレハブ建築協会

(社)プレストレストコンクリート建設業協会

全国建設業協同組合連合会

(社)日本橋梁建設協会

(社)全国クレーン建設業協会

(社)日本造園建設業協会

(社)日本建設大工工事業協会

(社)日本建設業経営協会

(社)日本建設躯体工事業団体連合会

(社)日本造園組合連合会

(社)全日本トラック協会

(社)日本港運協会

(社)全国乗用自動車連合会

全国通運協会

全国森林組合連合会

全国素材生産業協同組合連合会

全国木材組合連合会

(社)日本新聞協会

日本百貨店協会

日本チェーンストア協会

日本生活協同組合連合会

(社)全国ビルメンテナンス協会

(社)全国都市清掃会議

(社)全国警備業協会

(社)日本ゴルフ場事業協会

(社)日本鋳造協会

日本中小企業団体連盟

(社)経済同友会

全国商工会連合会

全日本商店街連合会

全国商店街振興組合連合会

(社)公開経営指導協会

(社)日本林業協会

(社)中央畜産会

(社)日本土木協会

(社)全国治水砂防協会

(社)日本サッシ協会

製粉協会

(社)日本パン工業会

精糖工業会

日本精糖協会

(社)全国清涼飲料工業会

全日本菓子協会

(社)日本缶詰協会

(財)日本醸造協会

日本酒造組合中央会

日本植物油協会

(社)日本乳業協会

日本マーガリン工業会

日本洋酒酒造組合

(社)日本給食サービス協会

(社)日本絹業協会

日本毛織物等工業組合連合会

日本絹人繊織物工業会

日本綿スフ織物工業組合連合会

(社)日本染色協会

(社)日本アパレル産業協会

(社)日本ボディファッション協会

(社)日本家具産業振興会

(社)日本書籍出版協会

(社)日本印刷産業連合会

日本化粧品工業連合会

塩安肥料協会

塩ビ工業・環境協会

(社)日本合成樹脂技術協会

日本石鹸洗剤工業会

(社)日本ビニル工業会

(社)東京医薬品工業協会

大阪医薬品協会

写真感光材料工業会

日本製薬団体連合会

石油鉱業連盟

日本プラスチック工業連盟

(社)日本ゴム協会

(社)日本自動車タイヤ協会

(社)日本皮革産業連合会

(社)日本硝子製品工業会

(社)日本陶業連盟

板硝子協会

(社)石膏ボード工業会

全国鍍金工業組合連合会

(社)日本アルミニウム協会

(社)日本ねじ工業会

日本製缶協会

(社)日本農業機械工業会

(社)日本工作機械工業会

(社)ビジネス機械・情報システム産業協会

(社)日本ロボット工業会

(社)全国木工機械工業会

(社)日本電機工業会

機械振興協会

(社)海洋水産システム協会

(社)日本縫製機械工業会

(社)電子情報技術産業協会

(社)日本舶用工業会

(社)日本航空宇宙工業会

(社)日本自動車機械工具協会

(社)日本自動車車体工業会

日本運搬車輌機器協会

日本医用機器工業会

(社)日本計量機器工業連合会

日本光学工業協会

カメラ映像機器工業会

(社)日本時計協会

(社)日本玩具協会

(社)日本アミューズメントマシン工業協会

(社)日本電気協会

日本LPガス協会

(社)日本動力協会

(社)情報サービス産業協会

(社)テレコムサービス協会

(社)日本バス協会

全国通運業連合会

(社)日本倉庫協会

(社)全日本航空事業連合会

(社)全国通運連盟

(社)新日本スーパーマーケット協会

日本専門店会連盟

(社)日本自動車輸入組合

全国電機商業組合連合会

全国石油商業組合連合会

(社)日本貿易会

(社)日本自動車販売協会連合会

(社)日本フランチャイズチェーン協会

日本スーパーマーケット協会

(社)日本クレジット協会

(社)第二地方銀行協会

(社)全国信用金庫協会

全国信用組合中央協会

全国労働金庫協会

日本商品先物取引協会

日本貸金業協会

全国共済農業協同組合連合会

(社)不動産協会

(社)全日本不動産協会

(社)日本住宅建設産業協会

(社)日本フードサービス協会

(社)日本ホテル協会

全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会

(社)全国社会福祉協議会

(社)全国老人福祉施設協議会

(社)全国老人保健施設協会

(社)国立大学協会

公立大学協会

日本私立大学協会

全私学連合

日本私立大学団体連合会

日本私立大学連盟

日本私立大学振興協会

日本私立短期大学協会

日本私立中学高等学校連合会

日本私立小学校連合会

全日本私立幼稚園連合会

全国専修学校各種学校総連合会

全国農業協同組合中央会

全国漁業協同組合連合会

(社)日本旅行業協会

(社)日本建築士事務所協会連合会

全日本葬祭業協同組合連合会

(財)日本健康スポーツ連盟

(社)日本自動車整備商工組合連合会

全国クリーニング生活衛生同業組合連合会

全国理容生活衛生同業組合連合会

全日本美容業生活衛生同業組合連合会

(社)リース事業協会

(社)日本広告業協会

(社)全日本広告連盟

(社)日本ビルヂング協会連合会

(社)全国民営職業紹介事業協会

(関係団体)

(独)労働者健康福祉機構

(独)雇用・能力開発機構

(社)日本医師会

(社)日本歯科医師会

(社)日本薬剤師会

(社)日本精神神経科診療所協会

(社)日本作業環境測定協会

(社)全国労働衛生団体連合会

(財)産業医学振興財団

学校法人産業医科大学

(社)日本ボイラ協会

(社)日本クレーン協会

(社)日本化学物質安全・情報センター

(社)ボイラ・クレーン安全協会

(財)日本小型貫流ボイラー協会

(社)仮設工業会

(社)産業安全技術協会

(社)日本ボイラ整備据付協会

(財)安全衛生技術試験協会

(社)建設荷役車両安全技術協会

(社)全国登録教習機関協会

(社)全国労働基準関係団体連合会

(社)日本労働安全衛生コンサルタント会

(社)合板仮設安全技術協会

(財)全国安全会議

(社)全国建設業労災互助会

(社)日本港湾福利厚生協会

(社)日本産業衛生学会

(財)日本中小企業福祉事業財団

(社)日本保安用品協会

(財)建設業福祉共済団

(社)全国労働保険事務組合連合会

全国社会保険労務士会連合会

(財)健康・体力づくり事業財団

(財)全日本交通安全協会

(財)日本消防協会

(独)日本スポーツ振興センター

(財)あしたの日本を創る協会

(財)地方公務員安全衛生推進協会

(社)日本産業カウンセラー協会

(財)21世紀職業財団

(財)港湾労働安定協会

(社)日本人材派遣協会

首都高速道路株式会社

成田国際空港(株)

(独)都市再生機構

(独)中小企業基盤整備機構

(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構

東日本高速道路株式会社

中日本高速道路株式会社

西日本高速道路株式会社

阪神高速道路株式会社

本州四国連絡高速道路株式会社

(独)水資源機構

東京地下鉄株式会社

日本下水道事業団

(独)高齢・障害者雇用支援機構

中央職業能力開発協会

全国市長会

全国町村会

日本郵政株式会社

郵便事業株式会社

郵便局株式会社

株式会社ゆうちょ銀行

株式会社かんぽ生命保険

(社)日本病院会

(社)日本医療法人協会

(社)全日本病院協会

(社)日本精神科病院協会

別紙

肝炎対策の推進に関する基本的な指針

平成23年5月16日

目次

第1 肝炎の予防及び肝炎医療の推進の基本的な方向

第2 肝炎の予防のための施策に関する事項

第3 肝炎検査の実施体制及び検査能力の向上に関する事項

第4 肝炎医療を提供する体制の確保に関する事項

第5 肝炎の予防及び肝炎医療に関する人材の育成に関する事項

第6 肝炎に関する調査及び研究に関する事項

第7 肝炎医療のための医薬品の研究開発の推進に関する事項

第8 肝炎に関する啓発及び知識の普及並びに肝炎患者等の人権の尊重に関する事項

第9 その他肝炎対策の推進に関する重要事項

肝炎とは、肝臓の細胞が破壊されている状態であり、その原因は、ウイルス性、アルコール性、自己免疫性等に分類され、多様である。我が国では、B型肝炎ウイルス又はC型肝炎ウイルス(以下「肝炎ウイルス」という。)感染に起因する肝炎患者が肝炎にり患した者の多くを占めており、B型肝炎及びC型肝炎に係る対策が喫緊の課題となっている。

近年の国におけるB型肝炎及びC型肝炎に係る対策については、平成14年度以降、C型肝炎等緊急総合対策を実施し、平成19年度には、都道府県に対し、肝疾患診療連携拠点病院(以下「拠点病院」という。)の整備について要請する等の取組を進めてきた。

また、平成20年度以降、肝炎の治療促進のための環境整備、肝炎ウイルス検査の促進、肝炎に係る診療及び相談体制の整備、国民に対する肝炎に係る正しい知識の普及啓発並びに肝炎に係る研究の推進の5本の柱からなる肝炎総合対策を進めてきた。

さらに、研究分野に関しては、平成20年6月に、肝炎の専門家からなる肝炎治療戦略会議が「肝炎研究7カ年戦略」を取りまとめ、これに基づき肝炎研究に取り組んできたところである。

しかしながら、肝炎ウイルスに感染しているものの自覚のない者が多数存在すると推定されることや、肝炎ウイルスに起因する肝炎、肝硬変又は肝がんに係る医療(以下「肝炎医療」という。)の体制が十分整備されていない地域があること等、肝炎医療を必要とする者に適切に肝炎医療を提供していくためには、いまだ解決すべき課題が多い。また、肝炎ウイルスの感染経路等についての国民の理解が十分でないことや、肝炎ウイルス検査を受検する必要性に関する認識が十分でないことに加え、一部では、肝炎ウイルスに持続感染している者(ウイルス性肝炎から進行した肝硬変又は肝がんの患者を含む。以下「肝炎患者等」という。)に対する不当な差別が存在することが指摘されている。このような状況を改善し、今後、肝炎対策のより一層の推進を図るためには、国や地方公共団体のみならず、あらゆる関係者が一体となって、より一層の連携を図ることが必要である。

本指針は、このような現状の下に、肝炎患者等を早期に発見し、また、肝炎患者等が安心して治療を受けられる社会を構築するため、国、地方公共団体等が取り組むべき方向性を示すことにより、肝炎対策のより一層の推進を図ることを目的とし、肝炎対策基本法(平成21年法律第97号)第9条第1項の規定に基づき策定するものである。

なお、我が国では、現在、肝炎にり患した者に占める患者数の多さから、B型肝炎及びC型肝炎に係る対策が喫緊の課題となっている。このため、本指針においては、B型肝炎及びC型肝炎に係る対策に関する事項を定めるものとする。

第1 肝炎の予防及び肝炎医療の推進の基本的な方向

(1) 基本的な考え方

肝炎(B型肝炎及びC型肝炎をいう。以下同じ。)は、適切な治療を行わないまま放置すると慢性化し、肝硬変や肝がんといったより重篤な病態に進行するおそれがある。このため、肝炎患者等が生活する中で関わる全ての者が肝炎に対する理解を深め、これらの者の協力の下、肝炎患者等が安心して生活できる環境づくりに取り組むことが必要である。

また、肝炎対策は、肝炎患者等を含めた国民の視点に立ち、国民の理解、協力を得て、肝炎患者等を含む関係者が一体となって、連携して対策を進めることが重要である。

(2) 肝炎ウイルス検査の更なる促進

肝炎ウイルスの感染経路は様々であり、個々人が肝炎ウイルスに感染した可能性があるか否かを一概に判断することは困難であることから、全ての国民が、少なくとも一回は肝炎ウイルス検査を受検する必要があると考えられる。このため、肝炎ウイルス検査の受検体制を整備し、受検の勧奨を行うことが必要である。

(3) 適切な肝炎医療の推進

肝炎患者等の健康保持のためには、個々の状況に応じた適切な治療を受けることが重要である。

肝炎患者等に対し、病態に応じた適切な肝炎医療を提供するためには、専門的な知識や経験が必要であるため、個々の肝炎患者等は、肝炎医療を専門とする医療機関(以下「専門医療機関」という。)において治療方針の決定を受けることが望ましい。

また、専門医療機関において治療方針の決定を受けた肝炎患者等は、継続して適切な治療を受けることが必要である。

このため、肝炎患者等が、居住地域にかかわらず適切な肝炎医療を受けられるよう、地域の特性に応じた肝疾患診療体制の整備の促進に向けた取組を進める必要がある。

また、肝炎ウイルスを排除し又はその増殖を抑制する抗ウイルス療法(肝炎の根治目的で行うインターフェロン治療又はB型肝炎の核酸アナログ製剤治療をいう。以下同じ。)については、肝硬変や肝がんといった、より重篤な病態への進行を予防し、又は遅らせることが可能であり、また、ウイルス量が低減することにより二次感染の予防につながるという側面がある。このため、引き続き、抗ウイルス療法に対する経済的支援に取り組み、その効果を検証していく必要がある。

(4) 肝炎医療を始めとする研究の総合的な推進

肝炎は国内最大級の感染症であり、感染を放置すると肝硬変や肝がんといった重篤な病態に進行する。このため、肝炎医療の水準の向上等に向けて、肝炎に関する基礎、臨床及び疫学研究等を総合的に推進する必要がある。

また、肝炎患者等の負担軽減に資するよう、肝炎対策を総合的に推進するための基盤となる行政的な課題を解決するために必要な研究についても進める必要がある。

(5) 肝炎に関する正しい知識の更なる普及啓発

肝炎ウイルスは、感染しても自覚症状に乏しいことから、感染に気付きにくく、また、感染を認識していても、感染者が早急な治療の必要性を認識しにくい。このため、国民一人一人が自らの肝炎ウイルスの感染の有無を把握し、肝炎についての正しい知識を持つよう、更なる普及啓発に取り組む必要がある。

さらに、肝炎患者等に対する不当な差別を解消し、また、感染経路についての知識不足による新たな感染を予防するためにも、肝炎についての正しい知識の普及が必要である。

(6) 肝炎患者等及びその家族等に対する相談支援や情報提供の充実

肝炎患者等及びその家族等の多くは、肝炎が肝硬変や肝がんといった、より重篤な病態へ進行することに対する将来的な不安を抱えている。また、治療における副作用等、治療開始前及び治療中において、精神的な負担に直面することも多い。このため、こうした肝炎患者等及びその家族等の不安や精神的負担の軽減に資するため、肝炎患者等及びその家族等への相談支援を行う必要がある。

また、肝炎患者等及びその家族等を含む国民の視点に立った分かりやすい情報提供について、取組を強化する必要がある。

第2 肝炎の予防のための施策に関する事項

(1) 今後の取組の方針について

感染経路についての知識不足による新たな感染を予防するため、全ての国民に対して肝炎についての正しい知識を普及することが必要である。

また、国は、地方公共団体に対して、妊婦に対するB型肝炎抗原検査を妊婦健康診査の標準的な検査項目として示すほか、各医療機関において、当該検査の結果が陽性であった妊婦から出生した乳児に対するB型肝炎ワクチンの接種等の適切な対応が行われるよう指導を求める等のB型肝炎母子感染予防対策を講じており、引き続きこの取組を進める。

さらに、B型肝炎の感染はワクチンによって予防可能であることから、水平感染防止の手段の一つとして、B型肝炎ワクチンの予防接種の在り方について検討を行う必要がある。

(2) 今後取組が必要な事項について

ア 国は、肝炎ウイルスへの新たな感染の発生を防止するため、日常生活上の感染予防の留意点を取りまとめた啓発用の資材や、集団生活が営まれる各施設における感染予防ガイドライン等を作成するための研究を推進する。また、当該研究の成果物を活用し、地方公共団体等と連携を図り、普及啓発を行う。

イ 国は、ピアスの穴あけ等血液の付着する器具の共有を伴う行為や性行為等、感染の危険性のある行為に興味を抱く年代に対して、肝炎についての正しい知識と理解を深めるための情報を取りまとめ、地方公共団体等と連携を図り、普及啓発を行う。

ウ 国及び地方公共団体は、医療従事者等の感染のリスクの高い集団を中心として、B型肝炎ワクチンの有効性、安全性等に関する情報提供を行う。

エ 国は、水平感染防止の手段としてのB型肝炎ワクチン接種の有効性、安全性等に関する情報を踏まえ、当該ワクチンの予防接種の在り方について検討を行う。

第3 肝炎検査の実施体制及び検査能力の向上に関する事項

(1) 今後の取組の方針について

肝炎ウイルスの感染状況を本人が把握するための肝炎ウイルス検査については、医療保険者や事業主等の多様な実施主体において実施されていることや、プライバシーに配慮して匿名で実施されている場合があること等から、当該検査の受検状況の実態を把握することは困難な状況にある。しかしながら、肝炎ウイルス検査体制の整備及び普及啓発を効果的に実施するためには、施策を行う上での指標が必要であり、このため、従前から実施している肝炎ウイルス検査の受検者数の把握のための調査に加えて、肝炎ウイルス検査の受検率について把握するための調査及び研究が必要である。

また、肝炎ウイルス検査の未受検者や、受検しているが検査結果を正しく認識していない者等、感染の事実を認識していない肝炎患者等が多数存在することが推定される。このため、感染経路は様々であり、本人の自覚なしに感染している可能性があることを含めて、肝炎に関する正しい知識の普及啓発を行い、全ての国民が少なくとも一回は肝炎ウイルス検査を受検することが必要であることを周知する。また、希望する全ての国民が肝炎ウイルス検査を受検できる体制を整備し、その効果を検証するための研究を推進する必要がある。

さらに、肝炎ウイルス検査の結果について、受検者各自が正しく認識できるよう、肝炎の病態等に係る情報提供を行うとともに、肝炎医療に携わる者に対し、最新の肝炎ウイルス検査に関する知見の修得のための研修の機会を確保する必要がある。

(2) 今後取組が必要な事項について

ア 国は、国民の肝炎ウイルス検査に係る受検率や検査後の受診状況等について把握するための調査及び研究を行う。

イ 国は、現在、地方公共団体が実施主体となって行っている肝炎ウイルス検査について、地方公共団体に対し、引き続き、検査実施とその体制整備を要請するとともに、肝炎ウイルス検査の個別勧奨や出張型検診等を推進することにより、更なる検査実施を支援する。

ウ 国及び地方公共団体は、住民に向けた肝炎ウイルス検査に関する広報を強化する。あわせて、職域において健康管理に携わる者や、医療保険者、事業主等の関係者の理解と協力の下、引き続き、これらの関係者から、労働者に対する受検勧奨が行われるよう要請する。

エ 国は、多様な検査機会が確保されるよう、医療保険者が健康保険法(大正11年法律第70号)に基づき行う健康診査等及び事業主が労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)に基づき行う健康診断に併せて実施する肝炎ウイルス検査については、継続して実施されるよう医療保険者及び事業主に対して要請する。また、医療保険者や事業主が肝炎ウイルス検査を実施する場合の検査結果について、プライバシーに配慮した適正な通知と取扱いがなされるよう、医療保険者及び事業主に対して改めて周知する。

オ 国は、肝炎ウイルス検査の受検前及び結果通知時において、受検者各自が、病態、治療及び予防について正しく認識できるよう、肝炎の病態、治療及び予防に関する情報を取りまとめ、地方公共団体等と連携を図り、普及啓発を行う。

カ 国及び地方公共団体は、医療機関に対し、手術前等に行われる肝炎ウイルス検査の結果について、受検者に適切に説明を行うよう要請する。また、国は、医療機関において手術前等に行われる肝炎ウイルス検査の結果の説明状況等について、実態把握のための調査研究を行う。

キ 国は、独立行政法人国立国際医療研究センター肝炎情報センター(以下「肝炎情報センター」という。)に対し、国立国際医療研究センターの中期目標及び中期計画に基づき、拠点病院において指導的立場にある医療従事者に対して、最新の知見を踏まえた肝炎検査及び肝炎医療に関する研修が行われるよう要請する。

第4 肝炎医療を提供する体制の確保に関する事項

(1) 今後の取組の方針について

肝炎ウイルス検査の結果、診療が必要と判断された者が医療機関で受診しない、また、たとえ医療機関で受診しても、必ずしも適切な肝炎医療が提供されていないという問題点が指摘されている。

このため、全ての肝炎患者等が継続的かつ適切な肝炎医療を受けることができる体制を整備するため、拠点病院を中心として、「都道府県における肝炎検査後肝疾患診療体制に関するガイドライン」(平成19年全国C型肝炎診療懇談会報告書)に基づき、拠点病院、専門医療機関及びかかりつけ医が協働する仕組みとして、地域における肝炎診療ネットワークの構築を進める必要がある。また、地域や職域において健康管理に携わる者を含めた関係者の連携の下、肝炎患者等に対する受診勧奨及び肝炎ウイルス検査後のフォローアップを実施することにより、肝炎患者等の適切な医療機関への受診を進める必要がある。

また、肝炎患者等が、働きながら継続的に治療を受けることができる環境づくりに向けて、引き続き、事業主、職域において健康管理に携わる者及び労働組合を始めとした関係者の協力を得られるよう、必要な働きかけを行う必要がある。

さらに、肝炎患者等の経済的負担軽減のための抗ウイルス療法に係る肝炎医療費助成の実施及び肝炎医療に係る諸制度の周知により、肝炎の早期かつ適切な治療を推進する。

(2) 今後取組が必要な事項について

ア 国は、地方公共団体と連携して、肝炎患者等が個々の病態に応じた適切な肝炎医療を受けられるよう、肝炎ウイルス検査後のフォローアップや受診勧奨等の支援を地域や職域において中心となって進める人材の育成を推進する。また、肝炎患者等に対する情報提供や、拠点病院、専門医療機関及びかかりつけ医の連携等に資するため、肝炎の病態、治療方法、肝炎医療に関する制度等の情報を取りまとめた手帳等を肝炎患者等に対して配布する。

イ 国は、地域や職域において健康管理に携わる者が肝炎患者等に対して提供するために必要な情報を取りまとめ、地方公共団体や医療保険者等と連携を図り、普及啓発を行う。

ウ 国は、肝炎情報センターが拠点病院の医療従事者を対象として実施する研修を効果的に進めるための技術的支援を行う。また、国及び都道府県は、拠点病院が行う研修について、より効果的な実施方法等について検討し、研修内容の充実を図る。

エ 国は、地域における診療連携の推進に資する研究を行い、その成果物を活用し、地域の特性に応じた診療連携体制の強化を支援する。

オ 国は、職域における肝炎患者等に対する理解を深めるため、肝炎の病態、治療方法及び肝炎患者等に対する望ましい配慮についての先進的な取組例等の情報を取りまとめ、各事業主団体と連携を図り、普及啓発を行う。

カ 国は、就労を維持しながら適切な肝炎医療を受けることができる環境の整備等について、各事業主団体に対し、協力を要請する。

キ 国は、肝炎医療費助成制度、高額療養費制度、傷病手当金、障害年金等の肝炎医療に関する制度について情報を取りまとめ、地方公共団体と連携を図り、拠点病院の肝疾患相談センターを始めとした医療機関等における活用を推進する。

ク 肝炎情報センターは、肝炎医療に係る最新情報、拠点病院及び専門医療機関等のリスト並びに拠点病院において対応可能な肝炎医療の内容に関して情報収集を行い、当該情報を肝炎情報センターのホームページに分かりやすく掲載すること等により、医療従事者及び国民に向けて可能な限り迅速に周知を図る。

第5 肝炎の予防及び肝炎医療に関する人材の育成に関する事項

(1) 今後の取組の方針について

肝炎ウイルスへの新たな感染を防止し、肝炎医療の水準を向上させるためには、肝炎の予防及び医療に携わる人材の育成が重要である。

このため、肝炎ウイルスへの新たな感染の発生の防止に資するよう、肝炎の感染予防について知識を持つ人材を育成するとともに、肝炎ウイルス感染が判明した後に適切な肝炎医療に結びつけるための人材を育成する必要がある。

また、肝炎医療に携わる者が、最新の肝炎検査に関する知見を修得することは、適切な治療方針の決定や患者に対し的確な説明を行う上で非常に重要であるため、肝炎医療に携わる者の資質向上を図る必要がある。

さらに、地域における肝炎に係る医療水準の向上等に資する指導者を育成することが必要である。

(2) 今後取組が必要な事項について

ア 国は、肝炎ウイルスへの新たな感染の発生を防止するため、日常生活上の感染予防の留意点を取りまとめた啓発用の資材や、集団生活が営まれる各施設における感染予防ガイドライン等を作成するための研究を推進する。また、当該研究の成果物を活用し、地方公共団体等と連携を図り、普及啓発を行う。(再掲)

イ 国は、地方公共団体と連携して、肝炎患者等が個々の病態に応じた適切な肝炎医療を受けられるよう、肝炎ウイルス検査後のフォローアップや受診勧奨等の支援を地域や職域において中心となって進める人材の育成を推進する。(再掲)

ウ 国は、肝炎情報センターに対し、国立国際医療研究センターの中期目標及び中期計画に基づき、拠点病院において指導的立場にある医療従事者に対して、最新の知見を踏まえた肝炎検査及び肝炎医療に関する研修が行われるよう要請する。(再掲)

エ 国は、肝炎情報センターが拠点病院の医療従事者を対象として実施する研修を効果的に進めるための技術的支援を行う。また、国及び都道府県は、拠点病院が行う研修について、より効果的な実施方法等について検討し、研修内容の充実を図る。(再掲)

第6 肝炎に関する調査及び研究に関する事項

(1) 今後の取組の方針について

肝炎研究については、これまでの成果を肝炎対策に適切に反映するため、研究実績を総合的に評価、検証するとともに、今後、行政的な課題を解決するために必要な研究を実施していく必要がある。

また、肝炎対策を総合的に推進するための基盤となる肝炎研究を推進するとともに、将来の肝炎研究を担う若手研究者の育成を行い、肝炎研究の人的基盤の拡大を目指す。

さらに、肝炎研究について、国民の理解を得られるよう、分かりやすい情報発信を推進する必要がある。なお、研究成果の公表に当たっては、差別や偏見を招くことのないよう、十分に配慮するものとする。

(2) 今後取組が必要な事項について

ア 国は、「肝炎研究7カ年戦略」に基づく肝炎研究を一層推進するとともに、その研究成果について評価、検証を行い、肝炎対策推進協議会に報告する。

イ 国は、肝炎研究分野において、若手研究者の人材育成を積極的に行う。

ウ 国は、「肝炎研究7カ年戦略」に基づく肝炎研究に加え、肝炎対策の推進に資することを目的として、以下の行政的な研究を行う。

(ア) 日常生活上の感染予防の留意点を取りまとめた啓発用の資材や、集団生活が営まれる各施設における感染予防ガイドライン等を作成するための研究

(イ) 医療機関において手術前等に行われる肝炎ウイルス検査の結果の説明状況等について、実態を把握するための研究

(ウ) 地域における診療連携の推進に資する研究

(エ) 職域における肝炎患者等に対する望ましい配慮の在り方に関する研究

(オ) 具体的な施策の目標設定に資する肝炎、肝硬変及び肝がん等の病態別の実態を把握するための調査研究

(カ) 肝炎患者等に対する偏見や差別の実態を把握し、その被害の防止のためのガイドラインを作成するための研究

(キ) その他肝炎対策の推進に資する研究

エ 国は、肝炎研究について国民の理解を得られるよう、当該研究の成果について分かりやすく公表し、周知を図る。

第7 肝炎医療のための医薬品の研究開発の推進に関する事項

(1) 今後の取組の方針について

肝炎は重篤な疾病であり、肝炎医療に係る医薬品を含めた医薬品の開発等に係る研究が促進され、薬事法(昭和35年法律第145号)の規定に基づく製造販売の承認が早期に行われるよう、治験及び臨床研究を推進し、さらに、肝炎医療のための医薬品を含めた、特に医療上必要性が高い医薬品及び医療機器が速やかに医療現場に導入されるよう、審査の迅速化等の必要な措置を講じる必要がある。

(2) 今後取組が必要な事項について

ア 国は、肝炎医療の医療水準の向上等に資する新医薬品の開発等に係る研究を推進する。

イ 国は、肝炎医療に係る新医薬品を含めた医薬品開発等に係る治験及び臨床研究を推進する。

ウ 国は、肝炎医療に係る新医薬品、新医療機器等について、優れた製品を迅速に医療の現場に提供できるよう、有効性や安全性に関する審査体制の充実強化等を図る等承認審査の迅速化や質の向上に向けた取組を推進する。

エ 国は、肝炎医療に係る新医薬品等のうち、欧米諸国で承認等されているが国内で未承認の医薬品等であって医療上必要性が高いと認められるものについて、関係企業に治験実施等の開発要請の取組を行う。

オ 国は、肝炎医療に係る新医薬品等のうち、医療上の有用性等の要件を満たす医薬品については、優先して承認審査を進める。

第8 肝炎に関する啓発及び知識の普及並びに肝炎患者等の人権の尊重に関する事項

(1) 今後の取組の方針について

肝炎に係る正しい知識については、国民に十分に浸透していないと考えられる。こうした中において、肝炎ウイルス検査の受検を勧奨し、また、肝炎ウイルスの新たな感染を予防するためには、全ての国民に対して、肝炎の予防、病態及び治療に係る正しい理解が進むよう普及啓発及び情報提供を推進する必要がある。

また、早期に適切な治療を促すため、肝炎患者等が肝炎の病態及び治療に係る正しい知識を持つことができるよう、普及啓発及び情報提供を積極的に行うとともに、肝炎患者等が、不当な差別を受けることなく、社会において安心して暮らせる環境づくりを目指し、肝炎患者等とその家族等、医療従事者、事業主等の関係者を始めとした全ての国民が、肝炎について正しい知識を持つための普及啓発を推進する必要がある。

(2) 今後取組が必要な事項について

ア 国は、平成22年5月の世界保健機関(WHO)総会において、世界肝炎デーの実施が決議されたことを踏まえ、日本肝炎デーを設定する。あわせて、国及び地方公共団体は、財団法人ウイルス肝炎研究財団が従来から実施してきた「肝臓週間」と連携し、肝炎に関する集中的な普及啓発を行う。

イ 国及び地方公共団体は、あらゆる世代の国民が、肝炎に係る正しい知識を持つための普及啓発を行う。

ウ 国及び地方公共団体は、国民に対し、近年、我が国における感染事例の報告がある急性B型肝炎(ジェノタイプA)は、従来に比し、感染が慢性化することが多いとされていることに鑑み、母子感染や乳幼児期の水平感染に加えて、性行為等により感染する可能性があり、予防策を講じる必要があることについて普及啓発を行う。

エ 国及び地方公共団体は、肝炎患者等への受診勧奨を行うため、医療保険者、医師その他の医療従事者の団体、職域において健康管理に携わる者の団体、事業主団体等の協力を得て、肝炎の病態、知識や肝炎医療に係る制度について普及啓発を行う。

オ 国は、肝炎患者等、医師等の医療従事者、職域において健康管理に携わる者、事業主等の関係者が、それぞれにとって必要な情報を取りまとめ、普及啓発を行う。

カ 国は、就労を維持しながら適切な肝炎医療を受けることができる環境の整備等について、各事業主団体に対し、協力を要請する。(再掲)

キ 国は、地域の医療機関において、肝炎に係る情報提供が適切になされるよう、肝炎情報センターに対し、情報提供の機能を充実させるよう要請する。

ク 国及び都道府県は、拠点病院の肝疾患相談センターを周知するための普及啓発を行う。

ケ 国は、医療保険者や事業主が肝炎ウイルス検査を実施する場合の検査結果について、プライバシーに配慮した適正な通知と取扱いについて、医療保険者及び事業主に対して改めて周知する。(再掲)

コ 国は、肝炎患者等に対する偏見や差別の実態を把握し、その被害の防止のためのガイドラインを作成するための研究を行い、その成果物を活用し、地方公共団体と連携を図り、普及啓発を行う。

第9 その他肝炎対策の推進に関する重要事項

(1) 肝炎患者等及びその家族等に対する支援の強化及び充実

ア 今後の取組の方針について

肝炎患者等及びその家族等が、肝炎医療を受けながら、生活の質の向上を図ることができるよう、相談支援体制の充実を図り、精神面でのサポート体制を強化する。また、肝炎患者等が不当な差別を受けた場合、肝炎患者等一人一人の人権を尊重し、不当な差別を解消するため、適切な対応を講じることができる体制づくりを進める必要がある。

イ 今後取組が必要な事項について

(ア) 国は、都道府県と連携して、肝炎患者等及びその家族等の不安を軽減するための情報提供を進めるとともに、肝炎患者等及びその家族等と、医師を始めとした医療従事者とのコミュニケーションの場を提供する。

(イ) 国は、肝炎情報センターに対し、拠点病院の相談員が必要とする情報について整理し、積極的に情報提供が行われるよう要請する。

(ウ) 国は、地方公共団体と連携して、法務省の人権擁護機関の人権相談窓口の周知を図る。

(2) 肝硬変及び肝がん患者に対する更なる支援の在り方

肝炎から進行した肝硬変及び肝がんは、根治的な治療法が少なく、また、患者の高齢化が進んでいる現状がある。このため、肝硬変及び肝がん患者の不安を軽減するために、以下の取組を講じるものとする。

ア 国は、肝硬変及び肝がんを含む肝疾患について、「肝炎研究7カ年戦略」に基づく研究を推進する。あわせて、国及び地方公共団体は、肝硬変及び肝がんを含む肝疾患に係る肝炎医療の水準の向上等を図るため、医療従事者への研修等人材育成を推進する。

イ 国は、都道府県と連携して、肝炎から進行した肝硬変及び肝がん患者を含む肝炎患者等及びその家族等の不安を軽減するための情報提供を進めるとともに、肝炎患者等及びその家族等と、医師を始めとした医療従事者とのコミュニケーションの場を提供する。

ウ 平成22年度から、一定の条件の下、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)における身体障害として、新たに肝臓機能障害の一部について、障害認定の対象とされた。その認定を受けた者の肝臓移植、肝臓移植後の抗免疫療法とそれらに伴う医療については、自立支援医療(更生医療)の対象となっており、引き続き当該措置を継続する。

エ 国は、肝炎から進行した肝硬変及び肝がんの患者に対する更なる支援の在り方について検討する上での情報を収集するため、肝硬変及び肝がん患者に対する肝炎医療や生活実態等に関する現状を把握するための調査研究を行う。

(3) 地域の実情に応じた肝炎対策の推進

都道府県においては、肝炎対策基本法の趣旨に基づき、都道府県単位での肝炎対策を推進するための計画を策定する等、地域の実情に応じた肝炎対策を講じるための体制を構築し、管内市区町村と連携した肝炎対策を推進することが望まれる。

また、地方公共団体は、積極的に、国を始めとする他の行政機関との連携を図りつつ肝炎対策を講じることが望まれる。

(4) 国民の責務に基づく取組

肝炎対策基本法第6条の規定に鑑み、肝炎対策は、肝炎患者等とその家族等を含めた国民が主体的かつ積極的に活動する必要があり、以下の取組を進めることが重要である。

ア 国民一人一人が、肝炎は放置すると肝硬変や肝がんという重篤な病態へと進展する可能性があり、各人の健康保持に重大な影響をもたらし得る疾病であることを理解した上で、少なくとも一回は肝炎ウイルス検査を受検し、自身の肝炎ウイルス感染の有無について、早期に認識を持つよう努めること。

イ 国民一人一人が、肝炎ウイルスへの新たな感染の可能性がある行為について正しい知識を持ち、新たな感染が生じないよう行動すること。また、肝炎ウイルスの感染に関する知識が不足していること等により、肝炎患者等に対する不当な差別や、それに伴う肝炎患者等の精神的な負担が生じることのないよう、正しい知識に基づく適切な対応に努めること。

(5) 肝炎対策基本指針の見直し及び定期報告

肝炎対策基本法第9条第5項においては、「厚生労働大臣は、肝炎医療に関する状況の変化を勘案し、及び肝炎対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも5年ごとに、肝炎対策基本指針に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更しなければならない。」とされている。

本指針は、肝炎をめぐる現状を踏まえ、肝炎対策を総合的に推進するために基本となる事項について定めたものである。今後は、本指針に定める取組を進めていくこととなるが、国、地方公共団体等における取組について、定期的に調査及び評価を行い、肝炎をめぐる状況変化を的確に捉えた上で、必要があるときは、策定から5年を経過する前であっても、本指針について検討を加え、改正するものとする。なお、本指針に定められた取組の状況は、肝炎対策推進協議会に定期的に報告するものとする。