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○妊娠期からの妊娠・出産・子育て等に係る相談体制等の整備について

(平成23年7月27日)

(/雇児総発0727第1号/雇児福発0727第1号/雇児母発0727第1号/)

(各都道府県・各指定都市・各中核市・各保健所設置市・各特別区児童福祉・母子保健主管部(局)長あて厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長・家庭福祉課長・母子保健課長通知)

児童虐待防止対策の推進については、平素より格別のご高配をいただき厚く御礼申し上げる。

さて、出産や育児に悩みを持つ保護者に対する相談窓口については、「出産や育児に悩みを持つ保護者に対する相談窓口の周知等について」(平成19年4月5日付雇児総発第0405001号)などにより周知を依頼しており、また、平成23年7月20日公表の「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第7次報告)(社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会)」においては、日齢0日児の死亡事例が報告され、妊娠等について悩みを抱える者のための相談体制の充実などが提言されたところである。

しかし、これらの妊娠等に関する相談窓口については、妊娠等について悩みを抱える者のみならず、医療機関を始めとする関係機関に対しても周知が必ずしも行き届いていないことや、妊娠等についての相談は、妊娠という事実に対する悩みや経済面・育児面等の不安など多岐にわたり、ひとつの相談機関で完結することは困難であることなどから、種々の相談機関の連携が必要であることを踏まえ、妊娠等について悩みを抱える者が相談しやすい体制を整備するため、下記についてご対応いただきたい。併せて、都道府県におかれては、管内市町村にご周知願いたい。

なお、妊娠等に関する相談窓口の周知に当たっては日本医師会・日本産婦人科医会等の関係団体に別途協力を依頼している。

本通知は地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言である。

1 妊娠等に関する相談窓口の設置・周知について

妊娠等について悩みを抱える者が相談しやすい体制を整備するため、妊娠等に関する相談窓口を設置し、妊娠等に関する相談窓口であることを明示して周知を図ること。

その際、既に設置している女性健康支援センター、児童相談所等の中心的な相談窓口を決めて周知する方法や、身近な複数の相談窓口を周知する方法など、地域の実情に応じて周知する相談窓口を決定すること。

また、妊娠等に関する相談窓口の周知にあたっては、産科医療機関や薬局、大学の保健管理センター等の協力を得るなど、地方自治体の担当部署(母子保健、児童福祉)、関係相談機関、関係団体等で連携を図られたい。周知方法としては、例えば、広報誌やホームページに妊娠等に関する相談窓口を掲載したり、妊娠の届出の受理及び母子健康手帳の交付時や集団指導、健康診査時に相談窓口が記載されたリーフレット等を配布することなどが考えられる。

2 各相談窓口での対応

相談者は、「妊娠を周囲に知られたくない」、「出産する費用がない」、「育児に自信がない」等といった多岐にわたる悩みを抱えていることを踏まえ、各相談窓口においては、以下に留意しつつ対応すること。

(1) 相談者が匿名を希望した場合であっても相談に十分応じること。

(2) 相談者の悩みに応じて適切な相談機関に相談を繋ぐこと。また、助産施設や里親制度等、社会的養護又は婦人保護制度による保護・支援制度について情報提供を行うなどの対応をすること(別紙1~3参照)。

(3) 関係団体やNPO法人などが実施している相談事業も必要に応じて活用し、対応可能な相談機関に確実に相談を繋げることとし、相談者の出産後に子どもの養育上の問題等が想定される場合には、相談を引き継いだ機関をはじめ、各関係機関が十分連携を図りながら継続して切れ目のない援助を行うこと。

3 保護・支援制度の活用

相談の結果、出産への経済的支援、社会的養護又は婦人保護制度による保護・支援が必要となった場合は、各相談機関から、児童相談所、婦人相談所又は福祉事務所を通じて、助産施設への入所、里親への委託、乳児院、母子生活支援施設又は婦人保護施設への入所等により、当面の安全確保、妊娠・出産の支援、母子の生活の支援、子どもの保護・養育等を実施すること。

4 体制整備のための支援

本通知に基づく体制整備に当たっては、地方自治体の担当部署(母子保健、児童福祉)、関係相談機関、関係団体等により連携体制を十分検討することが必要である。なお、この仕組みの立ち上げや立ち上げ後の周知のための経費については、「安心こども基金」の「児童虐待防止対策の強化」として支出して差し支えないことを、念のため、申し添える。

また、女性健康支援センターにおける妊娠の相談体制の整備及び広報については、「母子保健医療対策等総合支援事業」を活用いただけることを申し添える。

(別紙1)

<各相談機関に求められる役割(範囲)>

妊娠等に悩む人たちからの相談に対し、各機関に求められる役割等は、それぞれ次に掲げるものと考えられるので、他の機関との役割の違い等を認識し、適切な対応を行うとともに、相互の連携に努めること。

(1) 女性健康支援センター

① 目的・役割

女性は、妊娠、出産等固有の機能を有するだけでなく、女性特有の身体的特徴を有することにより、さまざまな支障や心身にわたる悩みを抱えている。このため、生活に密着した身近な機関において、女性がその健康状態に応じ的確に自己管理を行うことができるよう健康教育を実施し、また気軽に相談することのできる体制を確立することとされている。

② 妊婦からの相談について

身体的、精神的な悩みを有する女性に対する相談指導を行うこととされており、平成23年度から、特に妊娠に悩む者に対する専任相談員を配置することができる。また、対象となる者(特に妊娠に悩む者)が、女性健康支援センターの所在等を容易に把握することができるよう、その所在地及び連絡先を記載したリーフレット等を作成し、対象者が訪れやすい店舗等で配付する等広報活動を積極的に行うこととされている。また、相談を受けるに当たっては、医学面のみならず、心理・社会・経済面など総合的に配慮し、適切に他機関との連携を図ることが必要とされている。

(2) 児童相談所

① 目的・役割

児童福祉法においては、児童及び妊産婦の福祉に関し専門的な知識及び技術を必要とする相談に応じ、必要な調査、判定、指導を行い、児童の一時保護を行うほか、これらに付随する業務を行うこととされている。

② 妊婦からの相談について

保健所や市町村保健センターとの十分な連携の下、必要に応じ、医療機関、福祉事務所等適切な機関にあっせんするとともに、出産後に想定される子どもの養育上の問題について、早期発見・早期対応及び一貫した指導・援助の実施に努めることとされている。また、子どもの出産前であっても必要な場合には要保護児童対策地域協議会等を活用し、出産後の対応について検討することとされている。

子どもが出生後に支援の必要が見込まれる場合は、相談を受理した段階で児童記録票を作成し、一貫した指導・援助の経過を残すほか、出生後の養育が困難と見込まれる場合には、養育里親や乳児院等への措置制度、特別養子縁組制度などについて説明し、同意を得ておくなどの早期対応が必要である。

(3) 都道府県・市町村の母子保健相談窓口(保健所・保健センター)

① 目的・役割

母子保健法においては、都道府県及び市町村の役割として、母性等の保持及び増進のため、妊娠、出産又は育児に関し、相談に応じ、個別的又は集団的に必要な指導及び助言等を行い、母子保健に関する知識の普及に努めることとされている。また、市町村は、妊産婦若しくはその配偶者等に対して、妊娠、出産又は育児に関し、必要な保健指導等を行うこととされている。

② 妊婦からの相談について

市町村保健センターは、妊婦の相談内容に応じて保健所や児童相談所、医療機関等と連携を図りながら、必要に応じて妊婦が子どもの出生後に養育支援を受けながら育てられるよう、支援体制を整えておくことが必要である。

子どもの養育が非常に困難である等の相談については、児童相談所との連携の下、妊婦が養育里親や乳児院等への措置制度、特別養子縁組制度等についての知識を得て選択できるよう支援し、医療機関との連携の下、妊娠・出産期における妊産婦の健康を支援する必要がある。

(4) 福祉事務所

① 目的・役割

社会福祉法に規定されている「福祉に関する事務所」をいい、生活保護法、児童福祉法、母子及び寡婦福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法に定める援護、育成又は更生の措置に関する事務を行うこととされている。

② 妊婦からの相談について

生活保護法においては、生活に困窮している方に対し、食費をはじめとする日常生活に必要な費用としての生活扶助、家賃等としての住宅扶助、出産費用としての出産扶助など、困窮の程度に応じて必要な保護を行うこととされている。また、保健上必要であるにもかかわらず、経済的な理由で入院助産を受けられない場合には、助産施設に入院し、出産に要する費用を助成することとされている。

配偶者(パートナー)からの暴力、借金、家庭不和などの相談を受けた場合には、婦人相談員が対応し、必要に応じて婦人相談所と連絡を取り、被害者の保護を行う。さらに、母子自立支援員による自立支援相談や母子生活支援施設への入所決定などを行っている。

(5) 婦人相談所

① 目的・役割

売春防止法及び配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律に基づき、配偶者からの暴力被害者、その他生活上の困難を抱え、他に解決すべき機関が他にない保護を必要とする女性についての相談に応じ、必要な調査並びに医学的、心理学的判定等を行い、必要に応じて、当該女性及び同伴家族も含め一時保護と婦人保護施設への入所措置を行う。

② 妊婦からの相談について

婦人相談所において、妊娠・出産を主訴とする相談のほか、配偶者からの暴力被害者や若年の未婚ケース、性暴力被害者など、多様な背景から生活困難な状況にありかつ妊婦である相談ケースについて対応する場合には、相談者の主訴について聞き取るだけでなく、家族背景や妊娠経過のほか、出産後の養育環境等も含め多方面からの調査・把握を行う。必要に応じて、医療機関、福祉事務所等適切な機関と連携するとともに、妊娠に悩む者の相談に応ずる職員を配置している「女性健康支援センター」や「保健センター・保健所」「児童相談所」等と連携するなどし、在宅ケースについては、特定妊婦として要保護児童対策地域協議会を活用するなどして、必要な支援体制を確保することが望ましい。

(別紙2)

<各保護・支援制度の概要>

妊娠等に悩む人たちからの相談に対応して行う出産への経済的支援、社会的養護又は婦人保護の制度による保護・支援には、それぞれ次に掲げるものがあるので、各相談機関等に周知し、必要とする者への情報提供を行い、活用の促進を図ること。

(1) 助産施設

保健上必要があるにもかかわらず、経済的理由により、入院助産を受けることができない妊産婦を入所させて、助産を受けさせることを目的とする施設。助産施設は、病院、診療所、助産所であり、入所の申し込みは福祉事務所に対して行う。

(2) 里親、養子縁組

里親制度は、保護者のない児童又は何らかの事情により家庭での養育が困難となった児童を家庭的環境の下での養育を委託する制度。養育里親研修を受講した者を都道府県等が認定し、児童相談所が子どもと里親との適合を行い、委託する。

里親には、養育里親や、養子縁組を希望する里親がある。

特に、乳幼児は、特定の大人との愛着関係の下で養育されることが、心身の成長や発達には不可欠であるため、家庭的な養育環境を提供することが必要である。

養育できない・養育しないという保護者の意向が明確な新生児については、妊娠中からの相談を含め、出産した病院から直接里親の家庭へ委託する特別養子縁組を前提とした委託の方法が有用である。特別養子縁組は6ヶ月以上の養育状況を踏まえ、家庭裁判所の審判により成立し、戸籍上は養親の実子として記載されることになる。実親の妊娠中から里親委託まで切れ目のない支援が行え、実親が安心して出産を迎え、里親と自然に親子関係を作ることができる。

また、家庭裁判所の許可による普通養子縁組の制度もある。

(3) 乳児院

出産後、何らかの事情で家庭での養育が困難となった乳幼児を入所させて、養育し、退所した児童について相談その他の援助を行うことを目的とした施設。入所中は、看護師、保育士や児童指導員など専門職員が、乳児の心身及び社会性の健全な発育を促進するための養育を行い、病気や障害のある子どもへの対応や親支援を行う。児童相談所が入所措置を行う。

(4) 母子生活支援施設

配偶者のいない女性と、その監護すべき児童を入所させ、保護するとともに、これらの者の自立の促進のためにその生活を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行う施設である。入所の申し込みは福祉事務所に対して行う。

妊産婦については、婦人相談所から母子生活支援施設への一時保護委託が可能であり、出産後は、通常の入所に切り替えることにより、妊娠段階から出産後まで一貫した母子の支援を行うことができる。

(5) 婦人保護施設

配偶者からの暴力被害者、その他生活上の困難を抱え、他に解決すべき機関が他にない保護を必要とする女性及び同伴家族を入所させ、保護及び自立のための支援を行う。妊産婦も入所できる。措置による入所の他、婦人相談所の判断により、一時保護の委託先としても入所できる。

(別紙3)