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○医薬品・医薬部外品製造販売業者等におけるコンピュータ化システム適正管理ガイドラインに関する質疑応答集(Q&A)について
(平成22年10月21日)
(事務連絡)
(各都道府県衛生主管部(局)薬務主管課あて厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課通知)
医薬品・医薬部外品製造販売業者等におけるコンピュータ化システム適正管理ガイドラインについては、平成22年10月21日付け薬食監麻発1021第11号をもって発出したところであるが、今般、このガイドラインに係る質疑応答集を別紙のとおりとりまとめたので、業務の参考とされたい。
医薬品・医薬部外品製造販売業者等におけるコンピュータ化システム適正管理ガイドラインに関する質疑応答集(Q&A)について
1.総則
問1 ガイドライン1.2の「「コンピュータ使用医薬品等製造所適正管理ガイドライン」に示された方法又はそれに代わる適切な方法で開発、検証及び運用等が行われていないシステムについては、当該システムの適格性を確認する必要がある。」の「それに代わる適切な方法」とは、たとえばどんな方法があるのか。 |
回答1
ガイドライン1.2の「それに代わる適切な方法」とは、具体的にはISPEの「GAMPガイド」やPIC/Sの「Good Practices For Computerised Systems In Regulated “GXP” Environments」等の欧米のガイドラインに基づいた方法が挙げられるが、適切な方法であることを説明できるのであればこれに限らない。
問2 「1.2 コンピュータ化システムの取り扱い」でこのガイドライン施行日以前に開発、運用が開始されているシステムであって「コンピュータ使用医薬品等製造所適正ガイドライン」に示された方法又はそれに代わる方法で開発、検証が行われていないシステムについては、当該システムの適格性を確認する必要があるとされているが、どのような方法で実施すべきか。 |
回答2
適格性を確認する方法として、当該システムの開発時の仕様書などの文書類や記録類に遡って、その適格性を検証する方法や、現在の使用目的に適合した要求仕様やそれに準じる文書との適格性を確認する方法等が考えられるが、適格性の確認にあたっては、現在の運用における記録類の照査や定期的レビューの結果を利用してもよい。
なお、使用目的に適合した要求仕様やそれに準じる文書とは、例えば、当該のコンピュータ化システムに関する「標準操作手順書」や、そのコンピュータ化システムが適用される製造プロセスに関する製造指図書等が考えられる。これらの文書に基づいて適格性を検証する場合は、この両文書を合わせて要件を確認するなど、検証項目に漏れのない様な配慮も必要である。
製造販売業者等は自社の品質保証に関するポリシーやリスク評価の結果等を考慮し、「コンピュータ化システム管理規定」等にその対象や実施方法、検証項目等に関する基本的な考え方を定め、それに基づき実施すること。
問3 このガイドラインの対象となるコンピュータ化システムで、1.2の規定『このガイドラインの対象となるコンピュータ化システムで「医薬品等の承認又は許可等に係る申請等に関する電磁的記録・電子署名利用のための指針」(平成17年4月1日薬食発第0401022号)、及び「薬事法及び採血及びあつせん業取締法の一部を改正する法律の施行に伴う医薬品、医療機器等の製造管理及び品質管理(GMP/QMS)に係る省令及び告示の制定及び改廃について」(平成17年3月30日薬食監麻発第0330001号)第3章第3 35.「その他(電磁的記録等について)」の適用を受けるコンピュータ化システムは、併せてそれらの要件を備えることが必要である』に加えてどのような要件を備える必要があるのか。 |
回答3
これらの適用を受けるコンピュータ化システムの要件は、そのシステムに実行させようとする業務の内容、GQP省令やGMP省令等の法令で遵守が求められる事項を考慮して、個々のシステムごとに要件を定める必要がある。
具体的には、当該の業務の手順やその業務を実行させるために必要な機能や性能(処理能力等)、設置の要件等に加え、セキュリティ確保等が必要なシステムの場合はそのための要件や、業務の継続性のための要件、障害対策の要件、データのバックアップ、アクセス制限、アクセス記録等に関する要件も記載しておく。更に、バックアップメディアに求められる要件やメディアの保存方法などもあらかじめ規定しておくことが望ましい。
問4 回答3でいう、業務の継続性とは具体的に何か、またそれを確保する上でどのような措置が考えられるか。 |
回答4
ここでいう業務の継続性とは、コンピュータ化システムに故障やシステムトラブル等が発生し、業務が中断されることを避けるため、事前に故障やトラブルからの回避のための措置を講じることや、万一、故障やトラブルが発生した際には、当該業務を継続可能とするための何らかの措置が用意されており、継続して当該業務が遂行可能な状態となっていることを言う。業務の継続性の必要性は、当該業務に関するリスクアセスメントの結果等を考慮して決定される。
コンピュータ化システムの継続性を確保するための措置には、例えば、地震などの天災の発生を考慮した設置条件の設定やデータのバックアップ(バックアップの方法や保存方法等)、また、故障やトラブルに備えて、全く同一の代替のコンピュータ化システムをあらかじめ用意しておく方法や、予めマニュアルによる手順を規定しておく方法等が考えられる。またシステムの復旧のための措置の手順を予め定めておくことや、復旧に備えて定期的にデータのバックアップを保存する等も含まれる。
コンピュータ化システムがバリデートされた状態を保つため、これらの措置については、予めその適格性を確認しておく必要がある。
2.適用範囲
問5 「2.適用の範囲」に「このガイドラインは、コンピュータ化システムを使用してGQP省令及びGMP省令が適用される業務を行う製造販売業者等に適用する。」とされているが、開発業務や運用業務等を外部の専門業者に委託する場合、このガイドラインの適用は受けないのか。 |
回答5
製造販売業者等が外部の供給者に開発業務や運用業務を委託する場合、このガイドラインに基づき供給者に適切に業務を行わせなければならない。また、外部の供給者においては、適切な品質保証のシステムのもとで委託された業務が遂行される必要がある。また、これらを確実にするために、業務委託契約等で、これらの事項について取決めを締結することが望ましい。
問6 ガイドライン「2.適用の範囲」における「(1) 医薬品、医薬部外品の市場への出荷の可否の決定に係るシステム及び市場への出荷に係る記録を作成、保存管理するためのシステム」とは、どのようなものをいうか。 |
回答6
例えば、市場出荷判定結果の入力に伴い、当該製品の出荷が可能となるよう管理するシステム及びこの記録を作成し、発行し、保存管理するシステムが挙げられる。
問7 ガイドライン「2.適用の範囲」における「(2) 製造指図書、製造に関する記録書等を作成及び保存管理するためのシステム」とは、どのようなものをいうか。 |
回答7
例えば、
・生産計画に基づき製造指図書を作成するシステム
・製剤機械又は原薬製造装置のデータに基づき、製造に関する記録を作成、保存するシステム
が挙げられる。
問8 ガイドライン「2.適用の範囲」における「(3) 製造工程を制御又は管理するためのシステム及びその管理データを保存管理するためのシステム」とは、どのようなものをいうか。 |
回答8
例えば、
・製剤工場における造粒機・打錠機・コーティング機や原薬工場における反応槽・発酵槽などを制御するシステム及びそれらの業務を管理するシステム
・秤量作業を支援するシステム
が挙げられる。
問9 ガイドライン「2.適用の範囲」における「(4) 原材料及び製品(製造の中間工程で造られるものを含む。以下同じ。)の保管、出納等の生産を管理するシステム」とは、どのようなものをいうか。 |
回答9
例えば、
・自動倉庫において、原材料、製品(製造の中間工程で造られるものを含む。以下同じ。)などの出し入れの制御を行うシステム
・在庫品の管理などを行うシステム
・原材料及び製品の保管、出納に関する記録類を作成するシステム
・原材料及び製品を運搬、搬送するための無人搬送車を含む自動搬送システム
が挙げられる。
問10 回答9の自動倉庫において、単に棚番でパレットを呼び出すのみの機能を持ったシステムの場合は、このガイドラインの適用を受けるか。 |
回答10
ガイドラインの適応の範囲内として必要な機能の検証及び管理を行う必要がある。
問11 ガイドライン「2.適用の範囲」における「(5) 品質試験に用いる機器を制御又は管理するためのシステム並びに品質試験結果及び管理データを保存管理するためのシステム」とは、どのようなものをいうか。 |
回答11
例えば、
・製造部門又は品質部門において使用する試験検査設備(HPLC,GC等)を統合的に制御や管理するための行うシステム(LIMS)
・製造部門又は品質部門において使用する試験検査設備(HPLC,GC等)からのデータに基づき、原料及び資材、製品の品質確認(規格値との照合)等を行うシステム
・製造部門又は品質部門において使用する試験検査設備からのデータを収集、保管するシステム
・試験検査設備からデータに基づき、試験検査に関する記録類を作成するシステム
・試験成績書を発行するシステム
等が挙げられる。
問12 使用目的が限定され、そのためのプログラムがハードウェア(コンピュータにより制御される機器及び設備を含む。)の供給者によって汎用機能として固定され、パラメータを設定することによって機能が実現されるシステムとして、従来ファームウェアやPLC(Programmable logic controller)として分類されていたシステムもガイドラインの適用の対象になるか。 |
回答12
ファームウェアやPLCであっても、このガイドライン別紙2「カテゴリ分類表と対応例」に従いシステムのリスクに応じた対応を行うこととなる。
問13 コンピュータ化システム開発をガイドラインで示す適用範囲の部分とそれ以外の部分を含めて総合的に設計している場合にはどのように取り扱うべきか。 |
回答13
当該システムのうち、このガイドラインで示す適用範囲の部分だけが適用となる。ただし、当該適用部分とそれ以外の部分が相互に影響しないことが明確にできない場合には全体に適用される。
例えば、ERP(Enterprise Resource Planning)システムのような統合型ソフトウェアの場合、生産管理や品質管理に関するモジュールに加え、管理会計や人事管理、販売管理に関するモジュールなど、種々の機能を持つモジュールで構成されるが、このガイドラインが適用されるのは、生産管理や品質管理などGQPやGMPで規定される業務に関する機能に限られる。ただし、作業員の割り当て等を人事管理のモジュールと連動して行うなど、他のモジュールの機能を利用して、GQP、GMPに規定される業務を行うようなシステムの場合は、その連動する範囲までこのガイドラインの適用範囲に含まれる。
問14 どんなに小さいシステムであってもガイドラインの適用を受けると考えなければならないのか。 |
回答14
このガイドラインは、GQP、GMP上の適正な実施の確保を図ることを目的としているので、システムの規模によらず、このガイドラインが適用されるものである。従って、「2.適用の範囲」に該当するシステムであれば、このガイドラインの適用を受ける。
ただし、システムの規模が小さいシステム(例えば、スタンドアローンタイプのHPLC・GCシステム)や複雑で無いシステム(例えば、温度モニタリングの為のソフトウェア)においては、IQ、OQ、PQ計画書など個々の計画書の記載事項をバリデーション計画書に一括して記載し、それぞれの計画書の作成を省略することは可能である。
問15 コンピュータ化システムをリースして使用する場合もガイドラインの適用を受けると考えなければならないのか。 |
回答15
製造販売業者等におけるコンピュータの所有権の有無と、ガイドラインの適用とは無関係であるので、リースのコンピュータ化システムであっても、ガイドラインの適用範囲に該当する場合には適用を受ける。
問16 外国の親会社で開発あるいは変更されるコンピュータ化システムを日本の子会社が運用する場合もガイドラインの適用を受けると考えなければならないのか。 |
回答16
親会社と子会社とは互いに別法人であり、この場合日本の子会社が外国の親会社にコンピュータ化システムの開発業務を委託した形となる。従って、システムの開発と変更に対しては、ガイドラインが適用される。また、国内で使用されるシステムに関わる文書については、合理的な理由がある場合を除き原則として日本語で作成すること。
問17 適切にバリデートされた既存のコンピュータシステムについて、新たに端末装置のみを増設する場合で、当該既存システムの当初のシステム設計段階で想定されていた範囲の増設を実施する場合はどの範囲でガイドラインが適用されるか。 |
回答17
基本的にはガイドラインの「6.運用管理業務」の「6.7 変更の管理」が適用になる。ただし、当初のシステムの開発時に増設を想定した範囲のシステムテストや適格性評価が実施されている場合には、一般的には増設された端末の据付時適格性確認を行えばよい。
問18 変更の計画段階で品質に影響を与えない変更であることが確認されている場合はガイドラインが適用されるか。 |
回答18
ガイドラインの「6.運用管理業務」の「6.7 変更の管理」に従って変更を実施するが、この場合バリデーションを実施する必要はない。
問19 生産管理に関するコンピュータ化システムにおける下記に示す個々のサブシステムはガイドラインが適用されるか。 製造指図書発行 原材料在庫管理 製品在庫管理 製造原価管理 |
回答19
製造指図書発行、原材料在庫管理、及び製品在庫管理に関するコンピュータ化システムはガイドラインの適用を受ける。ただし、製品在庫管理において、市場出荷後の卸売販売業の管理に関する部分を共有している場合においては、その範囲は適用を受けない。また、製造原価管理に関するコンピュータ化システムはガイドラインの適用を受けないと考えられるが、一部にGQP、GMPの業務が含まれている場合はガイドラインの適用を受ける。
問20 冷水、工水、蒸気などで、医薬品の品質に直接影響を及ばさない製造設備に使用されているコンピュータ化システム(例えば、冷暖房に使用する水や蒸気などの供給設備)はガイドラインが適用されるか。 |
回答20
例示のような冷暖房に使用する水などの供給設備のためのシステム等、明らかに製品の品質に影響を与えない設備等のコンピュータ化システムの場合はガイドラインの適用を受けない。
問21 人事システムで管理している氏名データベースを製造記録書作成システムで利用するなど、GQP又はGMPと関係のない他のシステムの情報をGQP又はGMPで活用する場合はどの範囲でガイドラインが適用されるか。 |
回答21
GQP又はGMPと関係のない他のシステム(人事や経理等の業務のためのシステム)は対象外と考えてよい。
ただし、ガイドラインの適用を受けるシステムと接続され、その情報・機能をガイドラインが適用されるシステムで利用する場合においては、ガイドラインが適用されるシステムに影響を及ぼす範囲について適用される。
3.コンピュータ化システムの開発、検証及び運用管理に関する文書の作成
問22 システム台帳とはどういうものか。目的、記載事項、登録時期等示されたい。 |
回答22
このガイドラインの管理対象のシステムを明確に示すために、原則としてこのガイドラインの対象となるコンピュータ化システムを台帳に登録する必要がある。本台帳の記載項目としてはシステム名称、管理番号、バリデーション対象の有無(カテゴリ分類)、システムの担当者等が考えられる。また必要に応じて、リスクアセスメントの結果(高中低)などの記載や複雑なシステム構成の場合は図を使用するなどの方法も考えられる。
新規コンピュータ化システムについては、運用開始までにはシステム台帳に登録することが必要である。登録の時点で未定の項目があった場合は、決定後、速やかに追記する必要がある。
システム台帳は管理者を明確にするとともに、常に最新に管理された状況にしておくことが必要です。
なお、システム台帳への登録、及び承認等の事項については、あらかじめ運用管理基準書等に規定しておく等、適切な管理が求められる。
問23 開発責任者、検証責任者、運用管理責任者とGQP省令やGMP省令上の責任者との関係等で考慮すべき事項はあるか。また、開発責任者、検証責任者、運用管理責任者の資格要件について説明されたい。 |
回答23
各責任者の任命については、製造販売業者等のポリシーや実情に応じて、「コンピュータ化システム管理規定」等に適切に規定すべきと考える。資格要件については、このガイドラインに規定された責務を果たしうる適切な者を、各企業がその組織に応じて任命することでよい。
問24 開発責任者と検証責任者は兼任可能か? |
回答24
自らシステムを開発する場合は開発責任者と検証責任者は兼務することは出来ないが、開発業務の一部を供給者に委託する場合にあって、開発から検証までの流れの中で一連の確認行為として合理的に運用できるのであれば、開発責任者と検証責任者が兼務することは差し支えない。
4.開発業務
問25 「4.3(3) 供給者アセスメント」と「5.1 供給者監査」の違いについて説明されたい。 |
回答25
このガイドラインでは、供給者アセスメントは、システム開発の初期段階で、適切な供給者を選定するために実施する活動としている。一方、供給者監査、は選定された供給者が適切に委託された業務を行っているかを監査する検証業務の一部としている。
供給者アセスメントでは、供給者の規模や実績、品質保証システム(QMS)等について、またパッケージ製品などの場合はその実績や製品の仕様などについて評価し、供給者を選定することが主体となるが、アセスメントの方法としては書面や実地に加えて、場合によってはパンフレットやインターネットのホームページの情報等もその対象と考えられる。
一方、供給者監査では、委託したコンピュータ化システムの開発業務を適切な品質保証システム及び体制のもと適切に開発業務が行われているか等について確認することが主な目的であり、供給者監査の方法としては書面による監査や実地監査が想定される。
このガイドラインでは、供給者アセスメントと供給者監査は別個の活動として規定しているが、供給者監査の結果について、それ以降に開発されるシステムの供給者アセスメントに利用することは可能である。
問26 受入試験は供給者のシステムテストを代用出来ると考えてよいか。 |
回答26
受入試験は、供給者が、製造販売業者等への引渡しに際して、発注通りの仕様や性能、機能が達成されていることを、製造販売業者等と確認することを目的として実施するものである。一方、システムテストは一般的にプログラムが設計どおりに動くことを確認するためのテストであり、供給者の開発活動の中で実施されるもので、受入試験とはその目的、テストの内容が異なり、一般的には兼ねることは出来ないものと考えられる。
ただし、開発の最終段階に行われる、各モジュールを結合して実施されるシステムテスト(統合テストなど)で、テスト計画の承認や記録の保存など、受入試験と同等の信頼性が確保されて実施されているならば、その結果をFATに引用することも可能な場合もある。
5.検証業務
問27 このガイドラインでは検証作業を一貫してバリデーションという用語で表現しているが、他の用語を用いても問題ないか。 |
回答27
このガイドラインの主旨に即しているか、または、ガイドライン1.2の「それに代わる適切な方法」として適切性を説明できるのであれば、他の用語を用いても差し支えない。
問28 供給者によるシステムテストの内容は、検証業務におけるOQ、PQと内容が重なる点が多いと考えられる。受入試験の内容を引用することは可能との記載があるが、システムテストの内容をOQ、PQで引用することは可能か。 |
回答28
システムテストは開発段階で供給者が実施するものであり、基本的には、検証段階で実施するOQやPQにその結果を引用することは困難と考える。ただし、結果を引用しようとするシステムテストが、全てのシステムを構成するモジュールが統合された最終段階のシステムテストであって、事前に検証責任者に承認された計画に従ってテストが実施され、その全ての記録が残されているなど、検証業務と同等の信頼性が確保されて実施されているならば、OQにシステムテストの結果を引用することは可能な場合もある。一方、PQは稼動環境下での検証であり、システムテストの結果の引用のみで検証することは適切ではない。
6.運用管理業務
問29 6.3(1)でいう保守点検の担当者は、製造販売業者等に所属する者である必要はあるか。 |
回答29
本ガイドラインに基づき適切に保守点検が実施可能であれば、保守点検を実際に行う者については、外部の業者であっても差し支えない。
問30 海外で開発、運用されているコンピュータ化システムを国内で運用する場合、標準操作手順書やコンピュータに表示される画面、帳票について、外国語のままで問題ないか。 |
回答30
作業者や運用担当者、システムのメンテナンスの担当者、運用責任者など、当該のシステムの運用管理にあたるものが理解でき、適正な運用が可能であれば差し支えない。
8.コンピュータ化システムの廃棄
問31 システムの廃棄についての基本的な考えを示されたい。 |
回答31
システムの廃棄とは、単に廃棄処分を意味するのではなく、その第一の目的は、GQP省令やGMP省令で示された保管期間、当該のコンピュータ(化)システムで作成、保存されたデータの真正性、見読性、保存性を確保することにある。第二の目的は、当該データの機密性の確保である。ライフサイクルを通してセキュリティ管理されていたシステムにおいては、廃棄に際しても同レベルでデータの機密性が確保される必要がある。
データの見読性の確保には、旧システムの一部又は全てをデータ読み取り用のシステムとして保存する方法(タイムカプセルアプローチ)がとられる場合があるが、これもシステムの廃棄に含まれる。
問32 廃棄計画書は「必要に応じて」作成となっているが、作成しなくてよい場合の具体的な例とは何か。 |
回答32
製造用の機器や製造支援設備等、電磁的に記録を保持していないようなシステム等、見読性の確保等が必要ないシステムが該当する。
別紙2 「カテゴリ分類表と対応例」
問33 製造工程を制御する場合において、分散型制御システム(DCS:Distributed Control System)を利用する場合にはガイドラインのどのカテゴリに該当するか。 |
回答33
DCSは、いくつかのモジュール化されたプログラムを組み合わせて、目的とする機能を実現するシステムであり、組み合わせ方によって実現する機能も異なる。従って、システムの内容に応じてガイドラインのカテゴリ4~5に分類し適用する。
問34 脱イオン水、蒸留水などの各種製造用水の製造管理に使用されているコンピュータ化システムについては、どのカテゴリが適用されるか。 |
回答34
市販のシステムをそのまま設置し、単体で利用する場合には一般的にカテゴリ3に該当する。また、使用目的が限定されており、温度、圧力、導電率等、数種のパラメータのみで制御している場合であって、供給者で機能の検証がされている場合には設備の適格性の確認に含めて実施することで差し支えない。ただし、供給者においてシステムが適切に検証されていることを示すことができるようにしておくことが必要である。
問35 温度や時間の設定を使用者が行い、組み込まれた汎用プログラムで機器の制御が行われる市販の高圧蒸気滅菌機のようなコンピュータ化システムについては、どのカテゴリが適用されるか。 |
回答35
汎用性のある市販品で、これにまったく手を加えないものは、ガイドラインのカテゴリ3に分類される。このため、設備の適格性の確認においてプログラムの機能が確認できる場合はそれに含めて実施することで差し支えない。
問36 次の機能を有するコンピュータを搭載したPTP分包機の場合はどのカテゴリが適用されるか。 ・PTPシート中の錠剤の抜けを光学的センサーの出力を受けて判断し、当該シートを後工程で排除する。 ・光学的センサーの出力を錠剤面積比として計算し、一定以上の欠損錠を不良錠として判断する。 ・製造シート(良品、不良品)枚数、製造数量等の管理上のデータ処理をする。 なお、駆動部の制御はPLC(Programmable logic controller)にて行う。 |
回答36
このPTP分包機が単体として使用されている場合であって、単に運転条件の設定のみで機能が実現されるものである場合にはガイドラインのカテゴリ3に分類される。このため、設備の適格性の確認においてプログラムの機能が全て確認できる場合は設備のバリデーションに含めて実施することで差し支えない。ただし、これらの単体設備や機器等をさらに上位のコンピュータに接続するためにインターフェース等をあらためて作成し、上位コンピュータから制御して使用している場合には、原則としてガイドラインのカテゴリ5が適用される。
問37 工程チェックの一環として、その工程の中間製品(原薬に係る製品においては中間体、以下同じ。)の品質特性を新規に開発されたプログラムが搭載されたパソコンと接続している測定器によって測定するようなシステムの場合(測定データは随時パソコン上のデータベースに保管する)は、どのカテゴリが適用されるか。 |
回答37
このシステムの測定データが随時パソコン上のデータベースに保管されGMPに関する製造管理情報として活用され、工程の中間製品の種々の品質特性が新規に開発されたプログラムによって処理されているのであれば、ガイドラインのカテゴリ5としてバリデーションを実施する必要がある。ただし、プログラムが新規に作成されたものではなく、商業ベースで販売されている既製のソフトウェアであればカテゴリ3が適用される。
問38 試験検査において、計測した数値を計測器から直接又は人によって入力し、内蔵するプログラムによって適否を判断するシステムはどのカテゴリが適用されるか。 |
回答38
内蔵するプログラムが新規に開発されたものであれば、ガイドラインのカテゴリ5が適用される。内蔵するプログラムが既存のシステムでパラメータのみを変更して利用する場合はガイドラインのカテゴリ3又は4が適用される。
問39 表計算ソフト及びそれらで作成された計算式、あるいはマクロはどのカテゴリが適用されるか。 |
回答39
表計算ソフトのような市販の汎用ソフトウェアを、製造記録の作成や出荷判定等のGQP省令及びGMP省令に係る業務等に使用する場合には、バージョン番号等をシステム台帳登録するなど適切な処置を行う必要がある。
表計算ソフトのセル計算式を設定した場合は、計算式の作成方法や複雑さに応じて、ガイドラインのカテゴリ3又は4として検証を行う必要がある。具体的なカテゴリについては、「コンピュータ化システム管理規定」に定めた企業の基本方針及びリスクアセスメントの結果等に基づき決定する。
また、マクロはプログラムの一種と考えられることからマクロを設定した場合はガイドラインのカテゴリ5としてマクロの動作を検証する必要がある。
なお、この場合の基盤となる表計算ソフトについては、バージョンを記載するなどカテゴリ1として検証を行うことになる。
問40 各種分析機器からのデータをコンピュータで受け取り、データ処理制御を行い、さらに上位のコンピュータで個々のシステムが統合され、これらのデータ及びキー入力データが個々の試験項目ごとに判定され試験成績書をプリントアウトする統合システムはガイドラインのどのカテゴリが適用されるか。 |
回答40
各種分析機器をさらに上位のコンピュータに接続し、カスタマイズされたシステムとして制御して使用している場合は、ガイドラインのカテゴリ5としてシステム全体についてのバリデーションを実施する必要がある。
パッケージソフトの構成設定のみを行って使用する場合はガイドラインのカテゴリ4としてバリデーションを実施する必要がある。
パッケージソフトをカスタマイズせずに利用できる場合はガイドラインのカテゴリ3として取り扱うことができる。
問41 分析機器のインテグレータで完全に汎用性があり、市販品にまったく手を加えていないものはガイドラインのどのカテゴリが適用されるか。 |
回答41
分析機器にインテグレータを組み合わせて使用する場合は、ガイドラインのカテゴリ3に分類されるが、機器の適格性の確認においてプログラムの機能が確認できる場合は機器のバリデーションに含めて実施することで差し支えない。
問42 ハードウェア供給者が開発したコンピュータを内蔵する下記の製造機器や分析機器は、どのカテゴリが適用されるか。 高圧蒸気滅菌機 HPLC 打錠機 GC 流動層乾燥機 UV 充てん機 IR 凍結乾燥機 その他分析機器 コーティング機 その他製造機器 |
回答42
製造機器や分析機器が、それぞれ単体として使用される場合であって、単に運転条件等の設定のみで機能が実現されるようなものである場合は、ガイドラインのカテゴリ3に分類される。この場合、設備の適格性の確認においてプログラムの機能が確認できる場合は設備のバリデーションに含めて実施することで差し支えない。ただし、これらの設備について構成設定が必要となる場合はガイドラインのカテゴリ4としてバリデーションを実施する必要がある。なお、ハードウェア供給者により供給されたプログラムを変更する場合にはガイドラインのカテゴリ5としてシステム全体のバリデーションを実施する必要がある。
問43 施設全体の空調を総合的に管理するようなシステムの場合は、どのカテゴリが適用されるか。 |
回答43
運転条件のパラメータ(温度、湿度、差圧等)の設定に加えて、部屋の諸条件の登録や制御機能の選択等の構成設定を行うことで機能が実現されるものについては、ガイドラインのカテゴリ4に分類される。自社の業務に合わせてプログラムを作成、付加したシステムの場合は、その影響が及ぶ機能については、ガイドラインのカテゴリ5に分類される。
問44 汎用機器としてハードウェアの供給者で開発されたプログラムの一部追加や、修正を加えた場合はどの範囲でガイドラインが適用されるか。 |
回答44
追加や修正が影響する範囲についてガイドラインのカテゴリ5としてバリデーションを実施する必要がある。
問45 カテゴリ分類表のカテゴリ5の備考に「4 単純な機能で、要求仕様書のみでシステム設計が可能な場合作成しなくてもよい」という記載があるが、機能仕様、設計仕様が不要な機能とは具体的にどのようなものを想定しているのか。 |
回答45
試験室での比較的簡単な演算処理などにマクロプログラムを使用するような場合が考えられる。要求仕様書に全ての機能が記述され、マクロプログラムの内容が容易にプリントアウトできる場合であれば、機能仕様書・設計仕様書を省略することが可能である。
その他
問46 このガイドラインで新たに適用の範囲とされたファームウェアやPLC等の既存のシステムについては、どの様な取り扱いが必要となるか。 |
回答46
既存のシステムについては当該設備としてのバリデーションが適切に実施されている場合は、コンピュータ化システムもバリデートされたものとみなしても差し支えない。ただし、当該設備において、システム上の障害の発生が考えられる場合は、改めてバリデーションを実施する必要がある。
以上