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農薬等の成分である物質

分析対象化合物

イオドスルフロンメチル

イオドスルフロンメチル及びイオドスルフロンメチルナトリウム塩

エタメツルフロンメチル

エタメツルフロンメチル

エトキシスルフロン

エトキシスルフロン

シノスルフロン

シノスルフロン

スルホスルフロン

スルホスルフロン

トリアスルフロン

トリアスルフロン

ニコスルフロン

ニコスルフロン

ピラゾスルフロンエチル

ピラゾスルフロンエチル

プリミスルフロンメチル

プリミスルフロンメチル

プロスルフロン

プロスルフロン

リムスルフロン

リムスルフロン

2.装置

液体クロマトグラフ・質量分析計(LC/MS)

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。

酸性アルミナミニカラム(1,710mg) 内径9~10mmのポリエチレン製のカラム管に、酸性アルミナ1,710mgを充てんしたもの又はこれと同等の分離特性を有するものを用いる。

ジビニルベンゼン―N―ビニルピロリドン共重合体ミニカラム(500mg) 内径12~13mmのポリエチレン製のカラム管に、ジビニルベンゼン―N―ビニルピロリドン共重合体500mgを充てんしたもの又はこれと同等の分離特性を有するものを用いる。

イオドスルフロンメチル標準品 本品はイオドスルフロンメチルナトリウム塩92%以上を含み、融点は152℃である。

エタメツルフロンメチル標準品 本品はエタメツルフロンメチル98%以上を含み、融点は194℃である。

エトキシスルフロン標準品 本品はエトキシスルフロン97%以上を含み、融点は144~147℃である。

シノスルフロン標準品 本品はシノスルフロン97%以上を含み、融点は127~135℃である。

スルホスルフロン標準品 本品はスルホスルフロン98%以上を含み、融点は201~202℃である。

トリアスルフロン標準品 本品はトリアスルフロン97%以上を含み、融点は178℃である。

ニコスルフロン標準品 本品はニコスルフロン98%以上を含み、融点は169~172℃である。

ピラゾスルフロンエチル標準品 本品はピラゾスルフロンエチル98%以上を含み、融点は178~180℃である。

プリミスルフロンメチル標準品 本品はプリミスルフロンメチル99%以上を含み、融点は195~197℃である。

プロスルフロン標準品 本品はプロスルフロン98%以上を含み、融点は155℃である。

リムスルフロン標準品 本品はリムスルフロン99%以上を含み、融点は172~173℃である。

4.試験溶液の調製

1) 抽出

穀類、豆類及び種実類の場合は試料10.0gを量り採り、水30mLを加え、2時間放置する。果実、野菜及びハーブの場合は試料20.0gを量り採る。

これにアセトン100mLを加え、60分間(果実、野菜及びハーブの場合は30分間)振とうした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトン50mLを加え、洗いこみ、上記と同様にろ過する。ろ液を合わせ、40℃以下で約30mLに濃縮する。

これに10%塩化ナトリウム溶液100mL及び1mol/L塩酸10mLを加え、酢酸エチル50mLずつで2回振とう抽出する。抽出液を合わせ、n―ヘキサン100mLを加え、2%リン酸水素二カリウム溶液50mLずつで2回振とう抽出する。この抽出液に塩化ナトリウム10g及び6mol/L塩酸3mLを加え、酢酸エチル50mLずつで2回振とう抽出する。抽出液を合わせ、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトンを加えて溶かし、正確に10mL(果実、野菜及びハーブの場合は20mL)とする。

2) 精製

① 酸性アルミナカラムクロマトグラフィー

酸性アルミナミニカラム(1,710mg)にアセトニトリル10mL及びアセトン10mLを順次注入し、各流出液は捨てる。このカラムに1)で得られた溶液の2mLを注入した後、流出液は捨てる。さらに、アセトン8mL及びアセトニトリル20mLを順次注入し、各流出液は捨てる。次いで、アセトニトリル及び水(9:1)混液10mLを注入する。溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物に水10mLを加えて溶かす。

② ジビニルベンゼン―N―ビニルピロリドン共重合体カラムクロマトグラフィー

ジビニルベンゼン―N―ビニルピロリドン共重合体ミニカラム(500mg)にメタノール10mL及び水10mLを順次注入し、各流出液は捨てる。このカラムに①で得られた溶液を注入した後、流出液は捨てる。さらに、水及びメタノール(4:1)混液10mLを注入し、流出液は捨てる。次いで、メタノール15mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトニトリル及び水(1:1)混液に溶解し、正確に1mLとしたものを試験溶液とする。

5.検量線の作成

イオドスルフロンメチル、エタメツルフロンメチル、エトキシスルフロン、シノスルフロン、スルホスルフロン、トリアスルフロン、ニコスルフロン、ピラゾスルフロンエチル、プリミスルフロンメチル、プロスルフロン及びリムスルフロンの各標準品の0.02~0.4mg/Lアセトニトリル及び水(1:1)混液混合溶液を数点調製し、それぞれ4μLをLC/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量

試験溶液4μLをLC/MSに注入し、5の検量線でイオドスルフロンメチル、エタメツルフロンメチル、エトキシスルフロン、シノスルフロン、スルホスルフロン、トリアスルフロン、ニコスルフロン、ピラゾスルフロンエチル、プリミスルフロンメチル、プロスルフロン及びリムスルフロンの含量を求める。

イオドスルフロンメチルにあっては、係数0.96を乗じてナトリウム塩からイオドスルフロンメチルへの換算を行う。

7.確認試験

LC/MSにより確認する。

8.測定条件

LC/MS

1) エタメツルフロンメチル、エトキシスルフロン、シノスルフロン、スルホスルフロン、トリアスルフロン、ニコスルフロン、ピラゾスルフロンエチル、プリミスルフロンメチル及びリムスルフロンの場合

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm)内径2~3mm、長さ150mm

カラム温度:40℃

移動相:1%ギ酸からアセトニトリル及び1%ギ酸(19:1)混液までの濃度勾配を20分間で行う。

イオン化モード:ESI(+)

主なイオン(m/z):

エタメツルフロンメチル及びニコスルフロン;411

エトキシスルフロン;399、シノスルフロン;414

スルホスルフロン;471、トリアスルフロン;402

ピラゾスルフロンエチル;415、プリミスルフロンメチル;469

リムスルフロン;432

保持時間の目安:プリミスルフロンメチル20分

2) イオドスルフロンメチル及びプロスルフロンの場合

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm)内径2~3mm、長さ150mm

カラム温度:40℃

移動相:1%ギ酸からアセトニトリル及び1%ギ酸(19:1)混液までの濃度勾配を20分間で行う。

イオン化モード:ESI(-)

主なイオン(m/z):イオドスルフロンメチル;506、プロスルフロン;418

保持時間の目安:プロスルフロン19.5分

9.定量限界

0.01mg/kg

10.留意事項

1) 試験法の概要

イオドスルフロンメチル、エタメツルフロンメチル、エトキシスルフロン、シノスルフロン、スルホスルフロン、トリアスルフロン、ニコスルフロン、ピラゾスルフロンエチル、プリミスルフロンメチル、プロスルフロン及びリムスルフロンを試料からアセトンで抽出し、酸性下で酢酸エチルに転溶し、リン酸水素二カリウム溶液で逆抽出する。これを再び酸性下で酢酸エチルに転溶し、酸性アルミナミニカラム及びジビニルベンゼン―N―ビニルピロリドン共重合体ミニカラムで精製した後、LC/MSで測定し、確認する方法である。

2) 注意点

① プリミスルフロンメチルについては、リン酸水素二カリウム溶液での逆抽出において、抽出率がやや低いので、注意が必要である。

② 本測定条件における各農薬の保持時間は16~21分である。

③ 試料によっては妨害ピークが重なる場合がある。その場合は、長さ250mmのカラムを使用するとよい。

11.参考文献

厚生労働省告示第94号「アジムスルフロン、ハロスルフロンメチル及びフラザスルフロン試験法」(平成14年3月13日)

環境省告示第13号「エトキシスルフロン試験法」(平成10年4月24日)

環境省告示第35号「シノスルフロン試験法」(平成2年4月10日)

環境省告示第88号「ピラゾスルフロンエチル試験法」(平成元年11月16日)

12.類型

C

オキソリニック酸試験法(農産物)

1.分析対象化合物

オキソリニック酸

2.装置

蛍光光度型検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC―FL)

液体クロマトグラフ・質量分析計(LC/MS)

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。

液相分離ろ紙 液相分離ろ紙(化学分析用ろ紙をシリコン処理したもの)

トリ―n―オクチルアミン トリ―n―オクチルアミン(純度97%以上のもの)

オキソリニック酸標準品 本品はオキソリニック酸99%以上を含み、融点は250℃以上である。

4.試験溶液の調製

1) 抽出

穀類の場合は、試料10.0gに水20mLを加え、2時間放置する。

果実、野菜及びハーブの場合は、試料20.0gを量り採る。

これに12mol/L塩酸及びメタノール(1:9)混液100mLを加え、振とうした後、ガラス繊維ろ紙を用いて吸引ろ過する。ろ紙上の残留物を同混液50mLで洗浄し、ろ液を合わせ、5%塩化ナトリウム溶液200mLを加え、ジクロロメタン50mLずつで2回振とう抽出する。ジクロロメタン層を合わせ、液相分離ろ紙を用いてろ過し、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。

この残留物を4mol/L水酸化カリウム溶液及びメタノール(1:3)混液5mLに溶かし、10%塩化ナトリウム溶液50mL及びジクロロメタン50mLを加え、振とうする。水層を採り、これに1.2mol/L塩酸30mLを加え、ジクロロメタン50mLずつで2回振とう抽出する。ジクロロメタン層を合わせ、液相分離ろ紙を用いてろ過し、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をジクロロメタン10mLに溶かす。

2) 精製

シリカゲルミニカラム(690mg)にジクロロメタン5mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに1)で得られた溶液を注入し、流出液は捨てる。さらにアセトン8mL及び8.5%リン酸溶液0.8mLを順次注入し、各流出液は捨てる。次いで、ジクロロメタン15mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物を4mol/L水酸化カリウム及びメタノール(1:3)混液に溶解し、正確に8mL(穀類の場合は4mL)としたものを試験溶液とする。

5.検量線の作成

オキソリニック酸標準品を4mol/L水酸化カリウム溶液及びメタノール(1:3)混液に溶解し、0.025~0.5mg/Lの標準溶液を調製する。この20μLをHPLCに注入してピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量

試験溶液20μLをHPLCに注入し、5の検量線でオキソリニック酸の含量を求める。

7.確認試験

LC/MSにより確認する。

8.測定条件

HPLC

検出器:FL(励起波長270nm、蛍光波長370nm)

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル、内径2~6mm、長さ150~300mm

カラム温度:40℃

移動相:アセトニトリル、0.5%クエン酸溶液及び0.3%トリ―n―オクチルアミン・テトラヒドロフラン溶液(1:8:1)混液

流量:1mL/min

保持時間の目安:6分

LC/MS

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm)内径2mm、長さ150mm

カラム温度:40℃

移動相:0.01%酢酸及びアセトニトリル(7:3)混液から100%アセトニトリルまでの濃度勾配を20分間で行う。

イオン化モード:ESI(+)

主なイオン(m/z):262

保持時間の目安:10分

9.定量限界

0.01mg/kg

10.留意事項

1) 試験法の概要

オキソリニック酸を試料から塩酸酸性下でメタノール抽出し、ジクロロメタンに転溶する。酸・アルカリ分配及びシリカゲルミニカラムによる精製の後、HPLC―FLで測定し、LC/MSで確認する方法である。

11.参考文献

1) 上路雅子ら、2002年度版残留農薬分析法、391頁、ソフトサイエンス社

12.類型

A(環境省告示第73号「オキソリニック酸試験法」平成7年11月28日)

カルタップ、ベンスルタップ及びチオシクラム試験法(農産物)

1.分析対象化合物

カルタップ、カルタップ塩酸塩

ベンスルタップ

チオシクラム、チオシクラムシュウ酸塩

ネライストキシン、ネライストキシンシュウ酸塩

2.装置

アルカリ熱イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(GC―FTD)、高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ(GC―NPD)又は炎光光度型検出器(イオウ用干渉フィルター、波長394nm)付きガスクロマトグラフ(GC―FPD(S))

ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS)

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。

多孔性ケイソウ土カラム(50mL保持用) 内径40mmのポリエチレン製のカラム管に、試料50mL保持相当量の多孔性ケイソウ土を充てんしたもの又はこれと同等の性能を有するものを用いる。

ネライストキシンシュウ酸塩標準品 本品はネライストキシンシュウ酸塩99%以上を含み、融点は168~170℃である。

4.試験溶液の調製

1) 抽出

① 穀類及び種実類の場合

試料10.0gを量り採り、1%L―システイン塩酸塩含有0.1mol/L塩酸20mLを加え、2時間放置する。これに同溶液100mLを加え、振とう機を用いて30分間激しく振り混ぜた後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、同溶液50mLを加えて振とうし、上記と同様にろ過する。得られたろ液に同溶液を加えて正確に200mLとする。

② 果実、野菜及びハーブの場合

検体約1kgを精密に量り、1%L―システイン塩酸塩含有0.1mol/L塩酸1,000mLを量って加え、細切均一化する。検体20.0gに相当する試料に同溶液100mLを加え、振とう機を用いて30分間激しく振り混ぜた後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、同溶液50mLを加えて振とうし、上記と同様にろ過を行う。得られたろ液に同溶液を加えて正確に200mLとする。

③ 抹茶及びホップの場合

試料5.00gを量り採り、1%L―システイン塩酸塩含有0.1mol/L塩酸20mLを加え、2時間放置する。これに同溶液100mLを加え、振とう機を用いて30分間激しく振り混ぜた後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、同溶液50mLを加えて振とうし、上記と同様にろ過を行う。得られたろ液に同溶液を加えて正確に200mLとする。

④ 抹茶以外の茶の場合

検体9.00gを100℃の水540mLに浸し、室温で5分間放置した後、ろ過し、冷後ろ液180mLを採る。これにL―システイン塩酸塩2g及び6mol/L塩酸3mLを加え、5分間振とう後、0.1mol/L塩酸を加えて正確に200mLとする。

2) 加水分解及び酸化

抽出液の40mLを採り、これに2%塩化ニッケル水溶液2mL及びアンモニア水5mLを加え、15分間振とうする。

3) 精製

多孔性ケイソウ土カラム(50mL保持用)に、2)で得られた溶液を注入し、10分間放置する。次いで、n―ヘキサン150mLを注入し、溶出液を30℃以下で約1mLに濃縮した後、自然乾固により溶媒を除去する。この残留物をメタノールに溶解し、正確に4mL(穀類及び種実類の場合は2mL)としたものを試験溶液とする。

5.検量線の作成

ネライストキシンシュウ酸塩標準品の0.008~0.16mg/Lメタノール溶液を数点調製し、それぞれ4μLをGCに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量

試験溶液4μLをGCに注入し、5の検量線でネライストキシンシュウ酸塩の含量を求め、換算係数1.14を乗じてカルタップ塩酸塩としての含量を求める。

7.確認試験

GC/MSにより確認する。

8.測定条件

1) GC

検出器:FTD、NPD又はFPD(S)

カラム:50%トリフルオロプロピル―メチルシリコン、内径0.53mm、長さ15m、膜厚1μm

カラム温度:70℃(1分)-8℃/分-160℃(5分)

注入口温度:250℃

検出器温度:280℃

保持時間の目安:5分

2) GC/MS

カラム:5%フェニル―メチルシリコン、内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm

カラム温度:70℃(1分)-10℃/分-280℃(5分)

注入口温度:250℃

キャリヤーガス:ヘリウム

イオン化モード(電圧):EI(70eV)

主なイオン(m/z):149、103、70

注入量:1μL

保持時間の目安:8分

9.定量限界

カルタップ塩酸塩として0.01mg/kg(抹茶及びホップの場合は、0.04mg/kg、抹茶以外の茶の場合は、0.07mg/kg)

10.留意事項

1) 試験法の概要

カルタップ、ベンスルタップ及びチオシクラムを試料から1%L―システイン塩酸塩含有0.1mol/L塩酸で抽出し、塩基性条件下で加水分解及び酸化により共通代謝物であるネライストキシンに変換する。多孔性ケイソウ土カラムで精製した後、GC―FTD、GC―NPD又はGC―FPD(S)で測定し、GC/MSで確認する方法である。なお、分析値は、得られたネライストキシンシュウ酸塩の含量に換算係数1.14を乗じて、カルタップ、ベンスルタップ及びチオシクラムの総和をカルタップ塩酸塩に換算して求める。

2) 注意点

① 本試験法は、カルタップ、ベンスルタップ及びチオシクラムを共通代謝物であるネライストキシンに変換し、ネライストキシンシュウ酸塩の含量に換算係数1.14を乗じてカルタップ塩酸塩としての含量を求める方法である。ベンスルタップやチオシクラムの各含量を求める場合は、換算係数は、それぞれ1.80及び1.13となる。

② 細切均一化の段階では、安定剤として1%L―システイン塩酸塩含有0.1mol/L塩酸溶液を添加する必要がある。粉砕試料を用いて回収試験を実施する場合は、標準溶液を添加する前に、安定剤を加える必要がある。なお、L―システイン塩酸塩はベンスルタップ及びチオシクラムの分析に必要であり、カルタップでは必ずしも必要としない。

③ 共通代謝物であるネライストキシンは揮発性が高いので、減圧濃縮する場合は、温度(30℃以下)や濃縮液量(1mL程度)に注意する必要がある。最後は自然乾固する。

④ 追加精製として、グラファイトカーボンミニカラムやアミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラムによる方法がある。以下に操作概要を記す。

a.グラファイトカーボンミニカラム(500mg):残留物をアセトン及びn―ヘキサン(1:9)混液10mLに溶解し、これをカラム(アセトン10mL及びn―ヘキサン10mLで順次洗浄したもの)に負荷し、アセトン及びn―ヘキサン(1:9)混液15mLを流下し、全溶出液を採る。

b.アミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラム(360mg):残留物をアセトン及びn―ヘキサン(1:9)混液10mLに溶解し、これをカラム(アセトン10mL及びn―ヘキサン10mLで順次洗浄したもの)に負荷し、アセトン及びn―ヘキサン(1:9)混液15mLを流下し、全溶出液を採る。

⑤ 妨害ピークを回避するための代替用GCカラムを以下に記す。カラム1:35%フェニル―メチルシリコン(内径0.53mm、長さ30m、カラム温度80℃(1分)-8℃/分-160℃)。カラム2:ポリエチレングリコール(内径0.53mm、長さ30m、カラム温度80℃(1分)-15℃/分-200℃)。

⑥ LC/MSを用いて確認することも可能である。カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径3μm)、内径2mm、長さ75mm、移動相:アセトニトリル及び1mmol/Lペンタデカフルオロオクタン酸(3:7)混液、イオン化モード:ESI(+)、主なイオン(m/z):150、注入量:2μL、保持時間の目安:4分(文献4)。

11.参考文献

1) 環境省告示第84号「カルタップ試験法」(平成2年4月10日)

2) 環境省告示第160号「ベンスルタップ試験法」(昭和61年4月14日)

3) 環境省告示第110号「チオシクラム試験法」(昭和61年10月28日)

4) 小林まなみ、河野真一(島津製作所、分析計測事業部報告、平成16年9月17日)

12.類型

C

カルベンダジム、チオファネート、チオファネートメチル及びベノミル試験法(農産物)

1.分析対象化合物

カルベンダジム

チオファネート

チオファネートメチル

ベノミル

2.装置

蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC―FL)

液体クロマトグラフ・質量分析計(LC/MS)

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。

カルベンダジム標準品 本品はカルベンダジム99%以上を含み、融点は302~307℃である。

チオファネート標準品 本品はチオファネート99%以上を含み、融点は195℃である。

4.試験溶液の調製

1) 抽出

① 穀類、豆類、種実類、果実、野菜、ハーブ、抹茶及びホップの場合

穀類、豆類及び種実類の場合は、試料10.0gに、水20mLを加え、2時間放置する。

果実、野菜及びハーブの場合は、試料20.0gを量り採る。

抹茶及びホップの場合は、試料5.00gに、水20mLを加え、2時間放置する。

これにメタノール100mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、メタノール50mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせて、40℃以下で約30mLに濃縮する。

これに10%塩化ナトリウム溶液100mLを加え、n―ヘキサン50mLずつで2回振とう洗浄する。水層に1mol/L水酸化ナトリウム溶液5mLを加え、酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)混液100mL及び50mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液に酢酸0.5mLを加え、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトン1mLを加えて溶かす。

② 抹茶以外の茶の場合

試料9.00gに100℃の水540mLを加え、室温で5分間放置した後、ろ過する。冷後、ろ液360mLを採り、飽和酢酸鉛溶液2mLを加え、振り混ぜた後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物を水50mLで洗い、ろ液を合わせ、1mol/L硫酸3mLを加える。生じた沈殿をろ別した後、ろ液をn―ヘキサン50mLずつで2回振とう洗浄する。水層に1mol/L水酸化ナトリウム溶液5mLを加え、酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)混液100mL及び50mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液に酢酸0.5mLを加え、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトン1mLを加えて溶かす。

2) 閉環反応

1)で得られた溶液に50%酢酸10mL、酢酸銅100mg及び沸石を加え、還流冷却器を取り付けて、120℃で30分間加熱還流した後、放冷する。

これに1mol/L塩酸50mLを加え、酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)混液20mLずつで2回振とう洗浄する。水層に飽和水酸化ナトリウム溶液10mLを加え、酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)混液100mL及び50mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をメタノールに溶解し、正確に2mL(穀類、豆類及び種実類の場合は1mL)としたものを試験溶液とする。

但し、抹茶及びホップの場合は、メタノールの代わりにアセトン及びn―ヘキサン(3:17)混液に溶解し、正確に2mLとし、次の精製を追加する。

3) 精製(抹茶及びホップの場合)

エチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲルミニカラム(500mg)にアセトン及びn―ヘキサン(3:17)混液10mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに2)で得られた溶液0.5mLを注入し、流出液は捨てる。さらに、アセトン及びn―ヘキサン(3:17)混液10mLを注入し、流出液は捨てる。次いで、アセトン及びn―ヘキサン混液(3:7)20mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をメタノールに溶解し、正確に0.5mLとしたものを試験溶液とする。

5.検量線の作成

カルベンダジム標準品及びチオファネート標準品の20mg/Lアセトン混合標準溶液を調製し、この1mLについて4の2)閉環反応と同様の操作を行い、その残留物にメタノールを加えて溶かし、10mLとする。この溶液をメタノールで希釈し、0.1~2mg/Lメタノール溶液を数点調製し、それぞれ20μLをHPLCに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量

試験溶液20μLをHPLCに注入し、5の検量線でカルベンダジム及びチオファネートの含量を求める。チオファネートの含量に係数0.52を掛けてカルベンダジムに換算したものとカルベンダジム含量の和を分析値とする。

7.確認試験

LC/MSで確認する。

8.測定条件

1) HPLC

検出器:FL(励起波長285nm、蛍光波長315nm)

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm)、内径4.6mm、長さ150~250mm

カラム温度:50℃

移動相:アセトニトリル及び水(3:7)混液

注入量:20μL

保持時間の目安:カルベンダジム 6分

エチル2―ベンゾイミダゾールカルバマート 10分

2) LC/MS

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径3~5μm)、内径2.0~4.6mm、長さ150~250mm

カラム温度:50℃

移動相:アセトニトリル及び水(3:7)混液

イオン化モード:ESI(+)

主なイオン(m/z):229、192、160

注入量:20μL

保持時間の目安:カルベンダジム7分

9.定量限界

穀類、豆類、種実類、果実、野菜及びハーブ:0.01mg/kg(カルベンダジムとして)

抹茶及びホップ:0.04mg/kg(カルベンダジムとして)

抹茶以外の茶:0.1mg/kg(カルベンダジムとして)

10.留意事項

1) 試験法の概要

カルベンダジム、チオファネート、チオファネートメチル及びベノミルを試料からメタノールで抽出し、n―ヘキサンで洗浄した後、塩基性下で酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)混液に転溶する。この間にメタノールによりベノミルはカルベンダジム(メチル2―ベンゾイミダゾールカルバマート:MBC)に変化する。次いで、酢酸及び酢酸銅溶液中で加熱還流(閉環反応)し、チオファネートメチルをカルベンダジムに、チオファネートを(エチル2―ベンゾイミダゾールカルバマート:EBC)に変換する。カルベンダジム及びEBCを酸性下で酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)混液で洗浄した後、塩基性下で酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)混液で抽出し、抹茶及びホップ以外の作物ではそのまま、抹茶及びホップの場合はエチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲルミニカラムで精製した後、HPLC―FLで測定し、LC/MSで確認する方法である。チオファネートの含量に係数0.52を掛け、カルベンダジムに換算し、カルベンダジムの含量と合わせる。

2) 注意点

① 抽出時の酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)混液への転溶は、pH8以上で行う。

② 閉環反応後の酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)混液による抽出はpH7~8で行う。

③ カルベンダジム、チオファネート及びチオファネートメチルは閉環反応における回収率が低いため、検量線は閉環反応を行ったカルベンダジム及びチオファネートを用いて作成する。120℃で閉環反応を行った場合の回収率は、カルベンダジムが約73%、チオファネートメチルが約60%である。したがって、チオファネートメチルの残留が疑われる場合は、チオファネートメチル標準品について閉環反応を行い、生成したカルベンダジムを用いて検量線を作成することが望ましい。

④ 閉環反応における温度制御は、油浴あるいはアルミ製ヒートブロック等を用いて行うことが可能である。

11.参考文献

1) 環境省告示第161号「ベノミル試験法」(昭和49年12月23日)

2) 環境省告示第40号「チオファネートメチル試験法」(昭和51年6月11日)

12.類型

C

カルボスルファン、カルボフラン、フラチオカルブ及びベンフラカルブ試験法(農産物)

1.分析対象化合物

農薬等の成分である物質

分析対象化合物

カルボスルファン

カルボスルファン

 

カルボフラン

 

2,3―ジヒドロ―2,2―ジメチル―3―ヒドロキシ―7―ベンゾフラニル N―メチルカルバマート(以下「3OH―カルボフラン」という)

 

3OH―カルボフラン配糖体

カルボフラン

カルボフラン

 

3OH―カルボフラン

 

3OH―カルボフラン配糖体

フラチオカルブ

フラチオカルブ

 

カルボフラン

 

3OH―カルボフラン

 

3OH―カルボフラン配糖体

ベンフラカルブ

ベンフラカルブ

 

カルボフラン

 

3OH―カルボフラン

 

3OH―カルボフラン配糖体

2.装置

アルカリ熱イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(GC―FTD)又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ(GC―NPD)

ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS)

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。

5%含水シリカゲル カラムクロマトグラフィー用シリカゲル(粒径63~200μm)を130℃で12時間以上加熱した後、デシケーター中で放冷する。これに5%含水となるよう水を加える。

グラファイトカーボンミニカラム(500mg) 内径12~13mmのポリエチレン製のカラムに、グラファイトカーボン500mgを充てんしたもの又はこれと同等の分離特性を有するもの。

リン酸緩衝液(pH8) 1/15mol/Lのリン酸緩衝液(pH8)

カルボスルファン標準品 本品はカルボスルファン99%以上を含む。

カルボフラン標準品 本品はカルボフラン99%以上を含み、融点は153~154℃である。

フラチオカルブ標準品 本品はフラチオカルブ99%以上を含む。

ベンフラカルブ標準品 本品はベンフラカルブ99%以上を含む。

3OH―カルボフラン標準品 本品は3OH―カルボフラン99%以上を含む。

4.試験溶液の調製

1) カルボスルファン、カルボフラン、フラチオカルブ及びベンフラカルブ試験溶液

① 抽出

a.穀類、豆類及び種実類の場合

試料10.0gを量り採り、0.1mol/L硝酸銀溶液2mL及びリン酸緩衝液(pH8)20mLを加え、2時間放置する。

これにアセトン100mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトン50mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。ろ液を合わせ、アセトンを加えて正確に200mLとする。この100mLを採り、40℃以下で約20mLに濃縮する。これに10%塩化ナトリウム溶液100mLを加え、酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)混液100mL及び50mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。

この残留物にn―ヘキサン50mLを加え、n―ヘキサン飽和アセトニトリル50mLずつで2回振とう抽出する。抽出液を合わせ、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物に酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)混液5mLを加えて溶かす。

b.果実、野菜、ハーブ、茶及びホップの場合

果実、野菜及びハーブの場合は、検体約1kgを精密に量り、リン酸緩衝液(pH8)1,000mLを加え、細切均一化する。検体20.0gに相当する量を量り採る。

茶及びホップの場合は、試料5.00gを量り採り、リン酸緩衝液(pH8)20mLを加え、2時間放置する。

これに0.1mol/L硝酸銀溶液2mL及びアセトン100mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトン50mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過を行う。ろ液を合わせ、アセトンを加えて正確に200mLとする。この100mLを採り、40℃以下で約20mLに濃縮する。これに10%塩化ナトリウム溶液100mLを加え、酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)混液100mL及び50mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物に酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)混液5mLを加えて溶かす。

② 精製

a.グラファイトカーボンカラムクロマトグラフィー

グラファイトカーボンミニカラム(500mg)に酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)混液10mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに①で得られた溶液を注入し、さらに、酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)混液15mLを注入し、全溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物に酢酸エチル及びn―ヘキサン(3:7)混液5mLを加えて溶かす。

b.アミノプロピルシリル化シルカゲルカラムクロマトグラフィー

アミノプロピルシリル化シルカゲルミニカラム(360mg)に酢酸エチル及びn―ヘキサン(3:7)混液10mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムにa.で得られた溶液を注入し、さらに、酢酸エチル及びn―ヘキサン(3:7)混液10mLを注入し、全溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトンに溶解し、正確に2mL(穀類、豆類及び種実類の場合は1mL)としたものを試験溶液とする。

2) 3OH―カルボフラン試験溶液

① 抽出

穀類、豆類、種実類、茶及びホップの場合は、試料5.00gを量り採り、0.25mol/L塩酸150mLを加え、冷却管を取り付け、1時間加熱還流する。

果実、野菜及びハーブの場合は、検体約1kgを精密に量り、リン酸緩衝液(pH8)1,000mLを加え、細切均一化する。検体10.0gに相当する試料に0.32mol/L塩酸150mLを加え、冷却管を取り付け、1時間加熱還流する。

放冷後、冷却管を少量の水で洗い、洗液を加熱分解液に合わせ、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物を0.25mol/L塩酸50mLで洗い、ろ液を合わせ、これに塩化ナトリウム60gを加え、酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)混液100mL及び50mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物に酢酸エチル及びn―ヘキサン(2:3)混液10mLを加えて溶かす。

② 精製

クロマトグラフ管(内径15mm)に5%含水シリカゲル10gを酢酸エチル及びn―ヘキサン(2:3)混液に懸濁させて充てんし、無水硫酸ナトリウム約5gを積層する。このカラムに、①で得られた溶液を注入し、流出液は捨てる。さらに、酢酸エチル及びn―ヘキサン(2:3)混液120mLを注入し、流出液は捨てる。次いで、同混液200mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトンに溶解し、正確に2mL(穀類、豆類及び種実類の場合は1mL、茶及びホップの場合は4mL)としたものを試験溶液とする。

5.検量線の作成

カルボスルファン、カルボフラン、フラチオカルブ及びベンフラカルブ標準品については、それぞれのアセトン溶液を調製し、それらを同一の割合で混合した後、それぞれ0.05~1mg/Lアセトン溶液を数点調製する。3OH―カルボフラン標準品については、0.05~1mg/Lアセトン溶液を数点調製する。それぞれ2μLをGCに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量

試験溶液2μLをGCに注入し、5の検量線でカルボスルファン、カルボフラン、フラチオカルブ、ベンフラカルブ及び3OH―カルボフランの含量を求め、カルボフランについては、次式①により、3OH―カルボフランを含むカルボフラン含量を求める。

カルボスルファン、フラチオカルブ及びベンフラカルブが検出された場合は、それぞれ次式②~④により、カルボフラン及び3OH―カルボフランを含むカルボスルファン、フラチオカルブ及びベンフラカルブ含量を求める。

① カルボフラン(代謝物を含む)の含量=カルボフランの含量+3OH―カルボフランの含量×0.93

② カルボスルファン(代謝物を含む)の含量=カルボスルファンの含量+カルボフランの含量×1.72+3OH―カルボフランの含量×1.60

③ フラチオカルブ(代謝物を含む)の含量=フラチオカルブの含量+カルボフランの含量×1.73+3OH―カルボフランの含量×1.61

④ ベンフラカルブ(代謝物を含む)の含量=ベンフラカルブの含量+カルボフランの含量×1.85+3OH―カルボフランの含量×1.73

7.確認試験

GC/MSにより確認する。

8.測定条件

1) GC

① カルボスルファン、カルボフラン、フラチオカルブ及びベンフラカルブの試験

検出器:FTD又はNPD

カラム:50%フェニル―メチルシリコン、内径0.53mm、長さ15m、膜厚1μm

カラム温度:180℃(5分)-15℃/分-250℃(5分)

注入口温度:260℃

検出器温度:280℃

保持時間の目安:カルボフラン4.5分、カルボスルファン10分、フラチオカルブ11.5分、ベンフラカルブ12.5分

② 3OH―カルボフランの試験

検出器:FTD又はNPD

カラム:50%フェニル―メチルシリコン、内径0.53mm、長さ15m、膜厚1μm

カラム温度:200℃

注入口温度:260℃

検出器温度:280℃

保持時間の目安:4.5分

2) GC/MS

① カルボスルファン、カルボフラン、フラチオカルブ及びベンフラカルブの試験

カラム:5%フェニル―メチルシリコン、内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm

カラム温度:100℃(1分)-10℃/分-280℃(15分)

注入口温度:250℃

キャリヤーガス:ヘリウム

イオン化モード(電圧):EI(70eV)

主なイオン(m/z):カルボフラン;221、164、149、カルボスルファン;323、160、118、フラチオカルブ;382、194、163、ベンフラカルブ;353、190、163

注入量:1μL

保持時間の目安:カルボフラン11分、カルボスルファン18分、フラチオカルブ18.5分、ベンフラカルブ19.5分

② 3OH―カルボフランの試験

カラム:5%フェニル―メチルシリコン、内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm

カラム温度:100℃(1分)-10℃/分-280℃(15分)

注入口温度:250℃

キャリヤーガス:ヘリウム

イオン化モード(電圧):EI(70eV)

主なイオン(m/z):180、147、137

注入量:1μL

保持時間の目安:8分

9.定量限界

カルボスルファン、カルボフラン、フラチオカルブ、ベンフラカルブ、3OH―カルボフラン:各0.01mg/kg(茶及びホップの場合は、0.04mg/kg)

10.留意事項

1) 試験法の概要

本法はカルボスルファン等4農薬(カルボスルファン、カルボフラン、フラチオカルブ、ベンフラカルブ)及びそれらの共通の変化生成物である3OH―カルボフランを分析対象とした方法である。

カルボスルファン等4農薬については、試料からアセトンで抽出し、酢酸エチル及びn―ヘキサン混液に転溶する。果実、野菜、ハーブ、茶及びホップはそのまま、穀類、豆類及び種実類はアセトニトリル/ヘキサン分配で脱脂した後、グラファイトカーボンミニカラム及びアミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラムにより精製し、GC―FTD又はGC―NPDで測定し、GC/MSで確認する方法である。

3OH―カルボフランについては、作物中で配糖体として存在している可能性があるので、試料に塩酸を加えて加熱還流し、配糖体を3OH―カルボフランに加水分解する。酢酸エチル及びn―ヘキサン混液に転溶した後、シリカゲルカラムにより精製し、GC―FTD又はGC―NPDで測定し、GC/MSで確認する方法である。

2) 注意点

① カルボスルファン、フラチオカルブ及びベンフラカルブの各化合物は、加水分解を受けやすく、分析値も変動しやすいので、抽出から試験溶液の作成までを速やかに、かつ正確に行う必要がある。

② 各化合物は熱安定性が低いので、内径0.53mmのカラムの使用が望ましい。

③ カルボスルファン等4農薬の試験溶液の調製において、精製が不十分な場合は、シリカゲルカラム(5g)[試料溶液を負荷した後、酢酸エチル及びn―ヘキサン(3:17)混液80mLで溶出]やオクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム(1,000mg)[試料溶液を負荷した後、アセトニトリル及び水(3:7)混液10mLで洗浄、アセトニトリル10mLで溶出]による精製を追加するとよい。

④ GC/MS測定では、食品の品目によっては感度が大幅に高まる場合がある。

⑤ LC/MSを用いて測定する方法もあるので、概略を記す。抽出液の一部(0.2g相当)をリン酸緩衝液で希釈し、オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム(360mg:メタノールで溶出)4)、グラファイトカーボンミニカラム(500mg:アセトニトリル及びトルエン(3:1)混液で溶出)5)又はスチレンジビニルベンゼン共重合体ミニカラム(500mg:テトラヒドロフランで溶出)6)で精製し、メタノール、アセトニトリル又はテトラヒドロフラン(2~10mL)に溶解し、試験溶液とする。

11.参考文献

1) 環境省告示第78号「カルボスルファン試験法」(昭和59年10月31日)

2) 環境省告示第45号「ベンフラカルブ試験法」(昭和61年10月28日)

3) 環境省告示第73号「フラチオカルブ試験法」(平成7年11月28日)

4) 東田ら、第29回日本農薬学会(2004年3月、神戸)

5) 東田、私信(2004年4月)

6) 藤田、私信(2004年5月)

12.類型

C

シアン化水素試験法(農産物)

1.分析対象化合物

シアン化水素

2.装置

シアン化水素水蒸気蒸留装置 図に示すものを用いる。

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。

塩化ナトリウム 塩化ナトリウム(容量分析用標準試薬)

0.02mol/L硝酸銀標準液 硝酸銀16.99gを水に溶かして1Lとし、0.1mol/L塩化ナトリウム溶液を用いて標定し、これを希釈したもの

炭酸ナトリウム・酢酸鉛試液 炭酸ナトリウム200gと酢酸鉛20gを別々に水に溶かし、混合して1Lとしたもの

4.試験溶液の調製

試料100gをシアン化水素水蒸気蒸留装置の蒸留フラスコ(容量1L)に量り採り、水を加えて約250mLとし、10%酒石酸溶液50mLを加える。冷却器の下端を2.5%水酸化ナトリウム溶液250mLを入れた受器の液中に浸し、蒸留フラスコに水蒸気を送り込み、留出液が400~500mLになるまで蒸留する。受器中の溶液を採り、n―ヘキサン20mLを加え、1分間振とうした後、水層を分取する。更にn―ヘキサン層に水50mLを加え、上記と同様に振とう及び分取を行う。水層を合わせ、これによく振り混ぜた炭酸ナトリウム・酢酸鉛試液を加え、沈殿が生じない場合はそのままこれを試験溶液とする。

沈殿が生じた場合は、ろ紙を用いて吸引ろ過し、必要があれば更に毎分3,000回転で約30分間遠心分離し、上澄み液をろ紙を用いて吸引ろ過し、遠心管内の残留物を蒸留水30mLで洗う。その洗液で、ろ紙上の残留物を洗い、洗液とろ液を合わせてこれを試験溶液とする。

5.定量

4で得られた試験溶液にアンモニア水10mL及び2%ヨウ化カリウム溶液10mLを加えて、0.02mol/L硝酸銀標準液で滴定し、かすかながら消えない濁りが生ずるまでに要した0.02mol/L硝酸銀標準液の量をAmLとする。別に空試験を行い、滴定に要した0.02mol/L硝酸銀標準液の量をBmLとする。シアン化水素の濃度(mg/kg)を次式により算出する。

試料中のシアン化水素の濃度(mg/kg)=(A-B)(mL)×1.08×1,000/試料重量(g)

6.定量限界

1mg/kg

7.留意事項

1) 試験法の概要

酸性下で水蒸気蒸留し、発生したシアン化水素を水酸化ナトリウム溶液で捕集する。留出液中のシアンイオンを硝酸銀で滴定し、白沈が生じた時点を終点とする。

硝酸銀の添加により、CNは可溶性のAg(CN)2となるが、CNが消費されるとAgIの沈殿が生じる。

2CN+Ag→Ag(CN)2

8.類型

A(環境省告示「シアン化水素試験法」)

ジノカップ試験法(農産物)

1.分析対象化合物

ジノカップ、ジノカップ分解物(2,4―ジニトロ―6―オクチルフェノール(以下、「2,4―DNOP」という。)及び2,6―ジニトロ―4―オクチルフェノール(以下、「2,6―DNOP」という。))

2.装置

液体クロマトグラフ・質量分析計(LC/MS)

3.試薬・試液

次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。

1mol/Lリン酸緩衝液(pH6.9) リン酸一カリウム68.0g及びリン酸二ナトリウム71.0gに水を加えて溶かし、1,000mLとする。

ジノカップ標準品 本品はジノカップ92%以上を含み、融点は138~140℃である。

4.試験溶液の調製

1) 抽出

穀類の場合は、試料10.0gに水20mLを加え、2時間放置する。果実及び野菜の場合は、試料10.0gを量り採る。

これにアセトニトリル50mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物をアセトニトリル20mLで洗浄、ろ過し、ろ液を合わせ、アセトニトリルを加えて正確に100mLとする。この20mLを採り、塩化ナトリウム10g及び1mol/Lリン酸緩衝液(pH6.9)20mLを加え、10分間振とうする。静置した後、分離した水層を捨てる。

2) 精製

オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム(500mg)にアセトニトリル10mLを注入し、流出液は捨てる。これに1)で得られたアセトニトリル溶液を注入し、さらに、アセトニトリル4mLを注入して、全溶出液を採り、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。

3) 加水分解

2)で得られた残留物をメタノール2mLに溶解し、1mol/L水酸化ナトリウム溶液10mLを加え、1分間振とうし、30分間放置する。反応液に1.2mol/L塩酸10mLを加え、n―ヘキサン20mLずつで2回振とう抽出する。この抽出液に、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をメタノールに溶解し、正確に10mLとしたものを試験溶液とする。

5.検量線の作成

ジノカップ標準品の100mg/Lメタノール溶液を調製し、この2mLを採り、4.3)と同様の操作を行い、その残留物にメタノールを加えて溶かし、10mLとし、ジノカップ分解物(2,4―DNOP及び2,6―DNOP)のメタノール溶液とする。これをメタノールで希釈し、ジノカップとして0.002~0.2mg/Lの標準溶液を数点調製し、それぞれ10μLをLC/MSに注入する。各異性体の濃度(ジノカップとしての値)を横軸にとり、ピーク高法又はピーク面積法で各異性体毎に検量線を作成する。

各異性体の濃度は、フラグメントイオンが生じないm/z295の条件で測定して得られた4本の異性体ピークの高さ比又は面積比を各異性体の存在比として算出する。

6.定量

試験溶液10μLをLC/MSに注入し、各異性体ピークの高さ又は面積を用いて、5の検量線でジノカップ分解物の各異性体の含量を求め、合算してジノカップの含量を求める。

7.確認試験

LC/MSにより確認する。

8.測定条件

LC/MS

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm)、内径2mm、長さ150mm

カラム温度:40℃

移動相:0.1%ギ酸及びメタノール混液(2:8)を1分間送液した後、(2:8)から(1:9)までの濃度勾配を2分間で行い、(1:9)で17分間送液する。次いで、(1:9)から(2:8)までの濃度勾配を2分間で行い、(2:8)で13分間送液する。

イオン化モード:ESI(-)

主なイオン(m/z):209、295

保持時間の目安:4本の異性体ピーク9~11分

9.定量限界

0.01mg/kg

10.留意事項

1) 試験法の概要

ジノカップ及びジノカップ分解物(2,4―DNOP及び2,6―DNOP)を試料からアセトニトリルで抽出し、塩析で水を除いた後、オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラムで精製後、アルカリで加水分解し、ジノカップをジノカップ分解物に変換する。酸性下でジノカップ分解物をn―ヘキサンで抽出し、LC/MSで測定及び確認する方法である。

2) 注意点

①通常、室温30分間放置の条件で、アルカリ加水分解の反応が完結するが、標準溶液等は、HPLC―UV又はGC/MSを用いて、ジノカップの未反応物が存在していないことを確認する。ジノカップはHPLC―UVで測定可能であり、ジノカップ及びジノカップ分解物はGC/MSでも測定可能であるが、いずれも感度が低いため、残留分析には使用できない。

②ジノカップ分解物のm/z295での測定は、農産物の種類によっては夾雑物ピークのために定量が困難であることから、夾雑物ピークが少ないm/z209(フラグメントイオン)で測定及び定量を行う。

③ジノカップは異性体(6種)の混合物である。本測定条件でジノカップ分解物として4本のピークが検出される。ジノカップ分解物の分子量は296.3であり、LC/MS(m/z295)による測定時の異性体ピークの面積比はHPLC―UV(260nm)による測定時とほぼ等しいが、フラグメントイオンであるm/z209で測定した場合は、HPLC―UV(260nm)測定による面積比とは異なる。そこで、LC/MS(m/z209)で測定し、異性体ピーク高さ又は面積の総和で定量すると、標準品と残留物の異性体組成比が異なる場合、誤差を生じるおそれがあるため、各異性体毎に定量した値を合計して分析値とする。

④夾雑物ピークによる妨害が認められた場合は、試験溶液を適宜希釈して測定を行う。

11.参考文献

1) 環境省告示第20号「ジノカップ試験法」(平成9年4月30日)

2) 農薬残留分析法研究班編「最新農薬の残留分析法」p.228―229、中央法規出版(1995)

12.類型

C

ダゾメット、メタム及びメチルイソチオシアネート試験法(農作物)

1.分析対象化合物

ダゾメット

メタム

メタムアンモニウム塩

メタムカリウム塩

メタムナトリウム塩

メチルイソチオシアネート

2.装置

アルカリ熱イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(GC―FTD)又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ(GC―NPD)

ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS)

ディーン・スターク蒸留装置

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。

メチルイソチオシアネート標準品 本品はメチルイソチオシアネート99%以上を含み、融点は35~36℃である。

液相分離ろ紙 化学分析用ろ紙をシリコン処理したもの

4.試験溶液の調製

1) 抽出