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○食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法の一部改正について

(平成23年7月21日)

(食安発0721第1号)

(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)

今般、農薬、飼料添加物及び動物用医薬品に関する試験法に係る知見の集積等を踏まえ、「食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について」(平成17年1月24日付け食安発第0124001号当職通知)の別添の一部を下記のとおり改正することとしたので、関係者への周知方よろしくお願いする。

なお、試験法の開発にあたって、1機関の結果ではあるが、「イミシアホス試験法(農産物)」にあっては、玄米、大豆、ごま、ばれいしょ、だいこんの根、だいこんの葉、トマト、いちご、メロン及び茶について、「シエノピラフェン試験法(農産物)」にあっては、玄米、大豆、ほうれんそう、キャベツ、ばれいしょ、なす、いちご、オレンジ、りんご、茶及びみかんの果皮について、また、「フルセトスルフロン試験法(農産物)」にあっては、玄米、大豆、ごま、ほうれんそう、キャベツ、ばれいしょ、トマト、オレンジ、りんご及び茶について、各試験法が適用可能であることが確認されており、各試験の実施に際しては参考とされたい。

また、農薬フルセトスルフロンは異性体の混合物であることから、各異性体の和を分析結果とするよう取り扱われたい。

第3章個別試験法の「イミシアホス試験法(農産物)」を別紙1のように改める。

第3章個別試験法の「シエノピラフェン試験法(農産物)」を別紙2のように改める。

第3章個別試験法の「フルセトスルフロン試験法(農産物)」を別紙3のように改める。

[別紙1]

イミシアホス試験法(農産物)

1.分析対象化合物

イミシアホス

2.装置

液体クロマトグラフ・質量分析計(LC―MS)

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。

0.5mol/Lリン酸緩衝液(pH7.0) リン酸水素二カリウム(K2HPO4)52.7g及びリン酸二水素カリウム(KH2PO4)30.2gを量り採り、水約500mLに溶解し、1mol/L水酸化ナトリウム溶液又は1mol/L塩酸を用いてpHを7.0に調整した後、水を加えて1Lとする。

イミシアホス標準品 本品はイミシアホス98%以上を含む。

4.試験溶液の調製

1) 抽出

①穀類、豆類及び種実類の場合

試料10.0gに水20mLを加え、30分間放置する。

これにアセトニトリル50mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物にアセトニトリル20mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。得られたろ液を合わせ、アセトニトリルを加えて正確に100mLとする。

抽出液20mLを採り、塩化ナトリウム10g及び0.5mol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)20mLを加え、10分間振とうする。静置した後、分離した水層を捨てる。

オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム(1,000mg)にアセトニトリル10mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに上記のアセトニトリル層を注入し、さらに、アセトニトリル2mLを注入して、全溶出液を採り、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。残留物にアセトニトリル及びトルエン(3:1)混液2mLを加えて溶かす。

②果実、野菜、ハーブ、茶及びホップの場合

果実、野菜及びハーブの場合は、試料20.0gを量り採る。茶及びホップの場合は、試料5.00gに水20mLを加え、30分間放置する。

これにアセトニトリル50mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物にアセトニトリル20mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。得られたろ液を合わせ、アセトニトリルを加えて正確に100mLとする。

抽出液20mLを採り、塩化ナトリウム10g及び0.5mol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)20mLを加え、振とうする。静置した後、分離した水層を捨てる。アセトニトリル層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。残留物にアセトニトリル及びトルエン(3:1)混液2mLを加えて溶かす。

2) 精製

グラファイトカーボン/アミノプロピルシリル化シリカゲル積層ミニカラム(500mg/500mg)に、アセトニトリル及びトルエン(3:1)混液10mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに1)で得られた溶液を注入した後、アセトニトリル及びトルエン(3:1)混液20mLを注入し、全溶出液を40℃以下で1mL以下に濃縮する。これにアセトン10mLを加えて40℃以下で1mL以下に濃縮し、再度アセトン5mLを加えて濃縮し、溶媒を除去する。残留物をメタノールに溶かして、穀類、豆類及び種実類の場合は正確に4mL、果実、野菜及びハーブの場合は正確に8mL、茶及びホップの場合は正確に2mLとしたものを試験溶液とする。

5.検量線の作成

イミシアホス標準品の0.005~0.1mg/L溶液(メタノール)を数点調製し、それぞれ5μLをLC―MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量

試験溶液5μLをLC―MSに注入し、5の検量線でイミシアホスの含量を求める。

7.確認試験

LC―MS又はLC―MS/MSにより確認する。

8.測定条件

(例)

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル 内径2.1mm、長さ150mm、粒子径3.5μm

カラム温度:40℃

移動相:A液及びB液について下表の濃度勾配で送液する。

A液:5mmol/L酢酸アンモニウム溶液

B液:5mmol/L酢酸アンモニウム・メタノール溶液

時間(分)

A液(%)

B液(%)

0

85

15

1

60

40

3.5

60

40

6

50

50

8

45

55

17.5

5

95

30

5

95

30

85

15

イオン化モード:ESI(+)

主なイオン(m/z):306、305

保持時間の目安:14分

9.定量限界

0.01mg/kg

10.留意事項

1) 試験法の概要

イミシアホスを試料からアセトニトリルで抽出し、塩析で水を除いた後、果実、野菜等についてはそのまま、穀類、豆類及び種実類についてはオクタデシルシリル化シリカゲルミニカラムで精製後、いずれもグラファイトカーボン/アミノプロピルシリル化シリカゲル積層ミニカラムで精製し、LC―MSで定量及び確認する方法である。

2) 注意点

①本法は「LC―MSによる農薬等の一斉試験法Ⅰ(農産物)」に準拠したものである。

②イミシアホスのLC―MS測定で、試験法開発時に使用したイオンを以下に示す。

定量イオン(m/z):305

定性イオン(m/z):306

③LC―MS/MSを用いる場合の主なイオンの例を以下に示す。

プリカーサーイオン(m/z):305

プロダクトイオン(m/z):235、201

11.参考文献

厚生労働省通知食安発第1129002号「食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について(一部改正)」(平成17年11月29日)、「LC―MSによる農薬等の一斉試験法Ⅰ(農産物)」

12.類型

C

[別紙2]

シエノピラフェン試験法(農産物)

1.分析対象化合物

シエノピラフェン

2.装置

液体クロマトグラフ・質量分析計(LC―MS)

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。

シエノピラフェン標準品 本品はシエノピラフェン98%以上を含み、融点は107~108℃である。

4.試験溶液の調製

1) 抽出

果実及び野菜の場合は試料20.0gを量り採る。穀類、豆類及び種実類の場合は試料10.0g、茶の場合は試料5.00gにそれぞれ水20mLを加え、30分間放置する。

これにアセトニトリル及び水(4:1)混液100mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトニトリル及び水(4:1)混液50mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせ、アセトニトリルを加えて正確に200mLとする。この2mL(茶の場合は4mL)を採り、これに水10mLを加えて、40℃以下で約10mLまで濃縮する。

2) 精製

①オクタデシルシリル化シリカゲルカラムクロマトグラフィー及びグラファイトカーボンカラムクロマトグラフィー

オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム(1,000mg)にアセトニトリル及び水各5mLを順次注入し、流出液は捨てる。グラファイトカーボンミニカラム(500mg)にアセトニトリル及び水(4:1)混液5mLを注入し、流出液は捨てる。オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラムに、1)で得られた溶液を注入した後、さらにアセトニトリル及び水(3:2)混液10mLを注入し、流出液は捨てる。次いでこのカラムの下部にグラファイトカーボンミニカラムを接続し、アセトニトリル及び水(4:1)混液15mLを注入する。溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物に酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:19)混液5mLを加えて溶かす。

②シリカゲルカラムクロマトグラフィー

シリカゲルミニカラム(690mg)に酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:19)混液5mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに①で得られた溶液を注入した後、さらに酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:19)混液5mLを注入し、流出液は捨てる。次いで酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:4)混液10mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトニトリル及び水(3:1)混液に溶解し、果実及び野菜の場合は正確に4mL、穀類、豆類、種実類及び茶の場合は正確に2mLとしたものを試験溶液とする。

5.検量線の作成

シエノピラフェン標準品の0.0005~0.01mg/L溶液(アセトニトリル及び水(3:1)混液)を数点調製し、それぞれ5μLをLC―MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量

試験溶液5μLをLC―MSに注入し、5の検量線でシエノピラフェンの含量を求める。

7.確認試験

LC―MSにより確認する。

8.測定条件

(例)

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル 内径2.1mm、長さ150mm、粒子径5μm

カラム温度:40℃

移動相:A液及びB液の混液(1:3)で15分間保持した後、(1:19)までの濃度勾配を0.5分間で行い、(1:19)で8分間保持する。

A液:0.1vol%ギ酸

B液:0.1vol%ギ酸・アセトニトリル溶液

イオン化モード:ESI(+)

主なイオン(m/z):395、394

保持時間の目安:11分

9.定量限界

0.01mg/kg

10.留意事項

1) 試験法の概要

シエノピラフェンを試料からアセトニトリル及び水(4:1)混液で抽出し、オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム、グラファイトカーボンミニカラム及びシリカゲルミニカラムで精製した後、LC―MSで定量及び確認する方法である。

2) 注意点

①みかんの果皮を試験する場合は、試料10.0gを用いて抽出し、試験溶液量を2mLとする。

②シエノピラフェンのLC―MS測定で、試験法開発時に使用したイオンを以下に示す。

定量イオン(m/z):394

定性イオン(m/z):395

11.参考文献

なし

12.類型

C

[別紙3]

フルセトスルフロン試験法(農産物)

1.分析対象化合物

フルセトスルフロン(各異性体の和)

2.装置

液体クロマトグラフ・質量分析計(LC―MS)

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。

フルセトスルフロン標準品 本品はフルセトスルフロン98%以上を含む。

4.試験溶液の調製

1) 抽出

果実及び野菜の場合は試料20.0gを量り採る。穀類、豆類及び種実類の場合は試料10.0g、茶の場合は試料5.00gにそれぞれ水20mLを加え、30分間放置する。

これにアセトニトリル及び水(4:1)混液100mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトニトリル及び水(4:1)混液50mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせ、アセトニトリル及び水(4:1)混液を加えて正確に200mLとする。この1mL(穀類、豆類及び種実類の場合は2mL、茶の場合は4mL)を採り、アセトニトリル及び水(4:1)混液9mL(穀類、豆類及び種実類の場合は8mL、茶の場合は6mL)を加える。

2) 精製

①グラファイトカーボンカラムクロマトグラフィー

グラファイトカーボンミニカラム(500mg)にアセトニトリル及び水(4:1)混液10mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに1)で得られた溶液を注入し、さらにアセトニトリル及び水(4:1)混液50mLを注入し、全溶出液を採り、40℃以下で約8mLまで濃縮し、アセトニトリルを除去する。アセトニトリル除去後、水を加え約10mLとした後、酢酸0.1mLを加える。

②オクタデシルシリル化シリカゲルカラムクロマトグラフィー

オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム(1,000mg)に1%酢酸・アセトニトリル溶液及び1%酢酸各5mLを順次注入し、流出液は捨てる。このカラムに①で得られた溶液を注入した後、さらに1%酢酸及び1%酢酸・アセトニトリル溶液(7:3)混液10mLを注入し、流出液は捨てる。次いで1%酢酸及び1%酢酸・アセトニトリル溶液(1:1)混液10mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトニトリル及び水(4:1)混液10mLを加えて溶かす。

③トリメチルアミノプロピルシリル化シリカゲルカラムクロマトグラフィー

トリメチルアミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラム(500mg)にアセトニトリル及び水(4:1)混液10mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに②で得られた溶液を注入し、さらにアセトニトリル及び水(4:1)混液10mLを注入し、全溶出液を採り、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトニトリル及び水(2:3)混液に溶解し、正確に2mLとしたものを試験溶液とする。

5.検量線の作成

フルセトスルフロン標準品の0.0005~0.01mg/L溶液(アセトニトリル及び水(2:3)混液)を数点調製し、それぞれ5μLをLC―MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量

試験溶液5μLをLC―MSに注入し、5の検量線でフルセトスルフロンの含量を求める。

7.確認試験

LC―MSにより確認する。

8.測定条件

(例)

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル 内径2.0mm、長さ150mm、粒子径5μm

カラム温度:40℃

移動相:0.1vol%酢酸及び0.1vol%酢酸・アセトニトリル溶液(3:2)混液

イオン化モード:ESI(+)

主なイオン(m/z):510、488

保持時間の目安:12分

9.定量限界

0.01mg/kg

10.留意事項

1) 試験法の概要

フルセトスルフロンを試料からアセトニトリル及び水(4:1)混液で抽出し、グラファイトカーボンミニカラム、オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム及びトリメチルアミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラムで精製した後、LC―MSで定量及び確認する方法である。

2) 注意点

①フルセトスルフロン標準品は、erythro体とthreo体がおよそ9:1の割合の混合物である。本測定条件では1本のピークとして検出されるが、測定条件などによりそれぞれ2本のピークとして検出される場合がある。その場合は、両ピークの高さ又は面積の合計により検量線を作成し分析値を求めること。

②フルセトスルフロンは、グラファイトカーボン/アミノプロピルシリル化シリカゲル積層ミニカラムから溶出不良であったため、「LC―MSによる農薬等の一斉試験法Ⅰ(農産物)」は適用できなかった。

③本試験法の他に、米については「LC―MSによる農薬等の一斉試験法Ⅱ(農産物)」が適用可能である

④フルセトスルフロンのLC―MS測定で、試験法開発時に使用したイオンを以下に示す。

定量イオン(m/z):488

定性イオン(m/z):510

11.参考文献

なし

12.類型

C