添付一覧
○雇用保険法等の一部を改正する法律等の施行について
(平成21年3月30日)
(厚生労働省発職第0330003号)
(各都道府県労働局長あて厚生労働事務次官通知)
(公印省略)
「雇用保険法等の一部を改正する法律」については、第171回通常国会において、平成21年3月27日に可決成立し、本日、平成21年法律第5号として公布され、また、「雇用保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令」が、本日、平成21年政令第64号として公布され、それぞれ同年3月31日から施行されることとなった。
この雇用保険法等の一部を改正する法律等は、雇用失業情勢の悪化の影響として、派遣労働者や契約社員の雇止めなどの雇用調整の動きが拡大する中で、雇用保険制度のセーフティネット機能を強化することが必要であるとともに、雇用失業情勢の悪化等の影響を深刻に受ける者等への支援を重点的に強化し、安定した雇用に向けて、早期再就職をより一層促進することが緊急の課題となっていることを踏まえ、(1)非正規労働者に対するセーフティネットの機能の強化、(2)再就職が困難な場合の支援の強化、(3)安定した再就職へのインセンティブの強化、(4)育児休業給付の見直し及び(5)雇用保険料率の引下げを行うこと等を内容とする雇用保険法等の改正を行うものである。
その主たる内容は下記のとおりであるので、その趣旨を十分理解の上、その施行に万全を期せられたく、通達する。
記
第1 雇用保険法等の一部を改正する法律関係
1 改正の趣旨
雇用保険制度については、現下の厳しい雇用失業情勢により、労働市場においては、派遣労働者、パートタイム労働者、契約社員等の非正規労働者が増大する中で、特に、これら非正規労働者の雇用調整の動きの急速な拡大として顕在化し、非正規労働者に大きく影響を与えつつある。
一方で、雇用保険制度については、平成19年までの雇用失業情勢の改善傾向及びこれまでの制度改正等を受け、平成19年度決算における収支状況は改善しているが、雇用失業情勢の更なる悪化が見込まれる中で、今後支出が大幅に増加することも予想されるところである。
このような状況の中で、平成20年10月30日には、政府全体として生活支援策の強化のための経済対策が決定され、雇用保険についても、セーフティネット機能の強化等とあわせ、家計緊急支援対策の一環として、国民(家計と企業)の負担軽減の観点から、平成21年度限りの雇用保険料率の引下げについて、関係審議会において労使と十分協議した上で検討、結論を得ることとされたところである。
これを受けて労働政策審議会(雇用保険部会)において議論を行った結果を踏まえ、雇用保険制度としても、財政の健全性を維持しつつ、非正規労働者の増大にも対応しうる雇用のセーフティネットとして有効に機能するようにするとともに、雇用失業情勢の悪化等の影響を深刻に受ける者等への支援を重点的に強化し、安定した雇用に向けて、早期再就職をより一層促進することが緊急の課題となっていることから、当面の緊急対策としての暫定的な措置も含め、雇用保険制度の機能強化を中心とした見直しを行うこととしたものである。
2 雇用保険法の一部改正
(1) 特定理由離職者の区分の創設
期間の定めのある労働契約が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないこと(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。)その他やむを得ない理由により離職したものとして厚生労働省令で定める者を特定理由離職者として定義したこと。(法第13条第3項関係)
(2) 受給資格要件の緩和
特定理由離職者に該当する者については、解雇、倒産等の場合と同様に、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あれば受給資格を得られることとしたこと。(法第13条第2項関係)
(3) 基本手当の支給に関する暫定措置
特定理由離職者のうち、厚生労働省令で定める者について、当該受給資格者(法第22条第2項に規定する身体障害者等の就職困難者を除く。)を特定受給資格者とみなして、特定受給資格者と同じ給付日数で基本手当を支給することとしたこと。(平成24年3月31日までの暫定措置、法附則第4条関係)
(4) 給付日数の延長に関する暫定措置
特定受給資格者及び特定理由離職者(厚生労働省令で定める者に限る。)のうち、離職者の年齢や雇用失業情勢の地域差等を考慮し、①の対象者に対して、個別に給付日数を延長する(以下「個別延長給付」という。)こととしたこと。(平成24年3月31日までの暫定措置、法附則第5条関係)
① 対象者
イ、ロのいずれかに該当する者
イ (イ)、(ロ)のいずれかに該当する者であって、厚生労働省令で定める基準に照らして就職が困難な者であると公共職業安定所長が認めたもの
(イ) 基準日において45歳未満である者
(ロ) 厚生労働省令で定める基準に照らして、特に雇用失業情勢が厳しい地域として厚生労働大臣が定める地域の求職者
ロ イのほか、公共職業安定所長が、厚生労働省令で定める基準に照らして当該受給資格者の知識、技能、職業経験その他の実情を勘案して再就職のための支援を計画的に行う必要があると認めた者
② 延長日数
個別延長給付の日数は60日(被保険者期間が20年以上で、35歳以上45歳未満(法第23条第1項第3号イ)及び45歳以上60歳未満(法第23条第1項第2号イ)である場合には30日)とすることとしたこと。
(5) 就業促進手当に関する暫定措置
再就職手当について、要件を緩和するとともに、給付率を、所定給付日数の3分の1以上残して再就職した者については支給残日数の40%、3分の2以上残して早期に再就職した者については支給残日数の50%を支給することとしたこと。(平成24年3月31日までの暫定措置、法附則第9条関係)
〈現行〉
残日数が (「1/3以上」かつ「45日以上」) → 残日数×日額×30%
〈暫定措置〉残日数が 「1/3以上」 → 残日数×日額×40%
残日数が 「2/3以上」 → 残日数×日額×50%
(6) 育児休業基本給付金と育児休業者職場復帰給付金の統合
育児休業期間中に休業開始時の30%相当額を支給する育児休業基本給付金と、職場復帰後6か月経過した場合に休業開始時賃金の10%(平成22年3月31日までの暫定期間は、20%)を一時金で支給する育児休業者職場復帰給付金を統合し、育児休業給付金として全額を育児期間中に支給することとしたこと。(法第61条の4関係)
(7) 育児休業者職場復帰給付金に関する暫定措置
平成22年3月31日に期限が到来する育児休業者職場復帰給付金の給付率の引上げの暫定措置を育児休業給付金に係る暫定措置とし、当分の間、延長することとしたこと。(この措置により、統合後の給付率は50%、法附則第12条関係)
(8) その他
その他所要の規定の整備を行うこととしたこと。
2 労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正
(1) 雇用保険料率の改正
雇用保険料率を、平成21年度の1年間に限り、1000分の11.5(うち失業等給付に係る率1000分の8)(農林水産業及び清酒製造業については1000分の13.5(同1000分の10)、建設業については1000分の14.5(同1000分の10))とし、失業等給付に係る弾力条項の規定は適用しないこととすることとしたこと。(法第11条関係)
(2) その他
その他所要の規定の整備を行うこととしたこと。
3 船員保険法の一部改正
特定理由離職者の区分の創設、失業保険金の支給に関する暫定措置、失業保険金の給付日数の延長に関する暫定措置、就業促進手当に関する暫定措置、失業部門の保険料率の引き下げに関する暫定措置等について、雇用保険法と同様の改正を行うこととしたこと。(法第33条ノ3、法附則第26項、法附則第31項、法附則第32項から第35項、法附則第36項及び第37項等関係)
4 その他
(1) 施行期日
この法律は、平成21年3月31日(育児休業給付金に関する規定については平成22年4月1日)から施行することとしたこと。(附則第1条関係)
(2) 経過措置
この法律の施行に関し以下のような経過措置を定めることとしたこと。(附則第2条から第6条まで関係)
イ 受給資格に係る離職の日が施行日前である基本手当の受給資格については、なお従前の例によることとしたこと。(附則第2条関係)
ロ 個別延長給付に関する規定は、受給資格に係る離職の日又は所定給付日数に相当する日数分の基本手当の支給を受け終わる日が施行日以後である者について適用することとしたこと。(附則第3条関係)
ハ 改正後の育児休業給付に関する規定は、施行日以後に育児休業を開始した者について適用し、施行日前に改正前の育児休業を開始した者については、なお従前の例によることとしたこと。(附則第4条関係)
(3) その他関係法律の一部改正等
その他関係法律について所要の規定の整備を行うこととしたこと。(附則第7条から第20条まで関係)
第2 雇用保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令関係
1 雇用保険法施行令の一部改正
2以上の延長給付が行われる場合の受給期間の調整について、延長給付の種類に個別延長給付を追加することとしたこと。(令附則第3条)
2 船員保険法施行令の一部改正
延長給付の調整に関する暫定措置について、雇用保険法と同様の改正を行うこととしたこと。(令附則第6条関係)
3 関係政令の整備
その他関係政令について所要の整備を行うこととしたこと。
4 施行期日
この政令は、平成21年3月31日から施行することとしたこと。