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フェンアミドン試験法(畜産物)

1.分析対象化合物

フェンアミドン

5―メチル―5―フェニルイミダゾリジン―2,4―ジオン(以下「MPID」という。)

2.装置

ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS)を用いる。

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則2に示すものを用いる。

フェンアミドン標準品 本品はフェンアミドン99%以上を含み、融点は137℃である。

MPID標準品 本品はMPID99%以上を含む。

スチレンジビニルベンゼン共重合体ミニカラム(500mg) 内径8~9mmのポリエチレン製のカラム管に、スチレンジビニルベンゼン共重合体500mgを充てんしたもの又はこれと同等の分離特性を有するものを用いる。

4.試験溶液の調製

1) 抽出

筋肉、脂肪、肝臓、腎臓及びその他の食用部分の場合は、その5.0gを量り採る。

乳の場合は、20.0gを量り採る。

これにアセトニトリル50mL、アセトニトリル飽和n―ヘキサン50mL及び無水硫酸ナトリウム10g(乳の場合は40g)を加え、3分間ホモジナイズした後、毎分3,000回転で5分間遠心分離を行う。アセトニトリル層を採り、n―ヘキサン層及び残留物にアセトニトリル50mLを加え上記と同様にホモジナイズ及び遠心分離を行う。得られたアセトニトリル層を先のアセトニトリル層に合わせ、40℃以下で濃縮し溶媒を除去する。この残留物に水及びメタノール(3:2)混液10mLを加えて溶かす。

2) 精製

① スチレンジビニルベンゼン共重合体カラムクロマトグラフィー及びグラファイトカーボンカラムクロマトグラフィー

スチレンジビニルベンゼン共重合体ミニカラム(500mg)にメタノール及び水各5mLを注入し、流出液は捨てる。グラファイトカーボンミニカラム(500mg)にメタノール5mLを注入し、流出液は捨てる。スチレンジビニルベンゼン共重合体ミニカラムに、1)で得られた溶液を注入した後、容器を水及びメタノール(3:2)混液10mLで洗い、洗液を先のカラムに注入し、流出液は捨てる。次いで、スチレンジビニルベンゼン共重合体ミニカラムの下部にグラファイトカーボンミニカラムを接続し、メタノール20mLを注入する。溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物に酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:19)混液5mLを加えて溶かす。

② アミノプロピルシリル化シリカゲルカラムクロマトグラフィー

アミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラム(1,000mg)に酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:19)混液5mLを注入し流出液は捨てる。このカラムに①で得られた溶液を注入した後、容器を酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:19)混液5mLで洗い、洗液を先のカラムに注入する操作を3回繰り返し、流出液は捨てる。次いで、酢酸エチル及びn―ヘキサン(3:7)混液20mLを注入し、溶出液を分取する(溶出液Ⅰ)。さらにアセトン及びn―ヘキサン(3:7)混液10mLを注入し、流出液を捨てた後、アセトン及びn―ヘキサン(3:7)混液20mLを注入し、溶出液を分取する(溶出液Ⅱ)。溶出液Ⅰを40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトンに溶解し、正確に1mLとしたものをフェンアミドン用試験溶液とする。溶出液Ⅱを同様に濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトンに溶解し、正確に1mLとしたものをMPID用試験溶液とする。

5.検量線の作成

フェンアミドン標準品の0.1~2mg/Lアセトン溶液及びMPID標準品の0.05~0.5mg/Lアセトン溶液を数点調製し、それぞれ2μLをGC/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量

試験溶液2μLをGC/MSに注入し、5の検量線でフェンアミドン及びMPIDの含量を求める。次式により、MPIDを含むフェンアミドンの含量を求める。

フェンアミドン(MPIDを含む。)の含量(ppm)=A+B×1.64

A:フェンアミドンの含量(ppm)

B:MPIDの含量(ppm)

7.測定条件

検出器:GC/MS

カラム:50%トリフルオロプロピルメチルシリコン、内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm

カラム温度:100℃(1分)-20℃/分-260℃(10分)

注入口温度:250℃

キャリヤーガス:ヘリウム

イオン化モード(電圧):EI(70eV)

主なイオン(m/z):フェンアミドン;311、268、238 MPID;175、104

保持時間の目安:フェンアミドン 8.4分、MPID 7.4分

8.定量限界

筋肉、脂肪、肝臓、腎臓及びその他の食用部分:

フェンアミドン 0.02mg/kg、MPID 0.01mg/kg

乳:フェンアミドン 0.005mg/kg、MPID 0.003mg/kg

9.留意事項

1) 分析値

フェンアミドン及びその代謝物であるMPIDのそれぞれについて定量を行い、MPIDについてはその含量に係数を乗じてフェンアミドンの含量に変換し、これらの和を分析値とすること。

2) 試験法の概要

フェンアミドン及びMPIDを試料からアセトニトリルで抽出し、アセトニトリル飽和n―ヘキサンで洗浄する。スチレンジビニルベンゼン共重合体ミニカラム、グラファイトカーボンミニカラム及びアミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラムにより精製した後、GC/MSで測定、確認する方法である。

3) 注意点

① MPID試験溶液の精製が不十分な場合は、シリカゲルミニカラム(1,000mg)による精製を追加するとよい。操作概要を以下に記す。アセトン及びn―ヘキサン(3:17)混液5mLでコンディショニングしたカラムに、MPID画分を同混液5mLで負荷、同混液15mLで洗浄、アセトン及びn―ヘキサン(1:1)混液10mLで溶出する。

② フェンアミドン及びMPIDの感度が試験溶液の注入前後で大幅に変動する場合がある為、あらかじめ試験溶液を数回注入して、感度を十分に安定させた後、測定を行う等の措置が必要である。

③ MPIDのGC/MS測定においてマイクロシリンジ及び注入口部でキャリーオーバー(メモリー効果)が起こる。特に高濃度のMPIDを注入した後は注入口を洗浄するためにアセトンを3、4回注入し、MPIDのピークが検出しないことを確認してから次の試験溶液の測定を行う必要がある。

10.参考文献

なし

11.類型

C

12.その他

ミニカラムについては、平成17年1月24日付け厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課事務連絡「食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法に係る分析上の留意事項について」の別添を参考にすること。

プロヒドロジャスモン試験法

1.分析対象化合物

プロヒドロジャスモン[n―プロピルジヒドロジャスモネート(以下「PDJ」という。)]

2.装置

ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS)

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。

PDJ標準品 本品は、PDJ 97%以上を含み、沸点は318℃である。

4.試験溶液の調製

1) 抽出

試料20.0gを量り採り、アセトン100mLを加え、3分間ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトン50mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせて、40℃以下で約20mLに濃縮する。これに10%塩化ナトリウム溶液50mLを加え、n―ヘキサン100mL及び50mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。残留物にn―ヘキサン20mLを加えて溶解した後、n―ヘキサン飽和アセトニトリル40mLずつで2回振とう抽出する。アセトニトリル層を合わせて40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にn―ヘキサンを加えて溶解し、正確に20mLとする。

2) 精製

クロマトグラフ管(内径15mm)に、カラムクロマトグラフィー用合成ケイ酸マグネシウム10gをn―ヘキサンに懸濁させて充てんし、無水硫酸ナトリウム5gを積層する。このカラムに、1)で得られた溶液4mLを注入した後、n―ヘキサン100mLを注入し、流出液は捨てる。次いで、酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:19)混液200mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をn―ヘキサンに溶解し、正確に4mLとしたものを試験溶液とする。

5.検量線の作成

PDJ標準品をアセトンで溶解後、0.005~0.1mg/Ln―ヘキサン溶液を数点調製し、それぞれ2μLをGC/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量

試験溶液2μLをGC/MSに注入し、5の検量線でPDJの含量を求める。

7.測定条件

GC/MS

カラム:5%フェニル―メチルシリコン、内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm

カラム温度:80℃(1分)-15℃/分-280℃(10分)

注入口温度:250℃

キャリヤーガス:ヘリウム

イオン化モード(電圧):EI(70eV)

主なイオン(m/z):184、153

保持時間の目安:約10.4分および約10.6分

8.定量限界

0.005mg/kg

9.留意事項

1) 試験法の概要

PDJを試料からアセトンで抽出し、n―ヘキサンに転溶する。アセトニトリル/ヘキサン分配及び合成ケイ酸マグネシウムカラムクロマトグラフィーで精製した後、GC/MSで測定する方法である。

2) 注意点

① PDJ標準品は、ヘキサンよりもアセトンに溶解性が高いため、標準原液をアセトンで調製した後、測定用標準溶液をヘキサンで調製する。なお、PDJ標準品はtrans体87%以上及びepi体12%以下の混合物であり、クロマトグラム上はtrans体およびepi体の順に溶出する。PDJはtrans体とepi体の和を分析値とする。GC/MSの測定において、PDJの感度が試験溶液の注入前後で大幅に変動する場合があるため、あらかじめ試験溶液を数回注入して、感度を十分に安定させた後、測定を行う等の措置が必要である。

また、試験溶液の夾雑物が次のクロマトグラムに影響を及ぼす可能性があるため、測定終了後カラムの焼き出しを十分に行う必要がある。

② 精製が不十分な場合は、以下のカラムを用いて精製を追加することができる。

a) シリカゲルミニカラム(690mg)

エーテル及びn―ヘキサン各10mLで予備洗浄を行う。試料液をエーテル及びn―ヘキサン(1:19)混液10mLで負荷洗浄し、流出液を捨てた後、エーテル及びn―ヘキサン(3:17)混液20mLで溶出させる。

b) グラファイトカーボンミニカラム(500mg)

n―ヘキサン10mLで予備洗浄を行う。試料液をn―ヘキサン10mLで負荷し、n―ヘキサン10mLで溶出させる。全量を採取する。

10.参考文献

環境省告示第60号「プロヒドロジャスモン試験法」(平成15年4月10日)

11.類型

C

ボスカリド試験法(農産物)

1.分析対象化合物

ボスカリド

2.装置

アルカリ熱イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(GC(FTD))又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ(GC(NPD))

ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS)

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。

ボスカリド標準品 本品はボスカリド98%以上を含み、融点は143~150℃である。

4.試験溶液の調製

1) 抽出

① 穀類、豆類及び種実類の場合

試料10.0gを量り採り、水20mLを加え、2時間放置する。これにアセトン100mLを加え、3分間ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトン50mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせて、40℃以下で約30mLに濃縮する。これに10%塩化ナトリウム溶液100mLを加え、n―ヘキサン100mL及び50mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。

この残留物にn―ヘキサン30mLを加え、n―ヘキサン飽和アセトニトリル30mLで3回振とう抽出する。抽出液を合わせて、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にn―ヘキサン5mLを加えて溶かす。

② 果実及び野菜の場合

試料20.0gを量り採り、アセトン100mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトン50mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせて、40℃以下で約30mLに濃縮する。これに10%塩化ナトリウム溶液100mLを加え、n―ヘキサン100mL及び50mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にn―ヘキサン5mLを加えて溶かす。

③ 植物油(精製)の場合

試料2.5gを量り採り、n―ヘキサン30mLを加え、n―ヘキサン飽和アセトニトリル30mLで3回振とう抽出する。抽出液を合わせて、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にn―ヘキサン5mLを加えて溶かす。

④ 干しぶどうの場合

試料に等量の水を加えて磨砕し、試料10.0g相当を量り採る。これにアセトン100mLを加え、3分間ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、水10mL及びアセトン50mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせて、40℃以下で約30mLに濃縮する。これに10%塩化ナトリウム溶液100mLを加え、n―ヘキサン100mL及び50mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にn―ヘキサン5mLを加えて溶かす。

2) 精製

クロマトグラフ管(内径15mm)に、カラムクロマトグラフィー用合成ケイ酸マグネシウム10gをn―ヘキサンに懸濁させて充てんし、上に無水硫酸ナトリウム5gを積層する。このカラムに、1)で得られた溶液を注入した後、アセトン及びn―ヘキサン(1:19)混液100mLを注入し、流出液は捨てる。次いでアセトン及びn―ヘキサン(3:7)混液100mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトンに溶解し、穀類、豆類及び種実類の場合は正確に2mL、果実及び野菜の場合は正確に4mL、植物油(精製)の場合は正確に0.5mL、干しぶどうの場合は正確に2mLとしたものを試験溶液とする。

5.検量線の作成

ボスカリド標準品の0.05~1mg/Lアセトン溶液を数点調製し、それぞれ2μLをGCに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量

試験溶液2μLをGCに注入し、5の検量線でボスカリドの含量を求める。

7.測定条件

1) GC

検出器:FTD又はNPD

カラム:メチルシリコン、内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm

カラム温度:100℃(1分)-30℃/分-250℃(0分)-6℃/分-300℃(2分)

注入口温度:250℃、検出器温度:280℃

キャリヤーガス:ヘリウム

保持時間:12分

2) GC/MS

カラム:5%フェニル―メチルシリコン、内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm

カラム温度:100℃(1分)-30℃/分-280℃(5分)

注入口温度:250℃

キャリヤーガス:ヘリウム

イオン化モード(電圧):EI(70eV)

主なイオン(m/z):342、140

注入量:1μL

保持時間:10分

8.定量限界

0.01mg/kg

9.留意事項

1) 試験法の概要

ボスカリドを試料からアセトンで抽出し、n―ヘキサンに転溶する。合成ケイ酸マグネシウムカラムクロマトグラフィーで精製した後、GC(FTD)又はGC(NPD)で測定し、GC/MSで確認する方法である。

穀類、豆類、種実類、果実、野菜については、平成13年厚生労働省告示第56号「カフェンストロール、ジフェノコナゾール、シプロコナゾール、シメトリン、チフルザミド、テトラコナゾール、テブコナゾール、トリアジメノール、フルジオキソニル、プロピコナゾール、ヘキサコナゾール及びペンコナゾール試験法」に同じである。

2) 注意点

① アセトニトリル/n―ヘキサン分配では、ダイズでエマルジョンを形成した。綿栓ろ過や、液量を各50mLに増量することでエマルジョンの低減が可能である。

② 精製が不十分な場合は以下の精製を追加することができる。

a) オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム(360mg)

メタノール及び水各10mLで予備洗浄を行う。試料液をメタノール及び水(3:7)混液10mLで負荷、同混液10mLで洗浄し、流出液を捨てた後、メタノール及び水(1:1)混液20mLで溶出させる。

b) グラファイトカーボンミニカラム(500mg)

アセトニトリル及びトルエン(3:1)混液5mLで予備洗浄を行う。試料液をアセトニトリル及びトルエン(3:1)混液5mLで負荷、同混液10mLで溶出させる。全量を採取する。

c) アミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラム(360mg)

n―ヘキサン5mLで予備洗浄を行う。試料液をエーテル及びn―ヘキサン(3:17)混液5mLで負荷、同混液5mLで洗浄し、流出液を捨てた後、エーテル及びn―ヘキサン(1:1)混液25mLで溶出させる。

③ 合成ケイ酸マグネシウムカラムクロマトグラフィーでは、カフェンストロール等12農薬分析法に対応できるように、溶出溶媒としてアセトン及びn―ヘキサン(3:7)混液を採用しているが、ボスカリドのみを対象とする場合は、アセトン及びn―ヘキサン(3:17)混液でも溶出可能である。

④ ボスカリドの感度が試験溶液の注入の前後で大幅に変動する場合がある。試験溶液を数回注入し、感度を十分に安定させてから標準溶液を注入する等の措置が必要である。

11.参考文献

平成13年厚生労働省告示第56号「カフェンストロール、ジフェノコナゾール、シプロコナゾール、シメトリン、チフルザミド、テトラコナゾール、テブコナゾール、トリアジメノール、フルジオキソニル、プロピコナゾール、ヘキサコナゾール及びペンコナゾール試験法」

12.類型

C

ボスカリド試験法(畜産物)

1.分析対象化合物

ボスカリド

2.装置

ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS)

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。

ボスカリド標準品 本品はボスカリド98%以上を含み、融点は143~150℃である。

4.試験溶液の調製

1) 抽出

① 筋肉、脂肪、肝臓、腎臓及びその他の食用部分の場合

筋肉、肝臓、腎臓及びその他の食用部分の場合は、細切均一化した後、その20.0gを量り採る。

脂肪の場合は、細切均一化した後、その5.0gを量り採る。

これに水20mLを加え、ホモジナイズしたのち、アセトン・n―ヘキサン混液(1:2)100mLを加え、さらにホモジナイズし、2,500回転/分で5分間遠心分離する。上澄液を200mLの三角フラスコに分取する。遠心管内の残留物にn―ヘキサン50mLを加えホモジナイズしたのち、2,500回転/分で5分間遠心分離し、上澄液を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え、時々振り混ぜながら15分間放置したのち、あらかじめ重量を測定したすり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いで、アセトン及びn―ヘキサン(1:2)混液20mLを用いて三角フラスコを洗い、その洗液でろ紙上の残留物を洗う操作を2回繰り返す。洗液をその減圧濃縮器中に合わせ、40℃以下で溶媒を除去したのち、残留物の重量を測定し、これを脂肪重量とする。この残留物の全量または一定量を採り、アセトン及びシクロヘキサン(1:4)混液で、抽出脂肪0.50g/5mLまたは試料5.0g/5mLになるように溶解し、これを抽出溶液とする。

② 乳、卵の場合

試料20.0gを量り採り、アセトニトリル100mLを加えてホモジナイズしたのち、2,500回転/分で5分間遠心分離する。上澄液を300mLの分液漏斗に分取する。遠心管内の残留物にアセトニトリル50mLを加えホモジナイズしたのち、2,500回転/分で5分間遠心分離し、上澄液を上記の分液漏斗に合わせる。これに塩化ナトリウム10gを加え、振とう機を用いて3分間激しく振り混ぜたのち、静置し、分離した水層を除く。アセトニトリル層をすり合わせ減圧濃縮器に移し、40℃以下で溶媒を除去する。この時水が残らなかった場合には、残留物に少量のアセトン及びシクロヘキサン(1:4)混液を加えて超音波抽出する操作を3回繰り返し、抽出液を合わせて試料5g/5mLになるようにしてこれを抽出溶液とする。また、水が残った場合には、酢酸エチル20mLを加えて残留物を溶解したのち、無水硫酸ナトリウムを加えて超音波抽出する。抽出液をすり合わせ減圧濃縮器中にろ過し、酢酸エチル10mLを用いて先の減圧濃縮器を洗い、その洗液でろ紙上の残留物を洗う操作を2回繰り返す。洗液をその減圧濃縮器中に合わせ、40℃以下で溶媒を除去する。この残留物をアセトン及びシクロヘキサン(1:4)混液で試料5g/5mLになるように溶解し、これを抽出溶液とする。

2) 精製

① 筋肉、脂肪、乳及び卵の場合

1) 抽出で得られた抽出溶液を3,000回転/分で5分間遠心分離し、その上澄液5mLをゲル浸透クロマトグラフィー用カラム(ポリスチレンジビニルベンゼン共重合体カラム)に注入し、アセトン及びシクロヘキサン(1:4)混液で溶出する。58~165mLに溶出する画分をすり合わせ減圧濃縮器中に採り、40℃以下で溶媒を除去する。この残留物にアセトン及びn―ヘキサン(1:1)混液2mLを加えて溶かす。この溶液をあらかじめアセトン及びn―ヘキサン混液(1:1)10mLで洗浄したエチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲルミニカラム(500mg)に注入したのち、減圧濃縮器をアセトン及びn―ヘキサン(1:1)混液1mLで洗い、洗液を先のカラムに注入する操作を3回繰り返す。カラムにアセトン及びn―ヘキサン(1:1)混液15mLを注入し、全溶出液をすり合わせ減圧濃縮器中に採り、40℃以下で溶媒を除去する。この残留物をアセトン及びn―ヘキサン(1:1)混液1mL[脂肪の場合は0.5mL]に溶解し、これを試験溶液とする。

② 肝臓、腎臓及びその他の食用部分の場合

1) 抽出で得られた抽出溶液を3,000回転/分で5分間遠心分離し、その上澄液5mLをゲル浸透クロマトグラフィー用カラム(ポリスチレンジビニルベンゼン共重合体カラム)に注入し、アセトン及びシクロヘキサン(1:4)混液で溶出する。58~65mLに溶出する画分(画分Ⅰ)を採り、この溶液をあらかじめアセトン及びシクロヘキサン(1:4)混液10mLで洗浄したエチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲルミニカラム(500mg)に注入したのち、容器をアセトン及びシクロヘキサン(1:4)混液1mLで洗い、洗液を先のカラムに注入する操作を3回繰り返す。カラムにアセトン及びシクロヘキサン(1:4)混液2mLを注入し、全溶出液を合わせてすり合わせ減圧濃縮器中に採り、40℃以下で溶媒を除去する。この残留物をn―ヘキサン1mLで溶解し、この溶液をあらかじめn―ヘキサン10mLで洗浄したシリカゲルミニカラムに注入したのち、減圧濃縮器をn―ヘキサン1mLで洗い、洗液を先のカラムに注入する操作を3回繰り返す。カラムにn―ヘキサン7mLを注入し、この溶出液は捨てる。次いで、カラムにエーテル及びn―ヘキサン(1:19)混液15mLを注入し、溶出液をすり合わせ減圧濃縮器中に採る。また、別に65~165mLに溶出する画分(画分Ⅱ)をその減圧濃縮器中に合わせ、40℃以下で溶媒を除去する。この残留物をアセトン及びn―ヘキサン(1:1)混液1mLに溶解し、これを試験溶液とする。

5.検量線の作成

ボスカリド標準品の0.05~1mg/L(脂肪の場合は0.01~0.2mg/L)アセトン及びn―ヘキサン(1:1)混液溶液を数点調製し、それぞれ1μLをGC/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量

試験溶液1μLをGC/MSに注入し、5の検量線でボスカリドの含量を求める。

7.測定条件

GC/MS

カラム:5%フェニル―メチルシリコン、内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm

カラム温度:100℃(1分)-30℃/分-280℃(5分)

注入口温度:250℃

キャリヤーガス:ヘリウム

イオン化モード(電圧):EI(70eV)

主なイオン(m/z):342、140

注入量:1μL

保持時間:10分

8.定量限界

0.01mg/kg

9.留意事項

1) 試験法の概要

ボスカリドを試料からアセトン及びn―ヘキサン(1:2)混液で抽出(乳、卵の場合はアセトニトリルで抽出)し、ゲル浸透クロマトグラフィーおよびエチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲルミニカラムクロマトグラフィーで精製した後、GC/MSで測定、確認する方法である。

2) 注意点

① 抽出時に上澄液を分取する操作で水を除かない場合は、大量の無水硫酸ナトリウムが必要である。分液漏斗を用いて水層を除去した後に無水硫酸ナトリウムによる脱水を行うとよい。

② ゲル浸透クロマトグラフ条件の例

カラム:ポリスチレンジビニルベンゼン共重合体(内径20mm、長さ300mm)にガードカラムポリスチレンジビニルベンゼン共重合体(内径20mm、長さ100mm)を接続したもの、または同等品

移動相:アセトン及びシクロヘキサン(1:4)混液

流速:5mL/min

カラム温度:40℃

注入量:5mL

モニター波長:254nm

分取範囲:

筋肉、脂肪、乳及び卵の場合:58~165mL(合計107mL)

肝臓、腎臓及びその他の食用部分の場合

画分Ⅰ:58~65mL(合計7mL)、画分Ⅱ:65~165mL(合計100mL)

ゲル浸透クロマトグラフィーは、あらかじめ使用する条件で、指標物質であるアクリナトリンおよびトリシクラゾール、ならびに対象物質ボスカリドの溶出位置を確認し、分取範囲を決定しておく。

分取範囲の確認:アクリナトリン及びトリシクラゾールの5mg/L混合溶液を移動相で調製し、その5mLをゲル浸透クロマトグラフに注入して254nmでモニターし、あらかじめ分取範囲を確認する。溶出液を適当な間隔で分取してGC/MSで測定するなど他の適切な方法を用いてもよい。

a) 筋肉、脂肪、乳及び卵の場合(図1参照)

アクリナトリンの保持時間からトリシクラゾールの溶出が終了するまで。

(例) 58~165mL(合計107mL)

図1 筋肉、脂肪、乳及び卵の場合の分取範囲

b) 肝臓、腎臓及びその他の食用部分の場合(図2参照)

画分Ⅰ:アクリナトリンの保持時間からアクリナトリンの溶出が終了するまで。

画分Ⅱ:画分Ⅰの分取終了からトリシクラゾールの溶出が終了するまで。

(例) 画分Ⅰ:58~65mL(合計7mL).画分Ⅱ:65~165mL(合計100mL)

図2 肝臓、腎臓及びその他の食用部分の場合の分取範囲

③ ミニカラムは使用条件で検討対象農薬の溶出調査を事前に行い、溶出位置を確認してから使用する。なお、エチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲルミニカラムでは、ボスカリドを保持しないため、注入液から全ての溶出液を捕集する必要がある。

④ GC/MS測定において妨害が見られた場合には、シリカゲルミニカラム(690mg)による追加精製を行う。[エーテル及びn―ヘキサン(1:49)混液10mLで予備洗浄。試料液をエーテル及びn―ヘキサン(1:49)混液3mLで負荷、同混液10mLで洗浄し、次いで、アセトン及びn―ヘキサン(1:1)混液20mLで溶出する。]

⑤ GC/MS測定では、ボスカリドの感度が試料の注入の前後で大幅に変動する場合がある。試料を数本注入し、感度を十分に安定させてから標準溶液を注入する等の措置が必要である。

⑥ 脂肪含有量が高い試料では、試験溶液の濃縮倍率が低くなる。その際、目標の測定感度が得られない場合には、抽出脂肪を用いてゲル浸透クロマトグラフィー以降の操作を行い、複数の検液を合わせて試験溶液とする。

11.参考文献

なし

12.類型

C

[別紙6]

第3章 個別試験法

(追加:クロピラリド試験法、ジクワット、パラコート及びメピコートクロリド試験法)

クロピラリド試験法(農産物)

1.分析対象化合物

クロピラリド

2.装置

液体クロマトグラフ・質量分析計(LC/MS)

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。

クロピラリド標準品 本品はクロピラリド99%以上を含む。

4.試験溶液の調製

1) 抽出

試料10.0gに20%塩酸10mL及びアセトン100mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物にアセトン50mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせ、アセトンを加えて200mLとする。抽出液の20mLを採り、1mol/L塩酸5mLを加え、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。

2) 精製

① 多孔性ケイソウ土カラムクロマトグラフィー

多孔性ケイソウ土カラム(20mL保持用)に1)で得られた溶液を注入し、5分間放置する。このカラムにn―ヘキサン100mLを注入し、流出液は捨てる。次いで、酢酸エチル150mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をメタノール0.5mLに溶解し、さらに水9.5mLを加える。

② オクタデシルシリル化シリカゲルカラムクロマトグラフィー

オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム(910mg)に水及びメタノール(19:1)混液10mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに①で得られた溶液を注入し、さらに水及びメタノール(19:1)混液5mLを注入する。溶出液に20%塩酸1mLを加える。

③ 多孔性ケイソウ土カラムクロマトグラフィー

多孔性ケイソウ土カラム(20mL保持用)に②で得られた溶液を注入し、5分間放置する。このカラムに酢酸エチル150mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトニトリル及び1%ギ酸(1:1)混液に溶解し、正確に5mLとしたものを試験溶液とする。

5.検量線の作成

クロピラリド標準品を1%ギ酸に溶解し、0.01~1mg/L溶液を数点調製する。それぞれ10μLをLC/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量

試験溶液10μLをLC/MSに注入し、5の検量線でクロピラリドの含量を求める。

7.確認試験

LC/MSにより確認する。

8.操作条件

LC/MS

カラム:トリアコンチルシリル化シリカゲル(粒径5μm)、内径2mm、長さ250mm

カラム温度:40℃

移動相:アセトニトリル及び1%ギ酸(1:1)混液

イオン化法:ESI(ネガティブ)

主なイオン(m/z):190

保持時間の目安:7分

9.定量限界

0.05mg/kg

10.留意事項

1) 試験法の概要

クロピラリドを試料から酸性条件下アセトンで抽出する。抽出液を多孔性ケイソウ土カラム、オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム及び多孔性ケイソウ土カラムで精製し、LC/MSで測定及び確認する方法である。

2) 注意点

① 一律基準レベルの分析を行う場合は、濃縮倍率を高める(抽出液の分取量を増やすか,最終試験溶液の液量を減らす)などの工夫が必要である。

11.参考文献

1) Lauren,D.R.,Taylor,H.J.,Rahman,A.,Analysis of the herbicides dicamba,clopyralid and bromacil in asparagus by high-performance liquid chromatography,Journal of Chromatography,439,470―475,1988

12.類型

C

ジクワット、パラコート及びメピコートクロリド試験法(農作物)

1.分析対象化合物

農薬等の成分である物質

分析対象化合物

ジクワット

ジクワット

パラコート

パラコート

メピコートクロリド

メピコートクロリド

2.装置

蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-FL)

液体クロマトグラフ・質量分析計(LC/MS)

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。

ジピクリルアミンナトリウム ジピクリルアミンナトリウム

プロピルスルホニルシリル化シリカゲルミニカラム(500mg) 内径12~13mmのポリエチレン製のカラム管に、プロピルスルホニルシリル化シリカゲル500mgを充てんしたもの又はこれと同等の分離特性を有するもの。

ヘプタフルオロ―n―ブチル酸 ヘプタフルオロ―n―ブチル酸

ジクワット標準品 本品はジクワット98%以上を含む。

パラコート標準品 本品はパラコート99%以上を含む。

メピコートクロリド標準品 本品はメピコートクロリド99%以上を含む。

4.試験溶液の調製

1) 抽出

① 穀類、豆類、種実類、果実、野菜、ハーブ、抹茶及びホップの場合

穀類、豆類及び種実類の場合は試料10.0gを量り採る。抹茶及びホップの場合は試料5.00gを量り採る。果実、野菜及びハーブの場合は試料20.0gを量り採る。

これに水60mL及び硫酸30mLを加え、混合する。沸騰石2~3粒及び消泡剤約1mLを加え、還流冷却器を付けて5時間加熱還流する。放冷後、ガラス繊維ろ紙(GFP)を用いて吸引ろ過し、ろ紙上の残留物に水50mLを加えて、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせ、水を加えて正確に200mLとする。その20mL(試料1g相当、抹茶及びホップの場合は40mL、果実、野菜及びハーブの場合は10mL)を正確に取り、12mol/L水酸化ナトリウム溶液を加えてpH7に調整する。

② 抹茶以外の茶の場合

試料9.00gに100℃の水540mLを加え、室温で5分間放置した後、ろ過する。冷後、ろ液60mLを採り、硫酸30mLを加え、混合する。沸騰石2~3粒及び消泡剤約1mLを加え、還流冷却器を付けて5時間加熱還流する。放冷後、ガラス繊維ろ紙(GFP)を用いて吸引ろ過し、ろ紙上の残留物に水50mLを加えて、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせ、水を加えて正確に200mLとする。その20mL(試料0.1g相当)を正確に取り、12mol/L水酸化ナトリウム溶液を加えてpH7に調整する。

2) 精製

プロピルスルホニルシリル化シリカゲルミニカラム(500mg)にメタノール10mL及び水10mLを順次注入し、各流出液は捨てる。このカラムに、1)で得られた溶液を注入した後、流出液は捨てる。さらに水10mL及びメタノール10mLを順次注入し、流出液は捨てる。次いで、飽和塩化アンモニウム・メタノール溶液20mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、窒素ガスを送って乾固する(Ⅰ、メピコートクロリド画分)。さらに、ミニカラムに5mol/L塩化アンモニウム溶液20mLを注入し、溶出液に5mol/L塩化アンモニウム溶液を加えて正確に20mLとする(Ⅱ、ジクワット及びパラコート画分)。

3) ジクロロメタン転溶及びジクロロメタン洗浄(メピコートクロリド画分)

(Ⅰ)の残留物に0.05%ジピクリルアミンナトリウム溶液20mLを加えて溶かし、12mol/L水酸化ナトリウム溶液1mLを加え、pH13とする。これをジクロロメタン30mLずつで3回振とう抽出する。ジクロロメタン層を合わせて綿栓ろ過後、40℃以下で濃縮し、窒素ガスを送って乾固する。残留物に2mol/L塩酸50mLを加えて溶かす。これを、ジクロロメタン10mLずつで2回洗浄した後、60℃以下で濃縮し、窒素ガスを送って乾固する。この残留物を5mmol/Lヘプタフルオロ―n―ブチル酸溶液に溶解し、正確に2mLとしたものをメピコートクロリド試験溶液とする。

4) 蛍光誘導体化(酸化)(ジクワット及びパラコート画分)

① ジクワット

(Ⅱ)の溶液5mLを正確に採り、12mol/L水酸化ナトリウム溶液25mL及び1%フェリシアン化カリウム溶液1mLを加え、均一になるように振り混ぜた後、エーテル20mLずつで2回振とう抽出する。エーテル層を合わせて無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、窒素ガスを送って乾固する。この残留物をアセトニトリル及び水(1:9)混液に溶解し、正確に2mLとしたものをジクワット試験溶液とする。

② パラコート

(Ⅱ)の溶液10mLを正確に採り、12mol/L水酸化ナトリウム溶液10mL及び1%フェリシアン化カリウム溶液1mLを加え、均一になるように振り混ぜた後、ジクロロメタン20mLずつで2回振とう抽出する。ジクロロメタン層を合わせ、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で減圧濃縮し、窒素ガスを送って乾固する。この残留物をアセトニトリル及び水(1:9)混液に溶解し、正確に2mLとしたものをパラコート試験溶液とする。

5.検量線の作成

1) ジクワット

ジクワット標準品の4mg/L0.01mol/L塩酸溶液を調製し、その0.5mLに5mol/L塩化アンモニウム溶液5mLを加え、以下4の4)「蛍光誘導体化(酸化)」①に従って操作する。濃縮残留物をアセトニトリル及び水(1:9)混液に溶解し、正確に20mLとする(0.1mg/L)。これを適宜希釈して、0.00125~0.05mg/Lの溶液を調製し、それぞれ40μLをHPLCに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

2) パラコート

パラコート標準品の4mg/L0.01mol/L塩酸溶液を調製し、その0.5mLに5mol/L塩化アンモニウム溶液10mLを加え、以下4の4)「蛍光誘導体化(酸化)」②に従って操作する。濃縮残留物をアセトニトリル及び水(1:9)混液に溶解し、正確に20mLとする(0.1mg/L)。これを適宜希釈して、0.0025~0.1mg/Lの溶液を調製し、それぞれ20μLをHPLCに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

3) メピコートクロリド

メピコートクロリド標準品の0.005~0.2mg/L5mmol/Lヘプタフルオロ―n―ブチル酸溶液を数点調製し、それぞれ10μLをLC/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量

1) ジクワット

試験溶液40μLをHPLCに注入し、5.1)の検量線でジクワットの含量を求める。

2) パラコート

試験溶液20μLをHPLCに注入し、5.2)の検量線でパラコートの含量を求める。

3) メピコートクロリド

試験溶液10μLをLC/MSに注入し、5.3)の検量線でメピコートクロリドの含量を求める。

7.確認試験

LC/MSにより確認する。

8.測定条件

1) HPLC(ジクワット及びパラコートの場合)

カラム:トリアコンチルシリル化シリカゲル(粒径5μm)、内径4.6mm、長さ250mm

カラム温度:40℃

移動相:アセトニトリル及び水(8:92)混液

測定波長:励起波長368nm、蛍光波長430nm(ジクワット)

励起波長330nm、蛍光波長436nm(パラコート)

保持時間の目安:18.5分(ジクワット)、20分(パラコート)

2) LC/MS(メピコートクロリドの場合)

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm)、内径2~3mm、長さ150mm

カラム温度:40℃

移動相:5mmol/Lヘプタフルオロ―n―ブチル酸及びメタノール混液(95:5)から(1:1)までの濃度勾配を5分間で行う。

イオン化モード:ESI(+)

主なイオン(m/z):114

保持時間の目安:9分

3) LC/MS(ジクワット及びパラコートの場合)

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm)、内径2~3mm、長さ150mm

カラム温度:40℃

移動相:アセトニトリル及び0.1%酢酸(1:9)混液

イオン化モード:ESI(+)

主なイオン(m/z):ジクワット;215、パラコート;217

注入量:ジクワット10μL、パラコート5μL

保持時間の目安:ジクワット 5.7分、パラコート 5.4~5.6分

9.定量限界

各農薬 0.01mg/kg(抹茶以外の茶の場合は0.1mg/kg)

10.留意事項

1) 試験法の概要

ジクワット、パラコート及びメピコートクロリドを試料から6mol/L硫酸で加熱還流抽出し、プロピルスルホニルシリル化シリカゲルミニカラムによる精製でメピコートクロリド画分(Ⅰ)とジクワット及びパラコート画分(Ⅱ)に分ける。メピコートクロリド画分(Ⅰ)についてはジクロロメタン転溶、次いで塩酸酸性下ジクロロメタン洗浄を行った後、LC/MSで測定する。ジクワット及びパラコート画分(Ⅱ)については蛍光誘導体化(酸化)後、HPLCで測定し、LC/MSで確認する方法である。

ジクワットの蛍光誘導体化

パラコートの蛍光誘導体化

2) 注意点

① 0.05%ジピクリルアミンナトリウム溶液は、調製後時間が経過したものを使用すると、メピコートクロリドの転溶率が低下する。

② ジクワット及びパラコートの蛍光誘導体のLC/MSにおける感度は、HPLC―FL法の1/4である。基準値と比較して定量限界が高い場合は、蛍光誘導化に供する溶液量を適宜増加して定量限界を下げる。

11.参考文献

1) 環境省告示第20号「ジクアトジブロミド試験法」(昭和61年4月14日)

2) 環境省告示第40号「パラクアトジクロリド試験法」(昭和51年6月11日)

3) 環境省告示第21号「メピコートクロリド試験法」(平成3年4月1日)

4) 飼料分析基準研究会編著「飼料分析法・解説」p.6―148~6―152(社)日本科学飼料協会

5) 赤木浩一、食品衛生学雑誌、45、197―200、2004

6) 大倉ら、平成元年度愛媛衛研年報、51、27―32、1990

12.類型

C