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○兵庫県南部地震における業務上外等の考え方について

(平成7年1月30日)

(事務連絡第4号)

(都道府県労働基準局労災主務課長あて労働省労働基準局補償課長通知)

兵庫県南部地震(以下「地震」という。)の発生に伴い、今後、多数の労災保険給付に係る相談や請求が予想されるところであるが、今回の地震における業務上外等の考え方については、下記に留意することとされたい。

1 業務上外等の基本的な考え方について

天災地変による災害に係る業務上外の考え方については、従来より、被災労働者が、作業方法、作業環境、事業場施設の状況等からみて危険環境下にあることにより被災したものと認められる場合には、業務上の災害として取り扱っているところであり、昭和49年10月25日付け基収第2950号「伊豆半島沖地震に際して発生した災害の業務上外について」においても、この考え方に基づいて、個々の事例について業務上外の考え方を示したものであること。

したがって、今回の地震による災害についても、従来からの基本的な考え方に基づいて業務上外の判断を行うものであること。

なお、通勤途上の災害についても、業務災害と同様、通勤に通常伴う危険が現実化したものと認められれば、通勤災害として取り扱うものであること。

また、個々の労災保険給付請求事案についての業務上外等の判断に当たっては、天災地変による災害については業務起因性等がないとの予断をもって処理することのないよう特に留意すること。

2 労災保険給付に係る相談等の対応について

今回の地震による被災者及び遺族から労災保険給付に係る相談等があった場合には、前記1の基本的な考え方に基づいて、業務災害あるいは通勤災害となるケースを挙げながら適切に説明し、地震災害は業務災害あるいは通勤災害とは認められないとの誤解を与えることのないようにするとともに、個々の事案の業務上外等の判断については、請求書が提出された後に行うものであることを併せて説明すること(別添「地震による災害の業務災害又は通勤災害の考え方」参照。)

また、労災保険給付に係る相談に対しては、親切、丁寧な対応を心掛けるとともに、請求書の提出があった場合には、迅速・適正な処理を行うこと。

なお、請求書等の取扱いについては、平成7年1月23日付け基発第27号「兵庫県南部地震に伴う労災診療の取扱いについて」、平成7年1月27日付け補償課長事務連絡第3号「兵庫県南部地震に伴う労災保険給付の請求に係る事務取扱いの留意点について」等に示したところであり、これらに留意し適切に対応すること。

(別添)

地震による災害の業務災害又は通勤災害の考え方

1 業務災害

地震により、業務遂行中に建物の倒壊等により被災した場合にあっては、作業方法や作業環境、事業場施設の状況などの危険環境下の業務に伴う危険が現実化したものと認められれば、業務災害となる。

2 通勤災害

業務災害と同様、通勤に通常伴う危険が現実化したものと認められれば、通勤災害となる。

なお、上記1及び2は、従来の考え方に基づくものであり、変更したものではない。

地震による災害事例

1 業務災害

[事例1 作業現場でブロック塀が倒れたための災害]

ブロック塀に補強のための鉄筋が入っておらず、構造上の脆弱性が認められたので、業務災害と認められる。

[事例2 作業場が倒壊したための災害]

作業場において、建物が倒壊したことにより被災した場合は、当該建物の構造上の脆弱性が認められたので、業務災害と認められる。

[事例3 事務所が土砂崩壊により埋没したための災害]

事務所に隣接する山は、急傾斜の山でその表土は風化によってもろくなっていた等不安定な状況にあり、常に崩壊の危険を有していたことから、このような状況下にあった事務所には土砂崩壊による埋没という危険性が認められたので、業務災害と認められる。

[事例4 バス運転手の落石による災害]

崖下を通過する交通機関は、常に落石等による災害を被る危険を有していることから、業務災害と認められる。

[事例5 工場又は倉庫から屋外へ避難する際の災害や避難の途中車庫内のバイクに衝突した災害]

業務中に事業場施設に危険な事態が生じたため避難したものであり、当該避難行為は業務に付随する行為として、業務災害と認められる。

[事例6 トラック運転手が走行中、高速道路の崩壊により被災した災害]

高速道路の構造上の脆弱性が現実化したものと認められ、危険環境下において被災したものとして、業務災害と認められる。

2 通勤災害

[事例1 通勤途上において列車利用中、列車が脱線したことによる災害]

通勤途上において、利用中の列車が脱線したことは、通勤に通常伴う危険が現実化したものであることから、通勤災害と認められる。

[事例2 通勤途上、歩道橋を渡っている際に足をとられて転倒したことによる災害]

通勤途上において、歩道橋を渡っている際に転倒したことは、通勤に通常伴う危険が現実化したものであることから、通勤災害と認められる。