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○個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の施行について

(平成13年9月19日)

(/厚生労働省発地第129号/基発第832号/職発第568号/雇児発第610号/政発第218号/)

(都道府県労働局長あて厚生労働省大臣官房長・厚生労働省労働基準局長・厚生労働省職業安定局長・厚生労働省雇用均等・児童家庭局長・厚生労働政策統括官通知)

(公印省略)

個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号。以下「法」という。)については、平成13年7月11日付け厚生労働省発政第168号により、厚生労働事務次官より貴職あて通達されたところであるが、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律施行規則(平成13年厚生労働省令第191号。以下「則」という。)が本日公布され、法とともに平成13年10月1日から施行されることとなっている。

これらの趣旨及び内容は、下記のとおりであるので、その施行に遺漏なきを期されたい。

第1 法の目的等(法第1条関係)

1 法の目的

法は、社会経済情勢の変化に伴い、労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争が増加していることにかんがみ、当該紛争の実情に即した迅速かつ適正な解決を図ることを目的としているものであること。

2 法において規定している制度等

個別労働紛争解決制度としては、司法機関が行う裁判及び民事調停、行政機関が行う相談、助言・指導、あっせん等、民間団体等が行う相談、あっせん等など様々なものがある。個別労働関係紛争の解決に当たっては、これら複数の機関がそれぞれの機関等の性格にあった機能を持ち、いずれの機関を利用するかについては紛争当事者が期待する解決方法に即して選択できる複線的なシステムとすることが適当であるが、これにかんがみつつ、法においては、これら個別労働紛争解決制度のうち、紛争当事者による紛争の自主的解決、都道府県労働局長の情報の提供、相談及び助言・指導制度、紛争調整委員会のあっせん制度並びに地方公共団体の施策等について規定しているものであること。

第2 個別労働関係紛争(法第1条関係)

1 趣旨

個々の労働者と事業主との間の紛争は、解雇や労働条件の変更等労働条件に関する紛争に加えて、会社分割の際の労働契約の承継に関する紛争等その内容も多様化していることから、本法においては、「労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争」を個別労働関係紛争と定義し、労働関係から生じるあらゆる紛争を本法の対象としたものであること。

2 労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争

(1) 法第1条の「労働関係」とは、労働契約又は事実上の使用従属関係から生じる労働者と事業主の関係をいうこと。

したがって、労働者と事業主との間の紛争であっても、労働関係に関しない事項についての紛争、例えば、労働者と事業主の私的な関係における金銭の貸借に関する紛争などについては、個別労働関係紛争には含まれないこと。

(2) 個別労働関係紛争は、「個々の労働者」が一方の紛争当事者となる紛争であること。したがって、労働組合、労働者の家族、労働者が死亡した場合の相続人等が紛争当事者となる紛争は、個別労働関係紛争には該当しないものであること。

法第1条の「労働者」とは、職業の種類を問わず、他人に使用され、労務を提供し、その対価である賃金を支払われる者であること。ただし、現に使用され、及び労務を提供していることは必ずしも必要ではなく、例えば、事業主から解雇され、その当否をめぐり紛争を提起している者については、紛争の対象となっている解雇の時点で「労働者」の要件を満たしていれば、本法の「労働者」に該当するものであること。

「労働者」であるか否かは、単に契約内容のみによって外形的に判断するのではなく、実態を踏まえて判断するものであること。

(3) 法第1条の「事業主」とは、事業の経営の主体をいい、個人企業にあってはその企業主が、会社その他の法人組織の場合にはその法人そのものが事業主であること。

個別労働関係紛争においては、労働契約に係る債務不履行、労働関係から生じる不法行為責任等が紛争の対象になるものであるが、この場合、労働契約又は事実上の使用従属関係の主体であり、かつ、不法行為の責任を最終的に負うべきなのは「事業主」であり、また、労働関係における各種行為の主体である「使用者」の行為は事業主のために行われるものであることから、本法においては、「事業主」を個別労働関係紛争の一方の紛争当事者として規定したものであること。

なお、紛争当事者である事業主が倒産等により消滅し(合併による消滅を除く。)、又は個人事業主が死亡した場合(相続人が事業を相続した場合を除く。)は、紛争の一方の当事者が存在しないため対象とならないこと。

(4) 個別労働関係紛争は、「個々の労働者と事業主との間」の紛争であり、紛争当事者双方が労働者である場合はこれに該当しないものであること。

(5) 法第1条の「紛争」とは、紛争の一方の当事者の主張に対し、他方の当事者がそれに同意せず、両当事者の主張が一致していない状態をいうものであること。

3 労働者の募集及び採用に関する事項についての個々の求職者と事業主との間の紛争

(1) 労働者の募集及び採用に関する事項は、労働関係に入る以前の事項であるが、労働関係が生じる入り口段階である募集及び採用は、労働者の職業生活を決定づける重要な段階であり、これらの紛争が生じた場合にも簡易・迅速な解決が求められることから、個別労働関係紛争に含めることとしたものであること。

(2) 「募集」とは、労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人に委託して、労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘することをいうが、法第1条の「募集」には、加えて公共職業安定所その他の職業紹介機関を介して、行うものも含まれるものであること。

なお、労働者派遣事業を行う事業主が派遣労働者になろうとする者に対し、いわゆる登録を呼びかける行為及びこれに応じた者を労働契約の締結に至るまでの過程で登録させる行為は、「募集」に該当するものであること。

(3) 「採用」とは、一般には労働契約の締結をいうものであるが、法第1条の「採用」には、応募の受付、採用のための選考等募集を除く労働契約の締結に至る一連の手続も含まれるものであること。

(4) 法第1条の「求職者」とは、対価を得るべく自己の労働力を提供して職業に就くために他人に雇用されようとし、その意思を表示している者をいうものであること。

第3 紛争の自主的解決(法第2条関係)

1 趣旨

個別労働関係紛争は、本来、労働者と事業主の間の民事上の紛争であるので、紛争当事者である労使が話合い、自主的に解決することが最も望ましいものであることから、その解決は第一義的には紛争当事者の責務であることを明確化するため、紛争当事者の努力義務を規定したものであること。

2 努力義務の具体的内容

(1) 本条により、紛争当事者である労使においては、具体的には、まず早期に、誠意をもって話し合うことにより、互いの主張を確認し、問題点を整理すること、又は、紛争当事者が直接に話し合うことが困難な場合には、第三者を介して話合いを行うことなどにより、企業内での解決に努めることが求められることとなること。

(2) このような話合いを促進するためには、労働者から苦情が申し立てられた際に対応するのみならず、あらかじめ、企業内において、労働者からの苦情を受け付けてこれを処理するための仕組みを整備しておくことが望ましいこと。具体的には、苦情処理の仕組みを明確化して労働者に周知する、不満・苦情を受け付ける担当者・窓口を設ける、紛争処理機関を設置するといった様々な方法が考えられるが、如何なる方法をとるかは、各企業の労使に委ねられるものであること。

第4 労働者、事業主等に対する情報提供等(法第3条関係)

1 趣旨

個別労働関係に係る労働者等の不満・苦情の多くは、法令、判例の不知、誤解に基づくものも多く、適切な情報提供、相談を行うことにより、紛争に発展することを未然に防止し、また、労使が自主的に解決することを促進することが可能となるものであるため、都道府県労働局長は、労働者、求職者又は事業主に対し、労働関係に関する事項並びに労働者の募集及び採用に関する事項についての情報の提供、相談その他の援助を行うものとしたものであること。

2 情報の提供、相談その他の援助

(1) 都道府県労働局長の情報の提供、相談その他の援助は、具体的には、都道府県労働局及びここに設けられる「総合労働相談コーナー」における相談等の実施により行われるものであること。

(2) 法第3条の「情報の提供、相談その他の援助」としては、労働者、求職者又は事業主からの照会内容に応じた関係法令、判例等の情報や資料の提供、紛争解決制度に関する情報や資料の提供、相談者に対する相談のほか、労働基準監督署、公共職業安定所、労政事務所、都道府県労働委員会等他の機関が扱うことが適当と認められる事案についての当該他の機関に対する取次ぎ等が考えられるものであること。

第5 都道府県労働局長の助言及び指導(法第4条関係)

1 趣旨

(1) 個別労働関係紛争の中には、法令や判例の理解が十分でないために不適切な行為をしたことにより生じているものも多数あり、これらについては、問題点及び解決の方向を的確に示すことにより迅速に解決できるものであること等から、より簡易な個別労働紛争解決制度として、都道府県労働局長の助言・指導制度を設けるものであること。

(2) 助言又は指導は、紛争当事者による紛争の自主的な解決を促進するため、紛争当事者に対して、問題点を指摘し、解決の方向性を示唆するものであること。したがって、紛争当事者に一定の措置の実施を強制するものではないこと。

2 助言及び指導の対象となる個別労働関係紛争

(1) 助言及び指導の対象となる紛争は、個別労働関係紛争であること。ただし、次のイ及びロの紛争については法第4条第1項により、ハの紛争については雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号。以下「男女雇用機会均等法」という。)第16条により、ニの紛争については短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号。以下「パートタイム労働法」という。)第20条により、ホの紛争については育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)第52条の3により、助言及び指導の対象となる紛争からそれぞれ除外されていること。

イ 労働関係調整法(昭和21年法律第25号)第6条に規定する労働争議に当たる紛争

ロ 特定独立行政法人等の労働関係に関する法律(昭和23年法律第257号)第26条第1項に規定する紛争

ハ 男女雇用機会均等法第16条に規定する紛争

ニ パートタイム労働法第20条に規定する紛争

ホ 育児・介護休業法第52条の3に規定する紛争

(2) 次の紛争については、その解決のために本法に基づく助言又は指導をすることが不適当又は不必要と判断されるものであるので、助言又は指導を行わないこと。

イ 裁判において係争中である又は確定判決が出された紛争

ロ 裁判所の民事調停において手続が進行している又は調停が終了した紛争

ハ 裁判所において労働審判手続が進行している、労働審判手続により調停が成立した、又は労働審判が行われた紛争

ニ 労働委員会におけるあっせん等他の機関による個別労働紛争解決制度において手続が進行している又は合意が成立し解決した紛争

ホ 法第5条に基づく紛争調整委員会のあっせんの手続が進行している又はあっせんが終了した紛争(申請が取り下げられた場合を除く。)

へ 既に助言・指導に係る手続を終了した紛争(申出が取り下げられた場合を除く。)

ト 労働組合と事業主との間で問題として取り上げられており、両者の間で自主的な解決を図るべく話合いが進められている紛争

チ 個々の労働者に係る事項のみならず、これを超えて、事業所全体にわたる制度の創設、賃金額の増加等を求めるいわゆる利益紛争

リ 紛争の原因となった行為の発生から長期間経過しており、的確な助言・指導を行うことが困難である紛争

ヌ 申出人の主張が著しく根拠を欠いていると認められる紛争

(3) 法令等に基づき各機関が行政指導等を実施することとされている事項に係る紛争について、当該機関が行政指導等を行うこととしている場合には、その間は助言・指導に係る手続は停止するものとすること。行政指導等の結果、紛争原因となった事項が改善され、これにより紛争が解決した場合には、助言・指導は行わないこと。

なお、行政指導等によっても紛争が全面的には解決しない場合であって、さらに助言・指導を行うことにより紛争の解決が図れる可能性があるときには、当該紛争を助言・指導に係る手続に移行することとするものであること。

(4) 助言・指導は、私人間の紛争の解決の促進を図るために、紛争当事者双方から事情を聴取し、問題点を整理した上で解決の方向性を示唆するものであり、行政処分には該当しないため、これを行わないこととした場合でも、不作為に係る不服申立等の対象にならないものであること。

3 助言・指導の区分

(1) 「助言」は、法令、判例、専門的知識を有する者の意見等に照らし、紛争当事者間の話合いを促進することが適当であると認められる場合等に、口頭又は文書で行うものとすること。

(2) 「指導」は、法令、判例、専門的知識を有する者の意見等に照らし、紛争当事者のいずれかに何らかの問題があることにより紛争の解決が阻害されていると認められる場合等に、問題点を指摘し、解決の方向性を文書で示すものとすること。

4 専門的知識を有する者の意見聴取

(1) 法第4条第2項は、事件の重要性や複雑さ等にかんがみ、慎重かつ的確な助言・指導を行うために必要があるときは、判例や実務等に詳しい専門家からの意見を求めることができるものとしたこと。

(2) 法第4条第2項に規定する「広く産業社会の実情に通じ、かつ、労働問題に関し専門的知識を有する者」とは、弁護士等の法曹関係者、法律学者等の学識経験者、社会保険労務士、企業の人事労務管理に携わった者等であって、産業社会の実情に通じ、労働関係法令や賃金制度等の労働問題について専門的知識を有する者であること。

5 不利益取扱いの禁止

(1) 法第4条第3項は、事業主に比べ弱い立場にある労働者を事業主の不利益な取扱いから保護することにより、助言・指導制度の実効性を担保するため、労働者が同条第1項の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止することとしたものであること。

(2) 法第4条第3項の「理由として」とは、労働者が紛争の解決の援助を求めたことが、事業主が当該労働者に対して不利益な取扱いを行うことと因果関係があることをいうものであること。

(3) 法第4条第3項の「不利益な取扱い」とは、解雇をはじめとして、配置転換、降格、減給、昇給停止、出勤停止、雇用契約の更新拒否等がこれに当たるものであること。

なお、配置転換等が不利益な取扱いに該当するかについては、給与その他の労働条件、職務内容、職制上の地位、通勤事情、当人の将来に及ぼす影響等諸般の事情について、旧勤務と新勤務とを総合的に比較考慮の上、判断すべきものであること。

第6 紛争調整委員会(法第6条から第11条まで及び則第1条から第3条まで関係)

1 紛争調整委員会

(1) 都道府県労働局に法に基づくあっせんを行う機関として紛争調整委員会(以下「委員会」という。)を置くものとし、委員会の名称はその置かれる都道府県労働局の所在する都道府県の名を冠するものとすること。

(2) 委員会の庶務は、都道府県労働局総務部において処理するものとすること。

2 委員

(1) 委員会は学識経験を有する者のうちから厚生労働大臣が任命する委員3人以上36人以内をもって組織するものとし、具体的には、各委員会ごとに次の人数とすること。

イ 東京 36人

ロ 大阪 21人

ハ 愛知 15人

ニ 北海道、埼玉 各12人

ホ 茨城、千葉、神奈川、静岡、福岡 各9人

へ その他 各6人

(2) 法第7条第2項の「学識経験を有する者」とは、産業社会の実情に通じ、法令や判例、企業の人事労務管理について専門的知識を有するものであること。具体的には、弁護士等の法曹関係者、学者、社会保険労務士、人事労務管理の実務に携わった経験を有する者であること。

(3) 委員会に会長を置き、委員の互選により選任することとし、会長に事故があるときは、委員のうちからあらかじめ互選された者がその職務を代理するものであること。

(4) 委員の任期は2年とし、補欠の委員の任期は前任者の残任期間とすること。

(5) 委員の欠格条項として、次の各号のいずれかに該当する者は委員となることができず、また、委員が次の各号のいずれかに該当するに至ったときは、当然失職するものであること。

イ 破産者で復権を得ないもの

ロ 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることができなくなった日から5年を経過しない者

(6) 厚生労働大臣は、委員が次の各号のいずれかに該当するときは、その委員を解任することができること。

イ 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき

ロ 職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認められるとき

(7) 委員は、一般職非常勤の国家公務員であること。したがって、委員については、法第9条及び第10条に加えて、これらと矛盾しない範囲内において、国家公務員法(昭和22年法律第120号)の欠格条項、分限、懲戒等に係る規定が重複して適用されるものであること。

3 会議及び議決

委員会の会議は会長が招集し、会長又は会長を代理する者のほか、委員の過半数が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができないものとしたこと。

委員会の議事は、出席者の過半数をもって決し、可否同数のときは、会長が決するものとしたこと。

4 その他

紛争調整委員会は、法に基づくあっせんに加えて、男女雇用機会均等法、パートタイム労働法及び育児・介護休業法に基づく調停を行うものであること。

また、これらの場合の調停に係る庶務は、都道府県労働局雇用均等室において処理するものとすること。

第7 紛争調整委員会によるあっせん(法第5条及び第12条から第19条まで並びに則第4条から第16条まで関係)

1 趣旨

(1) 個別労働関係紛争は、基本的には私人間の民事上の紛争であること、雇用関係という継続的な関係を前提としていることが多く、特に円満な解決を図る必要性が高いことから、紛争当事者間の話合いによる自主的な解決の促進を図るためのあっせん制度を設けるものとしたこと。

(2) あっせんは、紛争当事者の間に第三者が入り、双方の主張の要点を確かめ、双方に働きかけ、場合によっては両者が採るべき具体的なあっせん案を提示するなど、紛争当事者間の調整を行うことにより、その自主的な解決を促進するものであること。したがって、話合いの促進のためにあっせん案を提示することがあっても、当該あっせん案はあくまで話合いの方向性を示すものであり、その受諾を強制するものではないこと。

(3) 行政が直接行う場合よりも、紛争当事者があっせん案を受け入れやすくし、あっせんによる解決の実効性を高めるため、あっせんを行う主体として、より中立的な第三者としての立場にある学識経験者からなる委員会があっせんを行うものとしたこと。

2 あっせんの対象となる個別労働関係紛争

(1) あっせんの対象となる紛争は、個別労働関係紛争であること。ただし、次のイ、ロ及びハの紛争については法第5条第1項により、ニの紛争については男女雇用機会均等法第16条により、ホの紛争についてはパートタイム労働法第20条により、ヘの紛争については育児・介護休業法第52条の3により、あっせんの対象となる紛争からそれぞれ除外されていること。

イ 労働関係調整法第6条に規定する労働争議に当たる紛争

ロ 特定独立行政法人等の労働関係に関する法律第26条第1項に規定する紛争

ハ 労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争

ニ 男女雇用機会均等法第16条に規定する紛争

ホ パートタイム労働法第20条に規定する紛争

ヘ 育児・介護休業法第52条の3に規定する紛争

(2) 次の場合については、都道府県労働局長は、「当該個別労働関係紛争の解決のために必要がある」と認められないものとして、委員会にあっせんを委任しないものとすること。

イ 則第5条第2項の「事件がその性質上あっせんをするのに適当でないと認めるとき」

(イ) 裁判において係争中である又は確定判決が出された紛争

(ロ) 裁判所の民事調停において手続が進行している又は調停が終了した紛争

(ハ) 裁判所において労働審判手続が進行している、労働審判手続により調停が成立した、又は労働審判が行われた紛争

(ニ) 労働委員会におけるあっせん等他の機関による個別労働紛争解決制度において手続が進行している又は合意が成立し解決した紛争

(ホ) 既に委員会によるあっせんを終了した紛争(申請が取り下げられた場合を除く。)

(ヘ) 労働組合と事業主との間で問題として取り上げられており、両者の間で自主的な解決を図るべく話合いが進められている紛争

(ト) 個々の労働者に係る事項のみならず、これを超えて、事業所全体にわたる制度の創設、賃金額の増加等を求めるいわゆる利益紛争

(チ) 紛争の原因となった行為の発生から長期間経過しており、的確なあっせんを行うことが困難である紛争

(リ) 申請人の主張が著しく根拠を欠いていると認められる紛争

ロ 則第5条第2項の「紛争当事者が不当な目的でみだりにあっせんの申請をしたと認めるとき」

なお、これに該当する場合として次のものが考えられること。

(イ) 相手方の社会的信用を低下させることを目的としたり、単なる嫌がらせの目的であっせんの申請をしていると認められる場合

(ロ) 紛争当事者間で既に締結された和解契約に基づく義務の履行を不当に免れようとしている場合

(3) 法令等に基づき各機関が行政指導等を実施することとされている事項に係る紛争について、当該機関が行政指導等を行うこととしている場合には、その間は委員会にあっせんを委任しないものとすること。行政指導等の結果、紛争原因となった事項が改善され、これにより紛争が解決した場合には、あっせんは行わないこと。

なお、行政指導等によっても紛争が全面的には解決しない場合であって、さらにあっせんを行うことにより紛争の解決が図れる可能性があるときには、当該紛争をあっせんの手続に移行することとするものであること。

3 あっせんの申請

(1) あっせんの申請は、則様式第1号により、紛争当事者である労働者に係る事業場の所在地を管轄する都道府県労働局の長に提出しなければならないこと。

(2) 申請は、紛争当事者である労働者及び事業主の双方、又はその一方のいずれからも可能であること。

(3) 申請は、申請手続を代理人が行う場合を含め、紛争当事者本人の名義で行わなければならないこと。したがって、労働組合や事業主団体等が、紛争当事者に代わって、団体等の名義で申請することはできないこと。

4 不利益取扱いの禁止

(1) 法第5条第2項は、事業主に比べ弱い立場にある労働者を事業主の不利益な取扱いから保護することにより、あっせん制度の実効性を担保するため、労働者が同条第1項の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止することとしたものであること。

(2) 「理由として」及び「不利益な取扱い」の意義は、それぞれ第5の5の(2)及び(3)と同じであること。

5 あっせんの委任又は不開始

(1) あっせんの申請を受けた都道府県労働局長は、当該申請に係る個別労働関係紛争の解決のために必要があると認めるときは、委員会にあっせんを委任するものとすること。

(2) 都道府県労働局長は、委員会にあっせんを行わせることとしたときは、遅滞なく、その旨を委員会の会長に通知するものとすること。

(3) 都道府県労働局長は、委員会にあっせんを行わせないこととしたときは、則様式第2号により、あっせんを申請した紛争当事者に対し、遅滞なく、その旨を通知するものとすること。

(4) あっせんは、私人間の紛争の解決の促進を図るために、紛争当事者の間に入って調整し、解決の援助を行うものであり、行政処分には該当しないため、委員会にあっせんを行わせないこととした場合でも、不作為に係る不服申立等の対象にならないものであること。

6 あっせん委員の指名

(1) 委員会の会長は、上記5の(2)の通知を受けたときは、当該事件を担当する3人のあっせん委員を指名するものとすること。

(2) 委員会によるあっせんは、当該3人のあっせん委員によって行われるものであること。

(3) あっせんの具体的な手続については、手続のすべてを3人で行うことは能率的ではないため、則第7条第1項により、必要があると認めるときは、あっせんの手続の一部を特定の委員に行わせることができるものとしたこと。

(4) また、則第7条第2項により、手続の効率性等から必要があると認めるときは、紛争当事者からの事情の聴取、参考人からの意見の聴取、事業場等へ出向いての調査、関係行政庁から得られた資料の調査等の事実の調査を都道府県労働局総務部の職員に行わせることができるものとしたこと。

7 あっせんの実施

(1) 会長は、あっせんの申請が紛争当事者の双方からなされた場合においては、紛争当事者の双方に対し、則様式第3号により、あっせんを開始する旨及び当該事件を担当する3人のあっせん委員の氏名を通知するものとすること。また、あっせんの申請が紛争当事者の一方からなされた場合においては、申請人に対しては則様式第3号により、他方の紛争当事者に対しては、則様式第4号により、それぞれ通知するものとすること。

(2) 委員会によるあっせんは、原則として、あっせん期日(以下「期日」という。)に紛争当事者の出席を求めて行うものとすること。

(3) あっせん委員は、紛争当事者の希望等を総合的に勘案し、期日を定めるものとすること。

(4) あっせん委員は、期日を紛争当事者に対して通知し、期日における出席を求めるものとすること。

(5) あっせんは紛争当事者の任意の合意に基礎をおいているものであり、事実調査についても強制的手段になじまないものであること。したがって、期日への出席は強制的なものではなく、また、出席できない場合には、紛争当事者は、則第8条第3項の規定に基づく許可を得て代理人を出席させたり、意見書を提出することで出席に代えることも可能であること。

(6) あっせんは、あっせん委員が紛争当事者間の話合いを促進することにより、紛争の解決を促進するための制度であること。このため、期日においては、あっせん委員は、紛争当事者の間に入り、双方の主張の要点を確かめ、必要に応じて参考人から意見を聴取する等により事実の調査を行った上で、紛争当事者間の話合いを促進し、その間を仲介して、紛争当事者の双方又は一方の譲歩を求めたり具体的な解決の方策を打診し、さらに双方から求められた場合にはあっせん案を提示する等により実情に即した形で事件が解決されるように努めるものであること。

8 補佐人

(1) 則第8条第2項の「補佐人」は、紛争当事者が期日に出席する際に同行し、紛争当事者が行う他方当事者への主張やあっせん委員に対する事実関係の説明等を補佐する者であること。

(2) 補佐人は、紛争当事者を補佐して発言を行うことができること。ただし、補佐人の発言は、あくまでも当該紛争当事者の主張や説明を補足するためのものであり、補佐人が自ら他方当事者への主張を行ったり、紛争当事者に代わって意思表示を行ったりすることはできないものであること。

(3) 補佐人は、弁護士法第72条等他の法令に抵触しない限り、特に資格を制限されるものではないこと。

(4) あっせん委員は、補佐人としての許可を求められた者が、必要以上に多人数である場合等、許可することが不適切であると認めた場合には、補佐人の出席を許可しないことができるものであること。

9 代理人

(1) 紛争当事者は、民法の一般原則等に従って代理人を選任し、当該代理人に、法に基づく申請等の手続等を行わせることができるものであるが、則第8条第3項においては、あっせん委員が関与して行われる期日におけるあっせんの手続において、その秩序維持の観点から、代理人が参加するための手続を定めたものであること。

(2) 代理人は、授与された代理権の範囲内で、紛争当事者に代わって意見陳述等のあっせんの手続に参加することができること。

(3) 代理人は、弁護士法第72条等他の法令に抵触しない限り、特に資格を制限されるものではないこと。

(4) あっせん委員は、代理人としての許可を求められた者が、必要以上に多人数である場合等、許可することが不適切であると認めた場合には、代理人の出席を許可しないことができるものとすること。

10 参考人からの意見聴取

(1) あっせん委員が適切なあっせんを行うために、紛争当事者からの事実関係の説明のみでは不十分である場合には、参考人から意見を聴取することとし、あっせん案を作成するに当たり、これを踏まえて作成することとしたものであること。

(2) 法第13条第1項の「必要に応じ」とは、紛争の原因たる事実関係を明確にするためだけに限らず、あっせん案作成のために必要な事実等を明らかにするためなどが考えられ、必要か否かの判断はあっせん委員が行うものであること。

(3) 法第13条第1項の「参考人」とは、紛争当事者本人及びその補佐人又は代理人を除く第三者のうち、事件に関して必要な意見を述べることができるものすべてを含むものであること。

なお、法第14条に規定する「関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者」も参考人に該当するものであること。

11 関係労使を代表する者からの意見聴取

(1) 法第14条は、法第13条第1項の参考人のうち、特に重要性の高い関係労使代表からの意見聴取についての手続を定めたものであること。

(2) あっせん委員は、法第14条の「必要があると認めるとき」として、則第10条により、次のいずれかに該当するときは、関係労使を代表する者から意見を聴くものとすること。

イ 紛争当事者の双方から申立てがあったとき

ロ 紛争当事者の一方から申立てがあった場合で、紛争当事者に係る企業又は当該企業に係る業界若しくは地域の最近の雇用の実態等について、紛争当事者の他に関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者から意見を聴く必要があると認めるとき

(3) 則第10条第2号の「当該企業に係る業界若しくは地域」とは、紛争当事者である労働者に係る企業の属する業界又は紛争当事者である労働者に係る事業所の所在する地域をいうものであること。

(4) 則第10条第2号の「最近の雇用の実態等」とは、経済構造改革等を踏まえた最近の雇用状況、人事労務管理制度の状況等をいうものであること。

(5) 法第14条の「主要な労働者団体」とは、ナショナルセンターの都道府県組織のほか、各単産の地方組織等都道府県レベルの労働団体を、「主要な事業主団体」とは、経営者協会、商工会議所、中小企業団体中央会等のほか、業種別経営者団体の都道府県レベルの組織等をいうものであり、その中から紛争当事者の希望も考慮の上、委員会が適当と認めた団体に対し指名を要請することとなること。

12 資料提供の要求

(1) 法第17条の「必要があると認めるとき」として、あっせんに係る事件の背景として、当該地域や産業の経済状況等について情報を有している行政庁から関係資料の提出を求める場合等が想定されること。

(2) 法第17条の「関係行政庁」とは、例えば、国の機関の地方支分部局や都道府県等の地方自治体が想定されること。

(3) 「その他必要な協力」とは、口頭による情報の提供等をいうものであること。

13 あっせん案の作成及び提示

(1) あっせん案の提示は、紛争当事者間の話合いを促進するために、紛争当事者の双方に対し、解決の方向性の案を示すものであること。したがって、調停案のように受諾勧告により紛争当事者に対してその受諾を勧めたり、仲裁裁定のように紛争当事者にその履行を義務付けるような性格のものではないこと。

(2) 法第13条第1項の「事件の解決に必要な」場合とは、則第9条第1項により、紛争当事者の双方からあっせん案の提示を求められた場合をいうものであること。

(3) あっせん案の作成は、その手続の重要性にかんがみ、あっせん委員の全員一致をもって行うものとしたこと。したがって、則第7条第1項による特定の委員への委嘱を行うことはできないこと。

(4) 紛争当事者間に合意が成立した場合において、成立した合意は民法上の和解契約となるものであること。したがって、紛争当事者の一方が合意で定められた義務を履行しない場合には、他方当事者は、債務不履行として訴えることができるものであること。

14 あっせん申請の取下げ

(1) あっせんの申請は、申請が一方の紛争当事者によって行われた場合にはいつでも、双方によって行われた場合には双方の紛争当事者が合意した場合に、取り下げることができること。

(2) 申請が取り下げられた場合には、その申請は、申請時にさかのぼってなされなかったものとみなされること。

15 あっせんの打切り

(1) あっせん委員は、法第15条の「あっせんによっては紛争の解決の見込みがないと認めるとき」として、則第12条第1項により、次のいずれかに該当するときは、あっせんを打ち切ることができること。

イ あっせん開始の通知を受けた被申請人が、あっせんの手続に参加する意思がない旨を表明したとき

ロ あっせん委員から提示されたあっせん案について、紛争当事者の一方又は双方が受諾しないとき

ハ 紛争当事者の一方又は双方があっせんの打切りを申し出たとき

ニ 関係労使からの意見聴取その他あっせんの手続の進行に関して紛争当事者間で意見が一致しないため、あっせんの手続の進行に支障があると認めるとき。

ホ イからニまでに掲げるもののほか、あっせんによっては紛争の解決の見込みがないと認めるとき

(2) 則第12条第1号の「あっせんの手続に参加する意思がない旨を表明したとき」とは、則第6条第2項の通知を受けた被申請人が、あっせん委員に対して、手続の不参加を表明した場合やあっせん委員からの期日の通知に対して出席を拒否する意思を表明した場合が相当するものであること。

(3) 則第12条第4号の「あっせんの手続の進行に支障があると認めるとき」とは、労使団体からの意見聴取の申立て等一方が求めるあっせんの手続について、他方の紛争当事者がこれを拒否し、期日へ出席しない場合等が相当するものであること。

(4) 則第12条第5号の「前各号に掲げるもののほか、あっせんによっては紛争の解決の見込みがないと認めるとき」とは、紛争当事者間の意見の隔たりが大きく、これ以上あっせんを継続しても進展が見込めない場合等をいうものであること。

なお、「解決の見込み」の有無の判断については、あっせん委員3人の合意によって決すること。

16 時効の中断

(1) 法第16条は、あっせんが不調に終わった後に改めて訴えを提起したが、すでに消滅時効が完成していた場合には、当初から訴えを提起した場合と比べてあっせん制度を利用した者の利益が害されるという結果を生ずるので、そのようなことがないように保護を図るとともに、制度を安心して利用できるようにするために設けられた規定であること。

(2) 本条が適用されるのは、あっせんが法第15条の規定によりあっせんによっては紛争の解決の見込みがないものとして打ち切られた場合であり、あっせん申請の取下げによる手続の終了の場合には、本条の適用はないものであること。

(3) 法第16条の「通知を受けた日から30日以内」とは、民法の原則に従い、文書の到達した日は期間の計算に当たり算入されないため、書面による通知が到達した日の翌日から起算して30日以内であること。

(4) 法第16条の「あっせんの目的となった請求」とは、当該あっせんの手続においてあっせんの対象とされた具体的な損害賠償請求等を指し、本条が適用されるためには、これらと訴えに係る請求とが同一性のあるものでなければならないこと。

(5) 法第16条の「申請の時」とは、申請書が現実に提出された日であって、申請書に記載された申請年月日ではないこと。

なお、あっせんの過程において申請人があっせんを求める事項の内容を変更又は追加した場合にあっては、当該変更又は追加した時が「申請の時」に該当するものと解されるものであること。

17 手続の非公開等

あっせんは、個々の労働者と事業主との間の民事上の問題を主に取り扱うものであるので、紛争当事者のプライバシー保護の観点から、則第14条により、あっせんの手続は非公開とするものであること。

なお、ここにいうあっせんの手続とは、具体的にはあっせんの申請から手続の終結に至るまでの手続全般をいうものであり、したがって、期日における手続の傍聴を認めないことに限らず、期日においてなされた紛争当事者の主張の内容や提出された資料等、あっせん申請書等あっせん申請の際に提出された関係書類、あっせん案やこれに対する紛争当事者の態度、あっせん申請がなされたことやあっせんの手続が進行しているという情報等当該あっせん事案に係るすべての事項が非公開となるものであること。

18 あっせんの記録

(1) 則第13条に基づき、都道府県労働局総務部の職員は、あっせんの記録を作成するものとすること。

(2) 期日における手続の経過については、期日ごとに、その要旨を記録するものとすること。また、関係資料の提出があった場合は、これを添付するものとすること。

特に、あっせんの過程において申請人があっせんを求める事項の内容を変更又は追加した場合には、変更又は追加した内容及び変更又は追加のあった日付をあっせんの記録に記載しておくものとすること。

(3) 則第13条の「あっせん委員がその必要がないと認めたとき」として、期日を開催したが、紛争当事者が出席せず実質的な話合いが全く行われなかった場合等が該当するものであること。

19 あっせん状況の報告

(1) 委員会によるあっせんは、都道府県労働局長から委任を受けて行われるものであるので、あっせんの手続が終了した場合には、都道府県労働局長にその顛末を報告することとするものであること。

(2) 則第15条の「あっせんの事件が終了したとき」とは、次のいずれかによりあっせん手続を終了したことをいうこと。

イ 法第10条第1項の規定に基づき提示されたあっせん案を紛争当事者の双方が受諾した場合その他紛争当事者間で何らかの合意が成立し解決に至った場合

ロ 申請者があっせんの申請を取り下げた場合

ハ 法第15条によりあっせんが打ち切られた場合

ニ 紛争当事者である労働者が死亡した場合又は紛争当事者である事業主が倒産等により消滅し(合併による消滅を除く。)若しくは個人事業主が死亡した場合(相続人が事業を相続した場合を除く。)

ホ 委員会にあっせんが委任された後に、第7の2に掲げるあっせんの対象としない紛争に該当することが判明した場合

20 あっせんに係る情報等の取扱い

(1) あっせんは、紛争当事者間の民事に関する紛争について、公平・中立な第三者機関たる紛争調整委員会が仲介し、その解決の促進を図ろうとするものであり、あっせんの際に提出された資料、紛争当事者等から聴取した情報等は、行政が一定の行政目的の実現のために行う行政指導等のために収集した情報等とは、性格を異にするものであること。

(2) このため、あっせんの際に提出された資料、紛争当事者から聴取した情報、あっせんの経緯等一切のあっせんに係る情報等については、国家公務員法(昭和22年法律第120号)第100条(秘密を守る義務)に基づきこれを他に漏らしてはならないことはもちろん、都道府県労働局内においても、原則として紛争調整委員会及び同委員会の庶務を処理する都道府県労働局総務部限りとし、他の部局に対して提供等をしてはならないこと。

(3) また、都道府県労働局長及び都道府県労働局総務部の職員は、他の部署に異動した後においても、総務部在籍中に知り得たあっせんに係る情報等を、紛争当事者であった者に対する行政指導等に用いてはならないこと。

第8 地方公共団体の施策等(法第20条関係)

1 趣旨

個別労働関係紛争の解決の促進のためには、都道府県の労政主管事務所における労働相談等現行の紛争解決システムにおいても大きな役割を果たしている地方公共団体の施策について、個別労働関係紛争の解決のための複線的システムの重要な一部分であると明確に位置づけるとともに、今後一層の増加が見込まれる個別労働関係紛争について、地域の実情に応じて、必要な施策を推進することが望まれるため、地方公共団体の努力義務規定を設けるものとしたこと。

2 地方公共団体が行う施策

法第20条第1項の「情報の提供、相談、あっせんその他の必要な施策」としては、①相談窓口等における相談者に対する情報の提供、労働相談の実施、②相談者に対する国の制度についての情報提供、③労政主管事務所、都道府県労働委員会等におけるあっせん等が考えられるが、地方公共団体は、当該地域の実情に応じてそれぞれの判断により必要な措置を講ずるものであること。

3 国が講ずる措置

法第20条第2項の「情報の提供その他の必要な措置」として、①法令、判例等や本法に基づく国の制度についての地方公共団体への情報提供、②地方公共団体が行う研修への講師の派遣等のノウハウの提供、③地方公共団体の相談窓口からの事案の引継等の措置が考えられるものであること。

4 中央労働委員会の助言又は指導

(1) 地方自治法第180条の2においては、普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務の一部を、普通地方公共団体の委員会、委員会の委員長、委員又はこれらの執行機関の事務を補助する職員等に委任することができることとされており、これに基づき、都道府県知事は、法第20条第1項に定める個別労働関係紛争の未然防止及び自主的解決の促進のための事務を、都道府県労働委員会に委任することができるものであること。

(2) 法第20条第3項は、都道府県労働委員会が都道府県知事の委任を受けて個別労働関係紛争の解決の促進のための事務を行う場合に、都道府県労働委員会が行う個別労働紛争解決制度が円滑に運用されるよう、中央労働委員会は、当該都道府県労働委員会に対し、例えば、個別労働関係紛争の事例・統計等の提供、経験の交流、複数の都道府県労働委員会に同一の原因によって生じた事業主と複数の労働者との間の同種の紛争のあっせんの申請がなされた場合に、必要に応じ関係都道府県労働委員会間で相互に連携を図ることができるようにするための調整等を行うことができるものとしたこと。

第9 船員に関する特例(法第21条関係)

昨今の国際競争の激化や長期的な景気停滞の状況の中で、今後は船員についても個別労働関係紛争が増加することが見込まれるため、労働関係に関するあらゆる事項についての紛争を対象とした紛争解決制度を船員の分野においても整備するものであること。

この場合、船員に係る個別労働関係紛争は、海上労働の特殊性に起因する固有の事案が想定され、紛争処理機関は別途担保することが必要であるため、本法に船員に関する特例規定として読み替え規定を設けるものとしたこと。

第10 適用除外(法第22条関係)

1 趣旨

(1) 国家公務員及び地方公務員については、勤務条件、任用、懲戒、分限等が法律、人事院規則、条例等で定められているとともに、勤務条件に関する措置要求制度や懲戒・分限等の不利益処分に対する不服申立制度などが整備されており、これらによって紛争の未然防止及び解決が十分図られるところであることから、本法を適用する必要がないため、原則的に本法を適用除外としたものであること。

(2) ただし、一部の公務員については、勤務条件が法律、人事院規則等で定められておらず、また、勤務条件に関する措置要求制度が適用されないことなどから、個別労働関係紛争が生じた場合には、一般の労働者と同様に本法によって解決を促進することが必要であることから、これらの公務員に係る勤務条件に関する事項についての紛争については、本法を適用することとしたものであること。

2 適用除外とはならずに法が適用される範囲

(1) 本法が適用される範囲は、次に掲げる公務員の勤務条件に関する事項についての紛争であること。

イ 特定独立行政法人等の労働関係に関する法律第2条第4号の職員

ロ 地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第15条第1項の企業職員

ハ 地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第47条の職員

ニ 地方公務員法(昭和25年法律第261号)第57条に規定する単純な労務に雇用される一般職に属する地方公務員であって地方公営企業等の労働関係に関する法律(昭和27年法律第289号)第3条第4号の職員以外のもの

(2) 「勤務条件」とは、国家公務員法及び地方公務員法に定める「勤務条件」と同義で、職員が勤務を提供することについて存する諸条件をいい、具体的には、給与、勤務時間、休暇、勤務環境等が含まれるものであること。

なお、職場のいじめ、セクシュアルハラスメント等に関することは「勤務条件」に含まれるが、任用、分限、懲戒、服務(守秘義務等)等に関することについては「勤務条件」に含まれないものであること。

第11 附則

1 施行期日(法附則第1条関係)

法の施行の日は、平成13年10月1日としたものであること。

2 労働基準法の一部改正(法附則第2条関係)

(1) 労働基準法(昭和22年法律第49号)第105条の3に基づく都道府県労働局長の助言及び指導制度については、新たな制度に統合されるため、当該規定を削除するものとしたこと。

(2) 平成13年9月30日までに、改正前の労働基準法第105条の3第1項の規定に基づき、都道府県労働局長に対して援助の申出がなされた事案については、平成13年10月1日以降は、法第4条の規定に基づく都道府県労働局長に対する申出とみなして、助言又は指導の手続を行うこととすること。

3 男女雇用機会均等法の一部改正(法附則第5条関係)

男女雇用機会均等法に定める都道府県労働局長による助言・指導・勧告制度及び機会均等調停委員会による調停制度は、同法に規定する事項に係る担保措置として設けられているものであることから、法に基づく都道府県労働局長による助言・指導制度及び紛争調整委員会によるあっせん制度とは別体系のものとしたものであること。