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○雇用保険法等の一部を改正する法律等の施行について

(平成15年4月30日)

(発職第0430003号)

(各都道府県労働局長あて厚生労働事務次官通知)

(公印省略)

「雇用保険法等の一部を改正する法律」については、第156回通常国会において、平成15年4月25日に可決成立し、同月30日に平成15年法律第31号として公布され、また、「雇用保険法施行令等の一部を改正する政令」が、同日に平成15年政令第216号として公布され、それぞれ同年5月1日から施行されることとなった。

この雇用保険法等の一部を改正する法律等は、厳しい雇用失業情勢が長期化する中で、経済社会の構造的変化に的確に対応し、雇用保険制度の安定的運営を確保するため、給付について①早期再就職の促進、②多様な働き方への対応、③再就職の困難な状況に対応した重点化を図るとともに、保険料率について労使負担の急増の緩和に配慮した上で、制度の安定的運営のために必要最小限の引上げを行うこと等を内容とする雇用保険法等の改正を行うものである。その主たる内容は下記のとおりであるので、その趣旨を十分理解の上、その施行に万全を期せられたく、通達する。

第1 雇用保険法等の一部を改正する法律関係

1 改正の趣旨

雇用保険制度については、厳しい雇用失業情勢の長期化等により、受給者が増加する一方で保険料収入が減少し、極めて厳しい財政状況にあり、こうした財政状況や雇用就業形態の多様化の進展等制度をめぐる諸情勢に的確に対応し、失業した労働者の生活の安定及び再就職の促進を図るとともに、将来にわたり安定的な運営を確保しうるものとしていくことが求められているところである。

このため、給付について、受給者の早期再就職の促進及び多様な働き方への対応の観点からの見直し、再就職の困難な状況に対応した重点化等を図るとともに、保険料率について、労使負担の急増を緩和する配慮をした上で、必要最小限の引上げを行う等の措置を講ずることとしたものである。

2 雇用保険法の一部改正

(1) 求職者給付受給者の責務

求職者給付の支給を受ける者は、必要に応じ職業能力の開発及び向上を図りつつ、誠実かつ熱心に求職活動を行うことにより、職業に就くように努めなければならないこととしたこと。(雇用保険法第10条の2関係)

なお、この規定は、雇用保険法上求職者給付受給者に当然に求められる責務を確認的に規定したものであり、この規定が設けられたことにより失業の認定のあり方に影響を与えるものではない。

(2) 返還命令等の金額の引上げ等

イ 偽りその他不正の行為により失業等給付の支給を受けた場合に納付を命ずることのできる金額を当該失業等給付の額の2倍に相当する額以下の金額とすることとしたこと。(雇用保険法第10条の4第1項関係)

ロ 偽りその他不正の行為により失業等給付の支給を受けた者と連帯して不正受給額の返還及び納付額の納付を命ぜられる対象として、職業紹介事業者等を加えることとしたこと。(雇用保険法第10条の4第2項関係)

(3) 一般被保険者の求職者給付の改正

イ 失業認定の方法

失業の認定は、受給資格者が求人者に面接したこと、公共職業安定所、職業紹介事業者等から職業を紹介され、又は職業指導を受けたことその他求職活動を行ったことを確認して行うこととしたこと。(雇用保険法第15条第5項関係)

ロ 基本手当の日額の算定方法の変更

基本手当の日額を、受給資格者の年齢及び賃金日額の区分に応じて、次の表に定めるとおりとすることとしたこと。(雇用保険法第16条関係)

年齢

賃金日額

基本手当の日額

60歳未満

2,140円以上4,210円未満

賃金日額に100分の80を乗じて得た額

 

4,210円以上12,220円以下

賃金日額に100分の80から100分の50までの範囲で賃金日額の逓増に応じ、逓減するように厚生労働省令で定める率を乗じて得た額

 

12,220円超

賃金日額に100分の50を乗じて得た額

60歳以上65歳未満

2,140円以上4,210円未満

賃金日額に100分の80を乗じて得た額

 

4,210円以上10,950円以下

賃金日額に100分の80から100分の45までの範囲で賃金日額の逓増に応じ、逓減するように厚生労働省令で定める率を乗じて得た額

 

10,950円超

賃金日額に100分の45を乗じて得た額

ハ 賃金日額の上限額等の変更

賃金日額の上限額を受給資格者の年齢に応じ、次の表に掲げる額とし、下限額を2,140円とすることとしたこと。(雇用保険法第17条第4項関係)

年齢

賃金日額の上限額

60歳以上65歳未満

15,580円

45歳以上60歳未満

16,080円

30歳以上45歳未満

14,620円

30歳未満

13,160円

ニ 所定給付日数の変更

(イ) 所定給付日数を、被保険者であった期間に応じて、次の表に定めるとおりとすることとしたこと。(雇用保険法第22条第1項関係)

被保険者であった期間

20年以上

10年以上20年未満

10年未満

 

150日

120日

90日

(ロ) (イ)にかかわらず、就職困難者に係る所定給付日数は、受給資格者の年齢及び被保険者であった期間に応じて、次の表に定めるとおりとすることとしたこと。(雇用保険法第22条第2項関係)

 

被保険者であった期間

1年以上

1年未満

年齢

 

 

 

45歳以上65歳未満

360日

150日

45歳未満

300日

150日

(ハ) (イ)にかかわらず、特定受給資格者に係る所定給付日数は、特定受給資格者の年齢及び被保険者であった期間に応じて、次の表に定めるとおりとすることとしたこと。(雇用保険法第23条第1項関係)

 

被保険者であった期間

20年以上

10年以上20年未満

5年以上10年未満

1年以上5年未満

1年未満

年齢

 

 

 

60歳以上65歳未満

240日

210日

180日

150日

90日

45歳以上60歳未満

330日

270日

240日

180日

90日

35歳以上45歳未満

270日

240日

180日

90日

90日

30歳以上35歳未満

240日

210日

 

 

 

30歳未満

180日

180日

120日

90日

90日

ホ 訓練延長給付に関する暫定措置

35歳以上60歳未満である受給資格者のうち、公共職業安定所長が指示した公共職業訓練等を受け終わってもなお職業に就くことができず、かつ、再就職を容易にするために公共職業訓練等を再度受けようとするものであると認められるものに対しては、政令で定める日までの間、当該公共職業訓練等を受け終わった後の失業している日について、所定給付日数を超えて基本手当を支給することができることとしたこと。(雇用保険法附則第4条関係)

(4) 高年齢継続被保険者の求職者給付の改正

高年齢求職者給付金の額を、被保険者であった期間に応じて、次の表に定める日数分の基本手当の額に相当する額とすることとしたこと。(雇用保険法第37条の4関係)

被保険者であった期間

1年以上

1年未満

 

50日

30日

(5) 就職促進給付の改正

イ 就業促進手当の創設

(イ) 職業に就いた受給資格者((ロ)に該当する者を除く。)であって当該職業に就いた日の前日における基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上であるもののうち、厚生労働省令で定める要件に該当するものに対して、現に職業に就いている日(受給期間内に基本手当の支給を受けることができることとなる日があるときに限る。)について、基本手当の日額(その金額が12,220円に100分の50を乗じて得た金額(受給資格に係る離職の日において60歳以上65歳未満である受給資格者にあつては、10,950円に100分の45を乗じて得た金額)を超えるときは、当該金額とする。以下「基本手当日額」という。)に10分の3を乗じて得た額を支給することとしたこと。

この場合において、当該就業促進手当を支給した日数に相当する日数分の基本手当を支給したものとみなすこととしたこと。(雇用保険法第56条の2関係)

(ロ) 安定した職業に就いた受給資格者であって当該職業に就いた日の前日における基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上であるもののうち、厚生労働省令で定める要件に該当するものに対して、基本手当日額に、支給残日数に相当する日数に10分の3を乗じて得た数を乗じて得た額を支給することとしたこと。

この場合において、当該就業促進手当の額を基本手当日額で除して得た日数に相当する日数分の基本手当を支給したものとみなすこととしたこと。(雇用保険法第56条の2関係)

(ハ) 安定した職業に就いた受給資格者(当該職業に就いた日の前日における基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1未満又は45日未満である者に限る。)、特例受給資格者又は日雇受給資格者であって、身体障害者その他の就職が困難なものとして厚生労働省令で定めるもののうち、厚生労働省令で定める要件に該当するものに対して、基本手当日額(特例受給資格者については基本手当の受給資格者とみなした場合に支給されることとなる基本手当日額とし、日雇受給資格者については日雇労働求職者給付金の日額とする。)に30を乗じて得た額を限度として厚生労働省令で定める額を支給することとしたこと。(雇用保険法第56条の2関係)

ロ 就業促進手当の支給を受けた場合の特例

イの(ロ)に係る就業促進手当の支給を受けた者であって、当該就業促進手当の支給を受けた後の最初の離職(新たに受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格を取得した場合における離職を除く。以下「再離職」という。)の日が受給期間内にあり、かつ、再離職が倒産等に伴うものである者として厚生労働省令で定めるもの又は解雇その他の厚生労働省令で定める理由により再離職したものについて、受給期間を延長することとし、延長する期間は、次の(イ)の期間から(ロ)の期間を差し引いた期間とすることとしたこと。(雇用保険法第57条関係)

(イ) 離職日の翌日から再離職の日までの期間に、20日以下の範囲内で厚生労働省令で定める日数及び職業に就いた日の前日における支給残日数から就業促進手当の支給により基本手当を支給したものとみなされた日数を差し引いた日数を加えた期間

(ロ) 延長前の受給期間

ハ 就業促進手当に相当する給付との調整

イの(イ)又は(ロ)の要件に該当する受給資格者が、就業促進手当に相当する給付の支給を受けることができる場合について、就業促進手当等と所要の調整を行うこととしたこと。(雇用保険法附則第7条関係)

(6) 教育訓練給付の改正

教育訓練給付金について、その支給の対象となる一般被保険者(高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者以外の被保険者をいう。以下同じ。)又は一般被保険者であった者を、教育訓練を開始した日までの間に同一の事業主の適用事業に引き続いて被保険者(高年齢継続被保険者を除く。)として雇用された期間が3年以上である者とし、支給額を、当該教育訓練の受講のために支払った費用の額に100分の20以上100分の40以下の範囲内において厚生労働省令で定める率を乗じて得た額(厚生労働省令で定める額を上限とする。)とすることとしたこと。(雇用保険法第60条の2関係)

(7) 雇用継続給付の改正

イ 高年齢雇用継続基本給付金の改正

高年齢雇用継続基本給付金は、支給対象月において一般被保険者に支払われた賃金の額が、当該一般被保険者を受給資格者と、当該一般被保険者が60歳に達した日を受給資格に係る離職の日とみなした場合に算定されることとなる賃金日額に相当する額(以下「みなし賃金日額」という。)に30を乗じて得た額の100分の75に相当する額を下った場合に支給するものとし、高年齢雇用継続基本給付金の額は、各支給対象月に支払われた賃金の額に100分の15(当該賃金の額がみなし賃金日額に30を乗じて得た額の100分の61に相当する額以上であるときは、みなし賃金日額に30を乗じて得た額に対する当該賃金の額の割合が逓増する程度に応じ、100分の15から一定の割合で逓減するように厚生労働省令で定める率)を乗じて得た額とすることとしたこと。(雇用保険法第61条関係)

ロ 高年齢再就職給付金の改正

高年齢再就職給付金は、支給対象月において支払われた賃金の額が、受給資格を取得したときに算定した賃金日額に30を乗じて得た額の100分の75に相当する額を下った場合に支給するものとし、高年齢再就職給付金の額は、イと同様の方法により算定して得た額とすることとしたこと。(雇用保険法第61条の2関係)

ハ 高年齢再就職給付金と就業促進手当との調整

高年齢再就職給付金の支給を受けることができる者が、同一の就職につき(5)のイの(ロ)に係る就業促進手当の支給を受けることができる場合において、その者が、当該就業促進手当の支給を受けたときは高年齢再就職給付金を支給せず、高年齢再就職給付金の支給を受けたときは当該就業促進手当を支給しないこととしたこと。(雇用保険法第61条の2第4項関係)

(8) 報告徴収の対象の追加

報告徴収の対象に、受給資格者等を雇用しようとする事業主及び職業紹介事業者等を加えることとしたこと。(雇用保険法第76条第2項関係)

(9) その他

その他所要の規定の整備を行うこととしたこと。

2 労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正

(1) 雇用保険率の改正

雇用保険率を1000分の19.5(うち失業等給付に係る率1000分の16)(農林水産業及び清酒製造業については1000分の21.5(同1000分の18)、建設業については1000分の22.5(同1000分の18))とすることとしたこと。(労働保険の保険料の徴収等に関する法律第12条第4項関係)

ただし、平成17年3月31日までの間については、雇用保険率を1000分の17.5(うち失業等給付に係る率1000分の14)(農林水産業及び清酒製造業については1000分の19.5(同1000分の16)、建設業については1000分の20.5(同1000分の16))とすることとしたこと。(労働保険の保険料の徴収等に関する法律附則第9条関係)

(2) 雇用保険率の弾力的変更の範囲の改正

労働保険特別会計の雇用勘定の積立金の状況による雇用保険率の変更は、1000分の17.5から1000分の21.5まで(農林水産業及び清酒製造業については1000分の19.5から1000分の23.5まで、建設業については1000分の20.5から1000分の24.5まで)の範囲で行うこととしたこと。(労働保険の保険料の徴収等に関する法律第12条第5項関係)

ただし、平成17年3月31日までの間については、雇用保険率の変更は、1000分の15.5から1000分の19.5まで(農林水産業及び清酒製造業については1000分の17.5から1000分の21.5まで、建設業については1000分の18.5から1000分の22.5まで)とすることとしたこと。(労働保険の保険料の徴収等に関する法律附則第9条関係)

(3) その他

その他所要の規定の整備を行うこととしたこと。

3 船員保険法の一部改正

求職者給付受給者の責務、求職者給付の改正、就業促進手当の創設、教育訓練給付の改正、雇用継続給付の改正、報告徴収の対象の追加等について、雇用保険法と同様の改正を行うこととしたこと。(船員保険法第9条第2項、第33条ノ2ノ2、第33条ノ12第1項、第33条ノ15ノ2、第33条ノ16ノ4、第34条等関係)

4 その他

(1) 施行期日

この法律は、平成15年5月1日から施行することとしたこと。(附則第1条関係)

(2) 経過措置

この法律の施行に関し以下のような経過措置を定めることとしたこと。(附則第2条から第22条まで関係)

イ 受給資格に係る離職の日が施行日前である基本手当の受給資格者(以下「旧受給資格者」という。)に係る基本手当の日額、賃金日額及び所定給付日数については、なお従前の例によることとしたこと。(附則第3条及び第4条関係)

ロ 改正後の雇用保険法第56条の2の規定は、施行日以後に職業に就いた受給資格者等に対する就業促進手当の支給について適用し、施行日前に職業に就いた受給資格者等に対する改正前の雇用保険法の規定による再就職手当の支給又は常用就職支度金の支給については、なお従前の例によること等としたこと。(附則第8条関係)

ハ 施行日前に教育訓練を開始した者に対する教育訓練給付金の支給については、なお従前の例によることとしたこと。(附則第10条関係)

ニ 60歳に達した日(その日において新雇用保険法第61条第1項第1号に該当する場合にあっては、同号に該当しなくなった日)が施行日前である被保険者に対する高年齢雇用継続基本給付金の支給及び施行日前に安定した職業に就くことにより被保険者となった旧受給資格者に対する高年齢再就職給付金の支給については、なお従前の例によること等としたこと。(附則第11条関係)

ホ 改正後の労働保険の保険料の徴収等に関する法律附則第9条の規定は、施行日以後の期間に係る労働保険料について適用し、施行日前の期間に係る労働保険料については、なお従前の例によることとしたこと。(附則第14条関係)

ヘ 施行日以後平成17年3月31日までの期間に係る被保険者の負担すべき一般保険料の額については、厚生労働大臣が労働政策審議会の意見を聴いて定める一般保険料額表により計算することができることとしたこと。(附則第15条関係)

(3) 労働保険特別会計法その他関係法律の一部改正等

イ 労働保険特別会計法の一部改正

失業等給付費を支弁するために必要があるときは、政令で定める日までの間、雇用安定資金を雇用勘定に受け入れて使用することができることとしたこと。(附則第34条関係)

ロ 関係法律の整備

その他関係法律について所要の規定の整備を行うこととしたこと。(附則第23条から第33条まで及び附則第35条から第42条まで関係)

第2 雇用保険法施行令等の一部を改正する政令関係

1 雇用保険法施行令の一部改正

(1) 訓練延長給付に関する暫定措置の期限を平成20年3月31日とすることとしたこと。(附則第3条関係)

(2) 就業促進手当に相当する給付との調整の期限を平成17年3月31日とすることとしたこと。(附則第4条関係)

2 船員保険法施行令の一部改正

職業補導延長給付に関する暫定措置の期限を平成20年3月31日とすることとしたこと。

3 労働保険特別会計法施行令の一部改正

雇用安定資金の使用に関する特例措置の期限を平成20年3月31日とすることとしたこと。

4 施行期日

この政令は、雇用保険法等の一部を改正する法律の施行の日(平成15年5月1日)から施行することとしたこと。

5 関係政令の整備及び経過措置

その他関係政令について所要の整備を行うとともに、その施行に関し必要な経過措置を定めることとしたこと。