添付一覧
○「臨床研究において用いられる未承認医療機器の提供等に係る薬事法の適用について」に関する質疑応答集(Q&A)について
(平成23年3月31日)
(薬食監麻発0331第7号)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長通知)
臨床研究において用いられる未承認医療機器の提供等については、「規制改革推進のための第3次答申」(平成20年12月22日規制改革会議)で「薬事法の適用範囲の明確化を図るためのガイドラインを作成すべき」とされ、これを受け、昨年3月に「臨床研究において用いられる未承認医療機器の提供等に係る薬事法の適用について」(平成22年3月31日薬食発0331第7号。以下「通知」という。)を発出し、医師が主体的に実施する妥当な臨床研究への未承認医療機器の提供等には薬事法の適用がないことを明確化した。
さらに、医師等の臨床研究に企業等が参加する場合等もあることから、平成22年度においては、こうした事例について、「薬事法の適用範囲を明確にするQ&Aを作成し、周知する」(平成22年6月18日閣議決定「規制・制度改革に係る対処方針について」)とされているところである。
今般、別添のとおり質疑応答集(Q&A)を作成したので、貴下関係業者、団体等に対する周知方御取り計らいの上、薬事法適用の適正な判断の実施につき御配慮願いたい。
(別添)
(適応外の目的で使用される臨床研究)
問1 「未承認医療機器の提供等」には、承認等された医療機器が適応外の目的で使用される臨床研究への提供等も含まれるか。 |
答
含まれる。
(企業等側での倫理審査委員会)
問2 企業等側での倫理審査委員会の審査は必要か。 |
答
企業等側の倫理審査委員会において、提供する未承認医療機器の安全面、品質面等とともに、当該研究の倫理面、安全面等を十分に確認すること。なお、企業内に倫理審査委員会がない場合等については、開発・営業部門から独立した品質管理部門や監査部門等において、これらの確認を行うことでも差し支えない。いずれの場合においても、医療機関等における倫理審査委員会の情報等を活用するなど、十分な確認が可能な体制となるよう留意すること。
(研究計画の立案への企業等の参加)
問3 「医師等が自ら臨床研究の計画を立案」とはどのように考えればよいか。また、医師等と企業等が共同して臨床研究の計画を作成することは可能か。 |
答
医師が主体的に責任をもって、研究の目的、評価項目、被験症例数等の臨床研究の実施内容を立案することが「医師等が自ら臨床研究の計画を立案」に該当する。ただし、医師等が主体的に研究計画を立案する上で必要な情報を提供することや医師等の求めに応じて助言するなど、企業等が研究計画の作成に参加することは可能である。
なお、臨床研究は、医師等が主体となり、医療機関等の倫理審査委員会の承認と監督に基づき実施されるよう「臨床研究に関する倫理指針」にて定められていることを留意されたい。
(複数の医師が共同で実施する臨床研究)
問4 複数の医師等が共同で実施する臨床研究は、「医師等が主体的に実施する妥当な臨床研究」に該当するか。 |
答
通知の要件を満たす場合、医師等が主体的に実施する妥当な臨床研究に該当する。なお、通知別添3.に記載のある「被験症例数、使用回数等の実施方法及び実施期間等は、臨床研究の内容(実施目的)に即してあらかじめ合理的に設定されたものであり、かつ、提供等される未承認医療機器の数量が実施目的に照らして必要な範囲内にとどまるものであること」について留意すること。
(臨床研究終了後の疾病の治療等を目的とした使用を防止するために必要な措置)
問5 「反復継続して使用が可能な機械器具にあっては、当該臨床研究の終了後に、返却又は廃棄すること」とあるが、臨床研究に使用される未承認医療機器を医療機関に実費相当で販売した場合、所有権が医療機関側に移行するため、提供者側から廃棄を要請することは困難であると考えられる。 こうした場合、臨床研究に使用される未承認医療機器に「臨床研究以外の使用は不可」、「臨床研究終了時には廃棄のこと」等の表示をするとともに、未承認医療機器の引渡しの際の売買契約等の文書に「臨床研究終了時には医療機関の責任で適切に廃棄すること」等を明記することにより臨床研究終了後の反復使用を防止することでよいか。 |
答
よい。
(未承認医療機器の提供及び返却の記録の保管期間)
問6 「未承認医療機器の提供者は、提供及び返却の記録を適切に保管・管理すること」とあるが、保管は具体的にどの程度の期間行う必要があるか。 |
答
未承認医療機器の提供等については、その形態が様々であるため、一律に保管期間を定めることは困難であるが、将来的に規制当局より未承認医療機器の提供状況の確認を求められる可能性があること、不具合等による健康被害の発生に備えた提供記録の保管が必要であること等を鑑み、臨床研究の終了後も、一定期間、提供及び返却の記録を適切に保管すること。なお、別途法令等で保存期間が定められている場合、法令等で定められた期間以上の保管を行う必要がある。
(未承認医療機器の使用状況や遵守状況の把握)
問7 「提供先の医療機関において、本考え方への遵守状況に問題等がある場合には、提供の停止、回収等の適切な対応を速やかに取ること」とあるが、未承認医療機器の提供者は、提供先の医療機関での未承認医療機器の使用状況や遵守状況を把握する必要があるのか。 |
答
未承認医療機器の提供等の透明性を確保するために、提供先の医療機関での使用状況や遵守状況の把握の方法について、予め契約書等で明確にし、当該内容に従って使用状況や遵守状況を把握することが望ましい。
なお、医師等と企業等が共同で臨床研究を実施する場合は、研究計画書に記載された役割分担、不具合事象が発生した場合の取決め事項等に基づき、逐次連絡を取ること。
問8 未承認医療機器の提供者である企業等の責任が重く感じられる。企業等は求めに応じて未承認医療機器を提供するのであって、提供された未承認医療機器の管理、試験の実施、これに付随する遵守事項は臨床研究を実施する医師等にあるのではないか。 |
答
臨床研究の実施責任は医師等にあると考えられるが、一方で、未承認医療機器の提供等の透明性を確保することが重要であるため、提供者側に、未承認医療機器の提供等に関する記録の作成、提供先への情報提供等を求めているものである。
(データベースに登録等する臨床研究)
問9 「あらかじめ、登録された臨床研究計画の内容が公開されているデータベースに当該臨床研究に係る臨床研究計画を登録し、更に、臨床研究の終了後に研究実績を公表すること」とあるが、どのような場合に登録と公開が必要になるのか。 |
答
「臨床研究に関する倫理指針」(平成20年厚生労働省告示第415号)において、介入をともなう研究であって、侵襲性を有する臨床研究を実施する場合には、あらかじめ、臨床研究の内容を公開しているデータベースに当該臨床研究に係る臨床研究計画を登録することとされているが、それ以外についても、未承認医療機器の提供等の透明性を確保するために、データベースに登録し、学術論文等により研究実績を公表することが望ましい。
(未承認医療機器の提供等の手続)
問10 「提供行為は原則として提供者と医師又は歯科医師の間で直接行うこと」とあるが、費用支払や物品授受の宛先等の事務処理関係も医師等が直接行う必要があるのか。 |
答
契約等により提供先として医師等が特定される場合、費用支払や物品授受の宛先等の事務処理関係は、その医師等が所属する医療機関等であっても構わない。
ただし、第三者(代理店等)を介するなどして提供等を複雑化させないこと。なお、海外からの輸入される未承認医療機器について、やむを得ず手続き代行業を介することを妨げるものではない。また、輸送業者については、ここでいう第三者に含まれない。
(製造業許可等の要否)
問11 提供される未承認医療機器については、薬事法上の医療機器製造業の許可を取得していない製造所で製造した物でも差し支えないか。 |
答
保健衛生上の観点からは、医療機器の製造業の許可又は海外製造業者の認定を取得した製造所で製造した物であることが望ましい。製造業の許可等を取得していない製造所で製造した物を提供する場合は、品質、安全性等に十分注意すること。
(未承認医療機器の輸入手続)
問12 海外の製品で国内に日本法人がある場合、医師等からの求めに応じて未承認医療機器を提供する際に、日本法人が輸入をして提供することはできるか。 |
答
医師等が海外から直接個人輸入すること。ただし、以下の条件を満たす場合、本邦に到着した当該未承認医療機器を日本法人等の企業等が受け取り、医師等に提供することが認められる。
○臨床研究に関する契約等の内容から、企業等における品質の確認、臨床研究用である旨の表示等の必要性が確認できること
○企業等の受け取りについて、医師等の委任状があること
(医師等と企業等が共同で実施する臨床研究)
問13 医師等と企業等が共同で実施する臨床研究について、医師等の要望に基づくものである場合、「医師等が主体的に実施する妥当な臨床研究」に該当するのか。 |
答
通知は、医師等からの求めに応じて企業等が単に未承認医療機器を提供等するという臨床研究の形態について、薬事法の適用に関する考え方を示したものである。
そのため、企業等から未承認医療機器、研究者及び経費等を提供等して行われる、医師等と企業等が共同で実施する臨床研究の考え方については通知で示していないが、費用の分担等に係る要件(問14参照)を満たす場合、薬事法が適用されない「医師等が主体的に実施する妥当な臨床研究」と判断される。
問14 医師等と企業等が共同で実施する臨床研究について、どのような要件を満たせば、「医師等が主体的に実施する妥当な臨床研究」と判断されるか。 |
答
通知別添「3.未承認医療機器の提供等に薬事法が適用されない場合の妥当な臨床研究の範囲についての考え方」の要件に加え、費用の分担等について、以下の点を満たすことが求められる。
なお、以下の点が満たされない場合、企業等に主体性があると疑われるので留意すること。
○企業等と医療機関等との間で、予め契約書により、費用や役割の分担等の内容を明確にしておくこと
○当該臨床研究に係る医師等と企業等の費用分担が適正であること
例)製造等に係る経費、輸送費、データ解析等に係る人件費、印刷費等の実費を企業等が負担することは差し支えないが、医療従事者の人件費など直接の医療に係る費用を企業が負担していないことが求められる。
○医師等が当該臨床研究の実施に伴い被験者に生じた健康被害の補償のための措置を適切に講じていること
(未承認医薬品の提供等の考え方)
問15 通知は未承認医療機器に関するものであるが、未承認医薬品の提供等についてはどのように考えればよいか。 |
答
未承認医薬品についても、基本的には通知及び本質疑応答集(Q&A)の内容が準用されるが、臨床研究の妥当性の画一的な判断が医療機器に比べて困難であることから、監視指導・麻薬対策課に対して個別に相談されたい。