添付一覧
○再生・細胞医療に関する臨床研究から実用化への切れ目ない移行を可能とする制度的枠組みについて
(平成23年4月28日)
(/医政発0428第7号/薬食発0428第1号/)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医政局長・厚生労働省医薬食品局長通知)
再生・細胞医療は、臓器機能の再生等を通じて、国民の健康の維持並びに疾病の予防、診断及び治療に重要な役割を果たすことが期待されています。
このような状況の下、再生・細胞医療に関する臨床研究から実用化への切れ目ない移行を可能とする制度的枠組みについて、平成22年4月より「再生医療における制度的枠組みに関する検討会」において検討が行われ、今般、別添1のとおり、報告書がとりまとめられたので、貴管下関係者に周知をお願いします。
なお、医療機関における自家細胞・組織を用いた再生・細胞医療の実施に当たり、関係者が留意すべき要件については、別添2のとおり、「医療機関における自家細胞・組織を用いた再生・細胞医療の実施について」(平成22年3月30日付け医政発0330第2号厚生労働省医政局長通知)を発出しておりますので、貴管下関係者にあらためて周知をお願いします。
[別添1]
再生・細胞医療に関する臨床研究から実用化への切れ目ない移行を可能とする制度的枠組みについて
平成23年3月30日
再生医療における制度的枠組みに関する検討会
はじめに
「再生医療における制度的枠組みに関する検討会」においては、平成21年度「医療機関における自家細胞・組織を用いた再生・細胞医療の実施について」その要件等をとりまとめ、平成22年度は、
「再生医療にふさわしい制度を実現するため、自家細胞と他家細胞の違いや、皮膚・角膜・軟骨・免疫細胞など用途の違いを踏まえながら、現行の法制度にとらわれることなく、臨床研究から実用化への切れ目ない移行を可能とする最適な制度的枠組み」を検討事項として6回にわたり議論を行ってきた。
平成22年度の検討範囲としては、「共同での診療」の範囲を超えた、医療機関外の第三者が製品化する場合で、かつ、自己・同種細胞由来製品とも一定以上の細胞・組織の加工注)を行うものとした。
また、現行の薬事法、医療法といった現行の法制度にとらわれずに制度的枠組みについて検討するため、
○ 有効性・安全性の評価、管理のあり方について
― 個別品目の承認審査・市販後安全対策が必要か
― 行政が承認審査を行うべきか
○ 質の高い製品を迅速に開発する方策について
― 開発初期からの助言・相談について
― 確認申請のあり方
― 臨床研究・治験促進策
― 審査の迅速化・質の向上、評価の指針の明確化等
― その他必要な事項
を中心に議論していくこととした。
検討会では、21年度中に行われた海外調査結果の報告、検討会委員、検討会オブザーバー、海外規制当局等から、上記検討事項を中心にヒアリングを行い、議論を行ってきた。
今般、検討会での議論を踏まえ、有効性・安全性の評価、管理のあり方、質の高い製品を迅速に開発する方策について提言としてとりまとめたので報告する。
なお、再生・細胞医療に関する知見・技術は日進月歩であり、本検討会での様々な意見も踏まえ、引き続き国内外の情報を収集、評価すると共に、より再生・細胞医療に相応しい制度となるよう、本検討会の提言の見直しも含めフォローアップを行うことが必要である。
また21年度の「医療機関における自家細胞・組織を用いた再生・細胞医療の実施について」の中で、再生医療・細胞医療技術の共通的な事項として、医療機関が確保すべき要件をとりまとめており、これについて、医療機関の他、国民に対してもわかりやすく周知するとともに、必要に応じ、更なる対応を検討することが求められる。
注) 疾患の治療や組織の修復又は再建を目的として、細胞・組織の人為的な増殖、細胞・組織の活性化等を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変、非細胞・組織成分との組み合わせ又は遺伝子工学的改変等を施すこと。
目次
1.有効性・安全性の評価、管理のあり方について
2.質の高い製品を迅速に開発する方策について
(1) 開発初期からのPMDAによる助言・相談制度の創設
(2) 確認申請のあり方
(3) 臨床研究・治験促進策
(4) 審査の迅速化・質の向上、評価の指針の明確化等
1) 相談・審査の迅速化・質の向上
2) 評価指針・基準等の作成・明確化
3) 患者数が極めて少ない医薬品・医療機器の審査についての考え方
(5) 開発支援について
1) 希少疾病用医薬品・医療機器(オーファンドラッグ・デバイス)の指定要件の柔軟な運用等
2) ベンチャー企業支援
(6) その他必要な事項
1) 海外規制当局との連携
2) 関係学会との連携
3) その他
1.有効性・安全性の評価、管理のあり方について
○ 欧米では、再生・細胞医療製品について、医療機関外の第三者が製品化する場合は、自己・同種細胞由来製品とも、薬事関連法に基づき、規制当局による個別承認が行われており、米国では生物製剤(biologics)又は医療機器として、EUでは医薬品の一つのカテゴリーとして規制されている。
○ 本検討会では、再生・細胞医療製品について、個別品目の承認審査や安全対策が必要かどうか、必要な場合は行政がこれらの承認審査等を行うべきかについて議論を行った。
○ 細胞の加工により、元となる細胞とは異なる性質を有し、自己細胞由来製品であっても処理工程に付随するリスク、品質の一定性のリスク等が存在することから、品目毎に承認審査や安全対策を行政が行うべきという意見が大勢であった。
○ 一方で、再生・細胞医療製品のうち自己細胞由来製品の加工について、同種由来製品に比べ安全性が高いと考えられること、医師が患者の状態を見ながら医師主導で行われる医療であることから、医療法の政令8業務へ細胞加工業を追加し、医療法の枠内で施設認定する、又は、薬事法の枠内で医薬品・医療機器とは独立した新たなカテゴリーを創設し、第Ⅰ相臨床試験において数例で安全性確認ができたら速やかに製造販売承認を行い、加工プロセスを認可する制度とし、その後に事後チェックを十分に行う体制とすべきではないかとの意見も出された。
○ これに対し、自己細胞由来製品は安全で同種細胞由来製品は問題という理由はウイルス感染等の点を除けばなく、自己細胞由来製品であっても同種細胞由来製品と同様に、品目毎に安全性、有効性等をエビデンスに基づき議論することが必要である、問題が起こってからでは遅いので、事前に確認すべきことは確認する必要がある、医療行為と製品化は区別すべきで、品目の有効性・安全性等をいかに確保すべきかを考えた場合、品目毎に行政が承認等を行うことが必要、との意見が出された。
○ これらの議論を踏まえ、本検討会では、我が国における再生・細胞医療製品の有効性・安全性の評価、管理については、自己細胞由来製品、同種細胞由来製品とも、品目毎に行政による承認審査、安全対策等が必要であることを確認した。
○ 個別品目毎に品質、安全性、有効性を確認し、市販後の安全対策及び製造管理・品質管理を行政が行う点に関し、新しい法体系の下に行うか、薬事法の下で行うかについて、品目毎に行政による承認及び安全対策を行う点は現行の薬事法による規制体系と同じであることから、薬事法の下で行うことが現実的と判断した。
なお、自家細胞由来の医療に関しては、医師が治療法を決め、患者との契約において細胞を採取した段階で実質品目承認が行われており、薬事法で上乗せの品目承認は必要ではないのではないか、現行の薬事法は再生・細胞医療を想定しておらず、自己細胞由来の再生・細胞医療製品の規制を行うことはできないとの意見も出された。
○ また、評価を行う機関について、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」という。)以外の機関をつくるべきとの意見も出されたが、新たな機関を指定/設立することは体制整備、質の確保などを考えると現実的ではなく、PMDAの審査・相談等の対応姿勢・質の向上を進めていくべきとした。
○ なお、自己細胞由来、同種細胞由来製品は、元となる細胞由来のウイルス等の感染性因子の評価、管理の点等で異なることから、これまでも、「ヒト(自己)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について」、「ヒト(同種)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について」等の指針をその由来により分けるなどの取扱いを行ってきた。また、対象となる疾患、その重篤性などにより、個別製品の評価なども異なることから、これまでも、次世代医療機器評価指標(重症心不全細胞治療用細胞シート、角膜上皮細胞シート、角膜内皮細胞シート、関節軟骨再生)などを作成してきたところである。
その評価、管理手法等については、自己細胞、同種細胞など細胞の違い、対象・目的等の違いにより個別に判断することが必要である(2.(4)2)参照)。
2.質の高い製品を迅速に開発する方策について
○ 再生医療のいち早い実現化のため、文部科学省、厚生労働省、経済産業省は、文部科学省が新たな再生医療技術に関する基礎研究を推進する、経済産業省が再生医療の実現化を支える産業基盤を構築する、厚生労働省が再生医療の臨床研究の推進を行うといった、各省が協働で実施する「再生医療の実現化ハイウェイ」を平成23年度に予算に盛り込んだところである。これにより、3省が連続的に支援を実施することが可能な仕組みを構築し、基礎研究から臨床研究へのシームレスかつ迅速な移行を可能とすることで、再生医療をいち早く実現化することを目指しており、これらの取組みを着実に進めることが重要である。
○ 本検討会では、製品の品質、安全性、有効性を維持しつつ、必要な製品が迅速に開発されるための制度改正、支援策などの方策について検討を進めた。
(1) 開発初期からのPMDAによる助言・相談制度の創設
○ 再生・細胞医療製品の開発の早期段階は、我が国では研究者が主導して行われることが多く、品質、非臨床試験などを経て、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に基づく確認を受けて臨床研究が行われる。その後の製品開発を効率的に進めるためには、承認審査等を担う規制当局と開発早期の段階から必要なデータ等について調整していくことが有用であるが、現在のPMDAの相談ではそのような相談を対象としたものは設けられていない。
○ 欧米では、日本のように臨床研究、治験の区別が無く、開発初期の段階から行政による相談事業が実施されており、また相談料・アクセス面等から、開発者にとって相談が受けやすい取組みがなされている。
・ FDA(Food and Drug Administration):pre-IND(Investigational New Drug)相談、pre-IDE(Investigational Device Exemption)相談(無料)
・ EMA(European Medicines Agency):中小企業、先端医療製品は相談料の割引(仏、独、英国でも相談事業を実施)
・ PEI(Paul Ehrlich Institute):イノベーションオフィスでの相談
○ 我が国においても、再生・細胞医療製品の開発を促進するためには、PMDAが、製品の開発初期の段階から開発者に対し、薬事法での承認に必要なデータの範囲やその取得に向けての指導・助言を含めた相談事業を行うこと、また、特に再生・細胞医療製品の分野では、開発初期段階は研究者やベンチャー企業が関わることが多いことから、研究者やベンチャー企業が利用しやすいように相談料を安く設定すること等が必要であることを確認した。
○ 本確認事項も踏まえ、厚生労働省は平成23年度予算にもり込まれた薬事戦略相談事業を事業化し、その活用を図ることが重要である。
○ 薬事戦略相談では、現在の確認申請で行われている品質・安全性に関する事項だけでなく、治験のプロトコールの議論も合わせて行うこと、また、PMDAは相談を受付けた後の早い段階から、関係する専門家に意見を求め、対面で相談する場合は、相談者、PMDA、関係する複数の専門家が同席して議論し、相談の議事録は仮に意見が一致しない点はその旨を記載するなどして、関係者の合意の上で作成すべきである。
再生・細胞医療製品に関しては専門家が限られる場合が想定される。相談にあたって適切な専門家がPMDAの既存の専門委員に含まれていない場合は、新たな専門委員を追加するなどの対応も必要である(2.(6)2)参照)。なお、専門家が適切に選出されるよう、必要とされる専門性を考慮し、利益相反について透明性を確保することが重要である。
また、下記のように確認申請が薬事戦略相談により代替されることとなるが、スムーズな代替が行われるよう、厚生労働省は、確認申請との相違点を含め、薬事戦略相談について周知し、確認申請制度の廃止と薬事戦略相談事業の実施の間に空白期間が生じないよう十分に留意すべきである。さらに、既に確認された品目及び確認申請中の品目の取扱いを明確にし、特に、確認申請と薬事戦略相談を重複して課すことのないよう十分に留意すべきである。
(2) 確認申請のあり方
○ 再生・細胞医療製品に係る確認申請は、平成11年より導入された制度であり、人又は動物由来の細胞・組織を利用した組織工学・細胞治療技術の急速な発展に対応し、このような治療技術に利用される人又は動物由来の細胞・組織を加工した医薬品・医療機器の品質及び安全性を確保することを目的としている。現在までに、13件が申請され、このうち9件が確認されている。
○ 確認では、治験開始にあたっての必要データについて審査側と協議することができる等のメリットがある一方で、治験開始に近い確認申請時点でデータの不足が指摘された場合、新たなデータ取得に時間がかかり、開発が遅延する等の問題が指摘されている。
○ また、確認申請は欧米にはない日本独自の制度であり、欧米では主に治験に先立つ事前相談で問題点を整理している。
○ 確認申請については、
・ 制度導入時と比較して経験が蓄積し、明確なリスクについては対応可能となっていること
・ 「ヒト(自己)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について」、「ヒト(同種)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について」等の指針が整備されてきていること
・ 薬事戦略相談の中で開発初期から相談を行うことで、確認申請で行われている品質、安全性の確認について、開発の早い段階から問題点を整理した上で得られたデータの確認を行うなど、前倒しして実施することが可能となること
等を踏まえて、確認申請制度については廃止し、薬事戦略相談に代替することが適当であることを確認した。
○ 治験開始に向け治験届が提出された際には支障なく治験実施が認められるよう、治験開始までに必要とされるデータ等について、もれなく薬事戦略相談を活用して事前に確認しておくように周知を図るべきである。併せて、治験届の際にデータ等が不足している場合は治験実施が認められないこともあらためて周知すべきである。なお、治験届の調査は30日となっているが、仮に調査に支障が生じるような場合は、行政機関が保有する情報の公開に関する法律を参考に、調査期間延長について条文に加えるなどの検討も必要ではないかとの意見も出された。
○ また、治験前の品質及び安全性の確認にあたっては未知のリスクは排除しきれないものであるが、薬事戦略相談においても、経験を蓄積し、専門家と協議しつつ適切に対応し、その質的向上に不断の努力を傾注すべきである。
(3) 臨床研究・治験促進策
○ 個別品目の有効性、安全性を評価するためには、臨床試験データは必須であり、臨床研究、治験の促進が重要である。
○ 我が国においては、臨床研究には、研究計画の内容に応じて「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」、「臨床研究に関する倫理指針」等の各指針が適用され、治験には医薬品・医療機器の臨床試験の実施の基準(GCP:Good Clinical Practice)が適用される。GCPでは、承認申請の資料として試験結果が利用されることから、モニタリング、監査、データの保管義務など、データの信頼性の確保に関する規定がより厳密となっている。
○ 欧米では我が国のような臨床研究と治験の区別はなく、原則として臨床試験にはGCPが適用されている。また、GCP対応の臨床試験が可能なように、医療機関側の臨床試験実施体制が整備され、また、医療機関間のネットワークなどで、臨床試験の届出など必要な手続きについての支援体制や、研究費が充実している。
○ 我が国においてすべての臨床研究にもGCPを適用してはどうかという意見もあるが、現状では欧米と同様に原則すべての臨床研究にGCPを適用するのではなく、臨床研究・治験の特色を生かしつつ進めることが効率的であるとの指摘もなされた。
○ 我が国においては再生・細胞医療製品の開発は研究者主導で行われる場合が多く、それらのデータを可能な限り早期に承認申請に活用していくために、開発の方向性、仕様等が固まった段階から医師主導治験で行うことが効率的である。現状では、医療機関の実施体制が不十分、費用負担が大きい等の課題があるが、実施医療機関の体制整備費、治験薬の製造、プロトコール作成、データ管理業務、治験相談等の費用を補助する等の支援、さらには研究費の拡充を行うことで、医師主導治験が更に活用されることが必要である。
○ 臨床研究であっても、保険併用の対象(第3項先進医療、いわゆる高度医療)とするには、高度医療評価会議の第三者によるチェックが必要となり、一定の科学性、データの信頼性が担保される。そのため臨床研究は速やかに高度医療または治験に移行し、高度医療は速やかに治験に移行することが望まれる。出口を見据えた開発を行うことが重要であり、高度医療のデータについても、薬事戦略相談等を利用して製品開発における位置づけを早期から明確にし、速やかな開発につなげるべきである。
○ 文部科学省では平成23年度予算において、「橋渡し研究加速ネットワークプログラム」を推進することとしている。全国7か所の大学等の研究機関に、GCPに準拠した臨床研究を行うための体制を整備するとともに、出口を見据え、医師主導の治験又は高度医療として臨床研究を実施することにより、必要なデータをより早く効率的に収集するなど、日本発の医薬品・医療機器等の迅速な開発を目指す。
○ 厚生労働省では、世界に先駆けて臨床試験を実施し、日本発の革新的な医薬品・医療機器を創出することを目指し、「早期・探索的臨床試験拠点整備事業」により、早期・探索的臨床試験段階の支援を行うため、平成23年度予算に盛り込んだところであり、事業の円滑な実施が求められる。
○ 我が国のGCPは国際的に調和されたICH-GCP(ICH:International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)に基づいている。しかしながらその運用面においては欧米と比べて負担が多いとの指摘もある。厚生労働省ではこれまでも「治験のあり方に関する検討会報告書」(平成19年)等を踏まえ、治験契約の規定の見直しなどその改善を図ってきた。今後とも治験の実施状況を見つつ、必要な改善を検討していくことが必要である。
○ 我が国の臨床研究/治験に患者が参加しやすくなるよう、治験に対する患者の理解普及、情報伝達が必要である。厚生労働省では、患者・国民に対する臨床研究・治験の普及啓発と、臨床研究・治験に関する情報伝達を改善するため、患者・国民への情報提供のためのポータルサイトとして臨床研究(試験)情報検索(Japan Primary Registries Network)を構築するなどの取組みを行ってきた。臨床研究・治験の透明性を確保し、被験者保護とその質が担保されるよう、引き続きこれらの取組みを進めていくことが重要である。
○ また、臨床研究/治験ではインフォームドコンセントが必要である。適切なインフォームドコンセントが行われるよう、臨床研究/治験依頼者又は実施者は、必要な情報を医療関係者、被験者に届けることが必須である。
(4) 審査の迅速化・質の向上、評価の指針の明確化等
1) 相談・審査の迅速化・質の向上
○ よりよい製品をより早く承認するためには、相談・審査体制の充実強化が必要である。PMDAは平成19年に再生・細胞医療製品等の審査を担当する生物系審査第二部を新設し、体制の強化を行ってきたが、引き続き薬事戦略相談を含めて、相談体制、審査体制の充実強化を行っていくことが必要である。
○ 再生・細胞医療製品には新たな技術が用いられたり、新たな指標が利用されたりすること等から、人員の拡充だけでなく、評価にあたる審査官の人材育成も重要である。FDAでは最新技術を習得するための特別の研修はないが、審査官が研究も行い、関連学会へ積極的に参加するなどにより最新技術への対応を図っている。PMDAは、審査員の関連学会への参加や医療現場での経験等により最新の研究状況を把握したり、可能な範囲で積極的な産学官の人事交流により、ベンチャー企業を含む企業等の開発現場のノウハウを理解したりするなど、研修事業を充実していくべきである。
○ 再生・細胞医療製品については、米国では生物製剤あるいは医療機器、EUでは医薬品の一分類として規制されている。我が国では米国と同様の考え方により医薬品か医療機器に分類して規制している。しかしながら再生・細胞医療製品によっては医薬品、医療機器に分類することが容易でないものもある。米国ではそのため、コンビネーションプロダクト課(Office of Combination Products)を設け、開発初期の段階から開発者の求めに応じて医薬品、生物製剤、医療機器の分類、審査担当センターの指定を行い、その後の開発、相談、審査が効率的に行えるよう取組んでいる。なお、複数のセンターにまたがる場合は、担当するセンターに他の関係するセンターが協力し、相談、審査にあたっている。我が国においても、今後の開発を支援するために、開発初期の段階から分類について相談を受け付ける相談窓口の設置を検討すべきである。
○ また、相談・審査の迅速化、サービス向上のために、審査機関の競争原理を導入してほしいという意見も出され、PMDAは相談・審査の迅速化及び質の向上、サービス向上に更なる努力をしていく必要がある。
2) 評価指針・基準等の作成・明確化
○ 再生・細胞医療製品は化学合成の医薬品や一般的な機械器具とは異なり、品質、安全性、有効性について既存の基準や評価を当てはめることが困難な場合があることが指摘されている。そのため例えば、自己細胞由来製品、同種細胞由来製品といった原料となる細胞の違い、皮膚・角膜・軟骨・免疫細胞など用途の違いを踏まえながら、再生・細胞医療製品の特性も考慮した評価指標、指針・基準の明確化が必要である。
○ 厚生労働省ではこれまでも、品質・安全性の関連では、「ヒト(自己)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について」、「ヒト(同種)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について」、次世代医療機器評価指標(重症心不全細胞治療用細胞シート、角膜上皮細胞シート、角膜内皮細胞シート、関節軟骨再生)などを作成してきたが、未だ不十分であるとの指摘がある。評価指針・基準等の作成により再生・細胞医療製品の品質・安全性等について考え方を明らかにすることが、その開発計画の策定にも資することから、ES、iPS細胞由来製品など原料となる細胞や、歯根膜など対象分類に応じた、評価指針等の作成を迅速に進めていくことが必要である。なお、評価指針・基準等の運用にあたっては、その時点での学問の進歩を反映した合理的根拠に基づき、ケースバイケースで柔軟に対応することが必要である。
3) 患者数が極めて少ない医薬品・医療機器の審査についての考え方
○ 米国では対象患者数が4千人以下の医療機器について、人道的使用医療機器免除規定(HDE:Humanitarian use Device Exemption)がある。この規定では、まず申請に基づき人道的使用医療機器(HUD:Humanitarian Use Device)として指定を受け、必要なデータ収集がなされた後、HDE承認審査においては、他の治療法や医療機器がないこと、不合理なあるいは重大なリスクが生じず、予想される便益(Probable Benefit)がリスクを上回ると判断される場合、有効性の要件(有効性を証明する科学的に確実な臨床試験(scientifically valid clinical investigations)結果)が免除される。なお、承認後は治験審査委員会(IRB:Institutional Review Board)のある施設でIRBの承認が必要などの制限がある。
○ 我が国ではHDEという制度はないが、米国においてHDEで承認された同一の医療機器を追加の臨床試験無く審査を行った例があるなど、日本国内での臨床試験だけでなく、海外での臨床試験成績やその他の情報、市販後の安全対策などを総合して、リスクベネフィットの判断を行い、承認の可否を決定している。
○ 再生・細胞医療製品では、対象患者数が極めて少ないものが多いと考えられることから、患者数が極めて少ない医薬品・医療機器について審査の考え方を以下のように整理した。
患者数が極めて少ない医薬品・医療機器の審査についての考え方 ○ 薬事法において医薬品や医療機器は、その使用によるベネフィットがリスクを上回ると判断される場合に承認される。その評価には、臨床試験成績は必須であるが、医薬品又は医療機器によっては対象となる患者数が少ないため、大規模な臨床試験が実施困難な場合がある。このような場合は、我が国において実施可能な臨床試験を行い、その結果や、海外臨床試験成績その他の情報、市販後の情報収集計画や安全対策、疾患の重篤性、既存療法との比較等を含めて、リスクベネフィットをケースバイケースで総合的に評価する。 ○ なお、臨床試験の患者数や実施方法などについては、対象疾患、対象患者など個々の製品により異なることから、個別にPMDAの治験相談などで意見交換し、確認することが必要である。 ○ 市販後の対策としては、例えば、製造販売後臨床試験、全症例の登録による製造販売後調査、有効性・安全性のデータを引き続き収集中であること等について医療関係者や患者への情報提供などが考えられる。これらを必要に応じ承認条件として付すことで、市販後の情報収集、医療関係者、患者への情報提供、必要な対策を迅速にとると共に、保健衛生上の危害防止を図ることとする。 |
(5) 開発支援について
1) 希少疾病用医薬品・医療機器(オーファンドラッグ・デバイス)の指定要件の柔軟な運用等
○ 希少疾病用医薬品・医療機器については、指定を受けることにより、優先的な治験相談・審査の実施、申請手数料の減額、再審査期間の延長、試験研究費への助成金の交付、税制措置上の優遇措置を受けることが可能となり、その開発を促進している。
○ 希少疾病用医薬品・医療機器の指定においては、①対象患者数が本邦において5万人未満であること、②難病等、重篤な疾病を対象とするとともに、ア) 代替する適切な医薬品等又は治療方法がないこと、又は、イ) 既存の医薬品等と比較して、著しく高い有効性又は安全性が期待されるなど、特に医療上の必要性の高いものであること、③対象疾病に対して当該医薬品を使用する理論的根拠があるとともに、その開発に係る計画が妥当であるとみとめられることの3点を指定要件としている。
○ このうち「開発の可能性」に関して、医薬品では海外での臨床試験成績を含めて探索的試験結果をもとに判断することが一般的である。
○ 再生・細胞医療製品については、第Ⅰ相から第Ⅲ相といった臨床開発のステージを明確に分けることが困難となる場合が考えられるため、画一的な取扱いはせず、指定にあたっての開発の可能性の取扱いについては柔軟な運用が必要である。
○ さらには再生・細胞医療製品は希少疾病等を対象としたものが多いと考えられ、その開発を促進するために、希少疾病用医薬品・医療機器を開発するための試験研究費の助成金の充実などを進めていくべきである。
2) ベンチャー企業支援
○ 米国ではベンチャーキャピタルなどがベンチャー企業の活動を広く支援しているが、我が国ではこれらの活動が活発ではない。
○ 我が国では、産業革新機構が投資を中心とする活動を通じて、次世代産業・新興企業の育成と蓄積、既存企業の革新を通じた次世代産業の成長をめざした事業を行っている。再生・細胞医療製品関係ベンチャーへの投資インセンティブを促すような基盤整備等が必要である。
○ 多くの創薬ベンチャーについては、単に資金だけの問題ではなく、事業化プロセスのグランドデザイン、治験プロトコール設計、資金調達時の事業計画、知的所有権の範囲とその帰属についての検討が十分になされていないなどの課題があるとの見解が産業革新機構から示された。一方、それらの指導を含めて対応することが産業革新機構に求められるものであり、対応が不十分ではないかとの意見も出された。
○ また、将来的に事業として育ち、グローバルに展開していくようなものへ投資を行うことも求められる。
○ 特に、再生・細胞医療製品の分野では開発初期段階は研究者やベンチャー企業が関わることが多いことから、経済面等からベンチャー企業等がPMDAの相談を受けやすい制度を検討すべきである。(2.(1)参照)
(6) その他必要な事項
1) 海外規制当局との連携
○ 本検討会では米国FDA、独国PEI、仏国AFSSAPS(Agence Francaise de Securite Sanitaire des Produits de Sante)から専門家を招聘し、海外での取組み等を聴取した。再生・細胞医療製品についてはFDA、EMAなど海外規制当局も必要な基準等の整備を進めているところであり、我が国を含めた関係国との情報交換等が進められている。今後、海外規制当局とも協調しつつ必要な基準等の作成を進めていくべきである。
○ 我が国はFDA、EC/EMAなどと医薬品等の守秘情報に関しての協力を結んでおり、これまでも医薬品、医療機器の審査、安全性情報の交換を行っている。再生・細胞医療製品についてもこの協力の下で審査、安全性情報の迅速な交換を進めていくべきである。
2) 関係学会との連携
○ 再生・細胞医療製品については開発初期の段階では主に研究者により開発が進められる。これらの製品開発を進め、また、PMDAによる相談・審査が円滑に進められるためには、開発状況、懸念点の把握や共有が重要であり、そのための関係学会と規制当局との意見交換の場を設けることが有用である。
例えば、PMDAは日本再生医療学会と関心事項について継続的に意見交換を行うことで合意し、すでに意見交換を開始しており、このような取組みを積極的に行っていくことが重要である。
○ 再生・細胞医療製品の多くは対象患者が少なく、また、治療に関わる専門家も限られる。薬事戦略相談、治験相談(申請前相談含む)、承認申請後の専門協議において、必要とされる専門家を確保していくため、専門家の把握とPMDAのプール委員の人材の育成を学会と連携して進めるべきである。
3) その他
○ 質の高い再生・細胞医療製品の実用化のためには、企業、医療機関、学会、行政等の関係者すべてが、科学技術の進展等に対応できるよう、努力を重ねること必要であるとともに、我が国の技術が国際的にも広く発信できるよう、イノベーションを促進する支援体制の整備が求められる。
○ 承認取得がゴールではなく保険収載までが製品開発のパッケージであることを認識すべきである。
「再生医療における制度的枠組みに関する検討会」委員名簿
座長 永井良三 東京大学大学院医学系研究科循環器内科 教授
阿曽沼元博 国際医療福祉大学国際医療福祉総合研究所 教授
伊藤たてお 日本難病・疾病団体協議会代表
稲垣明弘 日本歯科医師会 常務理事
小澤洋介 株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング 代表取締役社長
片倉健男 国立医薬品食品衛生研究所 スーパー特区対応部門
神山美智子 弁護士
木村壮介 独立行政法人 国立国際医療研究センター 病院長
澤芳樹 大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 心臓血管外科学 教授
鈴木和博 国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部長
高杉敬久 日本医師会 常任理事
土屋文人 社団法人 日本薬剤師会 副会長
花井十伍 ネットワーク医療と人権 理事
早川堯夫 近畿大学薬学総合研究所長
前川平 京都大学医学部附属病院 輸血細胞治療部 教授
武藤誠太郎 アステラス製薬株式会社 執行役員 研究本部副本部長
毛利善一 日本ケミカルリサーチ株式会社 取締役執行役員 開発本部長
森尾友宏 東京医科歯科大学・大学院・発生発達病態学分野・准教授,細胞治療センター長
大和雅之 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 教授
[別添2]
○医療機関における自家細胞・組織を用いた再生・細胞医療の実施について
(平成22年3月30日)
(医政発0330第2号)
(各都道府県知事・各政令市長・各特別区長あて厚生労働省医政局長通知)
再生・細胞医療は、臓器機能の再生等を通じて、国民の健康の維持並びに疾病の予防、診断及び治療に重要な役割を果たすことが期待されている。
今般、先端的な医療である再生・細胞医療が有効性及び安全性の高い形で患者に提供され、普及していくよう、医療機関における自家細胞・組織を用いた再生・細胞医療の実施に当たり、関係者が留意すべき要件を別添のとおり定めたので、貴管下関係者へ周知方御配慮願いたい。
なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定による技術的な助言であることを申し添える。
(別添)
医療機関における自家細胞・組織を用いた再生・細胞医療の実施について
再生・細胞医療(ヒトの細胞・組織を採取し、加工した上で、移植又は投与を行う医療をいう。以下同じ。)は、臓器機能の再生等を通じて、国民の健康の維持並びに疾病の予防、診断及び治療に重要な役割を果たすことが期待されている。
今般、先端的な医療である再生・細胞医療が有効性及び安全性の高い形で患者に提供され、普及していくよう、医療機関(医療法(昭和23年法律第205号)第1条の5に定める「病院」又は「診療所」をいう。)における自家細胞・組織(患者本人の細胞・組織をいう。)を用いた再生・細胞医療の実施に当たり、関係者が尊重すべき要件を定めることとする。
0.初めに
① 実施する再生・細胞医療技術の内容に応じて、有すべき施設、設備等は異なることから、各技術に共通的な事項として、医療機関が確保すべき最低限の要件について定める。
② 医師法(昭和23年法律第201号)、歯科医師法(昭和23年法律第202号)、医療法等の法令やガイドライン等医療一般に適用される事項を遵守することは当然のことであることから、再生・細胞医療に固有に求められる事項を中心に定める。特に、再生・細胞医療を研究として実施する場合には、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」(平成18年厚生労働省告示第425号)、「臨床研究に関する倫理指針」(平成20年厚生労働省告示第415号)等に基づき実施する必要がある。
③ 現段階での再生・細胞医療の実態等を踏まえ、主として、薬事法(昭和35年法律第145号)に基づく承認取得や保険適用をした上で幅広く実施される以前の段階において必要とされる要件を定める。
④ 再生・細胞医療における科学的進歩や経験の蓄積は日進月歩であることから、本要件を一律に適用したり、本要件の内容が必要事項すべてを包含しているとみなすことが必ずしも適切でない場合もある。したがって、個々の再生・細胞医療の実施や評価に際しては、本要件の目的を踏まえ、科学的原則やその時点の学問の進歩を反映した合理的根拠に留意しつつ、ケース・バイ・ケースで柔軟に対応することが必要である。
⑤ 本要件は、科学技術の進歩、関連制度の見直し状況等を勘案して、必要に応じ見直しを行うこととする。
第1章 基本的な考え方
① 再生・細胞医療の一般化や普及を図ることが目的であり、そのためには、再生・細胞医療は先端的な医療ではあるが、いかに有効性及び安全性の高い形で提供されるかという患者の視点から考えることが重要である。
② 複数の医療機関において共同で実施する場合においても、加工の段階が分断されるのではなく、細胞・組織の採取から、加工、搬送、移植又は投与までに至る各過程が一貫して複数の医療機関により実質的に管理されていることが必要である。共同での医療の実施は、複数の医療機関の関係者が1つのチームとなり、当該関係者がすべての患者の症例を把握しているなど十分な連携体制(顔の見える関係)の中で実施されることが必要である。
* 「細胞・組織の加工」とは、疾患の治療や組織の修復又は再建を目的として、細胞・組織の人為的な増殖、細胞・組織の活性化等を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変、非細胞・組織成分との組み合わせ又は遺伝子工学的改変等を施すことをいう。(「ヒト(自己)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について」(平成20年2月8日付け薬食発第0208003号厚生労働省医薬食品局長通知))
③ インフォームド・コンセントについても、細胞・組織の採取から、加工、搬送、移植又は投与までに至る一貫したものが必要であるとともに、医療機関は患者がインフォームド・コンセント時の説明を理解できるよう支援するよう努めることが重要である。
④ 一般に医療については、臨床研究の段階から企業が加わり利用が拡大していく段階まで、対象患者が拡大するにつれて、上乗せの要件が求められる。
第2章 総則
再生・細胞医療を1つの医療機関で一貫して実施する場合には以下の要件によるものとする。
1.再生・細胞医療提供の体制等の在り方
① 医療機関の細胞加工施設(以下、「CPC」という。)において加工された細胞・組織等は、薬事法に基づき有効性及び安全性が評価されたものではないことから、医療機関は、ヒト幹細胞由来であるか否かにかかわらず、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」において求められている体制を有するなど、医療機関として管理・責任体制を明確にするとともに、同指針において求められている安全対策等を講じた上で再生・細胞医療を実施することが求められる。
② 再生・細胞医療の実施については、医療機関としての管理・責任体制を明らかにするために、倫理審査委員会の承認を求めることが必要である。
* 倫理審査委員会に求められる役割:製造・品質管理等に関する手順書や搬送方法の承認、それらが適切に守られているかの確認、依頼医療機関において実施された患者についての有効性や安全性に関する情報の集約、当該技術を継続する妥当性の検証、問題事例への対応の検討 等
③ 再生・細胞医療は、医療機関内の複数の医療関係者の連携のもと実施されるものであることから、医療関係者が連携し、患者の診療情報を共有した上で、患者の治療や治療後のモニタリングを実施することが必要である。例えば、主治医を中心としてカンファレンスを実施した上で治療方針や重大な事態が生じた場合の対応の決定等を行う必要がある。
2.再生・細胞医療の実施の判断及び細胞・組織の採取
① 患者に再生・細胞医療を実施するか否かの判断に当たっては、病状、年齢、同意能力等を考慮し、慎重に検討する必要がある。
② 採取段階における安全対策等については、「ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬品等の品質及び安全確保について」(平成12年12月26日付け医薬発第1314号厚生省医薬安全局長通知)及び「ヒト(自己)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について」の規定するところによるものとする。
3.加工・品質管理体制
① 細胞・組織の加工を行う医療機関は、病院や特定機能病院に限定すべきではなく、有効性、安全性及び品質確保のために下記の要件を満たしている医療機関であればよい。
② 細胞・組織の加工は、必ずしも医師又は歯科医師が行う必要はないが、医療の一環として、当該医療機関の医師又は歯科医師の実質的な監督の下で実施することが必要である。
③ CPCの施設の要件
○ 加工した細胞・組織の品質の確保のために、細胞加工室、品質検査室、細胞管理室を有するなど必要な構造設備を備える必要があるとともに、脱衣室と着衣室を別に設けるなど、交差汚染を防止するために必要な対策を講じておく必要がある。
○ 電気冷蔵庫、電気冷凍庫、培養器、顕微鏡、安全キャビネット、モニタリング用機器など、細胞・組織の加工及び保存に必要な設備を有する必要がある。
○ 製品管理、品質管理、バリデーション等について、製造管理の手順に関する文書、品質管理の手順に関する文書、衛生管理の手順に関する文書、教育訓練の手順に関する文書等を定めるとともに、これらに基づき適切に製造管理及び品質管理を行う必要がある。
④ CPCの人員の要件
○ 製造管理責任者、品質管理責任者、細胞培養責任者及び細胞検査責任者の配置が必要である。
○ 少なくとも製造管理責任者と品質管理責任者は分けることが必要である。
○ 細胞・組織の加工を監督する医師又は歯科医師、品質管理、製造管理等の責任者及び実施者には十分な知識・経験が必要である。
⑤ 加工・品質管理の在り方については、「治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬GMP)」(平成20年7月9日付け薬食発第0709002号厚生労働省医薬食品局長通知)、「ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬品等の品質及び安全性確保について」及び「ヒト(自己)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について」に規定するところによるものとする。
4.移植又は投与
○ 移植又は投与の段階においては、十分な安全対策等を行う必要がある。
5.情報管理及び記録の保存
○ 再生・細胞医療に関する記録を良好な状態の下で、少なくとも10年間保存しなければならない。
6.有効性、安全性など治療効果の評価
① 評価療養(健康保険法(大正11年法律第70号)第63条第2項第3号に規定する「評価療養」をいう。以下同じ。)の対象でない再生・細胞医療や薬事法に基づく承認取得や保険適用がされていない再生・細胞医療は、まずは研究として実施することが必要である。
実施後は、実施した再生・細胞医療に関する成績について、医療機関は査読のある学術雑誌へ寄稿し評価を受けるなど、第三者の評価を受けた上でホームページで公表することが必要である。
なお、情報公開を行う上では、効果が認められた症例の紹介だけではなく、他の治療を受けた集団と再生・細胞医療を受けた集団の生存期間の延長効果を比較した情報を公開するなど、客観的な有効性及び安全性に関する情報を公開することが必要である。
② 治療を目的とする再生・細胞医療であって、研究段階で一定の評価を得たものについては、先進医療(「厚生労働大臣の定める評価療養及び選定療養」(平成18年厚生労働省告示第495号)第1条第1号に規定する「先進医療」をいい、高度医療評価制度を含む。以下同じ。)や治験といった評価療養の枠組みの中で、行政の一定の関与の下、有効性及び安全性について更なる評価をすることが必要である。
③ 先進医療として実施し、一定の評価が得られた再生・細胞医療については、速やかに治験や薬事承認、保険適用につなげていくことが必要である。
④ さらに、保険の対象とならない予防や美容を目的とする再生・細胞医療は、先進医療の対象とならないため、実施医療機関において、より一層有効性及び安全性の確保に万全を期すとともに、特に有効性及び安全性の評価についてインフォームド・コンセントを徹底した上で実施することが必要である。
第3章 複数の医療機関において共同で再生・細胞医療を実施する場合の要件
再生・細胞医療の実施初期には、1つの医療機関において、患者への移植等や細胞の培養・加工が一貫して行われるが、一定の有効性及び安全性の評価が行われた後には、複数の医療機関において共同で同じ再生・細胞医療を実施することが考えられる。複数の医療機関において共同で再生・細胞医療を実施する場合には、第2章の要件に加えて、以下の要件を満たすことが必要である。
1.再生・細胞医療提供の体制等
① 第2章1②に規定する倫理審査委員会は、各々の医療機関が固有のものを設置し、有効性や安全性、品質に関する情報を共有するためにも、互いの医療機関で開催される際には、少なくとも互いの倫理審査委員会で行われた議論の内容がわかるような書面を提示し、相手の医療機関における実施体制等について理解することが必要である。その上で、相手側の倫理審査委員会の要請がある場合には、医療機関の関係者が出席し、各医療機関における実施体制等について説明を行うことが必要である。
② 第2章1③に規定する医療関係者の連携については、複数の医療機関において共同で一体となって再生・細胞医療を実施する場合には、特に重要であり、患者の診療情報を両医療機関の関係者が共有した上で、患者の治療や治療後のモニタリングを共同で実施し、各々の医療機関で記録を保存することが必要である。例えば、主治医を中心として両医療機関の医師又は歯科医師の参加によるカンファレンスを実施した上で治療方針や重大な事態が生じた場合の対応の決定等を行うことが必要である。
③ 両医療機関の関係者は、長期間にわたって、共同で有効性や安全性に関して患者をフォローすることが必要である。
④ 両医療機関の医師又は歯科医師は、実施する再生・細胞医療に関する知識・技能(細胞・組織の加工に関する事項を含む。)を有することが必要である。
⑤ 第2章3③に規定する製造管理、品質管理、バリデーション等に関することについても、あらかじめ両医療機関で共有することが必要である。
⑥ 医療機関が加工を実施した細胞・組織を他の医療機関に提供する場合には、一定の有効性及び安全性が確認されたものが提供されるべきである。したがって、加工を実施する医療機関についても、少なくとも十分な有効性及び安全性が確立されていない段階(臨床研究や評価療養)においては、細胞・組織の加工のみに特化することなく、自ら実際にこれを用いた医療を実施し、十分な評価を行っていることが求められる。
⑦ 第2章6①に規定する実施した再生・細胞医療に関する成績の評価やホームページでの公表については、複数医療機関で連携して実施する必要がある。
2.搬送
① 搬送には、採取した細胞・組織の搬送と加工したものの搬送があるが、いずれも温度、気圧、無菌性のバリデーション、搬送時間の管理などが重要である。
② 両医療機関においては、これらの条件を含め、品質が確保されるよう適切に検証し、搬送体制についても明確に定めておくことが必要である。
③ 専用の搬送容器の開発や搬送の担当者の教育が前提となる。