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○全国建設工事業国民健康保険組合の無資格加入者の資格喪失等の取扱いについて
(平成22年9月13日)
(/保保発0913第2号/保国発0913第1号/年管管発0913第1号/)
(地方厚生(支)局長・都道府県民生主管部(局)国民健康保険主管課(部)長・日本年金機構理事長・全国健康保険協会理事長あて厚生労働省保険局保険課長・厚生労働省保険局国民健康保険課長・厚生労働省年金局事業管理課長通知)
今般、全国建設工事業国民健康保険組合(以下「工事業国保組合」という。)において無資格加入の事例が多数確認されたため、平成22年9月9日、行政処分を行ったところであるが(別添参照)、工事業国保組合における無資格加入者の被保険者資格の喪失等の取扱いについては、下記のとおりとするので、遺漏なきよう取り扱い願いたい。
記
1.工事業国保組合の被保険者資格の喪失
(1) 工事業国保組合の無資格加入者に係る被保険者資格の喪失時期は、工事業国保組合の加入要件を満たさなくなった日の翌日(市町村の行う国民健康保険(以下「市町村国保」という。)又は他の国民健康保険組合に加入することとなる場合は加入要件を満たさなくなった日。当初から工事業国保組合の加入要件を満たしていなかった場合は加入の日。)とし、その日に遡って資格を喪失させる。
ただし、工事業国保組合の加入要件を満たさなくなった日が平成16年3月1日より前の日である場合には、会計法(昭和22年法律第35号)第30条及び補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号。以下「補助金適正化法」という。)第18条第2項の規定に基づき、工事業国保組合が平成16年3月1日以降の診療等に対する医療給付費等に係る国庫補助を返還すべきであることを踏まえ、平成16年3月1日に遡って資格を喪失させるものとする。
(2) 工事業国保組合は、(1)による資格喪失年月日を記載した資格喪失証明書の発行を行い、無資格加入者に交付するとともに、本来加入すべき医療保険者(全国健康保険協会管掌健康保険にあっては年金事務所。(3)において同じ。)に対し資格取得手続を行うよう文書で勧奨する。
(3) なお、既に工事業国保組合において資格喪失処理が行われ、資格喪失証明書が発行されている場合において、当該資格喪失証明書に(1)の取扱いと異なる資格喪失年月日が記載されている場合には、工事業国保組合は、改めて当該無資格加入者に対し、資格喪失年月日を訂正した資格喪失証明書を交付するとともに、現在加入中の医療保険者に対し資格取得手続の訂正を行うよう文書で勧奨する。
2.工事業国保組合における保険料の還付等
(1) 1により無資格加入者の被保険者資格を遡って喪失させた場合、通常であれば、工事業国保組合は、資格喪失後の期間(以下「無資格加入期間」という。)に係る保険料として徴収済のものを当該無資格加入者に還付することになる。
(2) また、無資格加入期間において、工事業国保組合から無資格加入者に対して医療給付等がなされている場合、工事業国保組合は、無資格加入者に対し当該医療給付費等の返還を請求することになる。
(3) しかしながら、今般の行政処分において指摘されたように、工事業国保組合は長年に渡り適切な資格管理を行っておらず、無資格加入期間における事実関係のすべてについて、本来の法律関係に基づいた是正を行おうとした場合、本来加入すべき医療保険者等をはじめとした第三者との法律関係の安定性を大きく損なうこととなる。
このため、行政としては、市町村国保及び健康保険の適用に当たっては、3の(3)から(5)まで並びに4の(1)及び5の(1)並びに7の(3)のとおり、2年を限度として保険料を賦課し(保険税の場合は3年を限度として課税)、療養費を支給する取扱いとするので、工事業国保組合についても、この取扱いを踏まえ、適切な対応を行うよう指導する。
(4) なお、無資格加入者が工事業国保組合に加入することとなった経緯においては、当該無資格加入者を使用する事業主が健康保険法(大正11年法律第70号)の規定に基づく適用除外承認を受けず、又は本来同法が適用されるべき事業所であるにもかかわらず事実を偽って、当該無資格加入者を工事業国保組合に加入させていた実態がある。
このため、工事業国保組合が無資格加入者に対して行う保険料の還付及び医療給付費等の返還請求においては、3の(7)並びに4及び5並びに7の(4)に示すように、遡及して資格を取得させる医療保険者や事業主と十分調整の上、還付手続及び返還手続を行うなど、無資格加入者の負担に対し、配慮を行うよう指導する。
3.市町村国保の遡及適用
(1) 無資格加入者が1の(2)の資格喪失証明書を添付して、市町村国保に対して資格取得届を提出した場合、市町村国保は資格喪失証明書に記載された資格喪失年月日をもって、当該無資格加入者を被保険者とする。
(2) 工事業国保組合に対しては、行政処分により、無資格加入者の氏名、生年月日、性別、住所等のリストを市町村国保に提供するよう命じたので、それに基づき資格取得届等の管理を行い、一定期間経過後も届出等がない場合については、届出を勧奨するなどの必要な措置を講ずる。
(3) 無資格加入者が遡って加入することとなった市町村国保は、当該無資格加入者が納付すべき保険料について2年(保険税の場合は3年)を限度として遡って賦課(課税)し、徴収する。
(4) 無資格加入者が工事業国保組合に対して医療給付費等を返還した場合における療養費の支給については、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)第54条第2項において、「保険者は、・・(中略)・・被保険者が被保険者証を提出しなかったことが、緊急やむを得ない理由によるものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給するものとする」とされており、一般的には、工事業国保組合の加入要件に該当しないことを認識しており、自ら積極的に工事業国保組合に加入していたことが明らかな場合は、「やむを得ない理由」があったとは認められないと考えられる。
しかしながら、今般の行政処分において指摘されたように、工事業国保組合は長年に渡り適切な資格管理を行っていなかったことが認められており、工事業国保組合の加入要件に該当しないことを明確には認識していなかった者が多く、また、認識はあっても他の無資格加入者と同様であれば自らも許容されるものと錯誤していた無資格加入者もいるものと考えられる。このため、市町村国保の判断により、無資格加入者の工事業国保組合への加入経緯等具体的な事情を踏まえ、「やむを得ない理由」を柔軟に認めて、療養費を支給することとして差し支えない。
(5) また、療養費の支給を行う場合に支給対象となる費用の額については、療養費の支給を受ける権利の消滅時効の起算日を認定する必要があるが、一般的には、無資格加入者は、いつでも翻意して本来加入すべき市町村国保の資格を取得し、療養費の支給を受ける権利を行使できたと考えられることから、無資格加入期間における受診行為の都度その翌日から消滅時効が進行するものとし、療養費の支給対象は、療養費の支給申請日から遡って2年前までの受診行為に係る費用の額として取り扱うことが適当である。
(6) 市町村国保において、無資格加入者との間で、保険料(税)の賦課(課税)と療養費の支給を行うことにより負担が生じた場合には、特別な財政需要が生じたと考えられることから、当該市町村国保における無資格加入者に遡及して賦課(課税)する保険料(税)総額と療養費の支給総額の差額について、特別調整交付金を交付する。なお、特別調整交付金の対象となるのは、(5)により、療養費の支給申請日から遡って最大2年前までの受診行為に係る費用に対して療養費の支給を行った場合であり、具体的な算定基準については別途連絡する予定である。
(7) 工事業国保組合に対しては、今般の行政処分の趣旨及び無資格加入者に対する市町村国保の最大2年を限度とした保険料の賦課(保険税の場合は最大3年を限度とした課税)及び療養費の支給の取扱いを十分踏まえ、保険料の還付及び医療給付費等の返還請求に当たるよう指導する。
4.工事業国保組合の療養費の代理受領について
(1) 無資格加入者に対して療養費の支給を行う市町村国保又は全国健康保険協会管掌健康保険(4において「市町村国保等」という。)は、無資格加入者の工事業国保組合に対する医療給付費等の返還の負担を軽減するため、無資格加入者が工事業国保組合との間で療養費の受取につき代理契約を結ぶことにより、当該無資格加入者に代わり、工事業国保組合に対し最大2年分の療養費を支払うことができるものとする。
(2) その場合、工事業国保組合は、1の(2)又は(3)の資格喪失証明書を交付する際に、無資格加入者に支払われる療養費を代理受領する旨記載した契約書(工事業国保組合が療養費を代理受領するための口座番号等を記載したものとする。)を当該無資格加入者と取り交わし、資格喪失証明書を交付することとなる日から最大2年を遡って、当該無資格加入者に係る診療報酬明細書の写しを交付する。
(3) 無資格加入者は、市町村国保に対し、3の(1)の資格取得届の提出と併せ、療養費の支給申請書を提出する。全国健康保険協会管掌健康保険に加入する場合には、年金事務所に対して行われる資格取得手続とは別に全国健康保険協会管掌健康保険に対して療養費の支給申請書を提出する。療養費の支給申請書には、(2)の診療報酬明細書の写し並びに当該療養費の受取を工事業国保組合に委任する旨を記載した委任状及び(1)の代理契約の契約書の写しを添付する。
(4) (3)の療養費の支給申請書を受け付けた市町村国保等は、当該申請日において療養費の支給対象とする費用の額を決定し、工事業国保組合に対し、療養費の支給を行う。
5.工事業国保組合による保険料(税)の代理納付について
(1) 無資格加入者が無資格加入期間において工事業国保組合に支払った保険料については、工事業国保組合が無資格加入者に対し還付することになるが、工事業国保組合は、無資格加入者に代わり、市町村国保において無資格加入者に賦課(課税)される2年分の保険料(保険税の場合は3年分)について、工事業国保組合の2年分(又は3年分)の保険料の範囲内で代理納付することができるものとする。
(2) その場合、工事業国保組合は、1の(2)又は(3)の資格喪失証明書を無資格加入者に交付する際に、工事業国保組合が無資格加入者に対して還付する保険料の額の限度において、無資格加入者の市町村国保の保険料(税)を代理納付する旨記載した契約書(還付する保険料の額を記載したものとする。)を無資格加入者と取り交わす。
なお、市町村国保において賦課(課税)される保険料(税)の額が、工事業国保組合が無資格加入者に還付することとなる保険料の額を下回る場合には、後日、工事業国保組合はその差額を無資格加入者に還付する必要がある。
(3) 無資格加入者は、3の(1)の資格取得届の提出と併せ、市町村国保に対し(2)の契約書の写しを提出する。
(4) 市町村国保は、(3)の契約書の写しの内容を確認し、無資格加入者に賦課(課税)する保険料(税)につき、工事業国保組合から還付される保険料の額を限度として、無資格加入者を納付義務者とする納付書を作成した上で、工事業国保組合に送付する。
(5) 工事業国保組合は、(4)の納付書を使用して保険料(税)を納付する。また、保険料(税)の領収書については、工事業国保組合が無資格加入者に送付する。
(6) なお、市町村国保に納付すべき保険料(税)の額が工事業国保組合から還付される保険料の額を上回る場合には、無資格加入者はその差額を別途市町村国保に納付する必要がある。
6.健康保険の適用除外承認の取扱い
(1) 国民健康保険組合の被保険者に係る健康保険の適用除外承認については、「国民健康保険組合の行う国民健康保険の被保険者に係る政府管掌健康保険の適用除外について(通知)」(平成17年12月15日保国発第1215001号国民健康保険課長及び庁保険発第1215003号社会保険庁運営部医療保険課長通知。以下「平成17年課長通知」という。)(別添)に基づき取り扱われているところであるが、今般の行政処分がなされる前に行われた工事業国保組合の無資格加入者に係る適用除外承認等については、平成17年課長通知を踏まえ、次のとおり取り扱う。
① 政府管掌健康保険(以下「政管健保」という。)又は全国健康保険協会管掌健康保険(以下「協会けんぽ」という。)における被保険者は、健康保険法に則り、事実の発生した日から当然に適用されることとなるため、適用除外承認を受けずに無資格の状態で工事業国保組合に加入していた者については、最大2年遡って政管健保又は協会けんぽに加入することになること。
② その場合、平成17年課長通知の2の(1)の要件に該当しないこととなるため、改めて適用除外承認の申請を行うことはできないこと。
③ また、適用除外承認を受けていない工事業国保組合の無資格加入者が、年金事務所に政管健保又は協会けんぽの新規適用届及び適用除外申請を行い、適用事業所となり適用除外承認が行われていた場合であっても、無資格加入していたことが明らかになった場合には、承認を取り消す必要があり、最大2年遡って政管健保又は協会けんぽに加入することになること。
(2) なお、平成17年課長通知に示されているとおり、本来、政管健保又は協会けんぽの適用事業所となる事業所に使用される者が国民健康保険組合の被保険者となる場合については、適用除外承認がなされて国民健康保険組合の被保険者となるものであり、承認については、原則遡及しない。政管健保の適用除外の申請のあった日が、事実の発生した日から、5日以内である場合又は政管健保の保険者がやむを得ないと認めた場合に限り、事実の発生した日に遡及して承認して差し支えないこととされているが、適用除外承認を受ける機会があったにもかかわらず、申請を行わなかったケースについては、「やむを得ないと認めた場合」には該当せず、遡及して承認することはできない。
今後の工事業国保組合以外の国民健康保険組合の被保険者に係る健康保険の適用除外承認についても、この取扱いを徹底すること。
7.健康保険及び厚生年金保険の遡及適用
(1) 健康保険及び厚生年金保険の適用については、工事業国保組合の勧奨に基づき、当該事業所が遅滞なく、年金事務所に届出を行うことになる。
(2) 工事業国保組合に対しては、行政処分により、無資格加入者が勤務していた事業所名、所在地、無資格加入者名等のリストを日本年金機構に提供するよう命じたところであるが、年金事務所等は、それに基づき届出の進捗管理を行い、一定期間経過後も届書の提出がない場合については、職権適用も含め、必要な措置を講ずる。
(3) 無資格加入者の政管健保又は協会けんぽへの加入については、2年を限度として遡って適用する。無資格加入期間における健康保険料については、年金事務所が2年を限度として遡って徴収し、協会けんぽは当該遡及期間に行われた医療給付に係る療養費の支給等を行う。
(4) 2の(4)でも述べたとおり、工事業国保組合は、今般の行政処分において指摘されたように、適切な資格管理を行っていなかった事実、また、事業主は健康保険法及び国民健康保険法に違反していた事実が認められることから、工事業国保組合に対しては、無資格加入者が(3)により協会けんぽから療養費の支給を受けられない期間における医療給付費等の請求について、工事業国保組合と事業主の間で十分調整の上、無資格加入者の負担とならないよう、十分な配慮をするよう指導する。
(5) 厚生年金保険への加入についても、協会けんぽと同様、2年を限度として遡って適用し、国民年金の被保険者資格については、厚生年金保険の適用をもって喪失する。年金事務所は、無資格加入期間における厚生年金保険料を2年を限度として遡って徴収し、当該遡及期間に納付された国民年金保険料を還付する。
8.国庫補助の返還
(1) 工事業国保組合は、無資格加入者の無資格加入期間の診療等に係る医療給付費等に対して交付された、次の国庫補助について返還しなければならない。
① 療養給付費等補助金(定率補助、普通調整補助金、特別調整補助金の財政調整分)
② 事務費負担金
③ 出産育児一時金補助金
④ 特定健診・保健指導補助金
(2) 返還に当たっては、工事業国保組合が過去に遡って交付申請を修正することとし、修正された交付申請書を東京都経由で厚生労働省に提出する。厚生労働省は、既に交付した国庫補助額と新たに確定する国庫補助額の差額を計算し、補助金適正化法第18条第2項に基づき、工事業国保組合に対し期限を定めて当該差額の返還を命じる。
(3) 工事業国保組合は、納期日までに国庫補助を返還する必要があるが、延滞が生じた場合、補助金適正化法第19条第2項に基づき、納期日の翌日から納期日までの日数に応じ、その未納額につき年10.95%の延滞金が加算されることになる。
(4) 国庫補助の返還命令については、全国調査の結果、これまでに明らかになった無資格加入者を対象として発出することとし、引き続き、行政処分に基づく追加調査により、更に無資格加入者の存在が確認されれば、再度返還命令を発出するものとする。
(別添)
○国民健康保険法第108条第1項の規定に基づく是正改善命令について
(平成22年9月9日)
(厚生労働省発保0909第2号)
(全国建設工事業国民健康保険組合理事長あて厚生労働大臣通知)
厚生労働省関東信越厚生局及び東京都が貴組合に対して実施した国民健康保険法(昭和33年法律第192号。以下「法」という。)第106条第1項の規定による指導検査の結果、下記3のとおり、事業の管理及び執行が法令及び規約に違反している事実が認められたので、法第108条第1項の規定に基づき、下記4の措置を命ずる。
この命令に対する報告を下記4の(1)から(4)まで並びに(6)から(8)まで及び(10)の全国調査分並びに(9)については平成22年10月29日までに、(5)並びに(6)から(8)まで及び(10)の追加調査分については平成22年12月28日までに、東京都知事を経由して文書により提出されたい。また、(11)については、組合会開催後1箇月以内に、議事録等を添付の上、東京都知事を経由して報告されたい。
なお、この処分について不服がある場合には、この処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に、厚生労働大臣に対して異議申立てを行うことができる。
また、この処分に対する取消訴訟については、国を被告として(訴訟において国を代表する者は法務大臣となる。)、この処分があったことを知った日から6箇月以内に提起することができる(処分の日から1年を経過した場合を除く。)。
ただし、異議申立てをした場合には、処分の取消訴訟は、その異議申立てに対する決定があったことを知った日から6箇月以内に提起することができる(決定の日から1年を経過した場合を除く。)。
記
1.法第106条第1項の規定による指導検査日程
平成22年1月25日から28日まで 徳島県支部
平成22年2月9日及び10日並びに3月12日 本部
平成22年3月9日 埼玉県建築支部
2.指導検査により認定した事実
(1) 徳島県支部並びに同支部西部出張所及び南部出張所(以下「徳島県支部等」という。)について
① 加入時の資格確認
徳島県支部では、全国建設工事業国民健康保険組合(以下「工事業国保組合」という。)への加入手続に際して、業界団体である徳島県造園業協会が発行する業種確認証明書により業種確認を行っていたが、同協会では、加入希望者の業種確認を本人からの申出のみに基づき行い、客観的な資料等に基づく確認を行わずに業種確認証明書を発行していた。
西部出張所及び南部出張所においても、それぞれ業界団体である西部建築業協会及び南部建築業協会が発行する業種確認証明書により業種確認を行っていたが、各協会では、加入希望者の業種確認を本人からの申出のみに基づき行い、客観的な資料等に基づく確認を行わずに業種確認証明書を発行していた。
② 規約に定める業種に従事していない者への資格の適用
徳島県支部等の24人の組合員に実際に確認したところ、少なくとも3人は加入当初から全国建設工事業国民健康保険組合規約(昭和45年6月18日制定。以下「規約」という。)に定める建設工事業(建設業法(昭和24年法律第100号)別表第1に定める28業種)に従事していなかった。
③ 加入後の資格確認
組合員の資格については、加入後も定期的に確認することが必要であるが、徳島県支部等の役職員を聴取したところ、組合員資格の確認を適切に行っていなかった。
(2) 埼玉県建築支部について
① 加入時の資格確認
埼玉県建築支部では、工事業国保組合への加入手続に際して、業界団体である埼玉県住宅産業協会が発行する業種確認証明書により業種確認を行っていたが、同協会は、加入希望者については、加入希望者の業種確認を本人からの申出のみに基づき行い、客観的な資料等に基づく確認を行わずに業種確認証明書を発行していた。
② 健康保険適用除外承認を受けていない者への資格の適用
法人事業所は、健康保険法(大正11年法律第70号)第3条第3項に規定する適用事業所(以下「適用事業所」という。)に該当するため、適用事業所の従業員が工事業国保組合に加入するためには、同条第1項第8号又は同条第2項ただし書の規定による承認(以下「健康保険適用除外承認」という。)を受ける必要がある。
しかしながら、埼玉県建築支部においては、保険料引落し口座が法人名義であるにもかかわらず、個人事業所として管理されている事業所や(4)の全国調査において提出された業種証明のための証明書類に記載された事業所名が法人名義となっている事業所が確認された。
これらの事業所について、埼玉県建築支部は健康保険適用除外承認の手続を行っているかどうかの確認をしないまま、工事業国保組合の組合員の資格を適用していた。
③ 健康保険の適用のない事業所を偽装した事業所の従業員への資格の適用
埼玉県建築支部においては、複数の個人事業主とその従業員(以下「個人事業主等」という。)の保険料が同一の法人名義の口座から引き落とされており、当該法人の代表者も個人事業主として扱われている事実が確認され、単一の法人事業所であるにもかかわらず、複数の個人事業所に分割して従業員を加入させている疑いのある事業所があることが確認された。
(3) 本部について
① 健康保険適用除外承認を受けていない者への資格の適用
本部の事業所管理台帳等を碓認したところ、埼玉県建築支部と同様、他の支部においても、法人事業所であるにもかかわらず、健康保険適用除外承認を受けずに工事業国保組合に従業員を加入させている事業所があることが判明した。
② 健康保険の適用のない事業所を偽装した事業所の従業員への資格の適用
本部が作成する保険料徴収決定内訳書を確認したところ、個人事業主等の保険料が同一の法人名義の口座から引き落とされていた。このような状況から、これらの個人事業主等が、同一の法人事業所に従事している可能性があることが推測されるにもかかわらず、何ら確認をしていなかった。また、本部から組合員に送付することとなっている国民健康保険料納入告知書を、これらの個人事業主等に対しては、組合員には送付せず、支部に送付することで済ませていた。
③ 健康保険及び厚生年金保険の適用を回避するための指導
本部は、健康保険適用除外承認及び厚生年金保険の適用が正しく行われるよう支部を指導すべきであるにもかかわらず、平成9年6月12日に開催された健康保険適用除外連絡会議において、健康保険及び厚生年金保険の適用を免れる方法を支部に指導していた。
④ 資格の不適正な処理に対する工事業国保組合の理事等の認識
平成18年6月26日に開催された第2回組合運営正常化委員会では、北海道東支部(当時)、京都府建築支部及び福岡県支部において、法人事業所の従業員を分割し、個人事業所として加入させている実態について、出席者である工事業国保組合の理事及び組合会議員が意見交換を行っており、資格が不適正であることを認識していた。
(4) 平成22年1月31日現在の組合員を対象にした資格確認調査(以下「全国調査」という。)について
平成22年6月30日付け建設国保第135号によると、調査対象の50,743事業所のうち回収済みが49,297事業所(97.2%)、未回収が1,446事業所(2.8%)であった。
また、調査の結果、無資格となったのは7,284事業所、12,252組合員であり、家族等も含めた被保険者数は27,898人であった。
3.法第108条第1項に該当する事実
(1)から(4)までに掲げる事実は、工事業国保組合の事業若しくは財産の管理若しくは執行が法令等に違反し、又は著しく事業の適正な執行を欠くことを示すものであるとともに、工事業国保組合の役員がその事業の管理又は執行を明らかに怠っていることを示すものである。
(1) 規約に定める業種に従事していないにもかかわらず、組合員とされていた者が多数確認されたこと
(2) 健康保険適用除外承認を受けずに工事業国保組合に従業員を加入させている事業所が多数確認されたこと
(3) 本来健康保険が適用されるべき法人事業所でありながら、健康保険の適用のない個人事業所に見せかけて、工事業国保組合に従業員を加入させている事業所が多数確認されたこと
(4) (1)から(3)までの事実について、工事業国保組合の役員は、容易に事実の把握及び改善ができたにもかかわらず、その努力を怠り、何ら適正化を図るための収組を講じなかったこと
4.是正又は改善のため必要な措置
(1) 規約に定める業種に従事していない者が多数加入していた事実について、この事実が発生するに至った経緯及び関与者などの実態を明らかにすること
(2) 健康保険適用除外承認を受けずに工事業国保組合の組合員として従業員を加入させている事業所の存在が各支部で判明した事実について、この事実が発生するに至った経緯及び関与者などの実態を明らかにすること
(3) 本来健康保険が適用されるべき法人事業所でありながら、健康保険の適用のない個人事業所に見せかけて、工事業国保組合に従業員を加入させている事業所が各支部で判明した事実について、この事実が発生するに至った経緯及び関与者などの実態を明らかにすること
(4) 全国調査のうち、確認未了分の組合員資格について早急に確認すること
(5) 平成16年3月以降に加入していた者であって全国調査の対象とならなかった組合員の資格についても追加調査を実施すること
(6) 全国調査及び追加調査の結果、①から③までの事実が判明した組合員及びその者と同一世帯の被保険者(以下「組合員等」という。)の被保険者資格について是正を図ること
① 規約に定める業種に従事していないこと
② 健康保険適用除外承認を受けずに加入していたこと
③ 本来健康保険が適用されるべき法人事業所又は常時5人以上の従業員を使用する個人事業所であったこと
(7) (6)の①の組合員等については、市町村が運営する国民健康保険(以下「市町村国保」という。)に加入することとなるが、各市町村国保の手続きが円滑に行えるよう、組合員等の氏名、生年月日、性別、住所、電話番号等を記載したリストを、各市町村国保に提供すること。
また、医療給付費等の返還が生じる組合員等にあっては、市町村国保において最大2年遡及して療養費の支払いを行うため、資格喪失証明書を交付することとなる日から最大2年を遡って、当該組合員等が受けた医療給付費等ごとの金額及び支払年月日等の情報並びに当該医療給付費等に対応する診療報酬明細書の写し等を、当該組合員等又は各市町村国保に提供すること。
(8) (6)の②及び③の組合員等については、健康保険及び厚生年金保険の適用について、年金事務所に届出を行うよう事業主に対し文書により勧奨するとともに、年金事務所が組合員等の受入処理を効率的に行うことができるよう、組合員が勤務していた事業所名、事業主の氏名、事業所所在地、事業所電話番号、組合員等の氏名、生年月日、性別、住所、電話番号等を記載したリストを、日本年金機構に提供すること。
また、医療給付費等の返還が生じる組合員等にあっては、全国健康保険協会において最大2年遡及して療養費の支払いを行うため、日本年金機構に提供する情報とは別に、資格喪失証明書を交付することとなる日から最大2年を遡って、当該組合員等が受けた医療給付費等ごとの金額及び支払年月日等の情報並びに当該医療給付費等に対応する診療報酬明細書の写し等を、当該組合員等又は全国健康保険協会に提供すること。
(9) 今後、被保険者の資格の適用について、同様の事態の再発を防ぐため、加入時及び加入後の定期的な資格確認が確実に行われるよう、資格確認方法の見直し及び資格確認体制の強化等を含めた再発防止策を講じること。
(10) 全国調査及び追加調査により、(6)の①から③までのいずれかの事実が判明した組合員等について、療養給付費補助金(定率補助、普通調整補助金、特別調整補助金の財政調整分)、出産育児一時金補助金、事務費負担金及び特定健診・保健指導補助金(以下「国庫補助」という。)を受けている場合は、当該組合員等が遡及して工事業国保組合の被保険者の資格を喪失する期間に係る国庫補助の返還が必要となるので、返還のための所要の報告を行うこと。
(11) (1)から(10)までの事項について、速やかに組合会への報告及び組合員への周知を行うこと。
報告等に当たっては、このような事態に至った経緯及び関与者等の実態を含め、本件の顛末をつまびらかに報告すること。
また、報告等を通じて、工事業国保組合の役職員及び組合員に対し、公法人としての役割と責任を再認識させるとともに、組織を挙げて法令遵守に取り組むこと。