添付一覧
○QMS省令とISO13485:2003との関係性に関する質疑応答集(Q&A)について
(平成23年5月30日)
(事務連絡)
(各都道府県衛生主管部(局)薬務主管課あて厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課通知)
「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(平成16年厚生労働省令第169号。以下「QMS省令」という。)は、国際的な整合を図るためにISO13485:2003(以下「ISO13485」という。)を踏まえ作成されたものであり、その逐条解説については、平成17年3月30日付け薬食監麻発0330001号「薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律の施行に伴う医薬品、医療機器等の製造管理及び品質管理(GMP/QMS)に係る省令及び告示の制定及び改廃について」(以下「施行通知」という。)の第4章の第3に示しているところである。今般、国際整合性の確保という観点から、QMS省令とISO13485の関係をより一層明確にするため、その考え方について別添のとおりとりまとめたので、業務の参考とされたい。
別添
(全般)
Q1 QMS省令とISO13485は、完全に同一のものと考えてよいか。 |
A1
QMS省令は、国際的な整合性の確保という観点からISO13485を踏まえ制定されたものであり、包装等製造業者等に適用される第三章及び生物由来医療機器等製造業者等に適用される第四章の要求事項及び医療機器製造業者等に適用される第二章の一部追加要求事項等を除き、ISO13485と一致している。第二章に係る追加要求事項等の詳細に関しては、以下のQ&Aを参照されたい。
Q2 施行通知の第4章の第3の逐条解説において、「この条は、ISO13485の「○○○」に相当するものであること。」又は「この条は、ISO13485の「○○○」の一部に相当するものであること。」と記載されているが、これらの意味は何か。 |
A2
前者についてはISO13485(JIS Q 13485:2005)に対して変更した要求事項はなく同一の要求事項であり、後者については薬事法(昭和35年法律第145号)上の追加要求事項等を含むものである。
(第5条(品質管理監督システムに係る要求事項)関係)
Q3 第4項において、「製品要求事項への適合性に影響を及ぼす工程を外部委託することとしたときは、当該工程が管理されているようにしなければならない。」とあり、製造業の許可又は外国製造業者の認定の対象となる工程は除くとされている。許可又は認定の対象となる工程を外部委託している場合、この委託先の管理は「医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質管理の基準に関する省令」(平成16年厚生労働省令第136号。以下「GQP省令」という。)に基づき製造販売業者が行うこととなるが、この管理を製造販売業者と共同又は製造販売業者の委託を受けて製造業者等が行ってもよいか。 |
A3
どちらの方法でも差し支えない。ただし、GQP省令に基づく製造業者等との取り決め事項(QMS省令第29条を含む。)にその旨を明確に文書化しておくこと。また、委託した工程に係る品質の最終責任は製造販売業者にあることに留意すること。すなわち、第4項の規定は、委託した工程を実施する許可又は認定を取得している製造業者等の管理を委託元の製造業者等がGQP省令に基づく製造販売業者等との取り決め事項にその旨明確に文書化した上での実施を妨げるものではない。
(第6条(品質管理監督システムの文書化)関係)
Q4 第2項において製品標準書の作成が求められている。外国製造所において、それぞれの国の法規制に対応してDMR(Device Master Record)等が作成されている場合、薬事法で要求される製品標準書を別途作成する必要があるか。また、その内容について施行通知で示されている製造販売承認(認証)番号等を記載する必要があるか。 |
A4
製品標準書は、製品ごとに作成することを求めていたところであるが、国際的な整合性という観点から、また、品質管理監督文書が適切に管理されていることが目的であることから、各国規制等によって、「製品ごとに、その仕様及び品質管理監督システムに係る要求事項を規定した文書」が作成されている場合、それを以て製品標準書が作成されたと見なすことで差し支えないこととする。また、外国製造所において製品標準書を作成する場合、製造販売承認(認証)番号等の記載がなくても差し支えないこととする。
(第8条(文書の管理)関係)
Q5 施行通知では、「この条は、ISO13485の「4.2.3 Control of documents」の一部に相当するものであること。」とされているが、この条の差分は何か。 |
A5
この条の差分は、第4項に規定した廃止した品質管理監督文書又はその写しの保管期間である。ISO13485においては、製造又は検査に使用された文書が、少なくとも組織が定める医療機器の寿命の期間保管すること(ただし、その期間は、結果として得られる全ての記録の保管期間又は関連する規制要求事項によって定められた期間より短くならないこと。)が求められているが、QMS省令においては、当該品質管理監督文書の廃止の日から次の掲げる期間(ただし、教育訓練に係るものにあっては5年間)保管することが求められている。ただし、製品の製造又は試験検査に用いた文書については、少なくとも第9条に規定する当該製品に係る記録の保管の間において当該文書が利用できるよう保管することで足りる。
一 薬事法第2条第8項に規定する特定保守管理医療機器に係る製品にあっては、15年間(ただし、当該医療機器に関して有効期間又は使用の期限(以下単に「有効期間」という。)の記載が義務づけられている場合であって、その有効期間に1年を加算した期間が15年より長い場合においては、当該有効期間に1年を加算した期間)
二 特定保守管理医療機器以外の医療機器に係る製品にあっては、5年間(ただし、当該医療機器に関して有効期間の記載が義務づけられている場合であって、その有効期間に1年を加算した期間が5年より長い場合においては、当該有効期間に1年を加算した期間)
(第9条(記録の管理)関係)
Q6 施行通知では、「この条は、ISO13485の「4.2.4 Control of records」の一部に相当するものであること。」とされているが、この条の差分は何か。 |
A6
この条の差分は、第3項に規定した記録の保管期間及び保管期間の起算日である。ISO13485においては、組織が定める医療機器の寿命の期間は保管すること(ただし、組織の出荷日から2年間又は関連する規制要求事項によって定められた期間より短くならないこと。)が求められているが、QMS省令においては、作成の日から次に掲げる期間(ただし、教育訓練に係るものにあっては5
年間)保管することが求められている。
一 特定保守管理医療機器に係る製品にあっては、15年間(ただし、当該医療機器に関して有効期間の記載が義務づけられている場合であって、その有効期間に1年を加算した期間が15年より長い場合においては、当該有効期間に1年を加算した期間)
二 特定保守管理医療機器以外の医療機器に係る製品にあっては、5年間(ただし、当該医療機器に関して有効期間の記載が義務づけられている場合であって、その有効期間に1年を加算した期間が5年より長い場合においては、当該有効期間に1年を加算した期間)
(第10条(管理監督者の関与)関係)
Q7 施行通知では、「この条は、ISO13485の「5.1 Management commitment」の一部に相当するものであること。」とされているが、この条の差分は、ISO13485における「顧客要求事項」について、薬事法の制度上、製造業者の顧客は製造販売業者その他製品を受領する者であることから、QMS省令においては、製造販売業者その他製品を受領する者の要求事項として記載したものであると考えてよいか。 |
A7
差し支えない。施行通知においても「製品受領者」とは「当該製品に係る製造販売業者等を指すものであること。」と記載されている。
(第11条(製品受領者の重視)関係)
Q8 施行通知では、「この条は、ISO13485の「5.2 Customer focus」の一部に相当するものであること。」とされているが、この条の差分は、ISO13485における「顧客要求事項」について、薬事法の制度上、製造業者の顧客は製造販売業者その他製品を受領する者であることから、QMS省令においては、製造販売業者その他製品を受領する者の要求事項として記載したものであると考えてよいか。また、製造業者において、製品受領者を製造販売業者その他製品を受領する者等に限定することなく、運用してよいか。 |
A8
いずれについても差し支えない。
(第16条(責任技術者)関係)
Q9 施行通知では、「この条は、ISO13485の「5.5.2 Management representative」の一部に相当するものであること。」とされているが、この条の差分は、ISO13485で要求されるManagement representative(管理責任者)の責務をQMS省令においては薬事法第17条第5項に定める責任技術者の責務として規定したものであると考えてよいか。また、複数の製造所等をまとめて一つの品質管理監督システムを確立している場合、ISO13485で言うところのManagement representative(管理責任者)を製造所ごとに指名する必要があるか。 |
A9
この条における差分は、QMS省令における要求事項が、薬事法第17条第5項に定める製造所の責任技術者(外国製造業者にあっては、認定を受けた製造所の責任者又は当該外国製造業者があらかじめ指定した者)を対象としていることであり、その製造所における品質管理監督システムについての実際の監督に係る業務の実施を求めているものと考えてよい。複数の製造所等をまとめて一つの品質管理監督システムが確立されている場合は、ISO13485で言うところのManagement representative(管理責任者)をISO13485の規定に関わらず製造所ごとに指名することを求めるものではなく、国内製造所においては責任技術者を、外国製造所においては製造所ごとに管理責任者としての職務を全うできる要員をあらかじめ指名しておくことでよい。なお、ISO13485で要求される管理責任者の責務とQMS省令で要求される責任技術者の責務は同じであるが、必ずしも同じ者が指名されるとは限らないことから、各製造業者はその役割を明確にするとともに、責任技術者の責務が形骸化することのないよう注意されたい。
(第23条(教育訓練等)関係)
Q10 施行通知では、「この条は、ISO13485の「6.2.2 Competence,awareness and training」に相当するものであること。」とされているが、第2号において、「職員の教育訓練の必要性を明らかにするための手順書を作成すること。」とされている。一方、ISO13485では、これは要求事項ではなく、参考として、「国又は地域の規制が、教育・訓練の必要性を明確にするための文書化された手順の確立を組織に要求することがある。」とされている。これは追加要求事項か。 |
A10
追加要求事項である。
(第24条(業務運営基盤)関係)
Q11 施行通知では、「第24条第1項、第3項及び第4項は、ISO13485の「6.3 Infrastructure」に相当するものであること。」とされているが、第24条第2項については追加要求事項か。 |
A11
第2項については、製品特性に応じた構造設備に対する要求事項を追加したものである。第1項、第3項及び第4項については、差分はない。
(第42条(設置業務)関係)
Q12 施行通知では、「この条は、ISO13485の「7.5.1.2.2 Installation activities」の一部に相当するものであること。」とされているが、その差分は何か。 |
A12
薬事法施行規則(昭和36年厚生省令第1号)第93条及び第179条の要求事項にあわせ、製造業者等が実施すべきことを記載したものであり、追加要求事項ではない。
(第44条(滅菌製品の製造管理)関係)
Q13 施行通知では、「ISO13485の「7.5.1.3 Particular requirements for sterile medical devices」に相当するものであること。」とされているが、第3項はISO13485に対する追加要求事項か。 |
A13
追加要求事項である。滅菌医療機器製造業者等に対して、製品特性に応じた構造設備の要求事項を追加したものである。
(第49条(特定医療機器に係る製品の追跡可能性の確保)関係)
Q14 施行通知では、「この条は、ISO13485の「7.5.3.2.2 Particular requirements for active implantable medical devices and implantable medical devices」の一部に相当するものであること。」とされているが、この条の差分は何か。 |
A14
ISO13485では、能動植込み医療機器及び植込み医療機器に対する要求事項であるが、QMS省令では、対象を薬事法77条の5に定める特定医療機器に限定し、これに応じて要求事項を変更したものである。
(第56条(内部監査)関係)
Q15 施行通知では、「この条は、ISO13485の「8.2.2 Internal audit」に相当するものであること。」とあることから、ISO13485を監査基準とした内部監査を実施していれば、この条に適合していると判断して良いか。 |
A15
この条では、「この省令の規定及び当該品質管理監督システムに係る要求事項」に適合しているかどうかを明確にするために内部監査を行うことを規定しているため、ISO13485のみが監査基準である内部監査の結果を以て、この条に適合していると判断することはできない。
なお、ISO13485に基づく内部監査による適合結果を踏まえて、QMS省令との差分を追加で内部監査することでこの条へ適合していると判断することは差し支えない。
(第58条(製品の監視測定)関係)
Q16 施行通知では、「この条は、ISO13485の「8.2.4 Monitoring and measurement of product」に相当するものであること。」とされているが、第5項において、「製造業者等は、製品実現計画に定めた実施要領に基づく監視測定を支障なく完了するまでは、工程の次の段階に進むことの許可、製造所からの製品の出荷の可否の決定及びサービス提供を行ってはならない。」とされている。ISO13485では、「個別製品の実現の計画(7.1参照)で決めたことが問題なく完了するまでは,製品の出荷及びサービス提供を行わない。」ことが要求されている。「工程の次の段階に進むことの許可」については、追加要求事項か。 |
A16
追加要求事項ではない。「工程の次の段階に進むことの許可」については、企業が設計開発やリスク管理等の情報を踏まえて、どの段階で確認すべきかを決定し、製品実現計画に定めた実施要領に基づく監視測定を支障なく完了したことを次の段階に進めるまでに確認することであることから、ISO13485での要求と同じであると理解して差し支えない。
(第60条(不適合製品の管理)関係)
Q17 施行通知では、「この条は、ISO13485の「8.3 Control of nonconforming product」に相当するものであること。」とされているが、第9項における「新たな作業指図書を作成しなければならない。」は作業指図書を毎回作り直す必要があるように読める。これはISO13485の「shall document the rework process in a work instruction」での手直しプロセスの文書化に対しての追加要求事項か。 |
A17
追加要求事項ではない。第9項における「新たな作業指図書を作成しなければならない」は作業指図書を毎回作り直すことを求めるものではない。その製品について製造し直す場合の工程について元の作業指図の中で対応出来ない場合には、同様の手順で作業指図書を作成し直すことを求めたものであることから、あらかじめ製造し直す場合の影響等が検討された作業指図書であり、かつ、その範囲内で製造し直すのであれば作り直さなくともよい。
なお、作業指図書を作成し直さない場合の、作業指図書の範囲内であるかどうかの判断や製造し直したことの記録については、第3項や第6項において担保されるものである。
(第62条(改善)関係)
Q18 施行通知では、「この条は、ISO13485の「8.5.1 Improvement-General」に相当するものであること」とあるが、第62条第2項に規定されている「製品受領者が主体的に通知書を発行し、実施する場合において、通知書の発行に必要な情報を製品受領者に提供するときは、この限りでない。」については、ISO13485の要求事項に対しての追加要求事項か。また、製造業者はどのように調査権者に示せば良いか。 |
A18
追加要求事項ではない。薬事法において要求される製造販売業者の業務と整合させるために記載されているものである。
「製品受領者が主体的に通知書を発行し、実施する」ことを調査権者に示す方法としては、その内容が記述された製品受領者と製造業者等との協定書・覚書等、若しくは、製品受領者の承認された「通知書の発行に必要な情報を製品受領者に提供する」ための手順書を示すこと等が考えられる。なお、「通知書の発行に必要な情報を製品受領者に提供する」ための手順書は、通知書の重要性及び本項の要求事項に鑑み、作成することが望ましい。